台本概要

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タイトル UNREIN#XX
作者名 やいねん  (@oqrbr5gaaul8wf8)
ジャンル その他
演者人数 6人用台本(男3、女3)
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ウンハイン(不浄)#XX

極秘組織『メタファイヴ』
日常の裏側で蠢く災厄を取り除く汚れ仕事を担う組織。
そこに抜擢されたマオは、戸惑いながらも日常と非日常を両立する事となる。
死と隣り合わせな異能系戦闘活劇。

【前回のあらすじ】
人々を襲う生物兵器『デュースター』の殲滅を目的とした機密組織『メタファイヴ』。
そこに適性者として参加した『マオ・アンデション』であったが、悲劇はすぐに訪れた。
デュースターが人間に寄生した生命体『スキズム』との戦闘で三名の犠牲を払い大敗を期したメタファイヴ。
残されたマオ、オルガ、ベンジーの三名は心の傷を癒える間もなく次の作戦へと向かうこととなる。

※叫びあり、詠唱的なセリフあり

ご自由にお使いください

用語説明
ドミニオン⇒極秘に造られた兵器
デュースター⇒真っ黒いスライム状の化け物。
スキズム⇒人間に寄生したデュースター。真っ黒い人形の化け物。顔はなく、のっぺらぼう。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
マオ 130 マオ:20代後半。カウルーンセキュリティのお巡りさん。適正してメタファイヴに召集された。
ベンジー 108 ベンジー:20代半ば。メタファイヴ所属メンバー。在籍歴が一番長い。元薬物中毒者。
オルガ 103 オルガ:30代後半。メタファイヴ主任。メタファイヴの頭脳。
イノ 93 イノ:20代半ば。メタファイヴ新人。マオの元相棒。
トウゴウ 63 トウゴウ:50代後半。メタファイヴ新人。元軍人。
スモモ 75 スモモ:20代前半。科学者。ドミニオン開発者。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:(SE)カウルーン州カウルーンシティ、セントラルエリア。とある繁華街のにあるホストクラブにて。 イノ:「……飲んで飲んで飲んで、イッキ!ウェーイ!じゃあ次は俺様の番だぁ!ジョアナ夫人からシャンパン頂きましたー!ヒュー!オラぁ!行くぞお前ら!あそーれ、イノ様が~シャンパン呑むとこ見てみた~い、あよいしょ!(飲酒音)グビグビグビグビー!ぷはー!酒うめぇー!ホスト最高ー!」 0: 0:(SE)翌朝、小鳥の囀ずるなか、ごみ捨て場で目を覚ますイノ。 イノ:「……んん、あれ。ここどこだぁ?うわ臭っ!ごみ捨て場じゃねぇか!なんでこんなところで寝てるんだっけ……あー、思い出せねぇ。」 0:(SE)新人のカウルーンセキュリティ巡回班がイノに近付いてくる。 イノ:「頭痛ぇし気持ち悪ぃ……ん?なんだ、カウルーンセキュリティか。いつもご苦労さん。……いやいや、酔っ払って寝てただけだよ。お前ら、どこの班だ?おそらく新人だよなぁ。最近の若い奴等はすぐやめていくからよぉ。まぁ長く続けてくれよな。先輩からのアドバイスなんだから……ん?」 0:(SE)手錠をかけられるイノ。 イノ:「おいおい……なんの冗談だ?いくら新人だからって矢鱈目鱈、手錠かけりゃあ良いってもんじゃねぇんだぞ?俺を誰だか知ってっか?聞いて驚くなよ?俺様はなぁ、カウルーンセキュリティ巡回警備担当部署所属、イノ・カハナモクだ!現在絶賛謹慎中なんでよろしく!……って、いてててて!わかった、わかったから痛くすんじゃねぇっての!」 0: 0:(SE)同日、お昼過ぎ。メタファイヴ主任であるオルガのお宅を訪問するマオ。 マオ:「(インターホン)オルガ主任、俺です。マオです。居るんですよね。……また、来ますから。」 0:(SE)立ち去ろうとするマオ。そこで玄関の戸が開く。普段とは打って変わって、少しやつれ気味で、くたびれたオルガの姿。 オルガ:「……マオか。入れ。」 マオ:「あぁ……はい。お邪魔します。」 0:(SE)オルガ宅に上がるマオ。部屋は若干散らかっている。 オルガ:「汚いが気にするな。とりあえずそこに座ってくれ。」 マオ:「はい。よいしょっと……あの、これよかったら。」 0:人気店のケーキを差し入れ渡すマオ。 オルガ:「差し入れか、悪いな。……なんだこのケーキ、最近人気のヤツじゃないか。」 マオ:「ええ、この間出来たばっかりの喫茶店のやつです。美味しいらしいんで、是非。」 オルガ:「並んだんじゃないのか?」 マオ:「まぁ、少しだけ。」 オルガ:「……ふふ。」 マオ:「なんですか?」 オルガ:「いや、意外だなぁっと思ってな。ベンジーの奴も喜ぶだろう。……終わったか?例の話。」 マオ:「はい。皆さん、どうにか納得してくれたました。」 オルガ:「本来は私がすべき事なのだが……申し訳ない。」 マオ:「オルガ主任は立場がありますから。それにみんなから頼まれたのは、俺なんで。」 オルガ:「本当に、君には頭が下がる……。」 マオ:「無理を言ったのは俺の方なんで、むしろ取り合ってくれてありがとうございました。」 オルガ:「……。」 マオ:「……オルガ主任。ここ数日、休んでるって聞ききましたよ。」 オルガ:「……ああ、もう大丈夫だ。」 マオ:「そうですか、なら良かったです。今夜の召集、無理しないで休んでいいですから。俺がなんとかしときますんで。」 オルガ:「そうはいかない。今日は新人が来るんだ。普段の雑務はどうでもよいが、『メタファイヴ』は私の管理下にある。……だが、気持ちだけでも受け取っておくよ。ありがとう。」 ベンジー:「オルガ?バスタオルがないのだ、どこなのだ?」 0:(SE)風呂上がりのベンジーと対面するマオ。 マオ:「あ……ベンジーさん。」 ベンジー:「マオ……なんでお前が居るのだ。」 マオ:「あ……いや……それより……服……」 オルガ:「まじまじと見るな、馬鹿者!」 0:(SE)オルガのビンタをくらうマオ。 マオ:「痛ッ!」 0: 0:(SE)日が暮れて、カウルーンセキュリティ本庁。連行されたイノは地下二階に連れてかれる。 イノ:「……いい加減にしてくれよ!何時間も拘束しやがって!もう夜なんじゃねぇのか!?挙げ句の果てに、庁舎の地下に連れて来やがって!何の用事があるってんだよ!」 イノ:「(SE)……うわっ、あ痛ぁっ!なんだ、この部屋!」 0:特務課に放り込まれるイノ。そこにはメガネをかけた白衣の若い女とおよそ五十路の手錠を掛けられた男が言い争っている。 スモモ:「観念して使ってみて下さい!お願いします!」 トウゴウ:「やらん!ワシはやらんぞ!そんな得体の知れないカラクリ箱など誰が使うもんか!」 イノ:「おい、あんた達!なんなんだよここは!」 トウゴウ:「ワシも知らん!無理矢理拉致され、ここにブチ込まれたんだ!」 スモモ:「だって貴方達、召集の手紙が届いているはずなのに何日も無視し続けたじゃないですか!」 イノ:「召集?何の話だよ!」 トウゴウ:「ワシは大本営の命令以外は聞かないと天地神明に誓ったんだ!」 スモモ:「もういやー!話にならないですよー!」 0:(SE)そこへオルガ達三名が入室する。 オルガ:「スモモ、待たせたな。」 スモモ:「オルガ氏!助けて下さい!この人、全然言うこと聞いてくれないんです!変なオジサンなんです!はい!」 トウゴウ:「聞き捨てならんぞ、その言葉!ワシは変なオジサンではない!」 ベンジー:「この二人が、召集を無視していたという……。」 イノ:「だから何の話かさっぱりなんだよ!」 マオ:「……イノじゃん。」 イノ:「んえ?……ええ?!マオじゃん!久しぶりだな!元気してた?」 ベンジー:「マオ、知り合いか?」 イノ:「やっと話のわかる奴が来たぜー!とりあえずこの手錠外してくれよ!」 マオ:「……いや、知らない人だ。」 イノ:「嘘つくなよ!俺達相棒じゃねぇか!」 マオ:「『元』な。だからもう知らない人だ。」 イノ:「まだあの事で怒ってるのか!それなら謝るよー!悪かったってー!」 マオ:「別に怒ってない。」 ベンジー:「顔は怒ってるぞ、マオ。」 オルガ:「はいはい、静かにしてくれ。お二人共、手荒な真似をしてすまなかった。しかしこの召集は法的な拘束力がある。何故なら君達は『適正保持者』であるからだ。」 トウゴウ:「だからなんだと言うんだ!せっかく念願の夢であった自給自足の暮らしで、悠々自適に余生を過ごそうと思っていたのに……。山奥に土地まで買ったんだぞ!ワシは都会も、最新のテクノロジーとやらも嫌いなんだ!」 オルガ:「なかなかの頑固オヤジじゃないか……。えー、資料によると先の大戦に参加していたようだな。……元陸将か。」 トウゴウ:「そうだ!紛れもなく、このワシこそがヒノモト大帝國陸軍大将、トウゴウ・タマサブロウだ!ワシがこの街を、この國を、この世界を守ったと言っても過言ではない!なのに、なんだこの扱いは!手錠をかけられ、地下に閉じ込められるとは、なんと情けない仕打ちだ!」 オルガ:「連合国として我が國と共闘してくれたことには感謝している。だがもう少し落ち着いてくれないか。全く……こっちは戦争神経症のカウンセラーじゃないんだぞ?」 オルガ:「そんで次……君は知っているぞ。カウルーンセキュリティ内で一番の謹慎日数を誇る大馬鹿者らしいな。挙げ句、謹慎中の身でありながらホストなどしおって。恥の上塗りが過ぎるぞ。」 マオ:「お前、ホストやってたのかよ……。」 イノ:「だってよぉ、謹慎中やることねぇんだもん。タダ酒飲んで金貰えるんだから、そりゃやるだろ?」 マオ:「よくクビにならないな。」 イノ:「とにかくよぉ、この手錠外してくれよ!昔の手錠と比べて、めちゃくちゃ重てぇんだよなぁ、これ。」 オルガ:「埒が開かんな……ベンジー、見せてやってくれ。」 ベンジー:「わかった。……『ミセリコルデ』。」 0:(SE)ベンジーのドミニオンがミセリコルデを形成する。辺りに浮遊するミセリコルデに驚愕する二人。 イノ:「なんだよ……これ。剣が空中に浮いてらぁ。しかも、何本も……」 トウゴウ:「……フン、所詮手品の類だろ。」 ベンジー:「動かないでくれ。」 トウゴウ:「なんだって?……ぐわっ!?」 イノ:「ヒィッ!」 0:(SE)トウゴウとイノの手錠をミセリコルデが破壊する。 ベンジー:「これで自由に動ける。」 イノ:「手錠が……簡単にブッ壊れやがった。」 トウゴウ:「なんなんだ、このカラクリは……!」 オルガ:「せっかく開発者本人が居るんだ。説明を頼もうか。」 スモモ:「はい、わかりました。申し遅れましたが、私の名前はニナガワ・スモモです。いま、ベンジー氏に使って頂いたこの真っ白な幾何学模様の箱を『ドミニオン』と言います。この装置はとても特殊な構造でして、シンギュラリティによって飛躍的に発展した電磁気学の技術と最先端フェムトテクノロジーにより、人体の細胞内にある電子を超回転させる事によって磁力を産み出します。『ドミニオン』は強磁性体を多く含有している為、電子による超回転の影響を受けやすく、かつアイコノクラジウムと言う元素からなるヴァリアブルメタルと、生物工学に基づき発明されたアレティニウムとエラトミウムと言う元素からなるバイオメタルの融合により、人間の体力を消費し、それを原動力として磁化させる事によって、形状を自在に成型する仕組みを開発しました。そして光遺伝学の世界的権威である祖父の技術によって、光で使用者の眼から脳の情報を読み込み、認識することで使用者の想像を反映した物体を生み出す事が可能になりました。つまり、この『ドミニオン』は、人類の叡知を凌駕してしまった、魔法の兵器なんです!私が発明しました、はい!」 オルガ:「……スモモ。」 スモモ:「はい、なんですか?」 オルガ:「そう言う細かい説明は求めていない。」 スモモ:「……そうだったんですか?」 イノ:「ちょっと俺にやらしてくれ!」 スモモ:「え……キャッ!人から物をぶん取るなんて、至極卑劣極まりなく乱暴な輩!」 0:前のめりで『ドミニオン』を手にするイノ。 イノ:「面白いじゃねぇか!俺の思い通りの武器が出来上がるんだろ!スッゲェ強い武器を創ってやる!」 0:(SE)発光し始める『ドミニオン』 ベンジー:「早速ひかり始めたぞ。」 マオ:「……なんか光量すごくないか?」 スモモ:「この光はスゴいです!今まで見たことないですよ!はい!」 トウゴウ:「フンッ……何が魔法の兵器だ、くだらん。」 イノ:「いいぞいいぞ!さぁ、頼むぜ……最強の武器になってくれ!」 0:(SE)本来の『ドミニオン』よりも一回り小さい拳銃が形成される。 マオ:「……え?」 ベンジー:「形成前の『ドミニオン』よりひとまわり小さいぞ。」 イノ:「嘘だろぉ!?なんでこんなちゃっちぃ銃が出来上がるんだよ!」 オルガ:「随分頼りない拳銃だな。果たしてアレで戦えるのか?」 スモモ:「オルガ氏、侮るなかれ。彼の『ドミニオン』はかなり使えますよ、はい。」 オルガ:「なんだと?アレがか。」 スモモ:「ベンジー氏のように同じ形状の物を複製出来るタイプですね。サイズも小さいので、使いこなせば何百何千と複製が可能です……きっと化けますよ、はい。」 0:(SE)トウゴウが痺れを切らして帰ろうとする。 トウゴウ:「ええい、全く要領を得ん!時間の無駄だ!ワシは帰るぞ!」 オルガ:「待て。話を最後まで聞いてくれ。」 トウゴウ:「断る!」 オルガ:「頼む!……この通りだ。」 0:深々と頭を下げるオルガ ベンジー:「オルガが、頭を下げるなんて……」 スモモ:「確かに、珍しいですね。」 オルガ:「我々の使命は人々の命と平和を守ることだ。トウゴウ大将、貴方がそうだったように。」 トウゴウ:「……。」 オルガ:「このままでは再び多くの命が失われかねない。それも……言いづらい事だがストレートに言おう。あなた方、旧ヒノモト大帝國軍の研究によって生まれた『負の遺産』が原因なんだ。」 トウゴウ:「……その為にワシは呼ばれたのか。」 オルガ:「いいや、奇しくも軍関係の人間で適正だったのは貴方だけだ。」 トウゴウ:「なるほど……これは天命と言うことだな。」 マオ:「……どういう事なんすか?『負の遺産』って。」 ベンジー:「生物兵器。突然変異体。負の遺産。人類の汚点……」 マオ:「それ、この間言ってた……」 スモモ:「そうなんです。『デュースター』は元々、旧ヒノモト大帝国軍が研究していた生物兵器なのです。ゲノム編集による突然変異体として産み出された『デュースター』はオフターゲット変異を起こし、予期せぬ生殖細胞と化してしまったのだと考えられます。その危険性はご存知の通り、見境なく人間を襲い、寄生することによってより強力な生命体『スキズム』へと変貌を遂げていることから、生物としての本能が働いている事が確認できます。このまま野放しにしてしまうと、生態系を崩しかねません。禁忌に触れてしまったこの生物兵器は、陸戦条約で実戦投入が禁じられるほど危険なものなのです、はい。」 マオ:「そんなのと戦ってたのかよ……。」 スモモ:「そのため終戦まで使用される事はなく、それまで作られていた『デュースター』は研究資料もろとも全て廃棄処分されていたはずでした。……ですがここ近年、何故か各地で被害が出るようになったのです。」 イノ:「ああ、なんか結構前に『月刊ドゥーム』で似たようなオカルト話を読んだぞ。」 スモモ:「非常に強い生命力を持つ『デュースター』は普通の武器では太刀打ち出来ません。そこで極秘裏に『ドミニオン』の開発に乗り出したのです。先ほど説明した『ドミニオン』を組織する素材が、『デュースター』の再生能力を弱め、核を破壊する手段となりえたのです、はい。」 マオ:「そこまで秘密にする理由ってなんなんすか。」 スモモ:「……科学者としては心苦しいのですが、『ドミニオン』は数々の重大な条約違反を犯してまして……はい。」 イノ:「条約違反?どんなどんな!」 スモモ:「軍事転用可能な兵器を無許可で開発してますし、禁じられた素材や技術を使用していますからね……大々的にバレたら極刑なんです、私。」 イノ:「すげぇリスク背負ってんだなぁネーチャン。科学者の鑑だな!」 スモモ:「あと、使用した皆さんもです。極刑です。はい。」 イノ:「ギャアアアアア!」 マオ:「マジか。初耳なんだが。」 イノ:「嘘ぉ!なんで知らないの!」 ベンジー:「私は知っていた。」 イノ:「たくましいぃ!」 0:(SE)席に戻り勢いよく座るトウゴウ。 トウゴウ:「どっこらしょっと!軍部の恥はワシの恥!ましてや尻拭いの担い手はワシ以外におらんとな!ガッハッハ、けっこうけっこう!」 オルガ:「引き受けてくれるか?」 トウゴウ:「ワシの座右の銘は『世のため、人のため』!身を粉にして職務を全うするつもりだ。よろしく頼むぞ、オルガ女史。」 オルガ:「助かる。貴方の戦争経験は我々『メタファイヴ』の要になるだろう。では早速だが作戦の説明を……」 マオ:「え、オルガ主任。」 オルガ:「どうした。」 マオ:「一人……足りないですよ?」 オルガ:「そうなんだ。まだ適正保持者が見つかっていないんだ。だから……。」 スモモ:「だから私がいるんです!はい!」 0: 0:(SE)深夜、埠頭へ向かう為、一行を乗せたトラックが走っている。 0: イノ:「うわぁ……やだぁ……死にたくねぇよぉ…」 マオ:「ダセェな。なにビビってんだよ。」 イノ:「お前はすげぇよなぁ……昔から変わらねぇよなぁ。恐怖の感情、どこに置いて来たんだよ……。」 マオ:「知るか。お前が情けないだけだろ。」 イノ:「当たりつえぇ……。」 トウゴウ:「構えすぎだ、若いの。戦場では緊張と恐怖が真の敵となりうる。逆もまた然り、油断と慢心が命取りともなる。つまり、塩梅が大事なんだ。」 イノ:「えぇ~……結局どっち~……?」 ベンジー:「スモモ、本当に大丈夫なのか?戦闘に参加するなんて……」 スモモ:「大丈夫です!何て言ったってこれがありますから!はい!」 ベンジー:「これは……グローブ、それとブーツ?」 スモモ:「そうなんです!このグローブは『レガリア』、それでブーツは『ペーガソス』!」 ベンジー:「なんなのだ……『ドミニオン』といい、そのネーミングセンス。」 スモモ:「直感です!はい!」 オルガ:「それを試す為に、作戦に参加したんだとさ。スモモがどうしてもと言って聞かないんだ。サポートは頼んだぞ、ベンジー。」 ベンジー:「……うん。」 スモモ:「心配御無用!これは適正の無い私でも扱える代物なんです!『ドミニオン』と比べて性能は劣るものの、誰でも使えるようにしてあるのです!はい!」 ベンジー:「スゴいなスモモは。なんでも作れるのだな。」 スモモ:「そんな大した事ではないです。全て先人たちの知恵なので。あと、お祖父ちゃんのお陰です。はい。」 イノ:「なにそれ!使って見せてくれよ、ネーチャンよぉ!」 ベンジー:「き、急にテンション変わったぞ。さっきまでお通夜ムードだったのに、コイツ。」 マオ:「そういう奴なんで、気にしなくて大丈夫ですよ。」 スモモ:「ダメですよ!もし今起動したら、車が真っ二つになります!はい!」 トウゴウ:「ガッハッハ!随分と豪快な代物なんだな!ワシゃ派手で豪快なものが大好きなんだ!」 オルガ:「自給自足の生活が夢って言っていた割に中身は軍人の頃と変わらず、豪傑のようだな。」 マオ:「ほら、自給自足もワイルドだし、そう言う意味合いなんじゃ……。」 オルガ:「なるほど、合点がいった。」 スモモ:「この『レガリア』は非適正者向けに特化した試作兵器なんです。最新型のアトミック・パワー・サプライを採用しているこの兵器は、高輝度の発光により装着者の細胞と精神を読み込み、レーザーオシレーターから生み出された光によって武器を具現化する事に成功しました。私の場合は両の手先に電動ノコギリの様な武器が出来ましたが、装着者の精神状態に依存するため、それぞれ異なります。形成されたレーザー光は、どんな物質であろうと焼き斬る事が出来てしまうので、取り扱い注意の兵器なのです!そして『ペーガソス』は脚力を使わずに高速移動ができ、いざと言うときは五十メートル以上をも跳躍することが理論上可能なんです!なので研究所では試せないから、手ずから実戦投入して、試運転しようって魂胆なんです!はい!」 イノ:「マジかよ!疲れないで移動出来るなんて最高かよ!そのブーツ俺にくれよ!」 スモモ:「まだ性能が保証されてませんので!ダメです!と言うか足のサイズが私用だし、貴方にだけは履かれたくないです!そこは意地でも!はい!」 イノ:「……なんか俺、生理的に嫌われてる?」 オルガ:「皆、今回は新人の肩慣らしがてら……と言いたいところだが、ここ数日間で『デュースター』の増殖力が桁違いな地域がある。ウェストサイドにある埠頭で怪しい動きを見せているんだ。幸いフォーチュンタワーの奴らは鳴りを潜めている。この間に他の『スキズム』を叩くぞ。皆、心しておけ。」 0: 0:(SE)埠頭に到着する一行。 0: トウゴウ:「あーおーいー、とばりがー……。」 マオ:「トウゴウさん、何言ってるです?」 トウゴウ:「風が渡っていると思ってな。気にするな。」 イノ:「真冬の埠頭はクソさみぃなぁ……ちょっとトイレ!」 オルガ:「おい、勝手に行動するな!用は済ませとけと言っただろう!」 イノ:「仕方ないだろ生理現象なんだからよぉ!ちょっと失礼!」 0:(SE)走って防波堤へ向かうイノ。 オルガ:「コラ待て!……あの大馬鹿者め!マオ、付いて行ってやれ!」 マオ:「えー俺が?多分大丈夫ですよ。アイツのことだし。」 オルガ:「単独行動は危険だ!曲がりなりにも元相棒なんだろ?これは命令だ!」 マオ:「……はーい。行ってきまーす。」 オルガ:「おい、走れよ!走って行け!」 マオ:「はぁ……了解でーす。」 0:(SE)小走りでイノを追うマオ オルガ:「なんで小走りなんだ!もっと全力で走れ!……全く、何があったと言うんだ、あの二人。」 ベンジー:「オルガ、敵の数は?」 オルガ:「それがまだ活動していないようなんだ。レーダーに反応が現れない。ここの奴らも既に知性を得ている可能性は十分に考えられる。」 スモモ:「本当に驚きましたよ。まさか『スキズム』が知性を持っているなんて。とても厄介ですね。はい。」 トウゴウ:「そんなことは関係なかろう。打ち倒すまでだ。」 オルガ:「ところでトウゴウ。貴方の『ドミニオン』はどんな代物なんだ?」 トウゴウ:「それがなぁ……まだワシにもわからんのだ。」 オルガ:「なんだと!?」 ベンジー:「まだ使ってないのか?」 トウゴウ:「ああ。使うならば実戦の、敵と相対した時だと決めておったからな。」 スモモ:「さすがです、豪傑氏。」 トウゴウ:「その呼び方……好みだ。」 オルガ:「初めはすぐに使えない事だってあるんだぞ!何を考えているんだ!」 トウゴウ:「使えなければそれまでだ。それが天命、ワシの潮時だ。最悪の場合でも、また今まで通り後釜が来る。そうだろう?」 オルガ:「全く、適正保持者は変わり者ばかりだな。……レーダーに反応あり!総員、臨戦態勢に入れ!敵は……こちら側と、あの二人の方に分散している!イノ、マオ、気を付けろ!」 0: 0: 0:(SE)防波堤の先で用を足しているイノ。インカムからオルガの声。 イノ:「……ふぅ~、超気持ち~。なんで冬の立ち小便ってこんなに気持ちいいんだろ。……んえ?気を付けろ?そんな急に言われても止まらない……うぉあっ!!」 0:(SE)防波堤にへばり着いたスキズムがイノの足を掴み海に引きずり込む。かろうじて防波堤の縁に手をかける。 オルガ:「イノ!大丈夫か!」 イノ:「激ヤバだぜ!なんか、全身変態ボンテージ野郎が俺の足を掴んで海に引きずり込もうとしやがってる!クソぉ、放しやがれ!」 オルガ:「その表現やめろ!マオはまだか!真冬の海に落ちたらひとたまりもないぞ!」 イノ:「この手を放したら一巻の終わりかよ!こうなったら……『マフピストルズ』!打ちのめしてくれぇ!」 0:(SE)スキズムに発砲。しかし、無傷。 オルガ:「どうだ、やったか!」 イノ:「……なんで、傷一つ付いてねぇんだよ!」 オルガ:「諦めるな、イノ!」 イノ:「いやだぁ!死にたくねぇ!」 マオ:「死なせるかよ、『ヴィントレス』!」 0:(SE)スキズムの腕を撃ち抜き千切れる。海に逃げ帰るスキズム。 イノ:「うわっ!野郎の腕が吹っ飛んだ……マオ!ありがとうぉ!」 マオ:「本当に……世話が焼ける相棒だな。」 0: 0:(SE)オルガの近く、ベンジーとスモモが共闘している。 ベンジー:「『ミセリコルデ』!」 オルガ:「ベンジー!左だ!」 スモモ:「よいっしょ!」 0:(SE)『レガリア』でデュースターを焼き切るスモモ ベンジー:「スモモ、助かる。」 スモモ:「えへへ、でしょ?やっぱ私の発明はスゴいですね!我ながらアッパレですね!はい!」 オルガ:「油断するな。今回の『デュースター』は数が桁違いだ。恐らく司令塔となる『スキズム』がどこかに居るはず。」 スモモ:「まさか、もうこんなに囲まれているなんて……それにしても、豪傑氏はまだ『ドミニオン』を使用してませんよ。少し心配です。はい。」 オルガ:「それが不可思議なんだ。『デュースター』達がトウゴウに近付いていない。」 ベンジー:「……間合い。」 スモモ:「はい?」 ベンジー:「トウゴウは『ドミニオン』を知らず内に起動している。それを『デュースター』達は気が付いている。」 スモモ:「それなら説明がつきます!『ドミニオン』の可能性は無限大です。使用者の気迫が武器になっているのかも……。」 0:(SE)一匹のデュースターがトウゴウに近づく オルガ:「動いた……一匹の『デュースター』がトウゴウとの距離を詰めたぞ!」 トウゴウ:「……入ったな?『ネネキリ』!」 0:(SE)瞬間、トウゴウのドミニオンは刀剣と化した。三メートル超の刀身での一太刀は数十体のデュースターを切り捨てていた スモモ:「え、何が起きたんですか!?」 ベンジー:「一太刀で……十数体の『デュースター』を倒した。」 オルガ:「刀剣の使い手だったのか……!」 トウゴウ:「フン、この程度か。手応えが足りんな。」 0:(SE)駆け足でオルガに近くイノ イノ:「ヤバいヤバい!もう帰りたい!寒いし帰りたい!死にたくない!」 オルガ:「戻ったか。もう勝手な行動はするな。」 イノ:「オルガっちー!もう勘弁してよー!」 0:(SE)すがるようにオルガの足にしがみつくイノ オルガ:「ぬっ!?足にしがみつくな!穢らわしい!フンっ!」 0:(SE)蹴飛ばされるイノ イノ:「ウギャッ!」 スモモ:「弱った新入りを蹴飛ばすなんて……オルガ氏、容赦ないですね。」 マオ:「ダッセェ、アイツ……。」 ベンジー:「マオ、『スキズム』に襲われたそうだな。」 マオ:「はい。スキズムにしては、腕が一撃で吹き飛ぶほど弱い奴でした。治癒能力に個体差があるんすかね。」 オルガ:「個体差だと?……っ!皆、固まれ!囲まれている!……おいおい、嘘だろ!?」 0:(SE)デュースターが集まり始める スモモ:「こんなの、データにないです!」 ベンジー:「個々の『デュースター』が集まって……『スキズム』を形作っている。」 イノ:「七体、八体……変態ボンテージ野郎がどんどん増えてやがる!」 オルガ:「そういうことか……皆、怯むな!所詮は『デュースター』の寄せ集めに過ぎない!人間に寄生した『スキズム』ほどの治癒能力はこいつらにないはずだ!」 マオ:「かといって、八体に囲まれるなんて……こんな状況、初めてなんですけど、どうします?」 トウゴウ:「……無論、切り捨てるまで。」 マオ:「トウゴウさん、強気すぎますって。」 トウゴウ:「でなければ、生き残れんぞ?」 イノ:「俺の『マフピストルズ』で倒せるわけがねぇよ!」 スモモ:「イノ氏!聞いて下さい!貴方はやれば出来る子です!イメージするんです!沢山!」 イノ:「沢山って何を!」 スモモ:「とにかく沢山!それでいけます!私の発明を信じて下さい!」 イノ:「ああ……なんかわかんねぇけど、やるしかねぇんだろ!」 オルガ:「ベンジー、何体いける!」 ベンジー:「一度に三体が限界。」 オルガ:「他の者は!」 トウゴウ:「二体は任せろ。」 マオ:「助かります、俺は一体です。」 スモモ:「あとは一体づつ。イノ氏、頑張って仕留めて下さいよ!ねぇ」 イノ:「ああ……やってやるよ!」 オルガ:「皆、頼んだぞ!……我々を、『メタファイヴ』を舐めるなよ!」 ベンジー:「千の慈悲によって、浄化したまえ。『ミセリコルデ』!」 0:(SE)千本の短剣が一斉に三体のスキズムに降り注ぐ。 トウゴウ:「不浄な者達よ、ワシの手によって葬ってくれる!『ヨミオクリ』!」 0:(SE)目にもとまらぬ速さで抜刀し、スキズム二体を切り捨てる スモモ:「我が子のように愛してますからね、『レガリア』……行きますよ!」 0:(SE)レーザー光で形成された電動鋸で焼き切られるスキズム マオ:「この距離だったら……お前の出番だ、『フェザーライト』!」 0:(SE)散弾銃の餌食になるスキズム イノ:「イメージしろ……沢山、沢山……!『V.S.O.P.バレルズ』!ブチまけろぉ!」 0:(SE)浮遊する無数の小銃が現れ様々な角度からハチの巣にされるスキズム。レーダーから反応が消えてゆく。 イノ:「……倒した。俺が?マジかよ!」 オルガ:「生態反応は消滅。皆、よくやってくれた。」 スモモ:「やりましたね!やっぱり私の発明は宇宙一なんですねー!はい!」 トウゴウ:「フン、本気を出していたらワシ一人で終わらせられたがな。」 マオ:「一時はどうなるかと思ったけど、みんなすげえな。……ベンジーさん、大丈夫すか。」 0:様子がおかしいベンジー。 ベンジー:「いや……大丈夫……っ!」 マオ:「ベンジーさん!」 0:(SE)倒れるベンジーをだき抱えるマオ。 オルガ:「どうした、ベンジー!」 マオ:「意識を失いかけてます!」 イノ:「おいおい、ベンジーちゃん!しっかりしよろ!」 トウゴウ:「触れただけでも致命的とは、厄介なもののけだな……。」 スモモ:「見せて下さい!……少しだけ『デュースター』に当てられてますね。このぐらいなら……!」 0:懐から注射器を取り出すスモモ。 マオ:「スモモさん、その注射器は……。」 スモモ:「先日完成したばかりのワクチンなんです。デュースターの菌株を微量に接種することで免疫力を高めるのです。」 オルガ:「助かるのか!」 スモモ:「もちろんです!少し胸元を失礼しますよ……」 イノ:「お!その注射器どこに刺すんだ!俺も手伝うぞ!」 オルガ:「見るな!触るな!近寄るな!」 0:(SE)ビンタされるイノ。 イノ:「ウギャっ!」 スモモ:「マオ氏、そのままベンジー氏を固定していて下さい。」 マオ:「はい。」 スモモ:「動かしたら駄目ですよ。ベンジー氏、痛いですけど我慢してくださいね……えい!」 0:(SE)心臓に注射されるベンジー。意識を取り戻す ベンジー:「……クッ!」 マオ:「ベンジーさん!」 ベンジー:「……マオ。」 オルガ:「意識が戻ったか!」 イノ:「ああ……よかった、助かって……!」 スモモ:「……え!?ちょっと待って下さい!ベンジー氏、顔真っ赤です!発熱の副反応ですか!」 ベンジー:「う……うるさいのだスモモ!マオも離せなのだ!一人で立てるなのだ!」 マオ:「あ……すみません。」 スモモ:「ああ、ベンジー氏!急に動かないで下さい!まず胸元閉めて!」 イノ:「ベンジーちゃん、意外とナイスバディなんだなぁ!」 ベンジー:「こっちを見るな!変態!」 0:(SE)腹を蹴られるイノ。 イノ:「グハァ!」 トウゴウ:「……オルガ女史、一ついいか。」 オルガ:「トウゴウ、どうかしたか。」 トウゴウ:「ワシは昔から、鼻がよく利くんだ。特に、暗澹とした負の香りに敏感でな。」 オルガ:「それは、どういう……。」 トウゴウ:「居るぞ。奴らの『主』が、近くに……」 オルガ:「近くだと?レーダーには生態反応が出ていないぞ。」 トウゴウ:「海の中に居るとしたら……どうだ?」 0:(SE)突如、サメに寄生したデュースターが海面から飛び出して来る。 イノ:「うわぁ!なんか海から飛び出してきたぞ!」 マオ:「なんだ、あれ……サメ?」 スモモ:「正確には、デュースターに寄生されたサメです!名付けるならば……『シャーヴ』!」 ベンジー:「オルガ、下がって!『ミセリコ……』ぐうっ!」 0:堪らずその場に跪くベンジー。 オルガ:「ベンジー、無理をするな!」 トウゴウ:「ここはワシに任せろ!『ネネキリ』!」 0:(SE)トウゴウの一閃が直撃するも、切り口は即座に修復される。 イノ:「良いぞ大将!切り身にしちまえ!」 マオ:「ボサッとすんな。俺達もやるぞ。」 イノ:「おう!ベンジーちゃんみたいに沢山だよな、沢山……」 0:(SE)無数のマフピストルズが宙に複製されてゆく。 マオ:「スモモさん、オルガ主任とベンジーさんをよろしくお願いします。」 スモモ:「もちろんです!私の最高傑作であるその『ドミニオン』で、奴らをやっつけちゃって下さいね!はい!」 0:(SE)敵を惹き付け戦うトウゴウ。追ってマオが参戦する。 トウゴウ:「フン、猪口才なやつめ。地面を泳ぐ様に這いずり回るか。あまつさえ驚異的な再生能力で斬っても斬ってもキリがないと言うのに。」 マオ:「『チャーリーキラー』!」 0:(SE)擲弾を放ち牽制するマオ トウゴウ:「爆発で奴の軌道を修正したか。……おい白面郎!」 マオ:「白面……俺の事ですか?」 トウゴウ:「お前さんの武器で奴の軌道をワシに向ける事は出来るか。」 マオ:「トウゴウさん、それは危険すぎますよ。」 トウゴウ:「そうかも知れん。なに、これはちょっとした博打だ。ワシが道筋を示す。後は任せたぞ。」 マオ:「……捨て身ですか。」 トウゴウ:「元を辿れば、我々軍部の研究からなる事象。これは清算だ。ならばこの身朽ち果てるまで、挑むのみ。」 マオ:「……絶対に。」 トウゴウ:「……ん?」 マオ:「絶対に生きて帰りますから。みんなで。」 トウゴウ:「……フフ、良い面構えじゃないか。では、ゆくぞ!」 0:(SE)マフピストルズを複製するイノ イノ:「……んんん~、これで百丁ぐらい増やせたか?はぁ~、なんか頭がボーっとしてきたぜ。」 スモモ:「イノ氏、あまり無理すると倒れてしまいますよ!気を付けて下さい!」 オルガ:「あのサメ、全く止まる気配がないぞ。」 スモモ:「回遊魚としての本能が残っているのでしょうね。しかし人間以外に寄生する例は初めてです。それにデュースターの集合体でスキズムを形作るなんて、思考が働いてるとしか思えません。」 オルガ:「奴らに知性が芽生え学習しているのは、人間に寄生したからなのだろうか。その上、各地のデュースターが独自の伝達能力で情報を共有している可能性もある。そうでなければ、ここまで進化した事の説明がつかない。とても厄介だな。」 ベンジー:「オルガ、私も戦う。」 オルガ:「やめておけ。無駄死にするつもりか。」 スモモ:「そうです!彼らならきっとやっつけてくれますよ!はい!」 ベンジー:「……マオ、死ぬなよ。」 0:(SE)マオの攻撃でシャーヴの軌道がトウゴウへと向かってゆく。 マオ:「トウゴウさん、そっちに向かってます!」 トウゴウ:「よし、その調子だ。かかってこい、もののけ!」 マオ:「イノ、やれるか!」 イノ:「ああ……やってやるよ!」 トウゴウ:「咲かすも一興、散るも一興。ならば派手にかぶこう……『マツリバヤシ』!」 0:(SE)ドミニオンが二刀に変形し、向かってくるシャーヴに二刀の刀を斬り下ろすトウゴウ。斬撃が轟き、カマイタチの如く太刀筋が放たれシャーヴを切り刻む。 オルガ:「刀剣で長距離の攻撃が可能なのか!?しかし……」 マオ:(M)前まではミランダさんが足止めをして、キサラギさんの火吹きで弱らせ、ハオンさんがトドメをさす流れだった。出来るだけ追い詰めて、核が体外に逃げようとするところを狙う。だとしたら……。 スモモ:「大変です!シャーヴの動きが止まりません!豪傑氏、逃げて下さい!」 イノ:「ヤバイって!大将さんの斬撃で小間切れのはずが、もう回復し始めてる!このままだと大将さんが喰われちまうぞ!」 マオ:「だからお前の出番だ、イノ!」 イノ:「俺?!どうしたらいい!」 マオ:「自分で考えろ!どうしたら効率よくダメージを与えれるかをな!」 イノ:「効率!?んー、四方八方から銃口を向けて、囲むように……あー、あの形だ!」 0:(SE)イノのマフピストルズが瞬時にシャーヴをドーム状に覆う。 イノ:「最高級の代物だぜ!くれてやるよ『Hors d'âge balle(オール・ダージュ・バル)』!」 0:(SE)一斉に放たれた百発の弾丸がシャーヴを襲う。 オルガ:「百丁のマフピストルズで覆うように囲いこみ、一斉射撃するなんて……やるじゃないか、イノ!」 スモモ:「あ!飛び出てきましたよ!核が逃げようとしてます!」 マオ:「あれが『主』の核か。頼むぜ『イエローボーイ』……一撃必中!」 0:(SE)宙に飛び出した核を射撃するマオ。核は粉々に砕け、シャーヴやデュースターも粉々に崩れ去ってゆく。 オルガ:「……生態反応、消失。殲滅完了だ。」 スモモ:「やりました!マオ氏、ナイスショットです!はい!」 トウゴウ:「単なる白面郎ではなかったようだな。見事だぞ。」 マオ:「いや、これも皆さんのお陰ですよ。」 イノ:「やった……俺頑張った。」 0:フラフラな足取りのイノを労うオルガ オルガ:「見直したぞ、イノ。お前は優秀な戦力だ。これからも頑張ってくれ。」 イノ:「オルガっち~!ありがとー!……あれ、めまいが、あ~……。」 0:(SE)倒れかけるも、オルガに支えられるイノ。 オルガ:「お、おい!大丈夫か、しっかりしろ!」 イノ:「いやぁ、くらくらして……」 オルガ:「……よしよし、お疲れ様だな。」 イノ:「……いい匂い。」 オルガ:「ん?」 イノ:「……御褒美。」 マオ:「オルガ主任、そいつセクハラ目的っすよ、完全に。」 イノ:「……柔肌。」 オルガ:「ま、まぁこのぐらいで労えるのなら容易いことだ……って、どこ触っているんだ!大馬鹿者!」 0:(SE)ビンタされるイノ イノ:「あいったー!」 オルガ:「悪さをしたのはどっちの手だ?右手か?左手か?ああ、確かお前は右利きだったよなぁ。おいスモモ、『レガリア』を貸してくれ。」 スモモ:「え!まさか、オルガ氏!」 イノ:「ひょっとして……!」 オルガ:「切り落とす!」 イノ:「ギャアアア!放してー!助けてー!」 マオ:「ついでに去勢もした方がよさそうだな。」 ベンジー:「……マオ。」 マオ:「ベンジーさん、もう平気なんですか?」 ベンジー:「ああ。それより、戦えなくてすまなかった。」 マオ:「そんな謝ることじゃ……」 ベンジー:「次はこんな情けない所は見せない。だから、その……」 マオ:「はい?」 ベンジー:「……見損なわないでくれ。」 マオ:「……プフッ!」 ベンジー:「え?」 マオ:「ハハハっ!」 ベンジー:「な、なぜ笑う!」 マオ:「いや、変なこと言うなぁって思いまして。なんかすいません。」 ベンジー:「変だと!こう見えても私は繊細なのだ!」 マオ:「はいはい、わかりましたって。」 ベンジー:「『はい』は一回!」 マオ:「はーい。」 ベンジー:「伸ばすな!」 トウゴウ:「……なんだか若々しくて、眩しいな。この國を護った甲斐があったってもんだ。」 スモモ:「豪傑氏~!スゴいですねぇ!未だ現役じゃないですか!」 トウゴウ:「いいや、君の作ったカラクリ箱のお陰ではないか。戦闘時のみなぎるような活力、胆力、気力。昔に置き去っていたはずの力が呼び起こされる不思議な、俗に言う『魔法』のような感覚だったぞ。改めて出会い頭の無礼を謝罪しよう。」 スモモ:「とんでもないです!こちらこそ使って頂けて嬉しいんですから!なんせ、かの有名な『鬼殺しのトウゴウ』が私のドミニオンで無双してくれるなんて!冥利に尽きますよ!はい!」 トウゴウ:「そんな古い通り名、よく知ってるねぇ。小っ恥ずかしいもんだな、ガッハッハッ!」 オルガ:「さあ、そろそろ戻るぞ。次の作戦は決まり次第追って通達する。それまでは普通の暮らしに戻ってくれ。では行くぞ。」 0: 0:(SE)数日後、何でもない平日の日暮れ。お遣いを頼まれ渋々街を歩くベンジー。 0: ベンジー:(M)オルガのやつ、なんなのだ。この間、マオが寄越した手土産が気に入ったからと言って御遣いしてこいだなんて。店まで遠いのだぞ、全く。もう絶対に私の方が多めに食べるのだ。それは絶対に譲らないのだ。 0:(SE)家の扉をあけると、照明が落とされている。 ベンジー:「戻ったのだ。……オルガー?どうして真っ暗なのだ?出掛けたのか?」 0:(SE)クラッカーの音と共に照明が灯る。メタファイヴのメンバーが揃っていた。そして、一斉に祝辞をあげる。 0: 0:「お誕生日、おめでとうー!」(ベンジー以外) ベンジー:「これは、一体……。」 オルガ:「ほら、今日誕生日だろ?自分の事なのに忘れてるみたいだからな。サプライズになると思って。みな、予定を合わせて来てくれたんだ。」 イノ:「いいタイミングに知り合えたなぁ!いやぁめでたいめでたい!ねぇねぇ、いくつになったの?教えて教えて!」 ベンジー:「……二十七。」 イノ:「うげ!一個上だったのかよ!」 ベンジー:「お前、年下だったのか。今度から敬語使うのだぞ。」 イノ:「そんな水くさいこと言わないでくれよ~!もっと仲良くしようぜ!なぁなぁ!」 ベンジー:「ウザい、離れろ。」 トウゴウ:「祝い事と聞いたら、いてもたってもいられん性分でな!我慢出来ずに駆け付けてきたぞ!早速祝いの品を用意したんだ!これだ!」 ベンジー:「……これ、酒じゃないか。」 トウゴウ:「祝い事の席と言えばこれだろぉ!しかもコイツはただのお酒じゃないんだ!ポン酒だぞ、ポン酒!」 ベンジー:「自分が飲みたいだけなのでは……。」 スモモ:「ちょっと豪傑氏!フライングは良くないですよ!私もプレゼント用意してるんですよ!ささ、開けて下さい!」 ベンジー:「スモモ、ありがとう。……なんなのだ、この本。」 スモモ:「『フェムトテクノロジーの夜明け』ですよ!最先端テクノロジーが発展した今だからこそ抑えておかなければならない基礎や歴史、これまでの経緯が綴られてる世界的名著なんです!これを読めば、ドミニオンの仕組みや採用された特殊技術などの知識も身に付ける事が出来るのです!フェムトテクノロジーは今を遡ること約三四半世紀前、シンギュラリティを迎えた年に私のお祖父ちゃんである……」 ベンジー:「わかった、わかったから……ありがとー、嬉しいのだー……。」 マオ:「なんかプレゼント渡す流れだから、俺も。はい、これ。」 ベンジー:「え?」 マオ:「どうしたんすか?」 ベンジー:「いやぁ……その……。」 マオ:「こうゆうのは、受け取ったらすぐ開けるもんなんすよ。」 ベンジー:「ああ……わかった。……っ!こ、これは、カチューシャじゃないか。」 マオ:「ほら、ベンジーさんいつも着けてるじゃないすか。」 ベンジー:「いいのか……貰っても。」 マオ:「そのために買ってきたんすから。良かったら着けて下さいよ。」 ベンジー:「……こ、こうか?」 マオ:「……やっぱり。」 ベンジー:「……なんだ。」 マオ:「似合うと思ったんすよ、それ。」 ベンジー:「あ、あ……」 マオ:「……なんすか?」 ベンジー:「あ……うん、悪く……ないのだ。」 イノ:「なんだよマオ、キザなプレゼントしやがってさー。」 マオ:「そういうお前は何を渡すんだよ。」 イノ:「それは、あれだよ。……ゴメ~ン、今月ピンチで何も買えなかったんだ。」 マオ:「ダッセェなぁ。」 イノ:「その代わりに!」 トウゴウ:「むむ、なんの真似だ。ああ待て、それはワシのポン酒!」 イノ:「レディースアーンドジェントルメーン!今宵はベンジーちゃんのお誕生日会にお集まり頂き、誠に、あー誠にありがとうございまぁす!」 マオ:「うわぁ、なに仕切り始めてんだよ。」 イノ:「皆さんお待ちかね、余興ターイム!それでは早速参りましょう。ミュージック、スタート!」 0:(SE)クラブミュージックが流れ始める スモモ:「うわあ、うるさ!」 トウゴウ:「やめんか!騒々しい!」 イノ:「皆様改めましてこんばんわ!カウルーンシティ売上ナンバーワン、指名ナンバーワンホストの……イノ様でぇす!今夜もよろしく!」 ベンジー:「ナンバーワンって本当なのか?」 マオ:「絶対に嘘です。絶対。」 オルガ:「あんなのがナンバーワンだったら速攻で店潰れるぞ。」 イノ:「今回はこちら!トウゴウ大将殿からポン酒を頂きましたー!ヒュー!」 トウゴウ:「おい、何をするつもりだ!」 イノ:「皆様ご唱和下さい!では行きます。……ハイ、イノ様が~ポン酒を飲むとこ見てみた~い!それ……」 トウゴウ:「させんぞ、この若造が!」 イノ:「うわ!ごめんて!大将!冗談!」 マオ:「あーあ。大変だー。」 オルガ:「大馬鹿者め、近所迷惑にもほどがあるぞ。……そうだベンジー。お遣いご苦労様。開けてみてくれないか、それ。」 ベンジー:「あ、うん。……『お誕生日おめでとう、ベンジー』、このケーキ。」 オルガ:「家を空けてもらう口実がてらで悪かったが、用意させてもらった。喜んでくれると嬉しいんだが……。」 ベンジー:「……。」 オルガ:「その、なんだ。それなりに長い付き合いになってしまっているし……私も人付き合いが得意な方ではない。今までお前には何もしてあげられてないし、もちろん飲みの席を避けてたのも知っていた。だから無理やり誘うことはしなかった……だがな、今回は敢えてこういう形を取らせてもらった。サプライズとはいえ、不快にさせていたら申し訳……」 ベンジー:「嬉しいよ。」 オルガ:「……そうか。」 ベンジー:「ありがとう、オルガ。」 0: 0:(SE)しばらくして、各々が出来上がる頃。 0: オルガ:「……だから言ってやったんだよぉ!あたしゃお前らの言いなりになんかならないってな!」 トウゴウ:「いいぞーオルガ女史!偉いぞー!アンタは間違ってない!アンタが大将ー!」 スモモ:「そうなんですよ豪傑氏!だからオルガ氏は人望が厚いんですよー!まさに女の鑑!アラフォーの星です!はい!」 オルガ:「おー!もっと褒めてくれて構わないぞー!おおおおおい、どこだイノ!お酌しろよ!気が利かないなぁ!」 スモモ:「イノ氏はもう潰れてしまってますよー!」 イノ:「……むにゃ……まんじゅう怖い……」 ベンジー:「ちょっと煙草吸ってくる。」 オルガ:「おう、風邪ひかないようになー。」 マオ:「はい、オルガ主任。」 オルガ:「お!酌してくれるんだな!気が利くね君ー!おや~?近くで見ると結構いい男じゃないか。どうだい、今夜お姉さんと……うぷ、ヤバイ、吐きそう。」 スモモ:「わああ、大変です!こんなこともあろうかと我が発明品『スレッジハンマー』を用意してきたんです!このアイテムでお好みの空間に衝撃を与えると四次元へ繋がる入り口が出来るのです!こうやって、えい!えい!……待って下さいね!えい!えい!」 トウゴウ:「四次元?ガッハッハッ!こりゃ傑作だ!」 オルガ:「もう無理、我慢できん!トイレだ!」 スモモ:「オルガ氏!待って下さい!戻すなら四次元に!是非四次元に!」 0: 0:(SE)ベランダにて。 0: ベンジー:「(喫煙)……ふぅー。」 マオ:「ご一緒していいっすか?」 ベンジー:「マオか。また貰い煙草か?」 マオ:「はい、よかったら是非。」 ベンジー:「別に構わないが。ほら。」 0:(SE)煙草を受け取るマオ。 マオ:「(喫煙)……ふぅー。やっぱおいしい。」 ベンジー:「せっかく辞めてるのに、吸ってていいのか?」 マオ:「たまになら別にいいかなって。……あ。」 ベンジー:「ん……これは、雪?」 0:しんしんと雪が降り始める マオ:「もうこっちも降るんすね。そんな季節っすか。」 ベンジー:「早いな、一年と言うものは。……色々な事があった。」 マオ:「そうっすね。とは言っても、自分は一ヶ月くらいしか知りませんが。」 ベンジー:「時間は無情に流れる。きっと人の心もそうなのだ。」 マオ:「……と言うと?」 ベンジー:「哀しみや苦しみは一過性で、喉元過ぎれば薄れてゆく。時々、己が薄情なのかと疑う時もある。」 マオ:「わかる気がします。逆に楽しかった事とか幸せだなって思っても、その感情は流れる日々に溶けていくものですよね。」 ベンジー:「そう……だな。でも思い起こすと再び心を蝕んで、胸を締め付ける。」 マオ:「ベンジーさんがちゃんと向き合ってる証拠ですね。」 ベンジー:「……え?」 マオ:「きっと防衛本能なんですかね、これは。臭い物には蓋をするって言うか、本来みんなやってることなんじゃないかって。だから前向きに、明日を迎える事が出来るというか。……正直、俺すごく辛かったんです。皆さんのご遺族に会うのは。」 ベンジー:「会ったのか?本来はダメなはずだろ。」 マオ:「俺のわがままです。オルガさんに無理言ってやらせてもらいました。」 ベンジー:「ひょっとして、さっきオルガが話していた『言いなりにならない』と言うのは……」 マオ:「そうなんです。かなりオブラートに包んで話してましたが。だいぶ食い下がってくれたみたいで。機密組織だから、仕方ないですよね。でも……皆さんの最後の言葉、届けないわけにはいかないでしょ。」 ベンジー:「お前……。」 マオ:「トウゴウさんの言う通り、組織の尻拭いは誰かがやらないとね。……あ、ベンジーさん、灰が。」 ベンジー:「え?あ、こんなに……んあつい!」 マオ:「いや、大袈裟過ぎですよ。煙草の灰ぐらいじゃ火傷しませんて。」 ベンジー:「わからんだろ、そんなの!女性の肌は敏感なのだ!少しは労われ!」 マオ:「まあ確かに、なんかすいません。」 ベンジー:「全くもう。……一つ気になっていたことがあるのだが、いいか。」 マオ:「なんすか。」 ベンジー:「先日、公園で煙草吸っただろ。」 マオ:「はい、頂きましたね。」 ベンジー:「ライター、壊れてなかったぞ。」 マオ:「……。」 ベンジー:「あれは一体、どういうつもりで……」 マオ:「ベンジーさん。」 ベンジー:「え!?な、なななんなのだ!」 0:ベンジーに向き直り、見つめるマオ。沈黙が流れる。 マオ:「………。」 ベンジー:「……なぜ、何も言わない。」 マオ:「気付いてないんすか?」 ベンジー:「気付く!?へ、へ、へ~……」 マオ:「……。」 ベンジー:「そ、そりゃ私だって女だ!その辺の分別はしっかり付けているし、それなりの経験もある!しかし、こんなアプローチのされ方は初めてなのだ!だ、だから、その……」 マオ:「……なんの話ですか?」 ベンジー:「え?」 マオ:「生クリーム。」 ベンジー:「……ええ?」 マオ:「口元にずっと付けたままなんすけど。」 ベンジー:「え?……あ、ホントだ。え、いつから?」 マオ:「ベンジーさんがケーキ食べ終わってからずっと、ずーっとです。一時間近く。」 ベンジー:「なんで誰も言ってくれなかったのだ!」 マオ:「だってほら、みんな結構酔ってたし。」 ベンジー:「私の誕生日で集まったのではないのか……?それなら、お前が教えてくれても良かったのではないか!?」 マオ:「俺は片付けに忙しかったし、いずれ気付くと思ってたんで。なんかすみません。」 ベンジー:「あ、いや、その……私も悪かった。あぁ、恥ずかしい……。」 マオ:「(喫煙)……ふぅー。煙草、ありがとうございました。」 ベンジー:「ああ、うん……気にするな。」 マオ:「片付けあるんで、戻りますね。そろそろいい時間だし。ベンジーさんも早く戻らないと風邪引きますよ。」 ベンジー:「私の身体は風邪に強いのだ!……あ、待って!」 マオ:「え、なんですか?」 ベンジー:「このカチューシャ……気に入ったのだ。ありがとう。」 マオ:「ハハハ。お返し、期待してますよ。」 0:(SE)部屋に戻るマオ。 ベンジー:「……へックション!(深呼吸)……全く、なんなのだ……アイツ。」 0: 0:(SE)数日後、特務課にて。 0: オルガ:「……揃ったな?揃っているな。」 マオ:「見たらわかりますよね?」 オルガ:「すまんな、いつも遅れてきて。脳が追い付かないんだ。老化が憎い……。」 トウゴウ:「ワシに比べたら幾分も若いのだ、シャキッとせんかい!オルガ女史!」 オルガ:「別に貴方、普段はご隠居してるんだから脳ミソが疲れる事ないでしょうが!一緒にしないで頂きたい!」 ベンジー:「オルガ、落ち着いて……。」 イノ:「オルガっち~、そうカリカリしてるとお肌にさわるよ?もっと笑顔でね!ほら、えーがーおー!」 オルガ:「うるさい馬鹿!女なら誰でもいい癖に!馴れ馴れしくするな!」 0:(SE)小突かれるイノ。 イノ:「あ痛ー!」 マオ:「ダッセェ……。」 オルガ:「全く、気を休める暇もないのか!今日は新たにメタファイブの一員となる……。」 0:(SE)扉があき、スモモが顔を出す。 スモモ:「すみません!お邪魔します!」 ベンジー:「スモモ、どうしたの?そんなに急いで。」 スモモ:「今日からしばらく転勤というか、新しいプロジェクトが進行するんです!なので挨拶に!はい!」 イノ:「え!?スモモちゃんどっか行っちゃうの!」 スモモ:「そうなんです!先日、試運転した『レガリア』と『ペーガソス』を本格的に実戦配備するために『デイジーカッター』と言うシンクタンクが協力してくれるそうで!ありがたいことです!はい!」 トウゴウ:「それはそれは、寂しくなるな。短い間だったが、ご苦労様。元気でな。」 スモモ:「豪傑氏!『鬼殺しのトウゴウ』からのお言葉として、しかと刻ませていただきます!はい!」 オルガ:「スモモ、ドミニオンの不具合や調整の時は改めてよろしく頼むぞ。」 スモモ:「もちろんです!いつでも馳せ参じるんでよろしくお願いします!はい!」 ベンジー:「頑張ってね、スモモ。」 スモモ:「ベンジー氏も、御武運を!それでは!」 0:(SE)部屋を後にするスモモ。 オルガ:「せわしないな、全く……」 0:(SE)再び戻ってくるスモモ。 スモモ:「すみません、あとマオ氏!」 マオ:「あ、はい。」 スモモ:「ベンジー氏を、よろしくお願いします!では、さらば!」 マオ:「はい?」 0:(SE)部屋を後にするスモモ。 ベンジー:「んな、ちょっと!スモモ!」 イノ:「おいおい、なんだぁ今の~。」 トウゴウ:「う~ん、意味深だな~。」 マオ:「ん?……ん?」 オルガ:「いい加減本題に入るぞ!……今回、このメタファイヴに新たに加わる仲間だ。『JJ』、入っていいぞ。」 0:(SE)扉が開く。 マオ:(M)。カウルーン州直轄機密組織『メタファイヴ』。俺達の目的は平和を守ること。無事明日を迎え、生きながらえる保証なんて……どこにもない。

0:(SE)カウルーン州カウルーンシティ、セントラルエリア。とある繁華街のにあるホストクラブにて。 イノ:「……飲んで飲んで飲んで、イッキ!ウェーイ!じゃあ次は俺様の番だぁ!ジョアナ夫人からシャンパン頂きましたー!ヒュー!オラぁ!行くぞお前ら!あそーれ、イノ様が~シャンパン呑むとこ見てみた~い、あよいしょ!(飲酒音)グビグビグビグビー!ぷはー!酒うめぇー!ホスト最高ー!」 0: 0:(SE)翌朝、小鳥の囀ずるなか、ごみ捨て場で目を覚ますイノ。 イノ:「……んん、あれ。ここどこだぁ?うわ臭っ!ごみ捨て場じゃねぇか!なんでこんなところで寝てるんだっけ……あー、思い出せねぇ。」 0:(SE)新人のカウルーンセキュリティ巡回班がイノに近付いてくる。 イノ:「頭痛ぇし気持ち悪ぃ……ん?なんだ、カウルーンセキュリティか。いつもご苦労さん。……いやいや、酔っ払って寝てただけだよ。お前ら、どこの班だ?おそらく新人だよなぁ。最近の若い奴等はすぐやめていくからよぉ。まぁ長く続けてくれよな。先輩からのアドバイスなんだから……ん?」 0:(SE)手錠をかけられるイノ。 イノ:「おいおい……なんの冗談だ?いくら新人だからって矢鱈目鱈、手錠かけりゃあ良いってもんじゃねぇんだぞ?俺を誰だか知ってっか?聞いて驚くなよ?俺様はなぁ、カウルーンセキュリティ巡回警備担当部署所属、イノ・カハナモクだ!現在絶賛謹慎中なんでよろしく!……って、いてててて!わかった、わかったから痛くすんじゃねぇっての!」 0: 0:(SE)同日、お昼過ぎ。メタファイヴ主任であるオルガのお宅を訪問するマオ。 マオ:「(インターホン)オルガ主任、俺です。マオです。居るんですよね。……また、来ますから。」 0:(SE)立ち去ろうとするマオ。そこで玄関の戸が開く。普段とは打って変わって、少しやつれ気味で、くたびれたオルガの姿。 オルガ:「……マオか。入れ。」 マオ:「あぁ……はい。お邪魔します。」 0:(SE)オルガ宅に上がるマオ。部屋は若干散らかっている。 オルガ:「汚いが気にするな。とりあえずそこに座ってくれ。」 マオ:「はい。よいしょっと……あの、これよかったら。」 0:人気店のケーキを差し入れ渡すマオ。 オルガ:「差し入れか、悪いな。……なんだこのケーキ、最近人気のヤツじゃないか。」 マオ:「ええ、この間出来たばっかりの喫茶店のやつです。美味しいらしいんで、是非。」 オルガ:「並んだんじゃないのか?」 マオ:「まぁ、少しだけ。」 オルガ:「……ふふ。」 マオ:「なんですか?」 オルガ:「いや、意外だなぁっと思ってな。ベンジーの奴も喜ぶだろう。……終わったか?例の話。」 マオ:「はい。皆さん、どうにか納得してくれたました。」 オルガ:「本来は私がすべき事なのだが……申し訳ない。」 マオ:「オルガ主任は立場がありますから。それにみんなから頼まれたのは、俺なんで。」 オルガ:「本当に、君には頭が下がる……。」 マオ:「無理を言ったのは俺の方なんで、むしろ取り合ってくれてありがとうございました。」 オルガ:「……。」 マオ:「……オルガ主任。ここ数日、休んでるって聞ききましたよ。」 オルガ:「……ああ、もう大丈夫だ。」 マオ:「そうですか、なら良かったです。今夜の召集、無理しないで休んでいいですから。俺がなんとかしときますんで。」 オルガ:「そうはいかない。今日は新人が来るんだ。普段の雑務はどうでもよいが、『メタファイヴ』は私の管理下にある。……だが、気持ちだけでも受け取っておくよ。ありがとう。」 ベンジー:「オルガ?バスタオルがないのだ、どこなのだ?」 0:(SE)風呂上がりのベンジーと対面するマオ。 マオ:「あ……ベンジーさん。」 ベンジー:「マオ……なんでお前が居るのだ。」 マオ:「あ……いや……それより……服……」 オルガ:「まじまじと見るな、馬鹿者!」 0:(SE)オルガのビンタをくらうマオ。 マオ:「痛ッ!」 0: 0:(SE)日が暮れて、カウルーンセキュリティ本庁。連行されたイノは地下二階に連れてかれる。 イノ:「……いい加減にしてくれよ!何時間も拘束しやがって!もう夜なんじゃねぇのか!?挙げ句の果てに、庁舎の地下に連れて来やがって!何の用事があるってんだよ!」 イノ:「(SE)……うわっ、あ痛ぁっ!なんだ、この部屋!」 0:特務課に放り込まれるイノ。そこにはメガネをかけた白衣の若い女とおよそ五十路の手錠を掛けられた男が言い争っている。 スモモ:「観念して使ってみて下さい!お願いします!」 トウゴウ:「やらん!ワシはやらんぞ!そんな得体の知れないカラクリ箱など誰が使うもんか!」 イノ:「おい、あんた達!なんなんだよここは!」 トウゴウ:「ワシも知らん!無理矢理拉致され、ここにブチ込まれたんだ!」 スモモ:「だって貴方達、召集の手紙が届いているはずなのに何日も無視し続けたじゃないですか!」 イノ:「召集?何の話だよ!」 トウゴウ:「ワシは大本営の命令以外は聞かないと天地神明に誓ったんだ!」 スモモ:「もういやー!話にならないですよー!」 0:(SE)そこへオルガ達三名が入室する。 オルガ:「スモモ、待たせたな。」 スモモ:「オルガ氏!助けて下さい!この人、全然言うこと聞いてくれないんです!変なオジサンなんです!はい!」 トウゴウ:「聞き捨てならんぞ、その言葉!ワシは変なオジサンではない!」 ベンジー:「この二人が、召集を無視していたという……。」 イノ:「だから何の話かさっぱりなんだよ!」 マオ:「……イノじゃん。」 イノ:「んえ?……ええ?!マオじゃん!久しぶりだな!元気してた?」 ベンジー:「マオ、知り合いか?」 イノ:「やっと話のわかる奴が来たぜー!とりあえずこの手錠外してくれよ!」 マオ:「……いや、知らない人だ。」 イノ:「嘘つくなよ!俺達相棒じゃねぇか!」 マオ:「『元』な。だからもう知らない人だ。」 イノ:「まだあの事で怒ってるのか!それなら謝るよー!悪かったってー!」 マオ:「別に怒ってない。」 ベンジー:「顔は怒ってるぞ、マオ。」 オルガ:「はいはい、静かにしてくれ。お二人共、手荒な真似をしてすまなかった。しかしこの召集は法的な拘束力がある。何故なら君達は『適正保持者』であるからだ。」 トウゴウ:「だからなんだと言うんだ!せっかく念願の夢であった自給自足の暮らしで、悠々自適に余生を過ごそうと思っていたのに……。山奥に土地まで買ったんだぞ!ワシは都会も、最新のテクノロジーとやらも嫌いなんだ!」 オルガ:「なかなかの頑固オヤジじゃないか……。えー、資料によると先の大戦に参加していたようだな。……元陸将か。」 トウゴウ:「そうだ!紛れもなく、このワシこそがヒノモト大帝國陸軍大将、トウゴウ・タマサブロウだ!ワシがこの街を、この國を、この世界を守ったと言っても過言ではない!なのに、なんだこの扱いは!手錠をかけられ、地下に閉じ込められるとは、なんと情けない仕打ちだ!」 オルガ:「連合国として我が國と共闘してくれたことには感謝している。だがもう少し落ち着いてくれないか。全く……こっちは戦争神経症のカウンセラーじゃないんだぞ?」 オルガ:「そんで次……君は知っているぞ。カウルーンセキュリティ内で一番の謹慎日数を誇る大馬鹿者らしいな。挙げ句、謹慎中の身でありながらホストなどしおって。恥の上塗りが過ぎるぞ。」 マオ:「お前、ホストやってたのかよ……。」 イノ:「だってよぉ、謹慎中やることねぇんだもん。タダ酒飲んで金貰えるんだから、そりゃやるだろ?」 マオ:「よくクビにならないな。」 イノ:「とにかくよぉ、この手錠外してくれよ!昔の手錠と比べて、めちゃくちゃ重てぇんだよなぁ、これ。」 オルガ:「埒が開かんな……ベンジー、見せてやってくれ。」 ベンジー:「わかった。……『ミセリコルデ』。」 0:(SE)ベンジーのドミニオンがミセリコルデを形成する。辺りに浮遊するミセリコルデに驚愕する二人。 イノ:「なんだよ……これ。剣が空中に浮いてらぁ。しかも、何本も……」 トウゴウ:「……フン、所詮手品の類だろ。」 ベンジー:「動かないでくれ。」 トウゴウ:「なんだって?……ぐわっ!?」 イノ:「ヒィッ!」 0:(SE)トウゴウとイノの手錠をミセリコルデが破壊する。 ベンジー:「これで自由に動ける。」 イノ:「手錠が……簡単にブッ壊れやがった。」 トウゴウ:「なんなんだ、このカラクリは……!」 オルガ:「せっかく開発者本人が居るんだ。説明を頼もうか。」 スモモ:「はい、わかりました。申し遅れましたが、私の名前はニナガワ・スモモです。いま、ベンジー氏に使って頂いたこの真っ白な幾何学模様の箱を『ドミニオン』と言います。この装置はとても特殊な構造でして、シンギュラリティによって飛躍的に発展した電磁気学の技術と最先端フェムトテクノロジーにより、人体の細胞内にある電子を超回転させる事によって磁力を産み出します。『ドミニオン』は強磁性体を多く含有している為、電子による超回転の影響を受けやすく、かつアイコノクラジウムと言う元素からなるヴァリアブルメタルと、生物工学に基づき発明されたアレティニウムとエラトミウムと言う元素からなるバイオメタルの融合により、人間の体力を消費し、それを原動力として磁化させる事によって、形状を自在に成型する仕組みを開発しました。そして光遺伝学の世界的権威である祖父の技術によって、光で使用者の眼から脳の情報を読み込み、認識することで使用者の想像を反映した物体を生み出す事が可能になりました。つまり、この『ドミニオン』は、人類の叡知を凌駕してしまった、魔法の兵器なんです!私が発明しました、はい!」 オルガ:「……スモモ。」 スモモ:「はい、なんですか?」 オルガ:「そう言う細かい説明は求めていない。」 スモモ:「……そうだったんですか?」 イノ:「ちょっと俺にやらしてくれ!」 スモモ:「え……キャッ!人から物をぶん取るなんて、至極卑劣極まりなく乱暴な輩!」 0:前のめりで『ドミニオン』を手にするイノ。 イノ:「面白いじゃねぇか!俺の思い通りの武器が出来上がるんだろ!スッゲェ強い武器を創ってやる!」 0:(SE)発光し始める『ドミニオン』 ベンジー:「早速ひかり始めたぞ。」 マオ:「……なんか光量すごくないか?」 スモモ:「この光はスゴいです!今まで見たことないですよ!はい!」 トウゴウ:「フンッ……何が魔法の兵器だ、くだらん。」 イノ:「いいぞいいぞ!さぁ、頼むぜ……最強の武器になってくれ!」 0:(SE)本来の『ドミニオン』よりも一回り小さい拳銃が形成される。 マオ:「……え?」 ベンジー:「形成前の『ドミニオン』よりひとまわり小さいぞ。」 イノ:「嘘だろぉ!?なんでこんなちゃっちぃ銃が出来上がるんだよ!」 オルガ:「随分頼りない拳銃だな。果たしてアレで戦えるのか?」 スモモ:「オルガ氏、侮るなかれ。彼の『ドミニオン』はかなり使えますよ、はい。」 オルガ:「なんだと?アレがか。」 スモモ:「ベンジー氏のように同じ形状の物を複製出来るタイプですね。サイズも小さいので、使いこなせば何百何千と複製が可能です……きっと化けますよ、はい。」 0:(SE)トウゴウが痺れを切らして帰ろうとする。 トウゴウ:「ええい、全く要領を得ん!時間の無駄だ!ワシは帰るぞ!」 オルガ:「待て。話を最後まで聞いてくれ。」 トウゴウ:「断る!」 オルガ:「頼む!……この通りだ。」 0:深々と頭を下げるオルガ ベンジー:「オルガが、頭を下げるなんて……」 スモモ:「確かに、珍しいですね。」 オルガ:「我々の使命は人々の命と平和を守ることだ。トウゴウ大将、貴方がそうだったように。」 トウゴウ:「……。」 オルガ:「このままでは再び多くの命が失われかねない。それも……言いづらい事だがストレートに言おう。あなた方、旧ヒノモト大帝國軍の研究によって生まれた『負の遺産』が原因なんだ。」 トウゴウ:「……その為にワシは呼ばれたのか。」 オルガ:「いいや、奇しくも軍関係の人間で適正だったのは貴方だけだ。」 トウゴウ:「なるほど……これは天命と言うことだな。」 マオ:「……どういう事なんすか?『負の遺産』って。」 ベンジー:「生物兵器。突然変異体。負の遺産。人類の汚点……」 マオ:「それ、この間言ってた……」 スモモ:「そうなんです。『デュースター』は元々、旧ヒノモト大帝国軍が研究していた生物兵器なのです。ゲノム編集による突然変異体として産み出された『デュースター』はオフターゲット変異を起こし、予期せぬ生殖細胞と化してしまったのだと考えられます。その危険性はご存知の通り、見境なく人間を襲い、寄生することによってより強力な生命体『スキズム』へと変貌を遂げていることから、生物としての本能が働いている事が確認できます。このまま野放しにしてしまうと、生態系を崩しかねません。禁忌に触れてしまったこの生物兵器は、陸戦条約で実戦投入が禁じられるほど危険なものなのです、はい。」 マオ:「そんなのと戦ってたのかよ……。」 スモモ:「そのため終戦まで使用される事はなく、それまで作られていた『デュースター』は研究資料もろとも全て廃棄処分されていたはずでした。……ですがここ近年、何故か各地で被害が出るようになったのです。」 イノ:「ああ、なんか結構前に『月刊ドゥーム』で似たようなオカルト話を読んだぞ。」 スモモ:「非常に強い生命力を持つ『デュースター』は普通の武器では太刀打ち出来ません。そこで極秘裏に『ドミニオン』の開発に乗り出したのです。先ほど説明した『ドミニオン』を組織する素材が、『デュースター』の再生能力を弱め、核を破壊する手段となりえたのです、はい。」 マオ:「そこまで秘密にする理由ってなんなんすか。」 スモモ:「……科学者としては心苦しいのですが、『ドミニオン』は数々の重大な条約違反を犯してまして……はい。」 イノ:「条約違反?どんなどんな!」 スモモ:「軍事転用可能な兵器を無許可で開発してますし、禁じられた素材や技術を使用していますからね……大々的にバレたら極刑なんです、私。」 イノ:「すげぇリスク背負ってんだなぁネーチャン。科学者の鑑だな!」 スモモ:「あと、使用した皆さんもです。極刑です。はい。」 イノ:「ギャアアアアア!」 マオ:「マジか。初耳なんだが。」 イノ:「嘘ぉ!なんで知らないの!」 ベンジー:「私は知っていた。」 イノ:「たくましいぃ!」 0:(SE)席に戻り勢いよく座るトウゴウ。 トウゴウ:「どっこらしょっと!軍部の恥はワシの恥!ましてや尻拭いの担い手はワシ以外におらんとな!ガッハッハ、けっこうけっこう!」 オルガ:「引き受けてくれるか?」 トウゴウ:「ワシの座右の銘は『世のため、人のため』!身を粉にして職務を全うするつもりだ。よろしく頼むぞ、オルガ女史。」 オルガ:「助かる。貴方の戦争経験は我々『メタファイヴ』の要になるだろう。では早速だが作戦の説明を……」 マオ:「え、オルガ主任。」 オルガ:「どうした。」 マオ:「一人……足りないですよ?」 オルガ:「そうなんだ。まだ適正保持者が見つかっていないんだ。だから……。」 スモモ:「だから私がいるんです!はい!」 0: 0:(SE)深夜、埠頭へ向かう為、一行を乗せたトラックが走っている。 0: イノ:「うわぁ……やだぁ……死にたくねぇよぉ…」 マオ:「ダセェな。なにビビってんだよ。」 イノ:「お前はすげぇよなぁ……昔から変わらねぇよなぁ。恐怖の感情、どこに置いて来たんだよ……。」 マオ:「知るか。お前が情けないだけだろ。」 イノ:「当たりつえぇ……。」 トウゴウ:「構えすぎだ、若いの。戦場では緊張と恐怖が真の敵となりうる。逆もまた然り、油断と慢心が命取りともなる。つまり、塩梅が大事なんだ。」 イノ:「えぇ~……結局どっち~……?」 ベンジー:「スモモ、本当に大丈夫なのか?戦闘に参加するなんて……」 スモモ:「大丈夫です!何て言ったってこれがありますから!はい!」 ベンジー:「これは……グローブ、それとブーツ?」 スモモ:「そうなんです!このグローブは『レガリア』、それでブーツは『ペーガソス』!」 ベンジー:「なんなのだ……『ドミニオン』といい、そのネーミングセンス。」 スモモ:「直感です!はい!」 オルガ:「それを試す為に、作戦に参加したんだとさ。スモモがどうしてもと言って聞かないんだ。サポートは頼んだぞ、ベンジー。」 ベンジー:「……うん。」 スモモ:「心配御無用!これは適正の無い私でも扱える代物なんです!『ドミニオン』と比べて性能は劣るものの、誰でも使えるようにしてあるのです!はい!」 ベンジー:「スゴいなスモモは。なんでも作れるのだな。」 スモモ:「そんな大した事ではないです。全て先人たちの知恵なので。あと、お祖父ちゃんのお陰です。はい。」 イノ:「なにそれ!使って見せてくれよ、ネーチャンよぉ!」 ベンジー:「き、急にテンション変わったぞ。さっきまでお通夜ムードだったのに、コイツ。」 マオ:「そういう奴なんで、気にしなくて大丈夫ですよ。」 スモモ:「ダメですよ!もし今起動したら、車が真っ二つになります!はい!」 トウゴウ:「ガッハッハ!随分と豪快な代物なんだな!ワシゃ派手で豪快なものが大好きなんだ!」 オルガ:「自給自足の生活が夢って言っていた割に中身は軍人の頃と変わらず、豪傑のようだな。」 マオ:「ほら、自給自足もワイルドだし、そう言う意味合いなんじゃ……。」 オルガ:「なるほど、合点がいった。」 スモモ:「この『レガリア』は非適正者向けに特化した試作兵器なんです。最新型のアトミック・パワー・サプライを採用しているこの兵器は、高輝度の発光により装着者の細胞と精神を読み込み、レーザーオシレーターから生み出された光によって武器を具現化する事に成功しました。私の場合は両の手先に電動ノコギリの様な武器が出来ましたが、装着者の精神状態に依存するため、それぞれ異なります。形成されたレーザー光は、どんな物質であろうと焼き斬る事が出来てしまうので、取り扱い注意の兵器なのです!そして『ペーガソス』は脚力を使わずに高速移動ができ、いざと言うときは五十メートル以上をも跳躍することが理論上可能なんです!なので研究所では試せないから、手ずから実戦投入して、試運転しようって魂胆なんです!はい!」 イノ:「マジかよ!疲れないで移動出来るなんて最高かよ!そのブーツ俺にくれよ!」 スモモ:「まだ性能が保証されてませんので!ダメです!と言うか足のサイズが私用だし、貴方にだけは履かれたくないです!そこは意地でも!はい!」 イノ:「……なんか俺、生理的に嫌われてる?」 オルガ:「皆、今回は新人の肩慣らしがてら……と言いたいところだが、ここ数日間で『デュースター』の増殖力が桁違いな地域がある。ウェストサイドにある埠頭で怪しい動きを見せているんだ。幸いフォーチュンタワーの奴らは鳴りを潜めている。この間に他の『スキズム』を叩くぞ。皆、心しておけ。」 0: 0:(SE)埠頭に到着する一行。 0: トウゴウ:「あーおーいー、とばりがー……。」 マオ:「トウゴウさん、何言ってるです?」 トウゴウ:「風が渡っていると思ってな。気にするな。」 イノ:「真冬の埠頭はクソさみぃなぁ……ちょっとトイレ!」 オルガ:「おい、勝手に行動するな!用は済ませとけと言っただろう!」 イノ:「仕方ないだろ生理現象なんだからよぉ!ちょっと失礼!」 0:(SE)走って防波堤へ向かうイノ。 オルガ:「コラ待て!……あの大馬鹿者め!マオ、付いて行ってやれ!」 マオ:「えー俺が?多分大丈夫ですよ。アイツのことだし。」 オルガ:「単独行動は危険だ!曲がりなりにも元相棒なんだろ?これは命令だ!」 マオ:「……はーい。行ってきまーす。」 オルガ:「おい、走れよ!走って行け!」 マオ:「はぁ……了解でーす。」 0:(SE)小走りでイノを追うマオ オルガ:「なんで小走りなんだ!もっと全力で走れ!……全く、何があったと言うんだ、あの二人。」 ベンジー:「オルガ、敵の数は?」 オルガ:「それがまだ活動していないようなんだ。レーダーに反応が現れない。ここの奴らも既に知性を得ている可能性は十分に考えられる。」 スモモ:「本当に驚きましたよ。まさか『スキズム』が知性を持っているなんて。とても厄介ですね。はい。」 トウゴウ:「そんなことは関係なかろう。打ち倒すまでだ。」 オルガ:「ところでトウゴウ。貴方の『ドミニオン』はどんな代物なんだ?」 トウゴウ:「それがなぁ……まだワシにもわからんのだ。」 オルガ:「なんだと!?」 ベンジー:「まだ使ってないのか?」 トウゴウ:「ああ。使うならば実戦の、敵と相対した時だと決めておったからな。」 スモモ:「さすがです、豪傑氏。」 トウゴウ:「その呼び方……好みだ。」 オルガ:「初めはすぐに使えない事だってあるんだぞ!何を考えているんだ!」 トウゴウ:「使えなければそれまでだ。それが天命、ワシの潮時だ。最悪の場合でも、また今まで通り後釜が来る。そうだろう?」 オルガ:「全く、適正保持者は変わり者ばかりだな。……レーダーに反応あり!総員、臨戦態勢に入れ!敵は……こちら側と、あの二人の方に分散している!イノ、マオ、気を付けろ!」 0: 0: 0:(SE)防波堤の先で用を足しているイノ。インカムからオルガの声。 イノ:「……ふぅ~、超気持ち~。なんで冬の立ち小便ってこんなに気持ちいいんだろ。……んえ?気を付けろ?そんな急に言われても止まらない……うぉあっ!!」 0:(SE)防波堤にへばり着いたスキズムがイノの足を掴み海に引きずり込む。かろうじて防波堤の縁に手をかける。 オルガ:「イノ!大丈夫か!」 イノ:「激ヤバだぜ!なんか、全身変態ボンテージ野郎が俺の足を掴んで海に引きずり込もうとしやがってる!クソぉ、放しやがれ!」 オルガ:「その表現やめろ!マオはまだか!真冬の海に落ちたらひとたまりもないぞ!」 イノ:「この手を放したら一巻の終わりかよ!こうなったら……『マフピストルズ』!打ちのめしてくれぇ!」 0:(SE)スキズムに発砲。しかし、無傷。 オルガ:「どうだ、やったか!」 イノ:「……なんで、傷一つ付いてねぇんだよ!」 オルガ:「諦めるな、イノ!」 イノ:「いやだぁ!死にたくねぇ!」 マオ:「死なせるかよ、『ヴィントレス』!」 0:(SE)スキズムの腕を撃ち抜き千切れる。海に逃げ帰るスキズム。 イノ:「うわっ!野郎の腕が吹っ飛んだ……マオ!ありがとうぉ!」 マオ:「本当に……世話が焼ける相棒だな。」 0: 0:(SE)オルガの近く、ベンジーとスモモが共闘している。 ベンジー:「『ミセリコルデ』!」 オルガ:「ベンジー!左だ!」 スモモ:「よいっしょ!」 0:(SE)『レガリア』でデュースターを焼き切るスモモ ベンジー:「スモモ、助かる。」 スモモ:「えへへ、でしょ?やっぱ私の発明はスゴいですね!我ながらアッパレですね!はい!」 オルガ:「油断するな。今回の『デュースター』は数が桁違いだ。恐らく司令塔となる『スキズム』がどこかに居るはず。」 スモモ:「まさか、もうこんなに囲まれているなんて……それにしても、豪傑氏はまだ『ドミニオン』を使用してませんよ。少し心配です。はい。」 オルガ:「それが不可思議なんだ。『デュースター』達がトウゴウに近付いていない。」 ベンジー:「……間合い。」 スモモ:「はい?」 ベンジー:「トウゴウは『ドミニオン』を知らず内に起動している。それを『デュースター』達は気が付いている。」 スモモ:「それなら説明がつきます!『ドミニオン』の可能性は無限大です。使用者の気迫が武器になっているのかも……。」 0:(SE)一匹のデュースターがトウゴウに近づく オルガ:「動いた……一匹の『デュースター』がトウゴウとの距離を詰めたぞ!」 トウゴウ:「……入ったな?『ネネキリ』!」 0:(SE)瞬間、トウゴウのドミニオンは刀剣と化した。三メートル超の刀身での一太刀は数十体のデュースターを切り捨てていた スモモ:「え、何が起きたんですか!?」 ベンジー:「一太刀で……十数体の『デュースター』を倒した。」 オルガ:「刀剣の使い手だったのか……!」 トウゴウ:「フン、この程度か。手応えが足りんな。」 0:(SE)駆け足でオルガに近くイノ イノ:「ヤバいヤバい!もう帰りたい!寒いし帰りたい!死にたくない!」 オルガ:「戻ったか。もう勝手な行動はするな。」 イノ:「オルガっちー!もう勘弁してよー!」 0:(SE)すがるようにオルガの足にしがみつくイノ オルガ:「ぬっ!?足にしがみつくな!穢らわしい!フンっ!」 0:(SE)蹴飛ばされるイノ イノ:「ウギャッ!」 スモモ:「弱った新入りを蹴飛ばすなんて……オルガ氏、容赦ないですね。」 マオ:「ダッセェ、アイツ……。」 ベンジー:「マオ、『スキズム』に襲われたそうだな。」 マオ:「はい。スキズムにしては、腕が一撃で吹き飛ぶほど弱い奴でした。治癒能力に個体差があるんすかね。」 オルガ:「個体差だと?……っ!皆、固まれ!囲まれている!……おいおい、嘘だろ!?」 0:(SE)デュースターが集まり始める スモモ:「こんなの、データにないです!」 ベンジー:「個々の『デュースター』が集まって……『スキズム』を形作っている。」 イノ:「七体、八体……変態ボンテージ野郎がどんどん増えてやがる!」 オルガ:「そういうことか……皆、怯むな!所詮は『デュースター』の寄せ集めに過ぎない!人間に寄生した『スキズム』ほどの治癒能力はこいつらにないはずだ!」 マオ:「かといって、八体に囲まれるなんて……こんな状況、初めてなんですけど、どうします?」 トウゴウ:「……無論、切り捨てるまで。」 マオ:「トウゴウさん、強気すぎますって。」 トウゴウ:「でなければ、生き残れんぞ?」 イノ:「俺の『マフピストルズ』で倒せるわけがねぇよ!」 スモモ:「イノ氏!聞いて下さい!貴方はやれば出来る子です!イメージするんです!沢山!」 イノ:「沢山って何を!」 スモモ:「とにかく沢山!それでいけます!私の発明を信じて下さい!」 イノ:「ああ……なんかわかんねぇけど、やるしかねぇんだろ!」 オルガ:「ベンジー、何体いける!」 ベンジー:「一度に三体が限界。」 オルガ:「他の者は!」 トウゴウ:「二体は任せろ。」 マオ:「助かります、俺は一体です。」 スモモ:「あとは一体づつ。イノ氏、頑張って仕留めて下さいよ!ねぇ」 イノ:「ああ……やってやるよ!」 オルガ:「皆、頼んだぞ!……我々を、『メタファイヴ』を舐めるなよ!」 ベンジー:「千の慈悲によって、浄化したまえ。『ミセリコルデ』!」 0:(SE)千本の短剣が一斉に三体のスキズムに降り注ぐ。 トウゴウ:「不浄な者達よ、ワシの手によって葬ってくれる!『ヨミオクリ』!」 0:(SE)目にもとまらぬ速さで抜刀し、スキズム二体を切り捨てる スモモ:「我が子のように愛してますからね、『レガリア』……行きますよ!」 0:(SE)レーザー光で形成された電動鋸で焼き切られるスキズム マオ:「この距離だったら……お前の出番だ、『フェザーライト』!」 0:(SE)散弾銃の餌食になるスキズム イノ:「イメージしろ……沢山、沢山……!『V.S.O.P.バレルズ』!ブチまけろぉ!」 0:(SE)浮遊する無数の小銃が現れ様々な角度からハチの巣にされるスキズム。レーダーから反応が消えてゆく。 イノ:「……倒した。俺が?マジかよ!」 オルガ:「生態反応は消滅。皆、よくやってくれた。」 スモモ:「やりましたね!やっぱり私の発明は宇宙一なんですねー!はい!」 トウゴウ:「フン、本気を出していたらワシ一人で終わらせられたがな。」 マオ:「一時はどうなるかと思ったけど、みんなすげえな。……ベンジーさん、大丈夫すか。」 0:様子がおかしいベンジー。 ベンジー:「いや……大丈夫……っ!」 マオ:「ベンジーさん!」 0:(SE)倒れるベンジーをだき抱えるマオ。 オルガ:「どうした、ベンジー!」 マオ:「意識を失いかけてます!」 イノ:「おいおい、ベンジーちゃん!しっかりしよろ!」 トウゴウ:「触れただけでも致命的とは、厄介なもののけだな……。」 スモモ:「見せて下さい!……少しだけ『デュースター』に当てられてますね。このぐらいなら……!」 0:懐から注射器を取り出すスモモ。 マオ:「スモモさん、その注射器は……。」 スモモ:「先日完成したばかりのワクチンなんです。デュースターの菌株を微量に接種することで免疫力を高めるのです。」 オルガ:「助かるのか!」 スモモ:「もちろんです!少し胸元を失礼しますよ……」 イノ:「お!その注射器どこに刺すんだ!俺も手伝うぞ!」 オルガ:「見るな!触るな!近寄るな!」 0:(SE)ビンタされるイノ。 イノ:「ウギャっ!」 スモモ:「マオ氏、そのままベンジー氏を固定していて下さい。」 マオ:「はい。」 スモモ:「動かしたら駄目ですよ。ベンジー氏、痛いですけど我慢してくださいね……えい!」 0:(SE)心臓に注射されるベンジー。意識を取り戻す ベンジー:「……クッ!」 マオ:「ベンジーさん!」 ベンジー:「……マオ。」 オルガ:「意識が戻ったか!」 イノ:「ああ……よかった、助かって……!」 スモモ:「……え!?ちょっと待って下さい!ベンジー氏、顔真っ赤です!発熱の副反応ですか!」 ベンジー:「う……うるさいのだスモモ!マオも離せなのだ!一人で立てるなのだ!」 マオ:「あ……すみません。」 スモモ:「ああ、ベンジー氏!急に動かないで下さい!まず胸元閉めて!」 イノ:「ベンジーちゃん、意外とナイスバディなんだなぁ!」 ベンジー:「こっちを見るな!変態!」 0:(SE)腹を蹴られるイノ。 イノ:「グハァ!」 トウゴウ:「……オルガ女史、一ついいか。」 オルガ:「トウゴウ、どうかしたか。」 トウゴウ:「ワシは昔から、鼻がよく利くんだ。特に、暗澹とした負の香りに敏感でな。」 オルガ:「それは、どういう……。」 トウゴウ:「居るぞ。奴らの『主』が、近くに……」 オルガ:「近くだと?レーダーには生態反応が出ていないぞ。」 トウゴウ:「海の中に居るとしたら……どうだ?」 0:(SE)突如、サメに寄生したデュースターが海面から飛び出して来る。 イノ:「うわぁ!なんか海から飛び出してきたぞ!」 マオ:「なんだ、あれ……サメ?」 スモモ:「正確には、デュースターに寄生されたサメです!名付けるならば……『シャーヴ』!」 ベンジー:「オルガ、下がって!『ミセリコ……』ぐうっ!」 0:堪らずその場に跪くベンジー。 オルガ:「ベンジー、無理をするな!」 トウゴウ:「ここはワシに任せろ!『ネネキリ』!」 0:(SE)トウゴウの一閃が直撃するも、切り口は即座に修復される。 イノ:「良いぞ大将!切り身にしちまえ!」 マオ:「ボサッとすんな。俺達もやるぞ。」 イノ:「おう!ベンジーちゃんみたいに沢山だよな、沢山……」 0:(SE)無数のマフピストルズが宙に複製されてゆく。 マオ:「スモモさん、オルガ主任とベンジーさんをよろしくお願いします。」 スモモ:「もちろんです!私の最高傑作であるその『ドミニオン』で、奴らをやっつけちゃって下さいね!はい!」 0:(SE)敵を惹き付け戦うトウゴウ。追ってマオが参戦する。 トウゴウ:「フン、猪口才なやつめ。地面を泳ぐ様に這いずり回るか。あまつさえ驚異的な再生能力で斬っても斬ってもキリがないと言うのに。」 マオ:「『チャーリーキラー』!」 0:(SE)擲弾を放ち牽制するマオ トウゴウ:「爆発で奴の軌道を修正したか。……おい白面郎!」 マオ:「白面……俺の事ですか?」 トウゴウ:「お前さんの武器で奴の軌道をワシに向ける事は出来るか。」 マオ:「トウゴウさん、それは危険すぎますよ。」 トウゴウ:「そうかも知れん。なに、これはちょっとした博打だ。ワシが道筋を示す。後は任せたぞ。」 マオ:「……捨て身ですか。」 トウゴウ:「元を辿れば、我々軍部の研究からなる事象。これは清算だ。ならばこの身朽ち果てるまで、挑むのみ。」 マオ:「……絶対に。」 トウゴウ:「……ん?」 マオ:「絶対に生きて帰りますから。みんなで。」 トウゴウ:「……フフ、良い面構えじゃないか。では、ゆくぞ!」 0:(SE)マフピストルズを複製するイノ イノ:「……んんん~、これで百丁ぐらい増やせたか?はぁ~、なんか頭がボーっとしてきたぜ。」 スモモ:「イノ氏、あまり無理すると倒れてしまいますよ!気を付けて下さい!」 オルガ:「あのサメ、全く止まる気配がないぞ。」 スモモ:「回遊魚としての本能が残っているのでしょうね。しかし人間以外に寄生する例は初めてです。それにデュースターの集合体でスキズムを形作るなんて、思考が働いてるとしか思えません。」 オルガ:「奴らに知性が芽生え学習しているのは、人間に寄生したからなのだろうか。その上、各地のデュースターが独自の伝達能力で情報を共有している可能性もある。そうでなければ、ここまで進化した事の説明がつかない。とても厄介だな。」 ベンジー:「オルガ、私も戦う。」 オルガ:「やめておけ。無駄死にするつもりか。」 スモモ:「そうです!彼らならきっとやっつけてくれますよ!はい!」 ベンジー:「……マオ、死ぬなよ。」 0:(SE)マオの攻撃でシャーヴの軌道がトウゴウへと向かってゆく。 マオ:「トウゴウさん、そっちに向かってます!」 トウゴウ:「よし、その調子だ。かかってこい、もののけ!」 マオ:「イノ、やれるか!」 イノ:「ああ……やってやるよ!」 トウゴウ:「咲かすも一興、散るも一興。ならば派手にかぶこう……『マツリバヤシ』!」 0:(SE)ドミニオンが二刀に変形し、向かってくるシャーヴに二刀の刀を斬り下ろすトウゴウ。斬撃が轟き、カマイタチの如く太刀筋が放たれシャーヴを切り刻む。 オルガ:「刀剣で長距離の攻撃が可能なのか!?しかし……」 マオ:(M)前まではミランダさんが足止めをして、キサラギさんの火吹きで弱らせ、ハオンさんがトドメをさす流れだった。出来るだけ追い詰めて、核が体外に逃げようとするところを狙う。だとしたら……。 スモモ:「大変です!シャーヴの動きが止まりません!豪傑氏、逃げて下さい!」 イノ:「ヤバイって!大将さんの斬撃で小間切れのはずが、もう回復し始めてる!このままだと大将さんが喰われちまうぞ!」 マオ:「だからお前の出番だ、イノ!」 イノ:「俺?!どうしたらいい!」 マオ:「自分で考えろ!どうしたら効率よくダメージを与えれるかをな!」 イノ:「効率!?んー、四方八方から銃口を向けて、囲むように……あー、あの形だ!」 0:(SE)イノのマフピストルズが瞬時にシャーヴをドーム状に覆う。 イノ:「最高級の代物だぜ!くれてやるよ『Hors d'âge balle(オール・ダージュ・バル)』!」 0:(SE)一斉に放たれた百発の弾丸がシャーヴを襲う。 オルガ:「百丁のマフピストルズで覆うように囲いこみ、一斉射撃するなんて……やるじゃないか、イノ!」 スモモ:「あ!飛び出てきましたよ!核が逃げようとしてます!」 マオ:「あれが『主』の核か。頼むぜ『イエローボーイ』……一撃必中!」 0:(SE)宙に飛び出した核を射撃するマオ。核は粉々に砕け、シャーヴやデュースターも粉々に崩れ去ってゆく。 オルガ:「……生態反応、消失。殲滅完了だ。」 スモモ:「やりました!マオ氏、ナイスショットです!はい!」 トウゴウ:「単なる白面郎ではなかったようだな。見事だぞ。」 マオ:「いや、これも皆さんのお陰ですよ。」 イノ:「やった……俺頑張った。」 0:フラフラな足取りのイノを労うオルガ オルガ:「見直したぞ、イノ。お前は優秀な戦力だ。これからも頑張ってくれ。」 イノ:「オルガっち~!ありがとー!……あれ、めまいが、あ~……。」 0:(SE)倒れかけるも、オルガに支えられるイノ。 オルガ:「お、おい!大丈夫か、しっかりしろ!」 イノ:「いやぁ、くらくらして……」 オルガ:「……よしよし、お疲れ様だな。」 イノ:「……いい匂い。」 オルガ:「ん?」 イノ:「……御褒美。」 マオ:「オルガ主任、そいつセクハラ目的っすよ、完全に。」 イノ:「……柔肌。」 オルガ:「ま、まぁこのぐらいで労えるのなら容易いことだ……って、どこ触っているんだ!大馬鹿者!」 0:(SE)ビンタされるイノ イノ:「あいったー!」 オルガ:「悪さをしたのはどっちの手だ?右手か?左手か?ああ、確かお前は右利きだったよなぁ。おいスモモ、『レガリア』を貸してくれ。」 スモモ:「え!まさか、オルガ氏!」 イノ:「ひょっとして……!」 オルガ:「切り落とす!」 イノ:「ギャアアア!放してー!助けてー!」 マオ:「ついでに去勢もした方がよさそうだな。」 ベンジー:「……マオ。」 マオ:「ベンジーさん、もう平気なんですか?」 ベンジー:「ああ。それより、戦えなくてすまなかった。」 マオ:「そんな謝ることじゃ……」 ベンジー:「次はこんな情けない所は見せない。だから、その……」 マオ:「はい?」 ベンジー:「……見損なわないでくれ。」 マオ:「……プフッ!」 ベンジー:「え?」 マオ:「ハハハっ!」 ベンジー:「な、なぜ笑う!」 マオ:「いや、変なこと言うなぁって思いまして。なんかすいません。」 ベンジー:「変だと!こう見えても私は繊細なのだ!」 マオ:「はいはい、わかりましたって。」 ベンジー:「『はい』は一回!」 マオ:「はーい。」 ベンジー:「伸ばすな!」 トウゴウ:「……なんだか若々しくて、眩しいな。この國を護った甲斐があったってもんだ。」 スモモ:「豪傑氏~!スゴいですねぇ!未だ現役じゃないですか!」 トウゴウ:「いいや、君の作ったカラクリ箱のお陰ではないか。戦闘時のみなぎるような活力、胆力、気力。昔に置き去っていたはずの力が呼び起こされる不思議な、俗に言う『魔法』のような感覚だったぞ。改めて出会い頭の無礼を謝罪しよう。」 スモモ:「とんでもないです!こちらこそ使って頂けて嬉しいんですから!なんせ、かの有名な『鬼殺しのトウゴウ』が私のドミニオンで無双してくれるなんて!冥利に尽きますよ!はい!」 トウゴウ:「そんな古い通り名、よく知ってるねぇ。小っ恥ずかしいもんだな、ガッハッハッ!」 オルガ:「さあ、そろそろ戻るぞ。次の作戦は決まり次第追って通達する。それまでは普通の暮らしに戻ってくれ。では行くぞ。」 0: 0:(SE)数日後、何でもない平日の日暮れ。お遣いを頼まれ渋々街を歩くベンジー。 0: ベンジー:(M)オルガのやつ、なんなのだ。この間、マオが寄越した手土産が気に入ったからと言って御遣いしてこいだなんて。店まで遠いのだぞ、全く。もう絶対に私の方が多めに食べるのだ。それは絶対に譲らないのだ。 0:(SE)家の扉をあけると、照明が落とされている。 ベンジー:「戻ったのだ。……オルガー?どうして真っ暗なのだ?出掛けたのか?」 0:(SE)クラッカーの音と共に照明が灯る。メタファイヴのメンバーが揃っていた。そして、一斉に祝辞をあげる。 0: 0:「お誕生日、おめでとうー!」(ベンジー以外) ベンジー:「これは、一体……。」 オルガ:「ほら、今日誕生日だろ?自分の事なのに忘れてるみたいだからな。サプライズになると思って。みな、予定を合わせて来てくれたんだ。」 イノ:「いいタイミングに知り合えたなぁ!いやぁめでたいめでたい!ねぇねぇ、いくつになったの?教えて教えて!」 ベンジー:「……二十七。」 イノ:「うげ!一個上だったのかよ!」 ベンジー:「お前、年下だったのか。今度から敬語使うのだぞ。」 イノ:「そんな水くさいこと言わないでくれよ~!もっと仲良くしようぜ!なぁなぁ!」 ベンジー:「ウザい、離れろ。」 トウゴウ:「祝い事と聞いたら、いてもたってもいられん性分でな!我慢出来ずに駆け付けてきたぞ!早速祝いの品を用意したんだ!これだ!」 ベンジー:「……これ、酒じゃないか。」 トウゴウ:「祝い事の席と言えばこれだろぉ!しかもコイツはただのお酒じゃないんだ!ポン酒だぞ、ポン酒!」 ベンジー:「自分が飲みたいだけなのでは……。」 スモモ:「ちょっと豪傑氏!フライングは良くないですよ!私もプレゼント用意してるんですよ!ささ、開けて下さい!」 ベンジー:「スモモ、ありがとう。……なんなのだ、この本。」 スモモ:「『フェムトテクノロジーの夜明け』ですよ!最先端テクノロジーが発展した今だからこそ抑えておかなければならない基礎や歴史、これまでの経緯が綴られてる世界的名著なんです!これを読めば、ドミニオンの仕組みや採用された特殊技術などの知識も身に付ける事が出来るのです!フェムトテクノロジーは今を遡ること約三四半世紀前、シンギュラリティを迎えた年に私のお祖父ちゃんである……」 ベンジー:「わかった、わかったから……ありがとー、嬉しいのだー……。」 マオ:「なんかプレゼント渡す流れだから、俺も。はい、これ。」 ベンジー:「え?」 マオ:「どうしたんすか?」 ベンジー:「いやぁ……その……。」 マオ:「こうゆうのは、受け取ったらすぐ開けるもんなんすよ。」 ベンジー:「ああ……わかった。……っ!こ、これは、カチューシャじゃないか。」 マオ:「ほら、ベンジーさんいつも着けてるじゃないすか。」 ベンジー:「いいのか……貰っても。」 マオ:「そのために買ってきたんすから。良かったら着けて下さいよ。」 ベンジー:「……こ、こうか?」 マオ:「……やっぱり。」 ベンジー:「……なんだ。」 マオ:「似合うと思ったんすよ、それ。」 ベンジー:「あ、あ……」 マオ:「……なんすか?」 ベンジー:「あ……うん、悪く……ないのだ。」 イノ:「なんだよマオ、キザなプレゼントしやがってさー。」 マオ:「そういうお前は何を渡すんだよ。」 イノ:「それは、あれだよ。……ゴメ~ン、今月ピンチで何も買えなかったんだ。」 マオ:「ダッセェなぁ。」 イノ:「その代わりに!」 トウゴウ:「むむ、なんの真似だ。ああ待て、それはワシのポン酒!」 イノ:「レディースアーンドジェントルメーン!今宵はベンジーちゃんのお誕生日会にお集まり頂き、誠に、あー誠にありがとうございまぁす!」 マオ:「うわぁ、なに仕切り始めてんだよ。」 イノ:「皆さんお待ちかね、余興ターイム!それでは早速参りましょう。ミュージック、スタート!」 0:(SE)クラブミュージックが流れ始める スモモ:「うわあ、うるさ!」 トウゴウ:「やめんか!騒々しい!」 イノ:「皆様改めましてこんばんわ!カウルーンシティ売上ナンバーワン、指名ナンバーワンホストの……イノ様でぇす!今夜もよろしく!」 ベンジー:「ナンバーワンって本当なのか?」 マオ:「絶対に嘘です。絶対。」 オルガ:「あんなのがナンバーワンだったら速攻で店潰れるぞ。」 イノ:「今回はこちら!トウゴウ大将殿からポン酒を頂きましたー!ヒュー!」 トウゴウ:「おい、何をするつもりだ!」 イノ:「皆様ご唱和下さい!では行きます。……ハイ、イノ様が~ポン酒を飲むとこ見てみた~い!それ……」 トウゴウ:「させんぞ、この若造が!」 イノ:「うわ!ごめんて!大将!冗談!」 マオ:「あーあ。大変だー。」 オルガ:「大馬鹿者め、近所迷惑にもほどがあるぞ。……そうだベンジー。お遣いご苦労様。開けてみてくれないか、それ。」 ベンジー:「あ、うん。……『お誕生日おめでとう、ベンジー』、このケーキ。」 オルガ:「家を空けてもらう口実がてらで悪かったが、用意させてもらった。喜んでくれると嬉しいんだが……。」 ベンジー:「……。」 オルガ:「その、なんだ。それなりに長い付き合いになってしまっているし……私も人付き合いが得意な方ではない。今までお前には何もしてあげられてないし、もちろん飲みの席を避けてたのも知っていた。だから無理やり誘うことはしなかった……だがな、今回は敢えてこういう形を取らせてもらった。サプライズとはいえ、不快にさせていたら申し訳……」 ベンジー:「嬉しいよ。」 オルガ:「……そうか。」 ベンジー:「ありがとう、オルガ。」 0: 0:(SE)しばらくして、各々が出来上がる頃。 0: オルガ:「……だから言ってやったんだよぉ!あたしゃお前らの言いなりになんかならないってな!」 トウゴウ:「いいぞーオルガ女史!偉いぞー!アンタは間違ってない!アンタが大将ー!」 スモモ:「そうなんですよ豪傑氏!だからオルガ氏は人望が厚いんですよー!まさに女の鑑!アラフォーの星です!はい!」 オルガ:「おー!もっと褒めてくれて構わないぞー!おおおおおい、どこだイノ!お酌しろよ!気が利かないなぁ!」 スモモ:「イノ氏はもう潰れてしまってますよー!」 イノ:「……むにゃ……まんじゅう怖い……」 ベンジー:「ちょっと煙草吸ってくる。」 オルガ:「おう、風邪ひかないようになー。」 マオ:「はい、オルガ主任。」 オルガ:「お!酌してくれるんだな!気が利くね君ー!おや~?近くで見ると結構いい男じゃないか。どうだい、今夜お姉さんと……うぷ、ヤバイ、吐きそう。」 スモモ:「わああ、大変です!こんなこともあろうかと我が発明品『スレッジハンマー』を用意してきたんです!このアイテムでお好みの空間に衝撃を与えると四次元へ繋がる入り口が出来るのです!こうやって、えい!えい!……待って下さいね!えい!えい!」 トウゴウ:「四次元?ガッハッハッ!こりゃ傑作だ!」 オルガ:「もう無理、我慢できん!トイレだ!」 スモモ:「オルガ氏!待って下さい!戻すなら四次元に!是非四次元に!」 0: 0:(SE)ベランダにて。 0: ベンジー:「(喫煙)……ふぅー。」 マオ:「ご一緒していいっすか?」 ベンジー:「マオか。また貰い煙草か?」 マオ:「はい、よかったら是非。」 ベンジー:「別に構わないが。ほら。」 0:(SE)煙草を受け取るマオ。 マオ:「(喫煙)……ふぅー。やっぱおいしい。」 ベンジー:「せっかく辞めてるのに、吸ってていいのか?」 マオ:「たまになら別にいいかなって。……あ。」 ベンジー:「ん……これは、雪?」 0:しんしんと雪が降り始める マオ:「もうこっちも降るんすね。そんな季節っすか。」 ベンジー:「早いな、一年と言うものは。……色々な事があった。」 マオ:「そうっすね。とは言っても、自分は一ヶ月くらいしか知りませんが。」 ベンジー:「時間は無情に流れる。きっと人の心もそうなのだ。」 マオ:「……と言うと?」 ベンジー:「哀しみや苦しみは一過性で、喉元過ぎれば薄れてゆく。時々、己が薄情なのかと疑う時もある。」 マオ:「わかる気がします。逆に楽しかった事とか幸せだなって思っても、その感情は流れる日々に溶けていくものですよね。」 ベンジー:「そう……だな。でも思い起こすと再び心を蝕んで、胸を締め付ける。」 マオ:「ベンジーさんがちゃんと向き合ってる証拠ですね。」 ベンジー:「……え?」 マオ:「きっと防衛本能なんですかね、これは。臭い物には蓋をするって言うか、本来みんなやってることなんじゃないかって。だから前向きに、明日を迎える事が出来るというか。……正直、俺すごく辛かったんです。皆さんのご遺族に会うのは。」 ベンジー:「会ったのか?本来はダメなはずだろ。」 マオ:「俺のわがままです。オルガさんに無理言ってやらせてもらいました。」 ベンジー:「ひょっとして、さっきオルガが話していた『言いなりにならない』と言うのは……」 マオ:「そうなんです。かなりオブラートに包んで話してましたが。だいぶ食い下がってくれたみたいで。機密組織だから、仕方ないですよね。でも……皆さんの最後の言葉、届けないわけにはいかないでしょ。」 ベンジー:「お前……。」 マオ:「トウゴウさんの言う通り、組織の尻拭いは誰かがやらないとね。……あ、ベンジーさん、灰が。」 ベンジー:「え?あ、こんなに……んあつい!」 マオ:「いや、大袈裟過ぎですよ。煙草の灰ぐらいじゃ火傷しませんて。」 ベンジー:「わからんだろ、そんなの!女性の肌は敏感なのだ!少しは労われ!」 マオ:「まあ確かに、なんかすいません。」 ベンジー:「全くもう。……一つ気になっていたことがあるのだが、いいか。」 マオ:「なんすか。」 ベンジー:「先日、公園で煙草吸っただろ。」 マオ:「はい、頂きましたね。」 ベンジー:「ライター、壊れてなかったぞ。」 マオ:「……。」 ベンジー:「あれは一体、どういうつもりで……」 マオ:「ベンジーさん。」 ベンジー:「え!?な、なななんなのだ!」 0:ベンジーに向き直り、見つめるマオ。沈黙が流れる。 マオ:「………。」 ベンジー:「……なぜ、何も言わない。」 マオ:「気付いてないんすか?」 ベンジー:「気付く!?へ、へ、へ~……」 マオ:「……。」 ベンジー:「そ、そりゃ私だって女だ!その辺の分別はしっかり付けているし、それなりの経験もある!しかし、こんなアプローチのされ方は初めてなのだ!だ、だから、その……」 マオ:「……なんの話ですか?」 ベンジー:「え?」 マオ:「生クリーム。」 ベンジー:「……ええ?」 マオ:「口元にずっと付けたままなんすけど。」 ベンジー:「え?……あ、ホントだ。え、いつから?」 マオ:「ベンジーさんがケーキ食べ終わってからずっと、ずーっとです。一時間近く。」 ベンジー:「なんで誰も言ってくれなかったのだ!」 マオ:「だってほら、みんな結構酔ってたし。」 ベンジー:「私の誕生日で集まったのではないのか……?それなら、お前が教えてくれても良かったのではないか!?」 マオ:「俺は片付けに忙しかったし、いずれ気付くと思ってたんで。なんかすみません。」 ベンジー:「あ、いや、その……私も悪かった。あぁ、恥ずかしい……。」 マオ:「(喫煙)……ふぅー。煙草、ありがとうございました。」 ベンジー:「ああ、うん……気にするな。」 マオ:「片付けあるんで、戻りますね。そろそろいい時間だし。ベンジーさんも早く戻らないと風邪引きますよ。」 ベンジー:「私の身体は風邪に強いのだ!……あ、待って!」 マオ:「え、なんですか?」 ベンジー:「このカチューシャ……気に入ったのだ。ありがとう。」 マオ:「ハハハ。お返し、期待してますよ。」 0:(SE)部屋に戻るマオ。 ベンジー:「……へックション!(深呼吸)……全く、なんなのだ……アイツ。」 0: 0:(SE)数日後、特務課にて。 0: オルガ:「……揃ったな?揃っているな。」 マオ:「見たらわかりますよね?」 オルガ:「すまんな、いつも遅れてきて。脳が追い付かないんだ。老化が憎い……。」 トウゴウ:「ワシに比べたら幾分も若いのだ、シャキッとせんかい!オルガ女史!」 オルガ:「別に貴方、普段はご隠居してるんだから脳ミソが疲れる事ないでしょうが!一緒にしないで頂きたい!」 ベンジー:「オルガ、落ち着いて……。」 イノ:「オルガっち~、そうカリカリしてるとお肌にさわるよ?もっと笑顔でね!ほら、えーがーおー!」 オルガ:「うるさい馬鹿!女なら誰でもいい癖に!馴れ馴れしくするな!」 0:(SE)小突かれるイノ。 イノ:「あ痛ー!」 マオ:「ダッセェ……。」 オルガ:「全く、気を休める暇もないのか!今日は新たにメタファイブの一員となる……。」 0:(SE)扉があき、スモモが顔を出す。 スモモ:「すみません!お邪魔します!」 ベンジー:「スモモ、どうしたの?そんなに急いで。」 スモモ:「今日からしばらく転勤というか、新しいプロジェクトが進行するんです!なので挨拶に!はい!」 イノ:「え!?スモモちゃんどっか行っちゃうの!」 スモモ:「そうなんです!先日、試運転した『レガリア』と『ペーガソス』を本格的に実戦配備するために『デイジーカッター』と言うシンクタンクが協力してくれるそうで!ありがたいことです!はい!」 トウゴウ:「それはそれは、寂しくなるな。短い間だったが、ご苦労様。元気でな。」 スモモ:「豪傑氏!『鬼殺しのトウゴウ』からのお言葉として、しかと刻ませていただきます!はい!」 オルガ:「スモモ、ドミニオンの不具合や調整の時は改めてよろしく頼むぞ。」 スモモ:「もちろんです!いつでも馳せ参じるんでよろしくお願いします!はい!」 ベンジー:「頑張ってね、スモモ。」 スモモ:「ベンジー氏も、御武運を!それでは!」 0:(SE)部屋を後にするスモモ。 オルガ:「せわしないな、全く……」 0:(SE)再び戻ってくるスモモ。 スモモ:「すみません、あとマオ氏!」 マオ:「あ、はい。」 スモモ:「ベンジー氏を、よろしくお願いします!では、さらば!」 マオ:「はい?」 0:(SE)部屋を後にするスモモ。 ベンジー:「んな、ちょっと!スモモ!」 イノ:「おいおい、なんだぁ今の~。」 トウゴウ:「う~ん、意味深だな~。」 マオ:「ん?……ん?」 オルガ:「いい加減本題に入るぞ!……今回、このメタファイヴに新たに加わる仲間だ。『JJ』、入っていいぞ。」 0:(SE)扉が開く。 マオ:(M)。カウルーン州直轄機密組織『メタファイヴ』。俺達の目的は平和を守ること。無事明日を迎え、生きながらえる保証なんて……どこにもない。