台本概要

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タイトル 星祭りの奇跡
作者名 瓶の人  (@binbintumeru)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 7月7日七夕の日
織姫と彦星が逢える、1年に1度の幸せな日
俺は今日、キミに再会する

※注意事項
●過度なアドリブ、改変をしたい場合(キャラクターの性転換、セリフを丸々変える等)はご連絡ください。
●男性が女性キャラを女性として、女性が男性キャラを男性として演じる際や、語尾等の軽微な改変はご連絡不要です。
●配信等でご利用される場合は、可能であれば作者名、作品名、掲載サイトのURLを提示して頂けると幸いです。
●全力で楽しんで下さると幸いです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
95 聖(ひじり)20歳~ 口が悪く、ひねくれもの 凜とは幼馴染
94 凜(りん)外見年齢14~16歳 明るく天真爛漫 聖とは幼馴染
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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凜:「わぁ…人がいっぱいだねぇ…」 聖:「おーい、そんなはしゃぐと転ぶぞー。」 凜:「だってこんなにたくさん人がいるんだよ?すごいじゃん楽しいじゃん!」 聖:「まあ、年に一度の星祭だしな。これだけ集まって当然だな。」 凜:「確か、織姫様と彦星様が7月7日の七夕に出会うのを祝福して行われるお祭りが、星祭だったよね?」 聖:「ほー、凜にしては良く覚えてるじゃん。」 凜:「これくらいは覚えてますー!あ、ねえねえ花火って何時からだっけ?」 聖:「花火?確か7時からだったと思うけど。」 凜:「今5時だから…あと2時間しかないじゃん!ほら早く行くよ聖!」 聖:「お、おいなんだよ!」 凜:「花火までに屋台全部回るの!」 聖:「はあ?無理だろ。」 凜:「やる前から諦めちゃだめだよ!ほらほら!」 聖:「わかった、わかったから腕を引っ張るのはやめろ!」 0:  0:  凜:「おー!屋台がいっぱいあるねー。」 聖:「そりゃまあ、祭りだからな。」 凜:「なに食べようか迷うなー。」 聖:「さっそく食べ物かよ。」 凜:「お祭りって言ったら食べ物でしょ!」 聖:「そういうもんか?」 凜:「そういうもんなの!あ、綿あめ!綿あめ食べたい!」 聖:「綿あめ?なんでそんなもん食べたいんだよ。」 凜:「聖知らないの?」 聖:「何がだよ…?」 凜:「綿あめはフワフワしてて美味しいんだよ!」 聖:「え、ああ…そうだな?」 凜:「だから食べたい!」 聖:「なんだその理屈…わかったよ…買ってやるからここで待ってろ…」 凜:「わーい!」 0:しばらくして綿あめを片手にもった聖が返ってくる 聖:「…ほら買ってきたぞ。」 凜:「ありがと聖!」 聖:「…おう。」 凜:「ねえねえ、さっき見つけたんだけどさ。あのお面懐かしくない?」 聖:「ん?どれ?」 凜:「ほら、あそこの!なんだっけ…なんとかレンジャーのお面!」 聖:「ああ…あれか。まだあんな古いお面売ってんのか。」 凜:「子供の頃に聖ってば、よくあのお面付けてはしゃいでたよね。」 聖:「まあ、子供だしな。」 凜:「今みたいにひねくれてなくて、すっごく素直で可愛かったし。」 聖:「うっせぇ、それを言うならお前だって子供の頃はじゃじゃ馬だったじゃねえか。」 凜:「今は子供の時とは違うからいいの!今は清楚で可愛い可愛い凜ちゃんだから!」 聖:「…清楚で可愛い?どこの誰が?」 凜:「今目の前に居る!!私が!!ほら、可愛いでしょ?」 聖:「……次はどこに行く?」 凜:「ねー!もっと何か言ってよ!」 聖:「やだよ、めんどくさい!」 凜:「ひどーい!あ、ねえねえ聖!」 聖:「急になんだ?」 凜:「あれやりたい!」 聖:「あれ?って射的か?」 凜:「私、射的やったことないんだよね。」 聖:「…まあいいか、やるか。」 凜:「やったー!」 聖:「ほら、お前からでいいぞ。」 凜:「よーし、取りまくるぞー!」 聖:「がんばれー。」 凜:「狙いを定めて……えい!」 聖:「あー残念だったな。」 凜:「も、もう1回!えい!」 聖:「惜しいなー。」 凜:「まだまだ!えい!えい!えーい!」 聖:「…1個も取れなかったな。」 凜:「うう…」 聖:「はあ…ちょっとどいてろ。」 凜:「え?」 聖:「狙いをしっかり定めて…脇を締めて…よっと。」 凜:「すごい!落ちた!」 0:景品のクマのぬいぐるみを凜にに渡す 聖:「ほらよ。」 凜:「え?これ聖が取ったやつじゃん。」 聖:「俺は要らねえからお前にやるよ。」 凜:「でも…」 聖:「いいんだよ、お前がずっと狙ってたやつを横取りしただけだしな。」 凜:「…ふふ、ホントひねくれてるよね…」 聖:「…うっせ。」 凜:「ありがと聖、そこまで言うならこのクマさん貰ってあげる!」 0:ぬいぐるみを抱きしめる凜 聖:「おう。」 凜:「…ねえ、聖。次はあそこ行きたいな。」 聖:「あそこ?」 凜:「うん、あそこ。」 0:  0:階段上の神社の裏にある祠前 聖:「ここって…」 凜:「ここも変わってないなー、昔からここはあまり人が来ないし、花火も綺麗に見えるから穴場スポットなんだよねー。」 聖:「神社の裏にあって暗いし、ほこらもあるから怖くてあまり人が寄り付かないんだよな。」 凜:「私たちはそんなのお構いなしに、よくここにきて花火見てたよね。」 聖:「そうだな。懐かしい。」 凜:「あ、ねえ、聖。天の川すごい綺麗に見えるよ。」 聖:「ん?ああ、良く見える。」 凜:「織姫様と彦星様、会えたかな?」 聖:「さあ、どうだろうな。」 凜:「でも、会ってもまたすぐに引き裂かれて来年まで会えないんだよね。」 聖:「そうだな…」 凜:「それって、悲しいよね。愛し合ってるのに、どんなにお互いがお互いを欲していても抱きしめられなくて、感じられなくて…私だったら耐えられないや。」 聖:「…でも1年後にはまた会える。……死んでないんだ、生き続ける限り会えるんだ。」 凜:「聖…」 聖:「俺は…俺たちは…もう会えないかもしれないからな…羨ましいよ。」 凜:「……ねえ、小学生の頃にここで私がケガをした時の事覚えてる?」 聖:「…ケガ?」 凜:「うん、ここに上がってくるまでの階段で怪我しちゃってさ。聖が私をおんぶしてくれてここまで連れてきてくれたんだよね。」 聖:「そんなこともあったな…」 凜:「その時に私が大泣きして、そしたら聖が『僕は凜ちゃんとずっといる、歩けないなら僕が足になる、だから安心して』って言ってくれてさ、うれしかったなぁ…」 聖:「そんなこと言ったか…?」 凜:「言ったんだよ。中学生の時も高校生の時も、私が困ってたら聖はずっと私の事を守ってくれた。」 聖:「まあ…そりゃ凜は危なっかしいからな。」 凜:「そんなかなあ?」 聖:「しょっちゅうケガしてるやつが何を言ってるんだか…」 凜:「えへへ、でも聖が居てくれたから私は安心できたんだよ。」 聖:「……でも俺は、凜を守り切れなかった…傍に居たのに…ちゃんと見てれば、もっと早く手を伸ばしてれば…」 凜:「…ううん、聖……あれは私が悪かったんだから…大雨が降った次の日に川の近くに行った私が悪いし、橋が崩れたのも偶然だし…聖が悔やむ必要なんてないんだよ。」 聖:「…助けに行くのが早かったら、もしかしたらお前を助けられたかもしれなかった…そうすればお前が死ぬことはなかった…」 凜:「…聖……」 聖:「お前が死んでからこの祭りにも来てない、思い出すのが怖くて逃げてるんだよ。お前からも自分からも逃げてるんだよ俺。情けないよな。」 凜:「…逃げたっていいじゃん。」 聖:「…え?」 凜:「ずっと逃げないなんて疲れちゃうじゃん、ずっと戦ってるなんて痛いじゃん。怖くないなんてことないもん、逃げるときはたくさん逃げて遠くまで逃げて休んで、また進めばいいんだよ。聖はひねくれてるけど、人の為に頑張りすぎなんだよ。だからもう、自分の為にも頑張ったっていいじゃん。聖が幸せになってくれなきゃ嫌だよ…」 聖:「凜…でも俺は…」 凜:「それにさ今日、聖は逃げなかったじゃん。」 聖:「え…?」 凜:「今日、私とお祭り来てくれたじゃん。すっごく嬉しい。」 聖:「だって…それは…」 凜:「聖、私ね…聖の事が好きだったの。」 聖:「え…」 凜:「素直じゃないけど、まっすぐに人の事を考えて助けてくれる。そんな聖の事が大好きだった。」 聖:「…凜。」 凜:「あー、言っちゃった。恥ずかしいなぁもう!」 0:凜の体が透け始める 聖:「お、おい凜…体がっ!体が薄く消えて…!」 凜:「え?あはは…そっか…もう消えちゃうんだ。結構早いんだね…でも言いたいことは言えたしいいかな?」 聖:「良くないだろ!昔も今も俺ばかりお前に助けられて何も返せてない!」 凜:「いいよ、充分すぎるくらい返してもらったし、助けてもらってたのは私だし。」 聖:「そんなことねえよ……俺だってお前の事が好きなんだよ!子供の頃からずっと、ずっと凛の事が好きだったんだよ!やっと好きな奴に会えたのにまた離れるなんて…そんなの…」 凜:「…えへへ、やっと好きって言ってくれたね。ずっと待ってたんだよ?」 聖:「っ…凜……」 凜:「でもこれでやっと両想いになれた。私の願いが、やっと叶った。」 聖:「……願い叶えてやるの、遅くなって悪い…」 凜:「ホントだよ、ひねくれものなんだから。」 聖:「…うるせえ…」 凜:「ねえ聖、1つお願い聞いてくれる?」 聖:「なんだ…?」 0:寂しそうな笑顔で凜が口を開く 凜:「私の事、忘れてくれる?」 聖:「っ!?なんでだ…?」 凜:「さっきも言ったじゃん。聖には幸せになってほしいの。その為には私が聖の中に居ちゃいけないの。」 聖:「そんな…無理だ…」 凜:「ねえ、お願い…私の事を忘れて、新しい一歩を踏み出して?私に縛られないでほしいの。」 聖:「俺はお前が居たからここまでこれた。それを今更忘れるなんて…」 凜:「私はもう死んだ人間なんだよ。この7月7日の星祭の奇跡によって1日だけ生き返っただけの、本来はこの世にいない人間なの。そんなのに囚われちゃだめだよ…」 聖:「そんなのわかってる…!わかってるんだよ…」 凜:「なら…」 聖:「俺はこの日をずっと待ってたんだ!毎年行われる星祭りの日に、1度だけ誰かの大切な人が生き返る。そんな奇跡が起きる…俺はその奇跡で凜が生き返るのをすっと待ってたんだ!」 凜:「…聖。」 聖:「会いたかった、会って謝りたかった、会って抱きしめたかったんだ…だから俺は…お前の事を忘れるなんて…」 凜:「ねえ…?聖が私の事を忘れても…私はずっと聖のそばにいるよ。聖がずっとそうしてくれたように。」 聖:「……そんなの…」 凜:「ね、だから…」 聖:「…っ」 凜:「…聖っ…」 聖:「できない…」 凜:「お願い、聖…!私は、聖にこれ以上私で苦しんでほしくないの…」 聖:「お前を忘れる方が苦しい…」 凜:「聖……」 聖:「……。」 凜:「……。」 聖:「…あー、わかったよ、わかった…お願い聞けばいいんだろ?ったく昔から強情なの変わらねえな…ホント。俺がその顔に弱いの知っててやってんだろ…」 凜:「…えへへ、ありがと…………ねえ、聖。」 聖:「なんだ?」 凜:「こっちきて。」 聖:「…?」 凜:「もっと。」 聖:「なんだよ。」 凜:「抱きしめて?」 聖:「………おう。」 0:抱きしめあう2人 凜:「あったかいね。」 聖:「おう…」 凜:「……。」 聖:「………。」 凜:「聖…」 聖:「…なんだ…?」 凜:「もう1回好きって言って…?」 聖:「なんでだよ。」 凜:「お願い。」 聖:「……好きだ。」 凜:「もっと言って。」 聖:「大好きだ凜……」 凜:「私もだよ…私も大好き…」 聖:「大好き…愛してる…」 凜:「うん…私も愛してる。」 聖:「…離れたくない、消えてほしくない、凜…このまま、ずっと俺と一緒に……」 凜:「聖…私の事、ずっとずっと…好きでいてくれてありがとね…」 0:聖を離す凜 聖:「っ!凜!まっ…」 凜:「聖、幸せになってね…」 聖:「っ!凜!凜……凜…うっ…くそっ…くそおおおおお!」 0:  聖:【N】初めからそこには誰もいなかったかのように凛は消え、抱きしめていた俺の腕は虚空を切りクマのぬいぐるみだけがその場へ残った。 聖:刹那、静まり返った夜に祭りのフィナーレを飾る花火が大きな音と共に打ちあがった。俺の泣き声は、花火の音と混ざり合い夜に溶け込んでいった。 0: 0:

凜:「わぁ…人がいっぱいだねぇ…」 聖:「おーい、そんなはしゃぐと転ぶぞー。」 凜:「だってこんなにたくさん人がいるんだよ?すごいじゃん楽しいじゃん!」 聖:「まあ、年に一度の星祭だしな。これだけ集まって当然だな。」 凜:「確か、織姫様と彦星様が7月7日の七夕に出会うのを祝福して行われるお祭りが、星祭だったよね?」 聖:「ほー、凜にしては良く覚えてるじゃん。」 凜:「これくらいは覚えてますー!あ、ねえねえ花火って何時からだっけ?」 聖:「花火?確か7時からだったと思うけど。」 凜:「今5時だから…あと2時間しかないじゃん!ほら早く行くよ聖!」 聖:「お、おいなんだよ!」 凜:「花火までに屋台全部回るの!」 聖:「はあ?無理だろ。」 凜:「やる前から諦めちゃだめだよ!ほらほら!」 聖:「わかった、わかったから腕を引っ張るのはやめろ!」 0:  0:  凜:「おー!屋台がいっぱいあるねー。」 聖:「そりゃまあ、祭りだからな。」 凜:「なに食べようか迷うなー。」 聖:「さっそく食べ物かよ。」 凜:「お祭りって言ったら食べ物でしょ!」 聖:「そういうもんか?」 凜:「そういうもんなの!あ、綿あめ!綿あめ食べたい!」 聖:「綿あめ?なんでそんなもん食べたいんだよ。」 凜:「聖知らないの?」 聖:「何がだよ…?」 凜:「綿あめはフワフワしてて美味しいんだよ!」 聖:「え、ああ…そうだな?」 凜:「だから食べたい!」 聖:「なんだその理屈…わかったよ…買ってやるからここで待ってろ…」 凜:「わーい!」 0:しばらくして綿あめを片手にもった聖が返ってくる 聖:「…ほら買ってきたぞ。」 凜:「ありがと聖!」 聖:「…おう。」 凜:「ねえねえ、さっき見つけたんだけどさ。あのお面懐かしくない?」 聖:「ん?どれ?」 凜:「ほら、あそこの!なんだっけ…なんとかレンジャーのお面!」 聖:「ああ…あれか。まだあんな古いお面売ってんのか。」 凜:「子供の頃に聖ってば、よくあのお面付けてはしゃいでたよね。」 聖:「まあ、子供だしな。」 凜:「今みたいにひねくれてなくて、すっごく素直で可愛かったし。」 聖:「うっせぇ、それを言うならお前だって子供の頃はじゃじゃ馬だったじゃねえか。」 凜:「今は子供の時とは違うからいいの!今は清楚で可愛い可愛い凜ちゃんだから!」 聖:「…清楚で可愛い?どこの誰が?」 凜:「今目の前に居る!!私が!!ほら、可愛いでしょ?」 聖:「……次はどこに行く?」 凜:「ねー!もっと何か言ってよ!」 聖:「やだよ、めんどくさい!」 凜:「ひどーい!あ、ねえねえ聖!」 聖:「急になんだ?」 凜:「あれやりたい!」 聖:「あれ?って射的か?」 凜:「私、射的やったことないんだよね。」 聖:「…まあいいか、やるか。」 凜:「やったー!」 聖:「ほら、お前からでいいぞ。」 凜:「よーし、取りまくるぞー!」 聖:「がんばれー。」 凜:「狙いを定めて……えい!」 聖:「あー残念だったな。」 凜:「も、もう1回!えい!」 聖:「惜しいなー。」 凜:「まだまだ!えい!えい!えーい!」 聖:「…1個も取れなかったな。」 凜:「うう…」 聖:「はあ…ちょっとどいてろ。」 凜:「え?」 聖:「狙いをしっかり定めて…脇を締めて…よっと。」 凜:「すごい!落ちた!」 0:景品のクマのぬいぐるみを凜にに渡す 聖:「ほらよ。」 凜:「え?これ聖が取ったやつじゃん。」 聖:「俺は要らねえからお前にやるよ。」 凜:「でも…」 聖:「いいんだよ、お前がずっと狙ってたやつを横取りしただけだしな。」 凜:「…ふふ、ホントひねくれてるよね…」 聖:「…うっせ。」 凜:「ありがと聖、そこまで言うならこのクマさん貰ってあげる!」 0:ぬいぐるみを抱きしめる凜 聖:「おう。」 凜:「…ねえ、聖。次はあそこ行きたいな。」 聖:「あそこ?」 凜:「うん、あそこ。」 0:  0:階段上の神社の裏にある祠前 聖:「ここって…」 凜:「ここも変わってないなー、昔からここはあまり人が来ないし、花火も綺麗に見えるから穴場スポットなんだよねー。」 聖:「神社の裏にあって暗いし、ほこらもあるから怖くてあまり人が寄り付かないんだよな。」 凜:「私たちはそんなのお構いなしに、よくここにきて花火見てたよね。」 聖:「そうだな。懐かしい。」 凜:「あ、ねえ、聖。天の川すごい綺麗に見えるよ。」 聖:「ん?ああ、良く見える。」 凜:「織姫様と彦星様、会えたかな?」 聖:「さあ、どうだろうな。」 凜:「でも、会ってもまたすぐに引き裂かれて来年まで会えないんだよね。」 聖:「そうだな…」 凜:「それって、悲しいよね。愛し合ってるのに、どんなにお互いがお互いを欲していても抱きしめられなくて、感じられなくて…私だったら耐えられないや。」 聖:「…でも1年後にはまた会える。……死んでないんだ、生き続ける限り会えるんだ。」 凜:「聖…」 聖:「俺は…俺たちは…もう会えないかもしれないからな…羨ましいよ。」 凜:「……ねえ、小学生の頃にここで私がケガをした時の事覚えてる?」 聖:「…ケガ?」 凜:「うん、ここに上がってくるまでの階段で怪我しちゃってさ。聖が私をおんぶしてくれてここまで連れてきてくれたんだよね。」 聖:「そんなこともあったな…」 凜:「その時に私が大泣きして、そしたら聖が『僕は凜ちゃんとずっといる、歩けないなら僕が足になる、だから安心して』って言ってくれてさ、うれしかったなぁ…」 聖:「そんなこと言ったか…?」 凜:「言ったんだよ。中学生の時も高校生の時も、私が困ってたら聖はずっと私の事を守ってくれた。」 聖:「まあ…そりゃ凜は危なっかしいからな。」 凜:「そんなかなあ?」 聖:「しょっちゅうケガしてるやつが何を言ってるんだか…」 凜:「えへへ、でも聖が居てくれたから私は安心できたんだよ。」 聖:「……でも俺は、凜を守り切れなかった…傍に居たのに…ちゃんと見てれば、もっと早く手を伸ばしてれば…」 凜:「…ううん、聖……あれは私が悪かったんだから…大雨が降った次の日に川の近くに行った私が悪いし、橋が崩れたのも偶然だし…聖が悔やむ必要なんてないんだよ。」 聖:「…助けに行くのが早かったら、もしかしたらお前を助けられたかもしれなかった…そうすればお前が死ぬことはなかった…」 凜:「…聖……」 聖:「お前が死んでからこの祭りにも来てない、思い出すのが怖くて逃げてるんだよ。お前からも自分からも逃げてるんだよ俺。情けないよな。」 凜:「…逃げたっていいじゃん。」 聖:「…え?」 凜:「ずっと逃げないなんて疲れちゃうじゃん、ずっと戦ってるなんて痛いじゃん。怖くないなんてことないもん、逃げるときはたくさん逃げて遠くまで逃げて休んで、また進めばいいんだよ。聖はひねくれてるけど、人の為に頑張りすぎなんだよ。だからもう、自分の為にも頑張ったっていいじゃん。聖が幸せになってくれなきゃ嫌だよ…」 聖:「凜…でも俺は…」 凜:「それにさ今日、聖は逃げなかったじゃん。」 聖:「え…?」 凜:「今日、私とお祭り来てくれたじゃん。すっごく嬉しい。」 聖:「だって…それは…」 凜:「聖、私ね…聖の事が好きだったの。」 聖:「え…」 凜:「素直じゃないけど、まっすぐに人の事を考えて助けてくれる。そんな聖の事が大好きだった。」 聖:「…凜。」 凜:「あー、言っちゃった。恥ずかしいなぁもう!」 0:凜の体が透け始める 聖:「お、おい凜…体がっ!体が薄く消えて…!」 凜:「え?あはは…そっか…もう消えちゃうんだ。結構早いんだね…でも言いたいことは言えたしいいかな?」 聖:「良くないだろ!昔も今も俺ばかりお前に助けられて何も返せてない!」 凜:「いいよ、充分すぎるくらい返してもらったし、助けてもらってたのは私だし。」 聖:「そんなことねえよ……俺だってお前の事が好きなんだよ!子供の頃からずっと、ずっと凛の事が好きだったんだよ!やっと好きな奴に会えたのにまた離れるなんて…そんなの…」 凜:「…えへへ、やっと好きって言ってくれたね。ずっと待ってたんだよ?」 聖:「っ…凜……」 凜:「でもこれでやっと両想いになれた。私の願いが、やっと叶った。」 聖:「……願い叶えてやるの、遅くなって悪い…」 凜:「ホントだよ、ひねくれものなんだから。」 聖:「…うるせえ…」 凜:「ねえ聖、1つお願い聞いてくれる?」 聖:「なんだ…?」 0:寂しそうな笑顔で凜が口を開く 凜:「私の事、忘れてくれる?」 聖:「っ!?なんでだ…?」 凜:「さっきも言ったじゃん。聖には幸せになってほしいの。その為には私が聖の中に居ちゃいけないの。」 聖:「そんな…無理だ…」 凜:「ねえ、お願い…私の事を忘れて、新しい一歩を踏み出して?私に縛られないでほしいの。」 聖:「俺はお前が居たからここまでこれた。それを今更忘れるなんて…」 凜:「私はもう死んだ人間なんだよ。この7月7日の星祭の奇跡によって1日だけ生き返っただけの、本来はこの世にいない人間なの。そんなのに囚われちゃだめだよ…」 聖:「そんなのわかってる…!わかってるんだよ…」 凜:「なら…」 聖:「俺はこの日をずっと待ってたんだ!毎年行われる星祭りの日に、1度だけ誰かの大切な人が生き返る。そんな奇跡が起きる…俺はその奇跡で凜が生き返るのをすっと待ってたんだ!」 凜:「…聖。」 聖:「会いたかった、会って謝りたかった、会って抱きしめたかったんだ…だから俺は…お前の事を忘れるなんて…」 凜:「ねえ…?聖が私の事を忘れても…私はずっと聖のそばにいるよ。聖がずっとそうしてくれたように。」 聖:「……そんなの…」 凜:「ね、だから…」 聖:「…っ」 凜:「…聖っ…」 聖:「できない…」 凜:「お願い、聖…!私は、聖にこれ以上私で苦しんでほしくないの…」 聖:「お前を忘れる方が苦しい…」 凜:「聖……」 聖:「……。」 凜:「……。」 聖:「…あー、わかったよ、わかった…お願い聞けばいいんだろ?ったく昔から強情なの変わらねえな…ホント。俺がその顔に弱いの知っててやってんだろ…」 凜:「…えへへ、ありがと…………ねえ、聖。」 聖:「なんだ?」 凜:「こっちきて。」 聖:「…?」 凜:「もっと。」 聖:「なんだよ。」 凜:「抱きしめて?」 聖:「………おう。」 0:抱きしめあう2人 凜:「あったかいね。」 聖:「おう…」 凜:「……。」 聖:「………。」 凜:「聖…」 聖:「…なんだ…?」 凜:「もう1回好きって言って…?」 聖:「なんでだよ。」 凜:「お願い。」 聖:「……好きだ。」 凜:「もっと言って。」 聖:「大好きだ凜……」 凜:「私もだよ…私も大好き…」 聖:「大好き…愛してる…」 凜:「うん…私も愛してる。」 聖:「…離れたくない、消えてほしくない、凜…このまま、ずっと俺と一緒に……」 凜:「聖…私の事、ずっとずっと…好きでいてくれてありがとね…」 0:聖を離す凜 聖:「っ!凜!まっ…」 凜:「聖、幸せになってね…」 聖:「っ!凜!凜……凜…うっ…くそっ…くそおおおおお!」 0:  聖:【N】初めからそこには誰もいなかったかのように凛は消え、抱きしめていた俺の腕は虚空を切りクマのぬいぐるみだけがその場へ残った。 聖:刹那、静まり返った夜に祭りのフィナーレを飾る花火が大きな音と共に打ちあがった。俺の泣き声は、花火の音と混ざり合い夜に溶け込んでいった。 0: 0: