台本概要
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タイトル | 零の恐怖書庫 第10夜「怪談」 |
---|---|
作者名 | 月儚(つくも)レイ (@rose_moon44) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 1人用台本(女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
「夜中にふと、目が覚めると聞こえる声。なんてことはない、テレビをつけっぱなしにしていたようだ。けれどそこで流れていたのは怪談番組で…」 1人読み朗読台本の怪談シリーズ「零の恐怖書庫」第1夜となります。 怪談語りのようなホラー作品となります。ホラーが苦手な方はご注意くださいませ。 朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。 ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。 68 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
私 | 女 | 7 | 主人公、語り手。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:
0:
0:深夜…
0:私はふと、寝苦しくて目を覚ました…。
0:未だ、ぼんやりとする頭で時計を見ようとする…
0:ふと、違和感をおぼえる…。
0:何やら、ボソボソと話し声が聞こえるのだ…。
0:ちなみに、私は一人暮らしである。
0:男性の声だ…。
0:私は途端に汗をかきながら、布団をかぶったままでゆっくりと部屋を見渡す。
0:声のするほうへ、ゆっくりと視線をやると…
0:
0:私の緊張はふっと途切れた。
0:なんてことはない…。
0:声の主はテレビだった。
0:けれど、テレビはたしか寝る前にちゃんと消したはず…。
0:消し忘れたかな…と頭をかいてテレビを消そうとする。
0:やっていたのは怪談番組のようだ。
0:この季節になるとよく見かける怪談師が怪談を語っている。
0:
怪談師:「えぇ、それでね…これはとある事故物件の話なんですがね…」
0:
0:
0:いやな目覚めな上に、よりによって怪談?とぞっとしつつも…
0:私は怖いもの見たさでそのまま話を聞いてしまっていた。
怪談師:「その物件では、とあるカップルが同棲していてね…けれど男性が失恋の末、自らその部屋で命を絶ってしまったんですよ」
0:
0:
0:ありがちな話である。
0:けれど、私はどうにも興味を惹かれてそのまま話を聞いた。
怪談師:「男性はとても深く恋人の女性を愛していたため…えぇ、自殺してしまうほどですからね。」
0:
0:
怪談師:「えぇ、亡くなったあとも、どうしても忘れることができないわけだ。」
0:
0:
0:怪談師がどんどん不気味な声色になりながら話を続ける。
怪談師:「だからねぇ、出るんですよ。未だにその女性が忘れられなくて…自分が首を吊った8月30日、深夜の2時12分になると…」
0:
0:
0:妙にはっきりと日付を言う。
0:思わずハッ、としてスマホを見ると…。
0:なんと、それは今日だった…そして時間も今、2時を過ぎたあたり…
0:不気味な偶然に、ぞわっと寒気が身体を駆け抜ける。
怪談師:「それも、自分の彼女によく似た背格好の黒髪の長い、綺麗な、色の白い女性がその部屋に住むとね…」
0:
0:
怪談師:「必ず出るっていうんですよ。」
0:
0:
0:怪談師の声色が変わり、びくっとする。
0:自分はたしかに黒髪で長いし、色も白い方だった…
0:こんなに偶然が重なるなんて…
0:けれど、そんな姿の女性なんかいくらだっている。
0:なんだかすごく嫌な気分になってきた。
0:もう消してしまおうとリモコンに手をやるが…
0:
0:消えない…
0:いくら電源ボタンを押しても消えない。
0:テレビでは怪談師が話を続けて…
0:
0:いや…怪談師ではなかった…
0:映っているのは怪談師なのだが…。
0:テレビの中の怪談師はピクリとも動かない。
0:なのに声だけが聞こえる。
0:それもさっきとは違う、男の声が…。
?:「なぁ…洋子…まだそこにいるんだろ?…どうしてオレを捨てたんだよ…」
0:
0:
?:「オレはお前にすべて捧げた…時間も金も愛も、全部。…お前を愛していた。」
0:
0:
私:「いやっ…いやぁぁっ」
0:
0:
0:恨めしそうな、悲しそうな声が響いてくる。
0:私は悲鳴を上げながらリモコンを何度も押し、それでも消えないテレビのコードを引き抜いた。
0:けれど、消えない…。
私:「ひっ…!!」
0:それどころか、テレビにはもはや怪談師の原型をとどめていない、得体の知れない歪んだ顔がうつっていた。
?:「なぁ…どうして捨てたんだよ…もう一度、やり直せるよな…?」
0:
0:
?:「オレたちなら、もう一度……」
0:
0:
0:男の声が、まるで部屋中から響いてくるように聞こえてくる…。
私:「ちがう!ちがうの!私はあなたの彼女じゃない!お願い、ちがうの…!!」
0:
0:
0:私は涙を流しながら、無我夢中で声を上げた。
0:すると…
0:あれだけ何をしても消えなかったテレビがプツンと消えて真っ暗になった。
0:それと同時に声も消える。
0:部屋の中がシーンと静まり返る。
私:「い…一体…なんだったの…」
0:
0:
0:乱れた呼吸をゆっくりと整えていく。
0:わけがわからなかった…。
0:私の声が、あの男に届いたんだろうか…?
0:さっきまでのは一体なんだったのか…
0:静寂と共に、少しずつ落ち着いてきた時…
私:「!?」
0:
0:
0:背後に気配を感じた…。
0:何かが立っていて、こちらをじっ…と見つめている。
私:(だめ…見ちゃだめ…見ちゃだめ…!)
0:
0:
0:心の中で自分に言い聞かせる。
0:けれど気配と視線はまるで纏わりつくかのように背中に張り付いている。
0:見てはいけない…と思うも我慢の限界だった。
0:おそるおそる背後を振り返ってみると、そこには…
0:
0:天井から、紐で首を吊ってぶらさがっている男がじっとこちらを見つめていた。
0:そしてあまりの恐怖に、声すら出ない私に…
男:「違う…洋子じゃ…ない…」
0:
0:
0:恨めしそうに呟いた。
0:その途端…私はとうとう、あまりの恐怖でそのまま気を失ってしまった。
0:
0:翌日…
0:
0:目を覚ますと、私は布団の中で眠りに落ちていた。
0:身体がすごくだるい…
0:なかなか働かない頭がズキンと痛む。
0:
0:その瞬間…
0:はっ、と夜の恐怖を思い出した。
0:思い出したくもない、生々しい恐怖の感覚が重い頭と身体に残っている。
0:
0:あれは夢だったのだろうか…?
0:そもそも、一体なにが起きて…
0:そうだ…きっかけはなぜかついていたあの怪談番組だ。
0:気になって番組表を見るも…
0:どこの局でも深夜に怪談番組や、それらしい番組もやっていなかった…。
0:やはり夢…?と思ってふとテレビをつけようとした時…
0:ゾッと悪寒が走る。
0:
0:テレビのコードが抜けたままになっている…
0:あの恐怖の中、私はたしかにコードを引き抜いた…たしかに覚えている。
0:あれはやはり、本当にあったことだったということになる。
0:
0:生々しく残っていた恐怖がどんどん鮮明になってくる。
0:ガタガタと身体が震える…。
0:
0:そして…
私:「あぁっ…!!あぁっ!!」
0:
0:
0:悲鳴にもならない声が漏れる…。
0:部屋を見渡した、自分の背後には…
0:
0:先端で輪っかを作っている紐が、天井からぶら下がっていた。
0:
0:もうこの家で暮らしていくことはできない…。
0:私はその日のうちに荷物をまとめて部屋を探しにまわり、引っ越しの準備を始めた。
0:引っ越しが決まるまではビジネスホテルで寝泊まりをして、そのままあの家へ帰ることはなかった。
0:その後はとくに私の身体に何か起こるでも、あの男が再び現れることもなく、無事に引っ越すことができた。
0:
0:けれど、あの日を迎えると…今でもあの声と、首を吊った男の顔を思い出してしまう。
0:あの男は今も、あそこで彼女を探し続けているのだろうか…?
0:恐怖と共に…少し切ない気持ちにもなった。
0:
0:(終)
0:
0:
0:深夜…
0:私はふと、寝苦しくて目を覚ました…。
0:未だ、ぼんやりとする頭で時計を見ようとする…
0:ふと、違和感をおぼえる…。
0:何やら、ボソボソと話し声が聞こえるのだ…。
0:ちなみに、私は一人暮らしである。
0:男性の声だ…。
0:私は途端に汗をかきながら、布団をかぶったままでゆっくりと部屋を見渡す。
0:声のするほうへ、ゆっくりと視線をやると…
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0:私の緊張はふっと途切れた。
0:なんてことはない…。
0:声の主はテレビだった。
0:けれど、テレビはたしか寝る前にちゃんと消したはず…。
0:消し忘れたかな…と頭をかいてテレビを消そうとする。
0:やっていたのは怪談番組のようだ。
0:この季節になるとよく見かける怪談師が怪談を語っている。
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怪談師:「えぇ、それでね…これはとある事故物件の話なんですがね…」
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0:いやな目覚めな上に、よりによって怪談?とぞっとしつつも…
0:私は怖いもの見たさでそのまま話を聞いてしまっていた。
怪談師:「その物件では、とあるカップルが同棲していてね…けれど男性が失恋の末、自らその部屋で命を絶ってしまったんですよ」
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0:ありがちな話である。
0:けれど、私はどうにも興味を惹かれてそのまま話を聞いた。
怪談師:「男性はとても深く恋人の女性を愛していたため…えぇ、自殺してしまうほどですからね。」
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怪談師:「えぇ、亡くなったあとも、どうしても忘れることができないわけだ。」
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0:怪談師がどんどん不気味な声色になりながら話を続ける。
怪談師:「だからねぇ、出るんですよ。未だにその女性が忘れられなくて…自分が首を吊った8月30日、深夜の2時12分になると…」
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0:
0:妙にはっきりと日付を言う。
0:思わずハッ、としてスマホを見ると…。
0:なんと、それは今日だった…そして時間も今、2時を過ぎたあたり…
0:不気味な偶然に、ぞわっと寒気が身体を駆け抜ける。
怪談師:「それも、自分の彼女によく似た背格好の黒髪の長い、綺麗な、色の白い女性がその部屋に住むとね…」
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怪談師:「必ず出るっていうんですよ。」
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0:怪談師の声色が変わり、びくっとする。
0:自分はたしかに黒髪で長いし、色も白い方だった…
0:こんなに偶然が重なるなんて…
0:けれど、そんな姿の女性なんかいくらだっている。
0:なんだかすごく嫌な気分になってきた。
0:もう消してしまおうとリモコンに手をやるが…
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0:消えない…
0:いくら電源ボタンを押しても消えない。
0:テレビでは怪談師が話を続けて…
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0:いや…怪談師ではなかった…
0:映っているのは怪談師なのだが…。
0:テレビの中の怪談師はピクリとも動かない。
0:なのに声だけが聞こえる。
0:それもさっきとは違う、男の声が…。
?:「なぁ…洋子…まだそこにいるんだろ?…どうしてオレを捨てたんだよ…」
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?:「オレはお前にすべて捧げた…時間も金も愛も、全部。…お前を愛していた。」
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私:「いやっ…いやぁぁっ」
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0:恨めしそうな、悲しそうな声が響いてくる。
0:私は悲鳴を上げながらリモコンを何度も押し、それでも消えないテレビのコードを引き抜いた。
0:けれど、消えない…。
私:「ひっ…!!」
0:それどころか、テレビにはもはや怪談師の原型をとどめていない、得体の知れない歪んだ顔がうつっていた。
?:「なぁ…どうして捨てたんだよ…もう一度、やり直せるよな…?」
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?:「オレたちなら、もう一度……」
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0:男の声が、まるで部屋中から響いてくるように聞こえてくる…。
私:「ちがう!ちがうの!私はあなたの彼女じゃない!お願い、ちがうの…!!」
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0:私は涙を流しながら、無我夢中で声を上げた。
0:すると…
0:あれだけ何をしても消えなかったテレビがプツンと消えて真っ暗になった。
0:それと同時に声も消える。
0:部屋の中がシーンと静まり返る。
私:「い…一体…なんだったの…」
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0:乱れた呼吸をゆっくりと整えていく。
0:わけがわからなかった…。
0:私の声が、あの男に届いたんだろうか…?
0:さっきまでのは一体なんだったのか…
0:静寂と共に、少しずつ落ち着いてきた時…
私:「!?」
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0:背後に気配を感じた…。
0:何かが立っていて、こちらをじっ…と見つめている。
私:(だめ…見ちゃだめ…見ちゃだめ…!)
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0:心の中で自分に言い聞かせる。
0:けれど気配と視線はまるで纏わりつくかのように背中に張り付いている。
0:見てはいけない…と思うも我慢の限界だった。
0:おそるおそる背後を振り返ってみると、そこには…
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0:天井から、紐で首を吊ってぶらさがっている男がじっとこちらを見つめていた。
0:そしてあまりの恐怖に、声すら出ない私に…
男:「違う…洋子じゃ…ない…」
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0:恨めしそうに呟いた。
0:その途端…私はとうとう、あまりの恐怖でそのまま気を失ってしまった。
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0:翌日…
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0:目を覚ますと、私は布団の中で眠りに落ちていた。
0:身体がすごくだるい…
0:なかなか働かない頭がズキンと痛む。
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0:その瞬間…
0:はっ、と夜の恐怖を思い出した。
0:思い出したくもない、生々しい恐怖の感覚が重い頭と身体に残っている。
0:
0:あれは夢だったのだろうか…?
0:そもそも、一体なにが起きて…
0:そうだ…きっかけはなぜかついていたあの怪談番組だ。
0:気になって番組表を見るも…
0:どこの局でも深夜に怪談番組や、それらしい番組もやっていなかった…。
0:やはり夢…?と思ってふとテレビをつけようとした時…
0:ゾッと悪寒が走る。
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0:テレビのコードが抜けたままになっている…
0:あの恐怖の中、私はたしかにコードを引き抜いた…たしかに覚えている。
0:あれはやはり、本当にあったことだったということになる。
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0:生々しく残っていた恐怖がどんどん鮮明になってくる。
0:ガタガタと身体が震える…。
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0:そして…
私:「あぁっ…!!あぁっ!!」
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0:悲鳴にもならない声が漏れる…。
0:部屋を見渡した、自分の背後には…
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0:先端で輪っかを作っている紐が、天井からぶら下がっていた。
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0:もうこの家で暮らしていくことはできない…。
0:私はその日のうちに荷物をまとめて部屋を探しにまわり、引っ越しの準備を始めた。
0:引っ越しが決まるまではビジネスホテルで寝泊まりをして、そのままあの家へ帰ることはなかった。
0:その後はとくに私の身体に何か起こるでも、あの男が再び現れることもなく、無事に引っ越すことができた。
0:
0:けれど、あの日を迎えると…今でもあの声と、首を吊った男の顔を思い出してしまう。
0:あの男は今も、あそこで彼女を探し続けているのだろうか…?
0:恐怖と共に…少し切ない気持ちにもなった。
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0:(終)