台本概要

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タイトル 零の恐怖書庫 第3夜「電話」
作者名 月儚(つくも)レイ  (@rose_moon44)
ジャンル ホラー
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 「深夜に鳴り響く電話。こんな時間に一体なんなの…?受話器の向こうから聞こえたのは…」

1人読み朗読台本の怪談シリーズ「零の恐怖書庫」第3夜となります。

怪談語りのようなホラー作品となります。ホラーが苦手な方はご注意くださいませ。

朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。

ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
8 主人公、語り手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0: 0:プルルルル…プルルルル… 0:眠りに落ちていた私は突然の電話の音に叩き起こされた。 0:スマホではなく、家の電話のようだった。 0:寝ぼけながら時計を見ると時刻は午前1時。 0:電話が鳴るには随分とふさわしくない時間だ。 0:しかし、まだ頭がイマイチ働かない私は違和感をおぼえつつも電話に出た。 0:   私:「はい…もしもし…。」 0: 0: 受話器の向こうからは何も聞こえない。けれど息遣いのようなものは感じる。 0:   私:「あの…?もしもし…どちら様でしょうか?」 0: 0: 0:再度尋ねてみると、今度は声が返ってきた。 0:   ???:「……お待たせして…ごめんね…?…すぐ、行きますから…。」 0: 0: 0:しかし、その返答はまったく意味不明な言葉だった。 0:消え入りそうな女性の声。なんだか気味が悪い。 0:  私:「は…?えっと…もしもし、かけ間違えてませんか?」 0: 0: 0:少し戸惑いながら、間違いではないかと尋ねるとしばらくの無言の後に電話は切れてしまった。 0:無機質な、ツーツー…という音だけが残された。 0:間違い電話か、いたずらだろうか…。 0:よくよく考えればこんな時間にはた迷惑なものだ。 0:不気味さが苛立ちにかわってきたが、それすらバカバカしくなった私は再度布団へと潜り込んで眠りに落ちた。 0:  0:次の日…。仕事から帰り、カーテンを開けた私は違和感をおぼえた。 0:お向かいのアパートの部屋の電気がついていた。人影が揺れているのも見える。 0:ずっと空き部屋だと思っていたが、誰か入っていたのか、それとも新しく越してきたのか。 0:立地の関係でお向かいのアパートとうちのアパートは距離が近かった。 0:見知らぬ人が近くにいるとおもうとカーテンを全開にするのはなんだかはばかられる。 0:私はそっとカーテンを閉めた。 0:   0:プルルルル…プルルルル… 0:その夜、私はまた耳障りなコール音に眠りを遮られた。 0:目をこすりながら時計を見ると、針は再び午前1時をさしていた。 0:ため息をつきながら受話器を取る。 0:   私:「はい…もしもし…?」 0: 0: 0:また、息遣いのようなものだけを感じる。つい、イラッとしてしまった。 0:   私:「あの、昨日の人ですよね?間違いだと思いますし、もしいたずらならこういうくだらないことは…」 0: 0: 0:勢いでまくし立てる私の言葉を遮るように、また消え入りそうな女性の声がした。 0:   ???:「……お待たせして…ごめんね…?…すぐ、行きますから…。」 0: 0: 0:昨日とまったく同じセリフが聞こえてきた。不気味を通り越して怒りをおぼえてしまう。 0:  私:「だから、私はあなたなんて知らないし、待ってもいないし間違いだって言ってるでしょう?いい加減にしてください!」 0: 0: 0:少し激しい口調で相手に怒りをぶつける。 0:すると、しばらく無言になり…しかし、電話は切れず再び声が聞こえた。 0:  ???:「……ごめんなさいね…?必ず、行きますから。」 0: 0: 0:消え入りそうな声…ではあるのだが、言葉になんだか力が入った気がした。 0:内容も微妙に変わっている。 0:なんだかゾッとした私は乱暴に受話器を置いて電話を切った。 0:逃げるように布団へと戻ろうとした私を…… 0: 0:…プルルルル…プルルルル… 0: 0:コール音が引き留めた。 0:無視して布団に戻ろうと思うも、電話は鳴りやまない。 0:いつもよりも音が大きく聞こえる気がする。 0:一刻も早くこの音から解放されたかった私は再び受話器を取った。 0:すぐに後悔した。 0:   ???:「必ず…行きますから。必ず…行きますから。必ず…行きますから。」 0: 0: 0:私が喋るよりも先に、あの女の声が延々と受話器から聞こえてきた。 0:パニックになりそうな私は受話器を投げるように叩きつけて電話を切った。 0:しかし、すぐにまたコール音が鳴り響く。たまらず、無我夢中で電話線を引き抜いて、布団の中へと飛び込んだ。 0:震えが止まらない。あれは一体なんなの…? 0:ただのいたずらとも思えなかった。 0:どれくらい震えていたのだろう…。気付けばいつの間にか眠りへと落ちていた。 0:   0:翌日…。昨日の疲れが抜けず、仕事でも随分と失敗してしまった。 0:帰宅した私はそっとカーテンを開けようとしたが、今日もお向かいには電気がついている。 0:お向かいの人に何の罪もないのだが、なんだかうんざりとしてしまった私はそのままカーテンを閉めた。 0:食事をする気にもなれず、心身共にすっかり疲れた私はそのまま布団に入ることにした。 0:   0:プルルルル…プルルルル… 0:また、電話の音に起こされる…。 0:時刻はやはり、午前1時。 0:しかし今日はおかしい。 0:すぐに全身が痺れそうなほどの寒気が走る。 0:そう…昨夜から電話線を抜いたままにしてあるのだ。 0:電話が鳴るはずがない…。 0:しかし、コール音は延々と部屋中に鳴り響いている。 0:  私:「やめて…もう、やめて…!!」 0: 0: 0:耳を塞ぎながら懇願するように声をあげる。 0:どれくらいたっただろうか… 0:ようやくコール音が止まり、部屋は静寂に包まれた。 0:しかしほっとしたのもつかの間だった。 0:また違和感に気付いてしまった。 0:カーテンが全開になっている。 0:少し外を覗いたあとにしっかりと閉めたはずのカーテンが全開になっていた…。 0:すごく嫌な予感がして、いまだ震える身体を引きずるようにカーテンを閉めにむかう。 0:  0:予感は的中した…。いや、予感以上…もうわけがわからなかった。 0:カーテンを閉めようとした時、外が見えた。 0:私ははっきりと見てしまった…。 0:   0:お向かいの部屋から、コードの千切れた受話器を握りしめた女性が満面の笑みでこちらを見ている。 0:異様なほど痩せ細り、生きている者ではないことがすぐにわかる恐ろしい姿。 0:不自然なほどの張り付いたような満面の笑みでこちらを見てなにかを言っている。 0:すぐにでも逃げ出したかった。 0:けれど身体はぴくりとも動かず、嫌な汗と悪寒だけが私の身体を走っている。 0:   ???:「……お待たせして…ごめんね…?…今から、行きます。」 0: 0: 0:恐怖のせいで聞こえた幻聴か、その女の発した声なのかはわからない。 0:言葉が聞こえた瞬間、女の身体が動いた。 0:   私:「あっ…!!!あぁ…!」 0: 0: 0:私がアッと声をあげるよりも先に、女はそのまま転落した。 0:最後まで私に満面の笑みを浮かべたままで…。 0:ドチャッ…っと嫌な音が響いた。 0:完全にパニックになった私は、そのまま気を失ってしまった…。 0:   0:翌日…。私は、自室で目を覚ました。時刻は昼頃だろうか…すっかり明るくなっていた。 0:身体が異様にだるい。 0:けれどすぐに昨夜の出来事を思い出し、恐る恐る窓から下を見てみた。 0:そこはいつも通りの風景だった。 0:誰かが飛び降りたような痕跡は一切なく、なんの騒ぎにもなっていない。 0:お向かいの部屋は、ガランとしているようだった。 0:混乱する頭を整理しつつ、私はお向かいのアパートの管理人に電話をしてみることにした。 0:   0:相手は終始怪訝そうだった。 0:無理もない…。 0:そもそもお向かいの部屋はもう何年も空き部屋のままで、もちろん昨夜に飛び降りなんてなかったと言うことだ。 0:電話を終えた私はそのままへたり込んだ。 0:昨夜の出来事は一体なんだったのか。 0:ぼんやりとお向かいの部屋を見つめてみる。 0:    ???:「……お待たせして…ごめんね…?」 0: 0:   0:すぐ背後から、声が聞こえたような気がした…。  0:  0: 0:(終)  

0: 0: 0:プルルルル…プルルルル… 0:眠りに落ちていた私は突然の電話の音に叩き起こされた。 0:スマホではなく、家の電話のようだった。 0:寝ぼけながら時計を見ると時刻は午前1時。 0:電話が鳴るには随分とふさわしくない時間だ。 0:しかし、まだ頭がイマイチ働かない私は違和感をおぼえつつも電話に出た。 0:   私:「はい…もしもし…。」 0: 0: 受話器の向こうからは何も聞こえない。けれど息遣いのようなものは感じる。 0:   私:「あの…?もしもし…どちら様でしょうか?」 0: 0: 0:再度尋ねてみると、今度は声が返ってきた。 0:   ???:「……お待たせして…ごめんね…?…すぐ、行きますから…。」 0: 0: 0:しかし、その返答はまったく意味不明な言葉だった。 0:消え入りそうな女性の声。なんだか気味が悪い。 0:  私:「は…?えっと…もしもし、かけ間違えてませんか?」 0: 0: 0:少し戸惑いながら、間違いではないかと尋ねるとしばらくの無言の後に電話は切れてしまった。 0:無機質な、ツーツー…という音だけが残された。 0:間違い電話か、いたずらだろうか…。 0:よくよく考えればこんな時間にはた迷惑なものだ。 0:不気味さが苛立ちにかわってきたが、それすらバカバカしくなった私は再度布団へと潜り込んで眠りに落ちた。 0:  0:次の日…。仕事から帰り、カーテンを開けた私は違和感をおぼえた。 0:お向かいのアパートの部屋の電気がついていた。人影が揺れているのも見える。 0:ずっと空き部屋だと思っていたが、誰か入っていたのか、それとも新しく越してきたのか。 0:立地の関係でお向かいのアパートとうちのアパートは距離が近かった。 0:見知らぬ人が近くにいるとおもうとカーテンを全開にするのはなんだかはばかられる。 0:私はそっとカーテンを閉めた。 0:   0:プルルルル…プルルルル… 0:その夜、私はまた耳障りなコール音に眠りを遮られた。 0:目をこすりながら時計を見ると、針は再び午前1時をさしていた。 0:ため息をつきながら受話器を取る。 0:   私:「はい…もしもし…?」 0: 0: 0:また、息遣いのようなものだけを感じる。つい、イラッとしてしまった。 0:   私:「あの、昨日の人ですよね?間違いだと思いますし、もしいたずらならこういうくだらないことは…」 0: 0: 0:勢いでまくし立てる私の言葉を遮るように、また消え入りそうな女性の声がした。 0:   ???:「……お待たせして…ごめんね…?…すぐ、行きますから…。」 0: 0: 0:昨日とまったく同じセリフが聞こえてきた。不気味を通り越して怒りをおぼえてしまう。 0:  私:「だから、私はあなたなんて知らないし、待ってもいないし間違いだって言ってるでしょう?いい加減にしてください!」 0: 0: 0:少し激しい口調で相手に怒りをぶつける。 0:すると、しばらく無言になり…しかし、電話は切れず再び声が聞こえた。 0:  ???:「……ごめんなさいね…?必ず、行きますから。」 0: 0: 0:消え入りそうな声…ではあるのだが、言葉になんだか力が入った気がした。 0:内容も微妙に変わっている。 0:なんだかゾッとした私は乱暴に受話器を置いて電話を切った。 0:逃げるように布団へと戻ろうとした私を…… 0: 0:…プルルルル…プルルルル… 0: 0:コール音が引き留めた。 0:無視して布団に戻ろうと思うも、電話は鳴りやまない。 0:いつもよりも音が大きく聞こえる気がする。 0:一刻も早くこの音から解放されたかった私は再び受話器を取った。 0:すぐに後悔した。 0:   ???:「必ず…行きますから。必ず…行きますから。必ず…行きますから。」 0: 0: 0:私が喋るよりも先に、あの女の声が延々と受話器から聞こえてきた。 0:パニックになりそうな私は受話器を投げるように叩きつけて電話を切った。 0:しかし、すぐにまたコール音が鳴り響く。たまらず、無我夢中で電話線を引き抜いて、布団の中へと飛び込んだ。 0:震えが止まらない。あれは一体なんなの…? 0:ただのいたずらとも思えなかった。 0:どれくらい震えていたのだろう…。気付けばいつの間にか眠りへと落ちていた。 0:   0:翌日…。昨日の疲れが抜けず、仕事でも随分と失敗してしまった。 0:帰宅した私はそっとカーテンを開けようとしたが、今日もお向かいには電気がついている。 0:お向かいの人に何の罪もないのだが、なんだかうんざりとしてしまった私はそのままカーテンを閉めた。 0:食事をする気にもなれず、心身共にすっかり疲れた私はそのまま布団に入ることにした。 0:   0:プルルルル…プルルルル… 0:また、電話の音に起こされる…。 0:時刻はやはり、午前1時。 0:しかし今日はおかしい。 0:すぐに全身が痺れそうなほどの寒気が走る。 0:そう…昨夜から電話線を抜いたままにしてあるのだ。 0:電話が鳴るはずがない…。 0:しかし、コール音は延々と部屋中に鳴り響いている。 0:  私:「やめて…もう、やめて…!!」 0: 0: 0:耳を塞ぎながら懇願するように声をあげる。 0:どれくらいたっただろうか… 0:ようやくコール音が止まり、部屋は静寂に包まれた。 0:しかしほっとしたのもつかの間だった。 0:また違和感に気付いてしまった。 0:カーテンが全開になっている。 0:少し外を覗いたあとにしっかりと閉めたはずのカーテンが全開になっていた…。 0:すごく嫌な予感がして、いまだ震える身体を引きずるようにカーテンを閉めにむかう。 0:  0:予感は的中した…。いや、予感以上…もうわけがわからなかった。 0:カーテンを閉めようとした時、外が見えた。 0:私ははっきりと見てしまった…。 0:   0:お向かいの部屋から、コードの千切れた受話器を握りしめた女性が満面の笑みでこちらを見ている。 0:異様なほど痩せ細り、生きている者ではないことがすぐにわかる恐ろしい姿。 0:不自然なほどの張り付いたような満面の笑みでこちらを見てなにかを言っている。 0:すぐにでも逃げ出したかった。 0:けれど身体はぴくりとも動かず、嫌な汗と悪寒だけが私の身体を走っている。 0:   ???:「……お待たせして…ごめんね…?…今から、行きます。」 0: 0: 0:恐怖のせいで聞こえた幻聴か、その女の発した声なのかはわからない。 0:言葉が聞こえた瞬間、女の身体が動いた。 0:   私:「あっ…!!!あぁ…!」 0: 0: 0:私がアッと声をあげるよりも先に、女はそのまま転落した。 0:最後まで私に満面の笑みを浮かべたままで…。 0:ドチャッ…っと嫌な音が響いた。 0:完全にパニックになった私は、そのまま気を失ってしまった…。 0:   0:翌日…。私は、自室で目を覚ました。時刻は昼頃だろうか…すっかり明るくなっていた。 0:身体が異様にだるい。 0:けれどすぐに昨夜の出来事を思い出し、恐る恐る窓から下を見てみた。 0:そこはいつも通りの風景だった。 0:誰かが飛び降りたような痕跡は一切なく、なんの騒ぎにもなっていない。 0:お向かいの部屋は、ガランとしているようだった。 0:混乱する頭を整理しつつ、私はお向かいのアパートの管理人に電話をしてみることにした。 0:   0:相手は終始怪訝そうだった。 0:無理もない…。 0:そもそもお向かいの部屋はもう何年も空き部屋のままで、もちろん昨夜に飛び降りなんてなかったと言うことだ。 0:電話を終えた私はそのままへたり込んだ。 0:昨夜の出来事は一体なんだったのか。 0:ぼんやりとお向かいの部屋を見つめてみる。 0:    ???:「……お待たせして…ごめんね…?」 0: 0:   0:すぐ背後から、声が聞こえたような気がした…。  0:  0: 0:(終)