台本概要
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タイトル | そらのかなたとアストラロイド |
---|---|
作者名 | 孫我(そが) (@manndamudamu) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
二人の宇宙飛行士とその息子のお話 【使用に関して】 ・周りが困らない程度のアドリブや語尾の変更OK ・作者への連絡は基本不要ですが、youtubeやアーカイブが残るモノに関しては報告いただけると助かります。(聴きに行きます) 331 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
そら | 男 | 89 | 男子高校生 |
かなた | 女 | 93 | そらの母親。宇宙飛行士。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
かなた:あー、あー、もしもーし。そらー?聞こえてるー?おはよー。
そら:聞こえてるよ。おはよ。
かなた:お、おけおけ。よいしょっと。元気?朝ごはんは?ちゃんと食べた?
そら:うん、食べたよ。そっちは?
かなた:もちろん、ちゃんと食べましたわよ。宇宙飛行士は体力が命ですからね。
そら:ふーん。
かなた:そらも、雅治のおいしい料理ちゃんと食べて、いっぱい体力付けなよ
そら:はいはい。
かなた:何よ。なんかテンション低いじゃない。
そら:あー、昨日ちょっと夜更かししちゃって。
かなた:へー。あんた、何してたの?
そら:何って、別に、なんでもいいじゃん。
かなた:・・・あーそっかそっか、なるほどねー。
そら:何だよ。
かなた:いやいや、そらも思春期の男の子だもんなあ、って思って。
そら:は?何言ってんの!勉強だよ、勉強してたんだよ!!
かなた:保健体育の?
そら:だから!!もう!大した用事ないなら切るよ?
かなた:ああ、ごめんごめん、そう怒んないでよ。軽いスペースジョークじゃーん!
そら:なんだよ、スペースジョークってただの下ネタじゃん。
かなた:ふふ、ごめんって。そら、勉強してたんだ?偉いねえ。
そら:まあね。
かなた:雅治から聞いたよ。最近勉強、頑張ってるんだって?
そら:父さん・・・。余計な事を・・・。
かなた:どーしたの急に。
そら:別に急じゃないよ。前から勉強はちゃんとやってました。
かなた:ふーんほんとかなあ?
そら:そうだよ。昨日遅くなったのは定期試験が近くてちょっと追い込んでただけ。
かなた:ふーんそうなんだ。ね、日本、もう結構寒い?
そら:・・・うん、夜はだいぶ寒くなってきた。
かなた:そっか、じゃあ、風邪ひかないようにしなきゃね。
そら:うん・・・。
かなた:そら?
そら:あ、うん、なに?
かなた:なに?じゃないよ。大丈夫?なんか調子悪いの?
そら:ああ、いや、全然元気だけど・・・。ねえ、かなた。
かなた:ん?なに?
そら:・・・今日はなんで、普通の通話なの?
かなた:あー、ごめんねー。なんか、カメラの調子が悪くてさ。
そら:宇宙飛行士なんだからそれぐらい直せるでしょ。
かなた:あんたは宇宙飛行士をなんだと思ってんのよ。
そら:うーん、何でもできる人?
かなた:流石にカメラは直せません。
そら:あ、そう。
かなた:あ、そうだ、今そこに雅治いる?
そら:ううん。いない。今日は遅くなるって。
かなた:そっか。大変だね。雅治も元気?変わりない?
そら:うん、元気、だと思う。
かなた:なんだよー。はっきりしないなあ。あんたたち仲悪いの?
そら:いや、そういうわけではないけど・・・。
かなた:じゃあ、ちょっとは雅治のことも気にかけてあげてね。
そら:・・・うん。あのさ、かなた。
かなた:ん?
そら:あのさ、その、今日のかなたなんか変じゃない?
かなた:え?何が?
そら:いや、なんか、なんとなくなんだけど。いつもと違うというか。
かなた:え?そうかなあ、よくわかんないけど。
そら:俺も正直よくわかってない。けど、言葉で表せられないというか、感覚的に、なんか気持ち悪い。
そら:最初は気のせいかなって思ったんだけど、こう、話せば話すほどっていうか・・・。
かなた:・・・。
そら:ほら、今だって、普段のかなたなら、「あんた何言ってんのよ、母親の声も忘れちゃったの?」とか言って、食って掛かってくるところなのに。
かなた:それは・・・。
そら:・・・あなた、誰ですか?
:
0:間
:
かなた:あーあ、こんなに早くばれちゃうかぁ!おかしいなあ、なんで分かっちゃうんだろう。
そら:やっぱり、あなた、かなたじゃないんですね。
かなた:うーん、かなたはかなたなんだけどなあ。
そら:ふざけないでください。やっぱりそうだ、確かに声はよく似ているけど、かなたとはどこか違う。
かなた:あー、やっぱり親子の絆ってやつなのかなあ。なんかショックだなあ。
そら:なんなんですか一体。新手のイタズラですか?もう切りますね。
かなた:あー!待って待って切らないで!イタズラじゃないの!
そら:じゃあ、なんなんですか。詐欺ですか?通報しますよ?
かなた:だから、ちょっと落ち着いてって!イタズラでも詐欺でもないから!
そら:俺は至って冷静です。
かなた:わかった、今からちゃんと話すから、通話は切らないで。
そら:・・・わかりましたよ。早くしてください。
かなた:ありがとう。えー、わたしは、宇宙開発局が開発したAI、「アストラロイドのかなた」。
そら:は?アストラロイド?
かなた:そ、いわゆる人工知能ってやつねー。
そら:その人工知能がなんで?しかもかなたの声で・・・。
かなた:ホントはまだ話す手筈じゃなかったんだけど・・・。そら、落ち着いて聞いてね。あなたの母親、美星かなたさんは、宇宙空間にて不慮の事故に会い、つい先日亡くなりました。
そら:・・・え?
:
:
:
0:そらのかなたとアストラロイド
:
:
:
:
0:あれから次の日。そらは草が生い茂った丘の、一部だけ周りより背が低くなった所に寝そべり、満天の星空を眺めている。
:そらの携帯に着信。
:
:
そら:もしもし。
かなた:こんばんは。
そら:・・・なんですか?
かなた:別に?ちょっと話したいなって思って。
そら:用がないなら、かけてこないでください。
かなた:いいじゃん、愛する息子と話したいって思う親心、少しはわかってよ。
そら:あなたは母親でもなければ人間でもないですよね。
かなた:まぁ、そうなんだけどさあ・・・。てかさ、敬語やめてよ。前みたいにもっとフランクにさあ。
そら:無理ですよ。そんな急に言われたって。
かなた:ねえ、そらぁ・・・
そら:やめてください!あんたはかなたじゃない!かなたの声でベラベラ喋らないでください!
かなた:・・・そっか、そうだよね。ごめん、私が悪かった。
:
0:間
:
かなた:・・・ねえ、やっぱりさ、声は同じでも分かるもんなの?
そら:え?
かなた:だって、あなたのお母さんが亡くなった事を気づかせないために通話を始めたのに、あっさりバレちゃうだもん。私昨日あれから、開発者の人達にお小言言われたんだからね。
そら:そんなの騙してるようなもんじゃないですか。それに、そんなウソ、いつまでもつき続けられるわけない。
かなた:そうね、でも、雅治の意向だったのよ。そらが高校を卒業するまでは隠し通してくれって。
そら:父さんが・・・
かなた:うん・・・。で、どうなの?
そら:何がですか?
かなた:声よ声。やっぱ同じでも分かるもんなの?
そら:・・・分かりますよ。例え同じ声でも。
かなた:なんで?
そら:なんでって・・・。こう、何か違うんですよ。上手く言葉にできないけど、気持ち悪い、というか。違和感なんです。かなたの声だけどかなたじゃない、みたいな。
かなた:そうなんだ・・・。私ね、宇宙センターに遊びに来た子供達に、宇宙について説明する為に作られたの。あなたのお母さんから声を提供してもらってね。
そら:かなたが?
かなた:そう。だから、この声は間違いなく彼女の声。けど、そらはこの声を気持ち悪いって言った。私、なんだかちょっと傷ついちゃった。
そら:傷ついたって・・・。あなた、AIなんでしょ。AIに感情なんてあるはずないじゃないですか。
かなた:君ぃ、いつの話をしているのかな?今の時代AIだって感情を持ってるんだよ。人工知能がただの機械だったのは令和で終わったの。
そら:令和・・・。俺、まだ産まれてない。
かなた:うっ、そ、そうか。それはそれはお若い事で。
そら:あなただって、正確に言えば僕より年下ですよね?
かなた:いや、そうだけど、そうじゃなくて。私ね、かなたの記憶も貰ってるの。だから、そらが産まれた時も、初めて歩いた時も、ちゃんと覚えてる。
そら:それは、かなたの記憶です。あなたは覚えてるんじゃない。かなたから記憶をもらって、知ってるだけです。
かなた:そうだね・・・。あー、やっぱそうなのかなー?
そら:・・・。
かなた:・・・ねえ、そら。かなたの最後の声聞きたい?
そら:この通話、最後にしてくれるんですか?
かなた:いや、私じゃなくて。かなた。あなたのお母さん。
そら:え?
かなた:かなた達が乗っていた船にね、どこかから飛んできた岩がぶつかったの。その後船は大破しちゃったんだけど、それまでの短い時間で、かなたはあなたにメッセージを残してた。
そら:メッセージ?
かなた:そう。とっても短いんだけどね。聞く?
そら:・・・
かなた:どうする?
そら:・・・聞かせてください。
かなた:わかった。じゃあ、再生させるね。
:
0:少しの間
:
かなた:そら!聞こえてる!?あー、えっと、今めっちゃピンチ!私多分もうすぐ死ぬわ!で、えーっと、元気でね!!雅治と仲良くね!!
かなた:それからー、あー、大好きだよそら!!あんたが私の子でほんとによかった!大好き愛してる!すっっっごく愛してる!!
かなた:・・・それじゃあ、そら、達者でな!
かなた:あ、そうだそうだ、最後に・・・。待ってるぞ!そら!ここで、待ってるから!私は、あんたなら・・・
:
0:少しの間
:
かなた:メッセージはここで終わり。これがかなたの最後の声。
そら:かなたの、声だった・・・、本物の、かなたの声・・・。
かなた:そうだね。
そら:俺、正直、実感なかったんです。かなたが死んだって言われても。
かなた:うん。
そら:でも・・・。かなたは・・・、本当に死んでしまったんですね。
かなた:・・・うん。
そら:・・・あー、なんか、最後までかなたらしかったなあ。きっと大変な状況だったのに、それすらも楽しんでる感じで。ってかなんですか、「多分私もうすぐ死ぬわ!」って。これから死ぬ人が普通そんな事言います?
そら:やっぱりかなたは普通じゃなかったんですよ。じゃないと、あんな状況で、大好きだよ、とか、愛してるとか、私の子で、ほんとに、よかっ、た、なんて、言える、わけ・・・。
かなた:そら・・・。
そら:俺、かなたみたいな宇宙飛行士になるのが夢だったんです。強くて、かっこよくて。だから最近は勉強も頑張って。
かなた:うん、知ってる。
そら:だから、見てもらいたかったなあ、俺も宇宙に行くところ。かなたに見てもらいたかった・・・。
:
0:そらの気持ちが落ち着くまでの間
:
そら:・・・あー、すみません。冷静になったら、あなたにはひどい事ばかり言ってましたね。気持ち悪いとか、その、色々。
かなた:ううん。いいの大丈夫。それに、私も今のかなたの声を聞いて、なんかわかっちゃった。私はかなただけど、かなたとは違うって。
そら:でしょ。
かなた:うん。すごいね、かなたは。私は誇りに思うよ。彼女の名前を貰えたこと。彼女の記憶を貰えたこと。彼女の声を貰えたこと。
そら:・・・はい。
かなた:ねえ、そら。よくさ、映画とかであるじゃない?あいつは死んでも俺達の心の中で生き続けるってやつ。
そら:なんですか。かなたは俺の心の中にいるから元気出せって?
かなた:違うよ。映画とかだと心の中だけどさ、かなたには私がいるじゃない。
そら:え?
かなた:かなたには声も記憶も共有しているアストラロイドの私がいる。
かなた:私をかなただと思ってほしいとは言わない。
かなた:ただ、寂しくなったら、辛くなったら、私の声、聞いてくれないかな。
そら:あなたの声を。
かなた:そう、そうやって私を認めてほしい。
かなた:じゃないと私も正直きついんだ。私は存在しちゃいけないのかなって・・・。
そら:あ、違います!俺はそういうつもりで言ってたわけじゃ・・・。
かなた:わかってる!そらは優しいし、私の存在を否定したくて言ってるわけじゃないって。でも、私から見ても、あなたは私の愛する息子なの。かなたの最後の想いにだって負けない自信がある。
かなた:だから、時々でいいから、そらの声聞かせてもらってもいいかな。
そら:・・・わかりました。
かなた:ほんと!?
そら:でも、あなたのことは「かなたさん」って呼びます。
かなた:いいよ、それでも。ふふ、ありがとう、そら。大好きだよ愛してる。
そら:・・・かなたのマネ、しないでください。
かなた:マネじゃないです~。かなたの心からの言葉です~。
そら:なんか、ややこしいなあ。
かなた:そうだね(笑う)
:
0:少しの間
:
かなた:ねえ、そら。
そら:なんですか?
かなた:そらが宇宙に行くところ、かなたに見せてね。
そら:・・・うん、絶対。いつか、必ず。
:
:
0:数年後
:
:
かなた:そら、ハンカチ持った?
そら:持ったよ。
かなた:筆記用具ちゃんとかばんに入れた?
そら:入れたよ。
かなた:えーと、それから・・・
そら:あー、もううるさいなあ!!昨日の夜ちゃんと確認したから大丈夫だって!!
かなた:えーだって心配なんだもん。
そら:あのさ、かなただったら絶対そんなこと言わないからね。
かなた:いやー、分かんないよ?そらは、試験当日の息子を送り出すかなたを知ってるの?
そら:それはー、しらないけど。
かなた:ほらあ。
そら:う、うるさいなあ。あ、じゃあ、もう俺、行くからね。
かなた:うん、行ってらっしゃいそら。
そら:行ってきます!かなたさん!
:
0:家を出るそら。
:
かなた:頑張ってね、そら。私達応援してるから。あなたならきっと・・・。
0:
0:
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かなた:空の彼方にたどり着ける。
:
:
:
0:終わり
かなた:あー、あー、もしもーし。そらー?聞こえてるー?おはよー。
そら:聞こえてるよ。おはよ。
かなた:お、おけおけ。よいしょっと。元気?朝ごはんは?ちゃんと食べた?
そら:うん、食べたよ。そっちは?
かなた:もちろん、ちゃんと食べましたわよ。宇宙飛行士は体力が命ですからね。
そら:ふーん。
かなた:そらも、雅治のおいしい料理ちゃんと食べて、いっぱい体力付けなよ
そら:はいはい。
かなた:何よ。なんかテンション低いじゃない。
そら:あー、昨日ちょっと夜更かししちゃって。
かなた:へー。あんた、何してたの?
そら:何って、別に、なんでもいいじゃん。
かなた:・・・あーそっかそっか、なるほどねー。
そら:何だよ。
かなた:いやいや、そらも思春期の男の子だもんなあ、って思って。
そら:は?何言ってんの!勉強だよ、勉強してたんだよ!!
かなた:保健体育の?
そら:だから!!もう!大した用事ないなら切るよ?
かなた:ああ、ごめんごめん、そう怒んないでよ。軽いスペースジョークじゃーん!
そら:なんだよ、スペースジョークってただの下ネタじゃん。
かなた:ふふ、ごめんって。そら、勉強してたんだ?偉いねえ。
そら:まあね。
かなた:雅治から聞いたよ。最近勉強、頑張ってるんだって?
そら:父さん・・・。余計な事を・・・。
かなた:どーしたの急に。
そら:別に急じゃないよ。前から勉強はちゃんとやってました。
かなた:ふーんほんとかなあ?
そら:そうだよ。昨日遅くなったのは定期試験が近くてちょっと追い込んでただけ。
かなた:ふーんそうなんだ。ね、日本、もう結構寒い?
そら:・・・うん、夜はだいぶ寒くなってきた。
かなた:そっか、じゃあ、風邪ひかないようにしなきゃね。
そら:うん・・・。
かなた:そら?
そら:あ、うん、なに?
かなた:なに?じゃないよ。大丈夫?なんか調子悪いの?
そら:ああ、いや、全然元気だけど・・・。ねえ、かなた。
かなた:ん?なに?
そら:・・・今日はなんで、普通の通話なの?
かなた:あー、ごめんねー。なんか、カメラの調子が悪くてさ。
そら:宇宙飛行士なんだからそれぐらい直せるでしょ。
かなた:あんたは宇宙飛行士をなんだと思ってんのよ。
そら:うーん、何でもできる人?
かなた:流石にカメラは直せません。
そら:あ、そう。
かなた:あ、そうだ、今そこに雅治いる?
そら:ううん。いない。今日は遅くなるって。
かなた:そっか。大変だね。雅治も元気?変わりない?
そら:うん、元気、だと思う。
かなた:なんだよー。はっきりしないなあ。あんたたち仲悪いの?
そら:いや、そういうわけではないけど・・・。
かなた:じゃあ、ちょっとは雅治のことも気にかけてあげてね。
そら:・・・うん。あのさ、かなた。
かなた:ん?
そら:あのさ、その、今日のかなたなんか変じゃない?
かなた:え?何が?
そら:いや、なんか、なんとなくなんだけど。いつもと違うというか。
かなた:え?そうかなあ、よくわかんないけど。
そら:俺も正直よくわかってない。けど、言葉で表せられないというか、感覚的に、なんか気持ち悪い。
そら:最初は気のせいかなって思ったんだけど、こう、話せば話すほどっていうか・・・。
かなた:・・・。
そら:ほら、今だって、普段のかなたなら、「あんた何言ってんのよ、母親の声も忘れちゃったの?」とか言って、食って掛かってくるところなのに。
かなた:それは・・・。
そら:・・・あなた、誰ですか?
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かなた:あーあ、こんなに早くばれちゃうかぁ!おかしいなあ、なんで分かっちゃうんだろう。
そら:やっぱり、あなた、かなたじゃないんですね。
かなた:うーん、かなたはかなたなんだけどなあ。
そら:ふざけないでください。やっぱりそうだ、確かに声はよく似ているけど、かなたとはどこか違う。
かなた:あー、やっぱり親子の絆ってやつなのかなあ。なんかショックだなあ。
そら:なんなんですか一体。新手のイタズラですか?もう切りますね。
かなた:あー!待って待って切らないで!イタズラじゃないの!
そら:じゃあ、なんなんですか。詐欺ですか?通報しますよ?
かなた:だから、ちょっと落ち着いてって!イタズラでも詐欺でもないから!
そら:俺は至って冷静です。
かなた:わかった、今からちゃんと話すから、通話は切らないで。
そら:・・・わかりましたよ。早くしてください。
かなた:ありがとう。えー、わたしは、宇宙開発局が開発したAI、「アストラロイドのかなた」。
そら:は?アストラロイド?
かなた:そ、いわゆる人工知能ってやつねー。
そら:その人工知能がなんで?しかもかなたの声で・・・。
かなた:ホントはまだ話す手筈じゃなかったんだけど・・・。そら、落ち着いて聞いてね。あなたの母親、美星かなたさんは、宇宙空間にて不慮の事故に会い、つい先日亡くなりました。
そら:・・・え?
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0:そらのかなたとアストラロイド
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0:あれから次の日。そらは草が生い茂った丘の、一部だけ周りより背が低くなった所に寝そべり、満天の星空を眺めている。
:そらの携帯に着信。
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そら:もしもし。
かなた:こんばんは。
そら:・・・なんですか?
かなた:別に?ちょっと話したいなって思って。
そら:用がないなら、かけてこないでください。
かなた:いいじゃん、愛する息子と話したいって思う親心、少しはわかってよ。
そら:あなたは母親でもなければ人間でもないですよね。
かなた:まぁ、そうなんだけどさあ・・・。てかさ、敬語やめてよ。前みたいにもっとフランクにさあ。
そら:無理ですよ。そんな急に言われたって。
かなた:ねえ、そらぁ・・・
そら:やめてください!あんたはかなたじゃない!かなたの声でベラベラ喋らないでください!
かなた:・・・そっか、そうだよね。ごめん、私が悪かった。
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かなた:・・・ねえ、やっぱりさ、声は同じでも分かるもんなの?
そら:え?
かなた:だって、あなたのお母さんが亡くなった事を気づかせないために通話を始めたのに、あっさりバレちゃうだもん。私昨日あれから、開発者の人達にお小言言われたんだからね。
そら:そんなの騙してるようなもんじゃないですか。それに、そんなウソ、いつまでもつき続けられるわけない。
かなた:そうね、でも、雅治の意向だったのよ。そらが高校を卒業するまでは隠し通してくれって。
そら:父さんが・・・
かなた:うん・・・。で、どうなの?
そら:何がですか?
かなた:声よ声。やっぱ同じでも分かるもんなの?
そら:・・・分かりますよ。例え同じ声でも。
かなた:なんで?
そら:なんでって・・・。こう、何か違うんですよ。上手く言葉にできないけど、気持ち悪い、というか。違和感なんです。かなたの声だけどかなたじゃない、みたいな。
かなた:そうなんだ・・・。私ね、宇宙センターに遊びに来た子供達に、宇宙について説明する為に作られたの。あなたのお母さんから声を提供してもらってね。
そら:かなたが?
かなた:そう。だから、この声は間違いなく彼女の声。けど、そらはこの声を気持ち悪いって言った。私、なんだかちょっと傷ついちゃった。
そら:傷ついたって・・・。あなた、AIなんでしょ。AIに感情なんてあるはずないじゃないですか。
かなた:君ぃ、いつの話をしているのかな?今の時代AIだって感情を持ってるんだよ。人工知能がただの機械だったのは令和で終わったの。
そら:令和・・・。俺、まだ産まれてない。
かなた:うっ、そ、そうか。それはそれはお若い事で。
そら:あなただって、正確に言えば僕より年下ですよね?
かなた:いや、そうだけど、そうじゃなくて。私ね、かなたの記憶も貰ってるの。だから、そらが産まれた時も、初めて歩いた時も、ちゃんと覚えてる。
そら:それは、かなたの記憶です。あなたは覚えてるんじゃない。かなたから記憶をもらって、知ってるだけです。
かなた:そうだね・・・。あー、やっぱそうなのかなー?
そら:・・・。
かなた:・・・ねえ、そら。かなたの最後の声聞きたい?
そら:この通話、最後にしてくれるんですか?
かなた:いや、私じゃなくて。かなた。あなたのお母さん。
そら:え?
かなた:かなた達が乗っていた船にね、どこかから飛んできた岩がぶつかったの。その後船は大破しちゃったんだけど、それまでの短い時間で、かなたはあなたにメッセージを残してた。
そら:メッセージ?
かなた:そう。とっても短いんだけどね。聞く?
そら:・・・
かなた:どうする?
そら:・・・聞かせてください。
かなた:わかった。じゃあ、再生させるね。
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かなた:そら!聞こえてる!?あー、えっと、今めっちゃピンチ!私多分もうすぐ死ぬわ!で、えーっと、元気でね!!雅治と仲良くね!!
かなた:それからー、あー、大好きだよそら!!あんたが私の子でほんとによかった!大好き愛してる!すっっっごく愛してる!!
かなた:・・・それじゃあ、そら、達者でな!
かなた:あ、そうだそうだ、最後に・・・。待ってるぞ!そら!ここで、待ってるから!私は、あんたなら・・・
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かなた:メッセージはここで終わり。これがかなたの最後の声。
そら:かなたの、声だった・・・、本物の、かなたの声・・・。
かなた:そうだね。
そら:俺、正直、実感なかったんです。かなたが死んだって言われても。
かなた:うん。
そら:でも・・・。かなたは・・・、本当に死んでしまったんですね。
かなた:・・・うん。
そら:・・・あー、なんか、最後までかなたらしかったなあ。きっと大変な状況だったのに、それすらも楽しんでる感じで。ってかなんですか、「多分私もうすぐ死ぬわ!」って。これから死ぬ人が普通そんな事言います?
そら:やっぱりかなたは普通じゃなかったんですよ。じゃないと、あんな状況で、大好きだよ、とか、愛してるとか、私の子で、ほんとに、よかっ、た、なんて、言える、わけ・・・。
かなた:そら・・・。
そら:俺、かなたみたいな宇宙飛行士になるのが夢だったんです。強くて、かっこよくて。だから最近は勉強も頑張って。
かなた:うん、知ってる。
そら:だから、見てもらいたかったなあ、俺も宇宙に行くところ。かなたに見てもらいたかった・・・。
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そら:・・・あー、すみません。冷静になったら、あなたにはひどい事ばかり言ってましたね。気持ち悪いとか、その、色々。
かなた:ううん。いいの大丈夫。それに、私も今のかなたの声を聞いて、なんかわかっちゃった。私はかなただけど、かなたとは違うって。
そら:でしょ。
かなた:うん。すごいね、かなたは。私は誇りに思うよ。彼女の名前を貰えたこと。彼女の記憶を貰えたこと。彼女の声を貰えたこと。
そら:・・・はい。
かなた:ねえ、そら。よくさ、映画とかであるじゃない?あいつは死んでも俺達の心の中で生き続けるってやつ。
そら:なんですか。かなたは俺の心の中にいるから元気出せって?
かなた:違うよ。映画とかだと心の中だけどさ、かなたには私がいるじゃない。
そら:え?
かなた:かなたには声も記憶も共有しているアストラロイドの私がいる。
かなた:私をかなただと思ってほしいとは言わない。
かなた:ただ、寂しくなったら、辛くなったら、私の声、聞いてくれないかな。
そら:あなたの声を。
かなた:そう、そうやって私を認めてほしい。
かなた:じゃないと私も正直きついんだ。私は存在しちゃいけないのかなって・・・。
そら:あ、違います!俺はそういうつもりで言ってたわけじゃ・・・。
かなた:わかってる!そらは優しいし、私の存在を否定したくて言ってるわけじゃないって。でも、私から見ても、あなたは私の愛する息子なの。かなたの最後の想いにだって負けない自信がある。
かなた:だから、時々でいいから、そらの声聞かせてもらってもいいかな。
そら:・・・わかりました。
かなた:ほんと!?
そら:でも、あなたのことは「かなたさん」って呼びます。
かなた:いいよ、それでも。ふふ、ありがとう、そら。大好きだよ愛してる。
そら:・・・かなたのマネ、しないでください。
かなた:マネじゃないです~。かなたの心からの言葉です~。
そら:なんか、ややこしいなあ。
かなた:そうだね(笑う)
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かなた:ねえ、そら。
そら:なんですか?
かなた:そらが宇宙に行くところ、かなたに見せてね。
そら:・・・うん、絶対。いつか、必ず。
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0:数年後
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かなた:そら、ハンカチ持った?
そら:持ったよ。
かなた:筆記用具ちゃんとかばんに入れた?
そら:入れたよ。
かなた:えーと、それから・・・
そら:あー、もううるさいなあ!!昨日の夜ちゃんと確認したから大丈夫だって!!
かなた:えーだって心配なんだもん。
そら:あのさ、かなただったら絶対そんなこと言わないからね。
かなた:いやー、分かんないよ?そらは、試験当日の息子を送り出すかなたを知ってるの?
そら:それはー、しらないけど。
かなた:ほらあ。
そら:う、うるさいなあ。あ、じゃあ、もう俺、行くからね。
かなた:うん、行ってらっしゃいそら。
そら:行ってきます!かなたさん!
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かなた:頑張ってね、そら。私達応援してるから。あなたならきっと・・・。
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