台本概要
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タイトル | 二人の冴島 |
---|---|
作者名 | 読川詩朗 |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男4、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
この話を書いたとき良いオチに出来たなぁと自己満足したのを覚えてますね
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
弘毅 | 男 | 147 | 冴島弘毅(さえじま こうき)警察 |
雄輝 | 男 | 138 | 冴島雄輝(さえじま ゆうき)チンピラ |
川原 | 男 | 65 | 雄輝の舎弟 |
桐島 | 女 | 116 | 弘毅の後輩 |
三重島 | 男 | 19 | 三重島組組長 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:新宿の雑居ビル
弘毅:桐島、行くぞ
桐島:はい!
0:ドアを勢いよく開ける冴島
弘毅:お前ら全員動くな!警察だ!
0:驚き慌てるヤクザたち
弘毅:マル暴の冴島だ!お前らに違法賭博、危険物所持諸々の罪で逮捕状が出てる!大人しくしろ!
0:しばらくして、雑居ビルの屋上でタバコを吸う弘毅
弘毅:すぅー・・・ふぅー・・・
桐島:冴島さん、お疲れ様です。上島事務所の人たち全員逮捕してまいりました
弘毅:おう、ありがとう
桐島:缶コーヒーです。ブラックで良かったですよね
弘毅:あぁ、いつも悪いな。
桐島:いえいえ、隣失礼します
0:弘毅の隣で座り込む桐島
弘毅:おい、桐島こんなところに座り込むなよ
桐島:いや、だってめちゃくちゃ緊張したんですよー・・・
弘毅:お前マル暴に入ってもう二年経ってるだろ?
桐島:二年経っててもヤクザの事務所に乗り込むときは毎回緊張しますよ・・・
弘毅:そんなもんかね?すぅー・・・
桐島:逆に冴島さんは全然緊張してないですよね。肝が据わってると言うかなんというか
弘毅:慣れだよ慣れ。こんな仕事してりゃ度胸もつくし肝も座るさ。
桐島:そんなもんですかね・・?
弘毅:そんなもんだよ。すぅー・・ふぅー・・・
桐島:さてと、冴島さんこの後どうしますか?
弘毅:今日は直帰するよ。
桐島:わかりました。ではまた明日、署で
弘毅:あいよお疲れさん
桐島:お疲れ様です。
0:屋上を後にする桐島
弘毅:すぅー・・ふぅー・・・
弘毅:肝が据わってる・・か・・
0:
弘毅:俺の名前は冴島弘毅(さえじま こうき)
弘毅:暴力団に関する事件、事故を取り締まっている警視庁組織犯罪対策部、通称マル暴に所属する刑事だ
弘毅:俺はある暴力団を追っている。それは「三重島組」だ
弘毅:国内外問わず指定暴力団として恐れられている三重島組の逮捕。俺が刑事になった理由はただそれだけだ。
弘毅:そして俺の肝が据わっていると言われた理由はひとつだけある。
弘毅:それは・・・
0:弘毅の家
弘毅:ただいま。
川原:冴島の兄貴の兄貴。お勤めご苦労様です!
0:深々と頭を下げる川原
弘毅:・・・。
弘毅:虎之助、なんでお前がいるんだ?
川原:はい!冴島の兄貴から頼まれてここに!
弘毅:雄輝(ゆうき)は?
川原:兄貴はコンビニに行ってます!
弘毅:そうか、お前人の家に勝手に入るなんて住居侵入罪だぞ
川原:ま、まま、待ってください!兄貴の兄貴!
弘毅:兄貴の兄貴って言うなバカ!雄輝の兄だけどお前の兄じゃねぇよ!
0:玄関が開く
雄輝:ただいまーっと
川原:冴島の兄貴!お勤めご苦労様です!
雄輝:おう
弘毅:おう。じゃねぇよ。なんで虎之助がいるんだ?
雄輝:別にいいじゃねぇか。
弘毅:うちにお前の仕事を持ってくるなって言っただろ?
雄輝:兄貴には関係ねぇだろ。邪魔すんなよ
弘毅:はぁ・・・変な事してたらすぐに逮捕するからな
雄輝:わぁってるよ。トラ、俺の部屋に行くぞ
川原:へい!
0:部屋に入る二人
弘毅:はぁ・・まったく・・・
0:
弘毅:あいつは双子の弟、冴島雄輝
弘毅:俺らがまだ子供だった時両親が離婚をした。
弘毅:俺は母親に、雄輝は父親に親権が渡り離れ離れになっていた。
弘毅:離れ離れになっていたのになぜ家にいるかって?それは・・・
0:一年前
桐島:冴島さん、私緊張してきました・・・
弘毅:大丈夫だ。このキャバクラに居る三重島を絶対に捕まえるぞ
桐島:・・ッ!はい!!
弘毅:よし、行くぞ!
0:ドアをこじ開ける弘毅
弘毅:皆さんその場から動かないでください!
桐島:我々は警察です!こちらに指定暴力団である三重島組組長である三重島大輔(みえじま だいすけ)が居ると通報がありました!
三重島:おいおいなんだよお前ら
弘毅:三重島!お前に逮捕状が出ている。大人しく捕まれ
三重島:俺に逮捕状だぁ?身に覚えがねぇな
弘毅:ふざけるな!麻薬の密輸、恐喝、違法行為が山のようにたまっているんだ!
三重島:残念ながらお前さんらにはまだ捕まるわけにはいかねぇのさ。
0:杖を地面にトントンとたたくとゴロツキがわらわらと裏口から出てくる
弘毅:汚い真似してまでも捕まりたくないか三重島ァ!
三重島:汚い真似?汚ねぇも何も俺は生きるのに必死なんだわ。堪忍な?坊主。じゃあな
0:歩いて裏口に入っていく三重島
弘毅:待て!お前ら我々に手を出したら公務執行妨害で逮捕だ。捕まりたくないなら道をあけろ!
0:わぁっと襲ってくるゴロツキたち
0:
0:
0:しばらくして
弘毅:はぁ・・はぁ・・!この部屋か!
0:立ち入り禁止の部屋をこじ開ける弘毅
弘毅:動くな!警察だ!大人しくしろ!
川原:あぁ!?サツだぁ?何の用だ!
弘毅:ここに三重島がいるな!大人しく出せ!
川原:三重島の旦那ァ?いるわけねぇだろ!
弘毅:どけ!
0:手で押しのける
川原:あ、てめぇ!待て!そっちの部屋は・・・!
0:ドアを開ける
雄輝:あぁ!?おいてめぇ!人がヤッてるときに入ってくんじゃねぇ!
0:電気をつける弘毅
弘毅:三重島・・ではないな?・・・ん?お前・・・
雄輝:あぁ?あっ!!てめぇは・・!?
弘毅:雄輝か!?
雄輝:兄貴!?
川原:兄貴すんません!サツがそっちに・・・って兄貴が二人・・!?
弘毅:お・・お前、親父に引き取られて大阪に居たんじゃ・・・
雄輝:兄貴こそラブホテルにまで何の用なんだよ・・・
桐島:冴島さん!どこいったんですか?
0:廊下から声がする
弘毅:チッ、単刀直入に聞く、お前ら三重島がどこにいるか知ってるか?
雄輝:三重島の旦那?知らねぇな
弘毅:チッ・・・雄輝お前今何してるんだ
雄輝:この腕みりゃ分かんだろ?
0:和彫りの入れ墨を見せる雄輝
弘毅:・・・。三重島組か?
雄輝:ちげぇな
弘毅:そうか。ならいい、詳しく話を聞かせてもらいたい。
0:名刺の裏に自分の家の住所を書く弘毅
弘毅:これは俺の家の住所だ。三日後ウチに来い。
雄輝:あぁ!?いきなりなんだってんだよ!
弘毅:必ず来い。邪魔したな
0:踵を返しすたすたと部屋を出る弘毅
川原:あ、兄貴、どうするんスか?
雄輝:・・・。
0:名刺をじっと見る雄輝
桐島:あ、冴島さん!
弘毅:桐島、すまないな
桐島:いえ、ここのラブホテルに三重島は逃亡を図ってましたか?
弘毅:いやどうやら逃げられたみたいだ。部屋の隅々捜索はしたのだがな。
桐島:そうでしたか・・・また逃げられましたね・・・
弘毅:あぁ・・また報告書を書かないとな
桐島:そうですね。あ、今車を回してきます
弘毅:悪いな。
0:
0:
0:
弘毅:あいつと再会してもう一年が経つというのにいまだに三重島の動向が探れない・・・
雄輝:でよ、次三重島組にドンパチかます時だけどよ?
弘毅:三重島組・・?
0:隣の部屋の壁に近付く弘毅
川原:チャカは旦那が持たせてくれると思います。
川原:11月23日は三重島の旦那の嫁の命日だから一日、組に居ると思います
雄輝:バカ野郎!兄貴が隣に居んだぞ!チャカとか言うな!
川原:す、すんません!
弘毅:11月23日、三重島は組に居る・・・?
0:雄輝の部屋をノックする弘毅
弘毅:雄輝、俺は今から署に戻る。しばらく家を空けるから戸締り忘れずにしろよ
雄輝:あぁ。
弘毅:じゃあな
雄輝:おい兄貴
弘毅:なんだ?
雄輝:さっきの話・・・聞いてたか?
弘毅:話?悪いな。さっきまで疲れて仮眠をとっていたから何も聞いてない
雄輝:・・・。
弘毅:・・・。
0:お互いの目をじっと見合う二人
雄輝:あっそ、ならいい。気を付けて行ってきな
弘毅:あぁ。
川原:兄貴の兄貴!道中お気をつけて!
0:ドアを閉め家を出る弘毅
雄輝:おい、トラ
川原:なんスか兄貴
雄輝:双子ってよ面白いもんでよ?俺と兄貴は一卵性で生まれてな。お互い何年も会ってなかったけどあんだけ顔が同じなんだ。何を考えてるかとか手に取るようにわかるんだ
川原:へぇ?すげぇッスね。
雄輝:さっきの兄貴の目、あれは嘘の目だ
川原:え!?なんでわかんスか!兄貴超能力者ッスか!?
雄輝:後をつけるか
川原:え?
雄輝:後をつけるかって言ってんだ。ほら上着はおれ
川原:あ、はい!
0:スカジャンに袖を通す二人
雄輝:行くぞ
川原:はい!
0:弘毅の乗った車の後を走る川原
雄輝:やっぱサツって金持ってんねぇ?なぁトラ
川原:そッスね。あんな高級車乗って都内走り回るなんて羨ましいッスよ
雄輝:そのまま署に入ったんならまぁ信じる価値はあるがどっかで降りようもんなら兄貴をシメる
川原:あ、普通に警視庁に入っていったスよ
雄輝:チッ!入っていったか・・クソッ。まぁいいやそのままラーメンでも食いに行くかトラ
川原:そッスね!行きましょう!
0:そのまま車を走らせる川原
弘毅:はい、地下二階の資料室への入館許可をお願いします
0:紙に署名する弘毅
弘毅:はい、ありがとうございます。
0:地下の資料室へ入る弘毅
弘毅:三重島に対する資料は・・・あった。ここだ
0:資料を読み進める弘毅
0:
0:
0:一方そのころ
桐島:早く帰って寝ないとなー・・ん?あれは・・・
0:川原と歩く雄輝の姿
桐島:冴島さんだ。声かけよう
0:駆け寄る桐島
桐島:冴島さーん!おーい!冴島さーん!
雄輝:あ?
桐島:冴島さんこんな夜中に会うなんて奇遇ですね!
川原:兄貴?このアマ、知り合いなんスか?
雄輝:あ?いや?知らねぇけど・・・
桐島:兄貴?冴島さん弟さんいらっしゃったんですか?あ、でも全然顔の輪郭とか似てない気が・・・遺伝子の問題かな?
川原:なぁに言ってんだよ俺の名前はなぁ!?かわはっ・・・
0:手で川原を押し下げる雄輝
雄輝:悪いな。こんな出来の悪い弟がいるってなったら仕事に支障をきたすと思ってな
桐島:あ、そうだったんですか!ってあれ?冴島さん風邪引いてますか?
雄輝:あ、いやいたって健康だが?
桐島:声がいつもと違う気が・・・
雄輝:えっ、あ・・んんっ!あーあー・・・少し喉をやってしまってな。のど飴でも買おうとこっちまで来てたんだ
桐島:あ!そうだったんですね!じゃあ喉に効くのど飴が売ってる薬局があるんでそこで仕入れてきますよ!
雄輝:あ、あぁ悪いけど頼めるか?
桐島:はい!そこで待っててください!
雄輝:あ、金だけど・・・
桐島:いえ!いつも助けていただいてますしのど飴くらい後輩の私が出してきます!ではそこのベンチに座って待っててください!
0:駆け出していく桐島
雄輝:はぁ・・行ったか
川原:兄貴!いきなりひでぇじゃねぇっすか!
雄輝:うっせぇバーカ。
川原:あのアマ、兄貴の知り合いッスか?
雄輝:俺じゃねぇよ。多分俺の兄貴の部下だろ
川原:え!?兄貴の兄貴ッスか!?
雄輝:あぁ、兄貴と俺顔一緒だからな。
川原:なるほど・・・ってあのアマ帰ってくるまで待っとくんスか!?ラーメンは!?
雄輝:別にここらのラーメン屋は明け方までやってんだろ。待っててやろうや
川原:マジスか・・けっこう腹減ってんスよ・・・
雄輝:まぁサツの裏事情聞けるしいいじゃねぇか
0:しばらくして
桐島:お待たせしました。こちらのど飴といつも飲んでるコーヒーです
雄輝:のど飴とコーヒーって組み合わせ鬼悪くねぇか?
桐島:そうですか?私全然のど飴食べながらでも飲めますよ
雄輝:あ、あぁ。ありがたく貰っておくよ
桐島:あれ?弟さんは??
雄輝:ちょっと出てる。
桐島:そうだったんですね!あ、あのお疲れのところ申し訳ないのですが少し話してもよろしいですか?
雄輝:話?別にいいよ
桐島:ありがとうございます。次の三重島が現れそうな場所を私なりにピックアップしてみたのですがどうですか?
0:自分の手帳を広げ地図を見せる桐島
雄輝:歌舞伎町、大久保・・・新宿ばっかりだな
桐島:えぇ。この事件に携わってから三重島は新宿から離れていません。となると奴の根城は新宿のどこかにあるかなと思ったんです
雄輝:へぇ・・?あながち間違ってはないな
桐島:え?
雄輝:あいつのシノギは主に新宿のバーやキャバクラ、セクキャバと言ったところだ
雄輝:歌舞伎町は自分のシマと言っても過言じゃねぇだろうな。
桐島:そう・・なんですか?
雄輝:で、三重島組はどこにあるのか知ってるのか?
桐島:三重島組は三か所存在していますよね。うち一か所はもぬけの殻となっていました。確か渋谷区のビル街の中に
雄輝:そうだな。で、残り二つは池袋と練馬。だよな
桐島:え、なぜそれを・・?
雄輝:でも残念だがそこの二つにもいねぇんだな三重島は
桐島:え?すでに行かれたんですか?
0:資料室
弘毅:三重島組の出生は墨田・・・
弘毅:構成員関東で4800人、関西で2300人・・・
弘毅:三重島裕子の告別式・・?
0:当時の新聞のチラシを見る弘毅
弘毅:関東最大指定暴力団三重島組組長三重島大輔の嫁、裕子氏の葬式を荒川にある三重島の隠れ家で行なった・・・
弘毅:荒川・・・?
弘毅:荒川付近にある霊園にて裕子氏の墓を建造。毎年11月23日には荒川にある三重島の隠れ家で一日組員も立ち寄らずその場で過ごしている。
弘毅:ここまで警察は知っているのになぜ三重島の逮捕に動かないんだ・・・
0:とあるベンチ
桐島:荒川ですか・・・?
雄輝:あぁ。荒川の赤い屋根の小さな一軒家で隠れてんだよ
桐島:なぜそれを知っていて冴島さんは動かないんですか!早急に動けば事態は早く収まるはずです!
雄輝:最近知ったんだよ
桐島:最近知った?
雄輝:俺も親父・・あぁいや、知り合いから口伝で聞いてな。で11月23日に乗り込む予定だったんだよ
桐島:それはマル暴としてですか?ご自身の単独で、ですか?
雄輝:そこまでは言えないな。
川原:兄貴ー!
雄輝:おっと、それじゃそろそろ俺は行くわ
桐島:あ、ま、待ってください!
0:ベンチの上にある缶コーヒーを手に取る桐島
桐島:缶コーヒー!忘れてます!
雄輝:俺はブラックより微糖が好きなんだわ。じゃあな
0:その場を去る雄輝
0:
0:
0:しばらくして朝
桐島:おはようございます冴島さん
弘毅:あぁおはよう桐島
桐島:昨日のアレ、本当ですか?
弘毅:昨日のアレ?
桐島:ほら、乗り込むつもりだと仰ってた・・・
弘毅:ッ!?(なんで俺が単独で決めた事を知ってるんだ)
桐島:マル暴に二年いて気付いたんですが、ここの人たち何か握られてると思うんです・・・
弘毅:握られてる?どういうことだ
桐島:いつも乗り込むときに思っていたんですがここの皆さん我々が指揮を執るまでは重い腰をあげようとしないんです
弘毅:・・・まぁそうだな
桐島:もし三重島の所に乗り込む気なら私も連れて行ってください。単独で動くのはかえって危険だと思いますので
弘毅:あ、あぁ。わかった。
桐島:それと、はいコーヒー、ここに置いておきますね
弘毅:あぁ、ありがとう
0:机の上に缶コーヒーを置く桐島
弘毅:ん?桐島
桐島:なんでしょうか
弘毅:今日はブラックじゃないんだな
桐島:えぇ。微糖がお好き。なんでしょう?
弘毅:???まぁいいか
0:缶コーヒーをスーツのポケットに入れる弘毅
0:
0:弘毅の家
弘毅:ただいま。
雄輝:おう、おかえり兄貴
弘毅:あぁ。今日は虎之助居ないんだな
雄輝:毎日べったりくっつかれても気持ち悪いからな。今日は散歩させてんだよ
弘毅:散歩?
雄輝:あぁ。
弘毅:・・・なぁ雄輝
雄輝:なんだよ
弘毅:お前昨日、桐島に会ったか?
雄輝:桐島?誰だよそれ
弘毅:・・・いや、知らないならいい。忘れてくれ
雄輝:・・・。
0:耳にワイヤレスイヤホンをしている雄輝
川原:兄貴!ありました赤い屋根の一軒家
0:スマホの画面はビデオ通話
雄輝:なぁ兄貴、賭けでもしようや
弘毅:警察がチンピラ相手に賭けなんてやるわけないだろう
雄輝:まぁそういうなって。三重島の居場所、突き止めたんだろ?
弘毅:・・・。何のことだ?
雄輝:とぼけんなよ。俺ら腐っても双子だぜ?兄弟の勘が働いたんだよ
弘毅:何年も会ってないお前に兄弟の勘なんて働くわけないだろ
雄輝:つれないねぇ?ま、いいわ。11月23日、兄貴は荒川に居る。違うか?
弘毅:・・・。黙秘権を使う
雄輝:堅苦しいねぇ?ま、いいけどよ。そんで荒川にある三重島の隠れ家へ行き逮捕する。そうだろ?
弘毅:三重島は荒川に隠れ家があるのか?
雄輝:とぼけんなっつってんだよ。どうせそこまで掴んだんだろ?
弘毅:・・・知ってどうする?
雄輝:実はよ、兄貴と別れてから親父は三重島に殺されたんだよ
弘毅:ッ!?本当か・・・?
雄輝:あぁ。親父は大阪で小さな鉄工所で働いていた。俺を大きく育てるためにな。
雄輝:でもある日その鉄工所にヤクザが数名押し入ってきてそこを潰すと言ってきた
雄輝:親父はもちろん自分の働き口がつぶれるのが嫌で必死に抵抗しようとした。
弘毅:・・・それでどうなったんだ
雄輝:実の息子に言わせるなよな。「わからされた」んだよ
弘毅:そんな話おふくろから聞いてないぞ
雄輝:そりゃ離婚してんだ。おかんには伝わらねぇだろうよ。で俺は三重島を殺そうと思ってこっちにトラと乗り込んできたんだ
弘毅:恨みを晴らそうって魂胆か?
雄輝:恨み?ちげぇよ。ただ、世界中に名前の知れ渡ってる三重島がどこの誰かも知らないチンピラに殺されりゃ世界中大賑わいだろ?
弘毅:今の言葉、もし本当ならお前を銃刀法違反、並びに殺人罪で逮捕するぞ
雄輝:本当かどうかは当日楽しみにしておきな。
弘毅:お前の兄として警告してるんだ。
雄輝:俺の兄?はっ!再会してまだ一年足らずの癖に兄貴面してんじゃねぇよ。
弘毅:兄として警察としてお前を叱っているんだ。
雄輝:ま、とにかく当日楽しみにしておきな。じゃあな
弘毅:待て!
雄輝:あ、そうだ。最後にひとつだけ言わせてもらうわ
弘毅:なんだ
雄輝:よくできた先輩を見て育つ後輩は先輩の役に立とうと必死に動き回るもんだぜ。じゃあな
0:家を出る雄輝
弘毅:どういうことだ・・・
弘毅:ッ!?まさか・・!!
0:荒川
桐島:一人で乗り込む勇気はないけど三重島の手がかりさえつかめれば・・・
0:スーツを着た男たちが頭を下げ道を作っている
桐島:あれは・・・
0:そこに一台の車が止まる
三重島:ご苦労さん。
桐島:見つけた・・!
川原:三重島!
桐島:ッ!?
川原:あぁ?お、おいお前あん時の!
桐島:って冴島さんの弟さん!
川原:兄貴の兄貴の舎弟!
桐島:舎弟じゃないです!部下の桐島です!
川原:いや、お前それよりもなんでこんなとこに!?
桐島:それを言ったら貴方もなぜここに!
川原:俺は決まってんだろ!あそこにいる・・・
0:指をさすと人っ子一人いなくなっている
川原:あー!逃げられた!ちくしょう!!
桐島:もしかして貴方も三重島を・・?
川原:貴方もってお前もか!?
桐島:え、えぇそうです!
雄輝:トラ、どうだ?
川原:兄貴!お疲れ様です
桐島:冴島さ・・
雄輝:しー。
0:指で桐島の口を抑える雄輝
雄輝:ここは騒いだら面倒だし喫茶店にでも行くか
0:とある喫茶店
川原:兄貴のは俺が持ってきます
雄輝:悪いな
0:席を外す川原
桐島:冴島さん、貴方・・・
雄輝:いやぁどこから話そうかな。まぁー、まず俺の名前は冴島は冴島だけど弟の雄輝だ
桐島:弟さん・・・本当でしょうか
雄輝:あぁ。免許証みるか?ほらよ
0:免許証を見せる雄輝
桐島:確かに・・弟さ・・いや、雄輝さん。冴島さんからは弟がいると言うのは聞いていませんがどういうことでしょうか
雄輝:まぁ俺と兄貴は幼い時に両親の離婚が原因で離れ離れになったからな。で、一年前にばったり会ったんだよ
桐島:そうなんですか。すみませんが貴方の職業・・もしかして
雄輝:あぁ俺はヤクザだ
桐島:やはり・・・
雄輝:ま、ヤクザっつってもあんたが追ってるような三重島組みたいなんじゃねぇよ。それに俺が入ってんのは関西の組だ。こっちじゃ名前も知られてねぇよ
桐島:ならなぜここに?
雄輝:それは言えねぇな
桐島:女ですが私も警察です。これは事情聴取と思ってください
雄輝:任意だろ?強制でもなけりゃ令状もあるわけじゃねぇ。答える義理はない。そうだろ?
桐島:・・・。
雄輝:ま、一つ言えるなら迷惑をかけにきた。ただそれだけだ。
川原:兄貴、お待たせしました
雄輝:おう、それあの子にあげな
川原:え、いいんスか!?
雄輝:おう、んで俺らはもう行くぞ
川原:え、あ、はい
0:机に二つ飲み物を置く川原
雄輝:じゃあな。これからも兄貴を支えてやってくれ
桐島:ま、待ってください
雄輝:んじゃ
桐島:先日ベンチで話してた内容、あれを冴島さんご自身は知っているんですか・・・?
雄輝:・・・どうだろな
桐島:茶化さないでください!真面目に聞いているんです!
雄輝:それは自分自身で聞けよ。俺が答える筋合いはない
桐島:ですが
川原:長ったらしい話は兄貴嫌いなんだよ。んじゃな。
桐島:待ちなさい!
0:喫茶店を出る二人
0:
0:桐島の電話が鳴る
桐島:もしもし
弘毅:桐島か。お前今どこにいる
桐島:今は喫茶店に居ます
弘毅:一人か
桐島:え、えぇ。今一人になりました
弘毅:今?すまない。少し悪い予感がして電話をしただけだ。何もないんだな
桐島:えぇ。大丈夫です。それよりも冴島さん
弘毅:なんだ
桐島:あ、いえ。なんでもありません
0:
0:雄輝の車の中
川原:兄貴、家に戻らないんスか?
雄輝:あぁ、それよりも23日まであと何日だ?
川原:えーっと今日付変わったんで二日後ッスね
雄輝:二日後か。わかった。この辺のラブホに泊るか。その辺の姉ちゃんはべらせてな
川原:いいッスね!
0:二日後の朝、署の屋外エリア
弘毅:すぅー・・ふぅー・・・
桐島:おはようございます冴島さん
弘毅:あぁおはよう桐島
桐島:・・・いよいよ今日ですね
弘毅:あぁ。三重島さえ逮捕出来りゃ俺はマル暴をやめてもいいと思ってる
桐島:やめてどうするんですか?
弘毅:そうだな・・・しばらくは交通課とかに居ようかな
桐島:ぷっ、あはは
弘毅:笑いごとか?
桐島:マル暴で恐れられてた冴島さんが交通課に行くって考えたら笑えてきました。
弘毅:本気で言ったのにな
桐島:少しこれで緊張がほぐれました。ありがとうございます
弘毅:感謝される事はしてないけどな。
桐島:マル暴が本気で動かない理由がわかりましたよ
弘毅:そうなのか?
桐島:えぇ。杉本課長がここらへんのヤクザから大金を貰ってたんですって
弘毅:杉本課長が?
桐島:えぇ。だから他の事務所は逮捕へ持っていけても三重島だけは許可がおりなかったんです
弘毅:今回の令状は杉本課長を通さずに出して正解だったな
桐島:ですね。
弘毅:さて・・と・・・
0:伸びをする弘毅
弘毅:気を引き締めていくぞ桐島
桐島:はい!
0:とあるビルの空き部屋
川原:兄貴!朝飯持ってきました!
雄輝:おう悪いな
川原:いえいえ!
雄輝:トラ、タバコ
0:タバコを咥える雄輝
川原:はい!
0:火をつける川原
雄輝:すぅー・・ふぅー・・・
雄輝:トラ、そこのソファめくってみろ
川原:俺が座ってるソファですか?
雄輝:あぁ
0:ソファをめくると拳銃が出てくる
川原:チャカじゃないっすか!
雄輝:それで三重島を殺る。
川原:いよいよッスね兄貴
雄輝:あぁ。弾は全部で6発だ。サイレンサーもないから一発撃つたびに近所の奴らが絶対サツに通報する。だからチャンスは一回だ
川原:わかりました。ぜってぇ外さないようにしねぇとッスね
雄輝:すぅー・・・ふぅー・・・
0:銃を手に取る雄輝
雄輝:親父、これが良い事じゃねぇってわかってはいるけどこれは俺なりのケジメだ。許してくれよ
0:その日の夕方
弘毅:いくぞ桐島
桐島:はい!
0:車に乗り込む二人
雄輝:トラ、車出すぞ
川原:うッス!!
0:ビルから降りていく二人
0:
0:荒川
三重島:裕子、一年と言うのはあっという間だな。一緒に一日過ごしたのを昨日のように思い出すよ
0:お線香を焚く三重島
三重島:この時だけは普段の喧騒を忘れられるよ。さてと、日本酒でいいよな裕子。お前昔から日本酒が好きだったもんな。今いれてくるよ
0:荒川
桐島:この辺です。
弘毅:ありがとう。赤い屋根の一軒家に居るらしいな
桐島:はい。手分けして探しますか
0:一台の軽自動車が過ぎるのを見つける弘毅
弘毅:いやいい。こっちだ
桐島:え?冴島さん?
弘毅:こっちにある
桐島:本当ですか!?
0:軽自動車がパーキングに止まる
川原:兄貴、ここら辺ッス
雄輝:あぁ。すまんな
川原:あ、ほらあそこの赤い屋根の家ッスね
雄輝:あぁ。あそこな。
川原:行きますか!
雄輝:あぁ。
0:
弘毅:クソ、見失ったか
桐島:何か見えたんですか
弘毅:あぁ、軽自動車をな
桐島:軽自動車?
弘毅:俺の弟のな
桐島:弟さんの・・!?
0:パンッと発砲音が聞こえる
弘毅:ッ!
桐島:い、今の音って!
弘毅:あっちから聞こえた!行くぞ!!
桐島:はい!!
0:三重島の家
三重島:あ・・あ・・・
0:三重島の足元に弾丸の穴が開く
雄輝:よぉ三重島の旦那。久しぶりだな
三重島:だ、誰だお前は!!
雄輝:思い出してみろよ。この顔に見覚えあんだろ
三重島:どこの組だ!俺に手を出してタダで済むと思ってんのか!!
雄輝:あぁ。どうせお前を殺したら俺も死ぬだけだしな
三重島:ど・・どういうことだ・・!?
0:
弘毅:雄輝!!お前!!
雄輝:よぉ兄貴、遅かったな
弘毅:ッ!三重島・・・!
三重島:さ、サツか!おい!助けろ!こいつが俺を殺そうとしている!
雄輝:兄貴、邪魔すんのか?
弘毅:三重島、お前に令状が出てる。大人しく捕まれ
三重島:あ、あぁ捕まってやる!だからこの男も逮捕しろ!
雄輝:おい、トラ。三重島見張っとけ
川原:うッス
0:銃を下ろし弘毅に近付く雄輝
雄輝:おい兄貴、無視してんじゃねぇよ
弘毅:黙れ。
桐島:さ、冴島さん!
弘毅:桐島、お前は三重島にワッパかけとけ
0:手錠を渡す弘毅
桐島:はい!
0:三重島の方へ近づく桐島
雄輝:兄貴?こいつは俺らの親父を殺した張本人だぜ?生かしておくってのか?
弘毅:だからなんだ。こいつは法の下で裁かれるべき存在だ
雄輝:はっ!血も涙もないねぇ。会わないうちに人の心がなくなったのか?
弘毅:今なら目をつぶっててやる。
雄輝:国のお巡りさんとは思えないセリフをはくじゃねぇか兄貴
弘毅:これは最後の警告だ。銃を下げてここから出て行け
雄輝:・・・。
弘毅:・・・。
0:三重島の方へ歩みを進める雄輝
雄輝:おい三重島の旦那
三重島:な、なんだ
雄輝:大阪にある上本鉄工所って覚えてるか?
三重島:大阪・・あぁ俺が潰した工場だな
雄輝:そこに居た冴島って言う50代の男に聞き覚えはないか?
三重島:知らんな
雄輝:そうか。はぁー・・そうかそうか・・・なんか馬鹿らしくなってきたわ。
0:立ち上がり上を向く雄輝
雄輝:お前にとっては一人殺しただけだもんな
三重島:な、なんだ
雄輝:あの威厳しかなさそうな三重島の旦那がこんなへっぴり腰で床に這いつくばってんの見たら興が冷めたわ。トラ、行くぞ
川原:え!い、いいんスか!?三重島殺んなくて!!
雄輝:おい、トラ見てみろよ。お巡りさんが目の前に居んだぜ?さすがにバカのお前でもわかんだろ
川原:・・で、でも
雄輝:兄貴
0:手を前に出す雄輝
弘毅:何の真似だ
雄輝:見逃すなんてしょうもないマネしてサツのプライド崩すなよ。ほら
弘毅:雄輝・・お前・・・
0:時計の針を見る弘毅
弘毅:冴島雄輝、三重島大輔殺人未遂、並びに銃刀法違反の罪で逮捕する。桐島
桐島:はい!三重島大輔、数多くの罪状をかわし逃亡を図った罪により逮捕する。
0:雄輝の手に手錠がかけられる
雄輝:俺もおふくろの方に行ってたらこんな事しなくてすんだのにな
弘毅:・・・。
三重島:クソ・・なぜ俺に令状が出てるんだ・・クソ・・!!クソが・・!!!
桐島:こちらマル暴桐島、至急荒川に護送車一台用意してください。はい、三重島大輔の逮捕並びに殺人未遂を働いた犯罪者一名逮捕致しました。お願いします。
0:電話を切る桐島
桐島:15分したら到着します冴島さん
弘毅:すまんな
川原:兄貴!俺はどうしたらいいんスか!兄貴!!
雄輝:お前は俺が巻き込んだんだ。大阪戻ってまたオジキに可愛がってもらえよ
川原:俺は兄貴についてきたんスよ!俺もムショ行くッスよ!!
雄輝:ダメだ。お前は大阪に帰れ
川原:兄貴ぃいい!!
0:護送車が到着する
弘毅:お疲れ様です。
0:敬礼する弘毅
弘毅:三重島大輔、そして・・・冴島雄輝の護送お願いいたします
0:連行される二人
雄輝:あ、おい兄貴!
弘毅:なんだ
雄輝:・・・いや、いいわ
弘毅:そうか。ではお願いします
三重島:覚えていろよ冴島!!シャバに戻ったら貴様を殺してやる!!
0:護送車はゆっくりと走っていく
桐島:よかったんですか冴島さん
弘毅:あぁ、無事三重島を逮捕出来た
桐島:違います。弟さんの事です
弘毅:・・・。
桐島:あの場は私しかいませんでしたよ。見逃しても良かったんです
弘毅:昔の俺ならそうしてたかもな。
桐島:この後はどうしますか
弘毅:報告書を書いて杉本課長の事を上に言って課長の座を引きずりおろして懲戒解雇にしてもらうか。ふっ
桐島:冴島さんが笑った顔初めて見ました!
弘毅:笑ってた?俺がか?
桐島:えぇ!今ふふって!
弘毅:気のせいだ。署に戻るぞ
桐島:わかりました。車を持ってきます!
0:タバコに火をつける弘毅
弘毅:すぅー・・ふぅー・・・
0:スーツのポケットに手を入れる弘毅
弘毅:微糖の缶コーヒー・・・
0:一口飲む
弘毅:やっぱり俺はブラックだな。
0:終わり
0:新宿の雑居ビル
弘毅:桐島、行くぞ
桐島:はい!
0:ドアを勢いよく開ける冴島
弘毅:お前ら全員動くな!警察だ!
0:驚き慌てるヤクザたち
弘毅:マル暴の冴島だ!お前らに違法賭博、危険物所持諸々の罪で逮捕状が出てる!大人しくしろ!
0:しばらくして、雑居ビルの屋上でタバコを吸う弘毅
弘毅:すぅー・・・ふぅー・・・
桐島:冴島さん、お疲れ様です。上島事務所の人たち全員逮捕してまいりました
弘毅:おう、ありがとう
桐島:缶コーヒーです。ブラックで良かったですよね
弘毅:あぁ、いつも悪いな。
桐島:いえいえ、隣失礼します
0:弘毅の隣で座り込む桐島
弘毅:おい、桐島こんなところに座り込むなよ
桐島:いや、だってめちゃくちゃ緊張したんですよー・・・
弘毅:お前マル暴に入ってもう二年経ってるだろ?
桐島:二年経っててもヤクザの事務所に乗り込むときは毎回緊張しますよ・・・
弘毅:そんなもんかね?すぅー・・・
桐島:逆に冴島さんは全然緊張してないですよね。肝が据わってると言うかなんというか
弘毅:慣れだよ慣れ。こんな仕事してりゃ度胸もつくし肝も座るさ。
桐島:そんなもんですかね・・?
弘毅:そんなもんだよ。すぅー・・ふぅー・・・
桐島:さてと、冴島さんこの後どうしますか?
弘毅:今日は直帰するよ。
桐島:わかりました。ではまた明日、署で
弘毅:あいよお疲れさん
桐島:お疲れ様です。
0:屋上を後にする桐島
弘毅:すぅー・・ふぅー・・・
弘毅:肝が据わってる・・か・・
0:
弘毅:俺の名前は冴島弘毅(さえじま こうき)
弘毅:暴力団に関する事件、事故を取り締まっている警視庁組織犯罪対策部、通称マル暴に所属する刑事だ
弘毅:俺はある暴力団を追っている。それは「三重島組」だ
弘毅:国内外問わず指定暴力団として恐れられている三重島組の逮捕。俺が刑事になった理由はただそれだけだ。
弘毅:そして俺の肝が据わっていると言われた理由はひとつだけある。
弘毅:それは・・・
0:弘毅の家
弘毅:ただいま。
川原:冴島の兄貴の兄貴。お勤めご苦労様です!
0:深々と頭を下げる川原
弘毅:・・・。
弘毅:虎之助、なんでお前がいるんだ?
川原:はい!冴島の兄貴から頼まれてここに!
弘毅:雄輝(ゆうき)は?
川原:兄貴はコンビニに行ってます!
弘毅:そうか、お前人の家に勝手に入るなんて住居侵入罪だぞ
川原:ま、まま、待ってください!兄貴の兄貴!
弘毅:兄貴の兄貴って言うなバカ!雄輝の兄だけどお前の兄じゃねぇよ!
0:玄関が開く
雄輝:ただいまーっと
川原:冴島の兄貴!お勤めご苦労様です!
雄輝:おう
弘毅:おう。じゃねぇよ。なんで虎之助がいるんだ?
雄輝:別にいいじゃねぇか。
弘毅:うちにお前の仕事を持ってくるなって言っただろ?
雄輝:兄貴には関係ねぇだろ。邪魔すんなよ
弘毅:はぁ・・・変な事してたらすぐに逮捕するからな
雄輝:わぁってるよ。トラ、俺の部屋に行くぞ
川原:へい!
0:部屋に入る二人
弘毅:はぁ・・まったく・・・
0:
弘毅:あいつは双子の弟、冴島雄輝
弘毅:俺らがまだ子供だった時両親が離婚をした。
弘毅:俺は母親に、雄輝は父親に親権が渡り離れ離れになっていた。
弘毅:離れ離れになっていたのになぜ家にいるかって?それは・・・
0:一年前
桐島:冴島さん、私緊張してきました・・・
弘毅:大丈夫だ。このキャバクラに居る三重島を絶対に捕まえるぞ
桐島:・・ッ!はい!!
弘毅:よし、行くぞ!
0:ドアをこじ開ける弘毅
弘毅:皆さんその場から動かないでください!
桐島:我々は警察です!こちらに指定暴力団である三重島組組長である三重島大輔(みえじま だいすけ)が居ると通報がありました!
三重島:おいおいなんだよお前ら
弘毅:三重島!お前に逮捕状が出ている。大人しく捕まれ
三重島:俺に逮捕状だぁ?身に覚えがねぇな
弘毅:ふざけるな!麻薬の密輸、恐喝、違法行為が山のようにたまっているんだ!
三重島:残念ながらお前さんらにはまだ捕まるわけにはいかねぇのさ。
0:杖を地面にトントンとたたくとゴロツキがわらわらと裏口から出てくる
弘毅:汚い真似してまでも捕まりたくないか三重島ァ!
三重島:汚い真似?汚ねぇも何も俺は生きるのに必死なんだわ。堪忍な?坊主。じゃあな
0:歩いて裏口に入っていく三重島
弘毅:待て!お前ら我々に手を出したら公務執行妨害で逮捕だ。捕まりたくないなら道をあけろ!
0:わぁっと襲ってくるゴロツキたち
0:
0:
0:しばらくして
弘毅:はぁ・・はぁ・・!この部屋か!
0:立ち入り禁止の部屋をこじ開ける弘毅
弘毅:動くな!警察だ!大人しくしろ!
川原:あぁ!?サツだぁ?何の用だ!
弘毅:ここに三重島がいるな!大人しく出せ!
川原:三重島の旦那ァ?いるわけねぇだろ!
弘毅:どけ!
0:手で押しのける
川原:あ、てめぇ!待て!そっちの部屋は・・・!
0:ドアを開ける
雄輝:あぁ!?おいてめぇ!人がヤッてるときに入ってくんじゃねぇ!
0:電気をつける弘毅
弘毅:三重島・・ではないな?・・・ん?お前・・・
雄輝:あぁ?あっ!!てめぇは・・!?
弘毅:雄輝か!?
雄輝:兄貴!?
川原:兄貴すんません!サツがそっちに・・・って兄貴が二人・・!?
弘毅:お・・お前、親父に引き取られて大阪に居たんじゃ・・・
雄輝:兄貴こそラブホテルにまで何の用なんだよ・・・
桐島:冴島さん!どこいったんですか?
0:廊下から声がする
弘毅:チッ、単刀直入に聞く、お前ら三重島がどこにいるか知ってるか?
雄輝:三重島の旦那?知らねぇな
弘毅:チッ・・・雄輝お前今何してるんだ
雄輝:この腕みりゃ分かんだろ?
0:和彫りの入れ墨を見せる雄輝
弘毅:・・・。三重島組か?
雄輝:ちげぇな
弘毅:そうか。ならいい、詳しく話を聞かせてもらいたい。
0:名刺の裏に自分の家の住所を書く弘毅
弘毅:これは俺の家の住所だ。三日後ウチに来い。
雄輝:あぁ!?いきなりなんだってんだよ!
弘毅:必ず来い。邪魔したな
0:踵を返しすたすたと部屋を出る弘毅
川原:あ、兄貴、どうするんスか?
雄輝:・・・。
0:名刺をじっと見る雄輝
桐島:あ、冴島さん!
弘毅:桐島、すまないな
桐島:いえ、ここのラブホテルに三重島は逃亡を図ってましたか?
弘毅:いやどうやら逃げられたみたいだ。部屋の隅々捜索はしたのだがな。
桐島:そうでしたか・・・また逃げられましたね・・・
弘毅:あぁ・・また報告書を書かないとな
桐島:そうですね。あ、今車を回してきます
弘毅:悪いな。
0:
0:
0:
弘毅:あいつと再会してもう一年が経つというのにいまだに三重島の動向が探れない・・・
雄輝:でよ、次三重島組にドンパチかます時だけどよ?
弘毅:三重島組・・?
0:隣の部屋の壁に近付く弘毅
川原:チャカは旦那が持たせてくれると思います。
川原:11月23日は三重島の旦那の嫁の命日だから一日、組に居ると思います
雄輝:バカ野郎!兄貴が隣に居んだぞ!チャカとか言うな!
川原:す、すんません!
弘毅:11月23日、三重島は組に居る・・・?
0:雄輝の部屋をノックする弘毅
弘毅:雄輝、俺は今から署に戻る。しばらく家を空けるから戸締り忘れずにしろよ
雄輝:あぁ。
弘毅:じゃあな
雄輝:おい兄貴
弘毅:なんだ?
雄輝:さっきの話・・・聞いてたか?
弘毅:話?悪いな。さっきまで疲れて仮眠をとっていたから何も聞いてない
雄輝:・・・。
弘毅:・・・。
0:お互いの目をじっと見合う二人
雄輝:あっそ、ならいい。気を付けて行ってきな
弘毅:あぁ。
川原:兄貴の兄貴!道中お気をつけて!
0:ドアを閉め家を出る弘毅
雄輝:おい、トラ
川原:なんスか兄貴
雄輝:双子ってよ面白いもんでよ?俺と兄貴は一卵性で生まれてな。お互い何年も会ってなかったけどあんだけ顔が同じなんだ。何を考えてるかとか手に取るようにわかるんだ
川原:へぇ?すげぇッスね。
雄輝:さっきの兄貴の目、あれは嘘の目だ
川原:え!?なんでわかんスか!兄貴超能力者ッスか!?
雄輝:後をつけるか
川原:え?
雄輝:後をつけるかって言ってんだ。ほら上着はおれ
川原:あ、はい!
0:スカジャンに袖を通す二人
雄輝:行くぞ
川原:はい!
0:弘毅の乗った車の後を走る川原
雄輝:やっぱサツって金持ってんねぇ?なぁトラ
川原:そッスね。あんな高級車乗って都内走り回るなんて羨ましいッスよ
雄輝:そのまま署に入ったんならまぁ信じる価値はあるがどっかで降りようもんなら兄貴をシメる
川原:あ、普通に警視庁に入っていったスよ
雄輝:チッ!入っていったか・・クソッ。まぁいいやそのままラーメンでも食いに行くかトラ
川原:そッスね!行きましょう!
0:そのまま車を走らせる川原
弘毅:はい、地下二階の資料室への入館許可をお願いします
0:紙に署名する弘毅
弘毅:はい、ありがとうございます。
0:地下の資料室へ入る弘毅
弘毅:三重島に対する資料は・・・あった。ここだ
0:資料を読み進める弘毅
0:
0:
0:一方そのころ
桐島:早く帰って寝ないとなー・・ん?あれは・・・
0:川原と歩く雄輝の姿
桐島:冴島さんだ。声かけよう
0:駆け寄る桐島
桐島:冴島さーん!おーい!冴島さーん!
雄輝:あ?
桐島:冴島さんこんな夜中に会うなんて奇遇ですね!
川原:兄貴?このアマ、知り合いなんスか?
雄輝:あ?いや?知らねぇけど・・・
桐島:兄貴?冴島さん弟さんいらっしゃったんですか?あ、でも全然顔の輪郭とか似てない気が・・・遺伝子の問題かな?
川原:なぁに言ってんだよ俺の名前はなぁ!?かわはっ・・・
0:手で川原を押し下げる雄輝
雄輝:悪いな。こんな出来の悪い弟がいるってなったら仕事に支障をきたすと思ってな
桐島:あ、そうだったんですか!ってあれ?冴島さん風邪引いてますか?
雄輝:あ、いやいたって健康だが?
桐島:声がいつもと違う気が・・・
雄輝:えっ、あ・・んんっ!あーあー・・・少し喉をやってしまってな。のど飴でも買おうとこっちまで来てたんだ
桐島:あ!そうだったんですね!じゃあ喉に効くのど飴が売ってる薬局があるんでそこで仕入れてきますよ!
雄輝:あ、あぁ悪いけど頼めるか?
桐島:はい!そこで待っててください!
雄輝:あ、金だけど・・・
桐島:いえ!いつも助けていただいてますしのど飴くらい後輩の私が出してきます!ではそこのベンチに座って待っててください!
0:駆け出していく桐島
雄輝:はぁ・・行ったか
川原:兄貴!いきなりひでぇじゃねぇっすか!
雄輝:うっせぇバーカ。
川原:あのアマ、兄貴の知り合いッスか?
雄輝:俺じゃねぇよ。多分俺の兄貴の部下だろ
川原:え!?兄貴の兄貴ッスか!?
雄輝:あぁ、兄貴と俺顔一緒だからな。
川原:なるほど・・・ってあのアマ帰ってくるまで待っとくんスか!?ラーメンは!?
雄輝:別にここらのラーメン屋は明け方までやってんだろ。待っててやろうや
川原:マジスか・・けっこう腹減ってんスよ・・・
雄輝:まぁサツの裏事情聞けるしいいじゃねぇか
0:しばらくして
桐島:お待たせしました。こちらのど飴といつも飲んでるコーヒーです
雄輝:のど飴とコーヒーって組み合わせ鬼悪くねぇか?
桐島:そうですか?私全然のど飴食べながらでも飲めますよ
雄輝:あ、あぁ。ありがたく貰っておくよ
桐島:あれ?弟さんは??
雄輝:ちょっと出てる。
桐島:そうだったんですね!あ、あのお疲れのところ申し訳ないのですが少し話してもよろしいですか?
雄輝:話?別にいいよ
桐島:ありがとうございます。次の三重島が現れそうな場所を私なりにピックアップしてみたのですがどうですか?
0:自分の手帳を広げ地図を見せる桐島
雄輝:歌舞伎町、大久保・・・新宿ばっかりだな
桐島:えぇ。この事件に携わってから三重島は新宿から離れていません。となると奴の根城は新宿のどこかにあるかなと思ったんです
雄輝:へぇ・・?あながち間違ってはないな
桐島:え?
雄輝:あいつのシノギは主に新宿のバーやキャバクラ、セクキャバと言ったところだ
雄輝:歌舞伎町は自分のシマと言っても過言じゃねぇだろうな。
桐島:そう・・なんですか?
雄輝:で、三重島組はどこにあるのか知ってるのか?
桐島:三重島組は三か所存在していますよね。うち一か所はもぬけの殻となっていました。確か渋谷区のビル街の中に
雄輝:そうだな。で、残り二つは池袋と練馬。だよな
桐島:え、なぜそれを・・?
雄輝:でも残念だがそこの二つにもいねぇんだな三重島は
桐島:え?すでに行かれたんですか?
0:資料室
弘毅:三重島組の出生は墨田・・・
弘毅:構成員関東で4800人、関西で2300人・・・
弘毅:三重島裕子の告別式・・?
0:当時の新聞のチラシを見る弘毅
弘毅:関東最大指定暴力団三重島組組長三重島大輔の嫁、裕子氏の葬式を荒川にある三重島の隠れ家で行なった・・・
弘毅:荒川・・・?
弘毅:荒川付近にある霊園にて裕子氏の墓を建造。毎年11月23日には荒川にある三重島の隠れ家で一日組員も立ち寄らずその場で過ごしている。
弘毅:ここまで警察は知っているのになぜ三重島の逮捕に動かないんだ・・・
0:とあるベンチ
桐島:荒川ですか・・・?
雄輝:あぁ。荒川の赤い屋根の小さな一軒家で隠れてんだよ
桐島:なぜそれを知っていて冴島さんは動かないんですか!早急に動けば事態は早く収まるはずです!
雄輝:最近知ったんだよ
桐島:最近知った?
雄輝:俺も親父・・あぁいや、知り合いから口伝で聞いてな。で11月23日に乗り込む予定だったんだよ
桐島:それはマル暴としてですか?ご自身の単独で、ですか?
雄輝:そこまでは言えないな。
川原:兄貴ー!
雄輝:おっと、それじゃそろそろ俺は行くわ
桐島:あ、ま、待ってください!
0:ベンチの上にある缶コーヒーを手に取る桐島
桐島:缶コーヒー!忘れてます!
雄輝:俺はブラックより微糖が好きなんだわ。じゃあな
0:その場を去る雄輝
0:
0:
0:しばらくして朝
桐島:おはようございます冴島さん
弘毅:あぁおはよう桐島
桐島:昨日のアレ、本当ですか?
弘毅:昨日のアレ?
桐島:ほら、乗り込むつもりだと仰ってた・・・
弘毅:ッ!?(なんで俺が単独で決めた事を知ってるんだ)
桐島:マル暴に二年いて気付いたんですが、ここの人たち何か握られてると思うんです・・・
弘毅:握られてる?どういうことだ
桐島:いつも乗り込むときに思っていたんですがここの皆さん我々が指揮を執るまでは重い腰をあげようとしないんです
弘毅:・・・まぁそうだな
桐島:もし三重島の所に乗り込む気なら私も連れて行ってください。単独で動くのはかえって危険だと思いますので
弘毅:あ、あぁ。わかった。
桐島:それと、はいコーヒー、ここに置いておきますね
弘毅:あぁ、ありがとう
0:机の上に缶コーヒーを置く桐島
弘毅:ん?桐島
桐島:なんでしょうか
弘毅:今日はブラックじゃないんだな
桐島:えぇ。微糖がお好き。なんでしょう?
弘毅:???まぁいいか
0:缶コーヒーをスーツのポケットに入れる弘毅
0:
0:弘毅の家
弘毅:ただいま。
雄輝:おう、おかえり兄貴
弘毅:あぁ。今日は虎之助居ないんだな
雄輝:毎日べったりくっつかれても気持ち悪いからな。今日は散歩させてんだよ
弘毅:散歩?
雄輝:あぁ。
弘毅:・・・なぁ雄輝
雄輝:なんだよ
弘毅:お前昨日、桐島に会ったか?
雄輝:桐島?誰だよそれ
弘毅:・・・いや、知らないならいい。忘れてくれ
雄輝:・・・。
0:耳にワイヤレスイヤホンをしている雄輝
川原:兄貴!ありました赤い屋根の一軒家
0:スマホの画面はビデオ通話
雄輝:なぁ兄貴、賭けでもしようや
弘毅:警察がチンピラ相手に賭けなんてやるわけないだろう
雄輝:まぁそういうなって。三重島の居場所、突き止めたんだろ?
弘毅:・・・。何のことだ?
雄輝:とぼけんなよ。俺ら腐っても双子だぜ?兄弟の勘が働いたんだよ
弘毅:何年も会ってないお前に兄弟の勘なんて働くわけないだろ
雄輝:つれないねぇ?ま、いいわ。11月23日、兄貴は荒川に居る。違うか?
弘毅:・・・。黙秘権を使う
雄輝:堅苦しいねぇ?ま、いいけどよ。そんで荒川にある三重島の隠れ家へ行き逮捕する。そうだろ?
弘毅:三重島は荒川に隠れ家があるのか?
雄輝:とぼけんなっつってんだよ。どうせそこまで掴んだんだろ?
弘毅:・・・知ってどうする?
雄輝:実はよ、兄貴と別れてから親父は三重島に殺されたんだよ
弘毅:ッ!?本当か・・・?
雄輝:あぁ。親父は大阪で小さな鉄工所で働いていた。俺を大きく育てるためにな。
雄輝:でもある日その鉄工所にヤクザが数名押し入ってきてそこを潰すと言ってきた
雄輝:親父はもちろん自分の働き口がつぶれるのが嫌で必死に抵抗しようとした。
弘毅:・・・それでどうなったんだ
雄輝:実の息子に言わせるなよな。「わからされた」んだよ
弘毅:そんな話おふくろから聞いてないぞ
雄輝:そりゃ離婚してんだ。おかんには伝わらねぇだろうよ。で俺は三重島を殺そうと思ってこっちにトラと乗り込んできたんだ
弘毅:恨みを晴らそうって魂胆か?
雄輝:恨み?ちげぇよ。ただ、世界中に名前の知れ渡ってる三重島がどこの誰かも知らないチンピラに殺されりゃ世界中大賑わいだろ?
弘毅:今の言葉、もし本当ならお前を銃刀法違反、並びに殺人罪で逮捕するぞ
雄輝:本当かどうかは当日楽しみにしておきな。
弘毅:お前の兄として警告してるんだ。
雄輝:俺の兄?はっ!再会してまだ一年足らずの癖に兄貴面してんじゃねぇよ。
弘毅:兄として警察としてお前を叱っているんだ。
雄輝:ま、とにかく当日楽しみにしておきな。じゃあな
弘毅:待て!
雄輝:あ、そうだ。最後にひとつだけ言わせてもらうわ
弘毅:なんだ
雄輝:よくできた先輩を見て育つ後輩は先輩の役に立とうと必死に動き回るもんだぜ。じゃあな
0:家を出る雄輝
弘毅:どういうことだ・・・
弘毅:ッ!?まさか・・!!
0:荒川
桐島:一人で乗り込む勇気はないけど三重島の手がかりさえつかめれば・・・
0:スーツを着た男たちが頭を下げ道を作っている
桐島:あれは・・・
0:そこに一台の車が止まる
三重島:ご苦労さん。
桐島:見つけた・・!
川原:三重島!
桐島:ッ!?
川原:あぁ?お、おいお前あん時の!
桐島:って冴島さんの弟さん!
川原:兄貴の兄貴の舎弟!
桐島:舎弟じゃないです!部下の桐島です!
川原:いや、お前それよりもなんでこんなとこに!?
桐島:それを言ったら貴方もなぜここに!
川原:俺は決まってんだろ!あそこにいる・・・
0:指をさすと人っ子一人いなくなっている
川原:あー!逃げられた!ちくしょう!!
桐島:もしかして貴方も三重島を・・?
川原:貴方もってお前もか!?
桐島:え、えぇそうです!
雄輝:トラ、どうだ?
川原:兄貴!お疲れ様です
桐島:冴島さ・・
雄輝:しー。
0:指で桐島の口を抑える雄輝
雄輝:ここは騒いだら面倒だし喫茶店にでも行くか
0:とある喫茶店
川原:兄貴のは俺が持ってきます
雄輝:悪いな
0:席を外す川原
桐島:冴島さん、貴方・・・
雄輝:いやぁどこから話そうかな。まぁー、まず俺の名前は冴島は冴島だけど弟の雄輝だ
桐島:弟さん・・・本当でしょうか
雄輝:あぁ。免許証みるか?ほらよ
0:免許証を見せる雄輝
桐島:確かに・・弟さ・・いや、雄輝さん。冴島さんからは弟がいると言うのは聞いていませんがどういうことでしょうか
雄輝:まぁ俺と兄貴は幼い時に両親の離婚が原因で離れ離れになったからな。で、一年前にばったり会ったんだよ
桐島:そうなんですか。すみませんが貴方の職業・・もしかして
雄輝:あぁ俺はヤクザだ
桐島:やはり・・・
雄輝:ま、ヤクザっつってもあんたが追ってるような三重島組みたいなんじゃねぇよ。それに俺が入ってんのは関西の組だ。こっちじゃ名前も知られてねぇよ
桐島:ならなぜここに?
雄輝:それは言えねぇな
桐島:女ですが私も警察です。これは事情聴取と思ってください
雄輝:任意だろ?強制でもなけりゃ令状もあるわけじゃねぇ。答える義理はない。そうだろ?
桐島:・・・。
雄輝:ま、一つ言えるなら迷惑をかけにきた。ただそれだけだ。
川原:兄貴、お待たせしました
雄輝:おう、それあの子にあげな
川原:え、いいんスか!?
雄輝:おう、んで俺らはもう行くぞ
川原:え、あ、はい
0:机に二つ飲み物を置く川原
雄輝:じゃあな。これからも兄貴を支えてやってくれ
桐島:ま、待ってください
雄輝:んじゃ
桐島:先日ベンチで話してた内容、あれを冴島さんご自身は知っているんですか・・・?
雄輝:・・・どうだろな
桐島:茶化さないでください!真面目に聞いているんです!
雄輝:それは自分自身で聞けよ。俺が答える筋合いはない
桐島:ですが
川原:長ったらしい話は兄貴嫌いなんだよ。んじゃな。
桐島:待ちなさい!
0:喫茶店を出る二人
0:
0:桐島の電話が鳴る
桐島:もしもし
弘毅:桐島か。お前今どこにいる
桐島:今は喫茶店に居ます
弘毅:一人か
桐島:え、えぇ。今一人になりました
弘毅:今?すまない。少し悪い予感がして電話をしただけだ。何もないんだな
桐島:えぇ。大丈夫です。それよりも冴島さん
弘毅:なんだ
桐島:あ、いえ。なんでもありません
0:
0:雄輝の車の中
川原:兄貴、家に戻らないんスか?
雄輝:あぁ、それよりも23日まであと何日だ?
川原:えーっと今日付変わったんで二日後ッスね
雄輝:二日後か。わかった。この辺のラブホに泊るか。その辺の姉ちゃんはべらせてな
川原:いいッスね!
0:二日後の朝、署の屋外エリア
弘毅:すぅー・・ふぅー・・・
桐島:おはようございます冴島さん
弘毅:あぁおはよう桐島
桐島:・・・いよいよ今日ですね
弘毅:あぁ。三重島さえ逮捕出来りゃ俺はマル暴をやめてもいいと思ってる
桐島:やめてどうするんですか?
弘毅:そうだな・・・しばらくは交通課とかに居ようかな
桐島:ぷっ、あはは
弘毅:笑いごとか?
桐島:マル暴で恐れられてた冴島さんが交通課に行くって考えたら笑えてきました。
弘毅:本気で言ったのにな
桐島:少しこれで緊張がほぐれました。ありがとうございます
弘毅:感謝される事はしてないけどな。
桐島:マル暴が本気で動かない理由がわかりましたよ
弘毅:そうなのか?
桐島:えぇ。杉本課長がここらへんのヤクザから大金を貰ってたんですって
弘毅:杉本課長が?
桐島:えぇ。だから他の事務所は逮捕へ持っていけても三重島だけは許可がおりなかったんです
弘毅:今回の令状は杉本課長を通さずに出して正解だったな
桐島:ですね。
弘毅:さて・・と・・・
0:伸びをする弘毅
弘毅:気を引き締めていくぞ桐島
桐島:はい!
0:とあるビルの空き部屋
川原:兄貴!朝飯持ってきました!
雄輝:おう悪いな
川原:いえいえ!
雄輝:トラ、タバコ
0:タバコを咥える雄輝
川原:はい!
0:火をつける川原
雄輝:すぅー・・ふぅー・・・
雄輝:トラ、そこのソファめくってみろ
川原:俺が座ってるソファですか?
雄輝:あぁ
0:ソファをめくると拳銃が出てくる
川原:チャカじゃないっすか!
雄輝:それで三重島を殺る。
川原:いよいよッスね兄貴
雄輝:あぁ。弾は全部で6発だ。サイレンサーもないから一発撃つたびに近所の奴らが絶対サツに通報する。だからチャンスは一回だ
川原:わかりました。ぜってぇ外さないようにしねぇとッスね
雄輝:すぅー・・・ふぅー・・・
0:銃を手に取る雄輝
雄輝:親父、これが良い事じゃねぇってわかってはいるけどこれは俺なりのケジメだ。許してくれよ
0:その日の夕方
弘毅:いくぞ桐島
桐島:はい!
0:車に乗り込む二人
雄輝:トラ、車出すぞ
川原:うッス!!
0:ビルから降りていく二人
0:
0:荒川
三重島:裕子、一年と言うのはあっという間だな。一緒に一日過ごしたのを昨日のように思い出すよ
0:お線香を焚く三重島
三重島:この時だけは普段の喧騒を忘れられるよ。さてと、日本酒でいいよな裕子。お前昔から日本酒が好きだったもんな。今いれてくるよ
0:荒川
桐島:この辺です。
弘毅:ありがとう。赤い屋根の一軒家に居るらしいな
桐島:はい。手分けして探しますか
0:一台の軽自動車が過ぎるのを見つける弘毅
弘毅:いやいい。こっちだ
桐島:え?冴島さん?
弘毅:こっちにある
桐島:本当ですか!?
0:軽自動車がパーキングに止まる
川原:兄貴、ここら辺ッス
雄輝:あぁ。すまんな
川原:あ、ほらあそこの赤い屋根の家ッスね
雄輝:あぁ。あそこな。
川原:行きますか!
雄輝:あぁ。
0:
弘毅:クソ、見失ったか
桐島:何か見えたんですか
弘毅:あぁ、軽自動車をな
桐島:軽自動車?
弘毅:俺の弟のな
桐島:弟さんの・・!?
0:パンッと発砲音が聞こえる
弘毅:ッ!
桐島:い、今の音って!
弘毅:あっちから聞こえた!行くぞ!!
桐島:はい!!
0:三重島の家
三重島:あ・・あ・・・
0:三重島の足元に弾丸の穴が開く
雄輝:よぉ三重島の旦那。久しぶりだな
三重島:だ、誰だお前は!!
雄輝:思い出してみろよ。この顔に見覚えあんだろ
三重島:どこの組だ!俺に手を出してタダで済むと思ってんのか!!
雄輝:あぁ。どうせお前を殺したら俺も死ぬだけだしな
三重島:ど・・どういうことだ・・!?
0:
弘毅:雄輝!!お前!!
雄輝:よぉ兄貴、遅かったな
弘毅:ッ!三重島・・・!
三重島:さ、サツか!おい!助けろ!こいつが俺を殺そうとしている!
雄輝:兄貴、邪魔すんのか?
弘毅:三重島、お前に令状が出てる。大人しく捕まれ
三重島:あ、あぁ捕まってやる!だからこの男も逮捕しろ!
雄輝:おい、トラ。三重島見張っとけ
川原:うッス
0:銃を下ろし弘毅に近付く雄輝
雄輝:おい兄貴、無視してんじゃねぇよ
弘毅:黙れ。
桐島:さ、冴島さん!
弘毅:桐島、お前は三重島にワッパかけとけ
0:手錠を渡す弘毅
桐島:はい!
0:三重島の方へ近づく桐島
雄輝:兄貴?こいつは俺らの親父を殺した張本人だぜ?生かしておくってのか?
弘毅:だからなんだ。こいつは法の下で裁かれるべき存在だ
雄輝:はっ!血も涙もないねぇ。会わないうちに人の心がなくなったのか?
弘毅:今なら目をつぶっててやる。
雄輝:国のお巡りさんとは思えないセリフをはくじゃねぇか兄貴
弘毅:これは最後の警告だ。銃を下げてここから出て行け
雄輝:・・・。
弘毅:・・・。
0:三重島の方へ歩みを進める雄輝
雄輝:おい三重島の旦那
三重島:な、なんだ
雄輝:大阪にある上本鉄工所って覚えてるか?
三重島:大阪・・あぁ俺が潰した工場だな
雄輝:そこに居た冴島って言う50代の男に聞き覚えはないか?
三重島:知らんな
雄輝:そうか。はぁー・・そうかそうか・・・なんか馬鹿らしくなってきたわ。
0:立ち上がり上を向く雄輝
雄輝:お前にとっては一人殺しただけだもんな
三重島:な、なんだ
雄輝:あの威厳しかなさそうな三重島の旦那がこんなへっぴり腰で床に這いつくばってんの見たら興が冷めたわ。トラ、行くぞ
川原:え!い、いいんスか!?三重島殺んなくて!!
雄輝:おい、トラ見てみろよ。お巡りさんが目の前に居んだぜ?さすがにバカのお前でもわかんだろ
川原:・・で、でも
雄輝:兄貴
0:手を前に出す雄輝
弘毅:何の真似だ
雄輝:見逃すなんてしょうもないマネしてサツのプライド崩すなよ。ほら
弘毅:雄輝・・お前・・・
0:時計の針を見る弘毅
弘毅:冴島雄輝、三重島大輔殺人未遂、並びに銃刀法違反の罪で逮捕する。桐島
桐島:はい!三重島大輔、数多くの罪状をかわし逃亡を図った罪により逮捕する。
0:雄輝の手に手錠がかけられる
雄輝:俺もおふくろの方に行ってたらこんな事しなくてすんだのにな
弘毅:・・・。
三重島:クソ・・なぜ俺に令状が出てるんだ・・クソ・・!!クソが・・!!!
桐島:こちらマル暴桐島、至急荒川に護送車一台用意してください。はい、三重島大輔の逮捕並びに殺人未遂を働いた犯罪者一名逮捕致しました。お願いします。
0:電話を切る桐島
桐島:15分したら到着します冴島さん
弘毅:すまんな
川原:兄貴!俺はどうしたらいいんスか!兄貴!!
雄輝:お前は俺が巻き込んだんだ。大阪戻ってまたオジキに可愛がってもらえよ
川原:俺は兄貴についてきたんスよ!俺もムショ行くッスよ!!
雄輝:ダメだ。お前は大阪に帰れ
川原:兄貴ぃいい!!
0:護送車が到着する
弘毅:お疲れ様です。
0:敬礼する弘毅
弘毅:三重島大輔、そして・・・冴島雄輝の護送お願いいたします
0:連行される二人
雄輝:あ、おい兄貴!
弘毅:なんだ
雄輝:・・・いや、いいわ
弘毅:そうか。ではお願いします
三重島:覚えていろよ冴島!!シャバに戻ったら貴様を殺してやる!!
0:護送車はゆっくりと走っていく
桐島:よかったんですか冴島さん
弘毅:あぁ、無事三重島を逮捕出来た
桐島:違います。弟さんの事です
弘毅:・・・。
桐島:あの場は私しかいませんでしたよ。見逃しても良かったんです
弘毅:昔の俺ならそうしてたかもな。
桐島:この後はどうしますか
弘毅:報告書を書いて杉本課長の事を上に言って課長の座を引きずりおろして懲戒解雇にしてもらうか。ふっ
桐島:冴島さんが笑った顔初めて見ました!
弘毅:笑ってた?俺がか?
桐島:えぇ!今ふふって!
弘毅:気のせいだ。署に戻るぞ
桐島:わかりました。車を持ってきます!
0:タバコに火をつける弘毅
弘毅:すぅー・・ふぅー・・・
0:スーツのポケットに手を入れる弘毅
弘毅:微糖の缶コーヒー・・・
0:一口飲む
弘毅:やっぱり俺はブラックだな。
0:終わり