台本概要

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タイトル 零の恐怖書庫 第12夜「夏の夜」
作者名 月儚(つくも)レイ  (@rose_moon44)
ジャンル ホラー
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 「平凡な、暑い夏の夜。何かが窓に当たる音がする…そこで目にしたものは…」

1人読み朗読台本の怪談シリーズ「零の恐怖書庫」第1夜となります。

怪談語りのようなホラー作品となります。ホラーが苦手な方はご注意くださいませ。

朗読の際のお時間のほうは10分前後ほどかと思います。

ご利用の報告は強制ではありませんが、ご連絡いただけますと非常に嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 3 主人公、語り手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:  0:仕事から帰り、私はお酒を飲みながら自宅でゆっくりとくつろいでいた。 0:外からは色々な虫の声が聞こえてくる。 0:職場は街にあるのだが、我が家は少し山の中、田舎に建っている。 0:   0:田舎ならではの夏の夜…。 0:仕事場への便はあまりよくないが… 0:昼間、都会の喧噪や激務で疲れ果てている私には、この田舎の夜の雰囲気が癒しでもあった。 0:外も暗く、照らすのは街灯と、まばらに建っている住宅の明かりだけ。 0:聞こえてくるのも、遠くの車や、踏切の音、虫たちの合唱くらいなもので… 0:私は、心地よい夜の暑さと静かな夏のこの雰囲気が好きだった。 0:  0:そうして疲れを癒しながら一人、夏の夜を楽しんでいると… 0:   0:コツン…コツン… 0:   0:窓に何か当たる音がする。 0:   0:ジジジ… 0:  0:鳴き声といっしょにせわしない羽音がする。 私:「あぁ…蝉か…」 0: 0: 0:蝉がどうやら、窓にぶつかっているようだ。 0:これはわりとよくあることだった。 0:一体どういうわけか、我が家の窓にコツコツとよく蝉がぶつかるのだ。 0:   0:私はとくに気にせず、お酒を飲みながらテレビをつける。 0:ぼんやりと、とくに観たいでもない番組を眺める。 0:   0:コツン…コツン… 0:  0:ジジ…ジジ… 0:  0:蝉が何度も窓に当たっている。 0:我が家の光に誘われているのだろうか…。 0:一瞬意識は向くものの、やはりとくに気になるでもなく、再びテレビに目をやる。 0:  0:コツン…コツン… 0:  0:ジジ…ジジジ… 0:  0:コツン…コツン… 0:  0:ジジ…ジジ… 0:  0:ドンッ…!! 0:  0:コツン… 0:  0:ギ…ギ… 0:  0:ん…?? 0:蝉の音に混ざって妙な音が聞こえた。 0:何か重い物があたったような…? 0:それに蝉の声とは少し違う声だった気もする。 0:このあたりには悪戯をするような子供もいないし、酔っ払いが迷い込むなんてことも考えにくい。 0:何だろう、と思っていると… 0:  0:ドンッ…!! 0:  0:コツン… 0:  0:ギ…ギギギ… 0:  0:やはり蝉に混ざって妙な音がする。 0:何事かとおもい、窓のほうへ行ってカーテンをあける。 私:「うわっ!!?なっ…なんで…えぇ…!?」 0: 0: 0:何か居たわけではないのだが… 0:窓には血痕がついていた。 0:一体どういうことかと窓を凝視していると… 私:「……!!!?」 0: 0: 0:視界に飛び込んできたものに、私は声すら出すことができなかった。 0:  0:それは…… 0:  0:顔から血を流し、恨めしそうな顔でこちらを睨む生首だった…。 0:  0:ドンッ…と窓に顔をぶつけ… 0:  0:コツン…と、その大きく開けられた口から覗く歯が窓にあたり… 0:  0:そしてギギ…と絞り出すような声を、苦悶と憎しみの顔から漏らすと、ふっと消える。 0:あまりの出来事に腰を抜かし、へたり込む私。 0:  0:ドンッ… 0:  0:コツン… 0:  0:ギギギ… 0:  0:現れては消え、現れては消え… 0:  0:苦悶の生首はただただ、繰り返すばかりだった…。 0:   0:私は腰を抜かし震えることしかできなかったのだが… 0:何度かそれを繰り返すと首はふっと、その姿を消した。 0:  0:ようやく身体を動かす事のできるようになった私は、着の身着のまま家を飛び出し、友人の家へ転がり込んだ。 0:友人は私の説明を聞いてもなかなか信用してはくれなかったが…私のただならぬ様子のせいか、迎え入れてくれた。 0:  0:目を閉じると、あの恨めしそうに睨む生首の顔が浮かんでくる。 0:とてもではないが、もうあの家に帰る気にはなれず…私はそのまま、よその街へ引っ越す事にした。 0:   0:荷物をまとめに、友人に手伝ってもらって一度帰った時には…なぜか窓の血は消えていた。 0:その後、あの借家がどうなったのか…あの首はなんだったのか… 0:私には知るよしもない…。 0:だが、今でもあの恨めしそうな顔を忘れることはできない…。 0:  0: 0:(終)

0: 0:  0:仕事から帰り、私はお酒を飲みながら自宅でゆっくりとくつろいでいた。 0:外からは色々な虫の声が聞こえてくる。 0:職場は街にあるのだが、我が家は少し山の中、田舎に建っている。 0:   0:田舎ならではの夏の夜…。 0:仕事場への便はあまりよくないが… 0:昼間、都会の喧噪や激務で疲れ果てている私には、この田舎の夜の雰囲気が癒しでもあった。 0:外も暗く、照らすのは街灯と、まばらに建っている住宅の明かりだけ。 0:聞こえてくるのも、遠くの車や、踏切の音、虫たちの合唱くらいなもので… 0:私は、心地よい夜の暑さと静かな夏のこの雰囲気が好きだった。 0:  0:そうして疲れを癒しながら一人、夏の夜を楽しんでいると… 0:   0:コツン…コツン… 0:   0:窓に何か当たる音がする。 0:   0:ジジジ… 0:  0:鳴き声といっしょにせわしない羽音がする。 私:「あぁ…蝉か…」 0: 0: 0:蝉がどうやら、窓にぶつかっているようだ。 0:これはわりとよくあることだった。 0:一体どういうわけか、我が家の窓にコツコツとよく蝉がぶつかるのだ。 0:   0:私はとくに気にせず、お酒を飲みながらテレビをつける。 0:ぼんやりと、とくに観たいでもない番組を眺める。 0:   0:コツン…コツン… 0:  0:ジジ…ジジ… 0:  0:蝉が何度も窓に当たっている。 0:我が家の光に誘われているのだろうか…。 0:一瞬意識は向くものの、やはりとくに気になるでもなく、再びテレビに目をやる。 0:  0:コツン…コツン… 0:  0:ジジ…ジジジ… 0:  0:コツン…コツン… 0:  0:ジジ…ジジ… 0:  0:ドンッ…!! 0:  0:コツン… 0:  0:ギ…ギ… 0:  0:ん…?? 0:蝉の音に混ざって妙な音が聞こえた。 0:何か重い物があたったような…? 0:それに蝉の声とは少し違う声だった気もする。 0:このあたりには悪戯をするような子供もいないし、酔っ払いが迷い込むなんてことも考えにくい。 0:何だろう、と思っていると… 0:  0:ドンッ…!! 0:  0:コツン… 0:  0:ギ…ギギギ… 0:  0:やはり蝉に混ざって妙な音がする。 0:何事かとおもい、窓のほうへ行ってカーテンをあける。 私:「うわっ!!?なっ…なんで…えぇ…!?」 0: 0: 0:何か居たわけではないのだが… 0:窓には血痕がついていた。 0:一体どういうことかと窓を凝視していると… 私:「……!!!?」 0: 0: 0:視界に飛び込んできたものに、私は声すら出すことができなかった。 0:  0:それは…… 0:  0:顔から血を流し、恨めしそうな顔でこちらを睨む生首だった…。 0:  0:ドンッ…と窓に顔をぶつけ… 0:  0:コツン…と、その大きく開けられた口から覗く歯が窓にあたり… 0:  0:そしてギギ…と絞り出すような声を、苦悶と憎しみの顔から漏らすと、ふっと消える。 0:あまりの出来事に腰を抜かし、へたり込む私。 0:  0:ドンッ… 0:  0:コツン… 0:  0:ギギギ… 0:  0:現れては消え、現れては消え… 0:  0:苦悶の生首はただただ、繰り返すばかりだった…。 0:   0:私は腰を抜かし震えることしかできなかったのだが… 0:何度かそれを繰り返すと首はふっと、その姿を消した。 0:  0:ようやく身体を動かす事のできるようになった私は、着の身着のまま家を飛び出し、友人の家へ転がり込んだ。 0:友人は私の説明を聞いてもなかなか信用してはくれなかったが…私のただならぬ様子のせいか、迎え入れてくれた。 0:  0:目を閉じると、あの恨めしそうに睨む生首の顔が浮かんでくる。 0:とてもではないが、もうあの家に帰る気にはなれず…私はそのまま、よその街へ引っ越す事にした。 0:   0:荷物をまとめに、友人に手伝ってもらって一度帰った時には…なぜか窓の血は消えていた。 0:その後、あの借家がどうなったのか…あの首はなんだったのか… 0:私には知るよしもない…。 0:だが、今でもあの恨めしそうな顔を忘れることはできない…。 0:  0: 0:(終)