台本概要

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タイトル 狂花書【きょうかしょ】
作者名 ふらん☆くりん  (@Frank_lin01)
ジャンル ホラー
演者人数 3人用台本(女2、不問1)
時間 30 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【あらすじ】
いつもの何気ない日常は、ある一冊の本との出会いで狂っていく...。

【著作権について】
本作品の著作権は全て作者である「ふらん☆くりん」に帰属します。
また、いかなる場合であっても当方は著作権の放棄はいたしません。

【禁止事項】
●商業目的での利用
●台本の無断使用、無断転載、自作発言等
●過度なアドリブ、セリフの大幅な改変等

【ご利用に際してのお願い】
●台本の利用に際しては作者X(旧ツイッター)DMに連絡をお願いいたします。
●配信等で利用される場合は①作品名、②作者名、③台本掲載URLを掲示していただけると嬉しいです。
●たくさんの方の演技を聴きに行きたいので、可能であれば告知文にメンションを付けていただけると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
みどり 115 鈴木みどり。優香と同じクラスメイト。明るくてしっかり者。
優香 82 木村優香(ゆうか)。みどりの親友。優しい性格。
ナレーション 不問 36 『魅惑の花図鑑』の音声ナレーション。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:『*狂花書《きょうかしょ》』 : 登場人物: みどり:*鈴木 みどり《すずき みどり》・・・優香と同じクラスメイト。明るくてしっかり者。 優香:*木村 優香《きむら ゆうか》・・・みどりの親友。優しい性格。 ナレーション:『魅惑の花図鑑』の音声ナレーション。 :※劇中の*捧仙花《ほうせんか》の音色は鈴の音のSEがあれば良いですが、なければナレーションが兼役してください :※(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声になります。 : 本編: みどり:ちょっと優香!あんたまた赤点取ったんだって? 優香:ギクッ…どこからその情報を?: みどり:あのね、私の情報網を舐めないでくれる?学校で起きてることなら大概のことはすぐに私の耳に入ってくるんだからね! 優香:はわわわ…おそろしや。許してつかぁさいみどり様…。 みどり:はぁ、まったくあんたって子は!少しは踏ん張んなさいよ。せっかくこないだ付きっきりで勉強教えてあげたのに。 優香:そんなこと言われたってさぁ…いくら詰め込んでも私の脳内CPUじゃ到底処理しきれんのよ。 みどり:どんな頭してんだか。まあいいわ、こうなったら私が今日から優香を徹底的にしごいてあげるわ。 優香:いやぁ…遠慮しときます。 みどり:なに言ってんのよ。今回優香が赤点取ったのは教えた私にも責任があるんだからね。 優香:そんなことないよ。みどりは私のために一生懸命教えてくれたじゃない。悪いのはみどりの期待に応えられなかった私の方だよ。 みどり:ほほう?その様子だと少しは反省してるのかな? 優香:そ、そりゃ反省してるよ。でもね、私バカだからいくら勉強してもちっとも頭に入ってこなくて。こんなんじゃ彼にも振り向いてもらえないよ…うう。 みどり:よしよし、めそめそしないの。あんたには野球部のエース*高木 正樹《たかぎ まさき》君のハートをGETするっていう大きな野望があるんでしょ! 優香:うん…でも私なんかじゃ…。 みどり:こら!そこで諦めてどうすんのよ!私はね、前に優香が高木君と付き合いたいから力を貸してって相談してくれた時、めちゃくちゃ嬉しかったんだよ。ついに優香が私のことを親友として認めてくれたんだぁって思ってさ。 優香:…ほんと? みどり:うん!だからさ、一緒に頑張ろうよ。 優香:…みどりぃ!!ありがとう!!私、頑張るよ! みどり:良き良き!その調子だそ!じゃあ今日うちにおいでよ。一緒に勉強しよ。 優香:え!いいの? みどり:もちろん!優香のためだもの! 優香:行く行く! みどり:じゃあ今日の夜6時にうちに来て。 優香:うん!楽しみにしてるね! みどり:じゃあまた後でね!ばいばーい! 優香:ばいばーい! : :【 みどりの家 】 優香:(ピンポーン)ごめんください、優香です。 みどり:優香!待ってたよ!さぁ上がって上がって! 優香:お邪魔します。 みどり:優香!こっちこっち! 優香:ちょっと、引っ張らないでよ。 みどり:じゃーん!見て見て!私の部屋イメチェンしてみたんだ!どう? 優香:わぁ!壁紙がピンク色になってて、可愛いぬいぐるみがこんなに!とっても素敵だね。 みどり:でしょでしょ?優香をびっくりさせようと思って前々からせっせと模様替えしてたんだ。 優香:じゃあ私を今日ここに呼んだのって…まさか。 みどり:ピンポーン!完成したお部屋を優香にお披露目するためでーす! 優香:えー!なんだよーそれ…。てっきり今日はみどりの部屋に監禁されて地獄の勉強三昧かとビクビクして来たのにぃ…。 みどり:驚かせちゃってごめんね。でも半分は正解。お勉強はちゃんとするよ。 優香:げっ! みどり:げっ!じゃないの。ほら優香、ここ座って。 優香:はぁ…まあ仕方ないか。よいしょっと。じゃあみどり先生、よろしくお願いします。 みどり:うんうん!まっかせなさーい! 優香:このテンションの高さが逆に怖い…。 みどり:大丈夫だって。優香が分かるように教えるからさ。 優香:お手柔らかにお願いします…。 みどり:はいよ。じゃあまずは苦手な数学からやろっか。 優香:うん。 みどり:優香ってさ、参考書とか何使ってるの? 優香:えっと…私はこれかな。 みどり:あー…『数学入門』かぁ。これ良い参考書ではあるんだけどね、ある程度の知識が付いてからじゃないと厳しいかなぁ。ほら、ここの解説もさ、今の優香にとって一番欲しい部分の説明がまるまる抜け落ちてるでしょ? 優香:あー、ほんとだ。 みどり:入門と言いながらも対象レベルは中級以上なのよ。 優香:なるほどね…だから何書いてるのか全然分かんなかったんだ。 みどり:えっとね、優香のレベルだと…これなんかどうかな?成功出版社から出てる『ベースアップ数学』。 優香:どれどれ…わぁ!めっちゃ詳しく解説が書いてある。ふむふむ…そう!ここの所がずっと分からなくて先に進めなかったの! みどり:そっかぁ…となると、今まで優香が勉強できなかったのはもしかしたら参考書選びを間違えていたからかもしれないね。 優香:そうなのかなぁ。あ、でもたしかに買ってはみたものの、全然分かんなかったから部屋の隅に積んだままになってた。 みどり:じゃあさ、今度一緒に本屋さん行こうよ。私が優香に合う参考書見繕ってあげるからさ。 優香:ほんと!めっちゃ嬉しい!ありがとうみどり!本当に頼りになるよ。 みどり:でしょー!これからも何でも相談してね。 優香:うん!ありがとう! みどり:じゃあとりあえず今日は私が詳しく解説しながらやっていくから着いてきてね。 優香:分かった!: : :【 一時間後 】 優香:はぁー!終わったぁ! みどり:優香、お疲れ様。よく頑張ったね!えらいぞ! 優香:みどりのおかげでめちゃめちゃ*捗《はかど》ったよ。 みどり:だんだん分かってくると面白いでしょ? 優香:うん!私の脳内CPUも捨てたもんじゃないね。 みどり:あはは!なんだそりゃ。あのさ、優香はね、本当は賢い子なんだよ。 優香:そんなことないよ。 みどり:ううん。私、ずっと見てて思うもん。優しくていろんなことに気が付くし、何より感情表現が豊かで周りにいる人たちをほっこりさせる能力があるの。 優香:えへへ…そうかなぁ…。 みどり:私ね、優香と親友になれて本当に幸せだよ。 優香:嬉しい…私もだよみどり。いつも私を応援してくれてありがとう。 みどり:うん!私も優香の力になれて嬉しいよ。これからもずっと親友でいてね。 優香:もちろんだよ。私たちずっと親友だよ。 みどり:あははは〈同時に〉 優香:うふふふ〈同時に〉 : 優香:あ、もうこんな時間。私そろそろ晩御飯だから帰らないと。 みどり:えー、うちで食べてけばいいのに。 優香:ありがとう。でも今日は家で食べるってお母さんに言ってあるから。 みどり:そっか、分かった。玄関まで送るよ。 優香:ありがとう。 みどり:じゃあまた明日学校で会おうね。 優香:うん!また明日ね!おやすみなさい。 みどり:おやすみ~!…さてと、テレビでも見ようかなって…ん?ポストに何か入ってる。私宛ての封書だ。えーっと差出人は『*精神能力開発《せいしんのうりょくかいはつ》センター』?うーん、心当たりは無いけど何かの参考書かな? : みどり:(M)部屋に持ち帰って封を切ると、中から『魅惑の花図鑑』と書かれた一冊の本が出てきた。 : みどり:へえ…綺麗な本ね!面白そう!どれどれ…。 ナレーション:『魅惑の花図鑑』へようこそ!この世界には、あなたの知らない不思議な魅力を持った花たちが存在するのです。さぁ、ページをめくって私と一緒に不思議な花を巡る旅に出かけましょう。 みどり:わぁ、本から声が出るんだ!本格的ね!なんかワクワクしてきた。早速めくってみようっと! ナレーション:まずはこちらを紹介します。花名 『*幽幻花《ゆうげんか》』。この花は、とあるジャングルの奥地に生息しており…。 みどり:へぇ、水色の可愛いお花ね。…あら?本から良い香りがする。 ナレーション:精神をリラックスさせる香りを出してあらゆる生物を心地良い世界へと誘う能力を持っています。それでは実際に嗅いでみましょう。鼻から大きく息を吸ってぇ…。 みどり:すぅー……あぁ…とっても素敵な香り…。 ナレーション:どうですか?何だかふわふわした気持ちになって来たでしょう? みどり:…ほんとだ…心が安らかになって…ふわふわ…雲の上にいるみたい…。 ナレーション:気持ち良いでしょう?…さぁもう一度…吸ってぇ…。 みどり:すぅー……。 ナレーション:どうですか?…だんだん頭に白い霧がかかって来たでしょう? みどり:はぁぁ…白い霧が…広がって…気持ちいい…。 ナレーション:もう一度…吸ってぇ…。 みどり:すぅー……。 ナレーション:もう何も考えられなくなっていきます…そのまま心地良さに身を委ねて…。 みどり:ふぁぁ……♡ ナレーション:眠ってしまいましょう…。 みどり:すぅ…すぅ…。 ナレーション:続きはまた明日…おやすみなさい…花が咲くまであと4つ…。 : :【 翌日 】 みどり:ん…んん、あ、あれ?私いつの間に寝ちゃったの?えーっと、昨日は花の図鑑を楽しんでたら眠たくなって…うふふ…思い出しただけで心が安らぐわ。さてと、学校行く準備しなきゃ。あ、優香からメールだ。 優香:『みどり、昨日はありがとう!おかげで勉強が好きになれそうだよ。今度参考書探し手伝ってね』 みどり:昨日?あれ…私何かしたっけ?…まあいっか。学校行ってこようっと。 : :【 学校 】 優香:みどり、おはよう! みどり:あ、優香、おはよう! 優香:昨日はほんとありがとね!みどりのおかげでだいぶ分かるようになったよ。 みどり:そ、そうなんだ。それは良かったわ。(うーん、やっぱり思い出せない…) 優香:みどり?どうしたの? みどり:え?ああ、なんでもないの。ちょっと考え事。 優香:そう。ならいいけど。 みどり:それよりさ、優香最近どうなの?高木君には告白したの? 優香:え?こ、告白なんてそんな…まだ話しかけられもしないのに。 みどり:はぁ、そっかぁ。まだまだ道のりは遠そうだね。 優香:うぅ…。 みどり:よしよし、まあぼちぼち頑張んなさいよ。 優香:そんなぁ…。 みどり:あはは、冗談だってば。 優香:もう、みどりの意地悪…。 みどり:ごめんごめん。何かあったら相談に乗るよ。 優香:うぅ…ありがとう。 みどり:ほら泣かないの。授業始まっちゃうよ。 優香:うん。またね。 みどり:うん。 : みどり:(M)優香の言う『昨日のこと』については気になったが、授業に集中するうちにいつの間にか頭から消えていた。 : 優香:みどり!今日も一日お疲れ様ぁ。 みどり:優香、おつかれ~。 優香:ねぇ、昨日言ってた本屋さん、いつ行けそう? みどり:本屋さん?え、えっと…私そんな約束したっけ? 優香:またまたご冗談を!みどりが提案してくれたんだよ。私に合う参考書見繕ってくれるって。 みどり:え、そう…だったかな。ごめんね、昨日疲れて寝ちゃってあんまり覚えてなくて。 優香:そうなんだ…みどり無理してんじゃない? みどり:無理…かぁ。もしかしたら知らない間に無理しちゃってるのかもね。 優香:今日は早く帰ってゆっくりしなよ。 みどり:…うん。ありがとう。そうするよ。本屋さんの件はまた連絡するね。じゃあそろそろこの辺で。また明日ね! 優香:うん!楽しみに待ってる。また明日! みどり:ばいばーい!〈同時に〉 優香:ばいばーい!〈同時に〉 : :【 みどりの家 】 みどり:あー…今日も一日疲れたぁ…。さてさて、お待ちかねのお楽しみターイム ♪ よいしょっと、今日はどんなお花に会えるかな~♪ ナレーション:こんばんは。今日も私と一緒に不思議なお花を巡る旅に出掛けましょう。 みどり:はーい。 ナレーション:まずは昨日のおさらいから。2ページを開いてください。 みどり:2ページね。そうそう、この『*幽玄花《ゆうげんか》』の香りめっちゃ素敵なんだよね ナレーション:まずはこの花の香りを嗅いで心をリラックスさせましょう。鼻から大きく息を吸ってぇ…。 みどり:すぅー……あぁ、これこれ…この香りよぉ…♡ ナレーション:ふわふわした気持ちになっていきます… みどり:…うん……ふわふわ……気持ち良い…。 ナレーション:それでは、そのまま次のページを開いてください…。 みどり:…はい。 ナレーション:今日紹介する花はこちらです。花名『*淡光花《たんこうか》』。日も当たらない真っ暗な洞窟の奥にひっそりと咲くこの花は、自ら淡い光を放ち、見る者の心を掴んで離さなくなります。さぁ…花をじっと見つめてください…。 みどり:わぁ…優しい紫色の光…きれい…。 ナレーション:そのまま私の言葉に耳を傾けてください…。 みどり:…はい。 ナレーション:この光を見つめていると、あなたはだんだん花のことしか考えられなくなっていきます。 みどり:…お花…ずっと…好きぃ…。 ナレーション:そして、他の事はどうでもよくなっていきます。 みどり:…どうでも…いい…。 ナレーション:このままずっとこの光に包まれていたくなっていきます。 みどり:淡い…光…ずっと…すてき…。 ナレーション:さぁ…この光に包まれながら今日もゆっくりおやすみなさい…。 みどり:おやすみ…。 ナレーション:この続きはまた明日。花が咲くまであと3つ。 : :【 翌日 】 みどり:ん、うーん…あ、また寝ちゃってた。おはよう、私の可愛いお花さんたち。今日もお外は良い天気だよ。あ…もうこんな時間、学校行かなきゃ…学校…いっか、休んじゃえ。(プルルル)あ、もしもし先生ですか、鈴木みどりです。すみません、今日ちょっと熱っぽくてふらふらするので学校休ませてください…はい…ありがとうございます。失礼します。(ガチャ)うふふ…休んじゃった。これで今日はずっと一緒にいられるね。 : 優香:今日みどりは学校お休みかぁ…心配だから電話してみようかな。 みどり:あは♡…早く次のお花に会いたいわ♡ 優香:(プルルル…)寝てるかな? みどり:はい…。 優香:あ、みどり!大丈夫?熱出してふらふらするって聞いて心配だったから電話したんだ。 みどり:ありがとう優香…でもごめん…今ちょっとしんどいから。 優香:あ、そうだよね。ごめん、すぐ切るからね。あの…放課後さ、心配だからお見舞い行ってもいい? みどり:いや…そういうのいいから。 優香:でも宿題のプリントとかあるから持って行くよ…。 みどり:だからいいって!ほっといてよ!!(ガチャ) 優香:あ…電話切られちゃった…。相当しんどいのかな。仕方ない、しばらくはそっとしておくか。 みどり:あー!イラつく!…あ、ごめんね、大きな声出しちゃって。びっくりさせちゃったよね。もう大丈夫よ。ねぇ…今日も私を素敵なお花の世界に連れてって。 ナレーション:おはようございます。今日も来てくれたんですね。ありがとうございます。さぁ、私と一緒に不思議なお花の世界に旅立ちましょう。 みどり:…あぁ、もう待ちきれないわ♡ ナレーション:では、3ページを開いてください。 みどり:…はい。 ナレーション:今日紹介するのはこちらです。花名『*捧仙花《ほうせんか》』。この花は綺麗な湖のほとりでしか生きられないとっても儚い花で、夜になるとそれはそれは心地良い音色を出して聴く者をたちまち虜にしてしまいます。さぁ…耳を澄ましてよぉく聴いてみてください。 捧仙花:リリーン…リリーン…。〈できれば鈴のSEが望ましい〉 みどり:…なんて素敵な音色…あぁ…どんどん心が洗われていくわ…。 ナレーション:この音を聴いていると、だんだん心が空っぽになっていきます。 捧仙花:リリーン…リリーン…。〈できれば鈴のSEが望ましい〉 みどり:…こころ……まっさら……ぁぁ…。 ナレーション:はい、これであなたの心は完全に空っぽになりました。花が咲くまであと2つ。 みどり:…。 ナレーション:それではページをめくってください。 みどり:ハイ…。 ナレーション:次に紹介するのはこちらのお花です。花名『*染心花《せんしんか》』。この花は深い谷底にひっそりと咲く花で、その蜜を飲むとあなたの心は私の思うがままの色に染まります。さぁ本の中から小瓶を取り出して飲んでみましょう。 みどり:…ハイ。(ゴク)…!?アァ…ココロガどんどん赤く染まっていく!!あぁぁぁ…! ナレーション:今のご気分はいかがですか…? みどり:あははは…最高♡ 心の奥底から全てをぐちゃぐちゃにしたい衝動が湧き上がってくるわ! ナレーション:よろしい。これであなたの心は真っ赤に染まりました。さて、花が咲くまであと一つ…。 みどり:うふふふ…ぺろっ♡〈舌なめずり〉 ナレーション:では、いよいよ最後のページに行きましょう。めくってください。 みどり:あは♡ … ウズウズしちゃう♡…楽しみだわ! ナレーション:最後に紹介するお花はこちらです。花名『*誕変花《たんぺんか》』。この花は闇の大地にのみ咲くと言われる幻の花で、その身を食べるとあなたの体は完全に我らと同じ存在に成り果てます。みどりさん…最後の花の味、存分に味わってください。 みどり:はい♡ いただきまーす。(もぐもぐゴクン)…あ、あぁぁ!身体が熱くなって!私の身体がカワッテイク!!ハァァ!!ステキィ!!アハ、アハハハハハ!! ナレーション:ようこそ…素敵な世界へ。みどりさん、我々はあなたを歓迎します。 みどり:ウフフ…光栄デスワ。オヤカタサマ♡ : 優香:はぁ…今日はみどりが休みだったから学校つまんなかったなぁ。みどりからは来ないでって言われてたけど、やっぱり心配だから行ってみよう。 : 優香:(ピンポーン)みどり、ごめんね。心配だから来ちゃった。 みどり:…あら優香、来てくれたの?いらっしゃい。どうぞ入って。 優香:え…?う、うん。お邪魔します。あの…みどり、もう元気になったの? みどり:ええ…ゆっくり寝たらすっかり良くなったわ。さぁ、上がって。 優香:ありがとう。 みどり:今日は電話口で怒鳴ったりしてごめんね。せっかく優香が心配してくれたのに。 優香:ううん。私もみどりがしんどい時に電話してごめんね。 みどり:いいのよ。それよりさ、最近とっても素敵なアロマを手に入れたんだ。一緒に楽しまない? 優香:えー!そうなんだ!うん、楽しむ!どんなアロマなんだろー! みどり:これなんだけどね。 優香:(くんくん)わぁ…良い香り…。 みどり:これはね、『*幽玄花《ゆうげんか》』って言ってね、とってもリラックスできるんだよ。 優香:…うん…なんか…ふわふわ…してきた…。 みどり:さぁ優香、一緒に堪能しましょう。鼻から大きく息を吸ってぇ…。 優香:すぅー……ふぁぁ…すてきぃ…とっても…気持ちいい…。 みどり:うふふ…そうでしょう?あのね、今日は私が優香に素敵な参考書をプレゼントしてあげる。 優香:…ん?…さんこうしょ…? みどり:これよ。『魅惑の花図鑑』っていうの。 優香:…みわくの…はなずかん…? みどり:そう。今の優香にピッタリだと思って。 優香:…ありがとう…うれしい…ふふふ…。 みどり:さぁ…優香、あなたも素敵な世界に旅立ちましょう…。 優香:…すてきなせかい…うん…いきたい……つれてって…。 : ナレーション:(M)花は可憐に咲き乱れる。いつか世界が真っ赤に染まるまで。 : :~完~

タイトル:『*狂花書《きょうかしょ》』 : 登場人物: みどり:*鈴木 みどり《すずき みどり》・・・優香と同じクラスメイト。明るくてしっかり者。 優香:*木村 優香《きむら ゆうか》・・・みどりの親友。優しい性格。 ナレーション:『魅惑の花図鑑』の音声ナレーション。 :※劇中の*捧仙花《ほうせんか》の音色は鈴の音のSEがあれば良いですが、なければナレーションが兼役してください :※(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声になります。 : 本編: みどり:ちょっと優香!あんたまた赤点取ったんだって? 優香:ギクッ…どこからその情報を?: みどり:あのね、私の情報網を舐めないでくれる?学校で起きてることなら大概のことはすぐに私の耳に入ってくるんだからね! 優香:はわわわ…おそろしや。許してつかぁさいみどり様…。 みどり:はぁ、まったくあんたって子は!少しは踏ん張んなさいよ。せっかくこないだ付きっきりで勉強教えてあげたのに。 優香:そんなこと言われたってさぁ…いくら詰め込んでも私の脳内CPUじゃ到底処理しきれんのよ。 みどり:どんな頭してんだか。まあいいわ、こうなったら私が今日から優香を徹底的にしごいてあげるわ。 優香:いやぁ…遠慮しときます。 みどり:なに言ってんのよ。今回優香が赤点取ったのは教えた私にも責任があるんだからね。 優香:そんなことないよ。みどりは私のために一生懸命教えてくれたじゃない。悪いのはみどりの期待に応えられなかった私の方だよ。 みどり:ほほう?その様子だと少しは反省してるのかな? 優香:そ、そりゃ反省してるよ。でもね、私バカだからいくら勉強してもちっとも頭に入ってこなくて。こんなんじゃ彼にも振り向いてもらえないよ…うう。 みどり:よしよし、めそめそしないの。あんたには野球部のエース*高木 正樹《たかぎ まさき》君のハートをGETするっていう大きな野望があるんでしょ! 優香:うん…でも私なんかじゃ…。 みどり:こら!そこで諦めてどうすんのよ!私はね、前に優香が高木君と付き合いたいから力を貸してって相談してくれた時、めちゃくちゃ嬉しかったんだよ。ついに優香が私のことを親友として認めてくれたんだぁって思ってさ。 優香:…ほんと? みどり:うん!だからさ、一緒に頑張ろうよ。 優香:…みどりぃ!!ありがとう!!私、頑張るよ! みどり:良き良き!その調子だそ!じゃあ今日うちにおいでよ。一緒に勉強しよ。 優香:え!いいの? みどり:もちろん!優香のためだもの! 優香:行く行く! みどり:じゃあ今日の夜6時にうちに来て。 優香:うん!楽しみにしてるね! みどり:じゃあまた後でね!ばいばーい! 優香:ばいばーい! : :【 みどりの家 】 優香:(ピンポーン)ごめんください、優香です。 みどり:優香!待ってたよ!さぁ上がって上がって! 優香:お邪魔します。 みどり:優香!こっちこっち! 優香:ちょっと、引っ張らないでよ。 みどり:じゃーん!見て見て!私の部屋イメチェンしてみたんだ!どう? 優香:わぁ!壁紙がピンク色になってて、可愛いぬいぐるみがこんなに!とっても素敵だね。 みどり:でしょでしょ?優香をびっくりさせようと思って前々からせっせと模様替えしてたんだ。 優香:じゃあ私を今日ここに呼んだのって…まさか。 みどり:ピンポーン!完成したお部屋を優香にお披露目するためでーす! 優香:えー!なんだよーそれ…。てっきり今日はみどりの部屋に監禁されて地獄の勉強三昧かとビクビクして来たのにぃ…。 みどり:驚かせちゃってごめんね。でも半分は正解。お勉強はちゃんとするよ。 優香:げっ! みどり:げっ!じゃないの。ほら優香、ここ座って。 優香:はぁ…まあ仕方ないか。よいしょっと。じゃあみどり先生、よろしくお願いします。 みどり:うんうん!まっかせなさーい! 優香:このテンションの高さが逆に怖い…。 みどり:大丈夫だって。優香が分かるように教えるからさ。 優香:お手柔らかにお願いします…。 みどり:はいよ。じゃあまずは苦手な数学からやろっか。 優香:うん。 みどり:優香ってさ、参考書とか何使ってるの? 優香:えっと…私はこれかな。 みどり:あー…『数学入門』かぁ。これ良い参考書ではあるんだけどね、ある程度の知識が付いてからじゃないと厳しいかなぁ。ほら、ここの解説もさ、今の優香にとって一番欲しい部分の説明がまるまる抜け落ちてるでしょ? 優香:あー、ほんとだ。 みどり:入門と言いながらも対象レベルは中級以上なのよ。 優香:なるほどね…だから何書いてるのか全然分かんなかったんだ。 みどり:えっとね、優香のレベルだと…これなんかどうかな?成功出版社から出てる『ベースアップ数学』。 優香:どれどれ…わぁ!めっちゃ詳しく解説が書いてある。ふむふむ…そう!ここの所がずっと分からなくて先に進めなかったの! みどり:そっかぁ…となると、今まで優香が勉強できなかったのはもしかしたら参考書選びを間違えていたからかもしれないね。 優香:そうなのかなぁ。あ、でもたしかに買ってはみたものの、全然分かんなかったから部屋の隅に積んだままになってた。 みどり:じゃあさ、今度一緒に本屋さん行こうよ。私が優香に合う参考書見繕ってあげるからさ。 優香:ほんと!めっちゃ嬉しい!ありがとうみどり!本当に頼りになるよ。 みどり:でしょー!これからも何でも相談してね。 優香:うん!ありがとう! みどり:じゃあとりあえず今日は私が詳しく解説しながらやっていくから着いてきてね。 優香:分かった!: : :【 一時間後 】 優香:はぁー!終わったぁ! みどり:優香、お疲れ様。よく頑張ったね!えらいぞ! 優香:みどりのおかげでめちゃめちゃ*捗《はかど》ったよ。 みどり:だんだん分かってくると面白いでしょ? 優香:うん!私の脳内CPUも捨てたもんじゃないね。 みどり:あはは!なんだそりゃ。あのさ、優香はね、本当は賢い子なんだよ。 優香:そんなことないよ。 みどり:ううん。私、ずっと見てて思うもん。優しくていろんなことに気が付くし、何より感情表現が豊かで周りにいる人たちをほっこりさせる能力があるの。 優香:えへへ…そうかなぁ…。 みどり:私ね、優香と親友になれて本当に幸せだよ。 優香:嬉しい…私もだよみどり。いつも私を応援してくれてありがとう。 みどり:うん!私も優香の力になれて嬉しいよ。これからもずっと親友でいてね。 優香:もちろんだよ。私たちずっと親友だよ。 みどり:あははは〈同時に〉 優香:うふふふ〈同時に〉 : 優香:あ、もうこんな時間。私そろそろ晩御飯だから帰らないと。 みどり:えー、うちで食べてけばいいのに。 優香:ありがとう。でも今日は家で食べるってお母さんに言ってあるから。 みどり:そっか、分かった。玄関まで送るよ。 優香:ありがとう。 みどり:じゃあまた明日学校で会おうね。 優香:うん!また明日ね!おやすみなさい。 みどり:おやすみ~!…さてと、テレビでも見ようかなって…ん?ポストに何か入ってる。私宛ての封書だ。えーっと差出人は『*精神能力開発《せいしんのうりょくかいはつ》センター』?うーん、心当たりは無いけど何かの参考書かな? : みどり:(M)部屋に持ち帰って封を切ると、中から『魅惑の花図鑑』と書かれた一冊の本が出てきた。 : みどり:へえ…綺麗な本ね!面白そう!どれどれ…。 ナレーション:『魅惑の花図鑑』へようこそ!この世界には、あなたの知らない不思議な魅力を持った花たちが存在するのです。さぁ、ページをめくって私と一緒に不思議な花を巡る旅に出かけましょう。 みどり:わぁ、本から声が出るんだ!本格的ね!なんかワクワクしてきた。早速めくってみようっと! ナレーション:まずはこちらを紹介します。花名 『*幽幻花《ゆうげんか》』。この花は、とあるジャングルの奥地に生息しており…。 みどり:へぇ、水色の可愛いお花ね。…あら?本から良い香りがする。 ナレーション:精神をリラックスさせる香りを出してあらゆる生物を心地良い世界へと誘う能力を持っています。それでは実際に嗅いでみましょう。鼻から大きく息を吸ってぇ…。 みどり:すぅー……あぁ…とっても素敵な香り…。 ナレーション:どうですか?何だかふわふわした気持ちになって来たでしょう? みどり:…ほんとだ…心が安らかになって…ふわふわ…雲の上にいるみたい…。 ナレーション:気持ち良いでしょう?…さぁもう一度…吸ってぇ…。 みどり:すぅー……。 ナレーション:どうですか?…だんだん頭に白い霧がかかって来たでしょう? みどり:はぁぁ…白い霧が…広がって…気持ちいい…。 ナレーション:もう一度…吸ってぇ…。 みどり:すぅー……。 ナレーション:もう何も考えられなくなっていきます…そのまま心地良さに身を委ねて…。 みどり:ふぁぁ……♡ ナレーション:眠ってしまいましょう…。 みどり:すぅ…すぅ…。 ナレーション:続きはまた明日…おやすみなさい…花が咲くまであと4つ…。 : :【 翌日 】 みどり:ん…んん、あ、あれ?私いつの間に寝ちゃったの?えーっと、昨日は花の図鑑を楽しんでたら眠たくなって…うふふ…思い出しただけで心が安らぐわ。さてと、学校行く準備しなきゃ。あ、優香からメールだ。 優香:『みどり、昨日はありがとう!おかげで勉強が好きになれそうだよ。今度参考書探し手伝ってね』 みどり:昨日?あれ…私何かしたっけ?…まあいっか。学校行ってこようっと。 : :【 学校 】 優香:みどり、おはよう! みどり:あ、優香、おはよう! 優香:昨日はほんとありがとね!みどりのおかげでだいぶ分かるようになったよ。 みどり:そ、そうなんだ。それは良かったわ。(うーん、やっぱり思い出せない…) 優香:みどり?どうしたの? みどり:え?ああ、なんでもないの。ちょっと考え事。 優香:そう。ならいいけど。 みどり:それよりさ、優香最近どうなの?高木君には告白したの? 優香:え?こ、告白なんてそんな…まだ話しかけられもしないのに。 みどり:はぁ、そっかぁ。まだまだ道のりは遠そうだね。 優香:うぅ…。 みどり:よしよし、まあぼちぼち頑張んなさいよ。 優香:そんなぁ…。 みどり:あはは、冗談だってば。 優香:もう、みどりの意地悪…。 みどり:ごめんごめん。何かあったら相談に乗るよ。 優香:うぅ…ありがとう。 みどり:ほら泣かないの。授業始まっちゃうよ。 優香:うん。またね。 みどり:うん。 : みどり:(M)優香の言う『昨日のこと』については気になったが、授業に集中するうちにいつの間にか頭から消えていた。 : 優香:みどり!今日も一日お疲れ様ぁ。 みどり:優香、おつかれ~。 優香:ねぇ、昨日言ってた本屋さん、いつ行けそう? みどり:本屋さん?え、えっと…私そんな約束したっけ? 優香:またまたご冗談を!みどりが提案してくれたんだよ。私に合う参考書見繕ってくれるって。 みどり:え、そう…だったかな。ごめんね、昨日疲れて寝ちゃってあんまり覚えてなくて。 優香:そうなんだ…みどり無理してんじゃない? みどり:無理…かぁ。もしかしたら知らない間に無理しちゃってるのかもね。 優香:今日は早く帰ってゆっくりしなよ。 みどり:…うん。ありがとう。そうするよ。本屋さんの件はまた連絡するね。じゃあそろそろこの辺で。また明日ね! 優香:うん!楽しみに待ってる。また明日! みどり:ばいばーい!〈同時に〉 優香:ばいばーい!〈同時に〉 : :【 みどりの家 】 みどり:あー…今日も一日疲れたぁ…。さてさて、お待ちかねのお楽しみターイム ♪ よいしょっと、今日はどんなお花に会えるかな~♪ ナレーション:こんばんは。今日も私と一緒に不思議なお花を巡る旅に出掛けましょう。 みどり:はーい。 ナレーション:まずは昨日のおさらいから。2ページを開いてください。 みどり:2ページね。そうそう、この『*幽玄花《ゆうげんか》』の香りめっちゃ素敵なんだよね ナレーション:まずはこの花の香りを嗅いで心をリラックスさせましょう。鼻から大きく息を吸ってぇ…。 みどり:すぅー……あぁ、これこれ…この香りよぉ…♡ ナレーション:ふわふわした気持ちになっていきます… みどり:…うん……ふわふわ……気持ち良い…。 ナレーション:それでは、そのまま次のページを開いてください…。 みどり:…はい。 ナレーション:今日紹介する花はこちらです。花名『*淡光花《たんこうか》』。日も当たらない真っ暗な洞窟の奥にひっそりと咲くこの花は、自ら淡い光を放ち、見る者の心を掴んで離さなくなります。さぁ…花をじっと見つめてください…。 みどり:わぁ…優しい紫色の光…きれい…。 ナレーション:そのまま私の言葉に耳を傾けてください…。 みどり:…はい。 ナレーション:この光を見つめていると、あなたはだんだん花のことしか考えられなくなっていきます。 みどり:…お花…ずっと…好きぃ…。 ナレーション:そして、他の事はどうでもよくなっていきます。 みどり:…どうでも…いい…。 ナレーション:このままずっとこの光に包まれていたくなっていきます。 みどり:淡い…光…ずっと…すてき…。 ナレーション:さぁ…この光に包まれながら今日もゆっくりおやすみなさい…。 みどり:おやすみ…。 ナレーション:この続きはまた明日。花が咲くまであと3つ。 : :【 翌日 】 みどり:ん、うーん…あ、また寝ちゃってた。おはよう、私の可愛いお花さんたち。今日もお外は良い天気だよ。あ…もうこんな時間、学校行かなきゃ…学校…いっか、休んじゃえ。(プルルル)あ、もしもし先生ですか、鈴木みどりです。すみません、今日ちょっと熱っぽくてふらふらするので学校休ませてください…はい…ありがとうございます。失礼します。(ガチャ)うふふ…休んじゃった。これで今日はずっと一緒にいられるね。 : 優香:今日みどりは学校お休みかぁ…心配だから電話してみようかな。 みどり:あは♡…早く次のお花に会いたいわ♡ 優香:(プルルル…)寝てるかな? みどり:はい…。 優香:あ、みどり!大丈夫?熱出してふらふらするって聞いて心配だったから電話したんだ。 みどり:ありがとう優香…でもごめん…今ちょっとしんどいから。 優香:あ、そうだよね。ごめん、すぐ切るからね。あの…放課後さ、心配だからお見舞い行ってもいい? みどり:いや…そういうのいいから。 優香:でも宿題のプリントとかあるから持って行くよ…。 みどり:だからいいって!ほっといてよ!!(ガチャ) 優香:あ…電話切られちゃった…。相当しんどいのかな。仕方ない、しばらくはそっとしておくか。 みどり:あー!イラつく!…あ、ごめんね、大きな声出しちゃって。びっくりさせちゃったよね。もう大丈夫よ。ねぇ…今日も私を素敵なお花の世界に連れてって。 ナレーション:おはようございます。今日も来てくれたんですね。ありがとうございます。さぁ、私と一緒に不思議なお花の世界に旅立ちましょう。 みどり:…あぁ、もう待ちきれないわ♡ ナレーション:では、3ページを開いてください。 みどり:…はい。 ナレーション:今日紹介するのはこちらです。花名『*捧仙花《ほうせんか》』。この花は綺麗な湖のほとりでしか生きられないとっても儚い花で、夜になるとそれはそれは心地良い音色を出して聴く者をたちまち虜にしてしまいます。さぁ…耳を澄ましてよぉく聴いてみてください。 捧仙花:リリーン…リリーン…。〈できれば鈴のSEが望ましい〉 みどり:…なんて素敵な音色…あぁ…どんどん心が洗われていくわ…。 ナレーション:この音を聴いていると、だんだん心が空っぽになっていきます。 捧仙花:リリーン…リリーン…。〈できれば鈴のSEが望ましい〉 みどり:…こころ……まっさら……ぁぁ…。 ナレーション:はい、これであなたの心は完全に空っぽになりました。花が咲くまであと2つ。 みどり:…。 ナレーション:それではページをめくってください。 みどり:ハイ…。 ナレーション:次に紹介するのはこちらのお花です。花名『*染心花《せんしんか》』。この花は深い谷底にひっそりと咲く花で、その蜜を飲むとあなたの心は私の思うがままの色に染まります。さぁ本の中から小瓶を取り出して飲んでみましょう。 みどり:…ハイ。(ゴク)…!?アァ…ココロガどんどん赤く染まっていく!!あぁぁぁ…! ナレーション:今のご気分はいかがですか…? みどり:あははは…最高♡ 心の奥底から全てをぐちゃぐちゃにしたい衝動が湧き上がってくるわ! ナレーション:よろしい。これであなたの心は真っ赤に染まりました。さて、花が咲くまであと一つ…。 みどり:うふふふ…ぺろっ♡〈舌なめずり〉 ナレーション:では、いよいよ最後のページに行きましょう。めくってください。 みどり:あは♡ … ウズウズしちゃう♡…楽しみだわ! ナレーション:最後に紹介するお花はこちらです。花名『*誕変花《たんぺんか》』。この花は闇の大地にのみ咲くと言われる幻の花で、その身を食べるとあなたの体は完全に我らと同じ存在に成り果てます。みどりさん…最後の花の味、存分に味わってください。 みどり:はい♡ いただきまーす。(もぐもぐゴクン)…あ、あぁぁ!身体が熱くなって!私の身体がカワッテイク!!ハァァ!!ステキィ!!アハ、アハハハハハ!! ナレーション:ようこそ…素敵な世界へ。みどりさん、我々はあなたを歓迎します。 みどり:ウフフ…光栄デスワ。オヤカタサマ♡ : 優香:はぁ…今日はみどりが休みだったから学校つまんなかったなぁ。みどりからは来ないでって言われてたけど、やっぱり心配だから行ってみよう。 : 優香:(ピンポーン)みどり、ごめんね。心配だから来ちゃった。 みどり:…あら優香、来てくれたの?いらっしゃい。どうぞ入って。 優香:え…?う、うん。お邪魔します。あの…みどり、もう元気になったの? みどり:ええ…ゆっくり寝たらすっかり良くなったわ。さぁ、上がって。 優香:ありがとう。 みどり:今日は電話口で怒鳴ったりしてごめんね。せっかく優香が心配してくれたのに。 優香:ううん。私もみどりがしんどい時に電話してごめんね。 みどり:いいのよ。それよりさ、最近とっても素敵なアロマを手に入れたんだ。一緒に楽しまない? 優香:えー!そうなんだ!うん、楽しむ!どんなアロマなんだろー! みどり:これなんだけどね。 優香:(くんくん)わぁ…良い香り…。 みどり:これはね、『*幽玄花《ゆうげんか》』って言ってね、とってもリラックスできるんだよ。 優香:…うん…なんか…ふわふわ…してきた…。 みどり:さぁ優香、一緒に堪能しましょう。鼻から大きく息を吸ってぇ…。 優香:すぅー……ふぁぁ…すてきぃ…とっても…気持ちいい…。 みどり:うふふ…そうでしょう?あのね、今日は私が優香に素敵な参考書をプレゼントしてあげる。 優香:…ん?…さんこうしょ…? みどり:これよ。『魅惑の花図鑑』っていうの。 優香:…みわくの…はなずかん…? みどり:そう。今の優香にピッタリだと思って。 優香:…ありがとう…うれしい…ふふふ…。 みどり:さぁ…優香、あなたも素敵な世界に旅立ちましょう…。 優香:…すてきなせかい…うん…いきたい……つれてって…。 : ナレーション:(M)花は可憐に咲き乱れる。いつか世界が真っ赤に染まるまで。 : :~完~