台本概要

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タイトル 10年ぶりに帰ってきたら父親が…
作者名 のぼライズ  (@tomisan5012_2)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男2、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 10年前、私は母親とケンカをし、自ら家を出て母親から離れる事を決意した。父親は必死に私の腕を掴んで引き止めたが、父の手を振り払い、家を出た。
10年後、結婚報告の為に気まずい雰囲気のまま、実家を訪れたら…私は唖然とした。
※このシナリオを使う際、父親役は覚悟していてください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
タエコ 65 カオルの彼女
カオル 41 タエコの彼氏 劇中少しオカマのシーンあり
お父さん 44 タエコのお父さん。本名「きよし」 劇中7割ぐらいオカマ
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
タエコ:(N)10年前、私はお母さんとケンカをし、自ら家を出てお母さんから離れる事を決意した。お父さんは必死に私の腕を掴んで引き止めたが、すんなりと戻る事も出来ず、掴んでいたお父さんの手を振り払い、濡れたまま、家を出た。 お父さん:「(真面目なテンションで)タエコ!帰ってきなさい!タエコっ!」 タエコ:(N)お父さんが私に何度も名前を呼んで引き止めようとする反面、お母さんは私に顔も見せず、奥へ姿を消した。 0:  タエコ:『10年ぶりに帰ってきたら父親が・・・』 0:  タエコ:(N)あれから10年、私は今付き合っている彼氏と結婚する事になり、今日はそれぞれの実家へ挨拶と結婚報告をしに回っていた。 タエコ:「…10年ぶり…か」 カオル:「ん?何か言った?」 タエコ:「え?あっ、いや何も…気にしないで…」 カオル:「俺の運転で具合悪くなっちゃった…?」 タエコ:「ううん、ちょっと…久しぶりに実家に来たから…緊張しちゃって…」 カオル:「?…そ…そうか、そういえば…あんまりタエちゃんの親御さんの事知らないな…」 タエコ:「あれ、話してなかったっけ?」 カオル:「あれ?話してたっけ…?」 タエコ:「もぉ…カオルくんったら、忘れん坊さんなんだからぁ」 カオル:「あはは…ごめんごめん、どういう親御さんだったっけ?」 タエコ:(N)親の事を言っている口振りだったが、私はあんまりカオルくんに親の話をした事が無い。というより、ケンカして家を出て行ったっきり帰ってないと私が言いづらいだけでもある。これでカオルくんが真相を知り、結婚破棄になったらどうしようと頭を巡る…最初に話すべきだったかなと強く思った。 タエコ:「えっと…お母さんは専業主婦で、お父さんは証券会社の部長だったけど、今は…どうだろう?」 カオル:「えっ、証券会社の部長!?すごいや…そりゃご立派なお嬢さんが生まれる訳だ…はぁ…緊張してきた…手汗が…」 タエコ:「もぉ、カオルくんったらぁ!そんな堅くならないで!」 カオル:「へへ、ごめんごめん」 タエコ:「普段通りで良いのよ!…もう一回言うよ?普段通り!ね?」 カオル:「あ…あぁ!」 タエコ:(N)実際カオルくん以上に私が緊張している。昔から両親共々厳しく、友達と遊んで門限を破った際にお父さんから… お父さん:「(真面目なテンションで)お前はもう他所の子だ、うちの子は約束を破らない子だから。どうしても家に入りたいのなら、一緒に遊んでいたお友達をここに連れてきて、お詫びの一つぐらい私にさせなさい。「うちの子を無理矢理遅くまで連れ回してしまい、申し訳ございません」と…」 タエコ:(N)と言われ…それ以来、私と遊んでいる際の友達の顔は少し顔が引きつっていたり、あとは「私の洗濯物と一緒に洗わないで」と年頃あるあるな事を言った際にも… お父さん:「(真面目なテンションで)じゃあ仮に、私が臭いまま会社に出勤したとしよう。そこで周りや契約先から鼻を摘まれ、スメルハラスメントとして会社をクビになってみろ。この家計が破綻したら、お前のその一言のせいって事になるぞ?」 タエコ:(N)…と言われ、思い出した私でさえも未だに腹が煮え繰る思いだ。それ以来あまりお父さんと関わらなくなったのもそこから…かな… カオル:「?…タエコ?何でまた眉を顰(しか)めてるの?」 タエコ:「え?あぁ…いや、何も…」 カオル:「まぁいいか、もう玄関前だけど…チャイム鳴らすよ?」 タエコ:「え、あぁ…うん…」 タエコ:(N)チャイムが鳴る。奥からお父さんの声がした、正直ここから逃げ出したい気持ち。出ていってから何件も実家から電話が来ており、それが嫌で嫌で…電話番号ごと変えてやった。そんな娘が10年ぶりに帰ってきて、その上結婚報告とおまけが付く。お父さんは何と言うか… お父さん:「(タエコの中のお父さんのイメージ)うちには子供はいません。お引き取りを」 タエコ:(N)少なくとも私の中のイメージはこうである。曲がった事を嫌う神経質なお父さんの事だから私の事なんて… カオル:「は…初めまして!あ…タエコさんとお付き合いをさせて頂いているカオルと申しま…す…え?」 タエコ:「え?」 お父さん:「(オカマっぽく)あらあなた良い男じゃないのぉ!うちの娘よりあたしとどうよぉ?」 カオル:「あ…あぁ…あのぉ…」 お父さん:「(オカマっぽく)あらそんな震えてどうしたのかしら?寒いのかしら?ならあたしが脱いで、人肌で温めて…あ・げ…」 カオル:「(遮るように)いやいやいやいやいやいや結構です結構です結構ですぅっ!!!」 タエコ:「え…えぇ!?」 タエコ:(N)誰誰誰っ!?えっ、誰!?この人誰!?何で口紅塗ってるの!?何でツケマしてるの!?何で瞼にブルーアイシャドウ塗ってるの!?そして何なのその寒そうなへそ出し衣装!? カオル:「ちょっ!?タエちゃん、何とかして!」 タエコ:「落ち着け落ち着け…うん、これは夢だ!正(まさ)しく夢だ!」 カオル:「ねぇ!現実逃避しないで!これ現実だから!これ現実!」 タエコ:「そうだよ、これはカオルくんの荒い運転で気持ち悪くなっちゃって横になっている時に見ている夢だよ!そうだ、これは夢だ!」 カオル:「やっぱ俺の運転で気持ち悪くなってるじゃん!」 タエコ:「さぁタエコ、お目覚めの時間だよ!(自分の頬を叩く)イッタい!現実を見よ!きっとお父さんはこんな人だったはずだ!」 お父さん:「(タエコの中のお父さんのイメージ)ブツブツ言ってないで…言いたい事があるならば、この目を見て堂々と大きな声でハッキリ言ったらどうなんだね!」 タエコ:「そうそう、これこそ私の記憶の中のお父さん…」 お父さん:「(遮るようにオカマっぽく)あらやぁだ!タエちゃん、ファンデの塗りが少し甘いわよぉ?」 タエコ:(N)ファァァァァ!!現実におかえり!タエコマイミー! カオル:「とにかくお義父さん!服を着てください…あっ、すごい筋肉質な良い体…じゃなくて!服を着てください!」 タエコ:「服というより、せめて上着を羽織ってよ…恥ずかしいから…」 お父さん:「(オカマっぽく)もぉみんな恥ずかしがり屋ね!あぁ、さては君!あたしの半裸で興奮してるんでしょぉ!」 カオル:「違いますよ!…少しはその筋肉分けて欲しいなと思うますけども…じゃなくて!ちゃんと上着を羽織ってくださいよ、お義父さん」 お父さん:「(真面目なテンションで)君にお義父さんと言われる筋合いは無いよ」 カオル:「!?…す…すみません」 タエコ:(N)はぁ、やっとお父さんが元に戻った…これが私の思うお父さんだ… お父さん:「(オカマっぽく)お義父さんじゃなくてぇ…きーちゃんって呼んで欲しいな!」 タエコ:「きっ!?」 カオル:「きーちゃん…?」 お父さん:「(オカマっぽく)あら、良い声で呼んで!ほぉらもっと!せーのっ!きーちゃんって!」 タエコ:(N)やっぱ戻ってきたぁ!きよしのきーちゃん!そして戻ってこい、カムバックファーザー! カオル:「きーちゃーん!きーちゃーん!」 お父さん:「(オカマっぽく投げキッス)んーまっ♡」 カオル:「わぁー!きーちゃーん!」 タエコ:「カオルくん!?そんな沼にハマらないで!…って、あれ?」 タエコ:(N)そういや、お母さんはどこ?お母さんこそお父さんの抑止力なのに…あれ? タエコ:「待って!お母さんは!?」 お父さん:「(素に戻る)母さんか?母さんはな…」 タエコ:「いや、言いづらいなら言わなくていいよ。今の現状で大体はお察しでき…」 お父さん:「(オカマっぽく)ふふ、渡米したわよぉ?」 カオル:「え、とべ…」 タエコ:「渡米!?何でぇ!?」 お父さん:「(オカマっぽく)いやねぇ、お母さんは元々メイクアップアーティストでね?」 タエコ:「その情報自体初めて聞くんだけど!?」 お父さん:「(オカマっぽく)お母さん、あたしのメイクをしている時にね?急に「もっと腕を磨きたい」って言った次の日に渡米したわよ」 タエコ:「いや、行動力の鬼」 カオル:「(オカマっぽく)やぁだ〜タエちゃんのママ、すごいんだからぁ」 タエコ:「次やったら婚約破棄ね?」 カオル:「ごめん、つい染まりました」 タエコ:「ついって何!?オカマってふとしたら感染する感染症なの!?うーわっ、こわっ…」 お父さん:「(オカマっぽく)あらあなた、センスありありねぇ?」 タエコ:「勧誘しないの!んで、いつ渡米したの?」 お父さん:「(オカマっぽく)そうねぇ、1週間前ってとこかしら?」 タエコ:「えぇ!?ほんっと最近じゃん!?」 お父さん:「(オカマっぽく)あなたが来るから待ってって言ったんだけどねぇ?いや、あたしちゃんと待ってって言ったのよ?そしたら…ねぇ?」 タエコ:「ねぇ?じゃなくて!…でもまだ、私はお母さんとまだ言っていい関係だよね?」 お父さん:「(オカマっぽく)もちろんよ!あたしとお母さんは別れたりしないわよぉ!」 タエコ:「十分に別れてもおかしくはないけどね!物分かりの良いお母さんだこと…」 カオル:「(オカマっぽく)あらやだぁ、タエちゃ…(素に戻る)タエちゃん、そろそろ時間だよ」 タエコ:「何か出てかけたよね?」 カオル:「いや、つい…」 タエコ:「だから、ついって何!?」 タエコ:(N)いやいや、結婚報告出来てないまま時間来たの!?でもまぁ、カオルくんがオカマに染まる前に退散したいが…どうしても消化しきれてない事が1つ… タエコ:「お父さん…」 お父さん:「(オカマっぽく)こーらっ!お父さんじゃなくて、きーちゃんよ?」 タエコ:「お父さん、何でオカマになっちゃったの?」 お父さん:「(素に戻る)…」 タエコ:「昔は正反対で冗談も通じなく、どんな些細な事でも許さなかった厳しいお父さんが…何で…何でこうなったのよ…」 カオル:「タ…タエちゃん…」 タエコ:「昔のお父さんは嫌いだったけども、今のお父さんの方が…よっぽど、だいっ嫌いだよ!」 カオル:「タエちゃん…もう止そう?」 お父さん:「…そうか、タエコは今のお父さんが嫌いか?」 タエコ:「えぇ…えぇ、そうよ!だいっ嫌いよ!」 お父さん:「そうか…でもなタエコ、これが本当の…お父さんなんだ…」 タエコ:「…?」 お父さん:「タエコには言ってなかったが、お父さんは昔、歓楽街イチ有名なオカマバーのナンバー1だったんだ…」 タエコ:「え、そうなの!?」 お父さん:「その時メイク担当として雇っていたのが、今の母さんなんだ。母さんな、父さんの頬を指でなぞってこう言ったの…「これが私の追い求めていたファンデのキャンバスだわ」って。後で聞いたら、それが母さん流のプロポーズだったのよ」 タエコ:「何ともまぁ、独特な…」 お父さん:「それから結婚して、何やかんやでタエコが出来たのよ」 カオル:「何やかんやの部分はさすがに言えないですよね」 お父さん:「だけどね…これでタエコが生まれて、学生やそれから先の社会人になった時、お父さんがオカマで虐められたりとかするだろうなって…世間体からしておかしいわよね?オカマのお父さんなんて…おかしいって…そう思ったのよ」 タエコ:「お父さん…」 お父さん:「お父さん…しっかり世間体の波に乗れるお父さんを目指して、勉強して一流の企業に就職して、これで立派なお父さんになれたと思ってた。でもね、歳を老いて出来た子どもだったから…あまりに可愛くて可愛くて、それと反比例するかのように、タエコに厳しくなっちゃってな…ごめんな」 カオル:「獅子の子落とし…ですか」 タエコ:「カオルくん、多分それ違う。あと黙ってて」 お父さん:「タエコが出て行ってから10年。帰ってくるって知った時、お母さんと相談したんだ…昔のお父さんのままでいいのかと…そしたら母さんな…こう言ったんだ…「また会えなくなるぐらいならいっそ、嘘の色で塗り潰したキャンバスを破いてしまえ」って言って、渡米する前にあたしにメイクを教えて今に至るのよ」 タエコ:「…おかしいよ」 カオル:「タ…タエちゃん…?」 タエコ:「私が生まれる前からオカマ?私が生まれるから世間体のお父さんになった?ふざけないでよ!私が生まれるから何よ!そんなの、ただの言い訳にしかならないのよ!」 お父さん:「だ…だが、そう甘くは…」 タエコ:「えぇそうよ、世間体で考えればそんな甘くないと思うわ!でもね、世間体を気にするぐらいなら…そんな…そんな個性なんか捨ててしまえ!」 お父さん:「!?」 カオル:「タエちゃん、それ言い過ぎ!」 タエコ:「もし私が生まれた時から既にお父さんがオカマなら、胸張って言ってやるわよ!私のお父さんは、オカマであるからこそ私のお父さんだ!って。そうでしょ?本当の個性って、自分がずっと持っている唯一無二の物じゃない?違う?」 お父さん:「いや…そんな綺麗事は…通用しないんだよ…それにさっき、嫌いって…」 タエコ:「事実を知らなかったからそう言っただけ。でも、前言撤回してやるわよ!」 タエコ:「白い目で見られたって構わない、どうだっていい…だって、私のお父さんは!唯一無二の!オカマの!お父さんだから!」 お父さん:「(鼻をすする)」 カオル:「お義父さん?」 お父さん:「(咳払いしてオカマっぽく)…やーねぇ、せっかくのメイクが台無しになっちゃったわ」 タエコ:「うん…あっ、それからね!お父さん…」 お父さん:「(オカマっぽく)?…何かしら?」 タエコ:「私達、結婚するの」 カオル:「結婚させてください…」 お父さん:「(オカマっぽく)ふふ…あたしよりブサイクだけど、それでもいいならくれてやるわよ!」 タエコ:「ブサイク…」 カオル:「ありがとうございます!お義父さ…あっ、きーちゃん!」 タエコ:「ブサイク…あっ!」 カオル:「え、急にどうしたの!?」 お父さん:「(オカマっぽく)あらタエちゃん、どーしたの?」 タエコ:「いや、実は…お母さんとケンカした原因を思い出して…」 カオル:「うん」 お父さん:「うん」 タエコ:「私の初デートの時にしたメイクがあまりにもブサイクで水掛けられてさ、せっかく気合い入れて時間掛けてメイクしたのを崩されて…それで…」 カオル:「え、そんな事あったの?」 タエコ:「あっ、言ってなかったよね…」 お父さん:「(素に戻る)…タエコ」 タエコ:「あっ…その…」 お父さん:「まぁ過ぎた事だ」 タエコ:「ごめんね、心配掛けて」 お父さん:「(オカマっぽく)その代わり、今履いてる彼のパンツをくれるなら…ね?」 タエコ:「だってさ?ほらカオルくん…脱ぎな?」 カオル:「何の追い剥ぎ!?」 お父さん:「(オカマっぽく)あら、脱がないのならあたしが脱がせてあ・げ・るぅ!」 カオル:「いや何なの!?この山賊家庭はぁぁぁぁぁあ!!!」

タエコ:(N)10年前、私はお母さんとケンカをし、自ら家を出てお母さんから離れる事を決意した。お父さんは必死に私の腕を掴んで引き止めたが、すんなりと戻る事も出来ず、掴んでいたお父さんの手を振り払い、濡れたまま、家を出た。 お父さん:「(真面目なテンションで)タエコ!帰ってきなさい!タエコっ!」 タエコ:(N)お父さんが私に何度も名前を呼んで引き止めようとする反面、お母さんは私に顔も見せず、奥へ姿を消した。 0:  タエコ:『10年ぶりに帰ってきたら父親が・・・』 0:  タエコ:(N)あれから10年、私は今付き合っている彼氏と結婚する事になり、今日はそれぞれの実家へ挨拶と結婚報告をしに回っていた。 タエコ:「…10年ぶり…か」 カオル:「ん?何か言った?」 タエコ:「え?あっ、いや何も…気にしないで…」 カオル:「俺の運転で具合悪くなっちゃった…?」 タエコ:「ううん、ちょっと…久しぶりに実家に来たから…緊張しちゃって…」 カオル:「?…そ…そうか、そういえば…あんまりタエちゃんの親御さんの事知らないな…」 タエコ:「あれ、話してなかったっけ?」 カオル:「あれ?話してたっけ…?」 タエコ:「もぉ…カオルくんったら、忘れん坊さんなんだからぁ」 カオル:「あはは…ごめんごめん、どういう親御さんだったっけ?」 タエコ:(N)親の事を言っている口振りだったが、私はあんまりカオルくんに親の話をした事が無い。というより、ケンカして家を出て行ったっきり帰ってないと私が言いづらいだけでもある。これでカオルくんが真相を知り、結婚破棄になったらどうしようと頭を巡る…最初に話すべきだったかなと強く思った。 タエコ:「えっと…お母さんは専業主婦で、お父さんは証券会社の部長だったけど、今は…どうだろう?」 カオル:「えっ、証券会社の部長!?すごいや…そりゃご立派なお嬢さんが生まれる訳だ…はぁ…緊張してきた…手汗が…」 タエコ:「もぉ、カオルくんったらぁ!そんな堅くならないで!」 カオル:「へへ、ごめんごめん」 タエコ:「普段通りで良いのよ!…もう一回言うよ?普段通り!ね?」 カオル:「あ…あぁ!」 タエコ:(N)実際カオルくん以上に私が緊張している。昔から両親共々厳しく、友達と遊んで門限を破った際にお父さんから… お父さん:「(真面目なテンションで)お前はもう他所の子だ、うちの子は約束を破らない子だから。どうしても家に入りたいのなら、一緒に遊んでいたお友達をここに連れてきて、お詫びの一つぐらい私にさせなさい。「うちの子を無理矢理遅くまで連れ回してしまい、申し訳ございません」と…」 タエコ:(N)と言われ…それ以来、私と遊んでいる際の友達の顔は少し顔が引きつっていたり、あとは「私の洗濯物と一緒に洗わないで」と年頃あるあるな事を言った際にも… お父さん:「(真面目なテンションで)じゃあ仮に、私が臭いまま会社に出勤したとしよう。そこで周りや契約先から鼻を摘まれ、スメルハラスメントとして会社をクビになってみろ。この家計が破綻したら、お前のその一言のせいって事になるぞ?」 タエコ:(N)…と言われ、思い出した私でさえも未だに腹が煮え繰る思いだ。それ以来あまりお父さんと関わらなくなったのもそこから…かな… カオル:「?…タエコ?何でまた眉を顰(しか)めてるの?」 タエコ:「え?あぁ…いや、何も…」 カオル:「まぁいいか、もう玄関前だけど…チャイム鳴らすよ?」 タエコ:「え、あぁ…うん…」 タエコ:(N)チャイムが鳴る。奥からお父さんの声がした、正直ここから逃げ出したい気持ち。出ていってから何件も実家から電話が来ており、それが嫌で嫌で…電話番号ごと変えてやった。そんな娘が10年ぶりに帰ってきて、その上結婚報告とおまけが付く。お父さんは何と言うか… お父さん:「(タエコの中のお父さんのイメージ)うちには子供はいません。お引き取りを」 タエコ:(N)少なくとも私の中のイメージはこうである。曲がった事を嫌う神経質なお父さんの事だから私の事なんて… カオル:「は…初めまして!あ…タエコさんとお付き合いをさせて頂いているカオルと申しま…す…え?」 タエコ:「え?」 お父さん:「(オカマっぽく)あらあなた良い男じゃないのぉ!うちの娘よりあたしとどうよぉ?」 カオル:「あ…あぁ…あのぉ…」 お父さん:「(オカマっぽく)あらそんな震えてどうしたのかしら?寒いのかしら?ならあたしが脱いで、人肌で温めて…あ・げ…」 カオル:「(遮るように)いやいやいやいやいやいや結構です結構です結構ですぅっ!!!」 タエコ:「え…えぇ!?」 タエコ:(N)誰誰誰っ!?えっ、誰!?この人誰!?何で口紅塗ってるの!?何でツケマしてるの!?何で瞼にブルーアイシャドウ塗ってるの!?そして何なのその寒そうなへそ出し衣装!? カオル:「ちょっ!?タエちゃん、何とかして!」 タエコ:「落ち着け落ち着け…うん、これは夢だ!正(まさ)しく夢だ!」 カオル:「ねぇ!現実逃避しないで!これ現実だから!これ現実!」 タエコ:「そうだよ、これはカオルくんの荒い運転で気持ち悪くなっちゃって横になっている時に見ている夢だよ!そうだ、これは夢だ!」 カオル:「やっぱ俺の運転で気持ち悪くなってるじゃん!」 タエコ:「さぁタエコ、お目覚めの時間だよ!(自分の頬を叩く)イッタい!現実を見よ!きっとお父さんはこんな人だったはずだ!」 お父さん:「(タエコの中のお父さんのイメージ)ブツブツ言ってないで…言いたい事があるならば、この目を見て堂々と大きな声でハッキリ言ったらどうなんだね!」 タエコ:「そうそう、これこそ私の記憶の中のお父さん…」 お父さん:「(遮るようにオカマっぽく)あらやぁだ!タエちゃん、ファンデの塗りが少し甘いわよぉ?」 タエコ:(N)ファァァァァ!!現実におかえり!タエコマイミー! カオル:「とにかくお義父さん!服を着てください…あっ、すごい筋肉質な良い体…じゃなくて!服を着てください!」 タエコ:「服というより、せめて上着を羽織ってよ…恥ずかしいから…」 お父さん:「(オカマっぽく)もぉみんな恥ずかしがり屋ね!あぁ、さては君!あたしの半裸で興奮してるんでしょぉ!」 カオル:「違いますよ!…少しはその筋肉分けて欲しいなと思うますけども…じゃなくて!ちゃんと上着を羽織ってくださいよ、お義父さん」 お父さん:「(真面目なテンションで)君にお義父さんと言われる筋合いは無いよ」 カオル:「!?…す…すみません」 タエコ:(N)はぁ、やっとお父さんが元に戻った…これが私の思うお父さんだ… お父さん:「(オカマっぽく)お義父さんじゃなくてぇ…きーちゃんって呼んで欲しいな!」 タエコ:「きっ!?」 カオル:「きーちゃん…?」 お父さん:「(オカマっぽく)あら、良い声で呼んで!ほぉらもっと!せーのっ!きーちゃんって!」 タエコ:(N)やっぱ戻ってきたぁ!きよしのきーちゃん!そして戻ってこい、カムバックファーザー! カオル:「きーちゃーん!きーちゃーん!」 お父さん:「(オカマっぽく投げキッス)んーまっ♡」 カオル:「わぁー!きーちゃーん!」 タエコ:「カオルくん!?そんな沼にハマらないで!…って、あれ?」 タエコ:(N)そういや、お母さんはどこ?お母さんこそお父さんの抑止力なのに…あれ? タエコ:「待って!お母さんは!?」 お父さん:「(素に戻る)母さんか?母さんはな…」 タエコ:「いや、言いづらいなら言わなくていいよ。今の現状で大体はお察しでき…」 お父さん:「(オカマっぽく)ふふ、渡米したわよぉ?」 カオル:「え、とべ…」 タエコ:「渡米!?何でぇ!?」 お父さん:「(オカマっぽく)いやねぇ、お母さんは元々メイクアップアーティストでね?」 タエコ:「その情報自体初めて聞くんだけど!?」 お父さん:「(オカマっぽく)お母さん、あたしのメイクをしている時にね?急に「もっと腕を磨きたい」って言った次の日に渡米したわよ」 タエコ:「いや、行動力の鬼」 カオル:「(オカマっぽく)やぁだ〜タエちゃんのママ、すごいんだからぁ」 タエコ:「次やったら婚約破棄ね?」 カオル:「ごめん、つい染まりました」 タエコ:「ついって何!?オカマってふとしたら感染する感染症なの!?うーわっ、こわっ…」 お父さん:「(オカマっぽく)あらあなた、センスありありねぇ?」 タエコ:「勧誘しないの!んで、いつ渡米したの?」 お父さん:「(オカマっぽく)そうねぇ、1週間前ってとこかしら?」 タエコ:「えぇ!?ほんっと最近じゃん!?」 お父さん:「(オカマっぽく)あなたが来るから待ってって言ったんだけどねぇ?いや、あたしちゃんと待ってって言ったのよ?そしたら…ねぇ?」 タエコ:「ねぇ?じゃなくて!…でもまだ、私はお母さんとまだ言っていい関係だよね?」 お父さん:「(オカマっぽく)もちろんよ!あたしとお母さんは別れたりしないわよぉ!」 タエコ:「十分に別れてもおかしくはないけどね!物分かりの良いお母さんだこと…」 カオル:「(オカマっぽく)あらやだぁ、タエちゃ…(素に戻る)タエちゃん、そろそろ時間だよ」 タエコ:「何か出てかけたよね?」 カオル:「いや、つい…」 タエコ:「だから、ついって何!?」 タエコ:(N)いやいや、結婚報告出来てないまま時間来たの!?でもまぁ、カオルくんがオカマに染まる前に退散したいが…どうしても消化しきれてない事が1つ… タエコ:「お父さん…」 お父さん:「(オカマっぽく)こーらっ!お父さんじゃなくて、きーちゃんよ?」 タエコ:「お父さん、何でオカマになっちゃったの?」 お父さん:「(素に戻る)…」 タエコ:「昔は正反対で冗談も通じなく、どんな些細な事でも許さなかった厳しいお父さんが…何で…何でこうなったのよ…」 カオル:「タ…タエちゃん…」 タエコ:「昔のお父さんは嫌いだったけども、今のお父さんの方が…よっぽど、だいっ嫌いだよ!」 カオル:「タエちゃん…もう止そう?」 お父さん:「…そうか、タエコは今のお父さんが嫌いか?」 タエコ:「えぇ…えぇ、そうよ!だいっ嫌いよ!」 お父さん:「そうか…でもなタエコ、これが本当の…お父さんなんだ…」 タエコ:「…?」 お父さん:「タエコには言ってなかったが、お父さんは昔、歓楽街イチ有名なオカマバーのナンバー1だったんだ…」 タエコ:「え、そうなの!?」 お父さん:「その時メイク担当として雇っていたのが、今の母さんなんだ。母さんな、父さんの頬を指でなぞってこう言ったの…「これが私の追い求めていたファンデのキャンバスだわ」って。後で聞いたら、それが母さん流のプロポーズだったのよ」 タエコ:「何ともまぁ、独特な…」 お父さん:「それから結婚して、何やかんやでタエコが出来たのよ」 カオル:「何やかんやの部分はさすがに言えないですよね」 お父さん:「だけどね…これでタエコが生まれて、学生やそれから先の社会人になった時、お父さんがオカマで虐められたりとかするだろうなって…世間体からしておかしいわよね?オカマのお父さんなんて…おかしいって…そう思ったのよ」 タエコ:「お父さん…」 お父さん:「お父さん…しっかり世間体の波に乗れるお父さんを目指して、勉強して一流の企業に就職して、これで立派なお父さんになれたと思ってた。でもね、歳を老いて出来た子どもだったから…あまりに可愛くて可愛くて、それと反比例するかのように、タエコに厳しくなっちゃってな…ごめんな」 カオル:「獅子の子落とし…ですか」 タエコ:「カオルくん、多分それ違う。あと黙ってて」 お父さん:「タエコが出て行ってから10年。帰ってくるって知った時、お母さんと相談したんだ…昔のお父さんのままでいいのかと…そしたら母さんな…こう言ったんだ…「また会えなくなるぐらいならいっそ、嘘の色で塗り潰したキャンバスを破いてしまえ」って言って、渡米する前にあたしにメイクを教えて今に至るのよ」 タエコ:「…おかしいよ」 カオル:「タ…タエちゃん…?」 タエコ:「私が生まれる前からオカマ?私が生まれるから世間体のお父さんになった?ふざけないでよ!私が生まれるから何よ!そんなの、ただの言い訳にしかならないのよ!」 お父さん:「だ…だが、そう甘くは…」 タエコ:「えぇそうよ、世間体で考えればそんな甘くないと思うわ!でもね、世間体を気にするぐらいなら…そんな…そんな個性なんか捨ててしまえ!」 お父さん:「!?」 カオル:「タエちゃん、それ言い過ぎ!」 タエコ:「もし私が生まれた時から既にお父さんがオカマなら、胸張って言ってやるわよ!私のお父さんは、オカマであるからこそ私のお父さんだ!って。そうでしょ?本当の個性って、自分がずっと持っている唯一無二の物じゃない?違う?」 お父さん:「いや…そんな綺麗事は…通用しないんだよ…それにさっき、嫌いって…」 タエコ:「事実を知らなかったからそう言っただけ。でも、前言撤回してやるわよ!」 タエコ:「白い目で見られたって構わない、どうだっていい…だって、私のお父さんは!唯一無二の!オカマの!お父さんだから!」 お父さん:「(鼻をすする)」 カオル:「お義父さん?」 お父さん:「(咳払いしてオカマっぽく)…やーねぇ、せっかくのメイクが台無しになっちゃったわ」 タエコ:「うん…あっ、それからね!お父さん…」 お父さん:「(オカマっぽく)?…何かしら?」 タエコ:「私達、結婚するの」 カオル:「結婚させてください…」 お父さん:「(オカマっぽく)ふふ…あたしよりブサイクだけど、それでもいいならくれてやるわよ!」 タエコ:「ブサイク…」 カオル:「ありがとうございます!お義父さ…あっ、きーちゃん!」 タエコ:「ブサイク…あっ!」 カオル:「え、急にどうしたの!?」 お父さん:「(オカマっぽく)あらタエちゃん、どーしたの?」 タエコ:「いや、実は…お母さんとケンカした原因を思い出して…」 カオル:「うん」 お父さん:「うん」 タエコ:「私の初デートの時にしたメイクがあまりにもブサイクで水掛けられてさ、せっかく気合い入れて時間掛けてメイクしたのを崩されて…それで…」 カオル:「え、そんな事あったの?」 タエコ:「あっ、言ってなかったよね…」 お父さん:「(素に戻る)…タエコ」 タエコ:「あっ…その…」 お父さん:「まぁ過ぎた事だ」 タエコ:「ごめんね、心配掛けて」 お父さん:「(オカマっぽく)その代わり、今履いてる彼のパンツをくれるなら…ね?」 タエコ:「だってさ?ほらカオルくん…脱ぎな?」 カオル:「何の追い剥ぎ!?」 お父さん:「(オカマっぽく)あら、脱がないのならあたしが脱がせてあ・げ・るぅ!」 カオル:「いや何なの!?この山賊家庭はぁぁぁぁぁあ!!!」