台本概要

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タイトル 別れさせ屋の恋(兼役可)
作者名 大輝宇宙@ひろきうちゅう  (@hiro55308671)
ジャンル コメディ
演者人数 5人用台本(男1、女4)
時間 30 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 なんでも屋を営むミラの元に、青年実業家のアロンツォが訪ねてくる。
彼は田舎においてきた妻子を呼び寄せるため、街で出来た愛人たちと別れたいと言うが…。

ミラ、アロンツォに比べると他役はセリフ量が控えめなので兼役でも良いかと思います。(同時に出てくることがないので)

非商用利用時は、連絡不要ですが、予告等に使用する作者名は下記でお願い致します。
大輝宇宙・しろめぇ

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ミラ 88 なんでも屋を営む。しっかり者。冷静、未婚、ツッコミ気質。 シュガートップというブランドの靴に憧れている。年齢はアロンツォより下を想定していますが、ご自由に。
アロンツォ 94 青年実業家。運送会社で一山当てた。仕事は出来るが惚れっぽく、全ての女性を愛せるような男。妻も愛人もみな平等に愛している。
ニコル 23 アロンツォの愛人。未亡人。貞淑、したたか、おっとりマウント。
マチルダ 18 アロンツォの愛人。酒場の女主人。奔放、どっしり、豪快、姉御。
メラーニア 15 アロンツォの妻。 アロンツォが仕事のために街へ出たので、田舎で離れて暮らしている。思い込みが激しい、おちゃめ。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0: 0:  :ミラの「なんでも屋」事務所内 テーブルを挟んでアロンツォとミラが話をしている 0: ミラ:私にそれが務まると思います? アロンツォ:つとまる、つとまらないじゃない。やってもらわないと困る。 ミラ:他にもっと適任な方がいらっしゃるでしょう? アロンツォ:いや、ふさわしい女性…つまり君より美しく、気品に溢れているような女性とはその… ミラ:大体関係を持っていらっしゃる…? アロンツォ:ああ、そうだ。この街の女性で、素晴らしい女性のことはよく知っていると自負しているよ。 ミラ:自慢できるような話でしょうか? アロンツォ:なぁ、頼むよミラ!君を最近できた飲み友達と見込んで、こうして頼んでいるんだよ? ミラ:それは一体どういう立場ですか。 アロンツォ:なぁって、君はなんでも屋、代行屋、色々な名はあれど、つまりはこういう時のための商売だろう?困っている人間に力を貸してくれるんだろう?金はもちろんはずむ。 ミラ:金…まぁ、金払いの心配はしていませんよ。運河を使った荷物の輸送ルートが大当たりしたそうじゃないですか。 アロンツォ:ああ、己の商才が時々恐ろしいくらいだ。 ミラ:私が心配してるのは… アロンツォ:見た目かい?たしかに君は田舎に置いてきた妻よりも、この街で恋に落ちた愛人たちよりも見た目は劣るが、まぁ、化粧をしてキレイな身なりに整えれば見られないモンではないだろう。 ミラ:・・・・。 アロンツォ:その際の必要経費も勿論僕が出すよ?服でもアクセサリーでも、靴でもバッグでも一揃え…いや、もういくらでも買えば良いさ。 ミラ:・・・靴もいいんですか? アロンツォ:ん?ああ…構わんよ。 ミラ:そうですか。 アロンツォ:何だい?欲しい靴でもあるのか? ミラ:シュガートップの…ヒールが。 アロンツォ:最近若い女性に人気のあのブランドか。うん、いいじゃないか。今はパンツで足がよく見えないが、そのスラッとした腕だ。足も大層キレイなんだろう。きっと似合う。 ミラ:それは…分かりませんが。 アロンツォ:欲しいんだろう?欲しいものは欲しいというべきだミラ。引き受けてくれるね? ミラ:・・・分かりました。私は田舎にいる奥様の身代わりをすればいいんですよね? アロンツォ:ああ、そしてこの街の私の愛人達に私のことを諦めさせて欲しい。 ミラ:自分で「別れたい」と言ったほうが早いんじゃないですか? アロンツォ:バカ言っちゃいけない。女性を泣かせるのは最低な行為だ。僕はそれを善しとはしない。 ミラ:え? アロンツォ:僕から別れを告げられたら彼女たちは泣いて悲しむと思う。 ミラ:・・・そうですか。 アロンツォ:このたび、この街での商売が大きく当たって落ち着いてきたというわけで、田舎から妻のメラーニアと、息子のチーロを呼び寄せることにした。 ミラ:それで愛人さんたちが邪魔になったと。 アロンツォ:泣く泣くの決断だ。僕は彼女たちを平等に愛している!愛しているが、妻とは「結婚」という契約を結んでいるし、6歳になる息子は目に入れても痛くないほど可愛い。二人は優先しなければならない。 ミラ:隠れて関係を続けようとは思わないんですか? アロンツォ:僕と彼女たちの間には愛があるからね。その愛は平等だからこそ、僕が既婚者であっても彼女たちは納得していたんだ。それが、妻を優先するとなってみなよ、そこに存在した愛は欠けてしまう。欠けた愛を持ち続けたい女性なんていないだろう。 ミラ:分かるような、分からないような。そもそも愛人関係に愛があったと? アロンツォ:当たり前だ!!愛なくして、愛人が作れますかってもんだ。見くびってもらっては困る。 ミラ:なんか論点がズレてる気がするんですよね。 アロンツォ:ミラ、君は女性だから女性というものの魅力が分っていないんだ。女性は、肌が柔らかく、声も柔らかい、髪も唇も柔らかく、素晴らしい。 ミラ:シフォンケーキと抱き合って寝たらいいのに アロンツォ:何か言ったかい? ミラ:いいえ、お気になさらず。 アロンツォ:まぁ、そういうわけだから、着飾って妻を演じてくれ。そして彼女たちに「こんなに素晴らしい妻がいるならば身を引こう…」と諦めてもらおう。 0: 0:  :一人目の愛人ニコル宅 ニコル:奥様、お砂糖はおいくつ? ミラ:え…ああ、私、紅茶はストレートを好みますの。お気遣いどうも。 ニコル:それにしても、アロンツォさんの奥様がこんなに美しく、聡明そうな方だなんてちっとも存じ上げませんでしたわ。 アロンツォ:そうかい?君も十分可憐で聡明だよ、ニコル。 ミラ:(咳払い) ニコル:ありがとうございます。…これからは奥様もこの街に? アロンツォ:ああ、物資の輸送ビジネスも軌道に乗ってきたし、これからはゴンドラを使って観光ビジネスにも手を広げようかと思っているんだ。 ニコル:まぁ!さすがアロンツォさん。先見の明がありますわね。 ミラ:そんな主人を私も傍で支えたいと、そう思いましたの。 ニコル:なるほど、ご立派なお考えですわ。頑張る男性を支える、それこそ女の喜びといえましょう。たとえどこの港を旅しようとも、私が還ってくる場所であれたなら、時には行く先を照らす灯台であれたなら、こんなに嬉しいことはございませんわ。 ミラ:その港も灯台も、妻である私の役目だと思っております。 ニコル:…そうですわね。たまに寄る港にも疲れを癒やすことはできるでしょうけど… アロンツォ:やはりそれは妻でないと出来ないことなんだなぁ。なるほどなるほど。 ミラ:・・・・。 ニコル:アロンツォさんもそう思われるのね。分かりました。少し切り込んだお話をいたしましょう。奥様、私とアロンツォさんの関係はご存知なのでしょう? ミラ:ええ…。 ニコル:安心いたしましたわ。奥様には申し訳ないことだと思いますが、私とアロンツォさんはとても想い合っておりましたの。彼の詩のような言葉はどれもとても素晴らしく、甘く、いつも私を夢心地にしてくれましたわ。 アロンツォ:君のそのつぶらな瞳が僕に愛の詩を紡がせるんだ。 ミラ:(咳払い) ニコル:アロンツォさん…今も私を愛してる?私と別れようとするのは、奥様に悪いから?そこがはっきりしないわ。私は先程、妻でないと疲れが癒えないとおっしゃったのを見て、これはいよいよ私との関係を清算にいらっしゃったのだと思ったのだけど… アロンツォ:おお…ニコル。君への気持ちが変わるなんて事は、ありえない。 ミラ:ちょ…アロンツ…あなた!? ニコル:アロンツォさん…。・・・ならば、奥様、私とアロンツォさんをシェアいたしませんこと?月曜から木曜までは私。金曜から日曜までは奥様とお坊ちゃんにアロンツォさんをお返ししますわ。 ミラ:ニコルさんが一日多いのも気になりますが…。(小声で)どーするんですか、アロンツォさん!? ニコル:それは、私がより彼を愛していると自負しているから…ですわ。 アロンツォ:ニコル…そんなに僕のことを ニコル:奥様にこの様に申し上げるのは恐れ多いですが、今まで何をしていらっしゃったんです?彼を放っておいて。アロンツォさんは、とても仕事に打ち込んで頑張っていらっしゃたわ。夜遅くまでここへ帰らないこともありましたし、朝早くから部下の方に泣きつかれて、飛び出して仕事へ向かうこともありましたの。そんな日に、あなたは何をしていらっしゃったの? アロンツォ:そんな日もあったなぁ…。いつもニコルは抱きしめて僕を迎えてくれて、笑顔で僕を送り出してくれた。 ニコル:当然ですわ。私は、あなたを支えたいと、心から思っているんだもの。 アロンツォ:ああ…ニコル。君はなんて美しく控えめなんだ! ミラ:何が控えめですか。 アロンツォ:ん?!ニコルは君から僕を奪うでもなく、シェアしようと言っている。それに、いつも僕のことを考えて、感情的にならず優しく接してくれるんだよ? ニコル:まぁ…そんな。 ミラ:そんなだから、色んな女に目がくらむんですよ、このスカポンタン。 ニコル:奥様?そんなふうに仰るのは… ミラ:うるっさいなぁ。あなた、黙って聞いていれば何なんですか?自分がさも正しいことをしてきたような言いっぷりで、「奥様には申し訳ない」「奥様に恐れ多い」…そんなの口ばっかりじゃない! アロンツォ:ミラ?落ち着いて ミラ:自分がどれだけ愛されていたか、自分がどれだけ想っているかのアピールは激しいし、シャアの日にちも一日多い!挙句の果てに田舎で子育てを頑張ってる奥さんをつかまえて、「何してたんですか」?はぁ!?あなたこそ人の旦那を寝取って、「ここへ帰ってくるのが遅かった」だの正妻ぶって、一体何をしていたんですか!? ニコル:・・・。 アロンツォ:ミラ、そこまでニコルを責めないでやってくれ。もとはと言えば女性にだらしない僕が蒔いた種なんだか… ミラ:そのとおりですよ!!この浮気者がっ!あなた、今日ここへ何をしにきたんですか!この人と別れるために来たんでしょ!?それなのに、ほだされて、デレデレして、何してるんですか?しっかり話をつけて下さい。 アロンツォ:ああ…そうだね…。すまない、ニコル。そういうことなんだ。 ニコル:・・・分かりました。 アロンツォ:ありがとう、君との素晴らしい日々、君の優しさ、なめらかな肌、すべて忘れない。 ニコル:500シェリルでいいです。 ミラ:500シェリル? ニコル:ええ。アロンツォさんから頂いた愛に免じて、これでも安くしたつもりですわ。 ミラ:500シェリルは…いくらなんでも、愛人の慰謝料にしては高すぎやしませんか? ニコル:私が勤め人だった場合、一年でおよそ300シェリルいただけますでしょう?アロンツォさんとは一年半のお付き合い。500シェリルで手を打ちます。 ミラ:やっぱり少し多いのが気になる…。あと何で勤め人で換算? アロンツォ:勤めに出ていたとでも思わないと、心が壊れてしまうんだね…ニコル。 ミラ:はぁ? アロンツォ:わかるよ。君はとても繊細な女性なんだ。 ニコル:アロンツォさん、分って下さってありがとう。それで、お支払いいただけます?500シェリルは、あなたと引き離されることを思えば安いものだと思うのだけど。 アロンツォ:ああ、勿論お渡しするよ。こんなはした金が君の慰めになるのなら… ミラ:バカバカしい。 ニコル:ありがとう、アロンツォさんっ。わたしきっとあなたのことをいい思い出にしてみせるわ! アロンツォ:ニコル…!!(熱い抱擁を交わす) 0:  :ニコル邸を去ろうとするアロンツォとミラ 0: ニコル:また奥様と寄ってらしてね。美味しいお茶をご用意するわ。 アロンツォ:ああ、ありがとう(ニコルに手をふり、先に歩き出したミラを追いかける)…待って!待ってくれミラ!…君はそんな高いヒールでスタスタと…。いやぁ、それにしても迫真の演技だったよ。さすが「なんでも屋」は手慣れてる。最初は聡明で貞淑な妻を演じてもらってニコルに納得してもらおうとしていたが、キャラが被っていてとても太刀打ちできそうになかったからな、少し心配したが… ミラ:・・・。 アロンツォ:ともあれ、君のおかげで何とかニコルに納得してもらえた。言いたい放題言われて、彼女は何も言い返せなかったもんなぁ。いやぁ、お見事。 ミラ:結局・・・ アロンツォ:ん? ミラ:結局100も上乗せされて、600シェリルも払うなんて、あなたは本当にバカなんですね!一年半の給料換算なら本来450シェリルなんですよ。それを500だ、600だって…あの人本当にしたたか… アロンツォ:僕の彼女を悪く言うのはやめてくれたまえよ。彼女は僕を失って一人になってしまう。傷が癒えるには付き合ったのと同じ年月が必要だ。 ミラ:そうでしょうか? アロンツォ:そういうものだ。その間、彼女が不自由なく暮らすのに十分なものを差し出したかったのだよ。そのくらい僕らの愛の日々は素晴らしかったんだから。 ミラ:あなたの考えが、私にはよく分かりません。 アロンツォ:僕は、愛した女性たちには常に誠実でありたいのさ。そして、どの女性も等しく平等に愛している。 ミラ:う〜ん…。 アロンツォ:それにしてもミラ!君はスタイルがとてもいいな。「まぁ見られないことはないだろう」なんて言ったが、あれは失言だった。ニコルも言っていたが、とても美しいよ。 ミラ:えっ…? アロンツォ:スラリと長い脚に、シュガートップの靴がとても良く似合っているし、口紅はルシャネの新作だろう?控えめな口唇によく映えてる。 ミラ:あ…ありがとうございます。でも、恥ずかしいので、もう大丈夫… アロンツォ:何故だい?褒められておけば良い。それだけ君が素敵だということなのだから。 ミラ:こうやって色々な女性を落としてきたんでしょうね。 アロンツォ:ん?人聞きの悪い。僕の気持ちに多くの女性がふりむいてくれただけさ。 ミラ:はいはい 0: 0: :酒場の前 0: ミラ:今日は酒場の女主人、マチルダさんの説得ですね。 アロンツォ:ああ、これで最後。ここまで24人、よく付き合ってくれたねミラ。 ミラ:25人も愛人がいるなんて思ってませんでしたよ… アロンツォ:僕は皆平等に… ミラ:愛してるんですよね。分ってます。もう何度となく聞いてきましたから。 アロンツォ:ああ。ミラ、今日もとても美しいな。今日の説得もよろしく頼む。 ミラ:・・・分ってます。 アロンツォ:さぁ行こう。 0:  :酒場の扉を開ける 0: マチルダ:いらっしゃいま…!…アロンツォ。あなたは奥様ね?待ってたわ。 ミラ:待っていた? マチルダ:ええ、街中の噂になってる。アロンツォが田舎からキレイな奥さんを呼び寄せたって。 アロンツォ:そうか…。じゃあマチルダ、分っているかもしれないが… マチルダ:別れない。 アロンツォ:んーーー? マチルダ:別れるわけないわ。他の女たちが何で納得したのか分からないけど…私は絶対にあなたと別れない。だって アロンツォ:僕を愛しているんだね? マチルダ:体の相性がこんなにいい人は初めてだから。 アロンツォ:体も含めて愛してるってことか…嬉しいな。 マチルダ:絶対に離さないわ。ねぇ奥様?アロンツォはあなたを愛してる。この街にも呼び寄せてくれた。お金もある。それで十分じゃない? ミラ:十分というのはどういう意味でしょうか? マチルダ:私、この人の体さえあればいいの。 アロンツォ:マチルダ…!!何て奥ゆかしいんだ…! マチルダ:お金も別にいらないし、毎日会ってほしいなんて言わない。愛の言葉を囁いてほしいとも全く思わない。でも私は別れないし、アロンツォとの関係を続けたいの。 アロンツォ:熱烈だなぁ…!! ミラ:別に私の夫じゃなくてもいいじゃありませんか。 マチルダ:そうね、アロンツォの体であれば、アロンツォである必要はないかも…。 ミラ:そこに愛はないんですね…。 マチルダ:あら?体を愛しいと思うのも愛なんじゃない?奥様だって愛しているでしょう?彼はとても奉仕家だから。 ミラ:やめてください。汚らわしい。 アロンツォ:とても崇高な時間だったなぁ、マチルダ。君はまるで南米の踊り子のように情熱的でパワフルだった。 マチルダ:ありがとう、アロンツォ。私はね、あなたの腕の中で踊り続けたいの。いいでしょう? アロンツォ:ん?うーん、僕も君とのダンスはパッションの交流を感じられて大好きだけど… ミラ:ちょっ…アロンツ…あなた!?25人目になってもまだ懲りないんですか!? アロンツォ:え、あ、いや、ごめん。 マチルダ:奥様、私は別に妻のように振る舞いたいわけではないんです。ただこの人と身体を合わせたいだけ。どっかの誰かみたいにあなたより優位に立ちたいわけでもなけりゃ、お金目当てでもない。いいでしょう? アロンツォ:マチルダ、君のはっきりした性格は周りに安心感を与えるね。 ミラ:何言ってるんですか?安心なんてできませんよ。身体だけだからいいだろう?いいわけないでしょう?むしろお断りです。私はそんなの愛だと思わないし、そこに愛がないのなら尚更認められませんよ。その性欲まみれの垢だらけの手で私の夫の身体に触らないで下さい!帰ってこない夜があるたびにあなたといるんだと思うとゾッとします。あなたに触れたであろう手で私に触れられるのは絶対にごめんだわ。 アロンツォ:ミラ…。 マチルダ:垢まみれ…言ってくれるわね。じゃあ奥様は身体以外でアロンツォのどこが良くて妻をしてらっしゃるの?お金? アロンツォ:(こそこそと)ミラ…僕の言ったように復唱すれば良い。「運河ビジネスの商才と…」 ミラ:この人は、馬鹿な人です。 アロンツォ:え? ミラ:どの女性も、どの女性も根っから愛して素晴らしと思って、本気で愛し抜いてる馬鹿な人です。ポジティブすぎるくらいポジティブで、人の嫌味にも気が付かないし、情が深すぎる馬鹿な人。でも…その分、人間が大好きで、一人ひとりのいいところに気づけて、それを口に出して他人を勇気付けられる。そんな人なんです。この人は決して女性を身体だけで見たりしない。そんな、心根の優しい人を私は愛しているんです。だからマチルダさんには、この人の指一本だって譲れません。 アロンツォ:ミラ・・・。 マチルダ:ふふふ…とんでもなく愛してらっしゃるのね。・・・他にもっといい男、探さなくちゃ。アロンツォとは別れるわ。 アロンツォ:マチルダ…今までありがとう。 マチルダ:こちらこそ。…とても素敵な奥様ね、大事にして、アロンツォ。 アロンツォ:あ…ああ。じゃあ(店の外へ向かう) マチルダ:奥様、お待ちになって。 ミラ:なにか? マチルダ:・・・身体だけ愛していたのは嘘。…振られると分っていても、どうしても…身体だけでもしがみつきたかったのよ。 ミラ:・・・分かります。 マチルダ:そう…。 0: 0:  :店の外に出て、街の中を並んで歩く二人 0: 0: アロンツォ:ミラ、本当にありがとう。おかげで全ての彼女達と円満に別れることができたよ。 ミラ:そうですか・・・ アロンツォ:どうしたんだい?これでもう僕の妻のフリはしなくていいんだ。君も他の仕事に取り掛かれて嬉しいだろう? ミラ:ええ…まぁ アロンツォ:今まで買った服やアクセサリー、化粧品、シュガートップの靴4足に加えて、もちろん報酬も予定より多く支払わせてくれ。何て言ったって君は僕の命の恩人みたいなものなんだからね。 ミラ:本当に女心に鈍感な人ですねアロンツォさんは アロンツォ:え?僕ほど女性の心に敏感な男はいないと思うけれども… ミラ:本当に馬鹿な人。この2ヶ月で私は… メラーニア:その方が、あなたの再婚相手なの?アロンツォ アロンツォ:メラーニア…どうしてここに? メラーニア:あなたが街で若い女と再婚したって話が、田舎まで届いたのよ。 アロンツォ:メラーニア、それは誤解だ。僕は誰とも再婚なんてしていない。結婚はただ一度、君とだけだ。 ミラ:メラーニアさん、私とアロンツォさんは、ただの飲み仲間です。心配されるようなことは… メラーニア:嘘よ!!この街に来て、色々な人に聞いたわ。あなたには、29人の愛人がいて、若い娘と再婚するために手切れ金を渡しているって噂じゃないの。 アロンツォ:僕の愛人は25人だ。 メラーニア:それがどうしたって言うのよ! アロンツォ:僕は君をこちらに呼び寄せるために、ミラに頼んで… メラーニア:あなたの嘘はもうたくさんっ!お金と、甘い言葉や、息子を気遣う手紙は欠かさないくせに、ちっとも帰ってきやしない!結婚する前は…田舎にいた頃は、あんなにも私を抱きしめてくれたのに…チーロにも良き父だったのに… ミラ:メラーニアさん、アロンツォさんは嘘なんか… メラーニア:うるさいっ!!あなたは愛せる?こんな男を! アロンツォ:金も、手紙も送ってただろう? メラーニア:お金なんて!お金なんて意味が無いのよ!あなたの妻でありたかったんだから。もうおしまい、もうおしまいよ。あんたなんて、あんたなんて幸せになんてさせない!(ナイフでミラを刺そうと向かってくる) アロンツォ:ミラ!危ないっ…(アロンツォがかばって、刺される)…うっ!! ミラ:アロンツォさんっ… アロンツォ:大丈夫、少し脇をかすっただけだ…。大丈夫。 メラーニア:やっぱり…その女をかばったのね。もう私のことなんて… アロンツォ:メラー…ニア ミラ:違います、アロンツォさんは… メラーニア:何が違うのよ!あんた何なのよさっきから「私が一番彼を分ってる」みたいな顔して。妻は私よ!! ミラ:この2ヶ月、私はアロンツォさんの妻でした!私は彼を愛しています! アロンツォ:ミ…ラ… メラーニア:なっ…何を… ミラ:止血しないと。…アロンツォさんが私をかばったのは、メラーニアさん、あなたを守るため…。私を刺していたら、あなたは捕まって罪人として罰せられる。アロンツォさんは、それを避けたかったんですよ。 メラーニア:そんな… アロンツォ:妻を守るのは…夫の…役目だから… メラーニア:あなた…あなたごめんなさい…。私…田舎で、トーニオと…その、ね? ミラ:え? メラーニア:だって、もう半年近く帰ってこないんだもん。私寂しくなっちゃって…チーロもすごくなついてるしね。 ミラ:何で私を刺そうと? メラーニア:それは、なんか、自分から振るのはいいけど、振られるのは癪だなぁって思っちゃったのよ。でもちょっとびっくりさせるつもりで、殺そうとか思ってなかったのよ?なのにアロンツォが飛び出してきたから…私がびっくり。みたいな? ミラ:あなた… アロンツォ:はっはっは!メラーニア、君の素直なところが昔から僕は大好きだ。 メラーニア:ありがとう、アロンツォ。私もあなたのこと、大好きだった。刺したことは…ごめんなさい。その…お大事にしてね… アロンツォ:ああ・・大丈夫。(メラーニア去る) ミラ:本当に、お人好しでバカみたい。 アロンツォ:ああ…。僕は本当に一人になってしまった。 ミラ:・・・。 アロンツォ:なぁ、ミラ。 ミラ:いやです。 アロンツォ:まだ何も言ってないよ? ミラ:いやです。 アロンツォ:ミラ…!?そんな事言わないで。僕はこの2ヶ月で君の良いところを沢山知った。君を愛しく想うことも増えた。 ミラ:…もう仕事は終わり。妻でも何でもありません。 アロンツォ:ミラ、この2ヶ月に僕に起きた変化は、君だって同じだと僕は信じてる。 ミラ:どこまで前向きで、自己中心的なんですか!言ってるでしょう?仕事は… アロンツォ:そう。仕事は終わりだ。ミラ、僕の恋人になってくれ。 ミラ:・・・。 アロンツォ:もう愛人を作ったりしないから。 ミラ:・・・いいですよ。 アロンツォ:ミラ! ミラ:たとえあなたがまた愛人を25人作ったとしても私が乗り込んでいって別れさせます。 アロンツォ:誰も君が僕を思う気持ちには、敵わないよ! 0:  :抱き合って END

0: 0:  :ミラの「なんでも屋」事務所内 テーブルを挟んでアロンツォとミラが話をしている 0: ミラ:私にそれが務まると思います? アロンツォ:つとまる、つとまらないじゃない。やってもらわないと困る。 ミラ:他にもっと適任な方がいらっしゃるでしょう? アロンツォ:いや、ふさわしい女性…つまり君より美しく、気品に溢れているような女性とはその… ミラ:大体関係を持っていらっしゃる…? アロンツォ:ああ、そうだ。この街の女性で、素晴らしい女性のことはよく知っていると自負しているよ。 ミラ:自慢できるような話でしょうか? アロンツォ:なぁ、頼むよミラ!君を最近できた飲み友達と見込んで、こうして頼んでいるんだよ? ミラ:それは一体どういう立場ですか。 アロンツォ:なぁって、君はなんでも屋、代行屋、色々な名はあれど、つまりはこういう時のための商売だろう?困っている人間に力を貸してくれるんだろう?金はもちろんはずむ。 ミラ:金…まぁ、金払いの心配はしていませんよ。運河を使った荷物の輸送ルートが大当たりしたそうじゃないですか。 アロンツォ:ああ、己の商才が時々恐ろしいくらいだ。 ミラ:私が心配してるのは… アロンツォ:見た目かい?たしかに君は田舎に置いてきた妻よりも、この街で恋に落ちた愛人たちよりも見た目は劣るが、まぁ、化粧をしてキレイな身なりに整えれば見られないモンではないだろう。 ミラ:・・・・。 アロンツォ:その際の必要経費も勿論僕が出すよ?服でもアクセサリーでも、靴でもバッグでも一揃え…いや、もういくらでも買えば良いさ。 ミラ:・・・靴もいいんですか? アロンツォ:ん?ああ…構わんよ。 ミラ:そうですか。 アロンツォ:何だい?欲しい靴でもあるのか? ミラ:シュガートップの…ヒールが。 アロンツォ:最近若い女性に人気のあのブランドか。うん、いいじゃないか。今はパンツで足がよく見えないが、そのスラッとした腕だ。足も大層キレイなんだろう。きっと似合う。 ミラ:それは…分かりませんが。 アロンツォ:欲しいんだろう?欲しいものは欲しいというべきだミラ。引き受けてくれるね? ミラ:・・・分かりました。私は田舎にいる奥様の身代わりをすればいいんですよね? アロンツォ:ああ、そしてこの街の私の愛人達に私のことを諦めさせて欲しい。 ミラ:自分で「別れたい」と言ったほうが早いんじゃないですか? アロンツォ:バカ言っちゃいけない。女性を泣かせるのは最低な行為だ。僕はそれを善しとはしない。 ミラ:え? アロンツォ:僕から別れを告げられたら彼女たちは泣いて悲しむと思う。 ミラ:・・・そうですか。 アロンツォ:このたび、この街での商売が大きく当たって落ち着いてきたというわけで、田舎から妻のメラーニアと、息子のチーロを呼び寄せることにした。 ミラ:それで愛人さんたちが邪魔になったと。 アロンツォ:泣く泣くの決断だ。僕は彼女たちを平等に愛している!愛しているが、妻とは「結婚」という契約を結んでいるし、6歳になる息子は目に入れても痛くないほど可愛い。二人は優先しなければならない。 ミラ:隠れて関係を続けようとは思わないんですか? アロンツォ:僕と彼女たちの間には愛があるからね。その愛は平等だからこそ、僕が既婚者であっても彼女たちは納得していたんだ。それが、妻を優先するとなってみなよ、そこに存在した愛は欠けてしまう。欠けた愛を持ち続けたい女性なんていないだろう。 ミラ:分かるような、分からないような。そもそも愛人関係に愛があったと? アロンツォ:当たり前だ!!愛なくして、愛人が作れますかってもんだ。見くびってもらっては困る。 ミラ:なんか論点がズレてる気がするんですよね。 アロンツォ:ミラ、君は女性だから女性というものの魅力が分っていないんだ。女性は、肌が柔らかく、声も柔らかい、髪も唇も柔らかく、素晴らしい。 ミラ:シフォンケーキと抱き合って寝たらいいのに アロンツォ:何か言ったかい? ミラ:いいえ、お気になさらず。 アロンツォ:まぁ、そういうわけだから、着飾って妻を演じてくれ。そして彼女たちに「こんなに素晴らしい妻がいるならば身を引こう…」と諦めてもらおう。 0: 0:  :一人目の愛人ニコル宅 ニコル:奥様、お砂糖はおいくつ? ミラ:え…ああ、私、紅茶はストレートを好みますの。お気遣いどうも。 ニコル:それにしても、アロンツォさんの奥様がこんなに美しく、聡明そうな方だなんてちっとも存じ上げませんでしたわ。 アロンツォ:そうかい?君も十分可憐で聡明だよ、ニコル。 ミラ:(咳払い) ニコル:ありがとうございます。…これからは奥様もこの街に? アロンツォ:ああ、物資の輸送ビジネスも軌道に乗ってきたし、これからはゴンドラを使って観光ビジネスにも手を広げようかと思っているんだ。 ニコル:まぁ!さすがアロンツォさん。先見の明がありますわね。 ミラ:そんな主人を私も傍で支えたいと、そう思いましたの。 ニコル:なるほど、ご立派なお考えですわ。頑張る男性を支える、それこそ女の喜びといえましょう。たとえどこの港を旅しようとも、私が還ってくる場所であれたなら、時には行く先を照らす灯台であれたなら、こんなに嬉しいことはございませんわ。 ミラ:その港も灯台も、妻である私の役目だと思っております。 ニコル:…そうですわね。たまに寄る港にも疲れを癒やすことはできるでしょうけど… アロンツォ:やはりそれは妻でないと出来ないことなんだなぁ。なるほどなるほど。 ミラ:・・・・。 ニコル:アロンツォさんもそう思われるのね。分かりました。少し切り込んだお話をいたしましょう。奥様、私とアロンツォさんの関係はご存知なのでしょう? ミラ:ええ…。 ニコル:安心いたしましたわ。奥様には申し訳ないことだと思いますが、私とアロンツォさんはとても想い合っておりましたの。彼の詩のような言葉はどれもとても素晴らしく、甘く、いつも私を夢心地にしてくれましたわ。 アロンツォ:君のそのつぶらな瞳が僕に愛の詩を紡がせるんだ。 ミラ:(咳払い) ニコル:アロンツォさん…今も私を愛してる?私と別れようとするのは、奥様に悪いから?そこがはっきりしないわ。私は先程、妻でないと疲れが癒えないとおっしゃったのを見て、これはいよいよ私との関係を清算にいらっしゃったのだと思ったのだけど… アロンツォ:おお…ニコル。君への気持ちが変わるなんて事は、ありえない。 ミラ:ちょ…アロンツ…あなた!? ニコル:アロンツォさん…。・・・ならば、奥様、私とアロンツォさんをシェアいたしませんこと?月曜から木曜までは私。金曜から日曜までは奥様とお坊ちゃんにアロンツォさんをお返ししますわ。 ミラ:ニコルさんが一日多いのも気になりますが…。(小声で)どーするんですか、アロンツォさん!? ニコル:それは、私がより彼を愛していると自負しているから…ですわ。 アロンツォ:ニコル…そんなに僕のことを ニコル:奥様にこの様に申し上げるのは恐れ多いですが、今まで何をしていらっしゃったんです?彼を放っておいて。アロンツォさんは、とても仕事に打ち込んで頑張っていらっしゃたわ。夜遅くまでここへ帰らないこともありましたし、朝早くから部下の方に泣きつかれて、飛び出して仕事へ向かうこともありましたの。そんな日に、あなたは何をしていらっしゃったの? アロンツォ:そんな日もあったなぁ…。いつもニコルは抱きしめて僕を迎えてくれて、笑顔で僕を送り出してくれた。 ニコル:当然ですわ。私は、あなたを支えたいと、心から思っているんだもの。 アロンツォ:ああ…ニコル。君はなんて美しく控えめなんだ! ミラ:何が控えめですか。 アロンツォ:ん?!ニコルは君から僕を奪うでもなく、シェアしようと言っている。それに、いつも僕のことを考えて、感情的にならず優しく接してくれるんだよ? ニコル:まぁ…そんな。 ミラ:そんなだから、色んな女に目がくらむんですよ、このスカポンタン。 ニコル:奥様?そんなふうに仰るのは… ミラ:うるっさいなぁ。あなた、黙って聞いていれば何なんですか?自分がさも正しいことをしてきたような言いっぷりで、「奥様には申し訳ない」「奥様に恐れ多い」…そんなの口ばっかりじゃない! アロンツォ:ミラ?落ち着いて ミラ:自分がどれだけ愛されていたか、自分がどれだけ想っているかのアピールは激しいし、シャアの日にちも一日多い!挙句の果てに田舎で子育てを頑張ってる奥さんをつかまえて、「何してたんですか」?はぁ!?あなたこそ人の旦那を寝取って、「ここへ帰ってくるのが遅かった」だの正妻ぶって、一体何をしていたんですか!? ニコル:・・・。 アロンツォ:ミラ、そこまでニコルを責めないでやってくれ。もとはと言えば女性にだらしない僕が蒔いた種なんだか… ミラ:そのとおりですよ!!この浮気者がっ!あなた、今日ここへ何をしにきたんですか!この人と別れるために来たんでしょ!?それなのに、ほだされて、デレデレして、何してるんですか?しっかり話をつけて下さい。 アロンツォ:ああ…そうだね…。すまない、ニコル。そういうことなんだ。 ニコル:・・・分かりました。 アロンツォ:ありがとう、君との素晴らしい日々、君の優しさ、なめらかな肌、すべて忘れない。 ニコル:500シェリルでいいです。 ミラ:500シェリル? ニコル:ええ。アロンツォさんから頂いた愛に免じて、これでも安くしたつもりですわ。 ミラ:500シェリルは…いくらなんでも、愛人の慰謝料にしては高すぎやしませんか? ニコル:私が勤め人だった場合、一年でおよそ300シェリルいただけますでしょう?アロンツォさんとは一年半のお付き合い。500シェリルで手を打ちます。 ミラ:やっぱり少し多いのが気になる…。あと何で勤め人で換算? アロンツォ:勤めに出ていたとでも思わないと、心が壊れてしまうんだね…ニコル。 ミラ:はぁ? アロンツォ:わかるよ。君はとても繊細な女性なんだ。 ニコル:アロンツォさん、分って下さってありがとう。それで、お支払いいただけます?500シェリルは、あなたと引き離されることを思えば安いものだと思うのだけど。 アロンツォ:ああ、勿論お渡しするよ。こんなはした金が君の慰めになるのなら… ミラ:バカバカしい。 ニコル:ありがとう、アロンツォさんっ。わたしきっとあなたのことをいい思い出にしてみせるわ! アロンツォ:ニコル…!!(熱い抱擁を交わす) 0:  :ニコル邸を去ろうとするアロンツォとミラ 0: ニコル:また奥様と寄ってらしてね。美味しいお茶をご用意するわ。 アロンツォ:ああ、ありがとう(ニコルに手をふり、先に歩き出したミラを追いかける)…待って!待ってくれミラ!…君はそんな高いヒールでスタスタと…。いやぁ、それにしても迫真の演技だったよ。さすが「なんでも屋」は手慣れてる。最初は聡明で貞淑な妻を演じてもらってニコルに納得してもらおうとしていたが、キャラが被っていてとても太刀打ちできそうになかったからな、少し心配したが… ミラ:・・・。 アロンツォ:ともあれ、君のおかげで何とかニコルに納得してもらえた。言いたい放題言われて、彼女は何も言い返せなかったもんなぁ。いやぁ、お見事。 ミラ:結局・・・ アロンツォ:ん? ミラ:結局100も上乗せされて、600シェリルも払うなんて、あなたは本当にバカなんですね!一年半の給料換算なら本来450シェリルなんですよ。それを500だ、600だって…あの人本当にしたたか… アロンツォ:僕の彼女を悪く言うのはやめてくれたまえよ。彼女は僕を失って一人になってしまう。傷が癒えるには付き合ったのと同じ年月が必要だ。 ミラ:そうでしょうか? アロンツォ:そういうものだ。その間、彼女が不自由なく暮らすのに十分なものを差し出したかったのだよ。そのくらい僕らの愛の日々は素晴らしかったんだから。 ミラ:あなたの考えが、私にはよく分かりません。 アロンツォ:僕は、愛した女性たちには常に誠実でありたいのさ。そして、どの女性も等しく平等に愛している。 ミラ:う〜ん…。 アロンツォ:それにしてもミラ!君はスタイルがとてもいいな。「まぁ見られないことはないだろう」なんて言ったが、あれは失言だった。ニコルも言っていたが、とても美しいよ。 ミラ:えっ…? アロンツォ:スラリと長い脚に、シュガートップの靴がとても良く似合っているし、口紅はルシャネの新作だろう?控えめな口唇によく映えてる。 ミラ:あ…ありがとうございます。でも、恥ずかしいので、もう大丈夫… アロンツォ:何故だい?褒められておけば良い。それだけ君が素敵だということなのだから。 ミラ:こうやって色々な女性を落としてきたんでしょうね。 アロンツォ:ん?人聞きの悪い。僕の気持ちに多くの女性がふりむいてくれただけさ。 ミラ:はいはい 0: 0: :酒場の前 0: ミラ:今日は酒場の女主人、マチルダさんの説得ですね。 アロンツォ:ああ、これで最後。ここまで24人、よく付き合ってくれたねミラ。 ミラ:25人も愛人がいるなんて思ってませんでしたよ… アロンツォ:僕は皆平等に… ミラ:愛してるんですよね。分ってます。もう何度となく聞いてきましたから。 アロンツォ:ああ。ミラ、今日もとても美しいな。今日の説得もよろしく頼む。 ミラ:・・・分ってます。 アロンツォ:さぁ行こう。 0:  :酒場の扉を開ける 0: マチルダ:いらっしゃいま…!…アロンツォ。あなたは奥様ね?待ってたわ。 ミラ:待っていた? マチルダ:ええ、街中の噂になってる。アロンツォが田舎からキレイな奥さんを呼び寄せたって。 アロンツォ:そうか…。じゃあマチルダ、分っているかもしれないが… マチルダ:別れない。 アロンツォ:んーーー? マチルダ:別れるわけないわ。他の女たちが何で納得したのか分からないけど…私は絶対にあなたと別れない。だって アロンツォ:僕を愛しているんだね? マチルダ:体の相性がこんなにいい人は初めてだから。 アロンツォ:体も含めて愛してるってことか…嬉しいな。 マチルダ:絶対に離さないわ。ねぇ奥様?アロンツォはあなたを愛してる。この街にも呼び寄せてくれた。お金もある。それで十分じゃない? ミラ:十分というのはどういう意味でしょうか? マチルダ:私、この人の体さえあればいいの。 アロンツォ:マチルダ…!!何て奥ゆかしいんだ…! マチルダ:お金も別にいらないし、毎日会ってほしいなんて言わない。愛の言葉を囁いてほしいとも全く思わない。でも私は別れないし、アロンツォとの関係を続けたいの。 アロンツォ:熱烈だなぁ…!! ミラ:別に私の夫じゃなくてもいいじゃありませんか。 マチルダ:そうね、アロンツォの体であれば、アロンツォである必要はないかも…。 ミラ:そこに愛はないんですね…。 マチルダ:あら?体を愛しいと思うのも愛なんじゃない?奥様だって愛しているでしょう?彼はとても奉仕家だから。 ミラ:やめてください。汚らわしい。 アロンツォ:とても崇高な時間だったなぁ、マチルダ。君はまるで南米の踊り子のように情熱的でパワフルだった。 マチルダ:ありがとう、アロンツォ。私はね、あなたの腕の中で踊り続けたいの。いいでしょう? アロンツォ:ん?うーん、僕も君とのダンスはパッションの交流を感じられて大好きだけど… ミラ:ちょっ…アロンツ…あなた!?25人目になってもまだ懲りないんですか!? アロンツォ:え、あ、いや、ごめん。 マチルダ:奥様、私は別に妻のように振る舞いたいわけではないんです。ただこの人と身体を合わせたいだけ。どっかの誰かみたいにあなたより優位に立ちたいわけでもなけりゃ、お金目当てでもない。いいでしょう? アロンツォ:マチルダ、君のはっきりした性格は周りに安心感を与えるね。 ミラ:何言ってるんですか?安心なんてできませんよ。身体だけだからいいだろう?いいわけないでしょう?むしろお断りです。私はそんなの愛だと思わないし、そこに愛がないのなら尚更認められませんよ。その性欲まみれの垢だらけの手で私の夫の身体に触らないで下さい!帰ってこない夜があるたびにあなたといるんだと思うとゾッとします。あなたに触れたであろう手で私に触れられるのは絶対にごめんだわ。 アロンツォ:ミラ…。 マチルダ:垢まみれ…言ってくれるわね。じゃあ奥様は身体以外でアロンツォのどこが良くて妻をしてらっしゃるの?お金? アロンツォ:(こそこそと)ミラ…僕の言ったように復唱すれば良い。「運河ビジネスの商才と…」 ミラ:この人は、馬鹿な人です。 アロンツォ:え? ミラ:どの女性も、どの女性も根っから愛して素晴らしと思って、本気で愛し抜いてる馬鹿な人です。ポジティブすぎるくらいポジティブで、人の嫌味にも気が付かないし、情が深すぎる馬鹿な人。でも…その分、人間が大好きで、一人ひとりのいいところに気づけて、それを口に出して他人を勇気付けられる。そんな人なんです。この人は決して女性を身体だけで見たりしない。そんな、心根の優しい人を私は愛しているんです。だからマチルダさんには、この人の指一本だって譲れません。 アロンツォ:ミラ・・・。 マチルダ:ふふふ…とんでもなく愛してらっしゃるのね。・・・他にもっといい男、探さなくちゃ。アロンツォとは別れるわ。 アロンツォ:マチルダ…今までありがとう。 マチルダ:こちらこそ。…とても素敵な奥様ね、大事にして、アロンツォ。 アロンツォ:あ…ああ。じゃあ(店の外へ向かう) マチルダ:奥様、お待ちになって。 ミラ:なにか? マチルダ:・・・身体だけ愛していたのは嘘。…振られると分っていても、どうしても…身体だけでもしがみつきたかったのよ。 ミラ:・・・分かります。 マチルダ:そう…。 0: 0:  :店の外に出て、街の中を並んで歩く二人 0: 0: アロンツォ:ミラ、本当にありがとう。おかげで全ての彼女達と円満に別れることができたよ。 ミラ:そうですか・・・ アロンツォ:どうしたんだい?これでもう僕の妻のフリはしなくていいんだ。君も他の仕事に取り掛かれて嬉しいだろう? ミラ:ええ…まぁ アロンツォ:今まで買った服やアクセサリー、化粧品、シュガートップの靴4足に加えて、もちろん報酬も予定より多く支払わせてくれ。何て言ったって君は僕の命の恩人みたいなものなんだからね。 ミラ:本当に女心に鈍感な人ですねアロンツォさんは アロンツォ:え?僕ほど女性の心に敏感な男はいないと思うけれども… ミラ:本当に馬鹿な人。この2ヶ月で私は… メラーニア:その方が、あなたの再婚相手なの?アロンツォ アロンツォ:メラーニア…どうしてここに? メラーニア:あなたが街で若い女と再婚したって話が、田舎まで届いたのよ。 アロンツォ:メラーニア、それは誤解だ。僕は誰とも再婚なんてしていない。結婚はただ一度、君とだけだ。 ミラ:メラーニアさん、私とアロンツォさんは、ただの飲み仲間です。心配されるようなことは… メラーニア:嘘よ!!この街に来て、色々な人に聞いたわ。あなたには、29人の愛人がいて、若い娘と再婚するために手切れ金を渡しているって噂じゃないの。 アロンツォ:僕の愛人は25人だ。 メラーニア:それがどうしたって言うのよ! アロンツォ:僕は君をこちらに呼び寄せるために、ミラに頼んで… メラーニア:あなたの嘘はもうたくさんっ!お金と、甘い言葉や、息子を気遣う手紙は欠かさないくせに、ちっとも帰ってきやしない!結婚する前は…田舎にいた頃は、あんなにも私を抱きしめてくれたのに…チーロにも良き父だったのに… ミラ:メラーニアさん、アロンツォさんは嘘なんか… メラーニア:うるさいっ!!あなたは愛せる?こんな男を! アロンツォ:金も、手紙も送ってただろう? メラーニア:お金なんて!お金なんて意味が無いのよ!あなたの妻でありたかったんだから。もうおしまい、もうおしまいよ。あんたなんて、あんたなんて幸せになんてさせない!(ナイフでミラを刺そうと向かってくる) アロンツォ:ミラ!危ないっ…(アロンツォがかばって、刺される)…うっ!! ミラ:アロンツォさんっ… アロンツォ:大丈夫、少し脇をかすっただけだ…。大丈夫。 メラーニア:やっぱり…その女をかばったのね。もう私のことなんて… アロンツォ:メラー…ニア ミラ:違います、アロンツォさんは… メラーニア:何が違うのよ!あんた何なのよさっきから「私が一番彼を分ってる」みたいな顔して。妻は私よ!! ミラ:この2ヶ月、私はアロンツォさんの妻でした!私は彼を愛しています! アロンツォ:ミ…ラ… メラーニア:なっ…何を… ミラ:止血しないと。…アロンツォさんが私をかばったのは、メラーニアさん、あなたを守るため…。私を刺していたら、あなたは捕まって罪人として罰せられる。アロンツォさんは、それを避けたかったんですよ。 メラーニア:そんな… アロンツォ:妻を守るのは…夫の…役目だから… メラーニア:あなた…あなたごめんなさい…。私…田舎で、トーニオと…その、ね? ミラ:え? メラーニア:だって、もう半年近く帰ってこないんだもん。私寂しくなっちゃって…チーロもすごくなついてるしね。 ミラ:何で私を刺そうと? メラーニア:それは、なんか、自分から振るのはいいけど、振られるのは癪だなぁって思っちゃったのよ。でもちょっとびっくりさせるつもりで、殺そうとか思ってなかったのよ?なのにアロンツォが飛び出してきたから…私がびっくり。みたいな? ミラ:あなた… アロンツォ:はっはっは!メラーニア、君の素直なところが昔から僕は大好きだ。 メラーニア:ありがとう、アロンツォ。私もあなたのこと、大好きだった。刺したことは…ごめんなさい。その…お大事にしてね… アロンツォ:ああ・・大丈夫。(メラーニア去る) ミラ:本当に、お人好しでバカみたい。 アロンツォ:ああ…。僕は本当に一人になってしまった。 ミラ:・・・。 アロンツォ:なぁ、ミラ。 ミラ:いやです。 アロンツォ:まだ何も言ってないよ? ミラ:いやです。 アロンツォ:ミラ…!?そんな事言わないで。僕はこの2ヶ月で君の良いところを沢山知った。君を愛しく想うことも増えた。 ミラ:…もう仕事は終わり。妻でも何でもありません。 アロンツォ:ミラ、この2ヶ月に僕に起きた変化は、君だって同じだと僕は信じてる。 ミラ:どこまで前向きで、自己中心的なんですか!言ってるでしょう?仕事は… アロンツォ:そう。仕事は終わりだ。ミラ、僕の恋人になってくれ。 ミラ:・・・。 アロンツォ:もう愛人を作ったりしないから。 ミラ:・・・いいですよ。 アロンツォ:ミラ! ミラ:たとえあなたがまた愛人を25人作ったとしても私が乗り込んでいって別れさせます。 アロンツォ:誰も君が僕を思う気持ちには、敵わないよ! 0:  :抱き合って END