台本概要
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タイトル | 生すぎる生チョコ |
---|---|
作者名 | Sui@シナリオライター (@fM1KaY5J95ORcNN) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
彼が突然こう言った。 「生っ過ぎる生チョコが食べたい!」と。 良く分らない彼氏の一言に戸惑いながらも生すぎる生チョコを作ってみたところ… 良く分らんオッサンが作ったチョコに乗り移った!? 困惑する女子高生、飛騨千代子を横目にオッサンは語り始めたのであった。 …そんなお話。 普通に演じて頂くとやく15~20分程度の声劇台本となっております。 アドリブ等は自由にして頂いて構いませんが、収拾をつけて頂けるのであれば大歓迎です。 最後に…無いとは思いますが、無断転載等は お控えください。 358 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
千代子 | 女 | 97 | 飛騨千代子(ひだ ちよこ) 彼に恋する女子高生 彼の無茶振りに応えるべく絶賛努力中! |
時臣 | 男 | 83 | 杉田時臣(すぎた ときおみ) 何故か千代子の作ったチョコレートに憑依してしまったオッサン 一人称は「おっさん」である。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:【生すぎる生チョコ】
0:
0:千代子、キッチンにて
0:
千代子:「何故こうなった?」
0:
千代子:(M)私の彼が唐突にこう言い放った。
千代子:「生すぎる生チョコが欲しい!」…と。
千代子:もちろん知ってるよ!? 生チョコ!
千代子:作り方もネットで調べてバッチリ!
千代子:…だけど… 「生すぎる」って何だよ!?
千代子:ハッキリ言って訳が分からん!
千代子:だけど私は…彼が大好きだから挑戦してみることにしたの。
0:
千代子:(M)生チョコは、チョコレートと生クリーム…
千代子:生すぎる感じにするには…生っぽい物をとにかく入れてみるしかない。
千代子:とりあえず、生魚、生肉、生卵、生牡蠣(なまがき)、生絞りジュース、生姜(しょうが)…
千代子:蜜蝋(みつろう)は…生っぽいロウソクだから、とりあえず用意。
千代子:後は…使わないだろうけど、生コンクリートに、なまはげの面…
千代子:何だろう…これだけの物を揃えたら、何だか悪魔召喚の儀式が出来そうな気がしてきた…
千代子:そして…なんやかんや、やってたら… こうなった。
0:千代子、キッチンの上に完成したチョコを見下ろす。
千代子:「このチョコ…人の顔に見えるんですけど…?」
時臣:「ちらっ…」
千代子:「ひっ…! 今…なんか…」
時臣:「じろり」
千代子:「チョコがこっち見た!」
時臣:「おう、ねーちゃん。」
千代子:「しゃべったぁぁぁ! チョコがぁぁぁ!」
時臣:「うるさいなぁ…ねーちゃん。噛むぞ!?」
千代子:「食べられるはずのチョコが私をぉぉぉ!」
時臣:「しかし、ねーちゃんデカいな…身長、何メートルあるのよ?」
千代子:「147センチですが…!?」
時臣:「そんなハズ無いだろ! おっさんの身長180センチあるんよ?」
千代子:「今のあなたの全長は18センチ前後です!」
時臣:「10分の1かぁ…小さくなってまぁ…」
千代子:「驚かないんですか!?」
時臣:「まぁ…アレよ。 おっさんは、もうオッサンだからな…滅多なことでは驚かなくなってしまったんだよ。」
千代子:「オッサンになると、驚かなくなるの!? オッサンすげぇ!」
時臣:「ねーちゃん、誰に向かって口きいてんの!?」
千代子:「え…オッサンに…?」
時臣:「あのな? おっさんも、なりたくてオッサンになった訳じゃないのね?
時臣:おっさんも若くありたいのよ! 自分で言う分には良いよ。
時臣:でもな…他人に「オッサン」って言われたら、おっさん傷つくのよ…
時臣:別に「おじさま」とか言ってくれとは言わないけどさ…
時臣:「おっちゃん」とか「おいたん」とか…もうちょっとフランクな呼び方があるでしょ?」
千代子:「(小声で)うわぁ…このオッサン…めんどくさい…」
時臣:「ちょちょちょ、小声で言っても聞こえるからね?」
千代子:「失礼しました。 では、張り切って、お帰り下さい。」
時臣:「おっさん、帰り方を知らないのだけど?」
千代子:「じゃ、なんでここに居るんですか?」
時臣:「分からん。 むしろ、こっちが聞きたいくらいよ。」
千代子:「えぇ…」
0:しばし間
時臣:「ま、袖振り合うのも何かの縁と言うし…おっさんの話を聞いてもらっても良いかな?」
千代子:「はぁ…」
時臣:「おっさんな…人生が辛くなっちゃったのよ…」
千代子:「なんだか、いきなり重苦しい話の予感…」
時臣:「高校中退で稼ぎが少ないのに、別れた妻の娘に養育費を払い続けないといけなくてね?」
千代子:「金銭的にキツいのね…」
時臣:「会社では罵られ続けて、給料は上がらない…だって高校中退だもの。」
千代子:「親の助けは無いの?」
時臣:「親の反対を押し切っての結婚をしたからね…いまさらだよ…」
千代子:「そっか…」
時臣:「だからね…おっさん、自分の人生を終わらせようと思ったのね。」
千代子:「えっ!?」
時臣:「線路で…電車が来るタイミングを見計らって…」
千代子:「ちょっと!?」
時臣:「飛び込んで、気が付いたら…ここに居ましたとさ。」
千代子:「何で!?」
時臣:「どうしてかな…おっさんも知りたいのよ。」
千代子:「はぁ…」
0:しばし間
千代子:「あの…おっさん?」
時臣:「おっちゃんな?」
千代子:「おっちゃん?」
時臣:「はい、何でしょう?」
千代子:「どうして高校中退なの?」
時臣:「学生結婚したからよ。」
千代子:「どうして学生結婚したの?」
時臣:「子供ができたからな? 責任は取らないとダメだろ?」
千代子:「そうですね。」
時臣:「ねーちゃんは、好きな人はいるのかい?」
千代子:「いますね。」
時臣:「いるんだったら気を付けないとだめだぞ? おっさんみたいになるから…」
千代子:「気を付けます。」
時臣:「おう。」
0:少し間
千代子:「あの、私から聞いても良いですか?」
時臣:「おっさんが答えれる事なら何でも聞いて良いよ。」
千代子:「彼氏が生チョコを欲しがってるんですね。」
時臣:「そか、作ってあげれば良いんじゃないか?」
千代子:「生チョコであれば普通に作るんですけど…生すぎる生チョコが欲しいって言うもんで…」
時臣:「生すぎる生チョコか…」
千代子:「はい…生すぎるには、どうすれば良いものかと…?」
時臣:「普通に生チョコを作ってあげればいいんじゃないかな?」
千代子:「えっ?」
時臣:「それ、多分だけど…「生」って言いたいだけよ?」
千代子:「そんなもんなの?」
時臣:「あくまでも多分よ?
時臣:男はバカだから、面白いと思ったパワーワードは何か使いたくなるのよ。」
千代子:「おっちゃんも…そういう時期あったの?」
時臣:「あったよ…奇しくも同じ「生」ってワードに良くわからん憧れがあってね…
時臣:居酒屋に行ったりするサラリーマンへの憧れみたいなのかな、「とりあえず生」みたいなのが妙にハマった時期があってね…
時臣:気が付いたら「生なんとか~」とか言いまくってたよ。」
千代子:「そうなんだ。」
時臣:「言ってる方としては、そんなに深い意味が無いから気にする必要も無いと思うぞ?」
千代子:「そっか…」
0:間
時臣:「おっさんからも聞いて良い?」
千代子:「あ、はい…どうぞ。」
時臣:「ねーちゃんの名前…聞いても良い?」
千代子:「私、飛騨千代子(ひだ ちよこ)って言います。」
時臣:「千代子ちゃんか…元嫁と同じ名前なんだな…」
千代子:「学生結婚した元奥さんも千代子さんって言うの?」
時臣:「そ。 苗字も同じで旧姓「飛騨千代子」…おかしな偶然もあったもんだな。」
千代子:「もしかして、私に似てたりする?」
時臣:「そうだな…よく似てる…気がするかな…」
千代子:「覚えてないの?」
時臣:「最後に会ったのは、もう15年くらい前になるからね…
時臣:思い出すと辛い事まで思い出しちゃうから…なるべく思い出さないようにいしてるんだけどね。」
千代子:「奥さんは今、何してるんですか?」
時臣:「わからんのよ…娘と暮らしてる事だけは確かだと思うが…」
千代子:「そっか…」
0:間
千代子:「そう言えば、おっちゃんの名前は?」
時臣:「おっさんの名前か?」
千代子:「うん。」
時臣:「杉田時臣(すぎた ときおみ)」
千代子:「へぇ…私の彼氏の名前と同じだ…」
時臣:「そうか…」
0:間
千代子:「偶然ってあるんですね。」
時臣:「そうだな。」
0:間
千代子:「ある!? そんな偶然!?」
時臣:「無くは無いかも知れないけど…かなり少ない確率で…」
千代子:「いや無いよ! それにチョコレートに転生してくるとか、もはや偶然の域をはるかに超えてるよねぇ!?」
時臣:「そういえば!」
千代子:「ちょっと確認させて? 今、西暦何年?」
時臣:「2037年。」
千代子:「そりゃ15年後だね。 今は2022年だから。」
時臣:「通ってる学校は?」
千代子:「都立海浜学園。」
時臣:「確かに、おっさんの通ってた高校だ。 今は無くなって病院になってる。」
千代子:「母校無くなること確定かよ!?
千代子:当時のクラスは…3年何組?」
時臣:「3組。 担任のアダ名は?」
千代子:「ハゲた諸見沢…略してハゲ見沢!」
時臣:「…これは…」
千代子:「うん、間違いない。」
時臣:「おっさん…タイムスリップしてきてるわ。」
千代子:「しかも、よりにもよって私の作ったチョコレートに!?」
時臣:「おぉ…」
0:間
千代子:「…って事は…私…学生結婚するの!?」
時臣:「まぁ…そうなるな…」
千代子:「子供ができて…学校を去るの?」
時臣:「おっさんと一緒に…な。」
千代子:「私…どうなったの?」
時臣:「親に散々心配をかけて…駆け落ち?」
千代子:「ウソでしょ…? その後は?」
時臣:「バイトで食い繋いで…子供が生まれた一年後に離婚。」
千代子:「嫌だよ? そんな未来?」
時臣:「おっさんも、後悔してる。」
千代子:「仮によ? 大学を卒業して、しっかり就職してからの結婚だと…話は変わる?」
時臣:「そうだなぁ…おっさん、頭は良かったからなぁ…」
千代子:「時臣君、そんなに成績良かったの!? 喋り方アホっぽいのに!?」
時臣:「その言葉、すっごい失礼よ?」
千代子:「すみません。」
時臣:「まぁ…否定できないけど…」
0:短い間
千代子:「とりあえず…どうしたら、その未来を回避できると思う?」
時臣:「そうだなぁ…「生」発言を改めることができたら変わるかと…」
千代子:「あぁー… そう言う?」
時臣:「まぁ…そう言う感じ?」
0:短い間
千代子:「オッサン…最低だね…」
時臣:「返す言葉もございません。」
千代子:「…で?
千代子:どうされたら言う事聞く?」
時臣:「まぁ…」
千代子:「どうされたい?」
時臣:「おっさん、Mじゃないので…どうされたいと言う希望は無いけど…」
千代子:「どうされたら、言う事聞くの?」
時臣:「汚いものを見るような目で、『最低だな…お前』と言って頂ければ…」
千代子:「ほう?」
時臣:「お願いします。」
千代子:「分かった。 私も明るい未来がほしいからね…頑張ってみるわ。
千代子:でも、おっちゃんは…この後どうするの?」
時臣:「あー…それなんだけどね?」
千代子:「帰る方法が解ったの?」
時臣:「おっさん、なんか消えかかってるみたいなのよ?」
千代子:「何で急に!?」
時臣:「どうも未来が変わってるみたいで…多分、今のおっさんは消えて無くなって…新しい、おっさんに変わろうとしてるんだと思う。」
千代子:「すでに、人間として古くなってるから「おっさん」のはずなのに…新しいとは?」
時臣:「言うなよ… あと、おっさんって言うなって…最後の最後に…悲しくなるだろ…?」
0:
千代子:(M)そう言うと、おっちゃん…いや、年老いた時臣君はチョコレートから居なくなった。
千代子:悲しそうな顔のチョコレートを残して… 私は…
0:
千代子:「デスマスクみたいだわ…」
0:
千代子:(M)そう呟いて…生チョコを、口に入れた。
千代子:正直…生臭かった。
千代子:次の日、相変わらず『生』発言を繰り返す、フレッシュな時臣君に私は…
0:
千代子:「はっ…最低だな…お前…?」
0:
千代子:(M)と言う、私らしからぬ発言により『生』発言は終息を迎えた。
千代子:元来、時臣君はまじめな性格なんだろう…そこからは、非の打ちどころの無い真面目な時臣君になった。
0:
千代子:数日後…
0:
時臣:(若い時臣で)「千代子、俺…千代子のチョコレート欲しいな…」
千代子:「生チョコ?」
時臣:「千代子がくれるチョコなら何でも欲しいよ!」
千代子:「…もう…しょうがないなぁ…」
0:
千代子:(M)そうして私は…ハート形のチョコを作った。
千代子:しかし…
千代子:何故こうなった?
0:短い間
時臣:「あの…おっさんな…今、重大な問題を抱えてるのよ…」
千代子:「もしかして…時臣君?」
時臣:「何で分かったの?」
千代子:「うん…前にも、こんな事あったから…」
時臣:「そうか…」
千代子:「で? 今度は何?」
時臣:「おっさん真面目に生き過ぎて…結婚した今でも手を握れないのだけど…どうしたら良いと思う?」
千代子:「えぇぇ…
千代子:…分かった。 結婚したら私の方から行くから…安心しなさい。」
0:
千代子:(M)そう言って私は…時臣君をモリモリと、ほおばった。
千代子:問題は、まだまだ山積みなのだろう。
千代子:私は定期的にチョコを作ろうと思った。
千代子:きっと節目には…オッサンになった時臣君が現れるだろうから。
千代子:幸せな未来を掴み取る為には…きっと、もう少し努力が必要なのだろう…
0:翌日
千代子:(M)次の日…私は時臣君に板チョコを、そのまま渡した。
千代子:見ると…板チョコが何か盛り上がってる気が…
時臣:「ちょっといいか? おっさんなぁ…困った事があるのよ?」
千代子:(M)意外と節目は細かく来るらしい…
0:
0:おしまい
0:【生すぎる生チョコ】
0:
0:千代子、キッチンにて
0:
千代子:「何故こうなった?」
0:
千代子:(M)私の彼が唐突にこう言い放った。
千代子:「生すぎる生チョコが欲しい!」…と。
千代子:もちろん知ってるよ!? 生チョコ!
千代子:作り方もネットで調べてバッチリ!
千代子:…だけど… 「生すぎる」って何だよ!?
千代子:ハッキリ言って訳が分からん!
千代子:だけど私は…彼が大好きだから挑戦してみることにしたの。
0:
千代子:(M)生チョコは、チョコレートと生クリーム…
千代子:生すぎる感じにするには…生っぽい物をとにかく入れてみるしかない。
千代子:とりあえず、生魚、生肉、生卵、生牡蠣(なまがき)、生絞りジュース、生姜(しょうが)…
千代子:蜜蝋(みつろう)は…生っぽいロウソクだから、とりあえず用意。
千代子:後は…使わないだろうけど、生コンクリートに、なまはげの面…
千代子:何だろう…これだけの物を揃えたら、何だか悪魔召喚の儀式が出来そうな気がしてきた…
千代子:そして…なんやかんや、やってたら… こうなった。
0:千代子、キッチンの上に完成したチョコを見下ろす。
千代子:「このチョコ…人の顔に見えるんですけど…?」
時臣:「ちらっ…」
千代子:「ひっ…! 今…なんか…」
時臣:「じろり」
千代子:「チョコがこっち見た!」
時臣:「おう、ねーちゃん。」
千代子:「しゃべったぁぁぁ! チョコがぁぁぁ!」
時臣:「うるさいなぁ…ねーちゃん。噛むぞ!?」
千代子:「食べられるはずのチョコが私をぉぉぉ!」
時臣:「しかし、ねーちゃんデカいな…身長、何メートルあるのよ?」
千代子:「147センチですが…!?」
時臣:「そんなハズ無いだろ! おっさんの身長180センチあるんよ?」
千代子:「今のあなたの全長は18センチ前後です!」
時臣:「10分の1かぁ…小さくなってまぁ…」
千代子:「驚かないんですか!?」
時臣:「まぁ…アレよ。 おっさんは、もうオッサンだからな…滅多なことでは驚かなくなってしまったんだよ。」
千代子:「オッサンになると、驚かなくなるの!? オッサンすげぇ!」
時臣:「ねーちゃん、誰に向かって口きいてんの!?」
千代子:「え…オッサンに…?」
時臣:「あのな? おっさんも、なりたくてオッサンになった訳じゃないのね?
時臣:おっさんも若くありたいのよ! 自分で言う分には良いよ。
時臣:でもな…他人に「オッサン」って言われたら、おっさん傷つくのよ…
時臣:別に「おじさま」とか言ってくれとは言わないけどさ…
時臣:「おっちゃん」とか「おいたん」とか…もうちょっとフランクな呼び方があるでしょ?」
千代子:「(小声で)うわぁ…このオッサン…めんどくさい…」
時臣:「ちょちょちょ、小声で言っても聞こえるからね?」
千代子:「失礼しました。 では、張り切って、お帰り下さい。」
時臣:「おっさん、帰り方を知らないのだけど?」
千代子:「じゃ、なんでここに居るんですか?」
時臣:「分からん。 むしろ、こっちが聞きたいくらいよ。」
千代子:「えぇ…」
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時臣:「ま、袖振り合うのも何かの縁と言うし…おっさんの話を聞いてもらっても良いかな?」
千代子:「はぁ…」
時臣:「おっさんな…人生が辛くなっちゃったのよ…」
千代子:「なんだか、いきなり重苦しい話の予感…」
時臣:「高校中退で稼ぎが少ないのに、別れた妻の娘に養育費を払い続けないといけなくてね?」
千代子:「金銭的にキツいのね…」
時臣:「会社では罵られ続けて、給料は上がらない…だって高校中退だもの。」
千代子:「親の助けは無いの?」
時臣:「親の反対を押し切っての結婚をしたからね…いまさらだよ…」
千代子:「そっか…」
時臣:「だからね…おっさん、自分の人生を終わらせようと思ったのね。」
千代子:「えっ!?」
時臣:「線路で…電車が来るタイミングを見計らって…」
千代子:「ちょっと!?」
時臣:「飛び込んで、気が付いたら…ここに居ましたとさ。」
千代子:「何で!?」
時臣:「どうしてかな…おっさんも知りたいのよ。」
千代子:「はぁ…」
0:しばし間
千代子:「あの…おっさん?」
時臣:「おっちゃんな?」
千代子:「おっちゃん?」
時臣:「はい、何でしょう?」
千代子:「どうして高校中退なの?」
時臣:「学生結婚したからよ。」
千代子:「どうして学生結婚したの?」
時臣:「子供ができたからな? 責任は取らないとダメだろ?」
千代子:「そうですね。」
時臣:「ねーちゃんは、好きな人はいるのかい?」
千代子:「いますね。」
時臣:「いるんだったら気を付けないとだめだぞ? おっさんみたいになるから…」
千代子:「気を付けます。」
時臣:「おう。」
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千代子:「あの、私から聞いても良いですか?」
時臣:「おっさんが答えれる事なら何でも聞いて良いよ。」
千代子:「彼氏が生チョコを欲しがってるんですね。」
時臣:「そか、作ってあげれば良いんじゃないか?」
千代子:「生チョコであれば普通に作るんですけど…生すぎる生チョコが欲しいって言うもんで…」
時臣:「生すぎる生チョコか…」
千代子:「はい…生すぎるには、どうすれば良いものかと…?」
時臣:「普通に生チョコを作ってあげればいいんじゃないかな?」
千代子:「えっ?」
時臣:「それ、多分だけど…「生」って言いたいだけよ?」
千代子:「そんなもんなの?」
時臣:「あくまでも多分よ?
時臣:男はバカだから、面白いと思ったパワーワードは何か使いたくなるのよ。」
千代子:「おっちゃんも…そういう時期あったの?」
時臣:「あったよ…奇しくも同じ「生」ってワードに良くわからん憧れがあってね…
時臣:居酒屋に行ったりするサラリーマンへの憧れみたいなのかな、「とりあえず生」みたいなのが妙にハマった時期があってね…
時臣:気が付いたら「生なんとか~」とか言いまくってたよ。」
千代子:「そうなんだ。」
時臣:「言ってる方としては、そんなに深い意味が無いから気にする必要も無いと思うぞ?」
千代子:「そっか…」
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時臣:「おっさんからも聞いて良い?」
千代子:「あ、はい…どうぞ。」
時臣:「ねーちゃんの名前…聞いても良い?」
千代子:「私、飛騨千代子(ひだ ちよこ)って言います。」
時臣:「千代子ちゃんか…元嫁と同じ名前なんだな…」
千代子:「学生結婚した元奥さんも千代子さんって言うの?」
時臣:「そ。 苗字も同じで旧姓「飛騨千代子」…おかしな偶然もあったもんだな。」
千代子:「もしかして、私に似てたりする?」
時臣:「そうだな…よく似てる…気がするかな…」
千代子:「覚えてないの?」
時臣:「最後に会ったのは、もう15年くらい前になるからね…
時臣:思い出すと辛い事まで思い出しちゃうから…なるべく思い出さないようにいしてるんだけどね。」
千代子:「奥さんは今、何してるんですか?」
時臣:「わからんのよ…娘と暮らしてる事だけは確かだと思うが…」
千代子:「そっか…」
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千代子:「そう言えば、おっちゃんの名前は?」
時臣:「おっさんの名前か?」
千代子:「うん。」
時臣:「杉田時臣(すぎた ときおみ)」
千代子:「へぇ…私の彼氏の名前と同じだ…」
時臣:「そうか…」
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千代子:「偶然ってあるんですね。」
時臣:「そうだな。」
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千代子:「ある!? そんな偶然!?」
時臣:「無くは無いかも知れないけど…かなり少ない確率で…」
千代子:「いや無いよ! それにチョコレートに転生してくるとか、もはや偶然の域をはるかに超えてるよねぇ!?」
時臣:「そういえば!」
千代子:「ちょっと確認させて? 今、西暦何年?」
時臣:「2037年。」
千代子:「そりゃ15年後だね。 今は2022年だから。」
時臣:「通ってる学校は?」
千代子:「都立海浜学園。」
時臣:「確かに、おっさんの通ってた高校だ。 今は無くなって病院になってる。」
千代子:「母校無くなること確定かよ!?
千代子:当時のクラスは…3年何組?」
時臣:「3組。 担任のアダ名は?」
千代子:「ハゲた諸見沢…略してハゲ見沢!」
時臣:「…これは…」
千代子:「うん、間違いない。」
時臣:「おっさん…タイムスリップしてきてるわ。」
千代子:「しかも、よりにもよって私の作ったチョコレートに!?」
時臣:「おぉ…」
0:間
千代子:「…って事は…私…学生結婚するの!?」
時臣:「まぁ…そうなるな…」
千代子:「子供ができて…学校を去るの?」
時臣:「おっさんと一緒に…な。」
千代子:「私…どうなったの?」
時臣:「親に散々心配をかけて…駆け落ち?」
千代子:「ウソでしょ…? その後は?」
時臣:「バイトで食い繋いで…子供が生まれた一年後に離婚。」
千代子:「嫌だよ? そんな未来?」
時臣:「おっさんも、後悔してる。」
千代子:「仮によ? 大学を卒業して、しっかり就職してからの結婚だと…話は変わる?」
時臣:「そうだなぁ…おっさん、頭は良かったからなぁ…」
千代子:「時臣君、そんなに成績良かったの!? 喋り方アホっぽいのに!?」
時臣:「その言葉、すっごい失礼よ?」
千代子:「すみません。」
時臣:「まぁ…否定できないけど…」
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千代子:「とりあえず…どうしたら、その未来を回避できると思う?」
時臣:「そうだなぁ…「生」発言を改めることができたら変わるかと…」
千代子:「あぁー… そう言う?」
時臣:「まぁ…そう言う感じ?」
0:短い間
千代子:「オッサン…最低だね…」
時臣:「返す言葉もございません。」
千代子:「…で?
千代子:どうされたら言う事聞く?」
時臣:「まぁ…」
千代子:「どうされたい?」
時臣:「おっさん、Mじゃないので…どうされたいと言う希望は無いけど…」
千代子:「どうされたら、言う事聞くの?」
時臣:「汚いものを見るような目で、『最低だな…お前』と言って頂ければ…」
千代子:「ほう?」
時臣:「お願いします。」
千代子:「分かった。 私も明るい未来がほしいからね…頑張ってみるわ。
千代子:でも、おっちゃんは…この後どうするの?」
時臣:「あー…それなんだけどね?」
千代子:「帰る方法が解ったの?」
時臣:「おっさん、なんか消えかかってるみたいなのよ?」
千代子:「何で急に!?」
時臣:「どうも未来が変わってるみたいで…多分、今のおっさんは消えて無くなって…新しい、おっさんに変わろうとしてるんだと思う。」
千代子:「すでに、人間として古くなってるから「おっさん」のはずなのに…新しいとは?」
時臣:「言うなよ… あと、おっさんって言うなって…最後の最後に…悲しくなるだろ…?」
0:
千代子:(M)そう言うと、おっちゃん…いや、年老いた時臣君はチョコレートから居なくなった。
千代子:悲しそうな顔のチョコレートを残して… 私は…
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千代子:「デスマスクみたいだわ…」
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千代子:(M)そう呟いて…生チョコを、口に入れた。
千代子:正直…生臭かった。
千代子:次の日、相変わらず『生』発言を繰り返す、フレッシュな時臣君に私は…
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千代子:「はっ…最低だな…お前…?」
0:
千代子:(M)と言う、私らしからぬ発言により『生』発言は終息を迎えた。
千代子:元来、時臣君はまじめな性格なんだろう…そこからは、非の打ちどころの無い真面目な時臣君になった。
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千代子:数日後…
0:
時臣:(若い時臣で)「千代子、俺…千代子のチョコレート欲しいな…」
千代子:「生チョコ?」
時臣:「千代子がくれるチョコなら何でも欲しいよ!」
千代子:「…もう…しょうがないなぁ…」
0:
千代子:(M)そうして私は…ハート形のチョコを作った。
千代子:しかし…
千代子:何故こうなった?
0:短い間
時臣:「あの…おっさんな…今、重大な問題を抱えてるのよ…」
千代子:「もしかして…時臣君?」
時臣:「何で分かったの?」
千代子:「うん…前にも、こんな事あったから…」
時臣:「そうか…」
千代子:「で? 今度は何?」
時臣:「おっさん真面目に生き過ぎて…結婚した今でも手を握れないのだけど…どうしたら良いと思う?」
千代子:「えぇぇ…
千代子:…分かった。 結婚したら私の方から行くから…安心しなさい。」
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千代子:(M)そう言って私は…時臣君をモリモリと、ほおばった。
千代子:問題は、まだまだ山積みなのだろう。
千代子:私は定期的にチョコを作ろうと思った。
千代子:きっと節目には…オッサンになった時臣君が現れるだろうから。
千代子:幸せな未来を掴み取る為には…きっと、もう少し努力が必要なのだろう…
0:翌日
千代子:(M)次の日…私は時臣君に板チョコを、そのまま渡した。
千代子:見ると…板チョコが何か盛り上がってる気が…
時臣:「ちょっといいか? おっさんなぁ…困った事があるのよ?」
千代子:(M)意外と節目は細かく来るらしい…
0:
0:おしまい