台本概要

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タイトル 零の恐怖書庫 第4夜「旅行帰り」
作者名 月儚(つくも)レイ  (@rose_moon44)
ジャンル ホラー
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 「一人旅で、すっかり羽を伸ばしリフレッシュした私。そんな心地よい余韻の中の帰路でのことだった…」

1人読み朗読台本の怪談シリーズ「零の恐怖書庫」第4夜となります。

怪談語りのようなホラー作品となります。ホラーが苦手な方はご注意くださいませ。

朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。

ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 5 主人公、語り手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:   0:久しぶりに少しまとまった休暇が取れた私は、リフレッシュをしに一人で旅行へと出かけていた。 0:その帰り道、私は静かな夜の高速道路を軽快に走っていた。 0:旅の疲れはあったものの、心地のよい疲れではあり上機嫌で帰路につく。 0:  0:…が、そんな私の耳に突然女性の悲鳴のような声が飛び込んできた。 0:けれど高速道路で声が聞こえるなんておかしな話だ。 0:何かの聞き間違いか、気のせいだろうと思い気にしないことにした。 0:しかし、しばらくするとまたあの悲鳴が聞こえた。 0:それもさっきよりも近くから、はっきりと聞こえた気がする。 0:気になってミラーを見たり、軽く周囲を確認したりしてみたが、時折車が通るだけで何も変わったところはない。 私:(自分で思っているより疲れているのかな…) 0: 0: 0:一気にどんよりとした気持ちになって、ため息をつく。 0:あまり気にしないようにして運転を続けていたが、またしてもあの悲鳴が聞こえた。 0:やはりどんどん近づいていて、声もさっきより大きく聞こえてきている。 0:こうなってくると気のせいだとも思えなくなってきた。 0:さすがに気味が悪くなってきたが車を停めるわけにもいかず、私は大音量で音楽を流しながらとにかく運転に集中して帰路を急いだ。 0:   0:音楽のおかげだったのか、やはり聞き間違いだったのか、途中から悲鳴は聞こえなくなり無事に自宅へと到着した。 0:すっかりと疲れてしまった私は車を降り、荷物を運び出そうとした…。  私:「あっ…!うわっ…!えぇ…?ちょっと…なにこれ…。なんでこんなことに…?」 0: 0: 0:悲鳴のような、驚いたような声をあげてしまった。 0:荷物を降ろすため後ろのドアを開けようとしたら、ドアいっぱいに手形のようなものがべったりとついていたのだ。 0:とても薄気味悪くは思ったが、最初は目の前の状況が一体どういうことなのか理解できなかった。 0:しかし、あの悲鳴のような声を思い出した時、私は頭が痺れるほどの恐怖を感じた。 0:とてもではないがドアに触る気になれず、車の荷物をそのままにして、私は逃げるようにアパートの自室へと走った。 0:    0:一体なんだったのか…まさか心霊現象とか、そういうものなんだろうか…。 0:考えれば考えるほど恐ろしくなる。 0:   0:自室に戻ると時刻はもう0時をまわりかけていた。 0:とにかく一旦気分を紛らわそうとテレビをつける。 0:陽気な芸人たちが明るく騒いでいる。 0:今の私にはこの騒々しさがなんだか有難かった。 0:ほんの少し前まで旅行の楽しい余韻に浸っていたのに、どうしてこんなことになったのか。 0:ため息をつきながら、唯一持って降りることのできた小さなカバンをごそごそとさわる。 0:風景写真などをたくさん撮ってきたし、旅の楽しい思い出にでも浸って変なことは忘れようと、デジカメを取り出した。 0:撮った写真をゆっくりと順番にながめる。 0:我ながら結構上手に撮れているなぁ、友達にも見せようかなぁ、なんて思っているとだんだんとリラックスしてきた。 0:  0:しかし、リラックスしたのも束の間…途中で奇妙な写真が混ざっていた。 0:人がいない場所で撮ったはずの写真に、人が写り込んでいる。 0:遠くのほうで写り込んでいるため顔まではわからないが、髪の長い女性がこちらを向いて写っている。 0:写真をすすめていくと、その写真以降はどれもその女性が写り込んでいた。 0:人がいなかったと記憶している場所の写真にも、他の観光客が写っている写真にも、その女はいた。 0:どれもこちらを向いて写っている。 私:「うわっ…!ひっ…ひぃっ…!」 0: 0: 0:そして1枚の写真を見たとき、私は思わずデジカメを投げるように手放してしまった。 0:その女性がとても近い距離で写り込んでいたのだ。 0:今までの写真では顔までは見えなかったが、はっきりと見てしまった。 0:まったく生気が感じられない顔色と目をして、無表情でカメラのほうをじっと見つめるかのように写っていた…。 0:途端に、高速道路で聞こえた悲鳴や車のドアにびっしりとついていた手形のことも思い出してしまった。 0:私は完全に恐怖に支配され、震えることしかできなくなっていた。 0:   0:ピンポーン 0:   0:そうしていると突如インターホンが鳴り響いた。 0:びくっとしてしまう私。 0:恐怖と混乱のせいでしばらくそのまま動けないでいると、声が聞こえてきた。   声:「すみませーん、お届けものでーす!」 0: 0:   0:元気そうな若い男性の声だった。 0:なんだ、宅配便か…と急に緊張の糸が切れた。   私:「あ、はーい。すぐいきまーす」 0: 0: 0:まだ少し震えた声で返事をして立ち上がる。 0:立ち上がってから気付いた。 0:完全に混乱していたせいですぐに気付けなかったのだ。 0:そう…0時頃に帰宅して、今はもう午前1時をまわっている。 0:こんな時間に宅配便なんかくるわけがない。 0:やばい、と思った私はそのまま動きを止めた。 0:返事をしたことを本当に後悔した…。   声:「すみませーん、お届けものでーす!」  0: 0: 声:「すみませーん、お届けものでーす!」   0: 0: 声:「すみませーん、お届けものでーす!」  0: 0:  0:延々と同じ言葉を繰り返す男の声。 0:そのうち、ドンドンドンドン、と強いノックの音も聞こえはじめた。 0:恐怖で座り込んでしまった私は、頭を抱えながら息を殺していた。 私:(こわい…!こわい…!もういやだ…!お願い…もうやめて…!) 0: 0: 0:泣きそうになりながら心の中で懇願する。 0:しかし繰り返される声とノックの音が容赦なく私を襲い続けた。 0:  0:どれくらいそうしていただろう。 0:体感では随分と時間が経ったような気がする。 0:ようやく声もノックの音もぴたりとやんだ。 0:部屋には流しっぱなしだったテレビの音だけが響いている。 0:立ち去ったのだろうか…。 0:せめて安心して眠りたかった私は、安全を確認しようと震える足で立ち上がり、そっと玄関のほうへ向かった。 0:ドアの覗き穴から、外の様子を覗いてみる。 0:   0:そこには… 0:  0:あの写真とまったく同じ…生気が一切感じられない無表情な顔をした髪の長い女が、外側の覗き穴からじっとこちらを見つめて立っていた…。 0 0: 0:(終) 

0: 0:   0:久しぶりに少しまとまった休暇が取れた私は、リフレッシュをしに一人で旅行へと出かけていた。 0:その帰り道、私は静かな夜の高速道路を軽快に走っていた。 0:旅の疲れはあったものの、心地のよい疲れではあり上機嫌で帰路につく。 0:  0:…が、そんな私の耳に突然女性の悲鳴のような声が飛び込んできた。 0:けれど高速道路で声が聞こえるなんておかしな話だ。 0:何かの聞き間違いか、気のせいだろうと思い気にしないことにした。 0:しかし、しばらくするとまたあの悲鳴が聞こえた。 0:それもさっきよりも近くから、はっきりと聞こえた気がする。 0:気になってミラーを見たり、軽く周囲を確認したりしてみたが、時折車が通るだけで何も変わったところはない。 私:(自分で思っているより疲れているのかな…) 0: 0: 0:一気にどんよりとした気持ちになって、ため息をつく。 0:あまり気にしないようにして運転を続けていたが、またしてもあの悲鳴が聞こえた。 0:やはりどんどん近づいていて、声もさっきより大きく聞こえてきている。 0:こうなってくると気のせいだとも思えなくなってきた。 0:さすがに気味が悪くなってきたが車を停めるわけにもいかず、私は大音量で音楽を流しながらとにかく運転に集中して帰路を急いだ。 0:   0:音楽のおかげだったのか、やはり聞き間違いだったのか、途中から悲鳴は聞こえなくなり無事に自宅へと到着した。 0:すっかりと疲れてしまった私は車を降り、荷物を運び出そうとした…。  私:「あっ…!うわっ…!えぇ…?ちょっと…なにこれ…。なんでこんなことに…?」 0: 0: 0:悲鳴のような、驚いたような声をあげてしまった。 0:荷物を降ろすため後ろのドアを開けようとしたら、ドアいっぱいに手形のようなものがべったりとついていたのだ。 0:とても薄気味悪くは思ったが、最初は目の前の状況が一体どういうことなのか理解できなかった。 0:しかし、あの悲鳴のような声を思い出した時、私は頭が痺れるほどの恐怖を感じた。 0:とてもではないがドアに触る気になれず、車の荷物をそのままにして、私は逃げるようにアパートの自室へと走った。 0:    0:一体なんだったのか…まさか心霊現象とか、そういうものなんだろうか…。 0:考えれば考えるほど恐ろしくなる。 0:   0:自室に戻ると時刻はもう0時をまわりかけていた。 0:とにかく一旦気分を紛らわそうとテレビをつける。 0:陽気な芸人たちが明るく騒いでいる。 0:今の私にはこの騒々しさがなんだか有難かった。 0:ほんの少し前まで旅行の楽しい余韻に浸っていたのに、どうしてこんなことになったのか。 0:ため息をつきながら、唯一持って降りることのできた小さなカバンをごそごそとさわる。 0:風景写真などをたくさん撮ってきたし、旅の楽しい思い出にでも浸って変なことは忘れようと、デジカメを取り出した。 0:撮った写真をゆっくりと順番にながめる。 0:我ながら結構上手に撮れているなぁ、友達にも見せようかなぁ、なんて思っているとだんだんとリラックスしてきた。 0:  0:しかし、リラックスしたのも束の間…途中で奇妙な写真が混ざっていた。 0:人がいない場所で撮ったはずの写真に、人が写り込んでいる。 0:遠くのほうで写り込んでいるため顔まではわからないが、髪の長い女性がこちらを向いて写っている。 0:写真をすすめていくと、その写真以降はどれもその女性が写り込んでいた。 0:人がいなかったと記憶している場所の写真にも、他の観光客が写っている写真にも、その女はいた。 0:どれもこちらを向いて写っている。 私:「うわっ…!ひっ…ひぃっ…!」 0: 0: 0:そして1枚の写真を見たとき、私は思わずデジカメを投げるように手放してしまった。 0:その女性がとても近い距離で写り込んでいたのだ。 0:今までの写真では顔までは見えなかったが、はっきりと見てしまった。 0:まったく生気が感じられない顔色と目をして、無表情でカメラのほうをじっと見つめるかのように写っていた…。 0:途端に、高速道路で聞こえた悲鳴や車のドアにびっしりとついていた手形のことも思い出してしまった。 0:私は完全に恐怖に支配され、震えることしかできなくなっていた。 0:   0:ピンポーン 0:   0:そうしていると突如インターホンが鳴り響いた。 0:びくっとしてしまう私。 0:恐怖と混乱のせいでしばらくそのまま動けないでいると、声が聞こえてきた。   声:「すみませーん、お届けものでーす!」 0: 0:   0:元気そうな若い男性の声だった。 0:なんだ、宅配便か…と急に緊張の糸が切れた。   私:「あ、はーい。すぐいきまーす」 0: 0: 0:まだ少し震えた声で返事をして立ち上がる。 0:立ち上がってから気付いた。 0:完全に混乱していたせいですぐに気付けなかったのだ。 0:そう…0時頃に帰宅して、今はもう午前1時をまわっている。 0:こんな時間に宅配便なんかくるわけがない。 0:やばい、と思った私はそのまま動きを止めた。 0:返事をしたことを本当に後悔した…。   声:「すみませーん、お届けものでーす!」  0: 0: 声:「すみませーん、お届けものでーす!」   0: 0: 声:「すみませーん、お届けものでーす!」  0: 0:  0:延々と同じ言葉を繰り返す男の声。 0:そのうち、ドンドンドンドン、と強いノックの音も聞こえはじめた。 0:恐怖で座り込んでしまった私は、頭を抱えながら息を殺していた。 私:(こわい…!こわい…!もういやだ…!お願い…もうやめて…!) 0: 0: 0:泣きそうになりながら心の中で懇願する。 0:しかし繰り返される声とノックの音が容赦なく私を襲い続けた。 0:  0:どれくらいそうしていただろう。 0:体感では随分と時間が経ったような気がする。 0:ようやく声もノックの音もぴたりとやんだ。 0:部屋には流しっぱなしだったテレビの音だけが響いている。 0:立ち去ったのだろうか…。 0:せめて安心して眠りたかった私は、安全を確認しようと震える足で立ち上がり、そっと玄関のほうへ向かった。 0:ドアの覗き穴から、外の様子を覗いてみる。 0:   0:そこには… 0:  0:あの写真とまったく同じ…生気が一切感じられない無表情な顔をした髪の長い女が、外側の覗き穴からじっとこちらを見つめて立っていた…。 0 0: 0:(終)