台本概要

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タイトル 西園寺弧涼はサイコパスである~サイコ×SAC~
作者名 ぴー  (@p_kouhai_chan)
ジャンル ミステリー
演者人数 3人用台本(男2、女1)
時間 40 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 本作品はボイコネ小説大賞並びにボイコネに投稿した作品になります。
またタイトルの変更も同時に行っております。

【作品について】
男2女1の3人劇です。
世界観が壊れてしまうのでキャラクターの性別変更不可とさせて頂きます。
演者様の性別は不問ですので男性が女性役、女性が男性役を演じて下さる分には問題ございません。

過度なアレンジ・アドリブはお控えください。
自作発信・無許可での転載等もお控えください。

非商用利用の際は連絡の必要はございません。
気が向いたら感想など送って下さると嬉しく思います。



【あらすじ】
とある町で半月に5件もの婦女暴行事件が起こっていた

事件解決の為に30人のクライアント(患者)を自殺に追い込んだと言われている西園寺の助言を聞きに訪れる武藤と導

だが、導は西園寺に姉の事を問い詰めることで物語は大きく動き出す

導は真実にたどり着くことが出来るのか?

最後に一言…

『人の作った文字の羅列と数字には必ず意味がある』


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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
西園寺 123 西園寺 弧涼(さいおんじ こりょう) 28歳。有名心理カウンセラー 長髪で細身の長身長 4年前に自身のクライアント(患者)30人を自殺に追いやったとして逮捕された
101 東条 導(とうじょう しるべ) 24歳。東条 燈の妹で新米刑事 可愛らしい顔をしているが、武術に関しては男にも負けない実力の持ち主 それでいて頭も回る 姉を殺した西園寺を強く恨んでいる
武藤 89 武藤 猛(むとう たける) 38歳。頭より先に身体が動くタイプの刑事 言葉遣いが荒いパワハラ上司 度々、西園寺のプロファイリングや推理に助けられ事件を解決しており警察内でも幅を利かせている
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:婦女暴行事件が発生し、雨が降る深夜の住宅街に警察官が集まっている 武藤:ちっ、これで今月何件目だ 導:これで5件目です… 武藤:ふざけるな!まだ半月しか経ってないんだぞ! 導:武藤さん落ち着いて下さい。気持ちは分かりますが… 武藤:落ち着いていられるか!この前の現場で残ってたゴムのDNA鑑定の結果もまだなのか! 導:データベースに該当者なしだったそうです… 武藤:せっかくの証拠見付けてもこれじゃ意味がねぇな!おい!東条!もう一回何か残ってないか確認してこいっ! 導:…分かりました 0:武藤に言われるがままその場から離れる導 武藤:くそが!これだから女警官ってのはマスコットにしかならねぇんだよ! 武藤:…仕方ない。これ以上は警察の威信に関わる…アイツの知恵を借りるとするか 0:ポケットからスマホを取り出し電話をかける武藤。スリーコールの後、男が電話に出る 西園寺:はい。ボクだ。こんな時間になんの用かね? 武藤:…明日の昼お前の所に行く。だから早めに飯を済ませとけ 西園寺:相変わらずの物言いだね。今度の無能刑事の相方はどんな人だい? 武藤:俺の事を無能呼ばわりするなサイコ野郎!この事件が解決したら次はお前の番だからな!必ずお前を死刑台に送ってやる! 0:乱暴に電話を切る武藤 西園寺:ふふっ…わずかだけど声が上ずって、早口だったね。つまり女性刑事と一緒に来るのかな。 西園寺:…となると、とびっきりの紅茶を用意して、おもてなししないとね。彼女も紅茶が好きだと良いなぁ…。中々に楽しみだ。ホントに…楽しみだ 0:パソコンを起動させる西園寺 西園寺:ついでに事件の情報も集めておかないとね。さてと…パスワードは…っと 0:翌日の昼、武藤と導は医療刑務所に到着する 導:武藤さん、ここって医療刑務所ですよね?こんな所に何の用ですか?今回の事件に関係あるんですか? 武藤:一度に喚(わめ)くな。ここの囚人…いや、サイコ野郎に用があってな 導:サイコ野郎? 武藤:『西園寺弧涼(さいおんじこりょう)』お前も名前くらいは聞いた事あるだろ? 導:知ってるも何も有名人ですよ!臨床心理学の歴史を半世紀進めたと言われたカウンセラーじゃないですか! 導:そして…1年間で自身の患者30人をマインドコントロールし自殺に追いやったサイコカウンセラーですよね 武藤:さすがに知っていたか。それなら少し安心した。アイツは恐ろしくイカれてるが、恐ろしく頭がキレる。大声では言えんが事件解決の手助けをする事を条件に医療刑務所に収容しているわけだ 導:でも…どうして今回は私も同行する事になったんですか? 武藤:ヤツに会う時は必ず2人以上じゃないとダメなんだ。それにアイツは毎回タダでは教えてくれん。こっちの考えを笑い、一蹴しないと気が済まないんだ。本当に腹が立つ! 導:つまり私の考えをバカにされろ、という事ですか? 武藤:分かってるじゃないか!自分の役割を理解してるなら問題ない!じゃあ行くぞ! 0:二人は受付でカードキーを受け取り、ゲートを超える 導:カードキーですか?厳重に管理されてるんですね。それに長い廊下… 武藤:余計な口を挟むな。お前も首からぶら下げとけ 導:分かりました。でも、一犯罪者にこんなに税金かけて良いんですか?納得出来ません 武藤:残念ながらアイツの私財で自身の収監部屋を作ったそうだ。他の犯罪者の声を聞きたくないから防音設備かつ自分好みの部屋にしたらしいな 導:そうなんですね。…ここですか? 武藤:あぁ、入る前に1つ守れ。…ヤツと目を合わせるな。分かったな? 導:それはどういう意味ですか? 武藤:口答えするな!お前は言われた通りに動けば良いんだよ! 導:…わかりました 武藤:では、開けるぞ 0:カードキーを当てると電子音の後、鍵が解錠された音が響く。そして扉を引いて中に入る 0:すると長髪で細身の男性が座り心地の良さそうな椅子に座っていた。部屋の中はまるで大会社の応接室のような作りをしていたが窓は一切なかった 西園寺:やぁ待ってたよ。無能刑事、そして麗しきお嬢さん。ボクが西園寺弧涼(さいおんじ こりょう)だ。お名前を伺っても? 導:初めまして、私は東条導(とうじょうしるべ)と申します。若輩者ですが以後お見知りおきを 西園寺:東条…導…ね。その名前しっかり覚えたよ。これからヨロシク。でも中々に視線が合わないのは残念だね。無能刑事の入れ知恵かな? 武藤:何がヨロシクだよ!相変わらず偉そうに座りやがって、この部屋だって社長室かよ!少しは身の程をわきまえやがれ!サイコ野郎! 西園寺:無能刑事も相変わらずだね。その不躾(ぶしつけ)な言葉遣いを改めてたまえ。だから中々に彼女が出来やしないのだよ 武藤:てめぇ…! 西園寺:そんな事より、お嬢さん。ボクの名刺をあげよう。ケータイのアドレスと番号が書いてあるレア物だよ 導:(名刺を受け取る)あ、ありがとうございます 0:名刺のおおまかな内容 0:名前『西園寺弧涼(さいおんじこりょう)』 0:電話番号『0x0ー1421ーxxxx』 0:アドレス『swingーafterーcometrue…』wgcの三文字だけ文体が違う 武藤:そのケータイは一切使えないのに何考えてやがるんだサイコ野郎! 導:使えない? 武藤:そうだ。この部屋は特殊な作りをしていて電波を一切通さない、だから通信関連は全て有線のみってわけだ 西園寺:そうじゃないとボクの監視が大変らしくてね。中々に残念だ。…でも人の作った文字の羅列と数字には必ず意味がある。覚えておきたまえ 導:…分かりました。あの…この文字のフォントが違うのは… 武藤:そんな事より資料を見ろ!おいっ東条!サイコ野郎に資料をわたせ! 導:…はい。西園寺さん、こちらが今回の連続婦女暴行事件の資料です 西園寺:ふむ。では見せてもらおうか。ボクは紅茶のお代わりを淹れるがキミたちも何か飲むかね?ボクのオススメはこのダージリンだけど、いかがかな? 武藤:俺は紅茶なんてシャレたもんはいらねぇ!いつも通りブラックコーヒーだ! 西園寺:相変わらず品がないね、お嬢さんは紅茶で良いかい? 導:…お構いなく。それよりも早く目を通して頂けますか 西園寺:焦る必要なんてないさ。今焦った所で事件は起きやしない 0:ティーポットにお湯を注ぎ、香りを楽しむ西園寺 西園寺:良い香りだ。本当に良い紅茶をもらえてボクは運が良い 西園寺:お嬢さんは砂糖とミルクは必要かい? 武藤:ふざけるのも大概にしろサイコ野郎っ!今すぐテメーをぶち殺しても良いんだぞ! 導:武藤さん、それはさすがに問題発言では… 西園寺:まったく、本来なら脅迫罪で責任を取ってもらう必要があるのだが…この部屋にはカメラもボイスレコーダーもないものだからね。中々に残念で仕方ない 武藤:当然だろ!凶悪な殺人犯に洗脳されてたまるか! 導:西園寺さん、資料を見る気がないなら私が読みましょうか 西園寺:ほぅ…お嬢さんが読んでくれるのかね。これは美味しい紅茶が頂けそうだ、是非お願いするよ 武藤:おい東条っ!そこまでする必要ないぞ!コイツを調子に乗らすな! 導:でも、早く解決の糸口を見付けないと…また被害者が… 武藤:…ちっ、分かった!好きにしろ! 西園寺:それは中々にありがたい 0:紅茶を一口飲む 西園寺:…そうだ、お礼ではないが1つゲームをしよう 武藤:はぁ?ゲームだ?俺らはこれ以上お前のお遊びに付き合う余裕なんて… 西園寺:ボクの問に正解する度にボクの罪を告白しよう 武藤:なっ!?ホントかサイコ野郎! 西園寺:あぁ約束しよう。お嬢さんはどうかね? 導:分かりました、お願いします 西園寺:うむ。では犯行時刻と被害者女性の年齢と職業だけ教えてくれ 導:えっ、それだけで良いんですか? 西園寺:あぁ。もし気になることがあれば、その都度質問する 導:分かりました。最初の被害者は26歳のアパレル店員。帰宅途中に襲われました。時刻は22時を回っていたとの事です 西園寺:(紅茶を1口飲む)ふむ…そうか 導:続けても? 西園寺:どうぞ 導:2人目は18歳の女子学生。同じく帰宅途中で被害に合いました。時間は21時前かと 西園寺:その女子学生は何故そんな時間に帰宅を? 武藤:バイトだとよ!世間のガキはどっかのサイコ野郎と違って汗水垂らして金を稼いでるんだよ! 西園寺:労働というものは、大変だな。ちなみにその女子学生の働き先は? 導:コンビニです。その日もいつも通りの時間に帰路についていたとのことです 西園寺:コンビニか…分かった。次頼む 導:はい。3人目は26歳専業主婦。同窓会の帰りに被害に合いました。時刻は酔っていたこともあり曖昧で深夜12時頃ではないか、という話です 武藤:まぁ酔ってる女が一人夜道を歩いてたら襲ってくれと言ってるようなものだ!ホントに女はバカだよな! 西園寺:…専業主婦…か。無能刑事の男尊女卑は相変わらずなのでスルーさせてもらおう。次を頼む 導:4人目は21歳の女子大生。こちらも飲み会の帰りにほぼ同時刻に襲われたみたいです。そして現場には使用済みの避妊具が落ちていました。なおデータベースに該当者なしです 西園寺:ちなみにその飲み会はサークル仲間とかい? 武藤:そんな事関係ないだろ! 西園寺:だからキミは無能刑事なんだ。これは非常に大事な情報なんだよ 武藤:だから俺を無能呼ばわりするな! 導:…続けてもよろしいですか? 西園寺:あぁ頼む 導:サークル仲間ではなくアルバイトの同僚とですね。ちなみに避妊具の中身から年代が分かりました… 西園寺:いや、いい。余計な情報には興味がないのでね 武藤:はぁ?決定的な証拠に興味がないだぁ?サイコ野郎お前ふざけるのも大概にしろよ! 西園寺:ボクの役割は証拠から導くのではなく、人から導くものだ。余計な口を挟むなら今回の件はここまでにさせてもらうよ? 武藤:…必ず殺してやるからな 導:分かりました。最後の被害者は26歳会社員。帰宅途中に襲われました。時刻は23時頃です 西園寺:その女性は既婚者だよね? 導:え、えぇ。既婚者は3番目と5番目の被害者だけです 西園寺:ありがとう。ちなみにキミたち警察の考えを伺ってもよろしいかい? 武藤:犯人は犯罪歴のない性欲モンスターだ!計画的でなく衝動的に行動してる知能の低いゴミだ! 導:言い方はアレですが…警察の総意で間違いないです 西園寺:なるほどな。さすが無能刑事だ 武藤:てめぇ!いい加減にしろよ! 導:武藤さんっ! 0:導は身を呈して殴りかかるの武藤を止める 西園寺:おや?殴らないのかい?殴ってくれれば証拠が残っただけに残念だ。優秀な部下に感謝したまえ 武藤:クソが! 西園寺:では、丁度いい。最初の問だ。初回サービスで特別にヒントもあげよう 導:ヒントですか? 西園寺:あぁ、ヒントだ。キミたちの考えは間違っている。今回の犯人は2人いる 武藤:2人だぁ?つまり複数犯って事か? 西園寺:模倣犯がいるということだ。恐らくその2人には接点はない。そこで問題だ。模倣犯が起こした事件は何番目だと思う? 武藤:は?そんなの決まってるだろ!4番目だ!証拠を残すマヌケだからな!そうか!だからデータベースに引っかからなかったのか! 西園寺:(恍惚の表情を浮かべ)んー、模範解答ありがとう。中々に満足だよ。ではお嬢さんも同じ考えという事で良いかな? 導:…3番目 西園寺:…ほう。その心は? 導:3番目の女性だけ現在働いていないからです。西園寺さんが気にされていた部分ですよね? 武藤:そんな訳あるかよ!たったそれだけの事かよ! 西園寺:導くん、正解だ!よくボクの話を聞いていたね。無能刑事、『たったそれだけの事』で人は大きな選択をする事を忘れるな 武藤:分かったよ!それよりも正解したんだから、さっさと全部ゲロっちまえよ! 導:西園寺さん約束は守ってもらえますよね? 西園寺:あぁボクは約束は守るよ。ボクの過去に犯した罪は…幼少の頃、窃盗行為を働いた 武藤:はぁ!?ふざけるな!30人殺したって白状しろよ!この野郎っ! 西園寺:だからボクはやってないと何度も言っているだろ。にも関わらず3年もこんなところに閉じ込めるなんて中々に酷い話だよ。それにその罪を認めるとボクは死刑なんだろ? 導:…ちなみにですが、犯人像も分かったんですか? 西園寺:あぁもちろん。だがその前に導くん。申し訳ないがトイレに行って替えてきてくれないか? 武藤:替える?何をだ? 西園寺:月の物だよ。匂いで中々に頭が回らなくなりそうだ。そこのトイレを使ってくれて構わない。左の棚の中に除菌シートがある。それで清掃も忘れないでくれよ 導:…っ!わ、分かりました、でもその言い方はあまりにも酷いですよ 0:西園寺を軽く睨んでテーブルの上に資料を置き、トイレに入る導 武藤:俺は全く気付かなかったのによぉ、お前も大概だな!サイコ野郎!いや変態サイコ野郎っ! 西園寺:好きに言ってくれて構わない。とりあえず彼女が戻るまで待とうか。コーヒーのおかわりはいるかい? 武藤:時間が惜しい、さっさと話せ。女の化粧とトイレの時間はこの世で一番ムダだからな 西園寺:ほう?本当に良いのかい? 武藤:良いって言ってんだろうが!さっさと話せ! 西園寺:相変わらずせっかちだな。では2つ目の問だ。なぜ犯人は働いてる女性を狙っていると思う? 武藤:急に始めるのかよ。…んー、あれか?制服姿に興奮したからとかか? 西園寺:世の中の人間が無能刑事みたいなら平和なのだろうな 武藤:バカにすんじゃねぇ!分かったぞ!金持ってるからか!だから多少抜いても強盗と思われないからか! 0:テーブルに残された調書を軽く叩く西園寺 西園寺:この調書によると金銭及び金品に一切の被害なしと書いてあるが? 武藤:あー!もう知らん!ギブだ!さっさと教えろ! 西園寺:まったく…。もちろん可能性の範疇だが、犯人は働く女性に対し強いトラウマを持っている 武藤:トラウマだぁ? 西園寺:そう。昔の恋人なのか、イジメていた相手かは分からないが…かなり深い怨恨を持っている 武藤:ならつまりイジメられてたヤツが犯人ってか?そんな情報で捕まえられるか! 西園寺:それでいて犯人はプライドが高く、狡猾な人間だ。模倣犯が現れたことに対し憤りを感じたのだろう。そして自身の方が優れていると証明したかった。だからわざわざ証拠を残したと考えられる 武藤:捜査を撹乱する為じゃないのか?だが、普通なら模倣犯に罪を擦り付けるようと思うけどな 西園寺:それはない。自身の優位を証明する為に、わざわざ5番目に既婚者を狙ったのだからな 武藤:はぁ?模倣犯が既婚者を犯したかどうかなんて情報どこで手に入れるんだよ?ニュースでそんな事言うわけないだろうが! 西園寺:だから言ってるだろ?ボクは人から答えを導くって。恐らく4件目の事件を起こした時点では3番目の被害者が既婚者という事を犯人は知らなかったのだよ 武藤:だったらその情報はどこから引っ張って来たんだよ! 西園寺:だから…人だと言っているだろ 武藤:人…?どういうことだ? 西園寺:つまりは近所。…この手の話だと同じ建物か近所の住人が話している所を聞いたのだろう。つまり犯人は3番目の被害者の近隣住民の可能性が高い 武藤:近所だと?職場で聞いたとかネットの可能性もあるだろ!なんで近所と言い切れる! 西園寺:働いてる女性に対して憎悪を持っているのだ。そんな人間が働いてる可能性は中々に低いよ。それに、インターネットにはそれらしい記事は見当たらなかったしね 武藤:ってか、お前いつ調べたんだ? 西園寺:キミたちが来る前から気になっていたからね。それにこの手の性的な話は内容を共有しやすい相手にしか話さないものさ。話す相手を間違えると自分が不審な目で見られる事になるしね 武藤:そんなもんなのか…?だがよぉ、ゴムはどこで手に入れたんだ?まさか自分のものではないだろ? 西園寺:そうだね。ゴミでも漁ったんじゃないかな?見知らぬ人間が使った避妊具なんてボクは死んでも触りたくないけどね 武藤:だが、証拠としては弱くないか? 西園寺:まだ腑に落ちない点があるなら聞いてくれたまえ?1つづつ潰してあげようではないか 武藤:…とりあえず分かった!早速3番目の被害者宅周辺で聞き込みさせる…っと、ここじゃケータイ使えないんだったな、ホントに不便だ! 西園寺:どうぞお好きに?彼女は置いていくのかい? 武藤:あぁ?ムダに長いから忘れてたぜ、出て来たら早く来るように伝えてくれ! 0:そう言い残し部屋を出ていく武藤 西園寺:まったく…本当に自由で自分勝手だ。さてと紅茶のおかわりを入れようか 0:西園寺がポットとカップを手に取ったタイミングで導がトイレから出てくる 西園寺:やぁ、随分と長かったね。無能刑事は先に出ていったよ。紅茶のおかわりを飲んでから行く… 導:動かないで下さい 0:導は静かに銃を西園寺に向ける 西園寺:おっと、これはどういう事かな?先程の発言が気に入らなかったと見える 導:余計な事は喋らないで、早く両手をこちらに見えるように上げて下さい 0:西園寺はポットを置いて両手を上げる 西園寺:…これで良いかね?だがようやく目が合ったね 導:そんな事はどうでも良いっ!私の質問に答えて下さい! 西園寺:何なりと 導:あなたがお姉ちゃんを死に追いやったんですか? 西園寺:お姉ちゃん? 導:とぼけないで!忘れたとは言わせない!東条燈(とうじょうあかり)よ!あなたが殺した最初の犠牲者よ! 西園寺:…よく覚えているさ。でも殺したのはボクじゃない 導:まだ、とぼけるつもりですか?お姉ちゃんはあの日あなたのクリニックに行って、そのあと飛び降り自殺したのよ!あんなに強かったお姉ちゃんが自殺するなんて考えられない!あなたが何かしたんですよね! 西園寺:あぁ…彼女は強い人間だった。だからボクも自殺だなんて考えていない。それに彼女はボクのクライアントではない 導:なら、どうしてお姉ちゃんはアナタのクリニックに行ったんですか!しかも定期的に通っていたっていう話ですよ! 西園寺:燈とボクは恋人関係だった 導:適当な事を言わないでください!そんな話聞いた事ないです!返してください!お姉ちゃんを!私たちの夢を! 西園寺:夢…? 導:そう、お姉ちゃんの夢で私たち2人は姉妹警官として町を守るって…約束したのに… 0:その時扉が開き、武藤が戻ってくる 武藤:お、おいっ!何やってるんだ!東条!お前自分が何をしてるか分かってるのか! 導:武藤さん…止めないで下さい!私がこの殺人犯を殺します!私はその為に刑事課に入ったんですから! 西園寺:という勘違いをしているのだ。すまないが止めてもらえないか? 武藤:ったく、しょうがねぇな。やめろ東条!今すぐ銃を下ろせ! 導:邪魔しないで下さい!…!? 0:武藤のスタンガンを当てられその場に倒れる導 武藤:だからやめろって。お前の銃でサイコ野郎を撃ち殺すと…俺の計画が崩れるんだよ 導:む、武藤…さ…んっ…? 武藤:ほーほー!意識を保っていたか!さすがタフだな!そのタフさは姉ちゃん譲りか? 西園寺:どういうつもりだ武藤刑事? 武藤:そうだな分かりやすく教えてやるよ!お前ら2人も殺す! 西園寺:も、だと? 武藤:そうさ!そこの小娘は勘違いしていたみたいだが、俺が東条燈を殺した!自殺に見せかけてな! 導:な、なんで…そん…な事…を… 武藤:簡単な話だ!俺をフッて、そこのサイコ野郎と付き合っていたからだよ!だからよぉ、殺す前に犯しまくってやったよ!まぁ…証拠が残ると良くないからナマでは出来なかったけどな! 導:たった…それだけのコトで… 武藤:あぁ!お前らからすれば、たったそれだけかもな!でもよぉ、そこのサイコ野郎も言ってただろ?『たったそれだけの事でなんとやら』ってな! 西園寺:最低なクズめ 武藤:何とでも言いやがれ!じゃあ、まずお前を殺す!それからこの女をぶち犯してぶち殺す!そして罪を全てお前に被せて事件解決だ! 0:武藤は銃口を西園寺に向け、近付く 西園寺:…だが、全て自供してくれたな。中々に良かったよ 武藤:何言ってやがる!負け惜しみは、あの世で後悔しながら唱えやがれ! 西園寺:では、もう一度確認しようか? 0:その時、後ろから武藤の声が流れる 武藤:俺が東条燈を殺した!自殺に見せかけてな! 導:武藤さん…いえ、武藤容疑者!もう言い逃れは出来ないですよ! 0:武藤の後ろで銃とレコーダーを向ける導が流したものであった 武藤:はぁ?お、お前なんで動けるんだ!高圧電流だぞ!? 導:西園寺さんのおかげです。やはり西園寺さんが言っていた事は正しかった 武藤:…っ!このサイコ野郎が! 西園寺:さて、ホントのサイコ野郎はどっちかな?無能容疑者? 0:時間は少し遡り、トイレ内で西園寺の名刺を見る導 導:…やっぱり、この名刺の内容はメッセージだ。アドレスのW・G・Cだけ字体が違う… 導:つまりWC・G…トイレに行けってことだよね。じゃあこの棚の中に… 0:導は棚の中からナンバーロック式南京錠つきの箱を取り出す 導:この鍵のナンバーは4桁…つまり電話番号?1…4…2…1…。開いた!これはボイスレコーダーとイヤホン? 0:不思議に思いながらイヤホンを耳に入れ再生する導 西園寺:ボクは西園寺だ。まずはお礼を言わせて欲しい。ボクの意図を理解してくれてありがとう、賢き者 導:…!?西園寺さん! 西園寺:もちろんこれは事前に録音したものだ。あまりにも長いと武藤刑事に疑われるだろうから手短に話す 導:どうして武藤さんの事が出てくるの? 西園寺:ボクの恋人、東条燈(とうじょうあかり)を殺した犯人は武藤だ。そしてボクを犯人に仕立て上げている。だが証拠もなくボクも動けない。だからこれを聴いているキミに一芝居打って欲しいのだ 導:犯人は武藤さん!?いや…でも信じられるわけ… 西園寺:もちろん、キミも刑事なのだろう。突然こんな事言われても納得出来ない事は百も承知だ。 西園寺:…だからここで問だ。東条燈を殺した犯人が武藤と思うなら、上の棚に入っている耐電圧ベストを中に着て、ボクを殺そうとする芝居をしてくれ 西園寺:その際にこのボイスレコーダーを使って武藤の自供を録音して欲しい 導:こんな犯罪者の言う事なんて信じられない!早くこの証拠を武藤さんに… 西園寺:…これを聞いてくれているのが東条導(とうじょうしるべ)だと嬉しいのだが… 導:…えっ?今、私の名前を言った…? 西園寺:おっと、すまない。人に頼み事をしているのに他人の話をしてしまって。ただ…ボクの直感だが、彼女がここに来てくれる気がしてね…ただの妄想さ…気にしないでくれ 西園寺:だが、本当に彼女ならボクの事など信じなくていい。でも燈を…姉さんを信じて欲しい 導:…ずるいよ、西園寺さん。でも私はあなたを信じない…! 導:私は…お姉ちゃんを信じますっ! 0:現在に戻る 西園寺:…と、いう事だよ。納得してもらえたかね? 武藤:納得出来るかあぁぁぁ!お前の得意の洗脳で東条を誘導したんだろ! 武藤:東条っ!今ならまだ間に合う!そのボイスレコーダーを俺に渡せ! 導:武藤さん動かないで下さい!少しでも怪しい動きをしたら撃ちますよ! 武藤:くっ!分かったよ!降参だ! 導:では、そのテーブルの上に銃を置いて下さい! 武藤:…分かった 0:テーブルの上に銃を置く武藤 導:そのまま後ろを向いて両手を後ろに! 武藤:くっ…これで良いか? 導:手錠をかけますね 武藤:(小声で)ふっ、バカな女だ 西園寺:導くん!危ないっ! 0:武藤は振り返り隠し持ってたナイフを導に突き出す 導:…っ!やっぱりアナタは最低です 0:導は武藤の突き出した腕を取り一本背負いで投げ飛ばす 導:はぁ…っ!! 武藤:ぐはっ!そんなのありかよ…? 西園寺:ふふっ、さすがだね。無能容疑者、キミの計画には1つ大きな穴があるのだよ。それは… 導:私がこんな、ひ弱な男に襲われる訳がないんですよ!…っ! 西園寺:導くん!頬から出血が! 導:カスっただけです。武藤容疑者、傷害及び殺人未遂の現行犯で逮捕します 0:武藤に手錠をかける 武藤:なんで俺がこんな小娘に… 導:黙れ。女の身体と心を傷付けた罪、一生ブタ箱で懺悔しろ 西園寺:(口笛を吹く)さすが導(しるべ)くん、中々に鮮やかでクールだね 導:お褒めの言葉ありがとうございます。では、武藤容疑者を連行致しますので、これで失礼します 0:部屋から出ようとする導 西園寺:待ちたまえ。忘れ物だ 導:忘れ物? 西園寺:…クライアント29名を自殺に追い込んだのはボクだ 導:…えっ?何を言ってるんですか? 西園寺:約束だったろ?ボクの問に正解する度にボクの罪を告白すると 武藤:おいおいおい!散々否定しといて、やっぱりお前が犯人じゃねぇか! 導:黙ってください!なんで…なんで…今自白するんですか…?ほぼ確実に死刑なんですよ? 西園寺:だからだ。ボクの役目は終えた。燈の無念を晴らした。だからボクにこれ以上生きる意味はないよ 導:…分かりました 西園寺:ありがとう。じゃあこの電話で応援を呼んでくれ…。すまないが最後に紅茶を一杯だけ飲ませてもらうよ 導:アナタの命私がもらいます 西園寺:何を言ってるんだ… 導:確かに西園寺さんは多くの人の命を奪ったかもしれない。でも今みたいに助けようとしてくれた。アナタにしか出来ない事がまだあるはずです!だから命尽きるその日まで私の為に生きてるくれませんか? 0:一瞬燈の姿と被り、涙を流す西園寺 西園寺:あ、あか…り…? 導:え?お姉ちゃんですか? 西園寺:あ…いや…。まさか燈がボクに言ってくれた言葉を導くんから聞くことになるとはね…涙なんて何年ぶりに流しただろう… 導:お姉ちゃんが亡くなった時以来ですか? 西園寺:いや。燈に今の言葉を言われた時…以来かな。ボクは幼少の頃、酷い虐待を受けていてね…その影響で前頭葉の機能に壊れている部分があるのさ… 武藤:おいおい、言い訳するなよサイコ野郎 西園寺:何とでも言ってくれ。ボクはキミのように犯す事でしか快楽を得られない愉快犯とは違う。クライアントを自殺に追い込んでしまったのも、燈は自殺ではないと証明したかったからだ 導:…そうだったんですね。西園寺さん、最後に2つだけ教えてくれますか? 西園寺:なんなりと 導:私が信じずに武藤容疑者に話していたらどうするつもりだったんですか? 西園寺:愚問だな。それは無いと確信してたよ? 導:どうしてですか? 西園寺:ボクは人の心を読めると言われたカウンセラーだよ?導くんがどうして警察官になったか理由も知っていた。だからお姉さんの死について情報を得る事が出来るなら、それを選ぶ確信があった 導:…イヤな性格してますね 西園寺:あぁ。カウンセラーなんて人の不幸を金に替える卑しい生き物さ。それで…もうひとつは? 導:この、頭文字3文字の『SAC』ってなんですか? 武藤:ふっ、どうせサイコ野郎のサイコだろ! 西園寺:やはり無能容疑者はボクの思った事を言ってくれるね 武藤:ああんっ? 西園寺:そんな事より、どうしてここが気になったんだい? 導:最初はそこまで気になりませんでしたよ。…でも人の作った文字の羅列と数字には意味があるんですよね? 導:メッセージめいたアドレスならきっと特別な意味があるんだと思いました 西園寺:そうか…。まぁ…意味はある 導:教えてくれませんか? 西園寺:正直恥ずかしいのだが…言葉遊びと名前だよ 武藤:つまり、自分の名前を入れただけか!くだらないな! 西園寺:そう…くだらないさ。ただの妄言と言っても過言でない位にね 導:アドレスを和訳すると…『揺れ動いた後、真実をつかみ取る』と言ったとこですか? 西園寺:ご明察。さすがだね 導:名前は…もしかして私たち3人の名前ですか? 西園寺:…そうだ。導(しるべ)・燈(あかり)・弧涼(こりょう)の頭文字さ 導:どうしてですか?お姉ちゃんは分かるけど…どうして私も? 西園寺:夢だったからさ 導:夢? 西園寺:あぁ。ボク達3人でこの街を守るというね。よく燈と話していたのさ 導:そうだったんですね…。西園寺さんもだったんですね 武藤:おいおい!いつまで、くっちゃべってるんだ!こちとら身体中痛ぇんだよ!早く連れていきやがれ! 西園寺:それもそうだね。導くん、キミも早く手当をした方が良い。せっかくの美しい顔に傷が残るのは中々に残念で忍びない。だからまたいつか思い出話をゆっくり語り合おう 導:もちろんです!西園寺さんも色々教えてくださいね! 西園寺:あぁ喜んで 導:では失礼します! 0:敬礼をして武藤と部屋を出る導。その後西園寺は紅茶を入れパソコンの前に座る 西園寺:さてと…これで終わったんだな… 0:キーボードにパスワードを打ち付ける 西園寺:これでよし、っと 0:西園寺は今回の事件の詳細を事細かに記録し保存する 西園寺:ボクが消されても導くんならこの証拠を見付けてくれたとは思うけどね 0:紅茶を一口飲み、深く息を吐く 西園寺:ん?パスワードが知りたいって?キミも強欲だな。でも特別に教えてあげよう。今のボクは中々に気分が良い 0:ティーカップを置いて 西園寺:『SACPASS(サイコパス)』当て字だけどね。本当にイカれた奴を証明する魔法の言葉さ。でも…本当にイカれてるのは殺人犯を相棒にした彼女…なのかもね 0:終

0:婦女暴行事件が発生し、雨が降る深夜の住宅街に警察官が集まっている 武藤:ちっ、これで今月何件目だ 導:これで5件目です… 武藤:ふざけるな!まだ半月しか経ってないんだぞ! 導:武藤さん落ち着いて下さい。気持ちは分かりますが… 武藤:落ち着いていられるか!この前の現場で残ってたゴムのDNA鑑定の結果もまだなのか! 導:データベースに該当者なしだったそうです… 武藤:せっかくの証拠見付けてもこれじゃ意味がねぇな!おい!東条!もう一回何か残ってないか確認してこいっ! 導:…分かりました 0:武藤に言われるがままその場から離れる導 武藤:くそが!これだから女警官ってのはマスコットにしかならねぇんだよ! 武藤:…仕方ない。これ以上は警察の威信に関わる…アイツの知恵を借りるとするか 0:ポケットからスマホを取り出し電話をかける武藤。スリーコールの後、男が電話に出る 西園寺:はい。ボクだ。こんな時間になんの用かね? 武藤:…明日の昼お前の所に行く。だから早めに飯を済ませとけ 西園寺:相変わらずの物言いだね。今度の無能刑事の相方はどんな人だい? 武藤:俺の事を無能呼ばわりするなサイコ野郎!この事件が解決したら次はお前の番だからな!必ずお前を死刑台に送ってやる! 0:乱暴に電話を切る武藤 西園寺:ふふっ…わずかだけど声が上ずって、早口だったね。つまり女性刑事と一緒に来るのかな。 西園寺:…となると、とびっきりの紅茶を用意して、おもてなししないとね。彼女も紅茶が好きだと良いなぁ…。中々に楽しみだ。ホントに…楽しみだ 0:パソコンを起動させる西園寺 西園寺:ついでに事件の情報も集めておかないとね。さてと…パスワードは…っと 0:翌日の昼、武藤と導は医療刑務所に到着する 導:武藤さん、ここって医療刑務所ですよね?こんな所に何の用ですか?今回の事件に関係あるんですか? 武藤:一度に喚(わめ)くな。ここの囚人…いや、サイコ野郎に用があってな 導:サイコ野郎? 武藤:『西園寺弧涼(さいおんじこりょう)』お前も名前くらいは聞いた事あるだろ? 導:知ってるも何も有名人ですよ!臨床心理学の歴史を半世紀進めたと言われたカウンセラーじゃないですか! 導:そして…1年間で自身の患者30人をマインドコントロールし自殺に追いやったサイコカウンセラーですよね 武藤:さすがに知っていたか。それなら少し安心した。アイツは恐ろしくイカれてるが、恐ろしく頭がキレる。大声では言えんが事件解決の手助けをする事を条件に医療刑務所に収容しているわけだ 導:でも…どうして今回は私も同行する事になったんですか? 武藤:ヤツに会う時は必ず2人以上じゃないとダメなんだ。それにアイツは毎回タダでは教えてくれん。こっちの考えを笑い、一蹴しないと気が済まないんだ。本当に腹が立つ! 導:つまり私の考えをバカにされろ、という事ですか? 武藤:分かってるじゃないか!自分の役割を理解してるなら問題ない!じゃあ行くぞ! 0:二人は受付でカードキーを受け取り、ゲートを超える 導:カードキーですか?厳重に管理されてるんですね。それに長い廊下… 武藤:余計な口を挟むな。お前も首からぶら下げとけ 導:分かりました。でも、一犯罪者にこんなに税金かけて良いんですか?納得出来ません 武藤:残念ながらアイツの私財で自身の収監部屋を作ったそうだ。他の犯罪者の声を聞きたくないから防音設備かつ自分好みの部屋にしたらしいな 導:そうなんですね。…ここですか? 武藤:あぁ、入る前に1つ守れ。…ヤツと目を合わせるな。分かったな? 導:それはどういう意味ですか? 武藤:口答えするな!お前は言われた通りに動けば良いんだよ! 導:…わかりました 武藤:では、開けるぞ 0:カードキーを当てると電子音の後、鍵が解錠された音が響く。そして扉を引いて中に入る 0:すると長髪で細身の男性が座り心地の良さそうな椅子に座っていた。部屋の中はまるで大会社の応接室のような作りをしていたが窓は一切なかった 西園寺:やぁ待ってたよ。無能刑事、そして麗しきお嬢さん。ボクが西園寺弧涼(さいおんじ こりょう)だ。お名前を伺っても? 導:初めまして、私は東条導(とうじょうしるべ)と申します。若輩者ですが以後お見知りおきを 西園寺:東条…導…ね。その名前しっかり覚えたよ。これからヨロシク。でも中々に視線が合わないのは残念だね。無能刑事の入れ知恵かな? 武藤:何がヨロシクだよ!相変わらず偉そうに座りやがって、この部屋だって社長室かよ!少しは身の程をわきまえやがれ!サイコ野郎! 西園寺:無能刑事も相変わらずだね。その不躾(ぶしつけ)な言葉遣いを改めてたまえ。だから中々に彼女が出来やしないのだよ 武藤:てめぇ…! 西園寺:そんな事より、お嬢さん。ボクの名刺をあげよう。ケータイのアドレスと番号が書いてあるレア物だよ 導:(名刺を受け取る)あ、ありがとうございます 0:名刺のおおまかな内容 0:名前『西園寺弧涼(さいおんじこりょう)』 0:電話番号『0x0ー1421ーxxxx』 0:アドレス『swingーafterーcometrue…』wgcの三文字だけ文体が違う 武藤:そのケータイは一切使えないのに何考えてやがるんだサイコ野郎! 導:使えない? 武藤:そうだ。この部屋は特殊な作りをしていて電波を一切通さない、だから通信関連は全て有線のみってわけだ 西園寺:そうじゃないとボクの監視が大変らしくてね。中々に残念だ。…でも人の作った文字の羅列と数字には必ず意味がある。覚えておきたまえ 導:…分かりました。あの…この文字のフォントが違うのは… 武藤:そんな事より資料を見ろ!おいっ東条!サイコ野郎に資料をわたせ! 導:…はい。西園寺さん、こちらが今回の連続婦女暴行事件の資料です 西園寺:ふむ。では見せてもらおうか。ボクは紅茶のお代わりを淹れるがキミたちも何か飲むかね?ボクのオススメはこのダージリンだけど、いかがかな? 武藤:俺は紅茶なんてシャレたもんはいらねぇ!いつも通りブラックコーヒーだ! 西園寺:相変わらず品がないね、お嬢さんは紅茶で良いかい? 導:…お構いなく。それよりも早く目を通して頂けますか 西園寺:焦る必要なんてないさ。今焦った所で事件は起きやしない 0:ティーポットにお湯を注ぎ、香りを楽しむ西園寺 西園寺:良い香りだ。本当に良い紅茶をもらえてボクは運が良い 西園寺:お嬢さんは砂糖とミルクは必要かい? 武藤:ふざけるのも大概にしろサイコ野郎っ!今すぐテメーをぶち殺しても良いんだぞ! 導:武藤さん、それはさすがに問題発言では… 西園寺:まったく、本来なら脅迫罪で責任を取ってもらう必要があるのだが…この部屋にはカメラもボイスレコーダーもないものだからね。中々に残念で仕方ない 武藤:当然だろ!凶悪な殺人犯に洗脳されてたまるか! 導:西園寺さん、資料を見る気がないなら私が読みましょうか 西園寺:ほぅ…お嬢さんが読んでくれるのかね。これは美味しい紅茶が頂けそうだ、是非お願いするよ 武藤:おい東条っ!そこまでする必要ないぞ!コイツを調子に乗らすな! 導:でも、早く解決の糸口を見付けないと…また被害者が… 武藤:…ちっ、分かった!好きにしろ! 西園寺:それは中々にありがたい 0:紅茶を一口飲む 西園寺:…そうだ、お礼ではないが1つゲームをしよう 武藤:はぁ?ゲームだ?俺らはこれ以上お前のお遊びに付き合う余裕なんて… 西園寺:ボクの問に正解する度にボクの罪を告白しよう 武藤:なっ!?ホントかサイコ野郎! 西園寺:あぁ約束しよう。お嬢さんはどうかね? 導:分かりました、お願いします 西園寺:うむ。では犯行時刻と被害者女性の年齢と職業だけ教えてくれ 導:えっ、それだけで良いんですか? 西園寺:あぁ。もし気になることがあれば、その都度質問する 導:分かりました。最初の被害者は26歳のアパレル店員。帰宅途中に襲われました。時刻は22時を回っていたとの事です 西園寺:(紅茶を1口飲む)ふむ…そうか 導:続けても? 西園寺:どうぞ 導:2人目は18歳の女子学生。同じく帰宅途中で被害に合いました。時間は21時前かと 西園寺:その女子学生は何故そんな時間に帰宅を? 武藤:バイトだとよ!世間のガキはどっかのサイコ野郎と違って汗水垂らして金を稼いでるんだよ! 西園寺:労働というものは、大変だな。ちなみにその女子学生の働き先は? 導:コンビニです。その日もいつも通りの時間に帰路についていたとのことです 西園寺:コンビニか…分かった。次頼む 導:はい。3人目は26歳専業主婦。同窓会の帰りに被害に合いました。時刻は酔っていたこともあり曖昧で深夜12時頃ではないか、という話です 武藤:まぁ酔ってる女が一人夜道を歩いてたら襲ってくれと言ってるようなものだ!ホントに女はバカだよな! 西園寺:…専業主婦…か。無能刑事の男尊女卑は相変わらずなのでスルーさせてもらおう。次を頼む 導:4人目は21歳の女子大生。こちらも飲み会の帰りにほぼ同時刻に襲われたみたいです。そして現場には使用済みの避妊具が落ちていました。なおデータベースに該当者なしです 西園寺:ちなみにその飲み会はサークル仲間とかい? 武藤:そんな事関係ないだろ! 西園寺:だからキミは無能刑事なんだ。これは非常に大事な情報なんだよ 武藤:だから俺を無能呼ばわりするな! 導:…続けてもよろしいですか? 西園寺:あぁ頼む 導:サークル仲間ではなくアルバイトの同僚とですね。ちなみに避妊具の中身から年代が分かりました… 西園寺:いや、いい。余計な情報には興味がないのでね 武藤:はぁ?決定的な証拠に興味がないだぁ?サイコ野郎お前ふざけるのも大概にしろよ! 西園寺:ボクの役割は証拠から導くのではなく、人から導くものだ。余計な口を挟むなら今回の件はここまでにさせてもらうよ? 武藤:…必ず殺してやるからな 導:分かりました。最後の被害者は26歳会社員。帰宅途中に襲われました。時刻は23時頃です 西園寺:その女性は既婚者だよね? 導:え、えぇ。既婚者は3番目と5番目の被害者だけです 西園寺:ありがとう。ちなみにキミたち警察の考えを伺ってもよろしいかい? 武藤:犯人は犯罪歴のない性欲モンスターだ!計画的でなく衝動的に行動してる知能の低いゴミだ! 導:言い方はアレですが…警察の総意で間違いないです 西園寺:なるほどな。さすが無能刑事だ 武藤:てめぇ!いい加減にしろよ! 導:武藤さんっ! 0:導は身を呈して殴りかかるの武藤を止める 西園寺:おや?殴らないのかい?殴ってくれれば証拠が残っただけに残念だ。優秀な部下に感謝したまえ 武藤:クソが! 西園寺:では、丁度いい。最初の問だ。初回サービスで特別にヒントもあげよう 導:ヒントですか? 西園寺:あぁ、ヒントだ。キミたちの考えは間違っている。今回の犯人は2人いる 武藤:2人だぁ?つまり複数犯って事か? 西園寺:模倣犯がいるということだ。恐らくその2人には接点はない。そこで問題だ。模倣犯が起こした事件は何番目だと思う? 武藤:は?そんなの決まってるだろ!4番目だ!証拠を残すマヌケだからな!そうか!だからデータベースに引っかからなかったのか! 西園寺:(恍惚の表情を浮かべ)んー、模範解答ありがとう。中々に満足だよ。ではお嬢さんも同じ考えという事で良いかな? 導:…3番目 西園寺:…ほう。その心は? 導:3番目の女性だけ現在働いていないからです。西園寺さんが気にされていた部分ですよね? 武藤:そんな訳あるかよ!たったそれだけの事かよ! 西園寺:導くん、正解だ!よくボクの話を聞いていたね。無能刑事、『たったそれだけの事』で人は大きな選択をする事を忘れるな 武藤:分かったよ!それよりも正解したんだから、さっさと全部ゲロっちまえよ! 導:西園寺さん約束は守ってもらえますよね? 西園寺:あぁボクは約束は守るよ。ボクの過去に犯した罪は…幼少の頃、窃盗行為を働いた 武藤:はぁ!?ふざけるな!30人殺したって白状しろよ!この野郎っ! 西園寺:だからボクはやってないと何度も言っているだろ。にも関わらず3年もこんなところに閉じ込めるなんて中々に酷い話だよ。それにその罪を認めるとボクは死刑なんだろ? 導:…ちなみにですが、犯人像も分かったんですか? 西園寺:あぁもちろん。だがその前に導くん。申し訳ないがトイレに行って替えてきてくれないか? 武藤:替える?何をだ? 西園寺:月の物だよ。匂いで中々に頭が回らなくなりそうだ。そこのトイレを使ってくれて構わない。左の棚の中に除菌シートがある。それで清掃も忘れないでくれよ 導:…っ!わ、分かりました、でもその言い方はあまりにも酷いですよ 0:西園寺を軽く睨んでテーブルの上に資料を置き、トイレに入る導 武藤:俺は全く気付かなかったのによぉ、お前も大概だな!サイコ野郎!いや変態サイコ野郎っ! 西園寺:好きに言ってくれて構わない。とりあえず彼女が戻るまで待とうか。コーヒーのおかわりはいるかい? 武藤:時間が惜しい、さっさと話せ。女の化粧とトイレの時間はこの世で一番ムダだからな 西園寺:ほう?本当に良いのかい? 武藤:良いって言ってんだろうが!さっさと話せ! 西園寺:相変わらずせっかちだな。では2つ目の問だ。なぜ犯人は働いてる女性を狙っていると思う? 武藤:急に始めるのかよ。…んー、あれか?制服姿に興奮したからとかか? 西園寺:世の中の人間が無能刑事みたいなら平和なのだろうな 武藤:バカにすんじゃねぇ!分かったぞ!金持ってるからか!だから多少抜いても強盗と思われないからか! 0:テーブルに残された調書を軽く叩く西園寺 西園寺:この調書によると金銭及び金品に一切の被害なしと書いてあるが? 武藤:あー!もう知らん!ギブだ!さっさと教えろ! 西園寺:まったく…。もちろん可能性の範疇だが、犯人は働く女性に対し強いトラウマを持っている 武藤:トラウマだぁ? 西園寺:そう。昔の恋人なのか、イジメていた相手かは分からないが…かなり深い怨恨を持っている 武藤:ならつまりイジメられてたヤツが犯人ってか?そんな情報で捕まえられるか! 西園寺:それでいて犯人はプライドが高く、狡猾な人間だ。模倣犯が現れたことに対し憤りを感じたのだろう。そして自身の方が優れていると証明したかった。だからわざわざ証拠を残したと考えられる 武藤:捜査を撹乱する為じゃないのか?だが、普通なら模倣犯に罪を擦り付けるようと思うけどな 西園寺:それはない。自身の優位を証明する為に、わざわざ5番目に既婚者を狙ったのだからな 武藤:はぁ?模倣犯が既婚者を犯したかどうかなんて情報どこで手に入れるんだよ?ニュースでそんな事言うわけないだろうが! 西園寺:だから言ってるだろ?ボクは人から答えを導くって。恐らく4件目の事件を起こした時点では3番目の被害者が既婚者という事を犯人は知らなかったのだよ 武藤:だったらその情報はどこから引っ張って来たんだよ! 西園寺:だから…人だと言っているだろ 武藤:人…?どういうことだ? 西園寺:つまりは近所。…この手の話だと同じ建物か近所の住人が話している所を聞いたのだろう。つまり犯人は3番目の被害者の近隣住民の可能性が高い 武藤:近所だと?職場で聞いたとかネットの可能性もあるだろ!なんで近所と言い切れる! 西園寺:働いてる女性に対して憎悪を持っているのだ。そんな人間が働いてる可能性は中々に低いよ。それに、インターネットにはそれらしい記事は見当たらなかったしね 武藤:ってか、お前いつ調べたんだ? 西園寺:キミたちが来る前から気になっていたからね。それにこの手の性的な話は内容を共有しやすい相手にしか話さないものさ。話す相手を間違えると自分が不審な目で見られる事になるしね 武藤:そんなもんなのか…?だがよぉ、ゴムはどこで手に入れたんだ?まさか自分のものではないだろ? 西園寺:そうだね。ゴミでも漁ったんじゃないかな?見知らぬ人間が使った避妊具なんてボクは死んでも触りたくないけどね 武藤:だが、証拠としては弱くないか? 西園寺:まだ腑に落ちない点があるなら聞いてくれたまえ?1つづつ潰してあげようではないか 武藤:…とりあえず分かった!早速3番目の被害者宅周辺で聞き込みさせる…っと、ここじゃケータイ使えないんだったな、ホントに不便だ! 西園寺:どうぞお好きに?彼女は置いていくのかい? 武藤:あぁ?ムダに長いから忘れてたぜ、出て来たら早く来るように伝えてくれ! 0:そう言い残し部屋を出ていく武藤 西園寺:まったく…本当に自由で自分勝手だ。さてと紅茶のおかわりを入れようか 0:西園寺がポットとカップを手に取ったタイミングで導がトイレから出てくる 西園寺:やぁ、随分と長かったね。無能刑事は先に出ていったよ。紅茶のおかわりを飲んでから行く… 導:動かないで下さい 0:導は静かに銃を西園寺に向ける 西園寺:おっと、これはどういう事かな?先程の発言が気に入らなかったと見える 導:余計な事は喋らないで、早く両手をこちらに見えるように上げて下さい 0:西園寺はポットを置いて両手を上げる 西園寺:…これで良いかね?だがようやく目が合ったね 導:そんな事はどうでも良いっ!私の質問に答えて下さい! 西園寺:何なりと 導:あなたがお姉ちゃんを死に追いやったんですか? 西園寺:お姉ちゃん? 導:とぼけないで!忘れたとは言わせない!東条燈(とうじょうあかり)よ!あなたが殺した最初の犠牲者よ! 西園寺:…よく覚えているさ。でも殺したのはボクじゃない 導:まだ、とぼけるつもりですか?お姉ちゃんはあの日あなたのクリニックに行って、そのあと飛び降り自殺したのよ!あんなに強かったお姉ちゃんが自殺するなんて考えられない!あなたが何かしたんですよね! 西園寺:あぁ…彼女は強い人間だった。だからボクも自殺だなんて考えていない。それに彼女はボクのクライアントではない 導:なら、どうしてお姉ちゃんはアナタのクリニックに行ったんですか!しかも定期的に通っていたっていう話ですよ! 西園寺:燈とボクは恋人関係だった 導:適当な事を言わないでください!そんな話聞いた事ないです!返してください!お姉ちゃんを!私たちの夢を! 西園寺:夢…? 導:そう、お姉ちゃんの夢で私たち2人は姉妹警官として町を守るって…約束したのに… 0:その時扉が開き、武藤が戻ってくる 武藤:お、おいっ!何やってるんだ!東条!お前自分が何をしてるか分かってるのか! 導:武藤さん…止めないで下さい!私がこの殺人犯を殺します!私はその為に刑事課に入ったんですから! 西園寺:という勘違いをしているのだ。すまないが止めてもらえないか? 武藤:ったく、しょうがねぇな。やめろ東条!今すぐ銃を下ろせ! 導:邪魔しないで下さい!…!? 0:武藤のスタンガンを当てられその場に倒れる導 武藤:だからやめろって。お前の銃でサイコ野郎を撃ち殺すと…俺の計画が崩れるんだよ 導:む、武藤…さ…んっ…? 武藤:ほーほー!意識を保っていたか!さすがタフだな!そのタフさは姉ちゃん譲りか? 西園寺:どういうつもりだ武藤刑事? 武藤:そうだな分かりやすく教えてやるよ!お前ら2人も殺す! 西園寺:も、だと? 武藤:そうさ!そこの小娘は勘違いしていたみたいだが、俺が東条燈を殺した!自殺に見せかけてな! 導:な、なんで…そん…な事…を… 武藤:簡単な話だ!俺をフッて、そこのサイコ野郎と付き合っていたからだよ!だからよぉ、殺す前に犯しまくってやったよ!まぁ…証拠が残ると良くないからナマでは出来なかったけどな! 導:たった…それだけのコトで… 武藤:あぁ!お前らからすれば、たったそれだけかもな!でもよぉ、そこのサイコ野郎も言ってただろ?『たったそれだけの事でなんとやら』ってな! 西園寺:最低なクズめ 武藤:何とでも言いやがれ!じゃあ、まずお前を殺す!それからこの女をぶち犯してぶち殺す!そして罪を全てお前に被せて事件解決だ! 0:武藤は銃口を西園寺に向け、近付く 西園寺:…だが、全て自供してくれたな。中々に良かったよ 武藤:何言ってやがる!負け惜しみは、あの世で後悔しながら唱えやがれ! 西園寺:では、もう一度確認しようか? 0:その時、後ろから武藤の声が流れる 武藤:俺が東条燈を殺した!自殺に見せかけてな! 導:武藤さん…いえ、武藤容疑者!もう言い逃れは出来ないですよ! 0:武藤の後ろで銃とレコーダーを向ける導が流したものであった 武藤:はぁ?お、お前なんで動けるんだ!高圧電流だぞ!? 導:西園寺さんのおかげです。やはり西園寺さんが言っていた事は正しかった 武藤:…っ!このサイコ野郎が! 西園寺:さて、ホントのサイコ野郎はどっちかな?無能容疑者? 0:時間は少し遡り、トイレ内で西園寺の名刺を見る導 導:…やっぱり、この名刺の内容はメッセージだ。アドレスのW・G・Cだけ字体が違う… 導:つまりWC・G…トイレに行けってことだよね。じゃあこの棚の中に… 0:導は棚の中からナンバーロック式南京錠つきの箱を取り出す 導:この鍵のナンバーは4桁…つまり電話番号?1…4…2…1…。開いた!これはボイスレコーダーとイヤホン? 0:不思議に思いながらイヤホンを耳に入れ再生する導 西園寺:ボクは西園寺だ。まずはお礼を言わせて欲しい。ボクの意図を理解してくれてありがとう、賢き者 導:…!?西園寺さん! 西園寺:もちろんこれは事前に録音したものだ。あまりにも長いと武藤刑事に疑われるだろうから手短に話す 導:どうして武藤さんの事が出てくるの? 西園寺:ボクの恋人、東条燈(とうじょうあかり)を殺した犯人は武藤だ。そしてボクを犯人に仕立て上げている。だが証拠もなくボクも動けない。だからこれを聴いているキミに一芝居打って欲しいのだ 導:犯人は武藤さん!?いや…でも信じられるわけ… 西園寺:もちろん、キミも刑事なのだろう。突然こんな事言われても納得出来ない事は百も承知だ。 西園寺:…だからここで問だ。東条燈を殺した犯人が武藤と思うなら、上の棚に入っている耐電圧ベストを中に着て、ボクを殺そうとする芝居をしてくれ 西園寺:その際にこのボイスレコーダーを使って武藤の自供を録音して欲しい 導:こんな犯罪者の言う事なんて信じられない!早くこの証拠を武藤さんに… 西園寺:…これを聞いてくれているのが東条導(とうじょうしるべ)だと嬉しいのだが… 導:…えっ?今、私の名前を言った…? 西園寺:おっと、すまない。人に頼み事をしているのに他人の話をしてしまって。ただ…ボクの直感だが、彼女がここに来てくれる気がしてね…ただの妄想さ…気にしないでくれ 西園寺:だが、本当に彼女ならボクの事など信じなくていい。でも燈を…姉さんを信じて欲しい 導:…ずるいよ、西園寺さん。でも私はあなたを信じない…! 導:私は…お姉ちゃんを信じますっ! 0:現在に戻る 西園寺:…と、いう事だよ。納得してもらえたかね? 武藤:納得出来るかあぁぁぁ!お前の得意の洗脳で東条を誘導したんだろ! 武藤:東条っ!今ならまだ間に合う!そのボイスレコーダーを俺に渡せ! 導:武藤さん動かないで下さい!少しでも怪しい動きをしたら撃ちますよ! 武藤:くっ!分かったよ!降参だ! 導:では、そのテーブルの上に銃を置いて下さい! 武藤:…分かった 0:テーブルの上に銃を置く武藤 導:そのまま後ろを向いて両手を後ろに! 武藤:くっ…これで良いか? 導:手錠をかけますね 武藤:(小声で)ふっ、バカな女だ 西園寺:導くん!危ないっ! 0:武藤は振り返り隠し持ってたナイフを導に突き出す 導:…っ!やっぱりアナタは最低です 0:導は武藤の突き出した腕を取り一本背負いで投げ飛ばす 導:はぁ…っ!! 武藤:ぐはっ!そんなのありかよ…? 西園寺:ふふっ、さすがだね。無能容疑者、キミの計画には1つ大きな穴があるのだよ。それは… 導:私がこんな、ひ弱な男に襲われる訳がないんですよ!…っ! 西園寺:導くん!頬から出血が! 導:カスっただけです。武藤容疑者、傷害及び殺人未遂の現行犯で逮捕します 0:武藤に手錠をかける 武藤:なんで俺がこんな小娘に… 導:黙れ。女の身体と心を傷付けた罪、一生ブタ箱で懺悔しろ 西園寺:(口笛を吹く)さすが導(しるべ)くん、中々に鮮やかでクールだね 導:お褒めの言葉ありがとうございます。では、武藤容疑者を連行致しますので、これで失礼します 0:部屋から出ようとする導 西園寺:待ちたまえ。忘れ物だ 導:忘れ物? 西園寺:…クライアント29名を自殺に追い込んだのはボクだ 導:…えっ?何を言ってるんですか? 西園寺:約束だったろ?ボクの問に正解する度にボクの罪を告白すると 武藤:おいおいおい!散々否定しといて、やっぱりお前が犯人じゃねぇか! 導:黙ってください!なんで…なんで…今自白するんですか…?ほぼ確実に死刑なんですよ? 西園寺:だからだ。ボクの役目は終えた。燈の無念を晴らした。だからボクにこれ以上生きる意味はないよ 導:…分かりました 西園寺:ありがとう。じゃあこの電話で応援を呼んでくれ…。すまないが最後に紅茶を一杯だけ飲ませてもらうよ 導:アナタの命私がもらいます 西園寺:何を言ってるんだ… 導:確かに西園寺さんは多くの人の命を奪ったかもしれない。でも今みたいに助けようとしてくれた。アナタにしか出来ない事がまだあるはずです!だから命尽きるその日まで私の為に生きてるくれませんか? 0:一瞬燈の姿と被り、涙を流す西園寺 西園寺:あ、あか…り…? 導:え?お姉ちゃんですか? 西園寺:あ…いや…。まさか燈がボクに言ってくれた言葉を導くんから聞くことになるとはね…涙なんて何年ぶりに流しただろう… 導:お姉ちゃんが亡くなった時以来ですか? 西園寺:いや。燈に今の言葉を言われた時…以来かな。ボクは幼少の頃、酷い虐待を受けていてね…その影響で前頭葉の機能に壊れている部分があるのさ… 武藤:おいおい、言い訳するなよサイコ野郎 西園寺:何とでも言ってくれ。ボクはキミのように犯す事でしか快楽を得られない愉快犯とは違う。クライアントを自殺に追い込んでしまったのも、燈は自殺ではないと証明したかったからだ 導:…そうだったんですね。西園寺さん、最後に2つだけ教えてくれますか? 西園寺:なんなりと 導:私が信じずに武藤容疑者に話していたらどうするつもりだったんですか? 西園寺:愚問だな。それは無いと確信してたよ? 導:どうしてですか? 西園寺:ボクは人の心を読めると言われたカウンセラーだよ?導くんがどうして警察官になったか理由も知っていた。だからお姉さんの死について情報を得る事が出来るなら、それを選ぶ確信があった 導:…イヤな性格してますね 西園寺:あぁ。カウンセラーなんて人の不幸を金に替える卑しい生き物さ。それで…もうひとつは? 導:この、頭文字3文字の『SAC』ってなんですか? 武藤:ふっ、どうせサイコ野郎のサイコだろ! 西園寺:やはり無能容疑者はボクの思った事を言ってくれるね 武藤:ああんっ? 西園寺:そんな事より、どうしてここが気になったんだい? 導:最初はそこまで気になりませんでしたよ。…でも人の作った文字の羅列と数字には意味があるんですよね? 導:メッセージめいたアドレスならきっと特別な意味があるんだと思いました 西園寺:そうか…。まぁ…意味はある 導:教えてくれませんか? 西園寺:正直恥ずかしいのだが…言葉遊びと名前だよ 武藤:つまり、自分の名前を入れただけか!くだらないな! 西園寺:そう…くだらないさ。ただの妄言と言っても過言でない位にね 導:アドレスを和訳すると…『揺れ動いた後、真実をつかみ取る』と言ったとこですか? 西園寺:ご明察。さすがだね 導:名前は…もしかして私たち3人の名前ですか? 西園寺:…そうだ。導(しるべ)・燈(あかり)・弧涼(こりょう)の頭文字さ 導:どうしてですか?お姉ちゃんは分かるけど…どうして私も? 西園寺:夢だったからさ 導:夢? 西園寺:あぁ。ボク達3人でこの街を守るというね。よく燈と話していたのさ 導:そうだったんですね…。西園寺さんもだったんですね 武藤:おいおい!いつまで、くっちゃべってるんだ!こちとら身体中痛ぇんだよ!早く連れていきやがれ! 西園寺:それもそうだね。導くん、キミも早く手当をした方が良い。せっかくの美しい顔に傷が残るのは中々に残念で忍びない。だからまたいつか思い出話をゆっくり語り合おう 導:もちろんです!西園寺さんも色々教えてくださいね! 西園寺:あぁ喜んで 導:では失礼します! 0:敬礼をして武藤と部屋を出る導。その後西園寺は紅茶を入れパソコンの前に座る 西園寺:さてと…これで終わったんだな… 0:キーボードにパスワードを打ち付ける 西園寺:これでよし、っと 0:西園寺は今回の事件の詳細を事細かに記録し保存する 西園寺:ボクが消されても導くんならこの証拠を見付けてくれたとは思うけどね 0:紅茶を一口飲み、深く息を吐く 西園寺:ん?パスワードが知りたいって?キミも強欲だな。でも特別に教えてあげよう。今のボクは中々に気分が良い 0:ティーカップを置いて 西園寺:『SACPASS(サイコパス)』当て字だけどね。本当にイカれた奴を証明する魔法の言葉さ。でも…本当にイカれてるのは殺人犯を相棒にした彼女…なのかもね 0:終