台本概要
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タイトル | ギセイ系ヒーローズ |
---|---|
作者名 | 野菜 (@irodlinatuyasai) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 3人用台本(不問3) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
巨人族とこびとその他の生きる地球。 それぞれのヒーロー像を胸に、小さき彼らは世界を救うべく立ち上がった。彼らこびとの助けようとしている巨人族が、どれだけ残酷であるかも考えずに。 「僕たちは間違いなく、一瞬でも、きっと英雄(ヒーロー)だったんだ。」 悲しみに包まれた英雄譚は、ゆっくりと静かに幕を閉じていく。 タイトルは3人のうち1人が読んでください(3バージョンかいてあります、お好きなものを) 男女不明です、自由に演じてください。前読みはおすすめします。 548 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ブルー | 不問 | 37 | 未来が見えるこびと。能力の使い過ぎで生きるのもやっと。 |
パール | 不問 | 41 | むかし成り行きでリーダーをやらされてしまい、ずるずるとここまで頑張って無理をしてきた |
ミント | 不問 | 39 | みんなよりほんの少しだけ重い物を持てる。現状の絶望っぷりを一番理解しちゃったつらい子。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
『ギセイ系ヒーローズ』
パール:「何度でも言うよ。ブルー。未来を見て。」
ブルー:ああ、わかってる。わかってるよパール。そうしないと私たちは。
ミント:「もう、もういいじゃないか。はじめからこんな悪ふざけ、するべきじゃあなかったんだ。」
ブルー:そうだね、そうだねミント。ほんとは私たち、誰よりも優れてなんかいなかった。誰かを助けられる余裕なんかなかった。
パール:「もう、この英雄ごっこからは逃げられないんだよ。それなら。」
ミント:「やるしかないって?今にも死にそうなブルーをみてそう言うの?ブルーが死んだらボクたちは皆殺しさ!」
ブルー:「いい、いいんだよミント。やる。やる、から。」
ミント:「でも。」
パール:「しかたないんだ。ぼくたちは世界を救う、」
ブルー:「英雄(ヒーロー)でありつづけなきゃ、いけないんだから。」
0:タイトル以下三種から選択(発音は同じです)
ミント:『偽正系英雄譚(ギセイ系ヒーローズ)』
パール:『義務的忠義救世主(ギセイ系ヒーローズ)』
ブルー:『自己犠牲系偽英雄(ギセイ系ヒーローズ)』
0:
0:
パール:この世界のほとんどは、食物連鎖ってやつの一番上、巨人族が好き勝手やってた。
ブルー:私たちは1メートルも背たけがあるのに、巨人族と似てるから、こびと、なんて呼ばれてた。
ミント:こびと族は少なかった。少ないから、きちょうだー、なんて言って。檻に入れたり、変なごはんを食べさせられたりして、生きてきた。
パール:ある日、一緒の檻にいたこびとが言ったんだ。
ミント:この状況、なんとかできちゃうんじゃないかなって。
ブルー:巨人族は私たちを……たぶん、彼らなりに大事にしてくれた。同時に侮ってもいたんだと思う。
パール:こびとの仲間には、ものを触らずに動かせたり、飛んだり、泳いだり、殺したり。
ブルー:過去や未来を見たり、心や頭の中、病気を見たりする子もいた。
パール:これ、もっとちゃんと理解してもらえたら、巨人族を助けられる。かくれてる仲間も平和に暮らせるんじゃないかって。
ミント:甘かったんだよ。
ブルー:災害に争乱、経済破綻に疑心暗鬼。そんな巨人族の世界を救うヒーローになれるなんて。
パール:でも、だれだってヒーローに憧れるでしょ?タスケテとすがられたら、きっと悪い気はしないでしょ?
ミント:自分たち以外のいきものに、どれだけ巨人族が残酷か。
ブルー:そんなあたりまえのこと。
ミント:分かっていたはずなのに。
パール:12のこびとは、巨人族を救う英雄として、名乗りを上げたんだ。
0:
ブルー:……はあ、はあ、はあ。
ブルー:油の浮いた泥に顔をうずめるような、嫌悪感。耳にもそれは入って来て、目をひらけばじくじくと痛む。
ブルー:それでも、見なくてはならない。聞かなくてはならない。
ミント:「もう、もういいんじゃないかなパール。死んでしまっては元も子もないよ。」
パール:「なにか情報をつかんでもらうまでは頑張ってもらわないと。もうはったりだけでは巨人族たちも納得しないんだよ。」
ミント:「どんなにがんばったって、殺されるのが早いか遅いかだろう?過去を見たサフィーやテレポートを見せたコハクはどうなった?」
パール:「……同じになるとは限らない。二人の死があって、巨人族だって考えを改めたかも。」
ミント:「こんなことになるなら、そうそうに見捨てるべきだったんだ。だってボクたちはえ……(英雄じゃない)」
パール:「英雄だ。ぼくたちが助けずに、だれが彼らを救うんだ?」
ブルー:「もうやめて。」
ミント:「……ブルー。」
ブルー:「情報は、みらいは、ふたつ。巨人族が動いたら変わる情報と、変えられない確定未来。」
パール:「おつかれさま、ブルー。確定から聞きたいな。」
ブルー:「西の地域の雨は止まない。二か月は間違いなく晴れの日はこない。」
パール:「……はあ。巨人族は喜ばないだろうな。」
ミント:「あいつらがめちゃくちゃしたせいに決まってる。」
パール:「まったく、ミント。……ブルー、もうひとつは?」
ブルー:「……だれかが、あらそいをはじめる。」
パール:「それは大きい?」
ブルー:「一部ではそうかも。この情報を聞いて、やめるかもしれないし、もっとひどくなるかも。」
パール:「そう……だね。ありがとう、ブルー。」
ミント:「どうするの。もう残ったのはボクたちだけ。何の能力もないパール、ちょっと力持ちなだけのボク、今にも倒れそうなブルー。」
ブルー:「ごめん、もっといいみらいが教えられたら、きっと巨人族におびえなくてすむのに。」
パール:「そんなことないよ。こっちはブルーにずっとたよりきりだ。……くやしいことにね。」
ミント:「巨人族のところに行くのかい?」
パール:「それしかない。」
ミント:「ほんとうに?本当にそれは一番いい道?」
ブルー:いちばんって、なんだろう。
ミント:「パール、足手まとい、というかいらないこといいそうだからボクはのこるよ。けど……。」
ブルー:いちばんの幸せって、私たちのいちばんのだいじって、なんだったっけ。
パール:「胃が痛いのには慣れたって。ミントこそ、ブルーのことたのむよ。」
ブルー:疲れ切った意識の片隅で、あざだらけの、ボロボロのパールが頭をよぎった。
0:
ミント:「……ブルー。」
ブルー:視界がはっきりしない。なんだかぼんやりとして、死、っていうそれのまとわりつくどろどろ……
パール:「しかたない、背負えるか、ミント。」
ミント:「そんな、パールだってその傷じゃあ……」
パール:「僕は大丈夫。僕よりブルーの力がこびとには必要でしょ。」
ミント:「パールがいらない理由になんてならない!!」
パール:「自分で歩けるっていっただけじゃないか。」
ブルー:きっと未来視を使いすぎたんだ。そういえば、私たち、自分たちのことは全然気にしてこなかったな……。
ミント:「ねえ、ほんとに危なかったら置いていくからね?」
パール:「それでいい。みんなを、ひとりでも多く救うのが僕の忠義であり、僕がなれるかもしれなかった英雄だと思うから。」
ミント:「ボクは生き汚いんだ。正義なんかじゃない。……パールのようには、なれない偽物の正義だよ。」
パール:「ここまでいっしょに来てくれた。十分さ。」
ブルー:もう手足も動かない。口も動かないかもだけど・・・それなら最後に、ふたりを、ふたりの未来を。
0:
ブルー:私が、置いて行かれるみらい。それでいい。ふたりだけでもどうか穏やかな日々を。
パール:「僕が、殺した。」
ブルー:パール?その顔は狂気をたたえている。
ミント:「ちがうよ、ブルーはがんばった。みんなのために。そうでしょ?」
ブルー:ミントの目はくらい。
ブルー:ああでも、支え合いながら、こじんまりと生きていくのは、悪くないんじゃない、かな?
0:
ブルー:私を連れて逃げるみらい。
ブルー:ああ、どうして。どうして巨人族は私たちを追いかけてくるのだろう。
ブルー:そんなの、そんなのすぐ追いつかれてしまう。
ブルー:銃撃が、私にあたる。きっと、きっと弾除けにはなれた。
ブルー:ああ、ダメ、ふりかえっちゃ。そのままにげて。
ブルー:にげて、にげて、ふたりだけでも、しあわせに・・・。
ブルー:あ。
ブルー:し あ わ せ って、なんだっけ。
0:
ミント:「ブルー!」
パール「走れミント!」
ミント:「捨ててなんか行けない!!ブルーはボクのせいで……」
パール:「ばか!あぶない!!」
0:
ブルー:そこは檻の中。
ミント:熱くも寒くもないし、
パール:風も草木もない小部屋。
ミント:保護なんていらなかった。相互理解なんて夢だった。
パール:それでもぼくらは、英雄ごっこをはじめてしまったから。
ブルー:きっとこの舞台からはおりられない。
パール:ヒーローってなんだろう。
ミント:助けてって、言えば助けてもらえたのかな。
ブルー:もう。なにもみたくないのに。
ミント:傷の治りきらない手でつかんだ、ちいさく温かな手。
パール:くるしそうだけど、まちがいなく聞こえてくるふたりの命のあかし。
ブルー:犠牲になった他の子のデータのおかげで、わたしたちは生かされている。
0:
ブルー:「ねえ、ミント、パール。」
ミント:「なに。」
パール:「ブルーが話すのはめずらしいね。」
ブルー:「今、しあわせ?」
ミント:「そうだね、きっと……」
パール:「三人一緒でいられるのは、落ち着くかな。」
パール:「……ブルー?」
ブルー:「……。」
ミント:「パール、君はどうだった?」
パール:「なに、を。」
ミント:「仲間を駒に使うヒーローごっこは楽しかったかな?」
パール:「それはっっ!!」
ミント:「君だからここまでやれた。」
パール:「は?」
ミント:「リーダーなんて、ほんとは嫌だったくせに。この偽善者め。」
パール:「……ミント。」
ミント:「これで喜劇は終わりだ。」
パール:「ミント?ミント!?」
0:
0:
ブルー:私たちが退場してもだいじょうぶ。
ミント:わかるでしょ?
パール:英雄(ヒーロー)になりたいやつは腐るほどいる、か。
0:
0:
ブルー:巨人族とてさまざまだ。全員が残虐なわけでも、合理的なわけでも、優しくないわけでもない。
ミント:こびとが巨人族に歩み寄ったこと、その末に不憫な扱いや暴力を受けたニュースは小さく、それでいて大きな波を起こした。世界は世界なりに、こびとを救おうという大きな潮流にのまれはじめていた。
パール:ブルーにはもう何も見えない。
ブルー:それが、嬉しかった。
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『ギセイ系ヒーローズ』
パール:「何度でも言うよ。ブルー。未来を見て。」
ブルー:ああ、わかってる。わかってるよパール。そうしないと私たちは。
ミント:「もう、もういいじゃないか。はじめからこんな悪ふざけ、するべきじゃあなかったんだ。」
ブルー:そうだね、そうだねミント。ほんとは私たち、誰よりも優れてなんかいなかった。誰かを助けられる余裕なんかなかった。
パール:「もう、この英雄ごっこからは逃げられないんだよ。それなら。」
ミント:「やるしかないって?今にも死にそうなブルーをみてそう言うの?ブルーが死んだらボクたちは皆殺しさ!」
ブルー:「いい、いいんだよミント。やる。やる、から。」
ミント:「でも。」
パール:「しかたないんだ。ぼくたちは世界を救う、」
ブルー:「英雄(ヒーロー)でありつづけなきゃ、いけないんだから。」
0:タイトル以下三種から選択(発音は同じです)
ミント:『偽正系英雄譚(ギセイ系ヒーローズ)』
パール:『義務的忠義救世主(ギセイ系ヒーローズ)』
ブルー:『自己犠牲系偽英雄(ギセイ系ヒーローズ)』
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パール:この世界のほとんどは、食物連鎖ってやつの一番上、巨人族が好き勝手やってた。
ブルー:私たちは1メートルも背たけがあるのに、巨人族と似てるから、こびと、なんて呼ばれてた。
ミント:こびと族は少なかった。少ないから、きちょうだー、なんて言って。檻に入れたり、変なごはんを食べさせられたりして、生きてきた。
パール:ある日、一緒の檻にいたこびとが言ったんだ。
ミント:この状況、なんとかできちゃうんじゃないかなって。
ブルー:巨人族は私たちを……たぶん、彼らなりに大事にしてくれた。同時に侮ってもいたんだと思う。
パール:こびとの仲間には、ものを触らずに動かせたり、飛んだり、泳いだり、殺したり。
ブルー:過去や未来を見たり、心や頭の中、病気を見たりする子もいた。
パール:これ、もっとちゃんと理解してもらえたら、巨人族を助けられる。かくれてる仲間も平和に暮らせるんじゃないかって。
ミント:甘かったんだよ。
ブルー:災害に争乱、経済破綻に疑心暗鬼。そんな巨人族の世界を救うヒーローになれるなんて。
パール:でも、だれだってヒーローに憧れるでしょ?タスケテとすがられたら、きっと悪い気はしないでしょ?
ミント:自分たち以外のいきものに、どれだけ巨人族が残酷か。
ブルー:そんなあたりまえのこと。
ミント:分かっていたはずなのに。
パール:12のこびとは、巨人族を救う英雄として、名乗りを上げたんだ。
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ブルー:……はあ、はあ、はあ。
ブルー:油の浮いた泥に顔をうずめるような、嫌悪感。耳にもそれは入って来て、目をひらけばじくじくと痛む。
ブルー:それでも、見なくてはならない。聞かなくてはならない。
ミント:「もう、もういいんじゃないかなパール。死んでしまっては元も子もないよ。」
パール:「なにか情報をつかんでもらうまでは頑張ってもらわないと。もうはったりだけでは巨人族たちも納得しないんだよ。」
ミント:「どんなにがんばったって、殺されるのが早いか遅いかだろう?過去を見たサフィーやテレポートを見せたコハクはどうなった?」
パール:「……同じになるとは限らない。二人の死があって、巨人族だって考えを改めたかも。」
ミント:「こんなことになるなら、そうそうに見捨てるべきだったんだ。だってボクたちはえ……(英雄じゃない)」
パール:「英雄だ。ぼくたちが助けずに、だれが彼らを救うんだ?」
ブルー:「もうやめて。」
ミント:「……ブルー。」
ブルー:「情報は、みらいは、ふたつ。巨人族が動いたら変わる情報と、変えられない確定未来。」
パール:「おつかれさま、ブルー。確定から聞きたいな。」
ブルー:「西の地域の雨は止まない。二か月は間違いなく晴れの日はこない。」
パール:「……はあ。巨人族は喜ばないだろうな。」
ミント:「あいつらがめちゃくちゃしたせいに決まってる。」
パール:「まったく、ミント。……ブルー、もうひとつは?」
ブルー:「……だれかが、あらそいをはじめる。」
パール:「それは大きい?」
ブルー:「一部ではそうかも。この情報を聞いて、やめるかもしれないし、もっとひどくなるかも。」
パール:「そう……だね。ありがとう、ブルー。」
ミント:「どうするの。もう残ったのはボクたちだけ。何の能力もないパール、ちょっと力持ちなだけのボク、今にも倒れそうなブルー。」
ブルー:「ごめん、もっといいみらいが教えられたら、きっと巨人族におびえなくてすむのに。」
パール:「そんなことないよ。こっちはブルーにずっとたよりきりだ。……くやしいことにね。」
ミント:「巨人族のところに行くのかい?」
パール:「それしかない。」
ミント:「ほんとうに?本当にそれは一番いい道?」
ブルー:いちばんって、なんだろう。
ミント:「パール、足手まとい、というかいらないこといいそうだからボクはのこるよ。けど……。」
ブルー:いちばんの幸せって、私たちのいちばんのだいじって、なんだったっけ。
パール:「胃が痛いのには慣れたって。ミントこそ、ブルーのことたのむよ。」
ブルー:疲れ切った意識の片隅で、あざだらけの、ボロボロのパールが頭をよぎった。
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ミント:「……ブルー。」
ブルー:視界がはっきりしない。なんだかぼんやりとして、死、っていうそれのまとわりつくどろどろ……
パール:「しかたない、背負えるか、ミント。」
ミント:「そんな、パールだってその傷じゃあ……」
パール:「僕は大丈夫。僕よりブルーの力がこびとには必要でしょ。」
ミント:「パールがいらない理由になんてならない!!」
パール:「自分で歩けるっていっただけじゃないか。」
ブルー:きっと未来視を使いすぎたんだ。そういえば、私たち、自分たちのことは全然気にしてこなかったな……。
ミント:「ねえ、ほんとに危なかったら置いていくからね?」
パール:「それでいい。みんなを、ひとりでも多く救うのが僕の忠義であり、僕がなれるかもしれなかった英雄だと思うから。」
ミント:「ボクは生き汚いんだ。正義なんかじゃない。……パールのようには、なれない偽物の正義だよ。」
パール:「ここまでいっしょに来てくれた。十分さ。」
ブルー:もう手足も動かない。口も動かないかもだけど・・・それなら最後に、ふたりを、ふたりの未来を。
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ブルー:私が、置いて行かれるみらい。それでいい。ふたりだけでもどうか穏やかな日々を。
パール:「僕が、殺した。」
ブルー:パール?その顔は狂気をたたえている。
ミント:「ちがうよ、ブルーはがんばった。みんなのために。そうでしょ?」
ブルー:ミントの目はくらい。
ブルー:ああでも、支え合いながら、こじんまりと生きていくのは、悪くないんじゃない、かな?
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ブルー:私を連れて逃げるみらい。
ブルー:ああ、どうして。どうして巨人族は私たちを追いかけてくるのだろう。
ブルー:そんなの、そんなのすぐ追いつかれてしまう。
ブルー:銃撃が、私にあたる。きっと、きっと弾除けにはなれた。
ブルー:ああ、ダメ、ふりかえっちゃ。そのままにげて。
ブルー:にげて、にげて、ふたりだけでも、しあわせに・・・。
ブルー:あ。
ブルー:し あ わ せ って、なんだっけ。
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ミント:「ブルー!」
パール「走れミント!」
ミント:「捨ててなんか行けない!!ブルーはボクのせいで……」
パール:「ばか!あぶない!!」
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ブルー:そこは檻の中。
ミント:熱くも寒くもないし、
パール:風も草木もない小部屋。
ミント:保護なんていらなかった。相互理解なんて夢だった。
パール:それでもぼくらは、英雄ごっこをはじめてしまったから。
ブルー:きっとこの舞台からはおりられない。
パール:ヒーローってなんだろう。
ミント:助けてって、言えば助けてもらえたのかな。
ブルー:もう。なにもみたくないのに。
ミント:傷の治りきらない手でつかんだ、ちいさく温かな手。
パール:くるしそうだけど、まちがいなく聞こえてくるふたりの命のあかし。
ブルー:犠牲になった他の子のデータのおかげで、わたしたちは生かされている。
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ブルー:「ねえ、ミント、パール。」
ミント:「なに。」
パール:「ブルーが話すのはめずらしいね。」
ブルー:「今、しあわせ?」
ミント:「そうだね、きっと……」
パール:「三人一緒でいられるのは、落ち着くかな。」
パール:「……ブルー?」
ブルー:「……。」
ミント:「パール、君はどうだった?」
パール:「なに、を。」
ミント:「仲間を駒に使うヒーローごっこは楽しかったかな?」
パール:「それはっっ!!」
ミント:「君だからここまでやれた。」
パール:「は?」
ミント:「リーダーなんて、ほんとは嫌だったくせに。この偽善者め。」
パール:「……ミント。」
ミント:「これで喜劇は終わりだ。」
パール:「ミント?ミント!?」
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ブルー:私たちが退場してもだいじょうぶ。
ミント:わかるでしょ?
パール:英雄(ヒーロー)になりたいやつは腐るほどいる、か。
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ブルー:巨人族とてさまざまだ。全員が残虐なわけでも、合理的なわけでも、優しくないわけでもない。
ミント:こびとが巨人族に歩み寄ったこと、その末に不憫な扱いや暴力を受けたニュースは小さく、それでいて大きな波を起こした。世界は世界なりに、こびとを救おうという大きな潮流にのまれはじめていた。
パール:ブルーにはもう何も見えない。
ブルー:それが、嬉しかった。
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