台本概要

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タイトル あやかしの姫
作者名 月儚(つくも)レイ  (@rose_moon44)
ジャンル ファンタジー
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 「ふふふ、このような所へ迷い込むとは…。さぁ、来い…哀れな人の子よ…。わらわが救ってやろうぞ…。」

こちらは、妖艶なあやかしの姫を主人公とした1人語りの1人読み、朗読台本になります。

朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。

女性向け台本にはなりますが、男性の方でもお手にとっていただければ嬉しいです。

ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
あやかしの姫 - あやかしを統べる妖艶な姫。主人公、語り手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0: 0:おやおや…。 0:このような所に人間が迷い込んでくるとは…。 0:ふふふ…。 0:   0:ようこそ、我が領域へ…と言っておこうか、人の子よ。 0:わらわはこの領域の主。 0:あやかし共を統べる姫じゃ。 0:  0:ん?何を怖がっておる…? 0:取って喰う気などありはせん…。 0:ほれ、そう怖がらずにこちらへ来い。 0:   0:そなたのような者がここへ迷いこんでくるのはいつぶりかのう? 0:ここへ迷い込む、ということはな? 0:単なる偶然ではないのじゃ。 0:まぁ、この領域で、わらわと出逢うことは幸運じゃがな。 0:  0:ふふふふ。  0:   0:そうそう、その顔じゃ。 0:ここへ迷い込んで来た者はみな、そうして不思議そうな顔をしおる。 0:自らが開いた扉であるにも関わらず、な…。 0: 0:ふふ、どういうことか知りたいか? 0:ならば、もっとこちらへ来い。 0:恐れず…わらわの手の届くところまで…ほれ、来るのじゃ。 0:   0:そう…それでいい。 0:ならば教えてやろう…。 0:そなたがこの領域へと迷い込んだ理由…。 0:それは…ここ…。 0:そう、そなたがこの胸に抱いた、闇、絶望、憎しみ…。 0:おお…おお…。 0:かようにまで黒い物を持つ者はとくに久しい。 0:わらわとまみえたことも、あながち幸運だけではないのかもしれぬな?    0:この黒い物を強く胸に抱き… 0:人間の世を捨てようとした者… 0:すなわち、自ら命を絶とうとした者だけが、人の身でここへと迷い込むことがあるのじゃ。 0: 0:くくく…ようやくわかってきたか? 0:自らが抱いたものに覚えがあるじゃろう? 0:  0:ほう…よかろう、話す気になったのなら申してみよ。 0: 0:ふむ、ふむ…。 0:…そう…。そうか。 0:裏切りによる絶望、憎しみ…。 0:行き場も、頼る者さえおらぬ孤独…。 0: 0:なるほどのう。 0: 0:よくある話、と人ならば言うのであろう。 0:じゃが…それらに触れて抱く闇の深さというのはまさしく千差万別(せんさばんべつ)。 0:   0:そなたが過ちを犯したわけではない。 0:  0:人の世は、あまりに醜い。 0:心というのものをここまで真っ黒く染めてしまうほどに…。 0:この黒く染まってしまった心を、もう戻せぬほどに…。 0:そして、どこかへと逃げることも許さぬほどに。  0:執拗に責め立て、傷付け、追い詰める。 0:   0:人の心など、ただでさえ脆い。 0:そのような脆い心を晒すには…あの世界はあまりにも汚すぎる。 0:  0:故に… 0:そこから逃げ出そうとすることも… 0:ここまで心を真っ黒にしてしまうことも… 0:決して悪いことではない。 0:   0:しかし… 0:そなた、かような人の世に未練があるな…? 0:ここまで心を闇に堕としてなお、まだ何かを期待しておる。 0:くくく、隠しても無駄じゃ。 0:わらわには全て、お見通しなのじゃからな。 0:   0:いかにあやかしの姫といえど、今のそなたを無理矢理引きずり込むことはできぬ。 0:言うたであろう?取って喰いはせぬ、とな。 0:あれはできぬという意味もあるのじゃ。 0:  0:そなたが一抹(いちまつ)の期待に賭け、もう一度人の世へと帰るというのなら… 0:振り返ることなく、そなたの後ろの道を行けばよい…。 0:   0:じゃが…わらわならそなたを救ってやれる。 0:人の世に嫌気がさしてここへ来たのじゃろう…? 0:   0:ほれ…来い。わらわの胸の中へと…そう、来るがよい。 0:   0:一度ここまで心を黒く染めた現世に何を期待するというのじゃ…? 0:もう、よいではないか…。 0:  0:人であることなど、捨ててしまえ…。 0:人であったことなど、忘れてしまえ…。 0:   0:何も恐れず… 0:何も考えず… 0:穢れも、何も知らぬ赤子のように…。 0:こうして、わらわに全てを委ねておればよいのじゃ…。 0:   0:さぁ… 0:あの道を行き、淡い期待と共にもう一度醜く残酷な人の世に帰るか…? 0:   0:それとも… 0:全てを捨て、全てを忘れて… 0:このままわらわに抱かれ、わらわの救いを受けるか…? 0:   0:決めるのは…そなたじゃ…。 0:   0:ふふふ…ふふふふふふ…。 0: 0: 0:(終)

0: 0: 0:おやおや…。 0:このような所に人間が迷い込んでくるとは…。 0:ふふふ…。 0:   0:ようこそ、我が領域へ…と言っておこうか、人の子よ。 0:わらわはこの領域の主。 0:あやかし共を統べる姫じゃ。 0:  0:ん?何を怖がっておる…? 0:取って喰う気などありはせん…。 0:ほれ、そう怖がらずにこちらへ来い。 0:   0:そなたのような者がここへ迷いこんでくるのはいつぶりかのう? 0:ここへ迷い込む、ということはな? 0:単なる偶然ではないのじゃ。 0:まぁ、この領域で、わらわと出逢うことは幸運じゃがな。 0:  0:ふふふふ。  0:   0:そうそう、その顔じゃ。 0:ここへ迷い込んで来た者はみな、そうして不思議そうな顔をしおる。 0:自らが開いた扉であるにも関わらず、な…。 0: 0:ふふ、どういうことか知りたいか? 0:ならば、もっとこちらへ来い。 0:恐れず…わらわの手の届くところまで…ほれ、来るのじゃ。 0:   0:そう…それでいい。 0:ならば教えてやろう…。 0:そなたがこの領域へと迷い込んだ理由…。 0:それは…ここ…。 0:そう、そなたがこの胸に抱いた、闇、絶望、憎しみ…。 0:おお…おお…。 0:かようにまで黒い物を持つ者はとくに久しい。 0:わらわとまみえたことも、あながち幸運だけではないのかもしれぬな?    0:この黒い物を強く胸に抱き… 0:人間の世を捨てようとした者… 0:すなわち、自ら命を絶とうとした者だけが、人の身でここへと迷い込むことがあるのじゃ。 0: 0:くくく…ようやくわかってきたか? 0:自らが抱いたものに覚えがあるじゃろう? 0:  0:ほう…よかろう、話す気になったのなら申してみよ。 0: 0:ふむ、ふむ…。 0:…そう…。そうか。 0:裏切りによる絶望、憎しみ…。 0:行き場も、頼る者さえおらぬ孤独…。 0: 0:なるほどのう。 0: 0:よくある話、と人ならば言うのであろう。 0:じゃが…それらに触れて抱く闇の深さというのはまさしく千差万別(せんさばんべつ)。 0:   0:そなたが過ちを犯したわけではない。 0:  0:人の世は、あまりに醜い。 0:心というのものをここまで真っ黒く染めてしまうほどに…。 0:この黒く染まってしまった心を、もう戻せぬほどに…。 0:そして、どこかへと逃げることも許さぬほどに。  0:執拗に責め立て、傷付け、追い詰める。 0:   0:人の心など、ただでさえ脆い。 0:そのような脆い心を晒すには…あの世界はあまりにも汚すぎる。 0:  0:故に… 0:そこから逃げ出そうとすることも… 0:ここまで心を真っ黒にしてしまうことも… 0:決して悪いことではない。 0:   0:しかし… 0:そなた、かような人の世に未練があるな…? 0:ここまで心を闇に堕としてなお、まだ何かを期待しておる。 0:くくく、隠しても無駄じゃ。 0:わらわには全て、お見通しなのじゃからな。 0:   0:いかにあやかしの姫といえど、今のそなたを無理矢理引きずり込むことはできぬ。 0:言うたであろう?取って喰いはせぬ、とな。 0:あれはできぬという意味もあるのじゃ。 0:  0:そなたが一抹(いちまつ)の期待に賭け、もう一度人の世へと帰るというのなら… 0:振り返ることなく、そなたの後ろの道を行けばよい…。 0:   0:じゃが…わらわならそなたを救ってやれる。 0:人の世に嫌気がさしてここへ来たのじゃろう…? 0:   0:ほれ…来い。わらわの胸の中へと…そう、来るがよい。 0:   0:一度ここまで心を黒く染めた現世に何を期待するというのじゃ…? 0:もう、よいではないか…。 0:  0:人であることなど、捨ててしまえ…。 0:人であったことなど、忘れてしまえ…。 0:   0:何も恐れず… 0:何も考えず… 0:穢れも、何も知らぬ赤子のように…。 0:こうして、わらわに全てを委ねておればよいのじゃ…。 0:   0:さぁ… 0:あの道を行き、淡い期待と共にもう一度醜く残酷な人の世に帰るか…? 0:   0:それとも… 0:全てを捨て、全てを忘れて… 0:このままわらわに抱かれ、わらわの救いを受けるか…? 0:   0:決めるのは…そなたじゃ…。 0:   0:ふふふ…ふふふふふふ…。 0: 0: 0:(終)