台本概要
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タイトル | 零の恐怖書庫 第12夜「夏の夜」 |
---|---|
作者名 | 月儚(つくも)レイ (@rose_moon44) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
「平凡な、暑い夏の夜。何かが窓に当たる音がする…そこで目にしたものは…」 1人読み朗読台本の怪談シリーズ「零の恐怖書庫」第1夜となります。 怪談語りのようなホラー作品となります。ホラーが苦手な方はご注意くださいませ。 朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。 ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。 164 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
私 | 不問 | 3 | 主人公、語り手。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:
0:
0:仕事から帰り、私はお酒を飲みながら自宅でゆっくりとくつろいでいた。
0:外からは色々な虫の声が聞こえてくる。
0:職場は街にあるのだが、我が家は少し山の中、田舎に建っている。
0:
0:田舎ならではの夏の夜…。
0:仕事場への便はあまりよくないが…
0:昼間、都会の喧噪や激務で疲れ果てている私には、この田舎の夜の雰囲気が癒しでもあった。
0:外も暗く、照らすのは街灯と、まばらに建っている住宅の明かりだけ。
0:聞こえてくるのも、遠くの車や、踏切の音、虫たちの合唱くらいなもので…
0:私は、心地よい夜の暑さと静かな夏のこの雰囲気が好きだった。
0:
0:そうして疲れを癒しながら一人、夏の夜を楽しんでいると…
0:
0:コツン…コツン…
0:
0:窓に何か当たる音がする。
0:
0:ジジジ…
0:
0:鳴き声といっしょにせわしない羽音がする。
私:「あぁ…蝉か…」
0:
0:
0:蝉がどうやら、窓にぶつかっているようだ。
0:これはわりとよくあることだった。
0:一体どういうわけか、我が家の窓にコツコツとよく蝉がぶつかるのだ。
0:
0:私はとくに気にせず、お酒を飲みながらテレビをつける。
0:ぼんやりと、とくに観たいでもない番組を眺める。
0:
0:コツン…コツン…
0:
0:ジジ…ジジ…
0:
0:蝉が何度も窓に当たっている。
0:我が家の光に誘われているのだろうか…。
0:一瞬意識は向くものの、やはりとくに気になるでもなく、再びテレビに目をやる。
0:
0:コツン…コツン…
0:
0:ジジ…ジジジ…
0:
0:コツン…コツン…
0:
0:ジジ…ジジ…
0:
0:ドンッ…!!
0:
0:コツン…
0:
0:ギ…ギ…
0:
0:ん…??
0:蝉の音に混ざって妙な音が聞こえた。
0:何か重い物があたったような…?
0:それに蝉の声とは少し違う声だった気もする。
0:このあたりには悪戯をするような子供もいないし、酔っ払いが迷い込むなんてことも考えにくい。
0:何だろう、と思っていると…
0:
0:ドンッ…!!
0:
0:コツン…
0:
0:ギ…ギギギ…
0:
0:やはり蝉に混ざって妙な音がする。
0:何事かとおもい、窓のほうへ行ってカーテンをあける。
私:「うわっ!!?なっ…なんで…えぇ…!?」
0:
0:
0:何か居たわけではないのだが…
0:窓には血痕がついていた。
0:一体どういうことかと窓を凝視していると…
私:「……!!!?」
0:
0:
0:視界に飛び込んできたものに、私は声すら出すことができなかった。
0:
0:それは……
0:
0:顔から血を流し、恨めしそうな顔でこちらを睨む生首だった…。
0:
0:ドンッ…と窓に顔をぶつけ…
0:
0:コツン…と、その大きく開けられた口から覗く歯が窓にあたり…
0:
0:そしてギギ…と絞り出すような声を、苦悶と憎しみの顔から漏らすと、ふっと消える。
0:あまりの出来事に腰を抜かし、へたり込む私。
0:
0:ドンッ…
0:
0:コツン…
0:
0:ギギギ…
0:
0:現れては消え、現れては消え…
0:
0:苦悶の生首はただただ、繰り返すばかりだった…。
0:
0:私は腰を抜かし震えることしかできなかったのだが…
0:何度かそれを繰り返すと首はふっと、その姿を消した。
0:
0:ようやく身体を動かす事のできるようになった私は、着の身着のまま家を飛び出し、友人の家へ転がり込んだ。
0:友人は私の説明を聞いてもなかなか信用してはくれなかったが…私のただならぬ様子のせいか、迎え入れてくれた。
0:
0:目を閉じると、あの恨めしそうに睨む生首の顔が浮かんでくる。
0:とてもではないが、もうあの家に帰る気にはなれず…私はそのまま、よその街へ引っ越す事にした。
0:
0:荷物をまとめに、友人に手伝ってもらって一度帰った時には…なぜか窓の血は消えていた。
0:その後、あの借家がどうなったのか…あの首はなんだったのか…
0:私には知るよしもない…。
0:だが、今でもあの恨めしそうな顔を忘れることはできない…。
0:
0:
0:(終)
0:
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0:仕事から帰り、私はお酒を飲みながら自宅でゆっくりとくつろいでいた。
0:外からは色々な虫の声が聞こえてくる。
0:職場は街にあるのだが、我が家は少し山の中、田舎に建っている。
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0:田舎ならではの夏の夜…。
0:仕事場への便はあまりよくないが…
0:昼間、都会の喧噪や激務で疲れ果てている私には、この田舎の夜の雰囲気が癒しでもあった。
0:外も暗く、照らすのは街灯と、まばらに建っている住宅の明かりだけ。
0:聞こえてくるのも、遠くの車や、踏切の音、虫たちの合唱くらいなもので…
0:私は、心地よい夜の暑さと静かな夏のこの雰囲気が好きだった。
0:
0:そうして疲れを癒しながら一人、夏の夜を楽しんでいると…
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0:コツン…コツン…
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0:窓に何か当たる音がする。
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0:ジジジ…
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0:鳴き声といっしょにせわしない羽音がする。
私:「あぁ…蝉か…」
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0:蝉がどうやら、窓にぶつかっているようだ。
0:これはわりとよくあることだった。
0:一体どういうわけか、我が家の窓にコツコツとよく蝉がぶつかるのだ。
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0:私はとくに気にせず、お酒を飲みながらテレビをつける。
0:ぼんやりと、とくに観たいでもない番組を眺める。
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0:コツン…コツン…
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0:ジジ…ジジ…
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0:蝉が何度も窓に当たっている。
0:我が家の光に誘われているのだろうか…。
0:一瞬意識は向くものの、やはりとくに気になるでもなく、再びテレビに目をやる。
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0:コツン…コツン…
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0:コツン…コツン…
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0:ジジ…ジジ…
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0:ドンッ…!!
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0:コツン…
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0:ギ…ギ…
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0:ん…??
0:蝉の音に混ざって妙な音が聞こえた。
0:何か重い物があたったような…?
0:それに蝉の声とは少し違う声だった気もする。
0:このあたりには悪戯をするような子供もいないし、酔っ払いが迷い込むなんてことも考えにくい。
0:何だろう、と思っていると…
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0:ドンッ…!!
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0:コツン…
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0:ギ…ギギギ…
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0:やはり蝉に混ざって妙な音がする。
0:何事かとおもい、窓のほうへ行ってカーテンをあける。
私:「うわっ!!?なっ…なんで…えぇ…!?」
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0:何か居たわけではないのだが…
0:窓には血痕がついていた。
0:一体どういうことかと窓を凝視していると…
私:「……!!!?」
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0:視界に飛び込んできたものに、私は声すら出すことができなかった。
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0:それは……
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0:顔から血を流し、恨めしそうな顔でこちらを睨む生首だった…。
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0:ドンッ…と窓に顔をぶつけ…
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0:コツン…と、その大きく開けられた口から覗く歯が窓にあたり…
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0:そしてギギ…と絞り出すような声を、苦悶と憎しみの顔から漏らすと、ふっと消える。
0:あまりの出来事に腰を抜かし、へたり込む私。
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0:ドンッ…
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0:コツン…
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0:ギギギ…
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0:現れては消え、現れては消え…
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0:苦悶の生首はただただ、繰り返すばかりだった…。
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0:私は腰を抜かし震えることしかできなかったのだが…
0:何度かそれを繰り返すと首はふっと、その姿を消した。
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0:ようやく身体を動かす事のできるようになった私は、着の身着のまま家を飛び出し、友人の家へ転がり込んだ。
0:友人は私の説明を聞いてもなかなか信用してはくれなかったが…私のただならぬ様子のせいか、迎え入れてくれた。
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0:目を閉じると、あの恨めしそうに睨む生首の顔が浮かんでくる。
0:とてもではないが、もうあの家に帰る気にはなれず…私はそのまま、よその街へ引っ越す事にした。
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0:荷物をまとめに、友人に手伝ってもらって一度帰った時には…なぜか窓の血は消えていた。
0:その後、あの借家がどうなったのか…あの首はなんだったのか…
0:私には知るよしもない…。
0:だが、今でもあの恨めしそうな顔を忘れることはできない…。
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0:(終)