台本概要

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タイトル 朗読屋シリーズ「孤独の森」
作者名 月儚(つくも)レイ  (@rose_moon44)
ジャンル ファンタジー
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 「おや?いらっしゃいませ。ふふ、私はしがない朗読屋。ここへ訪れたお客様にぴったりのお話をご用意して、お導きさせていただいております…あなた様には、こちらなどいかかでしょうか」

本を朗読するような、不思議な世界観の1人読み、朗読台本になります。

性別は不問なので、性別を気にせずどなたでもお手にとっていただけると嬉しいです。

朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。

こちらのシリーズは朗読屋シリーズとして書かせていただいているので、ぜひ他の作品も読んでいただければと思います。

ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
朗読屋 不問 - 主人公、語り手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
(語り口調): 0: 0: 0:おや…ようこそお越しくださいました。 0:ここにお越しになられたということは…なにかお話をご所望ですね? 0:ふふ。そのような不思議な顔をなさらずに… 0:ここは求める者だけが来ることの出来る特別な場所。 0:ほら、このように…あなた様にぴったりの本もご用意してあります。 0:どうぞ、しばしの間何も考えず…全てを忘れ、お話の世界を旅してくださいませ。 0:では…さっそく、お導きさせていただきますね。 0: (朗読口調): 0: 0: 0:「孤独の森」 0: 0: 0:とある深い森の小さな家に、1人の少女が住んでおりました。 0:少女の一族は、かつて禁忌を犯した呪われし一族として国から迫害され… 0:早くに両親を亡くし、頼る者もいない少女は、何もない森で、1人寂しく暮らしていました。 0: 少女:「どうして…私が…」 0: 0: 0:ひもじく、寂しい、孤独だけの日々。 0:一族が何をしたのかさえわからない、理不尽な境遇。 0:少女は誰にもぶつけることのできない黒い気持ちをいつも抱き、暮らしていました。 0:しかし、森の物資だけでは暮らしてゆくことはできません。 0:何か月かに1度、両親の残したわずかな財産で少女は街へ買い出しに行っていました。 0: 0:顔を見られてはいけないので、すっぽりと頭からローブをかぶり… 0:誰と会話をすることもなく、必要な物だけを手に入れ、また孤独の森へ帰る。 0:華やかな街並み、行き交う人々… 0:妬ましく悔しい… 0:黒い気持ちを抑えつつ、少女は用事を済ませます。 0:足早に町を出ようとした時… 0:とても美しい女性と男性が、教会の前で踊っているのが目に入りました。 0:おそらく、結婚式でしょう。 0:大勢の人々に囲まれ、優雅に踊る二人。 0:自分とさほど歳も変わらなく見える花嫁は、見たこともないようなきらびやかなドレスを着て、美しいお化粧をして… 0:そして宝石のような幸せな笑みを浮かべて舞っているのです。 0:ふと、その花嫁と目が合ったような気がしました。 0:少女はギリっと…血がにじむほど唇を噛み締めます。 0: 少女:「どうして…どうして…」 0: 0: 0:少女は首を振り、その場から逃げるように立ち去りました。 0: 0:自分の家へと戻った時には、もう月が昇っていました。 0:今宵の月は、不気味なくらい真っ赤な満月でした。 0:その赤い月光が、漆黒の森を照らしています。 0:赤い部屋で、少女は泣いていました。 0: 少女:「どうして…私ばかりがこんな思いをしなければいけないの!!」 0: 0: 少女:「私がなにをしたというの…ねえ、誰か、お願い…お願いよ…」 0: 0: 少女:「どうか、私をここから連れ出して…あの女みたいに、明るい場所へ連れて行ってよ…」 0: 0: 0:床に崩れ落ち、誰にでも無く縋る(すがる)少女…。 0:そんな少女の耳に、どこからともなく突然声が聞こえました…。 0: ???:「哀れな少女よ…そなたの声、願い…しかと聞き届けた。」 0: 0: 0:不思議な声に、少女は驚き、辺りを見渡します。 0:しかし、誰の姿も見えません。 0: 少女:「誰…?あなたは、誰なの!?私の願いを聞き届けたって…」 0: ???:「そなたの心からの叫び、願いはたしかに届いた。私が、そなたを明るい場所へと連れて行ってやろう。」 0: 0: 0:恐ろしくも、優しくも聞こえる声に少女はただただ戸惑います。 0: ???:「何を恐れる?救いがほしいのだろう?さあ、手を伸ばせ…そなたが報われる時が来たのだ。」 0: 0: 0:その声に、やがて少女は静かに立ち上がりました。 0: 少女:「報われる…そう、そうよ…私ばかり、こんなにもつらい日々を送って…」 0: 0: 少女:「あなたが誰かなんかどうでもいい、この日々から抜け出せるなら…なんだって。さぁ!私を連れて行って!」 0: 0: 0:そう叫ぶように手を伸ばした瞬間… 0: ???:「その願い、叶えてやろう。愚かで美しい、可哀想な子よ…」 0: 0: 0:頭に響く声と共に、少女の目の前は真っ暗になりました。 0:  0:少女に光が戻った時… 0:目の前の光景にハッと驚きました。 0:そこは、いつも買い出しに行く街の風景でした。 0:そして、妙な感覚のする身体に触れてみると… 0:今まで触れたことのない手触りの布…そう、ドレスを着ていたのです。 0:そしてとてもいい香りが漂っており… 0:ふと向けた視線のすぐ先には、とても美しい男性が立っていて、自分に手を差し出していたのです。 0:少女の頭の中は、不思議と混乱もせず、冷静でした。 0: 少女:(この人…昼間に見た花婿だわ…。まさか、私はあの舞台に立っているの…!?) 0: 0: 0:少女が目を覚ました場所…それは、昼間にみた結婚式の舞台だったのです。 0: 少女:(あの声の人が連れて来てくれたの…?あぁ、神様!!) 0: 0: 0:少女はあふれ出しそうな感情を抑え、花婿の手を取りました。 0:まわりには、自分たちを祝福する大勢の人々。 0:花のように咲き誇る笑顔を浮かべ、歓声をあげる人々に囲まれて花婿と踊っているのです。 0: 少女:(この世界に、こんなにも明るい場所があったなんて…!!あぁ、なんて、なんて幸せなの!!) 0: 0: 0:ダンスなどしたがことないはずなのに、身体はまるで羽根のように軽く、舞台を舞っています。 0:そんなことも気にせず、幸せいっぱいで花婿と踊る少女… 0:しかし、観衆の先にいる女性に、ふと目が止まりました。 0:頭からローブをかぶった、惨めでひもじい、見覚えのある姿… 0: 0:そう、それはかつての少女… 0:いいえ、そのローブからのぞく顔に、少女は悲鳴を漏らしそうになりました。 0:それは昼間に見た、この花婿の、本当の花嫁だったのです。 0: 少女:(どういうこと…?私が、あの女の人の居場所を奪ったということ…?) 0: 0: 少女:(そんな…確かに黒い気持ちを抱いたけれど…でも、こんなことが…) 0: 0: 0:混乱する少女を、ローブの女性が恨めしそうに、まるで突き刺すような視線で睨みつけています。 0: 少女:(やめて…そんな目で私を見ないで…やめて…やめてやめて!お願い…許して…!) 0: 0: 少女:(こんなこと、望んでない…私はただ、明るい場所で笑いたかっただけなの…) 0: 0: 少女:(こんな幸せならいらない…こんなの、私が欲しかった幸せじゃない!!!) 0: 0: 0:悲鳴を上げそうになった瞬間、少女の目の前は再び真っ暗になりました。 0: 0:目を覚ますと…そこは見慣れた、あの赤い部屋でした。 0: ???:「なぜ戻った…私の救いをいらぬというのか?全てそなたが望んだことだろう」 0: 0: 0:それと同時に、あの不思議な声が響いてきます。 0: 少女:「そんな…あんなひどいこと、望んでいないわ!!」 0: 0: 0:少女は涙を流しながら叫びます。 0: ???:「他人を妬み、羨み、欲しがる…。そうしてそなたの一族も我を呼び出し、願い…他人から奪い、幸せを手に入れたのだぞ。」 0: 0: 0:一族…そう聞いて、少女は全てを悟りました。 0: 少女:「そう…一族の禁忌…それは悪魔、あなたを呼び出したことだったのね。」 0: 0: 悪魔:「いかにも。そなたの一族は禁忌を犯して私を呼び出し、契約をした。」 0: 0: 悪魔:「そなたは違うというのか?あの華やかな舞台が、幸せが、欲しくないのか?」 0: 0: 0:少女は落ち着いた様子で、首を振り答えます。 0: 少女:「いらない。他人の幸せに成り替わるなんて…あんな目を向けられて生きていくなんて…そんなものは幸せじゃない。」 0: 0: 0:少女の言葉に悪魔は少し戸惑いを見せました。 0: 悪魔:「愚かな…。そなたは一度、自ら望み、その意思で私の手を取った。悪魔であるこの私の手を。それを拒む意味を理解しているのか?」 0: 0: 0:悪魔の言葉に、少女は頷きます。 0: 少女:「あなたの言う通り…全然望んでいない、というと嘘になる…。私はたしかに、真っ黒な心であなたの手を取ったんだもの。」 0: 0: 0:そうすると、少女はどこかすっきりとした微笑みを浮かべ、悪魔に手を差し出します。 0: 少女:「さぁ、連れて行って。あんな幸せを得るくらいなら…また、孤独の日々に戻るくらいなら…」 0: 0: 0:魂を囚われても、悪魔と永遠の時を過ごすほうがきっと幸せだから……。 0: 0: 0:とある深い森にある、小さな家。 0:誰も住んでいない、寂しくて小さな家。 0:ここに誰が住んでいたのかさえ、誰も知らない小さな家。 0:けれどこの家にはひっそりと、小さいけれどとても美しい花が、枯れることなく咲いていて… 0:噂を聞きつけた人々はその可憐で不思議な花を見に訪れるらしい。 0: (語り口調):  0: 0: 0:ご清聴、感謝致します。 0:とても可哀想で、哀れな少女。 0:けれどその本当の心は誰よりも美しい…。 0:悪魔はそんな少女に、一体何を想ったのでしょうか。 0:妬み、羨み…人ならば誰しも覚えのある、この感情。 0:しかしふと、そんな黒い感情が悪魔を呼び出してしまうとしたら… 0:ふふふ。また次も、あなた様とこうしてお会いできることを願っていますよ。 0: 0:  0: 0:それでは、ご機嫌麗しゅう。 0:  0:(終)

(語り口調): 0: 0: 0:おや…ようこそお越しくださいました。 0:ここにお越しになられたということは…なにかお話をご所望ですね? 0:ふふ。そのような不思議な顔をなさらずに… 0:ここは求める者だけが来ることの出来る特別な場所。 0:ほら、このように…あなた様にぴったりの本もご用意してあります。 0:どうぞ、しばしの間何も考えず…全てを忘れ、お話の世界を旅してくださいませ。 0:では…さっそく、お導きさせていただきますね。 0: (朗読口調): 0: 0: 0:「孤独の森」 0: 0: 0:とある深い森の小さな家に、1人の少女が住んでおりました。 0:少女の一族は、かつて禁忌を犯した呪われし一族として国から迫害され… 0:早くに両親を亡くし、頼る者もいない少女は、何もない森で、1人寂しく暮らしていました。 0: 少女:「どうして…私が…」 0: 0: 0:ひもじく、寂しい、孤独だけの日々。 0:一族が何をしたのかさえわからない、理不尽な境遇。 0:少女は誰にもぶつけることのできない黒い気持ちをいつも抱き、暮らしていました。 0:しかし、森の物資だけでは暮らしてゆくことはできません。 0:何か月かに1度、両親の残したわずかな財産で少女は街へ買い出しに行っていました。 0: 0:顔を見られてはいけないので、すっぽりと頭からローブをかぶり… 0:誰と会話をすることもなく、必要な物だけを手に入れ、また孤独の森へ帰る。 0:華やかな街並み、行き交う人々… 0:妬ましく悔しい… 0:黒い気持ちを抑えつつ、少女は用事を済ませます。 0:足早に町を出ようとした時… 0:とても美しい女性と男性が、教会の前で踊っているのが目に入りました。 0:おそらく、結婚式でしょう。 0:大勢の人々に囲まれ、優雅に踊る二人。 0:自分とさほど歳も変わらなく見える花嫁は、見たこともないようなきらびやかなドレスを着て、美しいお化粧をして… 0:そして宝石のような幸せな笑みを浮かべて舞っているのです。 0:ふと、その花嫁と目が合ったような気がしました。 0:少女はギリっと…血がにじむほど唇を噛み締めます。 0: 少女:「どうして…どうして…」 0: 0: 0:少女は首を振り、その場から逃げるように立ち去りました。 0: 0:自分の家へと戻った時には、もう月が昇っていました。 0:今宵の月は、不気味なくらい真っ赤な満月でした。 0:その赤い月光が、漆黒の森を照らしています。 0:赤い部屋で、少女は泣いていました。 0: 少女:「どうして…私ばかりがこんな思いをしなければいけないの!!」 0: 0: 少女:「私がなにをしたというの…ねえ、誰か、お願い…お願いよ…」 0: 0: 少女:「どうか、私をここから連れ出して…あの女みたいに、明るい場所へ連れて行ってよ…」 0: 0: 0:床に崩れ落ち、誰にでも無く縋る(すがる)少女…。 0:そんな少女の耳に、どこからともなく突然声が聞こえました…。 0: ???:「哀れな少女よ…そなたの声、願い…しかと聞き届けた。」 0: 0: 0:不思議な声に、少女は驚き、辺りを見渡します。 0:しかし、誰の姿も見えません。 0: 少女:「誰…?あなたは、誰なの!?私の願いを聞き届けたって…」 0: ???:「そなたの心からの叫び、願いはたしかに届いた。私が、そなたを明るい場所へと連れて行ってやろう。」 0: 0: 0:恐ろしくも、優しくも聞こえる声に少女はただただ戸惑います。 0: ???:「何を恐れる?救いがほしいのだろう?さあ、手を伸ばせ…そなたが報われる時が来たのだ。」 0: 0: 0:その声に、やがて少女は静かに立ち上がりました。 0: 少女:「報われる…そう、そうよ…私ばかり、こんなにもつらい日々を送って…」 0: 0: 少女:「あなたが誰かなんかどうでもいい、この日々から抜け出せるなら…なんだって。さぁ!私を連れて行って!」 0: 0: 0:そう叫ぶように手を伸ばした瞬間… 0: ???:「その願い、叶えてやろう。愚かで美しい、可哀想な子よ…」 0: 0: 0:頭に響く声と共に、少女の目の前は真っ暗になりました。 0:  0:少女に光が戻った時… 0:目の前の光景にハッと驚きました。 0:そこは、いつも買い出しに行く街の風景でした。 0:そして、妙な感覚のする身体に触れてみると… 0:今まで触れたことのない手触りの布…そう、ドレスを着ていたのです。 0:そしてとてもいい香りが漂っており… 0:ふと向けた視線のすぐ先には、とても美しい男性が立っていて、自分に手を差し出していたのです。 0:少女の頭の中は、不思議と混乱もせず、冷静でした。 0: 少女:(この人…昼間に見た花婿だわ…。まさか、私はあの舞台に立っているの…!?) 0: 0: 0:少女が目を覚ました場所…それは、昼間にみた結婚式の舞台だったのです。 0: 少女:(あの声の人が連れて来てくれたの…?あぁ、神様!!) 0: 0: 0:少女はあふれ出しそうな感情を抑え、花婿の手を取りました。 0:まわりには、自分たちを祝福する大勢の人々。 0:花のように咲き誇る笑顔を浮かべ、歓声をあげる人々に囲まれて花婿と踊っているのです。 0: 少女:(この世界に、こんなにも明るい場所があったなんて…!!あぁ、なんて、なんて幸せなの!!) 0: 0: 0:ダンスなどしたがことないはずなのに、身体はまるで羽根のように軽く、舞台を舞っています。 0:そんなことも気にせず、幸せいっぱいで花婿と踊る少女… 0:しかし、観衆の先にいる女性に、ふと目が止まりました。 0:頭からローブをかぶった、惨めでひもじい、見覚えのある姿… 0: 0:そう、それはかつての少女… 0:いいえ、そのローブからのぞく顔に、少女は悲鳴を漏らしそうになりました。 0:それは昼間に見た、この花婿の、本当の花嫁だったのです。 0: 少女:(どういうこと…?私が、あの女の人の居場所を奪ったということ…?) 0: 0: 少女:(そんな…確かに黒い気持ちを抱いたけれど…でも、こんなことが…) 0: 0: 0:混乱する少女を、ローブの女性が恨めしそうに、まるで突き刺すような視線で睨みつけています。 0: 少女:(やめて…そんな目で私を見ないで…やめて…やめてやめて!お願い…許して…!) 0: 0: 少女:(こんなこと、望んでない…私はただ、明るい場所で笑いたかっただけなの…) 0: 0: 少女:(こんな幸せならいらない…こんなの、私が欲しかった幸せじゃない!!!) 0: 0: 0:悲鳴を上げそうになった瞬間、少女の目の前は再び真っ暗になりました。 0: 0:目を覚ますと…そこは見慣れた、あの赤い部屋でした。 0: ???:「なぜ戻った…私の救いをいらぬというのか?全てそなたが望んだことだろう」 0: 0: 0:それと同時に、あの不思議な声が響いてきます。 0: 少女:「そんな…あんなひどいこと、望んでいないわ!!」 0: 0: 0:少女は涙を流しながら叫びます。 0: ???:「他人を妬み、羨み、欲しがる…。そうしてそなたの一族も我を呼び出し、願い…他人から奪い、幸せを手に入れたのだぞ。」 0: 0: 0:一族…そう聞いて、少女は全てを悟りました。 0: 少女:「そう…一族の禁忌…それは悪魔、あなたを呼び出したことだったのね。」 0: 0: 悪魔:「いかにも。そなたの一族は禁忌を犯して私を呼び出し、契約をした。」 0: 0: 悪魔:「そなたは違うというのか?あの華やかな舞台が、幸せが、欲しくないのか?」 0: 0: 0:少女は落ち着いた様子で、首を振り答えます。 0: 少女:「いらない。他人の幸せに成り替わるなんて…あんな目を向けられて生きていくなんて…そんなものは幸せじゃない。」 0: 0: 0:少女の言葉に悪魔は少し戸惑いを見せました。 0: 悪魔:「愚かな…。そなたは一度、自ら望み、その意思で私の手を取った。悪魔であるこの私の手を。それを拒む意味を理解しているのか?」 0: 0: 0:悪魔の言葉に、少女は頷きます。 0: 少女:「あなたの言う通り…全然望んでいない、というと嘘になる…。私はたしかに、真っ黒な心であなたの手を取ったんだもの。」 0: 0: 0:そうすると、少女はどこかすっきりとした微笑みを浮かべ、悪魔に手を差し出します。 0: 少女:「さぁ、連れて行って。あんな幸せを得るくらいなら…また、孤独の日々に戻るくらいなら…」 0: 0: 0:魂を囚われても、悪魔と永遠の時を過ごすほうがきっと幸せだから……。 0: 0: 0:とある深い森にある、小さな家。 0:誰も住んでいない、寂しくて小さな家。 0:ここに誰が住んでいたのかさえ、誰も知らない小さな家。 0:けれどこの家にはひっそりと、小さいけれどとても美しい花が、枯れることなく咲いていて… 0:噂を聞きつけた人々はその可憐で不思議な花を見に訪れるらしい。 0: (語り口調):  0: 0: 0:ご清聴、感謝致します。 0:とても可哀想で、哀れな少女。 0:けれどその本当の心は誰よりも美しい…。 0:悪魔はそんな少女に、一体何を想ったのでしょうか。 0:妬み、羨み…人ならば誰しも覚えのある、この感情。 0:しかしふと、そんな黒い感情が悪魔を呼び出してしまうとしたら… 0:ふふふ。また次も、あなた様とこうしてお会いできることを願っていますよ。 0: 0:  0: 0:それでは、ご機嫌麗しゅう。 0:  0:(終)