台本概要
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タイトル | 黒の他人 |
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作者名 | ぴー (@p_kouhai_chan) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
本作品はボイコネで投稿していたものを再投稿したものになります。 男2女2の4人劇です。 また性的な表現・発言がありますのでご了承下さい。 【あらすじ】 一般家庭の子供としてそれぞれの家庭で不自由なく過ごしていた颯太と心結。 そんな中ある日突然両親が離婚してしまう。 そして時は流れ太一と叶恵が職場で再開し交際の後、結婚したいと颯太と心結と報告する為に顔合わせを行い、二人は義理の兄妹になる。 共に暮らしていく中で、いつのまにか互いを意識し強く惹かれ合い義理の兄妹から恋人になるのであった。 だが、これが最悪の結末を招く 原案提供:みーさん なので過度なアレンジやアドリブはお控えください。 522 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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颯太 | 男 | 162 | 五条颯太(ごじょうそうた)男子大学生 |
太一 | 男 | 58 | 五条太一(ごじょうたいち)颯太の父 |
心結 | 女 | 141 | 神代心結(かみしろみゆう) 女子高生 |
叶恵 | 女 | 51 | 神代叶恵(かみしろかなえ)心結の母 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
(プロローグ)
心結:分かってた。こんな日が訪れることを…。だってそれは変えられない事実だから
颯太:叶うなら…あの日の自分に戻りたい。そして…やり直したい。俺たちの関係を無かった事にしたい
心結:だから…生まれ変わったら…今度は…
(本編)
0:レストラン内。テーブルには叶恵と心結が座って颯太と太一を見つめる
颯太:オヤジ…これはどういう事だよ?話が違うだろ
太一:そうか?久しぶりに飲みに行こうと誘っただけだが?
0:3人と周りの客は小綺麗な服を着ているが颯太はスウェットにサンダル。顔を僅かに赤くして怒る
颯太:おまっ…!ふざけんなよ!なんで俺だけこんな恥ずかしい思いしなきゃ…!
叶恵:まぁまぁ颯太(そうた)くん。落ち着いて?その格好でも問題ないから座って?
颯太:…分かりましたよ
0:乱暴にイスに座る颯太。その後に太一も座る
太一:今日はみんな忙しい中、集まってくれてありがとう。コイツが愚息の颯太だ
颯太:どーも。颯太でーす
太一:こら、ちゃんと挨拶しろ!
颯太:うるせぇ!俺は納得してねぇからな!
太一:叶恵(かなえ)、あとでキツく言っておくから気にしないでくれ
叶恵:男の子だもん、これくらいヤンチャな方が良いよね!
颯太:ヤンチャって…。当然の反応だと思うけどな
叶恵:颯太くん、初めまして。私は叶恵と言います。お父さんと同じ職場で働いてます。そしてコチラが…
心結:心結(みゆう)です!心を結ぶと書いて「みゆう」と言います!
太一:心結ちゃん可愛いだろ?良かったな!
颯太:何が良かったんだよ?見た感じ若いけど高校生?
心結:は、はいっ!受験生です!
颯太:別に面接じゃないから気張らなくて良いよ
心結:は、はい!
叶恵:颯太くんは日大に通ってるのよね?
颯太:えぇ、まぁ
心結:私も日大志望なんです!だから色々教えてくれますか?
颯太:は、はぁ…?
太一:良かったな颯太!後輩で妹の女の子が出来るなんて夢みたいだな!
颯太:んな夢しらねぇよ!ってか何?2人は結婚するの確定なわけ?
叶恵:ゆくゆくは…と思ってます
颯太:別に良いんじゃね?アンタ達の人生だし。良かったなオヤジ。不倫して出ていったオフクロの代わりが見付かって
太一:そんな言い方するな
心結:…颯太さんも?
颯太:ん?何か言った?
心結:い、いえ…
颯太:ふーん。ってかさ…心結ちゃんも2人の結婚には賛成なわけ?
心結:は、はい!お2人が幸せならと思ってます!
太一:心結ちゃん…!良い子に育ってくれて父さんは嬉しいぞ!
颯太:もう父親気取りかよ。分かったわ。んじゃ、式には呼んでな
0:席を立つ颯太
心結:待って!…あ、待ってください…。颯太さんの事色々聞かせてくれませんか?
叶恵:そうそう。折角だからご飯食べていって?お酒も好きな物頼んで良いから
太一:そうだぞ!新しく家族になるんだからな!
0:イスに座る颯太
颯太:はいはい。このまま帰ったら悪者になりそうだしな…。ってか、オヤジは何ですぐ結婚する前提で話してんだよ?
太一:お姉さん!生3つとオレンジジュース!
颯太:聞いてねぇのかよ
心結:颯太さん…お兄ちゃんって呼んだら怒りますか?
颯太:別に怒らねぇよ。それにタメ語で構わん
心結:うんっ!ありがとうございます!…間違った、ありがとうお兄ちゃん!
叶恵:良かったわね心結
心結:うんっ!
颯太:どうせ顔合わす機会もそうないだろうし、気にする必要ないか
心結:え?お兄ちゃんも一緒に暮らすんだよ?
颯太:は?何言ってんの?
叶恵:そうよ?私たちの家は日大まで徒歩5分の所にあるの!だから颯太くんも是非一緒にって話で進めてたのよ?ね?太一さん?
太一:ん…。あぁ…。そう話したろ颯太?
颯太:そんな話、聞いてねぇんだけど?そもそも今の家から出るつもりないし
心結:えっ…じゃあ家庭教師やってくれるって話もナシ…?
颯太:ん?家庭教師?
太一:みんな…すまん。どうやら俺の手違いで颯太に伝わってなかったみたいだ。残念だが、同居の件は無かったコトにしような…
叶恵:そうなのね…仕方ないけど残念ね…。今住んでる分の家賃もお小遣いとして渡すつもりだったけど…
颯太:え?小遣いまでくれるの?
心結:分かったよ…。ママ、新しい家庭教師探してくれる?
叶恵:もちろんよ!心結には日大に通って欲しいからね…
颯太:ちょっと待って!家庭教師ってどゆこと?
心結:元々家庭教師頼む予定だったんだけど、お兄ちゃんが代わりに勉強教えてくれるって聞いてたの
颯太:マジかよ。ちなみに今の話だと小遣いは月4万になるけどマジでくれるの?
叶恵:えぇ、そのつもりだったんだけど…
颯太:だったら一緒に住みます!こんな高待遇断る理由なんてねぇから!
太一:なにも無理に一緒に住まなくて良いんだぞ?
心結:そうだよ?お兄ちゃん…本当…?
颯太:あぁ!本当だ!絶対合格しような!
心結:やったぁ!ありがとう!お兄ちゃん!
叶恵:詳しい話は後にしましょ?
太一:…そうだな
0:それから2週間後
颯太:意外と勉強できるんだな。んじゃ次はこの問題集やるか
心結:はーい!お兄ちゃん先生っ!
颯太:その呼び方はやめてくれ
心結:じゃあ何て呼べば良いのさー?
颯太:普通にアニキ呼びで良いだろ?
心結:えー
0:叶恵がお茶とお菓子を持って部屋に入ってくる
叶恵:こら心結、あんまり颯太くんを困らせるんじゃないの!
心結:だってー
叶恵:だってじゃありません!ごめんね颯太くん
颯太:いえ、別に問題ありませんよ
叶恵:颯太くんもかしこまらなくて大丈夫よ?もう家族なんだから?
颯太:あ、はい…
心結:お兄ちゃん変なのー!あの日はバリバリタメ語で話してたのに!
颯太:仕方ないだろ!あの時は色々ありすぎてだな…
太一:叶恵すまない。聞きたいことがあるから下に来てくれるか?
叶恵:はーい!今行きますね!じゃあ2人とも勉強頑張ってね!
0:部屋から出ていく叶恵
颯太:集中力切れちまったな、1回休憩するか
心結:そうだね、一休み一休みっと
颯太:ぷっ…。お前何歳だよ?よく知ってるな
心結:私は18ですー!おばさん扱いしないでよ!
0:頬を膨らませながら菓子を口に放り込む
颯太:わりぃ、わりぃ。いや…お袋がよく言ってた言葉だから…つい、な…
心結:そう言えばお兄ちゃんのママは不倫して出ていったんだっけ?
颯太:あぁ。5年前にな…。周りからオシドリ夫婦って言われるくらい仲良かったんだけど…急にな…
心結:5年前?私のパパも5年前に不倫して急に出ていったの…
颯太:お前もか…
心結:うん。…あとお兄ちゃん、私の事ちゃんと名前で呼んでくれる?
颯太:わりぃ…何か恥ずかしくてさ…。あんまり女の子と仲良くした事ないから距離感よく分からなくてな…
心結:へー!私の事ちゃんと女として見てくれてるんだー?
颯太:ち、ちげぇよ!妹との距離感な!
心結:そんな事言ってー、顔赤いですよー?颯太お兄ちゃんー?
0:颯太の頬をつつく心結
颯太:や、やめろって!あんまり大人をからかうな…っ!
心結:ちょ、あんまり引っ張らないで…っ!
0:心結の手を掴み動きを静止させる。だが力加減を誤り自分の方に寄せすぎてしまう
心結:きゃっ!
0:心結は颯太に覆い被さるような形に倒れ込む
颯太:わ、わりぃ!どっか痛いとこないか?
心結:だ、大丈夫…。少しびっくりしただけ…
颯太:そ、そうか…。なら良かった…。わりぃけど降りてくれるか?
心結:…もう少しだけ…このままでいさせて…
颯太:は?叶恵さん入ってくるかもしれないだろ!降りる気ないなら無理矢理…
心結:…お願い。あとほんの少しだけで良いから
颯太:…あと30秒だけな。
心結:ありがとうお兄ちゃん。…どうしても…怖くて…我慢出来なかったの
颯太:我慢?何をだ?
心結:…色々。女の子にしか分からない恐怖って沢山あるんだよ?
颯太:そんなもんか?まぁ困ったことがあればいつでも言いな?一応、心結のアニキなんだからさ
心結:…ズルいよ
颯太:なにが?
心結:なんでもないっ!
颯太:なんだよそれ?
心結:秘密ー!あっ、30秒経ったから降りるね!
颯太:へいへい。さてと勉強再開するか
心結:はーい!
心結:(小声で)お兄ちゃんが恋人なら良かったのに…
颯太:なんか言ったか?
心結:なんでもありませーん!
0:太一が部屋に入ってくる
太一:颯太、再来月の合宿について色々聞きたいから下来てもらえるか?
颯太:ん?あぁ、分かった。じゃ心結1人で進めてくれるか?
心結:えっ…わかった…
太一:なら父さんが勉強を見てあげようか!えっと…ここは…
颯太:うっせぇ!クソ親父てめぇも下行くんだよ!
太一:は?父親に向かって…
颯太:勉強の邪魔になるから行くぞ!じゃ、心結勉強頑張ってな!
颯太:(小声で)ふーっ…さっきのはちとヤバかったな。まだドキドキする…
0:太一を連れて部屋を出る颯太
心結:ありがとう…颯太お兄ちゃん…。お兄ちゃんが恋人なら本当に良かったのに…
颯太:(M)さらに1ヶ月が経ちオレと心結は互いをより意識するようになっていた。
0:心結の部屋にて
颯太:おっ!この問題解けてんじゃん!
心結:でしょでしょ!お兄ちゃんの教え方が上手いから出来るようになったんだよ!
颯太:サンキューな。でも心結が頑張ってるからだぞ?
叶恵:やっぱり先生が良いと成績が伸びるものねー。これはバイト代も増やさないと!
颯太:さ、さすがにそこまでは貰えないですって…ホントに家賃分を小遣いで貰えてるし、生活費だってオレ払ってないのに
叶恵:家族なんだから当然でしょ?それに私たちはお金にそこまで困ってないし
心結:そうだよお兄ちゃん!貰っておきなよ!
颯太:でも…
心結:じゃあさ!バイト代貯めて私と旅行行こっ!
颯太:旅行?
心結:うんっ!旅行!私、海のキレイな所に泊まりたいなぁ
叶恵:それ良いわね!家族みんなで旅行なんて楽しそう!
颯太:家族…か。まぁ考えとくよ
叶恵:じゃあ私は買い物行ってくるから後はお願いね
心結:はーい!あ、ママ!私プリン食べたい!クリームいっぱい乗ってるの!
叶恵:はーい。颯太くんは何か欲しいものある?
颯太:後で買い物出るんで大丈夫ですよ。ビール重たいだろうし
叶恵:分かったわ。じゃあ行ってくるわね
0:部屋を出る叶恵
心結:ねぇお兄ちゃん?ビールって美味しいの?
颯太:まぁ美味いっちゃ美味い
心結:何その表現?
颯太:お子ちゃまには分からない大人の表現ってヤツよ
心結:子供扱いしないでよ!私だって子供じゃないから!
颯太:残念だけど18歳は成人であって大人ではありませんー
心結:むーっ!じゃあお兄ちゃんから見て私は子供なの?
颯太:あー?そうだなガキだなー
心結:私大人だよ!これでもクラスの男子から告白された事あるもんっ!
颯太:ふーん、じゃあ今彼氏いるんだ?
心結:今はいない…
颯太:へー
心結:だって同い年の男の子は子供っぽいんだもん
颯太:へーへー
心結:お兄ちゃん話聞いてる?
颯太:あぁ聞いてるよ
心結:もしかしてヤキモチ妬いた?
颯太:あぁ。妬いた
心結:え?
0:颯太は心結に顔を近付ける
心結:ちょ…お兄ちゃん…顔…近いよ…
颯太:心結は普通に可愛いと思う。出来るなら恋人関係になりたいとも思う
心結:あ…え…?お、お兄ちゃん…?
颯太:だから…キス。してもいいか?
心結:き、キス…っ!?で、でも…私たち…兄妹だよ…っ!?
颯太:キス位なら問題ないさ。目…閉じて
心結:ん…。はい…
0:目を閉じる心結。そして颯太は心結の頭にチョップを食らわせる
颯太:あははは!引っかかってやんのー!やっぱガキだな!
心結:いったー!お兄ちゃん最低っー!
颯太:あースッキリした!
心結:…許さない
颯太:そんな怒るなって?
心結:絶対許さないから
颯太:悪かったって。何でもするから許してくれよ
心結:じゃあ…
心結:私と付き合って
颯太:は?マジで言ってる?
心結:うん。私…お兄ちゃんの事好きだから
颯太:そういう冗談…俺…
心結:愛してるの!颯太さんを1人の男性として好きなの!
颯太:…まじ?
心結:まじ
颯太:…。
颯太:実は…俺も心結が好きだ
心結:ホントに?
颯太:あぁ…でも兄妹なのに大丈夫なのか?って思ってさ
心結:…。大丈夫だよ…きっと。黙っていれば誰にも分からないから
颯太:確かにそうか…。なら合格したら2人で旅行行こうか?
心結:うんっ!
颯太:キスしとく?
心結:しませーん!私はそんなに軽い女じゃありませーん!
颯太:だよな。まっ焦ることないか
心結:…お兄ちゃん
颯太:なんだ?
心結:…頼りにしてるからね?
颯太:ん?あぁ。絶対合格しような?
心結:…うん
颯太:(M)こうして恋人関係になった俺と心結…。だが…結果的にこの事がきっかけで俺は心結を傷付ける事になるのであった
颯太:(M)それから恋人としての関係は特に進展することなく時は流れ、俺はサークルの合宿に行く日になった
叶恵:颯太くん忘れ物はない?
颯太:財布とケータイさえあれば問題ないから大丈夫
太一:それなら良いが。もし忘れても届けに行かないからな!
颯太:わぁってるって!
太一:それに途中で抜け出して帰ってこられても迷惑になるからな!
颯太:迷惑?誰のだよ?
太一:サークル仲間に決まってるだろ!全く…少し考えれば分かるだろ!
颯太:へいへい。…心結は寝てる感じ?
叶恵:見送るのが辛いとかで部屋にこもってるみたいね。本当に颯太くんに懐いてるのね!
颯太:…ふーん。そっか。んじゃ行ってくるわ
太一:気をつけてな!叶恵すまないが頼んだぞ
叶恵:はーい!颯太くん車に乗ってー!
颯太:はーい
颯太:たった3日なのに今生(こんじょう)の別れみたいな感じだな
0:車内にて
叶恵:駅で良いんだっけ?
颯太:はい。あの…叶恵さん
叶恵:なに?
颯太:叶恵さんはこの3日間仕事でしたっけ?
叶恵:そうなのよ。急な出番でね。夕方には上げてもらえる手筈になってるから迎えには行けるわよ
颯太:合宿終わるのは昼だから歩いて帰るから大丈夫です
叶恵:でも合宿ってホントに出来るの?台風近付いてきてるから外でテニスなんて出来るの?
颯太:室内でも出来るみたいなんで問題ないです。まぁそれに夜の飲み会がメインみたいな所もあるし…
叶恵:そうなのね!だったらあまり飲みすぎないように気を付けてね!
颯太:分かってますよ!とりあえず心結には課題出してるので叶恵さんもちゃんとやってるか確認してあげて下さい
叶恵:分かったわ。着いたわよ
颯太:ありがとうございます。じゃあ仕事頑張って下さい
0:車を降りる颯太
叶恵:颯太くんも頑張ってね!
0:心結の部屋にて
心結:お兄ちゃん…行っちゃった…。大丈夫。この3日耐えればきっともう無いはず…
0:ノック音の後、太一が部屋に入ってくる
太一:心結ちゃん体調はどうだい?
心結:べ、別に大丈夫…。でももう少し寝たら良くなると思うから…
太一:そうかそうか。ま、ムリしないでな?
太一:それに…まだ始まったばかりだからな。一緒に楽しもうな?心結?
0:部屋から出ていく太一、心結は布団を頭から被り震える
心結:大丈夫、大丈夫だから…。お兄ちゃんがきっと…きっと守ってくれる…
0:それから2日後、帰路につく颯太
颯太:ったく、雨漏りして施設使えないからって追い返すか普通?急遽帰るって連絡入れても誰も連絡つかねぇし…
0:颯太は家の前で立ち止まる
颯太:まっ、みんな仕事やら学校だから無理ないか…。鍵は念の為持ってきて正解だったな…っと
0:鍵を開けて家の中に入ると人の気配がする
颯太:あれ?ったく居るなら連絡返せよ…
0:リビングのドアを開ける颯太。ソファの上で裸で抱き合う太一と心結。その光景を見て颯太はカバンを落とす
颯太:な、なにやってんだよ…
0:心結は近くに置いてあったブランケットで体を隠す
心結:お、お兄ちゃん…っ!こ、これは…
太一:お前!帰ってくるの明日だろ!?何で今日帰ってきたんだ!
颯太:この台風で施設が使えなくなって…いや!そんな事よりどうゆう事だよ!?説明しろよ!
心結:…ごめんなさい
颯太:心結!何で謝ってんだよ!?どういうことか説明してくれよ!?
心結:…。
颯太:心結…
0:太一はズボンを履き終えて、高らかに笑う
太一:そうか、颯太。お前は気付いてなかったんだな
颯太:何がだよ
太一:お前の大好きな心結ちゃんは俺の愛玩具(あいがんぐ)なんだよ
颯太:は?何言ってやがんだよ…
太一:お前ら2人は付き合ってんだろ?
颯太:なっ…。んなわけあるかよ!
太一:悪いけど俺はぜーんぶ知ってんだわ!盗聴器を通じて聞いた時…これはチャンスだ!って確信出来たからな!
颯太:何言ってんだよクソ親父!さっきから訳わかんねぇ事ばっか言いやがって!
太一:いいや?分かってないのはお前だけだ、颯太
颯太:は?
心結:お父さんやめて!これ以上言わないで!私、何でもするから!
颯太:心結?お前まで何言ってるんだよ…?
太一:まだ気付かないのか?心結はある秘密を守るために俺の言いなりになってるんだよ
颯太:秘密…?
心結:やめて!お願いだから!何でもするから!
太一:お前たち二人は…
太一:実の兄妹だ!
0:遡ること約2年前
叶恵:お久しぶりですね。五条さん。…いえ太一さん
太一:もう15年くらい経つか?まさかまた同じ部署に配属になるとは思ってもなかったな
叶恵:正確には17年です
叶恵:今回は私が希望を出したんですよ。太一さんと同じ部署になるようにね
太一:…そうだったのか。悪いが不倫の件についてはお互い様という事で落ち着いたはずだが?
叶恵:そうですね。その件についてはこれ以上、糾弾(きゅうだん)するつもりはありません
太一:だったら何だ?
叶恵:父親として責任を取ってください
太一:父親?俺が?誰の?
叶恵:娘の心結です。あなたと不倫していた時に出来た子です
太一:ウソだろ?だってキミはあの時、旦那の子を妊娠したからと関係を切ったじゃないか
叶恵:私もそう思っていました。でも旦那と離婚してからDNA検査をしたら旦那とは一致しませんでした
太一:それが原因で離婚したのか?
叶恵:いいえ。旦那の浮気が原因で離婚しました。なので慰謝料とかでお金に余裕はあります
太一:そうか…
叶恵:だから今は、心結の為に本当の父親が必要なんです
太一:…悪いが少し待ってもらえないか?
叶恵:どうして?
太一:一人息子の颯太が今年大学受験なんだ。今ここで再婚ってなるとアイツにどんな影響が出るか分からない。だから少し待って欲しい
叶恵:分かりました…
太一:ちなみに心結は俺の事知ってるのか?
叶恵:いいえ。難しい年頃だから伏せてます
太一:分かった。ならこれから先もずっと俺が本当の父親ということを隠して欲しい
叶恵:分かりました。貴方がそれを望むなら
0:現在に戻る
颯太:マジかよ…
太一:異母兄妹で恋人同士とか笑えるなぁ。傑作だよ!でもそのおかげで俺は心結を好きに出来てるんだけどなー!
颯太:心結はどうやって知ったんだ?
心結:お父さんに脅迫されたの…。鑑定書を見せられて異母兄妹って事を突き付けられて…
颯太:どうしてそんな事…
心結:颯太にはこの事は黙っといてやる。一切口外もしない。だから俺の慰(なぐさ)みものになれって…
颯太:こんな事になる位なら言ってくれれば…どうして俺にだけ教えてくれなかったんだ…
太一:颯太、お前は本当にバカだな
颯太:何がだよ…っ!
太一:心結はお前の為にやったんだぞー?世界で一番愛してる颯太くんの為に心結ちゃんは頑張ったんだぞー?お前はその気持ちを汲んでやれないのかー?
颯太:くっ…!ふざけやがてって!
太一:お前がこの家に越してこなければ、こんな悲劇起きなかったのになー。だから俺がわざわざ遠ざけてやったのによぉ
心結:だからお兄ちゃんは初めて会う話や一緒に住む話とか知らなかったの?
太一:そうだよ!その方がみんなの幸せだったのによぉ!
太一:そんな王子様はお姫様を守ってあげられませんでしたってか?本当に惨めだな颯太?
颯太:俺は…惨めじゃない…っ
0:家を飛び出す颯太
心結:お兄ちゃんっ!待って!
心結:ごめんなさい…私のせいで…
0:その場にうずくまる心結に近付く太一
太一:ほら心結。邪魔者は居なくなった。だからいつも通り父さんを気持ち良くしておくれ
心結:…分かった。その前にお水を一杯飲ませてくれる?
太一:あぁ構わないぞ
0:キッチンに向かう心結
心結:もう…これで全部…終わり…
0:雨の中鉄橋の下で座る太一
颯太:ははっ…俺はとんだピエロだな。実の妹に恋して親父に寝取られて、逃げ出して…
颯太:もういっそ…
心結:お兄ちゃん…ごめんなさい…
颯太:心結?どうしてここが分かったんだ?
心結:兄妹…だからかな?何となくここにいる気がしたの
颯太:そっか…
心結:うん…
颯太:なぁ…心結?
心結:なぁにお兄ちゃん?
颯太:心結はこれからどうしたい?
心結:お兄ちゃんの望む事がしたい
颯太:家から出て遠くに行きたいって言ったら?
心結:私もついていく
颯太:金がないから銀行強盗するって言ったら?
心結:私も手伝う
颯太:…俺が死にたいって言ったら?
心結:私も一緒に死ぬ
颯太:…どういう死に方が良い?
心結:そうだね…
心結:ガタンゴトン、ガタンゴトン…
颯太:なんだよ急に
心結:電車に轢かれて死ぬのはどう?丁度真上電車走ってるし!
颯太:確かにな…
颯太:でも俺は死ぬ前に心結と海に行きたい
心結:海?どうして?
颯太:約束したろ?合格したら海に行くって
心結:そういえばそうだったね
颯太:だから戻ろう。戻って荷物まとめて二人暮ししよう?それで新しいスタートを…
心結:…ムリだよ
颯太:心結?
心結:もうムリなの…私…取り返しのつかない事したの
0:砂浜に座る二人
颯太:心結…これで本当に良いんだな?
心結:うん。私…後悔してないよ。でもごめん…最後に電話だけさせて…
颯太:あぁ
0:電話をかける心結
叶恵:もしもし、どうしたの?
心結:ごめんねママ。今大丈夫?
叶恵:えぇこれから帰るところだったけど何かあった?
心結:急に声聞きたくなったの…ごめんね
叶恵:そっかそっか。心結勉強頑張ってるから少し疲れたのかな?
心結:うん…。私…疲れちゃった
叶恵:ならスイーツ買って帰るわよ?いつも通りストロベリータルトで良いかしら?
心結:ありがとう。でも…いらない。もう…何もいらないの…
叶恵:心結?どうしたの?何かあったの?
心結:私にお兄ちゃんと同じ血が流れてる以上…もう生きられない…
叶恵:心結!?今どこなの!?バカな事はやめなさい!
心結:さよならママ。愛してくれてありがとう
0:電話を切り、スマホを海に投げる心結
颯太:これで良かったのか?
心結:うん…っ。これで良いの
颯太:そっか。…最後に聞かせてくれるか?
心結:お父さんの事?
颯太:あぁ。正直クソ親父のことはどうでも良いが。どうしても家に戻りたくない理由を知りたい
心結:分かった…
心結:お兄ちゃんが飛び出した後、私もすぐに追いかけたかった…でも…
0:数時間前リビング
太一:心結!ついでに父さんにも水持ってきてくれ!
心結:…分かったよ
太一:おい心結!お前颯太とヤッたのか?
心結:してない。キスもしてない
太一:そいつは愉快だな!颯太は俺の息子のくせして女の扱いが分かってないからな!
心結:でもお兄ちゃんは優しいから
0:心結は水の入ったコップを渡す
太一:優しさと臆病は紙一重だから!お、水サンキューな!
心結:…お兄ちゃんを悪く言うな!
0:心結は太一の胸に包丁を突き刺す
太一:が…っ!な…なに…しやが…るっ…!
心結:全部アンタが悪いんだ!この血が悪いんだ!だから!だから!
0:何度も包丁を突き刺し、辺りは血の池になる
心結:はぁはぁはぁ…。お兄ちゃんを追わないと…
0:現在
颯太:そうだったのか…
心結:ごめんなさい…
颯太:謝る事ないって。でも俺の身体にはあのクソ親父と同じ血が流れてるわけだよな
心結:私にも流れてるよ
颯太:心結…。本当に良いんだな
心結:もちろん。私、お兄ちゃんと一緒ならどこまででも行くよ?
0:二人は手を繋ぎ海の方へ歩き出す
颯太:足元、気を付けて
心結:うん。やっぱり海荒れてるね
颯太:あぁ。絶好の自殺日和だな
0:波が高くなり、心結の肩の深さまでくる
心結:うん。お兄ちゃん?
颯太:なんだ?
心結:これからも宜しくね?
颯太:こちらこそ
0:口付けを交わす二人
心結:私の事…離さないでね?
颯太:もちろんさ
心結:ありがとう。…そしてごめんね
0:心結は颯太の腹部に包丁を突き刺す
颯太:ぐっ…!み、心結…っ…?
心結:大丈夫。私も…
0:心結も自分の腹部に包丁を突き刺す
颯太:な、何で…こんな…こと…?
心結:いやだっ…たの…。あの人の血を…身体に…残して…死にたく…ない…
0:心結は波に飲まれる
颯太:心結…っ!やば…っ、波が…高す…ぎ…る……
0:颯太も波に飲まれ、心結の手を離してしまう
颯太:心結…っ!どこ…だっ…!み…ゆう…っ!
心結:ありがとう…お兄ちゃん…。来世で…また…
颯太:どこだ…頼むから…その…手…を……
(エピローグ)
心結:(M)これで良かった…。これで血で繋がる『赤の他人』は終わる。深く暗い海の底。何にも染められない漆黒に私たちは沈んでいく
颯太:(M)身体から血液が流れ出る。漆黒に染まった世界を変えることが出来ないまま、赤は黒に飲まれていく。きっと俺が…いや、心結がそれを望んだから
心結:(M)だから生まれ変わったら…今度は…
終
心結:(M)何者にも染められない『黒の他人』として、アナタに出逢いたい
(プロローグ)
心結:分かってた。こんな日が訪れることを…。だってそれは変えられない事実だから
颯太:叶うなら…あの日の自分に戻りたい。そして…やり直したい。俺たちの関係を無かった事にしたい
心結:だから…生まれ変わったら…今度は…
(本編)
0:レストラン内。テーブルには叶恵と心結が座って颯太と太一を見つめる
颯太:オヤジ…これはどういう事だよ?話が違うだろ
太一:そうか?久しぶりに飲みに行こうと誘っただけだが?
0:3人と周りの客は小綺麗な服を着ているが颯太はスウェットにサンダル。顔を僅かに赤くして怒る
颯太:おまっ…!ふざけんなよ!なんで俺だけこんな恥ずかしい思いしなきゃ…!
叶恵:まぁまぁ颯太(そうた)くん。落ち着いて?その格好でも問題ないから座って?
颯太:…分かりましたよ
0:乱暴にイスに座る颯太。その後に太一も座る
太一:今日はみんな忙しい中、集まってくれてありがとう。コイツが愚息の颯太だ
颯太:どーも。颯太でーす
太一:こら、ちゃんと挨拶しろ!
颯太:うるせぇ!俺は納得してねぇからな!
太一:叶恵(かなえ)、あとでキツく言っておくから気にしないでくれ
叶恵:男の子だもん、これくらいヤンチャな方が良いよね!
颯太:ヤンチャって…。当然の反応だと思うけどな
叶恵:颯太くん、初めまして。私は叶恵と言います。お父さんと同じ職場で働いてます。そしてコチラが…
心結:心結(みゆう)です!心を結ぶと書いて「みゆう」と言います!
太一:心結ちゃん可愛いだろ?良かったな!
颯太:何が良かったんだよ?見た感じ若いけど高校生?
心結:は、はいっ!受験生です!
颯太:別に面接じゃないから気張らなくて良いよ
心結:は、はい!
叶恵:颯太くんは日大に通ってるのよね?
颯太:えぇ、まぁ
心結:私も日大志望なんです!だから色々教えてくれますか?
颯太:は、はぁ…?
太一:良かったな颯太!後輩で妹の女の子が出来るなんて夢みたいだな!
颯太:んな夢しらねぇよ!ってか何?2人は結婚するの確定なわけ?
叶恵:ゆくゆくは…と思ってます
颯太:別に良いんじゃね?アンタ達の人生だし。良かったなオヤジ。不倫して出ていったオフクロの代わりが見付かって
太一:そんな言い方するな
心結:…颯太さんも?
颯太:ん?何か言った?
心結:い、いえ…
颯太:ふーん。ってかさ…心結ちゃんも2人の結婚には賛成なわけ?
心結:は、はい!お2人が幸せならと思ってます!
太一:心結ちゃん…!良い子に育ってくれて父さんは嬉しいぞ!
颯太:もう父親気取りかよ。分かったわ。んじゃ、式には呼んでな
0:席を立つ颯太
心結:待って!…あ、待ってください…。颯太さんの事色々聞かせてくれませんか?
叶恵:そうそう。折角だからご飯食べていって?お酒も好きな物頼んで良いから
太一:そうだぞ!新しく家族になるんだからな!
0:イスに座る颯太
颯太:はいはい。このまま帰ったら悪者になりそうだしな…。ってか、オヤジは何ですぐ結婚する前提で話してんだよ?
太一:お姉さん!生3つとオレンジジュース!
颯太:聞いてねぇのかよ
心結:颯太さん…お兄ちゃんって呼んだら怒りますか?
颯太:別に怒らねぇよ。それにタメ語で構わん
心結:うんっ!ありがとうございます!…間違った、ありがとうお兄ちゃん!
叶恵:良かったわね心結
心結:うんっ!
颯太:どうせ顔合わす機会もそうないだろうし、気にする必要ないか
心結:え?お兄ちゃんも一緒に暮らすんだよ?
颯太:は?何言ってんの?
叶恵:そうよ?私たちの家は日大まで徒歩5分の所にあるの!だから颯太くんも是非一緒にって話で進めてたのよ?ね?太一さん?
太一:ん…。あぁ…。そう話したろ颯太?
颯太:そんな話、聞いてねぇんだけど?そもそも今の家から出るつもりないし
心結:えっ…じゃあ家庭教師やってくれるって話もナシ…?
颯太:ん?家庭教師?
太一:みんな…すまん。どうやら俺の手違いで颯太に伝わってなかったみたいだ。残念だが、同居の件は無かったコトにしような…
叶恵:そうなのね…仕方ないけど残念ね…。今住んでる分の家賃もお小遣いとして渡すつもりだったけど…
颯太:え?小遣いまでくれるの?
心結:分かったよ…。ママ、新しい家庭教師探してくれる?
叶恵:もちろんよ!心結には日大に通って欲しいからね…
颯太:ちょっと待って!家庭教師ってどゆこと?
心結:元々家庭教師頼む予定だったんだけど、お兄ちゃんが代わりに勉強教えてくれるって聞いてたの
颯太:マジかよ。ちなみに今の話だと小遣いは月4万になるけどマジでくれるの?
叶恵:えぇ、そのつもりだったんだけど…
颯太:だったら一緒に住みます!こんな高待遇断る理由なんてねぇから!
太一:なにも無理に一緒に住まなくて良いんだぞ?
心結:そうだよ?お兄ちゃん…本当…?
颯太:あぁ!本当だ!絶対合格しような!
心結:やったぁ!ありがとう!お兄ちゃん!
叶恵:詳しい話は後にしましょ?
太一:…そうだな
0:それから2週間後
颯太:意外と勉強できるんだな。んじゃ次はこの問題集やるか
心結:はーい!お兄ちゃん先生っ!
颯太:その呼び方はやめてくれ
心結:じゃあ何て呼べば良いのさー?
颯太:普通にアニキ呼びで良いだろ?
心結:えー
0:叶恵がお茶とお菓子を持って部屋に入ってくる
叶恵:こら心結、あんまり颯太くんを困らせるんじゃないの!
心結:だってー
叶恵:だってじゃありません!ごめんね颯太くん
颯太:いえ、別に問題ありませんよ
叶恵:颯太くんもかしこまらなくて大丈夫よ?もう家族なんだから?
颯太:あ、はい…
心結:お兄ちゃん変なのー!あの日はバリバリタメ語で話してたのに!
颯太:仕方ないだろ!あの時は色々ありすぎてだな…
太一:叶恵すまない。聞きたいことがあるから下に来てくれるか?
叶恵:はーい!今行きますね!じゃあ2人とも勉強頑張ってね!
0:部屋から出ていく叶恵
颯太:集中力切れちまったな、1回休憩するか
心結:そうだね、一休み一休みっと
颯太:ぷっ…。お前何歳だよ?よく知ってるな
心結:私は18ですー!おばさん扱いしないでよ!
0:頬を膨らませながら菓子を口に放り込む
颯太:わりぃ、わりぃ。いや…お袋がよく言ってた言葉だから…つい、な…
心結:そう言えばお兄ちゃんのママは不倫して出ていったんだっけ?
颯太:あぁ。5年前にな…。周りからオシドリ夫婦って言われるくらい仲良かったんだけど…急にな…
心結:5年前?私のパパも5年前に不倫して急に出ていったの…
颯太:お前もか…
心結:うん。…あとお兄ちゃん、私の事ちゃんと名前で呼んでくれる?
颯太:わりぃ…何か恥ずかしくてさ…。あんまり女の子と仲良くした事ないから距離感よく分からなくてな…
心結:へー!私の事ちゃんと女として見てくれてるんだー?
颯太:ち、ちげぇよ!妹との距離感な!
心結:そんな事言ってー、顔赤いですよー?颯太お兄ちゃんー?
0:颯太の頬をつつく心結
颯太:や、やめろって!あんまり大人をからかうな…っ!
心結:ちょ、あんまり引っ張らないで…っ!
0:心結の手を掴み動きを静止させる。だが力加減を誤り自分の方に寄せすぎてしまう
心結:きゃっ!
0:心結は颯太に覆い被さるような形に倒れ込む
颯太:わ、わりぃ!どっか痛いとこないか?
心結:だ、大丈夫…。少しびっくりしただけ…
颯太:そ、そうか…。なら良かった…。わりぃけど降りてくれるか?
心結:…もう少しだけ…このままでいさせて…
颯太:は?叶恵さん入ってくるかもしれないだろ!降りる気ないなら無理矢理…
心結:…お願い。あとほんの少しだけで良いから
颯太:…あと30秒だけな。
心結:ありがとうお兄ちゃん。…どうしても…怖くて…我慢出来なかったの
颯太:我慢?何をだ?
心結:…色々。女の子にしか分からない恐怖って沢山あるんだよ?
颯太:そんなもんか?まぁ困ったことがあればいつでも言いな?一応、心結のアニキなんだからさ
心結:…ズルいよ
颯太:なにが?
心結:なんでもないっ!
颯太:なんだよそれ?
心結:秘密ー!あっ、30秒経ったから降りるね!
颯太:へいへい。さてと勉強再開するか
心結:はーい!
心結:(小声で)お兄ちゃんが恋人なら良かったのに…
颯太:なんか言ったか?
心結:なんでもありませーん!
0:太一が部屋に入ってくる
太一:颯太、再来月の合宿について色々聞きたいから下来てもらえるか?
颯太:ん?あぁ、分かった。じゃ心結1人で進めてくれるか?
心結:えっ…わかった…
太一:なら父さんが勉強を見てあげようか!えっと…ここは…
颯太:うっせぇ!クソ親父てめぇも下行くんだよ!
太一:は?父親に向かって…
颯太:勉強の邪魔になるから行くぞ!じゃ、心結勉強頑張ってな!
颯太:(小声で)ふーっ…さっきのはちとヤバかったな。まだドキドキする…
0:太一を連れて部屋を出る颯太
心結:ありがとう…颯太お兄ちゃん…。お兄ちゃんが恋人なら本当に良かったのに…
颯太:(M)さらに1ヶ月が経ちオレと心結は互いをより意識するようになっていた。
0:心結の部屋にて
颯太:おっ!この問題解けてんじゃん!
心結:でしょでしょ!お兄ちゃんの教え方が上手いから出来るようになったんだよ!
颯太:サンキューな。でも心結が頑張ってるからだぞ?
叶恵:やっぱり先生が良いと成績が伸びるものねー。これはバイト代も増やさないと!
颯太:さ、さすがにそこまでは貰えないですって…ホントに家賃分を小遣いで貰えてるし、生活費だってオレ払ってないのに
叶恵:家族なんだから当然でしょ?それに私たちはお金にそこまで困ってないし
心結:そうだよお兄ちゃん!貰っておきなよ!
颯太:でも…
心結:じゃあさ!バイト代貯めて私と旅行行こっ!
颯太:旅行?
心結:うんっ!旅行!私、海のキレイな所に泊まりたいなぁ
叶恵:それ良いわね!家族みんなで旅行なんて楽しそう!
颯太:家族…か。まぁ考えとくよ
叶恵:じゃあ私は買い物行ってくるから後はお願いね
心結:はーい!あ、ママ!私プリン食べたい!クリームいっぱい乗ってるの!
叶恵:はーい。颯太くんは何か欲しいものある?
颯太:後で買い物出るんで大丈夫ですよ。ビール重たいだろうし
叶恵:分かったわ。じゃあ行ってくるわね
0:部屋を出る叶恵
心結:ねぇお兄ちゃん?ビールって美味しいの?
颯太:まぁ美味いっちゃ美味い
心結:何その表現?
颯太:お子ちゃまには分からない大人の表現ってヤツよ
心結:子供扱いしないでよ!私だって子供じゃないから!
颯太:残念だけど18歳は成人であって大人ではありませんー
心結:むーっ!じゃあお兄ちゃんから見て私は子供なの?
颯太:あー?そうだなガキだなー
心結:私大人だよ!これでもクラスの男子から告白された事あるもんっ!
颯太:ふーん、じゃあ今彼氏いるんだ?
心結:今はいない…
颯太:へー
心結:だって同い年の男の子は子供っぽいんだもん
颯太:へーへー
心結:お兄ちゃん話聞いてる?
颯太:あぁ聞いてるよ
心結:もしかしてヤキモチ妬いた?
颯太:あぁ。妬いた
心結:え?
0:颯太は心結に顔を近付ける
心結:ちょ…お兄ちゃん…顔…近いよ…
颯太:心結は普通に可愛いと思う。出来るなら恋人関係になりたいとも思う
心結:あ…え…?お、お兄ちゃん…?
颯太:だから…キス。してもいいか?
心結:き、キス…っ!?で、でも…私たち…兄妹だよ…っ!?
颯太:キス位なら問題ないさ。目…閉じて
心結:ん…。はい…
0:目を閉じる心結。そして颯太は心結の頭にチョップを食らわせる
颯太:あははは!引っかかってやんのー!やっぱガキだな!
心結:いったー!お兄ちゃん最低っー!
颯太:あースッキリした!
心結:…許さない
颯太:そんな怒るなって?
心結:絶対許さないから
颯太:悪かったって。何でもするから許してくれよ
心結:じゃあ…
心結:私と付き合って
颯太:は?マジで言ってる?
心結:うん。私…お兄ちゃんの事好きだから
颯太:そういう冗談…俺…
心結:愛してるの!颯太さんを1人の男性として好きなの!
颯太:…まじ?
心結:まじ
颯太:…。
颯太:実は…俺も心結が好きだ
心結:ホントに?
颯太:あぁ…でも兄妹なのに大丈夫なのか?って思ってさ
心結:…。大丈夫だよ…きっと。黙っていれば誰にも分からないから
颯太:確かにそうか…。なら合格したら2人で旅行行こうか?
心結:うんっ!
颯太:キスしとく?
心結:しませーん!私はそんなに軽い女じゃありませーん!
颯太:だよな。まっ焦ることないか
心結:…お兄ちゃん
颯太:なんだ?
心結:…頼りにしてるからね?
颯太:ん?あぁ。絶対合格しような?
心結:…うん
颯太:(M)こうして恋人関係になった俺と心結…。だが…結果的にこの事がきっかけで俺は心結を傷付ける事になるのであった
颯太:(M)それから恋人としての関係は特に進展することなく時は流れ、俺はサークルの合宿に行く日になった
叶恵:颯太くん忘れ物はない?
颯太:財布とケータイさえあれば問題ないから大丈夫
太一:それなら良いが。もし忘れても届けに行かないからな!
颯太:わぁってるって!
太一:それに途中で抜け出して帰ってこられても迷惑になるからな!
颯太:迷惑?誰のだよ?
太一:サークル仲間に決まってるだろ!全く…少し考えれば分かるだろ!
颯太:へいへい。…心結は寝てる感じ?
叶恵:見送るのが辛いとかで部屋にこもってるみたいね。本当に颯太くんに懐いてるのね!
颯太:…ふーん。そっか。んじゃ行ってくるわ
太一:気をつけてな!叶恵すまないが頼んだぞ
叶恵:はーい!颯太くん車に乗ってー!
颯太:はーい
颯太:たった3日なのに今生(こんじょう)の別れみたいな感じだな
0:車内にて
叶恵:駅で良いんだっけ?
颯太:はい。あの…叶恵さん
叶恵:なに?
颯太:叶恵さんはこの3日間仕事でしたっけ?
叶恵:そうなのよ。急な出番でね。夕方には上げてもらえる手筈になってるから迎えには行けるわよ
颯太:合宿終わるのは昼だから歩いて帰るから大丈夫です
叶恵:でも合宿ってホントに出来るの?台風近付いてきてるから外でテニスなんて出来るの?
颯太:室内でも出来るみたいなんで問題ないです。まぁそれに夜の飲み会がメインみたいな所もあるし…
叶恵:そうなのね!だったらあまり飲みすぎないように気を付けてね!
颯太:分かってますよ!とりあえず心結には課題出してるので叶恵さんもちゃんとやってるか確認してあげて下さい
叶恵:分かったわ。着いたわよ
颯太:ありがとうございます。じゃあ仕事頑張って下さい
0:車を降りる颯太
叶恵:颯太くんも頑張ってね!
0:心結の部屋にて
心結:お兄ちゃん…行っちゃった…。大丈夫。この3日耐えればきっともう無いはず…
0:ノック音の後、太一が部屋に入ってくる
太一:心結ちゃん体調はどうだい?
心結:べ、別に大丈夫…。でももう少し寝たら良くなると思うから…
太一:そうかそうか。ま、ムリしないでな?
太一:それに…まだ始まったばかりだからな。一緒に楽しもうな?心結?
0:部屋から出ていく太一、心結は布団を頭から被り震える
心結:大丈夫、大丈夫だから…。お兄ちゃんがきっと…きっと守ってくれる…
0:それから2日後、帰路につく颯太
颯太:ったく、雨漏りして施設使えないからって追い返すか普通?急遽帰るって連絡入れても誰も連絡つかねぇし…
0:颯太は家の前で立ち止まる
颯太:まっ、みんな仕事やら学校だから無理ないか…。鍵は念の為持ってきて正解だったな…っと
0:鍵を開けて家の中に入ると人の気配がする
颯太:あれ?ったく居るなら連絡返せよ…
0:リビングのドアを開ける颯太。ソファの上で裸で抱き合う太一と心結。その光景を見て颯太はカバンを落とす
颯太:な、なにやってんだよ…
0:心結は近くに置いてあったブランケットで体を隠す
心結:お、お兄ちゃん…っ!こ、これは…
太一:お前!帰ってくるの明日だろ!?何で今日帰ってきたんだ!
颯太:この台風で施設が使えなくなって…いや!そんな事よりどうゆう事だよ!?説明しろよ!
心結:…ごめんなさい
颯太:心結!何で謝ってんだよ!?どういうことか説明してくれよ!?
心結:…。
颯太:心結…
0:太一はズボンを履き終えて、高らかに笑う
太一:そうか、颯太。お前は気付いてなかったんだな
颯太:何がだよ
太一:お前の大好きな心結ちゃんは俺の愛玩具(あいがんぐ)なんだよ
颯太:は?何言ってやがんだよ…
太一:お前ら2人は付き合ってんだろ?
颯太:なっ…。んなわけあるかよ!
太一:悪いけど俺はぜーんぶ知ってんだわ!盗聴器を通じて聞いた時…これはチャンスだ!って確信出来たからな!
颯太:何言ってんだよクソ親父!さっきから訳わかんねぇ事ばっか言いやがって!
太一:いいや?分かってないのはお前だけだ、颯太
颯太:は?
心結:お父さんやめて!これ以上言わないで!私、何でもするから!
颯太:心結?お前まで何言ってるんだよ…?
太一:まだ気付かないのか?心結はある秘密を守るために俺の言いなりになってるんだよ
颯太:秘密…?
心結:やめて!お願いだから!何でもするから!
太一:お前たち二人は…
太一:実の兄妹だ!
0:遡ること約2年前
叶恵:お久しぶりですね。五条さん。…いえ太一さん
太一:もう15年くらい経つか?まさかまた同じ部署に配属になるとは思ってもなかったな
叶恵:正確には17年です
叶恵:今回は私が希望を出したんですよ。太一さんと同じ部署になるようにね
太一:…そうだったのか。悪いが不倫の件についてはお互い様という事で落ち着いたはずだが?
叶恵:そうですね。その件についてはこれ以上、糾弾(きゅうだん)するつもりはありません
太一:だったら何だ?
叶恵:父親として責任を取ってください
太一:父親?俺が?誰の?
叶恵:娘の心結です。あなたと不倫していた時に出来た子です
太一:ウソだろ?だってキミはあの時、旦那の子を妊娠したからと関係を切ったじゃないか
叶恵:私もそう思っていました。でも旦那と離婚してからDNA検査をしたら旦那とは一致しませんでした
太一:それが原因で離婚したのか?
叶恵:いいえ。旦那の浮気が原因で離婚しました。なので慰謝料とかでお金に余裕はあります
太一:そうか…
叶恵:だから今は、心結の為に本当の父親が必要なんです
太一:…悪いが少し待ってもらえないか?
叶恵:どうして?
太一:一人息子の颯太が今年大学受験なんだ。今ここで再婚ってなるとアイツにどんな影響が出るか分からない。だから少し待って欲しい
叶恵:分かりました…
太一:ちなみに心結は俺の事知ってるのか?
叶恵:いいえ。難しい年頃だから伏せてます
太一:分かった。ならこれから先もずっと俺が本当の父親ということを隠して欲しい
叶恵:分かりました。貴方がそれを望むなら
0:現在に戻る
颯太:マジかよ…
太一:異母兄妹で恋人同士とか笑えるなぁ。傑作だよ!でもそのおかげで俺は心結を好きに出来てるんだけどなー!
颯太:心結はどうやって知ったんだ?
心結:お父さんに脅迫されたの…。鑑定書を見せられて異母兄妹って事を突き付けられて…
颯太:どうしてそんな事…
心結:颯太にはこの事は黙っといてやる。一切口外もしない。だから俺の慰(なぐさ)みものになれって…
颯太:こんな事になる位なら言ってくれれば…どうして俺にだけ教えてくれなかったんだ…
太一:颯太、お前は本当にバカだな
颯太:何がだよ…っ!
太一:心結はお前の為にやったんだぞー?世界で一番愛してる颯太くんの為に心結ちゃんは頑張ったんだぞー?お前はその気持ちを汲んでやれないのかー?
颯太:くっ…!ふざけやがてって!
太一:お前がこの家に越してこなければ、こんな悲劇起きなかったのになー。だから俺がわざわざ遠ざけてやったのによぉ
心結:だからお兄ちゃんは初めて会う話や一緒に住む話とか知らなかったの?
太一:そうだよ!その方がみんなの幸せだったのによぉ!
太一:そんな王子様はお姫様を守ってあげられませんでしたってか?本当に惨めだな颯太?
颯太:俺は…惨めじゃない…っ
0:家を飛び出す颯太
心結:お兄ちゃんっ!待って!
心結:ごめんなさい…私のせいで…
0:その場にうずくまる心結に近付く太一
太一:ほら心結。邪魔者は居なくなった。だからいつも通り父さんを気持ち良くしておくれ
心結:…分かった。その前にお水を一杯飲ませてくれる?
太一:あぁ構わないぞ
0:キッチンに向かう心結
心結:もう…これで全部…終わり…
0:雨の中鉄橋の下で座る太一
颯太:ははっ…俺はとんだピエロだな。実の妹に恋して親父に寝取られて、逃げ出して…
颯太:もういっそ…
心結:お兄ちゃん…ごめんなさい…
颯太:心結?どうしてここが分かったんだ?
心結:兄妹…だからかな?何となくここにいる気がしたの
颯太:そっか…
心結:うん…
颯太:なぁ…心結?
心結:なぁにお兄ちゃん?
颯太:心結はこれからどうしたい?
心結:お兄ちゃんの望む事がしたい
颯太:家から出て遠くに行きたいって言ったら?
心結:私もついていく
颯太:金がないから銀行強盗するって言ったら?
心結:私も手伝う
颯太:…俺が死にたいって言ったら?
心結:私も一緒に死ぬ
颯太:…どういう死に方が良い?
心結:そうだね…
心結:ガタンゴトン、ガタンゴトン…
颯太:なんだよ急に
心結:電車に轢かれて死ぬのはどう?丁度真上電車走ってるし!
颯太:確かにな…
颯太:でも俺は死ぬ前に心結と海に行きたい
心結:海?どうして?
颯太:約束したろ?合格したら海に行くって
心結:そういえばそうだったね
颯太:だから戻ろう。戻って荷物まとめて二人暮ししよう?それで新しいスタートを…
心結:…ムリだよ
颯太:心結?
心結:もうムリなの…私…取り返しのつかない事したの
0:砂浜に座る二人
颯太:心結…これで本当に良いんだな?
心結:うん。私…後悔してないよ。でもごめん…最後に電話だけさせて…
颯太:あぁ
0:電話をかける心結
叶恵:もしもし、どうしたの?
心結:ごめんねママ。今大丈夫?
叶恵:えぇこれから帰るところだったけど何かあった?
心結:急に声聞きたくなったの…ごめんね
叶恵:そっかそっか。心結勉強頑張ってるから少し疲れたのかな?
心結:うん…。私…疲れちゃった
叶恵:ならスイーツ買って帰るわよ?いつも通りストロベリータルトで良いかしら?
心結:ありがとう。でも…いらない。もう…何もいらないの…
叶恵:心結?どうしたの?何かあったの?
心結:私にお兄ちゃんと同じ血が流れてる以上…もう生きられない…
叶恵:心結!?今どこなの!?バカな事はやめなさい!
心結:さよならママ。愛してくれてありがとう
0:電話を切り、スマホを海に投げる心結
颯太:これで良かったのか?
心結:うん…っ。これで良いの
颯太:そっか。…最後に聞かせてくれるか?
心結:お父さんの事?
颯太:あぁ。正直クソ親父のことはどうでも良いが。どうしても家に戻りたくない理由を知りたい
心結:分かった…
心結:お兄ちゃんが飛び出した後、私もすぐに追いかけたかった…でも…
0:数時間前リビング
太一:心結!ついでに父さんにも水持ってきてくれ!
心結:…分かったよ
太一:おい心結!お前颯太とヤッたのか?
心結:してない。キスもしてない
太一:そいつは愉快だな!颯太は俺の息子のくせして女の扱いが分かってないからな!
心結:でもお兄ちゃんは優しいから
0:心結は水の入ったコップを渡す
太一:優しさと臆病は紙一重だから!お、水サンキューな!
心結:…お兄ちゃんを悪く言うな!
0:心結は太一の胸に包丁を突き刺す
太一:が…っ!な…なに…しやが…るっ…!
心結:全部アンタが悪いんだ!この血が悪いんだ!だから!だから!
0:何度も包丁を突き刺し、辺りは血の池になる
心結:はぁはぁはぁ…。お兄ちゃんを追わないと…
0:現在
颯太:そうだったのか…
心結:ごめんなさい…
颯太:謝る事ないって。でも俺の身体にはあのクソ親父と同じ血が流れてるわけだよな
心結:私にも流れてるよ
颯太:心結…。本当に良いんだな
心結:もちろん。私、お兄ちゃんと一緒ならどこまででも行くよ?
0:二人は手を繋ぎ海の方へ歩き出す
颯太:足元、気を付けて
心結:うん。やっぱり海荒れてるね
颯太:あぁ。絶好の自殺日和だな
0:波が高くなり、心結の肩の深さまでくる
心結:うん。お兄ちゃん?
颯太:なんだ?
心結:これからも宜しくね?
颯太:こちらこそ
0:口付けを交わす二人
心結:私の事…離さないでね?
颯太:もちろんさ
心結:ありがとう。…そしてごめんね
0:心結は颯太の腹部に包丁を突き刺す
颯太:ぐっ…!み、心結…っ…?
心結:大丈夫。私も…
0:心結も自分の腹部に包丁を突き刺す
颯太:な、何で…こんな…こと…?
心結:いやだっ…たの…。あの人の血を…身体に…残して…死にたく…ない…
0:心結は波に飲まれる
颯太:心結…っ!やば…っ、波が…高す…ぎ…る……
0:颯太も波に飲まれ、心結の手を離してしまう
颯太:心結…っ!どこ…だっ…!み…ゆう…っ!
心結:ありがとう…お兄ちゃん…。来世で…また…
颯太:どこだ…頼むから…その…手…を……
(エピローグ)
心結:(M)これで良かった…。これで血で繋がる『赤の他人』は終わる。深く暗い海の底。何にも染められない漆黒に私たちは沈んでいく
颯太:(M)身体から血液が流れ出る。漆黒に染まった世界を変えることが出来ないまま、赤は黒に飲まれていく。きっと俺が…いや、心結がそれを望んだから
心結:(M)だから生まれ変わったら…今度は…
終
心結:(M)何者にも染められない『黒の他人』として、アナタに出逢いたい