台本概要

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タイトル 3つの大福
作者名 のぼライズ  (@tomisan5012_2)
ジャンル 童話
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 この物語は、いたずら大好きウサギさんと、いたずらから守るおじいさんの童話風シナリオです。
読み手は「おじいさん」、「ウサギ」、「タヌキ」、「ナレーション」をお願いします。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り手 不問 - ナレーション、おじいさん、ウサギ、タヌキの4役。 子どもに病み聞かせるようなイメージで作ってると思いたいです
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:  ナレーション:『3つの大福』 0:  ナレーション:昔々…とあるところに、とても仲の良い老夫婦がおりました。その老夫婦は、毎日のように畑を耕しては、野菜を育てておりました。 おじいさん:「おばあさんや、ちょいとここらで休憩しようか?」 ナレーション:おじいさんは、おばあさんと一緒に川辺でおにぎりを食べていた時、後ろからおにぎりを取られてしまいました。 ウサギ:「へへーん、このおにぎりはオイラが貰ったぞ!」 おじいさん:「なっ!このウサギめ!それは、ばあさんの作ってくれたおにぎりじゃぞ?」 ウサギ:「へっ!だから何だってんだ!そぉれ、1つもーらい!」 ナレーション:ウサギは、奪ったおにぎりの内の1つを、ポーンと口へ放り込みました。 おじいさん:「コラ!返しなさい!バカウサギっ!」 ウサギ:「ん…ぺっ!こんなしょっぺぇおにぎりなんて、食えたもんじゃねぇな!」 おじいさん:「何をぉ!?このウサギめ!鍋にして食ってやろかっ!」 ナレーション:ウサギさんとおじいさんが言い争っているのを、おばあさんはただひたすら、ニコニコ笑って見ておりました。 0:  ナレーション:それからしばらく経った頃。ウサギさんは、仲の良いタヌキくんを連れて、いつものイタズラを仕掛けに山を降りてきました。 タヌキ:「ポポン、またイタズラを仕掛けに行くのかい?」 ウサギ:「当たり前だろ?オイラの生き甲斐は、人間を困らせる事だからさ!」 タヌキ:「ポォーン…怒られるの、僕は嫌だな…」 ナレーション:そんな事を言っていると、おじいさんの姿が見えました。 ウサギ:「占めたっ!ほら、困らせ甲斐のあるおじいさんだ!」 タヌキ:「ポォーン…だから困らせたくは無いポン…」 ウサギ:「つべこべ言わずに行くんだよ!ほら」 タヌキ:「ポォン!?お、押さないでよ!ポポォン!!」 ナレーション:タヌキくんは、ウサギさんに押され、おじいさんの元へ転がり込みました。 おじいさん:「あぁ…タヌキさんや…」 タヌキ:「ポォン?」 ナレーション:ウサギさんは思いました。おじいさんの元気が無い事に。 ウサギ:「タヌキくん、もう行こう」 タヌキ:「ポン?イタズラは?どうするポン?」 ウサギ:「良いから…行こう」 タヌキ:「ポン?」 ナレーション:タヌキくんはウサギさんに手を引かれ、山へ戻って行きました。ウサギさんはふと後ろを振り向き、おじいさんを見ました。おじいさんはタヌキくん、ウサギさんへ手を振っていました。 ウサギ:「チッ、つまんねーの」 0:  ナレーション:真っ暗い夜、ウサギさんは誰も連れ出す事なく、自分だけで山を降りてきました。 ウサギ:「こうなりゃ、畑を荒らして目を引いてやるんだ!」 ナレーション:ところが、ウサギさんの見た畑は、前の手入れが行き届いた畑とは、懸け離れたものになっておりました。 ウサギ:「おじいさん…どうしちまったんだよ…」 ナレーション:ウサギさんはしょんぼりとしてしまいました。ウサギさんの頭の中では、元気だったおじいさんの声が飛び交ってました。 おじいさん:「こりゃ、なーにをやっとるんだ!」 おじいさん:「こりゃウサギ!待たんや!」 ナレーション:今はもう聞けないとなると、ウサギさんは目に涙が溜まりそうになります。と、トボトボと歩くおじいさんの姿が、潤んだ目に入りました。 ウサギ:「おじいさん…」 ナレーション:おじいさんは、石が2段積まれたその下に、何かを置き、去って行きました。ウサギさんは、おじいさんが去ったのを確認し、置かれた何かを確認しに行きました。 ウサギ:「大福だ…でも、何で?」 ナレーション:ウサギさんは思います。ここに何で大福を?そもそも、ここにこんな石があったのか?…と。ですが、それと同時に閃きました。 ウサギ:「シメシメ…この大福を、食っちまおう」 ナレーション:ウサギさんは、そのお供えされていた1つの大福を、大きな一口で頬張り、山へ戻って行きました。 0:  ナレーション:翌日の晩、ウサギさんはタヌキくんを連れて、山を降りてきました。 タヌキ:「ポォン…眠たいよぉ…ポォーン」 ウサギ:「うるさい!お前、ご馳走食べたくないのか?」 タヌキ:「ポン?ご馳走?」 ウサギ:「大福だよ!大福!」 タヌキ:「ポォン!大福!僕大好きだポン!」 ウサギ:「だろ?だから早く行こうぜ!」 ナレーション:ウサギさんとタヌキくんは、ルンルンで大福がお供えしてあるところへ向かいました。 タヌキ:「ウ…ウサギくん!まさか、このお供えしてある大福の事なのポン?」 ウサギ:「え…う…うん…」 ナレーション:ウサギさんは、1つの大福を半分こし、タヌキくんと食べるはずでした。ですが、今日お供えしている大福は2つでした。 タヌキ:「まさかウサギくん…この大福、僕とウサギくんで1つずつで食べるポン?」 ウサギ:「え?…あぁ…あぁそうだとも!」 タヌキ:「ポォーン!ダメだよ!それじゃ、このお供えされた分が無いじゃないか!」 ウサギ:「嫌なら、オイラが2つ食べちゃお!」 ナレーション:ウサギさんは、お供えされた大福2つを、大きな口へ頬張りました。 タヌキ:「ポォーン…だからダメだってば…」 0:  ナレーション:そのまた翌日の晩、またウサギさんはタヌキくんを連れ、大福のところまで来ました。ですが、大福はお供えされていませんでした。 ウサギ:「あれ?無いな…誰かに先に食べられたかな?」 タヌキ:「昨日、ウサギくんが食べたからだポン!そりゃ無いに決まってるポン!」 ナレーション:ウサギさんとタヌキくんが立ちぼうけしている時、後ろから声を掛けられました。 おじいさん:「こりゃ…そこで何をしておるか…」 タヌキ:「ポンっ!?」 ウサギ:「しまった、見つかっちまった…」 おじいさん:「ほれ、そこを退くんじゃ…」 ナレーション:ウサギさんとタヌキくんの真ん中を割いて、大福を置き手を合わせた。ウサギさんはおじいさんがお供えした大福を見ると、今度は1つ増え3つになっていた。 おじいさん:「ばあさんはな…ワシの作った大福が好きじゃった。いつもニコニコしながら「美味しいわね」って頬張っておったわ」 ウサギ:「だからと言って、3つは食べきれないだろ?」 おじいさん:「3つは食べきれないだろうな。じゃが、ワシは食べきると信じておる」 タヌキ:「ポン?」 おじいさん:「ワシは毎晩毎晩、空いた皿を楽しみにしておってな。その度に食べに来てくれてたんじゃなって、嬉しくての?」 ナレーション:おじいさんはウサギさん、タヌキくんの方を見ました。ですが、おじいさんはそのウサギさん、タヌキくんの方を見て続けます。 おじいさん:「ばあさんじゃぞ?ばあさんがここに来て、食べてくれたという話じゃ?」 ウサギ:「そうかいそうかい」 おじいさん:「じゃが、ワシには分かる。ばあさんはきっと、ここに来た者を拒まず、好物の大福を勧めるじゃろう…美味しい大福だから…とな?」 ナレーション:おじいさんが去った後、ウサギさん、タヌキくんは石が2段積まれたのが、おばあさんのお墓だと気付きました。ウサギさんは墓前に腰掛けました。 ウサギ:「オイラ…悪い事しちゃったのかな…」 タヌキ:「ポォーン…」 ナレーション:そしてウサギさんとタヌキくんは、大福に手を付けず山へ帰りました。そして翌日、おじいさんは大福が残っている皿を手に取りしょんぼりしながら持ち帰りました。 0:  ナレーション:それからしばらく大福をお供えしていましたが、お皿が空く事は無く、そしてとうとう、大福がお供えされる事も無くなりました。 0:  ナレーション:それから何日か経った頃、おじいさんはお墓に花を供えに行くと、ウサギさんが横に倒れておりました。 おじいさん:「こりゃウサギ!ばあさんのお墓に何しよるか!」 ナレーション:ですが、おじいさんが大きな声を出しても、ウサギさんは反応しません。 おじいさん:「ウサギ…!?お前、どうしたんじゃ!撃たれたんか?」 ナレーション:ウサギさんは反応しません。確かに感じたのは、ウサギさんの冷え切った体温でした。 おじいさん:「ウサギ…お前、何でワシの大福を食わんくなったんや…。本当は知っておった。大福を食べたのはばあさんではなく、お前やったって。お前が食べてくれるお陰で、ワシは「誰かに食べてくれる」幸せ、「誰かに作る」楽しさを毎日味わえて楽しかったんや。なのに何で…何で食わなくなったんや」 おじいさん:「お前は寂しかったんやろ?1人で寂しくて、人様に相手してくれる事が、お前にとっては幸せやったんやろ?大福も、ワシへのイタズラで食べておったんやろ?死ぬな…お前はまだ、死んだらダメじゃ…」 ナレーション:おじいさんは、ウサギさんの目を閉じさせました。ですが、瞼(まぶた)の筋肉が硬直しているせいか、目が開いてしまいました。 おじいさん:「そうか…お前、まだこの世に未練があるんか?そりゃ…生きたかったよな…まだ、眠りたくないよな。待っとれ…今、大福を作ってやるからな?」 0:  ナレーション:こうして、おばあさんの隣にまた1つ、お墓が並んだ。そのお墓はとても元気で、いたずらっ子な寂しがり屋が眠るお墓だと言われている。そして、その墓前には、毎日のようにお供えがされているそうだ。そのお供えされていたものは… おじいさん:「ほら、3つも作ったんじゃぞ?たーんとお食べ。」

0:  ナレーション:『3つの大福』 0:  ナレーション:昔々…とあるところに、とても仲の良い老夫婦がおりました。その老夫婦は、毎日のように畑を耕しては、野菜を育てておりました。 おじいさん:「おばあさんや、ちょいとここらで休憩しようか?」 ナレーション:おじいさんは、おばあさんと一緒に川辺でおにぎりを食べていた時、後ろからおにぎりを取られてしまいました。 ウサギ:「へへーん、このおにぎりはオイラが貰ったぞ!」 おじいさん:「なっ!このウサギめ!それは、ばあさんの作ってくれたおにぎりじゃぞ?」 ウサギ:「へっ!だから何だってんだ!そぉれ、1つもーらい!」 ナレーション:ウサギは、奪ったおにぎりの内の1つを、ポーンと口へ放り込みました。 おじいさん:「コラ!返しなさい!バカウサギっ!」 ウサギ:「ん…ぺっ!こんなしょっぺぇおにぎりなんて、食えたもんじゃねぇな!」 おじいさん:「何をぉ!?このウサギめ!鍋にして食ってやろかっ!」 ナレーション:ウサギさんとおじいさんが言い争っているのを、おばあさんはただひたすら、ニコニコ笑って見ておりました。 0:  ナレーション:それからしばらく経った頃。ウサギさんは、仲の良いタヌキくんを連れて、いつものイタズラを仕掛けに山を降りてきました。 タヌキ:「ポポン、またイタズラを仕掛けに行くのかい?」 ウサギ:「当たり前だろ?オイラの生き甲斐は、人間を困らせる事だからさ!」 タヌキ:「ポォーン…怒られるの、僕は嫌だな…」 ナレーション:そんな事を言っていると、おじいさんの姿が見えました。 ウサギ:「占めたっ!ほら、困らせ甲斐のあるおじいさんだ!」 タヌキ:「ポォーン…だから困らせたくは無いポン…」 ウサギ:「つべこべ言わずに行くんだよ!ほら」 タヌキ:「ポォン!?お、押さないでよ!ポポォン!!」 ナレーション:タヌキくんは、ウサギさんに押され、おじいさんの元へ転がり込みました。 おじいさん:「あぁ…タヌキさんや…」 タヌキ:「ポォン?」 ナレーション:ウサギさんは思いました。おじいさんの元気が無い事に。 ウサギ:「タヌキくん、もう行こう」 タヌキ:「ポン?イタズラは?どうするポン?」 ウサギ:「良いから…行こう」 タヌキ:「ポン?」 ナレーション:タヌキくんはウサギさんに手を引かれ、山へ戻って行きました。ウサギさんはふと後ろを振り向き、おじいさんを見ました。おじいさんはタヌキくん、ウサギさんへ手を振っていました。 ウサギ:「チッ、つまんねーの」 0:  ナレーション:真っ暗い夜、ウサギさんは誰も連れ出す事なく、自分だけで山を降りてきました。 ウサギ:「こうなりゃ、畑を荒らして目を引いてやるんだ!」 ナレーション:ところが、ウサギさんの見た畑は、前の手入れが行き届いた畑とは、懸け離れたものになっておりました。 ウサギ:「おじいさん…どうしちまったんだよ…」 ナレーション:ウサギさんはしょんぼりとしてしまいました。ウサギさんの頭の中では、元気だったおじいさんの声が飛び交ってました。 おじいさん:「こりゃ、なーにをやっとるんだ!」 おじいさん:「こりゃウサギ!待たんや!」 ナレーション:今はもう聞けないとなると、ウサギさんは目に涙が溜まりそうになります。と、トボトボと歩くおじいさんの姿が、潤んだ目に入りました。 ウサギ:「おじいさん…」 ナレーション:おじいさんは、石が2段積まれたその下に、何かを置き、去って行きました。ウサギさんは、おじいさんが去ったのを確認し、置かれた何かを確認しに行きました。 ウサギ:「大福だ…でも、何で?」 ナレーション:ウサギさんは思います。ここに何で大福を?そもそも、ここにこんな石があったのか?…と。ですが、それと同時に閃きました。 ウサギ:「シメシメ…この大福を、食っちまおう」 ナレーション:ウサギさんは、そのお供えされていた1つの大福を、大きな一口で頬張り、山へ戻って行きました。 0:  ナレーション:翌日の晩、ウサギさんはタヌキくんを連れて、山を降りてきました。 タヌキ:「ポォン…眠たいよぉ…ポォーン」 ウサギ:「うるさい!お前、ご馳走食べたくないのか?」 タヌキ:「ポン?ご馳走?」 ウサギ:「大福だよ!大福!」 タヌキ:「ポォン!大福!僕大好きだポン!」 ウサギ:「だろ?だから早く行こうぜ!」 ナレーション:ウサギさんとタヌキくんは、ルンルンで大福がお供えしてあるところへ向かいました。 タヌキ:「ウ…ウサギくん!まさか、このお供えしてある大福の事なのポン?」 ウサギ:「え…う…うん…」 ナレーション:ウサギさんは、1つの大福を半分こし、タヌキくんと食べるはずでした。ですが、今日お供えしている大福は2つでした。 タヌキ:「まさかウサギくん…この大福、僕とウサギくんで1つずつで食べるポン?」 ウサギ:「え?…あぁ…あぁそうだとも!」 タヌキ:「ポォーン!ダメだよ!それじゃ、このお供えされた分が無いじゃないか!」 ウサギ:「嫌なら、オイラが2つ食べちゃお!」 ナレーション:ウサギさんは、お供えされた大福2つを、大きな口へ頬張りました。 タヌキ:「ポォーン…だからダメだってば…」 0:  ナレーション:そのまた翌日の晩、またウサギさんはタヌキくんを連れ、大福のところまで来ました。ですが、大福はお供えされていませんでした。 ウサギ:「あれ?無いな…誰かに先に食べられたかな?」 タヌキ:「昨日、ウサギくんが食べたからだポン!そりゃ無いに決まってるポン!」 ナレーション:ウサギさんとタヌキくんが立ちぼうけしている時、後ろから声を掛けられました。 おじいさん:「こりゃ…そこで何をしておるか…」 タヌキ:「ポンっ!?」 ウサギ:「しまった、見つかっちまった…」 おじいさん:「ほれ、そこを退くんじゃ…」 ナレーション:ウサギさんとタヌキくんの真ん中を割いて、大福を置き手を合わせた。ウサギさんはおじいさんがお供えした大福を見ると、今度は1つ増え3つになっていた。 おじいさん:「ばあさんはな…ワシの作った大福が好きじゃった。いつもニコニコしながら「美味しいわね」って頬張っておったわ」 ウサギ:「だからと言って、3つは食べきれないだろ?」 おじいさん:「3つは食べきれないだろうな。じゃが、ワシは食べきると信じておる」 タヌキ:「ポン?」 おじいさん:「ワシは毎晩毎晩、空いた皿を楽しみにしておってな。その度に食べに来てくれてたんじゃなって、嬉しくての?」 ナレーション:おじいさんはウサギさん、タヌキくんの方を見ました。ですが、おじいさんはそのウサギさん、タヌキくんの方を見て続けます。 おじいさん:「ばあさんじゃぞ?ばあさんがここに来て、食べてくれたという話じゃ?」 ウサギ:「そうかいそうかい」 おじいさん:「じゃが、ワシには分かる。ばあさんはきっと、ここに来た者を拒まず、好物の大福を勧めるじゃろう…美味しい大福だから…とな?」 ナレーション:おじいさんが去った後、ウサギさん、タヌキくんは石が2段積まれたのが、おばあさんのお墓だと気付きました。ウサギさんは墓前に腰掛けました。 ウサギ:「オイラ…悪い事しちゃったのかな…」 タヌキ:「ポォーン…」 ナレーション:そしてウサギさんとタヌキくんは、大福に手を付けず山へ帰りました。そして翌日、おじいさんは大福が残っている皿を手に取りしょんぼりしながら持ち帰りました。 0:  ナレーション:それからしばらく大福をお供えしていましたが、お皿が空く事は無く、そしてとうとう、大福がお供えされる事も無くなりました。 0:  ナレーション:それから何日か経った頃、おじいさんはお墓に花を供えに行くと、ウサギさんが横に倒れておりました。 おじいさん:「こりゃウサギ!ばあさんのお墓に何しよるか!」 ナレーション:ですが、おじいさんが大きな声を出しても、ウサギさんは反応しません。 おじいさん:「ウサギ…!?お前、どうしたんじゃ!撃たれたんか?」 ナレーション:ウサギさんは反応しません。確かに感じたのは、ウサギさんの冷え切った体温でした。 おじいさん:「ウサギ…お前、何でワシの大福を食わんくなったんや…。本当は知っておった。大福を食べたのはばあさんではなく、お前やったって。お前が食べてくれるお陰で、ワシは「誰かに食べてくれる」幸せ、「誰かに作る」楽しさを毎日味わえて楽しかったんや。なのに何で…何で食わなくなったんや」 おじいさん:「お前は寂しかったんやろ?1人で寂しくて、人様に相手してくれる事が、お前にとっては幸せやったんやろ?大福も、ワシへのイタズラで食べておったんやろ?死ぬな…お前はまだ、死んだらダメじゃ…」 ナレーション:おじいさんは、ウサギさんの目を閉じさせました。ですが、瞼(まぶた)の筋肉が硬直しているせいか、目が開いてしまいました。 おじいさん:「そうか…お前、まだこの世に未練があるんか?そりゃ…生きたかったよな…まだ、眠りたくないよな。待っとれ…今、大福を作ってやるからな?」 0:  ナレーション:こうして、おばあさんの隣にまた1つ、お墓が並んだ。そのお墓はとても元気で、いたずらっ子な寂しがり屋が眠るお墓だと言われている。そして、その墓前には、毎日のようにお供えがされているそうだ。そのお供えされていたものは… おじいさん:「ほら、3つも作ったんじゃぞ?たーんとお食べ。」