台本概要
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タイトル | Comet-コメット- |
---|---|
作者名 | 冷凍みかん-光柑- (@mikanchilled) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(男3、女1、不問1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
星が擬人化した世界です
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
コメット | 不問 | 32 | とても小さい星のかけら。元気いっぱい |
ベガ | 女 | 54 | 星空歌劇団 夏空のヒロイン |
アルタイル | 男 | 43 | 星空歌劇団 夏空のリーダー |
ポールスター | 男 | 19 | 星空歌劇団 指揮者にして団長 北極星 |
銀星保安官 | 男 | 17 | コメットを逮捕しようとする。星ではない |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ポールスター:〈N〉これは一つの彗星(すいせい)が燃え尽きる、そんな一夜の物語。あの小さなコメットはなんだったのか。そんなことを思いながら、夜空の星々は今日も輝いている
ベガ:〈タイトルコール〉『コメット』
コメット:〈フライヤーの内容〉今夜!過去最大級の彗星(コメット)が、星空歌劇団にやってくる!こうご期待!
銀星保安官:最近、このようなフライヤーが勝手に出回っている。保安官としては当然見過ごせない事態だ
ポールスター:このフライヤーは、我ら星空歌劇団が作ったものではありません
銀星保安官:重要なのは中身だ。コメットの存在は許されない。コメットが現れると、人間界が荒れてしまう。不吉な前触れだとか言って、神の平和を乱すのだ
ポールスター:(ボソッ)人間たちの混乱も含めて、神の思し召しだろうに
銀星保安官:キミの勝手な妄想は慎んでもらいたい、ポールスター
アルタイル:ずいぶんな物言いだな、保安官殿。僕たちは今夜の開演準備で忙しいんだ。お引き取り願いたい
銀星保安官:キミらが。コメットを匿(かくま)っているのではないのかね?
アルタイル:なにを言うか。僕は夏空のリーダーだ。コメットなんて奴は知らない。ねえ、ベガ
ベガ:ええ。私も知らないわ
銀星保安官:どうだかな。コメットが見つかるまで、星空を巡回させてもらうぞ
アルタイル:保安官殿、いい加減にッ!
ポールスター:落ち着け、アルタイル。さて、銀星保安官殿。星空の舞台は我らに与えられた聖域なのです。星ではない貴方が混じるのは、神の意志に反する行為かと。
銀星保安官:ふん、一丁前に私を諭(さと)すつもりか。いいだろう、日没から日の出の間に限り、貴様らの自由を許可する。それ以上の譲歩はしない
ポールスター:ありがとうございます
銀星保安官:その代わり、昼の間は捜索させてもらうぞッ!部下ども、かかれッ!
ポールスター:はあ、やれやれ
0:銀星部隊が一斉に楽屋を捜索する
アルタイル:ベガ、部屋にお戻り。なにやら騒々しくなりそうだから
ベガ:ありがとう、アルタイル。また、打ち合わせでね
アルタイル:愛しているよ
ベガ:私も、愛してる
0:部屋に戻るベガ
ベガ:ああ、大変だわ、、
ベガ:保安官がアナタのことを探しているわよ、コメット
0:ゴソゴソ、、
コメット:えへへ、まいったな
0:くすんでいて、輝きのない塊が姿を現す
ベガ:アナタだって1つの星なのに、どうして皆認めないのかしら
コメット:さあねー、ふんふふ~ん
ベガ:あまり騒がないでね、アルタイルたちに迷惑かけたくないし
コメット:ベガは夜空に輝くのは、好き?
ベガ:、、誇らしいことだと思うわ。好きか嫌いかなんて、二の次よ
コメット:オイラは好きっ!だから輝くっ!
ベガ:アナタを見ていると、昔のだれかさんを思い出すわ、、
0:うつむくベガ
ベガ:アルタイル、、
0:ベガに涙がこぼれる
ベガ:アルタイル、、ああアルタイル、、
0:ベガの輝きが弱まる
ベガ:私は、はたして夜までコメットを匿(かくま)えるのかしら、、アルタイルにも嘘をついて?
コメット:ベガ、ごめんよ。オイラのために、、
ベガ:、、アナタは何も悪くないのよ、コメット
コメット:〈M〉気の毒なベガ、、そうだ!
0:コメットはひらめいた
コメット:「なんて広い、なんて深い空だろうか、、!」
ベガ:そのセリフ、、
ベガ:〈M〉戯曲(ぎきょく)『はじまりの宇宙』第一章
コメット:「だのにわが光の、なんと微々たることか、、!」
ベガ:ふふ、懐かしい。新星(しんせい)時代を思い出すわ
コメット:ベガも、やって?
ベガ:ええ?私は、、
コメット:大丈夫、きっとおぼえてるでしょう
ベガ:〈ためらってから〉、、しょうがないわね
0:ベガの胸がほのかに光りだす
ベガ:「ひとつ、また新たな光が生まれた」
コメット:「声?どこです?助けて下さい。どうか私を認めて下さい」
ベガ:「認めるも何も、汝(なんじ)はそこにいる。我らのように輝いている」
コメット:「見えないのです、私には暗闇しかないのです」
ベガ:「我らを見ないのは、目を閉じているからだ。我らに背を向けているからだ」
コメット:「もし目を開けても暗闇だったら、私はきっと耐えられない、、!」
ベガ:「大丈夫、きっと大丈夫だから。その目を開いてごらんなさい」
0:ベガは一層、光輝く
ベガ:「さあ、この満点の星空で汝も共に輝こう、、!見せておくれ、汝の命の光を!」
0:コンコン
コメット:だれか来た!
ベガ:ッ!ど、どちらさま!?
アルタイル:ベガ。僕だ、アルタイルだ。ポールスターとデネブを交えて打ち合わせをするから、出てきておいで
ベガ:わかったわ、すぐに行くから
コメット:ベガ
ベガ:コメット、私行かなきゃ
コメット:やっぱりベガは、輝いている姿がいいや
ベガ:、、ありがとうコメット
0:ポールスターたちの会談
ポールスター:やあ、ベガ
ベガ:ごめんなさい、遅れてしまって
アルタイル:さあ始めようよ。保安官が来る前に終わらそう
デネブ:、、〈枠主のアドリブもいいと思います〉
ポールスター:そう不満を漏らすな、デネブ。輝きが弱まってしまうぞ
アルタイル:さすがポールスター。アナタの輝きはぶれないね
ベガ:ねえ、コメットのことなんだけど
ポールスター:コメットがどうかしたのか
ベガ:コメットを今夜だけ、認めてあげないかしら
アルタイル:ハハハ。ベガ、何を言ってるんだ。今夜の主役は僕らだ、このために練習してきたんじゃないか
ベガ:アルタイル、私を信じて。コメットを加えたら、きっと楽しいと思うの
アルタイル:楽しいだって?上演は遊びじゃないんだよ
ベガ:〈悲痛に〉アルタイル、昔のように、もっと楽しみましょうよ、、
アルタイル:時間の無駄だね。ポールスター、打ち合わせを進めよう
ポールスター:ふむ、では音響からだが、、
0:会議が終わり、テラスで話すベガとアルタイル
アルタイル:ベガ、さっきは驚いたぞ
ベガ:アルタイル、きいて。コメットは私たちと変わらない。ただ夜空で輝きたいだけなの
アルタイル:それがどうした
ベガ:なんですって?
アルタイル:そもそもコメットには輝きがないじゃないか
ベガ:コメットだって輝けるわ!
アルタイル:あの太陽に焼かれてなッ!
ベガ:コメットは自身の体を燃やしているのよ!それは間違いなく、命の光だわ!どうしてそれを認めないの!
アルタイル:認めるわけがないだろう!ヤツは劇団にも所属していない!宇宙のチリが!突然現れて、さながらアイドル気取りじゃないか!
ベガ:私たちだって、初めは宇宙のチリだったじゃない!
アルタイル:今の僕らには責任がある!主役になれない星々は幾千万といるんだ!僕らはそんな彼らから選ばれた一等星だぞ!
ベガ:空は、全ての星で輝いているの。仲間に入れてあげるのが、そんなにいけないこと?
アルタイル:僕らは団結して練習してきた!独りじゃ輝くこともできない燃えカスに、その日々を侮辱されてたまるか!
ベガ:アルタイル、あなたは変わってしまった
アルタイル:ベガこそ、今日は様子がおかしいじゃないか
ベガ:、、
アルタイル:、、
0:重たく切り出すアルタイル
アルタイル:したのか
ベガ:え?
アルタイル:お前は、コメットとサシ劇をしたのか
ベガ:急に、何を聞くの
アルタイル:答えてくれッ!答えろッ!
ベガ:怒鳴らないでよ、どうして怒るの!
アルタイル:やっぱりな、、!コメットに光を向けて、さぞ心地よかったのだろうな!
ベガ:やめて、アルタイル!どうしてそんなことを言うの!
アルタイル:『はじまりの宇宙』はッ!初めて僕らが演じたシナリオだ、、!僕らの思い出じゃないか!
ベガ:アルタイル。あなた、盗み聞いていたのね
アルタイル:裏切り者め!僕は決して、キミを許さない、、
ベガ:お願いアルタイル、私は貴方を、、
アルタイル:銀星保安官!コメットはベガの部屋にいるぞッ!
銀星保安官:フフフ、そうか、協力を感謝する。貴様は可哀想なヤツだな。心底同情するよ、アルタイル。
ベガ:お願い、やめて頂戴!コメットを自由にしてあげて!
アルタイル:〈冷酷に〉夏の星空は。ポールスターの指揮の下、厳正でなければならない
ベガ:アルタイル、どうして、どうしてなの、、
0:ベガの部屋を捜し回る銀星保安官
銀星保安官:ちくしょう!コメットはベガの部屋にいないではないか!
アルタイル:きっと察知して逃げたのでしょう
銀星保安官:小癪な!さがせ部下どもッ!コメットを見つけ出せ!
0:場面は切り替わる
コメット:はあはあ、危なかった、、
コメット:匿ってくれてありがとう、ポールスター
ポールスター:、、
コメット:ベガには結局迷惑をかけてしまった
ポールスター:、、星のかけらよ、お前の望みはなんだ
コメット:それは、この星空に輝くことです、、!今夜だけ、今夜だけしか輝けないんです!
ポールスター:お前が、我らの調律に従えないことは知っている。他の星々がお前をよく思っていないことも。しかし何故、それでもお前は輝こうとするのか
コメット:この空に生まれたことが喜ばしいからです!山に嵐が吹き荒れるように、葉の朝露がきらめくように!オイラの命が「光れ」と叫んでいるのです!
ポールスター:コメット、お前は我々に比べて、ずっと小さく、ずっとか弱い。太陽に焼かれてしまえば、その命は尽きてしまうだろう
コメット:それでも構いません。オイラには輝けないことの方が、ずっと悲しいのです
ポールスター:、、よろしい。それなら最早、なにも言うまい。夜空に今夜輝いてみせよ、コメット
コメット:はいっ!
0:あせる銀星保安官とアルタイル
銀星保安官:もうじき日没だ。コメットを早く捕まえなくては
アルタイル:コメットめ、コメットめ、、!一体どこに消え失せたのだ!
銀星保安官:まったくアルタイル君、協力するというから連れてやったのに。まるでアテにならないではないか
アルタイル:コメットは小さいはずなので、どこか隙間に隠れているのかも、、!
銀星保安官:もういい、キミの推測につきあってはいられない。捜査の邪魔だ。ここで大人しくしたまえ
0:ひとり残されるアルタイル
アルタイル:、、くそっ!
コメット:アルタイル、、!
アルタイル:なッ!コメット!まさか、、僕の前に現れるとはな
コメット:アルタイル、なんて邪悪な光なんだ
アルタイル:ほざくなッ!貴様なんかを星空に上げさせてたまるか!
コメット:オイラには今夜しかないんだ!そこをどいてくれよ、アルタイル!
アルタイル:貴様の思い通りにはならない。通りたければ僕を殺してみろ!
コメット:アルタイル、、
アルタイル:もう僕には、舞台しか残っていないのさ、、ベガは、僕の最愛の人は去ってしまった、、
0:うなだれるアルタイル
コメット:それは違うよアルタイル。ベガはずっと、アルタイルに嘘をついて苦しんでいた。キミのことを思っているんだよ、アルタイル!
アルタイル:もう遅いッ!僕は彼女にひどいことを言ってしまった。僕は、ベガさえいればよかったのに、、一生愛し合うと思っていたのに
ベガ:今だってそうよ
アルタイル:ベガ、、?どうして、、!
ベガ:盗み聞いていたの。アルタイル、これでおあいこね
アルタイル:ベガ、すまない、僕は、、
ベガ:アルタイル、貴方の言ったことは生涯許しません
アルタイル:それでもいい、僕は、ベガ、貴女のことをずっと愛し続けます
ベガ:〈微笑んで〉私もですよ、アルタイル
0:沈む太陽を眺めるコメット
コメット:日が沈む、もう行かなくては
ベガ:コメット、さようなら
コメット:さようならベガ。そしてアルタイル。今夜は今までで最高の夜にしよう
0:夕焼け空が夜に飲まれていく
ポールスター:まもなく上演開始です。来賓の皆様は心ゆくまでお楽しみください
銀星保安官:さがせ!コメットを探せ!
コメット:皆様、今宵はオイラと絢爛(けんらん)たる星空のためにお集まり頂き、ありがとうございます
銀星保安官:コメットだ!やつめ、太陽の影に隠れておった!開演は中止だ、かかれッ
ポールスター:〈覇気ある声で〉言ったはずだぞ、保安官。夜は我らが聖域だとッ!
銀星保安官:なんだ!?目が回るッ!体が動かないッ!!何をやっているんだ部下ども!コメットを星空に輝かせるなッ!
ポールスター:はっはっはっはっ!
ベガ:コメット、どうか楽しんでね、、
アルタイル:光れ、コメット!
コメット:〈M〉アルタイル、ポールスター、ベガ!空の幾千万の星々よ!見ていてくれよ、オイラの輝きをッ!
銀星保安官:なんだ?あの無様な姿は、、太陽の熱に耐えかねて、燃えカスが尾を引いているじゃないか、、!
アルタイル:違う、、コメットは、命を燃やしているんだ
ベガ:コメット、、これでいい、、これでいいのね?
アルタイル:よく見たまえ、銀星保安官。あの輝きは、コメットの命の炎なんだ
ポールスター:〈N〉燦然(さんぜん)と輝く星々の前を駆けていく、小さなコメット。その命はあるがままに輝き続け、やがて本当のチリとなって、夜明けとともに消え去った
ポールスター:〈N〉これは一つの彗星(すいせい)が燃え尽きる、そんな一夜の物語。あの小さなコメットはなんだったのか。そんなことを思いながら、夜空の星々は今日も輝いている
ベガ:〈タイトルコール〉『コメット』
コメット:〈フライヤーの内容〉今夜!過去最大級の彗星(コメット)が、星空歌劇団にやってくる!こうご期待!
銀星保安官:最近、このようなフライヤーが勝手に出回っている。保安官としては当然見過ごせない事態だ
ポールスター:このフライヤーは、我ら星空歌劇団が作ったものではありません
銀星保安官:重要なのは中身だ。コメットの存在は許されない。コメットが現れると、人間界が荒れてしまう。不吉な前触れだとか言って、神の平和を乱すのだ
ポールスター:(ボソッ)人間たちの混乱も含めて、神の思し召しだろうに
銀星保安官:キミの勝手な妄想は慎んでもらいたい、ポールスター
アルタイル:ずいぶんな物言いだな、保安官殿。僕たちは今夜の開演準備で忙しいんだ。お引き取り願いたい
銀星保安官:キミらが。コメットを匿(かくま)っているのではないのかね?
アルタイル:なにを言うか。僕は夏空のリーダーだ。コメットなんて奴は知らない。ねえ、ベガ
ベガ:ええ。私も知らないわ
銀星保安官:どうだかな。コメットが見つかるまで、星空を巡回させてもらうぞ
アルタイル:保安官殿、いい加減にッ!
ポールスター:落ち着け、アルタイル。さて、銀星保安官殿。星空の舞台は我らに与えられた聖域なのです。星ではない貴方が混じるのは、神の意志に反する行為かと。
銀星保安官:ふん、一丁前に私を諭(さと)すつもりか。いいだろう、日没から日の出の間に限り、貴様らの自由を許可する。それ以上の譲歩はしない
ポールスター:ありがとうございます
銀星保安官:その代わり、昼の間は捜索させてもらうぞッ!部下ども、かかれッ!
ポールスター:はあ、やれやれ
0:銀星部隊が一斉に楽屋を捜索する
アルタイル:ベガ、部屋にお戻り。なにやら騒々しくなりそうだから
ベガ:ありがとう、アルタイル。また、打ち合わせでね
アルタイル:愛しているよ
ベガ:私も、愛してる
0:部屋に戻るベガ
ベガ:ああ、大変だわ、、
ベガ:保安官がアナタのことを探しているわよ、コメット
0:ゴソゴソ、、
コメット:えへへ、まいったな
0:くすんでいて、輝きのない塊が姿を現す
ベガ:アナタだって1つの星なのに、どうして皆認めないのかしら
コメット:さあねー、ふんふふ~ん
ベガ:あまり騒がないでね、アルタイルたちに迷惑かけたくないし
コメット:ベガは夜空に輝くのは、好き?
ベガ:、、誇らしいことだと思うわ。好きか嫌いかなんて、二の次よ
コメット:オイラは好きっ!だから輝くっ!
ベガ:アナタを見ていると、昔のだれかさんを思い出すわ、、
0:うつむくベガ
ベガ:アルタイル、、
0:ベガに涙がこぼれる
ベガ:アルタイル、、ああアルタイル、、
0:ベガの輝きが弱まる
ベガ:私は、はたして夜までコメットを匿(かくま)えるのかしら、、アルタイルにも嘘をついて?
コメット:ベガ、ごめんよ。オイラのために、、
ベガ:、、アナタは何も悪くないのよ、コメット
コメット:〈M〉気の毒なベガ、、そうだ!
0:コメットはひらめいた
コメット:「なんて広い、なんて深い空だろうか、、!」
ベガ:そのセリフ、、
ベガ:〈M〉戯曲(ぎきょく)『はじまりの宇宙』第一章
コメット:「だのにわが光の、なんと微々たることか、、!」
ベガ:ふふ、懐かしい。新星(しんせい)時代を思い出すわ
コメット:ベガも、やって?
ベガ:ええ?私は、、
コメット:大丈夫、きっとおぼえてるでしょう
ベガ:〈ためらってから〉、、しょうがないわね
0:ベガの胸がほのかに光りだす
ベガ:「ひとつ、また新たな光が生まれた」
コメット:「声?どこです?助けて下さい。どうか私を認めて下さい」
ベガ:「認めるも何も、汝(なんじ)はそこにいる。我らのように輝いている」
コメット:「見えないのです、私には暗闇しかないのです」
ベガ:「我らを見ないのは、目を閉じているからだ。我らに背を向けているからだ」
コメット:「もし目を開けても暗闇だったら、私はきっと耐えられない、、!」
ベガ:「大丈夫、きっと大丈夫だから。その目を開いてごらんなさい」
0:ベガは一層、光輝く
ベガ:「さあ、この満点の星空で汝も共に輝こう、、!見せておくれ、汝の命の光を!」
0:コンコン
コメット:だれか来た!
ベガ:ッ!ど、どちらさま!?
アルタイル:ベガ。僕だ、アルタイルだ。ポールスターとデネブを交えて打ち合わせをするから、出てきておいで
ベガ:わかったわ、すぐに行くから
コメット:ベガ
ベガ:コメット、私行かなきゃ
コメット:やっぱりベガは、輝いている姿がいいや
ベガ:、、ありがとうコメット
0:ポールスターたちの会談
ポールスター:やあ、ベガ
ベガ:ごめんなさい、遅れてしまって
アルタイル:さあ始めようよ。保安官が来る前に終わらそう
デネブ:、、〈枠主のアドリブもいいと思います〉
ポールスター:そう不満を漏らすな、デネブ。輝きが弱まってしまうぞ
アルタイル:さすがポールスター。アナタの輝きはぶれないね
ベガ:ねえ、コメットのことなんだけど
ポールスター:コメットがどうかしたのか
ベガ:コメットを今夜だけ、認めてあげないかしら
アルタイル:ハハハ。ベガ、何を言ってるんだ。今夜の主役は僕らだ、このために練習してきたんじゃないか
ベガ:アルタイル、私を信じて。コメットを加えたら、きっと楽しいと思うの
アルタイル:楽しいだって?上演は遊びじゃないんだよ
ベガ:〈悲痛に〉アルタイル、昔のように、もっと楽しみましょうよ、、
アルタイル:時間の無駄だね。ポールスター、打ち合わせを進めよう
ポールスター:ふむ、では音響からだが、、
0:会議が終わり、テラスで話すベガとアルタイル
アルタイル:ベガ、さっきは驚いたぞ
ベガ:アルタイル、きいて。コメットは私たちと変わらない。ただ夜空で輝きたいだけなの
アルタイル:それがどうした
ベガ:なんですって?
アルタイル:そもそもコメットには輝きがないじゃないか
ベガ:コメットだって輝けるわ!
アルタイル:あの太陽に焼かれてなッ!
ベガ:コメットは自身の体を燃やしているのよ!それは間違いなく、命の光だわ!どうしてそれを認めないの!
アルタイル:認めるわけがないだろう!ヤツは劇団にも所属していない!宇宙のチリが!突然現れて、さながらアイドル気取りじゃないか!
ベガ:私たちだって、初めは宇宙のチリだったじゃない!
アルタイル:今の僕らには責任がある!主役になれない星々は幾千万といるんだ!僕らはそんな彼らから選ばれた一等星だぞ!
ベガ:空は、全ての星で輝いているの。仲間に入れてあげるのが、そんなにいけないこと?
アルタイル:僕らは団結して練習してきた!独りじゃ輝くこともできない燃えカスに、その日々を侮辱されてたまるか!
ベガ:アルタイル、あなたは変わってしまった
アルタイル:ベガこそ、今日は様子がおかしいじゃないか
ベガ:、、
アルタイル:、、
0:重たく切り出すアルタイル
アルタイル:したのか
ベガ:え?
アルタイル:お前は、コメットとサシ劇をしたのか
ベガ:急に、何を聞くの
アルタイル:答えてくれッ!答えろッ!
ベガ:怒鳴らないでよ、どうして怒るの!
アルタイル:やっぱりな、、!コメットに光を向けて、さぞ心地よかったのだろうな!
ベガ:やめて、アルタイル!どうしてそんなことを言うの!
アルタイル:『はじまりの宇宙』はッ!初めて僕らが演じたシナリオだ、、!僕らの思い出じゃないか!
ベガ:アルタイル。あなた、盗み聞いていたのね
アルタイル:裏切り者め!僕は決して、キミを許さない、、
ベガ:お願いアルタイル、私は貴方を、、
アルタイル:銀星保安官!コメットはベガの部屋にいるぞッ!
銀星保安官:フフフ、そうか、協力を感謝する。貴様は可哀想なヤツだな。心底同情するよ、アルタイル。
ベガ:お願い、やめて頂戴!コメットを自由にしてあげて!
アルタイル:〈冷酷に〉夏の星空は。ポールスターの指揮の下、厳正でなければならない
ベガ:アルタイル、どうして、どうしてなの、、
0:ベガの部屋を捜し回る銀星保安官
銀星保安官:ちくしょう!コメットはベガの部屋にいないではないか!
アルタイル:きっと察知して逃げたのでしょう
銀星保安官:小癪な!さがせ部下どもッ!コメットを見つけ出せ!
0:場面は切り替わる
コメット:はあはあ、危なかった、、
コメット:匿ってくれてありがとう、ポールスター
ポールスター:、、
コメット:ベガには結局迷惑をかけてしまった
ポールスター:、、星のかけらよ、お前の望みはなんだ
コメット:それは、この星空に輝くことです、、!今夜だけ、今夜だけしか輝けないんです!
ポールスター:お前が、我らの調律に従えないことは知っている。他の星々がお前をよく思っていないことも。しかし何故、それでもお前は輝こうとするのか
コメット:この空に生まれたことが喜ばしいからです!山に嵐が吹き荒れるように、葉の朝露がきらめくように!オイラの命が「光れ」と叫んでいるのです!
ポールスター:コメット、お前は我々に比べて、ずっと小さく、ずっとか弱い。太陽に焼かれてしまえば、その命は尽きてしまうだろう
コメット:それでも構いません。オイラには輝けないことの方が、ずっと悲しいのです
ポールスター:、、よろしい。それなら最早、なにも言うまい。夜空に今夜輝いてみせよ、コメット
コメット:はいっ!
0:あせる銀星保安官とアルタイル
銀星保安官:もうじき日没だ。コメットを早く捕まえなくては
アルタイル:コメットめ、コメットめ、、!一体どこに消え失せたのだ!
銀星保安官:まったくアルタイル君、協力するというから連れてやったのに。まるでアテにならないではないか
アルタイル:コメットは小さいはずなので、どこか隙間に隠れているのかも、、!
銀星保安官:もういい、キミの推測につきあってはいられない。捜査の邪魔だ。ここで大人しくしたまえ
0:ひとり残されるアルタイル
アルタイル:、、くそっ!
コメット:アルタイル、、!
アルタイル:なッ!コメット!まさか、、僕の前に現れるとはな
コメット:アルタイル、なんて邪悪な光なんだ
アルタイル:ほざくなッ!貴様なんかを星空に上げさせてたまるか!
コメット:オイラには今夜しかないんだ!そこをどいてくれよ、アルタイル!
アルタイル:貴様の思い通りにはならない。通りたければ僕を殺してみろ!
コメット:アルタイル、、
アルタイル:もう僕には、舞台しか残っていないのさ、、ベガは、僕の最愛の人は去ってしまった、、
0:うなだれるアルタイル
コメット:それは違うよアルタイル。ベガはずっと、アルタイルに嘘をついて苦しんでいた。キミのことを思っているんだよ、アルタイル!
アルタイル:もう遅いッ!僕は彼女にひどいことを言ってしまった。僕は、ベガさえいればよかったのに、、一生愛し合うと思っていたのに
ベガ:今だってそうよ
アルタイル:ベガ、、?どうして、、!
ベガ:盗み聞いていたの。アルタイル、これでおあいこね
アルタイル:ベガ、すまない、僕は、、
ベガ:アルタイル、貴方の言ったことは生涯許しません
アルタイル:それでもいい、僕は、ベガ、貴女のことをずっと愛し続けます
ベガ:〈微笑んで〉私もですよ、アルタイル
0:沈む太陽を眺めるコメット
コメット:日が沈む、もう行かなくては
ベガ:コメット、さようなら
コメット:さようならベガ。そしてアルタイル。今夜は今までで最高の夜にしよう
0:夕焼け空が夜に飲まれていく
ポールスター:まもなく上演開始です。来賓の皆様は心ゆくまでお楽しみください
銀星保安官:さがせ!コメットを探せ!
コメット:皆様、今宵はオイラと絢爛(けんらん)たる星空のためにお集まり頂き、ありがとうございます
銀星保安官:コメットだ!やつめ、太陽の影に隠れておった!開演は中止だ、かかれッ
ポールスター:〈覇気ある声で〉言ったはずだぞ、保安官。夜は我らが聖域だとッ!
銀星保安官:なんだ!?目が回るッ!体が動かないッ!!何をやっているんだ部下ども!コメットを星空に輝かせるなッ!
ポールスター:はっはっはっはっ!
ベガ:コメット、どうか楽しんでね、、
アルタイル:光れ、コメット!
コメット:〈M〉アルタイル、ポールスター、ベガ!空の幾千万の星々よ!見ていてくれよ、オイラの輝きをッ!
銀星保安官:なんだ?あの無様な姿は、、太陽の熱に耐えかねて、燃えカスが尾を引いているじゃないか、、!
アルタイル:違う、、コメットは、命を燃やしているんだ
ベガ:コメット、、これでいい、、これでいいのね?
アルタイル:よく見たまえ、銀星保安官。あの輝きは、コメットの命の炎なんだ
ポールスター:〈N〉燦然(さんぜん)と輝く星々の前を駆けていく、小さなコメット。その命はあるがままに輝き続け、やがて本当のチリとなって、夜明けとともに消え去った