台本概要
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タイトル | ゴリラから逃げたら、またゴリラがいました |
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作者名 | 大輝宇宙@ひろきうちゅう (@hiro55308671) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 4人用台本(男1、女3) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
専業主婦を夢見るOL千春は、新しい女上司(あだ名はゴリラ)に怒られてばかり。 そんな時付き合っている高スペック彼氏からプロポーズをされる。 緊張の中、彼のお母さんとの初顔合わせ・・しかしそこに現れたのは、まさかのゴリラ上司であった。 投げ銭システムのあるアプリやサイトでの利用可です。 最初からチケット代を取るような公演の際は、ご連絡ください。 今作は、共同作者がいます。 予告などでの作者名の紹介は、「大輝宇宙・濁花ネオン」でお願いします。 494 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
千春 | 女 | 92 | 三木千春(みき ちはる)専業主婦を夢見るOL。年齢は28、29を想定しています。うっかりミスが多いけど、真面目で心優しい。 |
古里 | 女 | 43 | 古里蘭(ふるさと らん)千春の女上司。役職は課長。年齢は50半ばを想定。厳しいがプライドを持って仕事に取り組んでいる。できる女!しかし部下からはゴリラと呼ばれている。 |
江里夏 | 女 | 36 | 浅井江里夏(あさい えりか)千春の同期で仲のいい友達。キャリア志向で仕事ができる。さばさばしていて結婚願望はなし。千春の良き理解者。 |
翔一郎 | 男 | 49 | 千春の彼氏。区の婚活パーティーで千春と知り合う。仕事ができて、ビジュアルもいい。千春のことを愛しているのは本当だが、言葉の端々に女性を見下しているようなニュアンスが含まれてしまう、無自覚モラハラ予備軍。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:三木千春の務める会社。デスクが50以上並ぶ広い部屋。奥の壁際の課長席には、古里蘭(ふるさとらん)が座っており、入口近くに千春と江里夏がデスクを並べて仕事をしている。
古里:三木さん・・三木千春さんっ!デスクへ来て頂戴っ!
千春:ひぃっ・・!
江里夏:今日はまた、いつにも増して機嫌が悪そうねぇ・・。
千春:(小声で早口に)行きたくない・・行きたくない・行きたくない・・行きたくない・・。
古里:三木さん!・・いないの?(立ち上がって千春のデスクを見る)いるじゃない!早く来なさい!
江里夏:諦めなさい。
千春:うぅ・・(席を立って古里の席の前へ進む)
千春:す、すみません・・。
古里:まだ何も言ってないでしょう?
千春:あ・・はい。
古里:呼ばれたら、返事をしなさい。手が塞がっていたとしても、立ち上がるなりできるでしょう?
千春:はい・・申し訳ありませんでした。
古里:(ため息)・・あなたに任せた請求書だけど、ここと、ここと、ここと、ここも。あと、こっから先全部、今月末の支払期日が、先々月になってる。
千春:あれ?・・わっ!も、申し訳ありませんっ!
古里:直して再度提出しなさい。
千春:はい・・。
古里:ケアレスミスよ。気をつけてちょうだいね。
千春:はい・・すみませんでした・・。
0:デスクに戻る千春
千春:またやっちゃった・・。
江里夏:どれ?あー・・こりゃやっちまったね。
千春:ほんとにご機嫌斜めだった・・
江里夏:指摘されたとこは、言い訳もできないしな。
千春:うん・・直さなきゃ。
江里夏:頑張れ。
千春:ありがと。でも、あんなに叱り飛ばさなくたってよくない?
江里夏:まぁ、それはそうかも。言ってることは間違ってないけど、言い方って大事だもんなぁ。
千春:そう!言い方!古里(ふるさと)課長って、ザ・御局様(おつぼねさま)って感じ。
江里夏:あはっ。私は、未来の自分をあの人に見るよ。あーなりそうだなぁって。
千春:ええっ!?江里夏はあんな感じにはならないでしょ?だって、古里蘭(ふるさとらん)だよ?漢字で書いたら、こりらん・・ゴリラだよ!?
江里夏:ゴリラねぇ・・。でもあの人仕事できるからなー・・憧れもするんだよなー・・。
千春:キャリア志向だなぁ。
江里夏:仕事が好きだからね。
千春:私は早く辞めたい〜。結婚して専業主婦したい〜。こんなとこ逃げ出した〜い・・。
江里夏:(共感はしないが、気持ちは分かる相槌)
千春:はっ!!
江里夏:何?
千春:今日デートだ!やばっ・・怒られたショックで忘れてた・・。
江里夏:頑張って、終業時間までに終わらせなきゃねぇ、入力。
千春:江里夏様・・(懇願の眼差し)
江里夏:江里夏さまは、本日タイ語のレッスンがあるのです。自分の仕事で手いっぱいでーす。
千春:ううう・・
江里夏:まぁ、レッスンは21時からだから手伝ってあげなくも・・
千春:(江里夏の言葉は聞いておらず、ブツブツ言っている)全部今月にすれば大丈夫だから、月ズレで請求のとこだけ気をつけて・・よしっ、これならなんとか・・!
江里夏:ふふっ・・頑張れ。
0:
0:
0:レストランで食事をする翔一郎と千春。グラスの水を1口飲み、翔一郎が口を開く。
翔一郎:それは、大変だったな。
千春:ごめんなさい、遅刻しちゃって。なんとか終わりそうって思ったんだけど・・。せっかく予約してくれてたのに・・・。
翔一郎:いや、店の人が「時間は気にしなくていい」って。ゆっくり食べよう。
千春:ありがとう・・(感激して)
翔一郎:それにしても、なかなかの女上司だね、その・・ゴリラ課長?
千春:うん。半年前の異動で上司になったんだけど、もう毎日誰かが怒鳴られてるよ。
翔一郎:千春は女だし、そんな難しい仕事はしてないんだろう?
千春:え?う、うん・・。
翔一郎:だったら、そんなに責任を追求しなくてもいいのにな。可哀想に・・。
千春:ありがとう、翔一郎さん。
翔一郎:俺の周りだと、怒鳴るのは父親くらいだな。昔から厳しく育てられた。俺は会社の上司から怒鳴られるってのは、経験ないなぁ。
千春:それは、翔一郎さんが優秀だからじゃない?
翔一郎:あはは、ありがとう。ま、千春ほどミスはしてないみたいだ。
千春:どうしてうっかりミスが多いんだろう・・。書類も出す前にちゃんと見直ししてるつもりなのに。
翔一郎:千春は、ひとつのことにしか集中できないからなぁ。気になることがあると、そこしか見えなくなるだろ?猪突猛進、1点集中。
千春:う・・たしかに。
翔一郎:まぁ、そこがいいところでもあるよ。ずっと、俺を見ててくれるってことだろ?
千春:それは・・もちろん(照れて笑う)
翔一郎:うん(照れて笑う)
翔一郎:(話を戻して)ま、ケアレスミスは、同僚の江里夏さん・・だっけ?提出前に江里夏さんとか他の人に頼んで見てもらって防ぐ。コーヒー飲んだり、トイレに行ったりして気分を変えてから見直す、とかで防げるんじゃないか?
千春:なるほど。やってみる!
翔一郎:素直でよろしい。
千春:ありがとう、何か頑張れそうな気がしてきたよ。
翔一郎:それは、良かった。無知な人間は、できる人間からのアドバイスを素直に受けた方がいい。
千春:う、うん・・。
翔一郎:ゴリラ上司も、女だけど課長ってことは、まぁプライドも高そうだな。めげるなよ、千春。お前は主戦力じゃないんだから、とにかく言われたことをこなしてれば問題ないさ。
千春:うん・・まずは言われたことだけでもちゃんと出来るように頑張るね。
翔一郎:・・・仕事にやる気が出たところ悪いけどさ・・
千春:ん?なぁに?
翔一郎:仕事、辞める気ない?
翔一郎:・・というか、永遠に1箇所にいる気、ない・・?
千春:どこに?
翔一郎:ど、こ、に?・・うーん・・あー・・。ふーっ・・。仕事辞めて、俺の嫁として一生を過ごしませんか?ってこと。
千春:え!?え!?
翔一郎:俺の稼ぎで、充分不自由ないと思う。千春は、怒鳴られながらするような仕事辞めて、ずっと俺の傍にいてくれたらいい。千春も、いずれは子供も、俺がちゃんと養うから
翔一郎:俺と、結婚してください。
千春:翔一郎さん・・はい・・!喜んで!!
0:
0:
0:千春のオフィス。天井を見上げながら、昨晩のプロポーズについて江里夏への報告を夢見ごごちでする千春。
江里夏:おめでとう。ついに憧れの専業主婦じゃん。
千春:うん・・しかもカッコよくて足長くて頭良くてお金持ちの翔一郎さんだよ・・夢みたい。
江里夏:たしかに。今どき、奥さんはうちに居ればいいなんて言ってくれる旦那は珍しい。
千春:だよね!だよね!ほんとに私のどこが良かったんだろう。
江里夏:知り合ったキッカケは、何だったっけ?
千春:あ、区が開催した婚活パーティだよ?
江里夏:そうだった・・!婚活パーティに翔一郎さんみたいな人がねぇ・・。
千春:結婚を前提にしたお付き合いが理想だったんだって。結婚するかも分からない相手とデートしたり、プレゼントをあげたりするのが勿体ないって。
江里夏:随分とハッキリした人だこと。
千春:私は27だったし、何がなんでも結婚したくて参加したんだけど、もう翔一郎さんを見た時から、他の人には目が行かなかったんだよね・・。
江里夏:ふぅん。
千春:私を選んでくれた時は、驚いたなぁ〜。
千春:それから付き合って、そして昨日、ついについに、ついに!交際1年と2ヶ月!わたくし三木千春はプロポーズされましたぁぁぁっ!
古里:それは、おめでとう。(千春の背後に立っている)
千春:ひっ!!
古里:浮かれるのは結構だけど、口よりも手と頭を動かして頂戴ね。
千春:申し訳ありませんでした・・。
古里:会社は女子トークをするための場所じゃないの。楽しい話がしたいなら、就業時間外にいくらでもどうぞ。
古里:そんなふうにメリハリがないから、三木さんはミスが多いんじゃないかしら?集中する時は集中する、それが社会人として当たり前だと心得なさい。
古里:だいたいあなたは、入社して何年経つの?もう新人じゃないんだから、いつまでもいい加減なことをしていないで、自立して業務に取り組みなさい。
千春:はい・・申し訳ありませんでした。
古里:謝れば許されるとは限らないのよ、貴方のミスでお得意様と会社に亀裂が入ることだってあるの。細かいことを言うようだけど、ひとつひとつの仕事を最後まで責任もってやりなさいね。
千春:はい・・。
古里:浅井さん!
江里夏:はいっ・・!
古里:あなたもあなたです。
江里夏:は、はい・・。
古里:これから管理職を目指すなら、自分のことだけでなく周りにも目を向けなさい。周りがどういう状況なのか、三木さんは今、お喋りをしていていいのか、あなたはそれに乗っていていいのか。
江里夏:はい・・申し訳ありませんでした。
古里:管理職になってからすればいいという話ではないの。管理職には、それができる人から順に選ばれていくのだから。
江里夏:はい。気をつけます。
古里:ええ。2人とも気をつけなさい。
0:自分のデスクに戻る古里。
江里夏:ふぅ・・。
千春:(小声で)ごめん、私のせいで。
江里夏:(抑えた声で)ううん。私も調子に乗って聞いてた。
千春:(小声で)そんなこと。
江里夏:(抑えた声で)大丈夫だから。来週末には彼のお母さんに会うんでしょ?
千春:(抑えた声で)うん、終わったらカフェで報告会させてね。
江里夏:(抑えた声で)うん、会社外でね!(にかっと笑う)
0:
0:
0:ホテルのフレンチレストラン。テーブルに椅子が3つ、翔一郎と千春が斜め向かいに座っている。翔一郎の向かいの席は空席。
翔一郎:母さん、仕事が長引いてたらしい。でもタクシーでもうホテルに着くってさ。
千春:う、うん!
翔一郎:大丈夫?そんな緊張しなくていいよ、俺の親だし。
千春:いや、翔一郎さんのお母さんだから緊張するんだよ?うちの親に会うの緊張しない?
翔一郎:する。
千春:そういうこと。
翔一郎:千春、今日はフレンチだけど、お前基本的なテーブルマナーとかって大丈夫?
千春:実は自信なくて・・。でもっネットで調べて勉強はしてきてるから!
翔一郎:できないなら調べるしかないもんな。偉い偉い。頑張れよ。
千春:うん・・。お母さんって、どんな人?
翔一郎:そうだな。俺が幼稚園の時に親が離婚して、母さんは出ていった。それでも運動会とか、卒業式とかには来てくれて、料理も上手くて家事も完璧。でも今も独身で仕事も頑張ってる。そんなスーパーウーマンだよ。
千春:わぁ・・。
翔一郎:俺の求める理想の妻のレベルが高いんじゃないかってビビった?
千春:うん・・正直。
翔一郎:ばーか。大丈夫だよ。お前は仕事はしなくていいんだから、家のことだけしてくれてれば。
千春:う・・うん・・。でも、それがなかなかハードル高いっていうか・・
翔一郎:え?料理や家事だ。難しいことじゃないだろ?
古里:お待たせしてごめんなさい。
翔一郎:母さん!
千春:(勢いよく席を立ち、しどろもどろ)はっ・・はじめまして!私、翔一郎さんのお付き合いして、させて結婚もらってる・・!
古里:三木さん・・!
千春:三木ちは・・え?
古里:三木千春さん。遅れてごめんなさい。挨拶はいらないから、落ち着いてお座りなさい。
千春:ゴリ・・古里(ふるさと)課長?なんでここに・・。
古里:私が、翔一郎の母親だからよ。
千春:えええ!!
古里:大きな声を出すのはおよしなさい。
千春:失礼しました。(椅子に座る)
翔一郎:あ、そうか!母さんの会社、千春と同じなのか。
古里:三木さんは、私の部下よ。
翔一郎:へぇ。そんな偶然もあるんだな!じゃあ千春のことよく知ってるってことか。
古里:ええ。
千春:ご存知だったんですか?私が翔一郎さんの・・
古里:今知ったわ。翔一郎の会わせたい人が三木さんで驚いているところよ。
千春:そうは思えないくらい、とても落ち着いていらっしゃいますね。
翔一郎:千春が落ち着きがないんだよ。
千春:うっ・・ごめんなさい。
翔一郎:まぁ、そんなところも女の子って感じで可愛いけど。
千春:翔一郎さん・・。(ときめくが違和感は感じる)
0:コース料理を楽しむ3人。
古里:じゃあ、結婚したら仕事を辞めるの?
千春:はい、そのつもりです。
古里:翔一郎は、三木さんを養うだけの財力があるの?
翔一郎:心配しないでよ。千春2人分より稼ぎは多いよ。俺は仕事できる方だし、残業しても家で千春が飯作って待っててくれたら頑張れる。
古里:三木さん、お料理得意なの?
千春:えっと・・
翔一郎:けっこう上手いんだよ。母さんほどじゃないし、最近はネットで旨いレシピとかたくさん見られるから、まぁ誰でも作れるけど。なかなか上手くやるよ。
古里:ふぅん。
千春:こったものは、できませんけど・・なんとか。
翔一郎:部屋も、汚いわけじゃないし、これなら突然部下を連れて帰っても大丈夫そうだなと思ってて。つまみも冷蔵庫に何かあれば作れるだろ?
千春:う、うん。頑張る。
翔一郎:そもそも仕事に向いてないんだよ千春が。毎日上司に怒鳴られるって・・
千春:(慌てて)翔一郎さん!
翔一郎:あ・・まぁ、それも千春がミスが多いからなんだろうし、女だから抜けても大丈夫でしょう?
翔一郎:そんな難しい仕事してるわけじゃなくて事務処理程度なんだから。だから完全に専業主婦になってもらおうって思ってるんだよね。そのほうが千春もいいんだよな?専業主婦志望だし。
千春:う、うん。・・・あっ!(グラスの飲み物を倒す)
翔一郎:ああ!何やってんの!こぼしちゃって・・ああ、自分のハンカチなんかいいから。母さん濡れてない?
翔一郎:(店員に)すみません、拭くものを・・。
千春:ごめんなさい・・。
翔一郎:ほらなー。千春はほんっとにドジだから・・危なくて放っておけないよ。
千春:ごめんね、ごめん。
古里:見る目がないわね。
千春:あ・・。
古里:そんな風に育てたつもりはないんだけど。
翔一郎:母さん・・。
千春:申し訳・・ありません・・。
翔一郎:でも、俺が教育していけば千春もいい妻に・・
古里:見る目がないのは翔一郎ではなく、三木さんよ。
千春:・・え?
翔一郎:え?
古里:今どきこんな自分の意見ばかりを押し付けてくるような男でいいの?
翔一郎:え?え?
古里:思ってることがあるならハッキリ言ったほうが良いわ。翔一郎は、三木さんを見下している自覚がないようだから。
古里:こんな男を夫にしたら、たとえ風邪をひいて熱があろうが、夫のために這って家のことしなくちゃいけなくなるのが目に見えてるわよ。
千春:課長・・。
古里:無自覚な貶め(おとしめ)は、モラルハラスメントといって、あなたの心を大きく傷つけてくるものよ。
翔一郎:ちょっと母さん何言って・・
古里:身近な人から傷つけられることは、本当につらいものなの。結婚していいものか、もう一度よく考えて。
翔一郎:やめてくれよ、俺は千春を大切に・・!
古里:まったくお父さんそっくり。
翔一郎:え?
古里:あの人は、私を家に閉じ込めることも、何もできない馬鹿な女として傍においておくことも、愛だと思っていたのよね・・。
翔一郎:あ・・。
古里:私は、それが原因でお父さんと別れることにしたのよ?
翔一郎:うん・・。
古里:同じことにならないようにしなさい。ちゃんと三木さんを見て、言葉をかけてあげてほしいわ。
千春:・・・。
翔一郎:ごめん、千春。俺・・そんなつもりじゃ。・・傷ついてたのか?
千春:傷つくっていうか・・違和感があるときは・・ごめん、違和感を感じることはあったよ。
翔一郎:そっか・・。気をつける。ごめんな。
古里:私は、結婚には反対しない。でも、お互いに改めて交際を仕切り直してごらんなさい。お互いに、お互いが合うのか、理想を押し付けていないか。それからでも遅くないわ。
千春:課長・・ありがとうございます。
古里:三木さんは、人当たりがいいし、いつも明るい。だからこそ、取引先との窓口をやってもらっているのよ。言っておくけど、簡単な仕事じゃないわ。
千春:そんな風に・・思ってくださってたんですか。
古里:期待もしてる。
千春:頑張ります。
古里:翔一郎は、自分一人で仕事が出来ているのか、こういう小さな力を沢山借りて仕事をしているのか、もっと考えなさいね。
古里:さ、食事を続けましょう。デザートが楽しみだわ。
0:
0:
0:都内の安価だがおいしいカフェレストラン。千春と江里夏が向かい合って座っている。
江里夏:はじめて古里(ふるさと)課長がお姑さんになるかもしれないって聞いた時は驚いたけど・・。
千春:本当に、何が起こったか分からなかったもん。
江里夏:あれから、半年くらい経つ?
千春:えーっと、あ、そうだね。そのくらい。
江里夏:どうなの?翔一郎さんとは。
千春:今日は、その報告でご飯誘ったんだけど・・、一昨日、正式に婚約しました!
江里夏:わっ!おめでとう!
千春:翔一郎さんも変わってくれ始めたの。たまーに無意識に男のほうが優秀だって話はされちゃうけど、はっと気づいてやめてくれるようになったの。
江里夏:よかったよかった。・・てことは、正式に課長がお姑さんかぁ。
千春:うん。かっこよくて素敵だってことは、こないだのことや仕事からも分かるけど・・
江里夏:あんなに逃げたがってたのにねぇ(笑う)
千春:うん(笑う)
江里夏:逃げられない運命なのね。
千春:うん・・(苦笑)ゴリラから逃げるのは無理みたい。
0:ティーカップに触れる千春の薬指のダイヤがキラッと輝く。end
0:三木千春の務める会社。デスクが50以上並ぶ広い部屋。奥の壁際の課長席には、古里蘭(ふるさとらん)が座っており、入口近くに千春と江里夏がデスクを並べて仕事をしている。
古里:三木さん・・三木千春さんっ!デスクへ来て頂戴っ!
千春:ひぃっ・・!
江里夏:今日はまた、いつにも増して機嫌が悪そうねぇ・・。
千春:(小声で早口に)行きたくない・・行きたくない・行きたくない・・行きたくない・・。
古里:三木さん!・・いないの?(立ち上がって千春のデスクを見る)いるじゃない!早く来なさい!
江里夏:諦めなさい。
千春:うぅ・・(席を立って古里の席の前へ進む)
千春:す、すみません・・。
古里:まだ何も言ってないでしょう?
千春:あ・・はい。
古里:呼ばれたら、返事をしなさい。手が塞がっていたとしても、立ち上がるなりできるでしょう?
千春:はい・・申し訳ありませんでした。
古里:(ため息)・・あなたに任せた請求書だけど、ここと、ここと、ここと、ここも。あと、こっから先全部、今月末の支払期日が、先々月になってる。
千春:あれ?・・わっ!も、申し訳ありませんっ!
古里:直して再度提出しなさい。
千春:はい・・。
古里:ケアレスミスよ。気をつけてちょうだいね。
千春:はい・・すみませんでした・・。
0:デスクに戻る千春
千春:またやっちゃった・・。
江里夏:どれ?あー・・こりゃやっちまったね。
千春:ほんとにご機嫌斜めだった・・
江里夏:指摘されたとこは、言い訳もできないしな。
千春:うん・・直さなきゃ。
江里夏:頑張れ。
千春:ありがと。でも、あんなに叱り飛ばさなくたってよくない?
江里夏:まぁ、それはそうかも。言ってることは間違ってないけど、言い方って大事だもんなぁ。
千春:そう!言い方!古里(ふるさと)課長って、ザ・御局様(おつぼねさま)って感じ。
江里夏:あはっ。私は、未来の自分をあの人に見るよ。あーなりそうだなぁって。
千春:ええっ!?江里夏はあんな感じにはならないでしょ?だって、古里蘭(ふるさとらん)だよ?漢字で書いたら、こりらん・・ゴリラだよ!?
江里夏:ゴリラねぇ・・。でもあの人仕事できるからなー・・憧れもするんだよなー・・。
千春:キャリア志向だなぁ。
江里夏:仕事が好きだからね。
千春:私は早く辞めたい〜。結婚して専業主婦したい〜。こんなとこ逃げ出した〜い・・。
江里夏:(共感はしないが、気持ちは分かる相槌)
千春:はっ!!
江里夏:何?
千春:今日デートだ!やばっ・・怒られたショックで忘れてた・・。
江里夏:頑張って、終業時間までに終わらせなきゃねぇ、入力。
千春:江里夏様・・(懇願の眼差し)
江里夏:江里夏さまは、本日タイ語のレッスンがあるのです。自分の仕事で手いっぱいでーす。
千春:ううう・・
江里夏:まぁ、レッスンは21時からだから手伝ってあげなくも・・
千春:(江里夏の言葉は聞いておらず、ブツブツ言っている)全部今月にすれば大丈夫だから、月ズレで請求のとこだけ気をつけて・・よしっ、これならなんとか・・!
江里夏:ふふっ・・頑張れ。
0:
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0:レストランで食事をする翔一郎と千春。グラスの水を1口飲み、翔一郎が口を開く。
翔一郎:それは、大変だったな。
千春:ごめんなさい、遅刻しちゃって。なんとか終わりそうって思ったんだけど・・。せっかく予約してくれてたのに・・・。
翔一郎:いや、店の人が「時間は気にしなくていい」って。ゆっくり食べよう。
千春:ありがとう・・(感激して)
翔一郎:それにしても、なかなかの女上司だね、その・・ゴリラ課長?
千春:うん。半年前の異動で上司になったんだけど、もう毎日誰かが怒鳴られてるよ。
翔一郎:千春は女だし、そんな難しい仕事はしてないんだろう?
千春:え?う、うん・・。
翔一郎:だったら、そんなに責任を追求しなくてもいいのにな。可哀想に・・。
千春:ありがとう、翔一郎さん。
翔一郎:俺の周りだと、怒鳴るのは父親くらいだな。昔から厳しく育てられた。俺は会社の上司から怒鳴られるってのは、経験ないなぁ。
千春:それは、翔一郎さんが優秀だからじゃない?
翔一郎:あはは、ありがとう。ま、千春ほどミスはしてないみたいだ。
千春:どうしてうっかりミスが多いんだろう・・。書類も出す前にちゃんと見直ししてるつもりなのに。
翔一郎:千春は、ひとつのことにしか集中できないからなぁ。気になることがあると、そこしか見えなくなるだろ?猪突猛進、1点集中。
千春:う・・たしかに。
翔一郎:まぁ、そこがいいところでもあるよ。ずっと、俺を見ててくれるってことだろ?
千春:それは・・もちろん(照れて笑う)
翔一郎:うん(照れて笑う)
翔一郎:(話を戻して)ま、ケアレスミスは、同僚の江里夏さん・・だっけ?提出前に江里夏さんとか他の人に頼んで見てもらって防ぐ。コーヒー飲んだり、トイレに行ったりして気分を変えてから見直す、とかで防げるんじゃないか?
千春:なるほど。やってみる!
翔一郎:素直でよろしい。
千春:ありがとう、何か頑張れそうな気がしてきたよ。
翔一郎:それは、良かった。無知な人間は、できる人間からのアドバイスを素直に受けた方がいい。
千春:う、うん・・。
翔一郎:ゴリラ上司も、女だけど課長ってことは、まぁプライドも高そうだな。めげるなよ、千春。お前は主戦力じゃないんだから、とにかく言われたことをこなしてれば問題ないさ。
千春:うん・・まずは言われたことだけでもちゃんと出来るように頑張るね。
翔一郎:・・・仕事にやる気が出たところ悪いけどさ・・
千春:ん?なぁに?
翔一郎:仕事、辞める気ない?
翔一郎:・・というか、永遠に1箇所にいる気、ない・・?
千春:どこに?
翔一郎:ど、こ、に?・・うーん・・あー・・。ふーっ・・。仕事辞めて、俺の嫁として一生を過ごしませんか?ってこと。
千春:え!?え!?
翔一郎:俺の稼ぎで、充分不自由ないと思う。千春は、怒鳴られながらするような仕事辞めて、ずっと俺の傍にいてくれたらいい。千春も、いずれは子供も、俺がちゃんと養うから
翔一郎:俺と、結婚してください。
千春:翔一郎さん・・はい・・!喜んで!!
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0:千春のオフィス。天井を見上げながら、昨晩のプロポーズについて江里夏への報告を夢見ごごちでする千春。
江里夏:おめでとう。ついに憧れの専業主婦じゃん。
千春:うん・・しかもカッコよくて足長くて頭良くてお金持ちの翔一郎さんだよ・・夢みたい。
江里夏:たしかに。今どき、奥さんはうちに居ればいいなんて言ってくれる旦那は珍しい。
千春:だよね!だよね!ほんとに私のどこが良かったんだろう。
江里夏:知り合ったキッカケは、何だったっけ?
千春:あ、区が開催した婚活パーティだよ?
江里夏:そうだった・・!婚活パーティに翔一郎さんみたいな人がねぇ・・。
千春:結婚を前提にしたお付き合いが理想だったんだって。結婚するかも分からない相手とデートしたり、プレゼントをあげたりするのが勿体ないって。
江里夏:随分とハッキリした人だこと。
千春:私は27だったし、何がなんでも結婚したくて参加したんだけど、もう翔一郎さんを見た時から、他の人には目が行かなかったんだよね・・。
江里夏:ふぅん。
千春:私を選んでくれた時は、驚いたなぁ〜。
千春:それから付き合って、そして昨日、ついについに、ついに!交際1年と2ヶ月!わたくし三木千春はプロポーズされましたぁぁぁっ!
古里:それは、おめでとう。(千春の背後に立っている)
千春:ひっ!!
古里:浮かれるのは結構だけど、口よりも手と頭を動かして頂戴ね。
千春:申し訳ありませんでした・・。
古里:会社は女子トークをするための場所じゃないの。楽しい話がしたいなら、就業時間外にいくらでもどうぞ。
古里:そんなふうにメリハリがないから、三木さんはミスが多いんじゃないかしら?集中する時は集中する、それが社会人として当たり前だと心得なさい。
古里:だいたいあなたは、入社して何年経つの?もう新人じゃないんだから、いつまでもいい加減なことをしていないで、自立して業務に取り組みなさい。
千春:はい・・申し訳ありませんでした。
古里:謝れば許されるとは限らないのよ、貴方のミスでお得意様と会社に亀裂が入ることだってあるの。細かいことを言うようだけど、ひとつひとつの仕事を最後まで責任もってやりなさいね。
千春:はい・・。
古里:浅井さん!
江里夏:はいっ・・!
古里:あなたもあなたです。
江里夏:は、はい・・。
古里:これから管理職を目指すなら、自分のことだけでなく周りにも目を向けなさい。周りがどういう状況なのか、三木さんは今、お喋りをしていていいのか、あなたはそれに乗っていていいのか。
江里夏:はい・・申し訳ありませんでした。
古里:管理職になってからすればいいという話ではないの。管理職には、それができる人から順に選ばれていくのだから。
江里夏:はい。気をつけます。
古里:ええ。2人とも気をつけなさい。
0:自分のデスクに戻る古里。
江里夏:ふぅ・・。
千春:(小声で)ごめん、私のせいで。
江里夏:(抑えた声で)ううん。私も調子に乗って聞いてた。
千春:(小声で)そんなこと。
江里夏:(抑えた声で)大丈夫だから。来週末には彼のお母さんに会うんでしょ?
千春:(抑えた声で)うん、終わったらカフェで報告会させてね。
江里夏:(抑えた声で)うん、会社外でね!(にかっと笑う)
0:
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0:ホテルのフレンチレストラン。テーブルに椅子が3つ、翔一郎と千春が斜め向かいに座っている。翔一郎の向かいの席は空席。
翔一郎:母さん、仕事が長引いてたらしい。でもタクシーでもうホテルに着くってさ。
千春:う、うん!
翔一郎:大丈夫?そんな緊張しなくていいよ、俺の親だし。
千春:いや、翔一郎さんのお母さんだから緊張するんだよ?うちの親に会うの緊張しない?
翔一郎:する。
千春:そういうこと。
翔一郎:千春、今日はフレンチだけど、お前基本的なテーブルマナーとかって大丈夫?
千春:実は自信なくて・・。でもっネットで調べて勉強はしてきてるから!
翔一郎:できないなら調べるしかないもんな。偉い偉い。頑張れよ。
千春:うん・・。お母さんって、どんな人?
翔一郎:そうだな。俺が幼稚園の時に親が離婚して、母さんは出ていった。それでも運動会とか、卒業式とかには来てくれて、料理も上手くて家事も完璧。でも今も独身で仕事も頑張ってる。そんなスーパーウーマンだよ。
千春:わぁ・・。
翔一郎:俺の求める理想の妻のレベルが高いんじゃないかってビビった?
千春:うん・・正直。
翔一郎:ばーか。大丈夫だよ。お前は仕事はしなくていいんだから、家のことだけしてくれてれば。
千春:う・・うん・・。でも、それがなかなかハードル高いっていうか・・
翔一郎:え?料理や家事だ。難しいことじゃないだろ?
古里:お待たせしてごめんなさい。
翔一郎:母さん!
千春:(勢いよく席を立ち、しどろもどろ)はっ・・はじめまして!私、翔一郎さんのお付き合いして、させて結婚もらってる・・!
古里:三木さん・・!
千春:三木ちは・・え?
古里:三木千春さん。遅れてごめんなさい。挨拶はいらないから、落ち着いてお座りなさい。
千春:ゴリ・・古里(ふるさと)課長?なんでここに・・。
古里:私が、翔一郎の母親だからよ。
千春:えええ!!
古里:大きな声を出すのはおよしなさい。
千春:失礼しました。(椅子に座る)
翔一郎:あ、そうか!母さんの会社、千春と同じなのか。
古里:三木さんは、私の部下よ。
翔一郎:へぇ。そんな偶然もあるんだな!じゃあ千春のことよく知ってるってことか。
古里:ええ。
千春:ご存知だったんですか?私が翔一郎さんの・・
古里:今知ったわ。翔一郎の会わせたい人が三木さんで驚いているところよ。
千春:そうは思えないくらい、とても落ち着いていらっしゃいますね。
翔一郎:千春が落ち着きがないんだよ。
千春:うっ・・ごめんなさい。
翔一郎:まぁ、そんなところも女の子って感じで可愛いけど。
千春:翔一郎さん・・。(ときめくが違和感は感じる)
0:コース料理を楽しむ3人。
古里:じゃあ、結婚したら仕事を辞めるの?
千春:はい、そのつもりです。
古里:翔一郎は、三木さんを養うだけの財力があるの?
翔一郎:心配しないでよ。千春2人分より稼ぎは多いよ。俺は仕事できる方だし、残業しても家で千春が飯作って待っててくれたら頑張れる。
古里:三木さん、お料理得意なの?
千春:えっと・・
翔一郎:けっこう上手いんだよ。母さんほどじゃないし、最近はネットで旨いレシピとかたくさん見られるから、まぁ誰でも作れるけど。なかなか上手くやるよ。
古里:ふぅん。
千春:こったものは、できませんけど・・なんとか。
翔一郎:部屋も、汚いわけじゃないし、これなら突然部下を連れて帰っても大丈夫そうだなと思ってて。つまみも冷蔵庫に何かあれば作れるだろ?
千春:う、うん。頑張る。
翔一郎:そもそも仕事に向いてないんだよ千春が。毎日上司に怒鳴られるって・・
千春:(慌てて)翔一郎さん!
翔一郎:あ・・まぁ、それも千春がミスが多いからなんだろうし、女だから抜けても大丈夫でしょう?
翔一郎:そんな難しい仕事してるわけじゃなくて事務処理程度なんだから。だから完全に専業主婦になってもらおうって思ってるんだよね。そのほうが千春もいいんだよな?専業主婦志望だし。
千春:う、うん。・・・あっ!(グラスの飲み物を倒す)
翔一郎:ああ!何やってんの!こぼしちゃって・・ああ、自分のハンカチなんかいいから。母さん濡れてない?
翔一郎:(店員に)すみません、拭くものを・・。
千春:ごめんなさい・・。
翔一郎:ほらなー。千春はほんっとにドジだから・・危なくて放っておけないよ。
千春:ごめんね、ごめん。
古里:見る目がないわね。
千春:あ・・。
古里:そんな風に育てたつもりはないんだけど。
翔一郎:母さん・・。
千春:申し訳・・ありません・・。
翔一郎:でも、俺が教育していけば千春もいい妻に・・
古里:見る目がないのは翔一郎ではなく、三木さんよ。
千春:・・え?
翔一郎:え?
古里:今どきこんな自分の意見ばかりを押し付けてくるような男でいいの?
翔一郎:え?え?
古里:思ってることがあるならハッキリ言ったほうが良いわ。翔一郎は、三木さんを見下している自覚がないようだから。
古里:こんな男を夫にしたら、たとえ風邪をひいて熱があろうが、夫のために這って家のことしなくちゃいけなくなるのが目に見えてるわよ。
千春:課長・・。
古里:無自覚な貶め(おとしめ)は、モラルハラスメントといって、あなたの心を大きく傷つけてくるものよ。
翔一郎:ちょっと母さん何言って・・
古里:身近な人から傷つけられることは、本当につらいものなの。結婚していいものか、もう一度よく考えて。
翔一郎:やめてくれよ、俺は千春を大切に・・!
古里:まったくお父さんそっくり。
翔一郎:え?
古里:あの人は、私を家に閉じ込めることも、何もできない馬鹿な女として傍においておくことも、愛だと思っていたのよね・・。
翔一郎:あ・・。
古里:私は、それが原因でお父さんと別れることにしたのよ?
翔一郎:うん・・。
古里:同じことにならないようにしなさい。ちゃんと三木さんを見て、言葉をかけてあげてほしいわ。
千春:・・・。
翔一郎:ごめん、千春。俺・・そんなつもりじゃ。・・傷ついてたのか?
千春:傷つくっていうか・・違和感があるときは・・ごめん、違和感を感じることはあったよ。
翔一郎:そっか・・。気をつける。ごめんな。
古里:私は、結婚には反対しない。でも、お互いに改めて交際を仕切り直してごらんなさい。お互いに、お互いが合うのか、理想を押し付けていないか。それからでも遅くないわ。
千春:課長・・ありがとうございます。
古里:三木さんは、人当たりがいいし、いつも明るい。だからこそ、取引先との窓口をやってもらっているのよ。言っておくけど、簡単な仕事じゃないわ。
千春:そんな風に・・思ってくださってたんですか。
古里:期待もしてる。
千春:頑張ります。
古里:翔一郎は、自分一人で仕事が出来ているのか、こういう小さな力を沢山借りて仕事をしているのか、もっと考えなさいね。
古里:さ、食事を続けましょう。デザートが楽しみだわ。
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0:都内の安価だがおいしいカフェレストラン。千春と江里夏が向かい合って座っている。
江里夏:はじめて古里(ふるさと)課長がお姑さんになるかもしれないって聞いた時は驚いたけど・・。
千春:本当に、何が起こったか分からなかったもん。
江里夏:あれから、半年くらい経つ?
千春:えーっと、あ、そうだね。そのくらい。
江里夏:どうなの?翔一郎さんとは。
千春:今日は、その報告でご飯誘ったんだけど・・、一昨日、正式に婚約しました!
江里夏:わっ!おめでとう!
千春:翔一郎さんも変わってくれ始めたの。たまーに無意識に男のほうが優秀だって話はされちゃうけど、はっと気づいてやめてくれるようになったの。
江里夏:よかったよかった。・・てことは、正式に課長がお姑さんかぁ。
千春:うん。かっこよくて素敵だってことは、こないだのことや仕事からも分かるけど・・
江里夏:あんなに逃げたがってたのにねぇ(笑う)
千春:うん(笑う)
江里夏:逃げられない運命なのね。
千春:うん・・(苦笑)ゴリラから逃げるのは無理みたい。
0:ティーカップに触れる千春の薬指のダイヤがキラッと輝く。end