台本概要

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タイトル 夕暮れの屋上
作者名 月儚(つくも)レイ  (@rose_moon44)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 「何かも失った私を迎えたのは、あまりにも美しい夕暮れだった…。いっそあの赤い空に身を委ねてしまえば…」

こちらは、夢破れた少女の1人語りのような朗読、1人読み向けの台本になります。
1人語りですが若干の百合要素があります。

朗読の際のお時間のほうは5~10分ほどかと思います。

女性向け台本にはなりますが、男性の方でもお手にとっていただければ嬉しいです。

ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
- 主人公、語り手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0: 0:通い慣れた廃ビルの屋上。 0:逃げるようにやってきた私を迎えたのは、いつにも増して鮮やかすぎる夕陽だった。 0: 0:そのオレンジ色の優しさに誘われてしまったのだろうか。 0:私の頬を、一粒の雫がつたう。 0: 0:一粒こぼれ、もう一粒こぼれ…。 0: 0:こぼれ出した雫は止まることを知らないかのように流れ落ちてくる。 0:私は、ただただ静かに見守っているような夕陽へと、すがるように崩れ落ちた。 0: 0: 0:夢のためにずっと…ずっと走り続けてきた。ようやく、あと少しで掴み取れるはずだった。本当に、あと少しで…。 0:けれど…私を待っていたのは栄光でも祝福でもなく、感じたことのない喪失と絶望だけ。 0:嫉妬という名の刃(やいば)が私を貫き、全てを奪い、壊していった。 0: 0:夢に敗れ… 0: 0:人に裏切られ… 0: 0: 0:何を追えばいいのか…信じればいいのかさえわからない、終わりのないトンネルに迷い込んでしまった。 0:けれど私にはもう、抜けようとあがく力はない…。 0: 0: 0:いっそあの優しい空へと向かえば、救われるのだろうか。 0:それとも、あれは救いのフリをして奈落へ引きずり込もうとする、魔性(ましょう)なのだろうか。 0: 0:もう、どちらでもいい…。 0:この全てを失った世界から逃げられるのならば、なんでも…。 0: 0: 0:ゆらりと立ち上がり、夕陽に誘われるまま飛翔(ひしょう)へと近づいて行く…。 0:恐怖などない…。……ない、はずなのに…こんなにも足が震えるのは、どうして? 0: 0: 0:突如、腕に強い力を感じて、視界がぐらりと揺れた。 0:抗うこともできずに倒れると、すぐに頬へするどくて熱い衝撃が走った。 0: 0:追いつかない思考と視線を向けると、そこには夕陽よりも頬を赤くした少女が、涙を流して私を見つめていた。 0:よく見知った顔…こんな私にいつも話しかけて来ては世話を焼きたがる、不思議な可愛いらしい子だ。 0: 0: 0:しかしどうしてあなたがここに…? 0:なぜ、あなたがそんなにも泣いている…? 0: 0: 0:未だ思考が追いつかない私。そんな私を、あなたは力いっぱい抱きしめた。 0:か細い腕からは想像できないような力で強く…壊れてしまいそうなくらい、強く。 0: 0:そして涙に濡れた強くて綺麗なその瞳に、私だけを映して怒っている。まるで自分のことのように、とても悲しそうに…。 0: 0:不思議…あなたのまっすぐな瞳を見ていると、まだ生きていたいと心が熱くなってくる。 0: 0: 0:優しいぬくもりが私の髪を撫でてゆく…。小さくて温かい、あなたの手。どうしてこの人の手はこんなにも温かいんだろう…。 0:止まっていたはずの雫がまた溢れ出す。けれど今度の雫は悲しいだけではなくて…喜んでもいるようだった。 0: 0: …ありがとう……。 0: 0: 0: 0:どれくらいこうしていたのだろう…温かい抱擁(ほうよう)の癒しに時間すら忘れていたらしい。 0:いつの間にか、辺りをあんなにも赤く支配していた夕陽はどこかへと消え去り、穏やかな月明りに包まれていた。 0: 0: 0:帰ろう、もう一度…。 0: 0: 0:私はあなたとしっかり、強く手を繋いで、先ほどと表情を変えた夜の空に背を向けて歩き出した。 0: 0: 0:(終)

0: 0: 0:通い慣れた廃ビルの屋上。 0:逃げるようにやってきた私を迎えたのは、いつにも増して鮮やかすぎる夕陽だった。 0: 0:そのオレンジ色の優しさに誘われてしまったのだろうか。 0:私の頬を、一粒の雫がつたう。 0: 0:一粒こぼれ、もう一粒こぼれ…。 0: 0:こぼれ出した雫は止まることを知らないかのように流れ落ちてくる。 0:私は、ただただ静かに見守っているような夕陽へと、すがるように崩れ落ちた。 0: 0: 0:夢のためにずっと…ずっと走り続けてきた。ようやく、あと少しで掴み取れるはずだった。本当に、あと少しで…。 0:けれど…私を待っていたのは栄光でも祝福でもなく、感じたことのない喪失と絶望だけ。 0:嫉妬という名の刃(やいば)が私を貫き、全てを奪い、壊していった。 0: 0:夢に敗れ… 0: 0:人に裏切られ… 0: 0: 0:何を追えばいいのか…信じればいいのかさえわからない、終わりのないトンネルに迷い込んでしまった。 0:けれど私にはもう、抜けようとあがく力はない…。 0: 0: 0:いっそあの優しい空へと向かえば、救われるのだろうか。 0:それとも、あれは救いのフリをして奈落へ引きずり込もうとする、魔性(ましょう)なのだろうか。 0: 0:もう、どちらでもいい…。 0:この全てを失った世界から逃げられるのならば、なんでも…。 0: 0: 0:ゆらりと立ち上がり、夕陽に誘われるまま飛翔(ひしょう)へと近づいて行く…。 0:恐怖などない…。……ない、はずなのに…こんなにも足が震えるのは、どうして? 0: 0: 0:突如、腕に強い力を感じて、視界がぐらりと揺れた。 0:抗うこともできずに倒れると、すぐに頬へするどくて熱い衝撃が走った。 0: 0:追いつかない思考と視線を向けると、そこには夕陽よりも頬を赤くした少女が、涙を流して私を見つめていた。 0:よく見知った顔…こんな私にいつも話しかけて来ては世話を焼きたがる、不思議な可愛いらしい子だ。 0: 0: 0:しかしどうしてあなたがここに…? 0:なぜ、あなたがそんなにも泣いている…? 0: 0: 0:未だ思考が追いつかない私。そんな私を、あなたは力いっぱい抱きしめた。 0:か細い腕からは想像できないような力で強く…壊れてしまいそうなくらい、強く。 0: 0:そして涙に濡れた強くて綺麗なその瞳に、私だけを映して怒っている。まるで自分のことのように、とても悲しそうに…。 0: 0:不思議…あなたのまっすぐな瞳を見ていると、まだ生きていたいと心が熱くなってくる。 0: 0: 0:優しいぬくもりが私の髪を撫でてゆく…。小さくて温かい、あなたの手。どうしてこの人の手はこんなにも温かいんだろう…。 0:止まっていたはずの雫がまた溢れ出す。けれど今度の雫は悲しいだけではなくて…喜んでもいるようだった。 0: 0: …ありがとう……。 0: 0: 0: 0:どれくらいこうしていたのだろう…温かい抱擁(ほうよう)の癒しに時間すら忘れていたらしい。 0:いつの間にか、辺りをあんなにも赤く支配していた夕陽はどこかへと消え去り、穏やかな月明りに包まれていた。 0: 0: 0:帰ろう、もう一度…。 0: 0: 0:私はあなたとしっかり、強く手を繋いで、先ほどと表情を変えた夜の空に背を向けて歩き出した。 0: 0: 0:(終)