台本概要

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タイトル 零の恐怖書庫 第7夜「すれ違う人」
作者名 月儚(つくも)レイ  (@rose_moon44)
ジャンル ホラー
演者人数 1人用台本(不問1) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 「「こんばんは…。」綺麗な声と幻想的な見た目の、不思議な女性。花の香りをまとうその女性と、私はよくすれ違う…。」

1人読み朗読台本の怪談シリーズ「零の恐怖書庫」第7夜となります。

怪談語りのようなホラー作品となります。ホラーが苦手な方はご注意くださいませ。

朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。

ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 10 主人公、語り手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:  0: 0:最近、仕事が立て込んでいてすっかり帰りが遅くなってしまった。 0:疲れた身体を引きずるように、私は家へと続く住宅街の路地を歩いていた。 0:この時間ともなると、近くを歩く人もおらず、住宅街でも街灯以外の明かりはない。 0:静かで心地よくもあり、どこか恐ろしさも感じる。 0:   0:なんとなく薄気味悪さをおぼえ、少し足早に帰路を急いでいると… 0:前方から女性が歩いてきた。 0:夜だというのに白い大きな帽子を被り、真っ白のワンピース。長い髪。真っ白の肌。 0:まだ長袖でも寒い季節なのに、あんな恰好をして…ホラー物なんかに出てきそうな姿そのもので、少し寒気がする。 0:ここらはもう、我が家からは近所だけれど、見かけたことのない人だ。 0:失礼ながら、なんだか薄気味悪くかんじて少し俯き気味に歩く。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:女性のヒールの音がどんどん近づいてくる。 0:そのたびに緊張しながら私も歩みをすすめる。 0:  0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ふと花のような香りが漂う。 0:女性が私の横を通り過ぎてゆく。  女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:すれ違いざま、唐突に声をかけられてびくっとする。 0:透き通るような、とても綺麗な声だった。 0:緊張していたのもあって、私が声を発したのは少し間を置いてからだった。  私:「あっ…はぁ…こんばんは…!」 0: 0: 0:慌てて顔をあげて、間の抜けた返事をする。 0:しかし女性の背中は既に少し離れたところに見えていた。   私:(見ず知らずの私に挨拶してくれて、気味が悪いなんて思って悪いことをしたなぁ…) 0: 0: 0:どんどん遠くなって行く女性の後ろ姿をしばらくぼんやりと眺めて見送ったあと、私は再び帰路へついた。  0:  0:翌日。 0: 0:今日もすっかり遅くなってしまった。 0:ため息をつきながら、今日も人の気配のない、薄暗く寂しい路地を歩く。 0:ふらふらとしばらく歩いていると… 0:見覚えのある姿が近付いてくる。 0:   0:昨夜の女性だ。 0:昨日とまったく同じ、夜の闇にぼんやりと浮かぶかのような白い姿がこちらに向かって歩いてくる。 0:大きな帽子で顔は見えないが、こうして見るとどこか幻想的な雰囲気の女性だ。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ヒールの音が近付いてくる。 0:今日は俯くことなく、女性とすれ違う。   女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:昨日と同じく、透き通るような声で挨拶をされた。   私:「あ、こんばんは…昨日は…」  0: 0: 0:どうも、と続ける間もなく、女性は通り過ぎて行った。 0:花のような香りだけが、少し残っていた。 0:女性の背中はどんどん遠くなって行くばかり。 0:どうにも不思議な人だなぁ…と思いつつ、私は再び帰路についた。 0:   0:しばらく歩いていると… 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ヒールの音と共に前方に白い影が見えた。 0:それは、少し前にすれ違ったばかりのあの女性だった。 0:住宅地の路地なので、あちこちで道は繋がってはいるが… 0:再び前方からやって来るのはなんだか不思議なものだ。 0:散歩でもしているのだろうか…。 0:  0:コツ…コツ…コツ… 0:  0:どんどん女性が近付いてくる。  女性:「こんばんは…。」 0: 0: 0:またしても挨拶をされた。  私:「えっ…あっ、こんばんは…よく…」 0: 0: 0:会いますね、と言う間もなく今回も女性は花の香りを残して遠ざかって行く。 0:申し訳ないと思いつつも、再び不気味さをおぼえてしまう。 0:いけない、いけないと首を振り、少し足早に帰路を急いだ。 0:   0:それから、また少し歩みを進めた時だった。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ヒール音と共に、前方に白い影… 0:あの女性だ。 0:またしても前方から見慣れた姿が歩いてくる。 0:おかしい。 0:いくらあちこちで道が繋がってるとはいえ、こうも頻繁に会うことがあるだろうか。 0:女性の歩く速さはお世辞にも速いとは言えない。 0:いくら散歩をしているにしてもこんな頻度で出くわすのは妙だ。 0:   0:そうこう思考を巡らせているうちに、女性はどんどんと近づいて来ていた。 0:   0:コツ…コツ…コツ…   女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:まただ…透き通るようなあの声で挨拶をされた。  私:「あ、あの…」 0: 0: 0:声をかけるも、もう女性は私に背中を向けて離れて行く。 0:気になって仕方がないが、不思議とその背中を追う気にはなれなかった。 0:またしても残っている花の香りになんだかゾッとして、私は小走りで帰路を急ぐ。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0: 0:小走りで走る私に、またあのヒールの音と白い影が近付いてきた。 0:前方にいるのは、あの女性。 0:いくらなんでもおかしい。 0:やはりこの女性は普通ではない…。 0:恐ろしくなった私は、女性を見ないようそのまま小走りで駆け抜けようとした。  女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:すれ違いざま、やはり女性は私に声をかけてきた。 0:私はもう、返事をすることもなく、漂う花の香りを振り払うかのように走る。 私:(一体なんなの…?やっぱり、幽霊かなにか…?) 0: 0: 0:考えれば考えるほど恐ろしくなり、私は走る速度を早めてとにかく家へと急いだ。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:再びヒールの音、白い影。 0:もう普通ではないことはわかっていた。 0:私は下を向いたまま更に足を早める。  女性:「こんばんは…」  0: 0:  0:耳に入る挨拶を無視しして一気に駆け抜ける…。   私:(怖い…怖い!!!おかしい、こんなの普通じゃない…一体なんなの!?) 0: 0: 0:泣きだしそうになりながら走り続ける。 0:   0:そこら中から、あの花の香りがしてきている気がしてますますパニックになる。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:そしてまた、あのヒール音と白い影… 0:   0:私はぎゅっと目を閉じ、何も聞かないようにとにかく走った。  女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:それでもあの声がすれ違う時に耳に入る。 0:声と花の香りから逃げるように走り抜け…そうして私はふと足を止めた。 0:乱れる呼吸で肩を揺らしながら、私は気づいてしまったのだ。 0:  0:この道…こんなに長かったっけ…? 0:  0:私は、途中から全速力に近い速さで走っている。 0:なのに、一向に景色が変わらない。 0: 0:そう… 0:  0:同じ道を延々と走っていたのだ。 0:   0:何度もあの女性とすれ違うのは… 0:私がずっと、同じ道をループしていたから…? 0:恐怖とともに花の香りが鼻につき、吐き気をおぼえて座り込む。 0:こんなことが、あり得るだろうか… 0:疲労と恐怖で、私は立ち上がることができなくなってしまった。 0:一体どうすればいいのか、あの女性はなんなのか…どうしてこうなったのか… 0:考えれば考えるほど、恐ろしくて震えが止まらない。 0:  0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:動くことのできない私の耳に、ヒール音が聞こえてきて…そして白い影も見える。 0:逃げなくては、と思うも身体が言うことを聞かず、立つことができない。 0:そんな私に向かって、白い女性はどんどん近づいてくる。 0:私はぎゅっと目を閉じた。 0:   0:コツ…コツ… 0:   0:足音が止まった。 0:あの挨拶も聞こえない。 0:花の香りだけが強く漂っている。 0:恐る恐る目を開けると… 0:   0:そこには、座り込んで私をのぞき込むように凝視している女性の顔があった。 0:生きている人間の目ではない、黒目しかない大きな目がじっと私を見つめていた。   私:「あっ…あぁっ…あっ…」 0: 0: 0:もう、恐怖のせいで満足に声も出せない私を食い入るよう見つめる女性。 0:ぐいっと更に顔を近づけてくると、女性はその恐ろしい顔をさらにゆがめて…  女性:「こんばんは…こんばんは…こんばんは…こんばんは…こんばんは…」 0: 0: 0:抑揚のない声で狂ったようにそう繰り返す。 0:恐怖と混乱…目の前で起きている有り得ない恐怖に私はどうすることもできなかった。 0:やがてプツン、と電源を落としたかのように目の前が真っ暗になり、私の記憶はここで途絶えた。 0:   0:   0:はっ、と気付くと私は自室の布団の中にいた。 0:わけがわからず起き上がり、辺りをきょろきょろと見渡す。 0:間違いなく、自室だ。 0:服も部屋着に着替えている。 0:窓からは明るい陽射しが射していた。   私:「夢…だったの…?あはは…はは、そうよね。あんなこと、あるわけないもの…」 0: 0: 0:自分の今の状況を理解すると安堵とともに乾いた笑いが出てきた。 0:ここのところ働き詰めで疲れていたのだ。  私:「やっぱりたまにはちゃんと、休まないといけないわね…」  0: 0: 0:起き上がり、ガラリと窓を開ける。 0:   0:開けた瞬間、花の香りが鼻につく。 0:私の表情は凍りついた。 0:窓から見降ろした先には… 0:   0:あの白い女性が、じっとこちらを見上げながら立っていた。 0:   0:  0:(終)

0:  0: 0:最近、仕事が立て込んでいてすっかり帰りが遅くなってしまった。 0:疲れた身体を引きずるように、私は家へと続く住宅街の路地を歩いていた。 0:この時間ともなると、近くを歩く人もおらず、住宅街でも街灯以外の明かりはない。 0:静かで心地よくもあり、どこか恐ろしさも感じる。 0:   0:なんとなく薄気味悪さをおぼえ、少し足早に帰路を急いでいると… 0:前方から女性が歩いてきた。 0:夜だというのに白い大きな帽子を被り、真っ白のワンピース。長い髪。真っ白の肌。 0:まだ長袖でも寒い季節なのに、あんな恰好をして…ホラー物なんかに出てきそうな姿そのもので、少し寒気がする。 0:ここらはもう、我が家からは近所だけれど、見かけたことのない人だ。 0:失礼ながら、なんだか薄気味悪くかんじて少し俯き気味に歩く。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:女性のヒールの音がどんどん近づいてくる。 0:そのたびに緊張しながら私も歩みをすすめる。 0:  0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ふと花のような香りが漂う。 0:女性が私の横を通り過ぎてゆく。  女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:すれ違いざま、唐突に声をかけられてびくっとする。 0:透き通るような、とても綺麗な声だった。 0:緊張していたのもあって、私が声を発したのは少し間を置いてからだった。  私:「あっ…はぁ…こんばんは…!」 0: 0: 0:慌てて顔をあげて、間の抜けた返事をする。 0:しかし女性の背中は既に少し離れたところに見えていた。   私:(見ず知らずの私に挨拶してくれて、気味が悪いなんて思って悪いことをしたなぁ…) 0: 0: 0:どんどん遠くなって行く女性の後ろ姿をしばらくぼんやりと眺めて見送ったあと、私は再び帰路へついた。  0:  0:翌日。 0: 0:今日もすっかり遅くなってしまった。 0:ため息をつきながら、今日も人の気配のない、薄暗く寂しい路地を歩く。 0:ふらふらとしばらく歩いていると… 0:見覚えのある姿が近付いてくる。 0:   0:昨夜の女性だ。 0:昨日とまったく同じ、夜の闇にぼんやりと浮かぶかのような白い姿がこちらに向かって歩いてくる。 0:大きな帽子で顔は見えないが、こうして見るとどこか幻想的な雰囲気の女性だ。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ヒールの音が近付いてくる。 0:今日は俯くことなく、女性とすれ違う。   女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:昨日と同じく、透き通るような声で挨拶をされた。   私:「あ、こんばんは…昨日は…」  0: 0: 0:どうも、と続ける間もなく、女性は通り過ぎて行った。 0:花のような香りだけが、少し残っていた。 0:女性の背中はどんどん遠くなって行くばかり。 0:どうにも不思議な人だなぁ…と思いつつ、私は再び帰路についた。 0:   0:しばらく歩いていると… 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ヒールの音と共に前方に白い影が見えた。 0:それは、少し前にすれ違ったばかりのあの女性だった。 0:住宅地の路地なので、あちこちで道は繋がってはいるが… 0:再び前方からやって来るのはなんだか不思議なものだ。 0:散歩でもしているのだろうか…。 0:  0:コツ…コツ…コツ… 0:  0:どんどん女性が近付いてくる。  女性:「こんばんは…。」 0: 0: 0:またしても挨拶をされた。  私:「えっ…あっ、こんばんは…よく…」 0: 0: 0:会いますね、と言う間もなく今回も女性は花の香りを残して遠ざかって行く。 0:申し訳ないと思いつつも、再び不気味さをおぼえてしまう。 0:いけない、いけないと首を振り、少し足早に帰路を急いだ。 0:   0:それから、また少し歩みを進めた時だった。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:ヒール音と共に、前方に白い影… 0:あの女性だ。 0:またしても前方から見慣れた姿が歩いてくる。 0:おかしい。 0:いくらあちこちで道が繋がってるとはいえ、こうも頻繁に会うことがあるだろうか。 0:女性の歩く速さはお世辞にも速いとは言えない。 0:いくら散歩をしているにしてもこんな頻度で出くわすのは妙だ。 0:   0:そうこう思考を巡らせているうちに、女性はどんどんと近づいて来ていた。 0:   0:コツ…コツ…コツ…   女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:まただ…透き通るようなあの声で挨拶をされた。  私:「あ、あの…」 0: 0: 0:声をかけるも、もう女性は私に背中を向けて離れて行く。 0:気になって仕方がないが、不思議とその背中を追う気にはなれなかった。 0:またしても残っている花の香りになんだかゾッとして、私は小走りで帰路を急ぐ。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0: 0:小走りで走る私に、またあのヒールの音と白い影が近付いてきた。 0:前方にいるのは、あの女性。 0:いくらなんでもおかしい。 0:やはりこの女性は普通ではない…。 0:恐ろしくなった私は、女性を見ないようそのまま小走りで駆け抜けようとした。  女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:すれ違いざま、やはり女性は私に声をかけてきた。 0:私はもう、返事をすることもなく、漂う花の香りを振り払うかのように走る。 私:(一体なんなの…?やっぱり、幽霊かなにか…?) 0: 0: 0:考えれば考えるほど恐ろしくなり、私は走る速度を早めてとにかく家へと急いだ。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:再びヒールの音、白い影。 0:もう普通ではないことはわかっていた。 0:私は下を向いたまま更に足を早める。  女性:「こんばんは…」  0: 0:  0:耳に入る挨拶を無視しして一気に駆け抜ける…。   私:(怖い…怖い!!!おかしい、こんなの普通じゃない…一体なんなの!?) 0: 0: 0:泣きだしそうになりながら走り続ける。 0:   0:そこら中から、あの花の香りがしてきている気がしてますますパニックになる。 0:   0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:そしてまた、あのヒール音と白い影… 0:   0:私はぎゅっと目を閉じ、何も聞かないようにとにかく走った。  女性:「こんばんは…」 0: 0: 0:それでもあの声がすれ違う時に耳に入る。 0:声と花の香りから逃げるように走り抜け…そうして私はふと足を止めた。 0:乱れる呼吸で肩を揺らしながら、私は気づいてしまったのだ。 0:  0:この道…こんなに長かったっけ…? 0:  0:私は、途中から全速力に近い速さで走っている。 0:なのに、一向に景色が変わらない。 0: 0:そう… 0:  0:同じ道を延々と走っていたのだ。 0:   0:何度もあの女性とすれ違うのは… 0:私がずっと、同じ道をループしていたから…? 0:恐怖とともに花の香りが鼻につき、吐き気をおぼえて座り込む。 0:こんなことが、あり得るだろうか… 0:疲労と恐怖で、私は立ち上がることができなくなってしまった。 0:一体どうすればいいのか、あの女性はなんなのか…どうしてこうなったのか… 0:考えれば考えるほど、恐ろしくて震えが止まらない。 0:  0:コツ…コツ…コツ… 0:   0:動くことのできない私の耳に、ヒール音が聞こえてきて…そして白い影も見える。 0:逃げなくては、と思うも身体が言うことを聞かず、立つことができない。 0:そんな私に向かって、白い女性はどんどん近づいてくる。 0:私はぎゅっと目を閉じた。 0:   0:コツ…コツ… 0:   0:足音が止まった。 0:あの挨拶も聞こえない。 0:花の香りだけが強く漂っている。 0:恐る恐る目を開けると… 0:   0:そこには、座り込んで私をのぞき込むように凝視している女性の顔があった。 0:生きている人間の目ではない、黒目しかない大きな目がじっと私を見つめていた。   私:「あっ…あぁっ…あっ…」 0: 0: 0:もう、恐怖のせいで満足に声も出せない私を食い入るよう見つめる女性。 0:ぐいっと更に顔を近づけてくると、女性はその恐ろしい顔をさらにゆがめて…  女性:「こんばんは…こんばんは…こんばんは…こんばんは…こんばんは…」 0: 0: 0:抑揚のない声で狂ったようにそう繰り返す。 0:恐怖と混乱…目の前で起きている有り得ない恐怖に私はどうすることもできなかった。 0:やがてプツン、と電源を落としたかのように目の前が真っ暗になり、私の記憶はここで途絶えた。 0:   0:   0:はっ、と気付くと私は自室の布団の中にいた。 0:わけがわからず起き上がり、辺りをきょろきょろと見渡す。 0:間違いなく、自室だ。 0:服も部屋着に着替えている。 0:窓からは明るい陽射しが射していた。   私:「夢…だったの…?あはは…はは、そうよね。あんなこと、あるわけないもの…」 0: 0: 0:自分の今の状況を理解すると安堵とともに乾いた笑いが出てきた。 0:ここのところ働き詰めで疲れていたのだ。  私:「やっぱりたまにはちゃんと、休まないといけないわね…」  0: 0: 0:起き上がり、ガラリと窓を開ける。 0:   0:開けた瞬間、花の香りが鼻につく。 0:私の表情は凍りついた。 0:窓から見降ろした先には… 0:   0:あの白い女性が、じっとこちらを見上げながら立っていた。 0:   0:  0:(終)