台本概要
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タイトル | 幸せの青いバラ〜連続薬物事件〜 |
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作者名 | 大輝宇宙@ひろきうちゅう (@hiro55308671) |
ジャンル | ミステリー |
演者人数 | 4人用台本(男2、女1、不問1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
元刑事の鉄は両親の死をキッカケにお好み焼き屋の店長をしている。 年下の幼馴染、可奈は店を手伝っている。 ある日、元上司の黒岩から、若者の間で「シン」というドラッグが横行していると聞き、 漢方薬局の外国人薬師、幽李に話を聞きに行くが…。 2130 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
鉄 | 男 | 84 | 丸橋鉄(まるはしてつ)元刑事のお好み焼き屋。30代 |
黒岩 | 男 | 38 | 黒岩仁(くろいわじん)刑事。49歳。よく食べる。鉄の元上司 |
可奈 | 女 | 43 | 鵜飼可奈(うかいかな)19歳。椿山(つばきやま)女子大の学生。鉄の幼馴染で、お好み焼き屋のアルバイト店員。鉄に想いを寄せている。 |
幽李 | 不問 | 41 | ユーリ。路地裏の漢方薬局の外国人薬師。青いバラを育てている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
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:昼時のお好み焼き屋店内
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黒岩:ごちそうさん
可奈:うわぁ〜仁さんって見た目より胃袋は若いねぇ
黒岩:おいおい可奈、40代っつーのはお前ら若者が思ってるよりずーっとずーっと若いんだぜ?それに俺は見た目だって…
可奈:これ、豚玉に明太、チーズ、ねぎ増しの餅増しましだよ?若いって言っても…すんご…私でも余裕ってわけには…
鉄:40代が若いんじゃなくて、黒岩さんがわかいんじゃないですか?それと、黒岩さんの見た目はちゃんと40代してますよ。来月50代に乗るなんて思えない
黒岩:ああ?そうか?んじゃ、見た目より若いってことか?あぁ?年相応…分かんね。可奈、お前いくつになった?
可奈:私?もうすぐ19になるよ〜大学生活満喫中!
黒岩:ほぉ。ここでバイト始めた頃はまだ高校生だったよな、つい昨日のことみたいだが
可奈:そうゆうこと言うから、よりじじ臭くなるんだよ仁さん!
鉄:可奈、豚平焼き上がった。5番に持っていって
可奈:はいは〜いっ
黒岩:元気なバイトがいて助かるなぁ?鉄
鉄:そうっすね。持つべきものは年の離れた幼馴染かもしんないっす。
黒岩:ああ。お前が交番勤務だった時、ランドセル背負って覗きに来てたって話だもんな
鉄:ええ。交番出て、刑事になるって時は涙ぐんで心配されました
黒岩:ははっ。娘みたいだな〜
鉄:黒岩さん?俺、まだ30そこそこっすよ?
黒岩:悪い悪い。…なぁ、ここは安くて、腹いっぱいになるよな
鉄:どうしたんですか?急に。
黒岩:そういう店には、若者が出入りするな?
鉄:ああ、まぁ高校生や大学生が多いですね。若い女性なんかはお好み焼きの匂いが髪や服に付くので…やっぱり男子が多いですけど
黒岩:鉄、もし話が入ってきたらでいいんだが「シン」っつードラッグについて聞いたら、俺に教えてくれ
鉄:「シン」?
黒岩:ああ最近、妙な死体が街ん中を転がりやがる。それもみんな若い連中だ。男も女も関係ねぇ。
鉄:(考え込むような相槌)
黒岩:十中八九ドラッグだと俺は睨んでるが、これが新種みたいでな。成分の解析に時間がかかってる。体内から消えちまってんのかもしれねぇとまで言いやがる。
鉄:成分が消えていて、何でドラッグだって黒岩さんは思うんですか?
黒岩:死ぬ間際の仏さんたちはみんな、どうも幻覚を見てるらしいってことが目撃者の証言からとれてる。うわ言をいいながら飛び降りたとか、笑顔を振りまきながら電車に突っ込んでいったとかな。それで色々調べてるうちに、どうやら若い奴らの間で「シン」っつードラッグが横行してるらしいと情報を掴んだ。
鉄:へぇ…。薬ってことだったら、昔使っていた情報屋にそっちに詳しいやつがいるんで聞いてみますよ
黒岩:おう、危ないことに首突っ込ませて悪ぃな。元部下っつーのは何かと使っちまって…あ、その情報屋を教えてくれりゃ俺が聞きにいくぞ?
鉄:いいんすよ!俺だって…
可奈:なになに!?仁さんの人使いが荒いって話?
黒岩:ばか言え
可奈:へへっ。いいんじゃない?鉄ちゃんだって、おじさんおばさんが元気だったらまだ刑事やりたかったんだろうし
鉄:まぁな。…そういうことなんで、黒岩さん、俺を使ってください
黒岩:おう。頼むわ
可奈:私、昔っからここのお好み焼き大好きで…おじさんおばさんが事故にあった時は、もうあの元気な声で「はいよっいつもの豚玉!」って聞けないんだ…って思ったけど、鉄ちゃんがお店継いで頑張ってくれて…ああ、まだ私の第二の実家は大丈夫なんだ〜って思えた
黒岩:バイト先も見つかって良かったな
可奈:ちょっと仁さん!?…たしかにそれもそうだけどぉ!
黒岩:拳銃をコテに持ち替えて頑張ってんだよなぁ、鉄。
鉄:ま、拳銃なんてめったに携帯許可下りなかったですけどね。この店も可奈が手伝いに来てくれるんで何とかやれてましたけど、始めた頃なんて…本当にクソ忙しくて。味も親父より劣ってるんでしょうし
黒岩:いや、うまいぞ。普通に通いたくなるくらいに
可奈:そうだよ!鉄ちゃんは美味しいお好み焼き焼いてるよ!?…受け継がれる伝統の味…それを支える鉄ちゃん…何なら、私もずっとここにいても…
鉄:よしっ可奈、まかないの焼きそばできたぞ〜。
可奈:へっ…!?ああ、ああありがとう…
黒岩:ははっ報われねぇなぁ
可奈:うるさいうるさいっ!
黒岩:悪い悪い。いや、お前よ?最近俺が店に来ねぇうちに少し綺麗になったんじゃないか?
可奈:本当!?実はね〜少し痩せたんだ〜
鉄:毎日見てると気づかないもんだな
可奈:もぉ!もっともっとキレイになってビックリさせてやるからなぁ〜!覚悟してよね!?鉄ちゃんっ
鉄:おーおー。無理すんな
黒岩:じゃあな。鉄、例の件頼んだぞ
鉄:はい(店の引き戸を開けて出ていく黒岩)
可奈:(店の引き戸が閉まったのを見計らって)例の件?さっきは「いいじゃん、使えば」って仁さんにいったけどさ、あんまり危ないことしないでよ?
鉄:分かってる。本当にやりたくてやってんだ。あと、俺は素人じゃない。心配すんな
可奈:うーん…
鉄:それから、可奈。お前に限ってないとは思うが、最近若い奴らの間で新種のドラッグが横行してるらしい。お前こそ危ないもんに近づくなよ?
可奈:大丈夫だよぉ、怪しいクスリなんて、人間ボロボロにするって分かってるし、馬鹿じゃないんだから寄ってかないって
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:薄暗い裏路地にある漢方薬局店内
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幽李:「シン」という薬、聞いたことないよ
鉄:そうか。あんたなら何か分かるかと思ったんだが
幽李:若い子、商売に使えナイ
鉄:ああ、最近は覚醒剤の中毒者も中高年に増えてる
幽李:チュウコウネン、お金持ってる。ドラッグ作る大変。売るときお金いっぱい嬉しい
鉄:まるで作ってるみたいな言い方だな
幽李:クスリ?私作るの漢方薬だけだヨ。あとは綺麗な薔薇たちね
鉄:怪しいこともしてるだろ、お前
幽李:ソウね。でもマルハシテツは、だからこそ私から情報買ゥ。デカやってた時からアナタそうしてたね
鉄:ああ、多少危ない所の情報が必要だからな
幽李:ウン。これからも沢山買ッテね
鉄:しかし…逆に妙だ。死人も出てるドラッグの情報が、幽李の耳に入ってないってことが妙だ…
幽李:マルハシテツ、お代
鉄:な…何も情報をくれてないのに金とるのか?
幽李:私、マルハシテツに「私は知らない」いう情報渡したヨ。お代貰いましょう
鉄:くそっ…(一万円札を渡す)しかし…こっから色々繋がっていくと思ったんだけどなぁ…
幽李:「シン」いうドラッグ、私知らナイナー
鉄:…じゃあ、他に若者の間で流行ってるのは?
幽李:んふっ…ケイサツ動いてるか?
鉄:ああ…元上司の黒岩さん達が動いてる。俺は頼まれて情報を買いに来た
幽李:ナルホド。私の情報チョットお高いデスヨネ。ケイサツにあゲルとなるト、お値段トテモ高いヨ
鉄:ちっ…これでどうだ!(数枚の一万円札を突き出す)
幽李:ふふっ…毎度アリヨ。……私が聞いてるドラッグは「シ」と呼ばれているヨ
鉄:「シン」じゃなくて…「シ」…死ぬっていう「死」か?
幽李:さぁ?ソレは分からナイヨ。何でも摂り方が特殊ナンだそうヨ
鉄:摂り方…吸ったり、打ったりせず、飲んだり食べたりして証拠が残らないってことか…
幽李:ふふっ…キャンディーみたいな見た目のもの、オブラートみたいなシートのもの、取り入れやすいネ
鉄:最初はそうとは知らずにやって、知らずしらずの内にそれなしでは生きていけなくなるってことかもな…それなら、若い連中に中毒者が出るのも何となく分かる。
幽李:ソウね、咳止めのシロップを子供がガブ飲みシて中毒にナッタ例もアルネ。頭痛薬ダッテ沢山飲めバ毒になるヨ。日常に潜む毒ナンテ沢山アルヨ
鉄:被害者は…高校生や大学生位の若いやつ…うーん…
幽李:子供はお金にナラナイ
鉄:売ってるのはヤクザじゃないってことか…合成麻薬みたいなもんをガキが作って売りさばいてるって線もあるな…
幽李:ニッポンのマフィアだって、商売勝手に始めるヤツ許さナイヨ
鉄:そうだな…黙っているとは思えない
幽李:その被害者達、ホントウにドラッグやってたノカヨ?
鉄:どういう意味だ?
幽李:見つからナイ、ドラッグなんてあるのカシラ
鉄:…さっぱりだ
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鉄:邪魔したな(店を出ていこうとする)
幽李:いいヨ。お金をくれたヨ。文句ないヨ
鉄:ああ…(店先の棚に青いバラの鉢植えがあることに気づき)あん?これも幽李が育ててるバラか?
幽李:…ソウ
鉄:青いバラか…珍しいな
幽李:…ソウね。幸せのバラ。とても人気がアル
鉄:ふぅん…
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:可奈の家
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鉄:よっ!(廊下からかなの部屋のドアを開け顔を出す)
可奈:(ベッドの中)うわっ!鉄ちゃん…ごめんなさい。お見舞いまで来てもらっちゃって…
鉄:いいって。可奈がバイト休むなんて初めてだからな。ちょっと心配したけど…元気そうで安心した
可奈:うん。食欲もあるし、元気。ただ、今朝は少し目眩がしちゃって…
鉄:無理すんなよ?
可奈:バイトも、もう休まないから
鉄:バカ。今、無理すんなって言っただろうが。せっかく気心知れた幼馴染のところでバイトしてんだ。こういう時は、甘えとけばいいんだよ
可奈:…ありがと。えへへ
鉄:……こないだ黒岩さんも言ってたけど、お前本当に痩せたな
可奈:えっ!?分かる?鉄ちゃん!分かる!?
鉄:無理なダイエットとかしてんじゃないのか?あん巻き、おばさんに渡しといたから、後で食えよ
可奈:無理なダイエットなんてしてないよぉ。ちょっと民間療法っていうか、マユツバな感じのが効いてるってだけ
鉄:何だそりゃ。あれか?全身にラップ巻いて風呂入るとか、朝バナナと大量の水を飲むとかか?
可奈:まぁ、そんな感じ
鉄:そういう変なことするより、野菜や肉をちゃんと食って動いたほうが絶対キレイになるって
可奈:もー分かった!大丈夫だから。明日はバイト行くからね!鉄ちゃんありがとう
鉄:ああ!?…おう、んじゃ、また明日。明日になって調子悪かったら、また連絡しろよ?休んでいいから。
可奈:うん、多分大丈夫だけど、そうするね。ありがとう
鉄:ああ、じゃ…あれ?
可奈:ん?どうかした?
鉄:そのバラって…幸せのバラか?
可奈:知ってんの?えへへ、友達がくれたんだ〜。白に青がかかってて綺麗でしょ?
鉄:ああ、珍しいよな。何ていうか、神秘的つーか
可奈:鉄ちゃんの口から神秘的という言葉を聞ける日が来るなんて!
鉄:何だよ?!…まぁいいや。じゃ、お大事にな
:(部屋を出ていく鉄)
可奈:(幸せのバラをベッドの上に寄せ、抱きかかえるように話しかける)良かったね〜。綺麗だって!神秘的だって…。私も言ってもらいたいのにな…大分痩せられたし…いつか絶対に言わせてやる。あんたは本当に幸せのバラよ。これからも大事にするから、ずっと綺麗に咲いてね?(バラを両手で包むようにし、手のひらに棘をさす)ああ…あったかい…ふふ…ふふふ
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:昼 街中 警察の立入禁止テープの前、中に入ろうとした所若い警察官に立ち入り禁止を命じられる鉄
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鉄:部外者は、部外者だけど、黒岩さんに呼ばれてるんだって!…あーもう、俺こう見えても元刑事で…ってダメだよな〜。くそ…黒岩さんを呼んでくれよ、そしたら分かるから
黒岩:(離れたところから気が付き)おーっ悪ぃ、そいつは俺が呼んだんだ。入れてやってくれ
鉄:(テープを引き上げる若い警察官に)どーも
黒岩:悪かったな、鉄
鉄:もう少し早く来てくれても良かったんですよ?
黒岩:そう怒るな。まぁ、これが見せたくてよ(遺体を包むビニールシートをあげる)
鉄:…。例の「シ」のジャンキーなんですか?
黒岩:ああ、俺たちはそう見てる。今までの連中と年齢も同じくらいだし、泡吹いて笑いながら死んでんのも同じだ
鉄:(考えるような相槌)…この感じだと、飛び降りですか?
黒岩:ああ、この上のマンションの4階に住んでたらしい椿山(つばきやま)女子大の学生だそうだ。綺麗な顔がグチャグチャだな…
鉄:椿山…可奈と同じだ
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:鉄のお好み焼き店
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可奈:曽我しおり…あー、そがっちがどうかした?
黒岩:ちっ…当たりか
鉄:今朝、住んでいたマンションのベランダから落下して亡くなった。自殺で捜査が進んでる
可奈:…うそ
鉄:何か動機…思いつくようなことはないか?
可奈:自殺なんて…嘘よ。動機を聞くってことは遺書が見つかってないんでしょう?それに自殺で刑事の仁さんが調べてるっておかしくない?まさか…そがっち殺されたの?
黒岩:組織的な犯罪に巻き込まれた可能性は無いとは言えない
可奈:組織って?
黒岩:ヤクザとか、半グレとかな
可奈:そういう子じゃないよ?お嬢様とか清廉潔白とまでは言わないけど、ごくごく普通の友達だよ?
黒岩:ごくごく普通にしちゃあ、金…持ちすぎてんだよ。親はサラリーマンと専業主婦、弟が一人…平均が最近は低いから中の上ってとこなんだろうが…それにしたってあの仏さんの貯金はなかなかの額だった。可奈、お前、あのお友達がバイトしてたかとか聞いてるか?
可奈:うーん…していたようには見えなかったけど…部活がいつも忙しいって感じで、カラオケとかも部活だからって断ることが多かったな
鉄:何のサークルに入ってたんだ?
可奈:ガーデニングだよ?
黒岩:ああ、部屋にすごい数の鉢植えやら何やらあったなぁ…
可奈:そういえば…こないだ鉄ちゃんが褒めてくれた幸せのバラをくれたのも、そがっちだったよ
鉄:あれを…?
可奈:うん
黒岩:何だ、鉄。気になるのか?
鉄:黒岩さん、ちょっと確かめてほしいことがあります
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:裏路地 幽李の漢方薬局 薔薇の鉢に水をやる幽李の背後から鉄、黒岩が近づく
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幽李:マルハシテツ、また来タカ
黒岩:お前に聞きてぇことがある
幽李:「シ」についてか?
鉄:ああ。今日もせっせと育ててるんだな…「シ」を
幽李:……ヤット気づいたのか
鉄:先日、そのバラの幻覚作用で飛び降りた女子大生の部屋に残ってたバラを調べたよ。このバラのトゲからは、麻薬に似た幻覚症状を見せる液が染み出すようになってるんだな…
幽李:…「シ」の意味…
鉄:?
幽李:「シ」は死ぬジャナイ。棘と書いて「シ」ね
鉄:棘から麻薬を摂取する…
幽李:この薔薇、綺麗かろう?この薔薇は見て幸福、刺しても幸福をモタラス幸せの薔薇ヨ
黒岩:幻覚なんざ、幸福でもなんでもねえ
幽李:刑事サン…?刑事サンもマルハシテツも、まだまだこの薔薇にツイテ分かってナイヨ。この薔薇は幻覚作用アルだけじゃないヨ。この薔薇の一番の特徴はタコウカン
鉄:多幸感…
幽李:この棘の与える多幸感は、覚醒剤と同等ヨ。一度刺したらもう元にはモドレナイね
鉄:そんなもの…何で商売にならないって言ってた高校生や大学生に売りつけた!
幽李:小さくても儲けは儲けネ。それに…ソウダ、「餅は餅屋」というニホンゴ知ってるな?
鉄:それがどうした
幽李:私、この薔薇綺麗で大好き。だから、専門家に育テテもらうことにシタ
鉄:それが、ガーデニング部の学生達だったってことか
幽李:私、育ててくれるお願いシタ。あの子達トテモ上手くやってくれた。薔薇は育っタだけじゃない。増えました。
鉄:まさか…学生たちは気づいたのか、そのバラの持つ作用に…
幽李:それは…分からナイ。でも。薔薇がドンドン広がってるノハ分かった
黒岩:学生たちが勝手にさばき始めたら、お前に取り分がないだろう?それは良かったのか?
幽李:良かった。この薔薇綺麗。みんなで楽しんだらイイ
鉄:何も知らずに、麻薬を栽培していた学生もいたんだぞ。
幽李:ソレは知らないのだから、罪にはナラナイデショウ?
鉄:悪いものだと知らず、使うようになったやつだって…
幽李:コノ国のガクセイは、棘を刺してタコウカンを得ることをオカシイとも思わない?それは、言い訳にもナラナイ馬鹿
黒岩:まぁ…言い逃れは難しいわな…
鉄:金目的じゃないのか幽李?いつも金をせしめるお前と、本当の…こんな犯罪が俺には同じ幽李だと思えない…
幽李:お金大好き。コノ国大嫌い。この国のコレカラを担う若者は、ゼンアクも分からなくて、判断もできなくて、その場だけが良くて自分だけ良ければイイ。この薔薇はね、そんなこの国をあぶり出したに過ぎない
鉄:お前の目的は…集団を殺すことだったのか?
幽李:ふふっ…私がいなくナロウとも。私の薔薇は残る。薔薇はツタをハリメグラセ、この国をいずれ覆うダロウ。…コレは静かで大きなテロなのヨ
黒岩:(幽李が服から何かを取り出し握ったのを見て)鉄!
幽李:モウ遅い…!!(取り出した薬品を飲む)
鉄:!幽李!やめろ…!
幽李:私が…死んでも…(息絶える)
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:病室 ベッドに入り、上半身を起こしている可奈。病室に入り、入口付近に立つ鉄
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可奈:(何もないベッドの上に向かって)綺麗なバラ…。月夜に湖に浮かんだみたいなバラ…私の望みを叶えてくれるバラ…。ふふ…ふふふ
鉄:…っ!
可奈:(鉄に気づく)あっ!鉄ちゃん!どうしたの?そんなところに立って。こっち来て?…今日は、あったかいよね。もうすぐ春になるのかなぁ…ね、春になったら桜を見に行こうよ!お弁当作って、仁さんも誘ってさ!ね?
鉄:……
可奈:鉄ちゃん?
鉄:…ああ、行こう。可奈の好きな団子も持っていこうな
可奈:うんっ!
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:昼時のお好み焼き屋店内
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黒岩:ごちそうさん
可奈:うわぁ〜仁さんって見た目より胃袋は若いねぇ
黒岩:おいおい可奈、40代っつーのはお前ら若者が思ってるよりずーっとずーっと若いんだぜ?それに俺は見た目だって…
可奈:これ、豚玉に明太、チーズ、ねぎ増しの餅増しましだよ?若いって言っても…すんご…私でも余裕ってわけには…
鉄:40代が若いんじゃなくて、黒岩さんがわかいんじゃないですか?それと、黒岩さんの見た目はちゃんと40代してますよ。来月50代に乗るなんて思えない
黒岩:ああ?そうか?んじゃ、見た目より若いってことか?あぁ?年相応…分かんね。可奈、お前いくつになった?
可奈:私?もうすぐ19になるよ〜大学生活満喫中!
黒岩:ほぉ。ここでバイト始めた頃はまだ高校生だったよな、つい昨日のことみたいだが
可奈:そうゆうこと言うから、よりじじ臭くなるんだよ仁さん!
鉄:可奈、豚平焼き上がった。5番に持っていって
可奈:はいは〜いっ
黒岩:元気なバイトがいて助かるなぁ?鉄
鉄:そうっすね。持つべきものは年の離れた幼馴染かもしんないっす。
黒岩:ああ。お前が交番勤務だった時、ランドセル背負って覗きに来てたって話だもんな
鉄:ええ。交番出て、刑事になるって時は涙ぐんで心配されました
黒岩:ははっ。娘みたいだな〜
鉄:黒岩さん?俺、まだ30そこそこっすよ?
黒岩:悪い悪い。…なぁ、ここは安くて、腹いっぱいになるよな
鉄:どうしたんですか?急に。
黒岩:そういう店には、若者が出入りするな?
鉄:ああ、まぁ高校生や大学生が多いですね。若い女性なんかはお好み焼きの匂いが髪や服に付くので…やっぱり男子が多いですけど
黒岩:鉄、もし話が入ってきたらでいいんだが「シン」っつードラッグについて聞いたら、俺に教えてくれ
鉄:「シン」?
黒岩:ああ最近、妙な死体が街ん中を転がりやがる。それもみんな若い連中だ。男も女も関係ねぇ。
鉄:(考え込むような相槌)
黒岩:十中八九ドラッグだと俺は睨んでるが、これが新種みたいでな。成分の解析に時間がかかってる。体内から消えちまってんのかもしれねぇとまで言いやがる。
鉄:成分が消えていて、何でドラッグだって黒岩さんは思うんですか?
黒岩:死ぬ間際の仏さんたちはみんな、どうも幻覚を見てるらしいってことが目撃者の証言からとれてる。うわ言をいいながら飛び降りたとか、笑顔を振りまきながら電車に突っ込んでいったとかな。それで色々調べてるうちに、どうやら若い奴らの間で「シン」っつードラッグが横行してるらしいと情報を掴んだ。
鉄:へぇ…。薬ってことだったら、昔使っていた情報屋にそっちに詳しいやつがいるんで聞いてみますよ
黒岩:おう、危ないことに首突っ込ませて悪ぃな。元部下っつーのは何かと使っちまって…あ、その情報屋を教えてくれりゃ俺が聞きにいくぞ?
鉄:いいんすよ!俺だって…
可奈:なになに!?仁さんの人使いが荒いって話?
黒岩:ばか言え
可奈:へへっ。いいんじゃない?鉄ちゃんだって、おじさんおばさんが元気だったらまだ刑事やりたかったんだろうし
鉄:まぁな。…そういうことなんで、黒岩さん、俺を使ってください
黒岩:おう。頼むわ
可奈:私、昔っからここのお好み焼き大好きで…おじさんおばさんが事故にあった時は、もうあの元気な声で「はいよっいつもの豚玉!」って聞けないんだ…って思ったけど、鉄ちゃんがお店継いで頑張ってくれて…ああ、まだ私の第二の実家は大丈夫なんだ〜って思えた
黒岩:バイト先も見つかって良かったな
可奈:ちょっと仁さん!?…たしかにそれもそうだけどぉ!
黒岩:拳銃をコテに持ち替えて頑張ってんだよなぁ、鉄。
鉄:ま、拳銃なんてめったに携帯許可下りなかったですけどね。この店も可奈が手伝いに来てくれるんで何とかやれてましたけど、始めた頃なんて…本当にクソ忙しくて。味も親父より劣ってるんでしょうし
黒岩:いや、うまいぞ。普通に通いたくなるくらいに
可奈:そうだよ!鉄ちゃんは美味しいお好み焼き焼いてるよ!?…受け継がれる伝統の味…それを支える鉄ちゃん…何なら、私もずっとここにいても…
鉄:よしっ可奈、まかないの焼きそばできたぞ〜。
可奈:へっ…!?ああ、ああありがとう…
黒岩:ははっ報われねぇなぁ
可奈:うるさいうるさいっ!
黒岩:悪い悪い。いや、お前よ?最近俺が店に来ねぇうちに少し綺麗になったんじゃないか?
可奈:本当!?実はね〜少し痩せたんだ〜
鉄:毎日見てると気づかないもんだな
可奈:もぉ!もっともっとキレイになってビックリさせてやるからなぁ〜!覚悟してよね!?鉄ちゃんっ
鉄:おーおー。無理すんな
黒岩:じゃあな。鉄、例の件頼んだぞ
鉄:はい(店の引き戸を開けて出ていく黒岩)
可奈:(店の引き戸が閉まったのを見計らって)例の件?さっきは「いいじゃん、使えば」って仁さんにいったけどさ、あんまり危ないことしないでよ?
鉄:分かってる。本当にやりたくてやってんだ。あと、俺は素人じゃない。心配すんな
可奈:うーん…
鉄:それから、可奈。お前に限ってないとは思うが、最近若い奴らの間で新種のドラッグが横行してるらしい。お前こそ危ないもんに近づくなよ?
可奈:大丈夫だよぉ、怪しいクスリなんて、人間ボロボロにするって分かってるし、馬鹿じゃないんだから寄ってかないって
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:薄暗い裏路地にある漢方薬局店内
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幽李:「シン」という薬、聞いたことないよ
鉄:そうか。あんたなら何か分かるかと思ったんだが
幽李:若い子、商売に使えナイ
鉄:ああ、最近は覚醒剤の中毒者も中高年に増えてる
幽李:チュウコウネン、お金持ってる。ドラッグ作る大変。売るときお金いっぱい嬉しい
鉄:まるで作ってるみたいな言い方だな
幽李:クスリ?私作るの漢方薬だけだヨ。あとは綺麗な薔薇たちね
鉄:怪しいこともしてるだろ、お前
幽李:ソウね。でもマルハシテツは、だからこそ私から情報買ゥ。デカやってた時からアナタそうしてたね
鉄:ああ、多少危ない所の情報が必要だからな
幽李:ウン。これからも沢山買ッテね
鉄:しかし…逆に妙だ。死人も出てるドラッグの情報が、幽李の耳に入ってないってことが妙だ…
幽李:マルハシテツ、お代
鉄:な…何も情報をくれてないのに金とるのか?
幽李:私、マルハシテツに「私は知らない」いう情報渡したヨ。お代貰いましょう
鉄:くそっ…(一万円札を渡す)しかし…こっから色々繋がっていくと思ったんだけどなぁ…
幽李:「シン」いうドラッグ、私知らナイナー
鉄:…じゃあ、他に若者の間で流行ってるのは?
幽李:んふっ…ケイサツ動いてるか?
鉄:ああ…元上司の黒岩さん達が動いてる。俺は頼まれて情報を買いに来た
幽李:ナルホド。私の情報チョットお高いデスヨネ。ケイサツにあゲルとなるト、お値段トテモ高いヨ
鉄:ちっ…これでどうだ!(数枚の一万円札を突き出す)
幽李:ふふっ…毎度アリヨ。……私が聞いてるドラッグは「シ」と呼ばれているヨ
鉄:「シン」じゃなくて…「シ」…死ぬっていう「死」か?
幽李:さぁ?ソレは分からナイヨ。何でも摂り方が特殊ナンだそうヨ
鉄:摂り方…吸ったり、打ったりせず、飲んだり食べたりして証拠が残らないってことか…
幽李:ふふっ…キャンディーみたいな見た目のもの、オブラートみたいなシートのもの、取り入れやすいネ
鉄:最初はそうとは知らずにやって、知らずしらずの内にそれなしでは生きていけなくなるってことかもな…それなら、若い連中に中毒者が出るのも何となく分かる。
幽李:ソウね、咳止めのシロップを子供がガブ飲みシて中毒にナッタ例もアルネ。頭痛薬ダッテ沢山飲めバ毒になるヨ。日常に潜む毒ナンテ沢山アルヨ
鉄:被害者は…高校生や大学生位の若いやつ…うーん…
幽李:子供はお金にナラナイ
鉄:売ってるのはヤクザじゃないってことか…合成麻薬みたいなもんをガキが作って売りさばいてるって線もあるな…
幽李:ニッポンのマフィアだって、商売勝手に始めるヤツ許さナイヨ
鉄:そうだな…黙っているとは思えない
幽李:その被害者達、ホントウにドラッグやってたノカヨ?
鉄:どういう意味だ?
幽李:見つからナイ、ドラッグなんてあるのカシラ
鉄:…さっぱりだ
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鉄:邪魔したな(店を出ていこうとする)
幽李:いいヨ。お金をくれたヨ。文句ないヨ
鉄:ああ…(店先の棚に青いバラの鉢植えがあることに気づき)あん?これも幽李が育ててるバラか?
幽李:…ソウ
鉄:青いバラか…珍しいな
幽李:…ソウね。幸せのバラ。とても人気がアル
鉄:ふぅん…
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:可奈の家
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鉄:よっ!(廊下からかなの部屋のドアを開け顔を出す)
可奈:(ベッドの中)うわっ!鉄ちゃん…ごめんなさい。お見舞いまで来てもらっちゃって…
鉄:いいって。可奈がバイト休むなんて初めてだからな。ちょっと心配したけど…元気そうで安心した
可奈:うん。食欲もあるし、元気。ただ、今朝は少し目眩がしちゃって…
鉄:無理すんなよ?
可奈:バイトも、もう休まないから
鉄:バカ。今、無理すんなって言っただろうが。せっかく気心知れた幼馴染のところでバイトしてんだ。こういう時は、甘えとけばいいんだよ
可奈:…ありがと。えへへ
鉄:……こないだ黒岩さんも言ってたけど、お前本当に痩せたな
可奈:えっ!?分かる?鉄ちゃん!分かる!?
鉄:無理なダイエットとかしてんじゃないのか?あん巻き、おばさんに渡しといたから、後で食えよ
可奈:無理なダイエットなんてしてないよぉ。ちょっと民間療法っていうか、マユツバな感じのが効いてるってだけ
鉄:何だそりゃ。あれか?全身にラップ巻いて風呂入るとか、朝バナナと大量の水を飲むとかか?
可奈:まぁ、そんな感じ
鉄:そういう変なことするより、野菜や肉をちゃんと食って動いたほうが絶対キレイになるって
可奈:もー分かった!大丈夫だから。明日はバイト行くからね!鉄ちゃんありがとう
鉄:ああ!?…おう、んじゃ、また明日。明日になって調子悪かったら、また連絡しろよ?休んでいいから。
可奈:うん、多分大丈夫だけど、そうするね。ありがとう
鉄:ああ、じゃ…あれ?
可奈:ん?どうかした?
鉄:そのバラって…幸せのバラか?
可奈:知ってんの?えへへ、友達がくれたんだ〜。白に青がかかってて綺麗でしょ?
鉄:ああ、珍しいよな。何ていうか、神秘的つーか
可奈:鉄ちゃんの口から神秘的という言葉を聞ける日が来るなんて!
鉄:何だよ?!…まぁいいや。じゃ、お大事にな
:(部屋を出ていく鉄)
可奈:(幸せのバラをベッドの上に寄せ、抱きかかえるように話しかける)良かったね〜。綺麗だって!神秘的だって…。私も言ってもらいたいのにな…大分痩せられたし…いつか絶対に言わせてやる。あんたは本当に幸せのバラよ。これからも大事にするから、ずっと綺麗に咲いてね?(バラを両手で包むようにし、手のひらに棘をさす)ああ…あったかい…ふふ…ふふふ
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:昼 街中 警察の立入禁止テープの前、中に入ろうとした所若い警察官に立ち入り禁止を命じられる鉄
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鉄:部外者は、部外者だけど、黒岩さんに呼ばれてるんだって!…あーもう、俺こう見えても元刑事で…ってダメだよな〜。くそ…黒岩さんを呼んでくれよ、そしたら分かるから
黒岩:(離れたところから気が付き)おーっ悪ぃ、そいつは俺が呼んだんだ。入れてやってくれ
鉄:(テープを引き上げる若い警察官に)どーも
黒岩:悪かったな、鉄
鉄:もう少し早く来てくれても良かったんですよ?
黒岩:そう怒るな。まぁ、これが見せたくてよ(遺体を包むビニールシートをあげる)
鉄:…。例の「シ」のジャンキーなんですか?
黒岩:ああ、俺たちはそう見てる。今までの連中と年齢も同じくらいだし、泡吹いて笑いながら死んでんのも同じだ
鉄:(考えるような相槌)…この感じだと、飛び降りですか?
黒岩:ああ、この上のマンションの4階に住んでたらしい椿山(つばきやま)女子大の学生だそうだ。綺麗な顔がグチャグチャだな…
鉄:椿山…可奈と同じだ
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:鉄のお好み焼き店
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可奈:曽我しおり…あー、そがっちがどうかした?
黒岩:ちっ…当たりか
鉄:今朝、住んでいたマンションのベランダから落下して亡くなった。自殺で捜査が進んでる
可奈:…うそ
鉄:何か動機…思いつくようなことはないか?
可奈:自殺なんて…嘘よ。動機を聞くってことは遺書が見つかってないんでしょう?それに自殺で刑事の仁さんが調べてるっておかしくない?まさか…そがっち殺されたの?
黒岩:組織的な犯罪に巻き込まれた可能性は無いとは言えない
可奈:組織って?
黒岩:ヤクザとか、半グレとかな
可奈:そういう子じゃないよ?お嬢様とか清廉潔白とまでは言わないけど、ごくごく普通の友達だよ?
黒岩:ごくごく普通にしちゃあ、金…持ちすぎてんだよ。親はサラリーマンと専業主婦、弟が一人…平均が最近は低いから中の上ってとこなんだろうが…それにしたってあの仏さんの貯金はなかなかの額だった。可奈、お前、あのお友達がバイトしてたかとか聞いてるか?
可奈:うーん…していたようには見えなかったけど…部活がいつも忙しいって感じで、カラオケとかも部活だからって断ることが多かったな
鉄:何のサークルに入ってたんだ?
可奈:ガーデニングだよ?
黒岩:ああ、部屋にすごい数の鉢植えやら何やらあったなぁ…
可奈:そういえば…こないだ鉄ちゃんが褒めてくれた幸せのバラをくれたのも、そがっちだったよ
鉄:あれを…?
可奈:うん
黒岩:何だ、鉄。気になるのか?
鉄:黒岩さん、ちょっと確かめてほしいことがあります
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:裏路地 幽李の漢方薬局 薔薇の鉢に水をやる幽李の背後から鉄、黒岩が近づく
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幽李:マルハシテツ、また来タカ
黒岩:お前に聞きてぇことがある
幽李:「シ」についてか?
鉄:ああ。今日もせっせと育ててるんだな…「シ」を
幽李:……ヤット気づいたのか
鉄:先日、そのバラの幻覚作用で飛び降りた女子大生の部屋に残ってたバラを調べたよ。このバラのトゲからは、麻薬に似た幻覚症状を見せる液が染み出すようになってるんだな…
幽李:…「シ」の意味…
鉄:?
幽李:「シ」は死ぬジャナイ。棘と書いて「シ」ね
鉄:棘から麻薬を摂取する…
幽李:この薔薇、綺麗かろう?この薔薇は見て幸福、刺しても幸福をモタラス幸せの薔薇ヨ
黒岩:幻覚なんざ、幸福でもなんでもねえ
幽李:刑事サン…?刑事サンもマルハシテツも、まだまだこの薔薇にツイテ分かってナイヨ。この薔薇は幻覚作用アルだけじゃないヨ。この薔薇の一番の特徴はタコウカン
鉄:多幸感…
幽李:この棘の与える多幸感は、覚醒剤と同等ヨ。一度刺したらもう元にはモドレナイね
鉄:そんなもの…何で商売にならないって言ってた高校生や大学生に売りつけた!
幽李:小さくても儲けは儲けネ。それに…ソウダ、「餅は餅屋」というニホンゴ知ってるな?
鉄:それがどうした
幽李:私、この薔薇綺麗で大好き。だから、専門家に育テテもらうことにシタ
鉄:それが、ガーデニング部の学生達だったってことか
幽李:私、育ててくれるお願いシタ。あの子達トテモ上手くやってくれた。薔薇は育っタだけじゃない。増えました。
鉄:まさか…学生たちは気づいたのか、そのバラの持つ作用に…
幽李:それは…分からナイ。でも。薔薇がドンドン広がってるノハ分かった
黒岩:学生たちが勝手にさばき始めたら、お前に取り分がないだろう?それは良かったのか?
幽李:良かった。この薔薇綺麗。みんなで楽しんだらイイ
鉄:何も知らずに、麻薬を栽培していた学生もいたんだぞ。
幽李:ソレは知らないのだから、罪にはナラナイデショウ?
鉄:悪いものだと知らず、使うようになったやつだって…
幽李:コノ国のガクセイは、棘を刺してタコウカンを得ることをオカシイとも思わない?それは、言い訳にもナラナイ馬鹿
黒岩:まぁ…言い逃れは難しいわな…
鉄:金目的じゃないのか幽李?いつも金をせしめるお前と、本当の…こんな犯罪が俺には同じ幽李だと思えない…
幽李:お金大好き。コノ国大嫌い。この国のコレカラを担う若者は、ゼンアクも分からなくて、判断もできなくて、その場だけが良くて自分だけ良ければイイ。この薔薇はね、そんなこの国をあぶり出したに過ぎない
鉄:お前の目的は…集団を殺すことだったのか?
幽李:ふふっ…私がいなくナロウとも。私の薔薇は残る。薔薇はツタをハリメグラセ、この国をいずれ覆うダロウ。…コレは静かで大きなテロなのヨ
黒岩:(幽李が服から何かを取り出し握ったのを見て)鉄!
幽李:モウ遅い…!!(取り出した薬品を飲む)
鉄:!幽李!やめろ…!
幽李:私が…死んでも…(息絶える)
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:病室 ベッドに入り、上半身を起こしている可奈。病室に入り、入口付近に立つ鉄
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可奈:(何もないベッドの上に向かって)綺麗なバラ…。月夜に湖に浮かんだみたいなバラ…私の望みを叶えてくれるバラ…。ふふ…ふふふ
鉄:…っ!
可奈:(鉄に気づく)あっ!鉄ちゃん!どうしたの?そんなところに立って。こっち来て?…今日は、あったかいよね。もうすぐ春になるのかなぁ…ね、春になったら桜を見に行こうよ!お弁当作って、仁さんも誘ってさ!ね?
鉄:……
可奈:鉄ちゃん?
鉄:…ああ、行こう。可奈の好きな団子も持っていこうな
可奈:うんっ!
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