台本概要

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タイトル 【落語】プリン怖い
作者名 ヒデじい
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 茶番的な落語。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り 不問 13 落語家
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
語り:いやー、今日は暑い日でございますね。 語り:こんな日は甘いものが食べたくなるものです。 語り:さて、今日のお話ですが……これは、ある普通の男、熊五郎(くまごろう)の話でございます。 0:  語り:この熊五郎、特に大きな問題はありません。 語り:ただ、プリンが大の苦手なんですよ。 語り:『プリン怖い』とでも言いましょうか。 語り:なぜって? それが分からないんですよ。 語り:だって、プリンってぷるぷるしてて、甘くて、美味しいじゃないですか。 語り:でも、この熊五郎、プリンを見ると顔色が変わります。 語り:まるで幽霊でも見たかのように。 語り:そんな熊五郎は、近所のスーパーでお菓子売り場を回避したり、プリンのCMがテレビで流れるとチャンネルを変えたり、町のプリン専門店を大きく避けて通ったりと、日常生活でプリンを避けて生活していました。 0:  語り:さて、そんなある日のこと。 語り:近所のご隠居が熊五郎を家に招き、冷蔵庫からおやつのプリンを取り出しました。 語り:プリンが大の苦手な熊五郎はそれを見て青ざめ、慌てて家を出ていこうとしたのです。 語り:ご隠居は困惑しました。 ご隠居:「おい、熊五郎、大丈夫かい?」 熊五郎:「……へえ。実はオイラ、昔からプリンが大の苦手でございまして……」 ご隠居:「なんだってえ? プリンが苦手!? そりゃいけねえ、あんた人生の半分は損してるよ」 熊五郎:「は、半分もですかい?」 ご隠居:「そうだ。例えばプリンには栄養がたくさんある。ワシはプリンを毎日食べているお陰で病気1つしたことがない」 熊五郎:「そりゃすげえや……。オイラなんて年中風邪ばっかひいてるってのに……」 ご隠居:「おまけにプリンを食べると女性にモテる! ……と風の噂で聞いたことがある」 熊五郎:「マジですかい……!? じゃあ、オイラが未だに独身なのも」 ご隠居:「そうだ……。プリンが食べられないからに違いない」 熊五郎:「そいつはやべえ……早く何とかしないと……」 語り:熊五郎はプリン恐怖症を真剣に受け止め、プリンを克服できるようご隠居に助けを申し出ました。 熊五郎:「おやっさん! オイラを修行させてくれないか! オイラ、このプリン恐怖症を何とかしてえ!」 ご隠居:「ふむ……いいだろう。だが、わしの修業は厳しいぞ」 語り:その申し出を受けて、ご隠居は熊五郎にプリン療法を行うことにしたのです。 0:  語り:まずは、プリンの写真を見るところから始めます。 語り:それから、プリンのCMを見る、プリンの香りを嗅ぐ、プリンを触る、プリンを口に運ぶ……と、少しずつプリンに慣れていきました。 語り:しかし、大の苦手なものがそう簡単に克服できるはずがありません。 熊五郎:「だめだ。オイラどうしても苦手意識が消えねえよ……。食べるどころか、プリンを見ただけで青ざめちまうんだ」 ご隠居:「ふむ、まあ焦るでない。わしにとっておきの秘策がある」 0:  語り:そしてある日、ご隠居は新たなプリンのレシピを試し、それを熊五郎に食べさせることにしたのです。 語り:それは『プリンに見えないプリン』 語り:ご隠居が作ったプリンは、どうみてもカレーライスにしか見えない食べ物でした。 ご隠居:「おい熊五郎や。毎日苦手なプリンばっかり見るのも飽きたろう。どうだい? たまにはこれでも食わないかい」 熊五郎:「へえ、カレーライスか。うまそうだなあ」 語り:そういって一口食べた熊五郎。あまりの美味さに感動します。 熊五郎:「おお! これは美味い! おやっさん、これは絶品だよ。カレーライスがこんなに美味しいなんて」 ご隠居:「ほほう……うまいか」 熊五郎:「ああ、オイラこれならいくらでも食えるや。おかわり!」 ご隠居:「くっくっくっ。完食したか」 熊五郎:「?」 ご隠居:「……そいつはな、カレーじゃない。実はプリンだよ」 熊五郎:「な、なんだって! これがプリン? どうみてもカレーライスにしか見えねえが……」 ご隠居:「とある特殊な製法を使っているからな。しかし正真正銘、それはプリンなのだ」 語り:熊五郎は驚きましたが、すでにその美味しさには感動していました。 熊五郎:「へえ……。よくわからねえけど、そいつはすげえや」 ご隠居:「はっはっは。そうだろう、そうだろう。どうだ熊五郎、今度はこいつを食ってみないか」 熊五郎:「へえ、今度はうな重ですかい。豪勢ですねえ。うん、美味い……! ってご隠居、まさかこいつも」 ご隠居:「そうだ、それもプリンだ」 熊五郎:「マジですかい……。知らなかったなあ……。プリンがこんなに美味しかったなんて」 ご隠居:「そうだ、プリンはうまいのだ」 熊五郎:「ははっ、これがプリンなら、もうプリンが怖くねえなあ」 語り:そう言って、熊五郎は満面の笑顔でご隠居に感謝したのです。 0:  語り:その後、苦手なプリンを克服して自信がついた熊五郎。 語り:何事にも前向きな性格になり、そのお陰か体も強くなっていった。 語り:挙句の果てに、今日は銀座、明日は浅草……と、色んな箇所に出かけて行ってはご当地プリンを食べ歩くようになった。 語り:そして、とあるスイーツ好きの女性と出会って意気投合し……、ついに先月、彼女と結婚したのです。 語り:めでたしめでたし。 0:  語り:……ん?  語り:ご隠居が出したプリンの作り方を教えてほしい、ですって? 語り:やだなあ、そんなものありゃしませんよ。 語り:だって、あれは正真正銘……カレーとうな重でございますから。 語り:『病は気から』というでしょう? 思いの力というものは強力なのです。 0:  語り:え、『オチが甘い』ですって? 語り:それは仕方がございません。今日は暑い日でございますから。 語り:こんな日は甘ーいお話が食べたくなるものです。 語り:……おあとがよろしいようで。

語り:いやー、今日は暑い日でございますね。 語り:こんな日は甘いものが食べたくなるものです。 語り:さて、今日のお話ですが……これは、ある普通の男、熊五郎(くまごろう)の話でございます。 0:  語り:この熊五郎、特に大きな問題はありません。 語り:ただ、プリンが大の苦手なんですよ。 語り:『プリン怖い』とでも言いましょうか。 語り:なぜって? それが分からないんですよ。 語り:だって、プリンってぷるぷるしてて、甘くて、美味しいじゃないですか。 語り:でも、この熊五郎、プリンを見ると顔色が変わります。 語り:まるで幽霊でも見たかのように。 語り:そんな熊五郎は、近所のスーパーでお菓子売り場を回避したり、プリンのCMがテレビで流れるとチャンネルを変えたり、町のプリン専門店を大きく避けて通ったりと、日常生活でプリンを避けて生活していました。 0:  語り:さて、そんなある日のこと。 語り:近所のご隠居が熊五郎を家に招き、冷蔵庫からおやつのプリンを取り出しました。 語り:プリンが大の苦手な熊五郎はそれを見て青ざめ、慌てて家を出ていこうとしたのです。 語り:ご隠居は困惑しました。 ご隠居:「おい、熊五郎、大丈夫かい?」 熊五郎:「……へえ。実はオイラ、昔からプリンが大の苦手でございまして……」 ご隠居:「なんだってえ? プリンが苦手!? そりゃいけねえ、あんた人生の半分は損してるよ」 熊五郎:「は、半分もですかい?」 ご隠居:「そうだ。例えばプリンには栄養がたくさんある。ワシはプリンを毎日食べているお陰で病気1つしたことがない」 熊五郎:「そりゃすげえや……。オイラなんて年中風邪ばっかひいてるってのに……」 ご隠居:「おまけにプリンを食べると女性にモテる! ……と風の噂で聞いたことがある」 熊五郎:「マジですかい……!? じゃあ、オイラが未だに独身なのも」 ご隠居:「そうだ……。プリンが食べられないからに違いない」 熊五郎:「そいつはやべえ……早く何とかしないと……」 語り:熊五郎はプリン恐怖症を真剣に受け止め、プリンを克服できるようご隠居に助けを申し出ました。 熊五郎:「おやっさん! オイラを修行させてくれないか! オイラ、このプリン恐怖症を何とかしてえ!」 ご隠居:「ふむ……いいだろう。だが、わしの修業は厳しいぞ」 語り:その申し出を受けて、ご隠居は熊五郎にプリン療法を行うことにしたのです。 0:  語り:まずは、プリンの写真を見るところから始めます。 語り:それから、プリンのCMを見る、プリンの香りを嗅ぐ、プリンを触る、プリンを口に運ぶ……と、少しずつプリンに慣れていきました。 語り:しかし、大の苦手なものがそう簡単に克服できるはずがありません。 熊五郎:「だめだ。オイラどうしても苦手意識が消えねえよ……。食べるどころか、プリンを見ただけで青ざめちまうんだ」 ご隠居:「ふむ、まあ焦るでない。わしにとっておきの秘策がある」 0:  語り:そしてある日、ご隠居は新たなプリンのレシピを試し、それを熊五郎に食べさせることにしたのです。 語り:それは『プリンに見えないプリン』 語り:ご隠居が作ったプリンは、どうみてもカレーライスにしか見えない食べ物でした。 ご隠居:「おい熊五郎や。毎日苦手なプリンばっかり見るのも飽きたろう。どうだい? たまにはこれでも食わないかい」 熊五郎:「へえ、カレーライスか。うまそうだなあ」 語り:そういって一口食べた熊五郎。あまりの美味さに感動します。 熊五郎:「おお! これは美味い! おやっさん、これは絶品だよ。カレーライスがこんなに美味しいなんて」 ご隠居:「ほほう……うまいか」 熊五郎:「ああ、オイラこれならいくらでも食えるや。おかわり!」 ご隠居:「くっくっくっ。完食したか」 熊五郎:「?」 ご隠居:「……そいつはな、カレーじゃない。実はプリンだよ」 熊五郎:「な、なんだって! これがプリン? どうみてもカレーライスにしか見えねえが……」 ご隠居:「とある特殊な製法を使っているからな。しかし正真正銘、それはプリンなのだ」 語り:熊五郎は驚きましたが、すでにその美味しさには感動していました。 熊五郎:「へえ……。よくわからねえけど、そいつはすげえや」 ご隠居:「はっはっは。そうだろう、そうだろう。どうだ熊五郎、今度はこいつを食ってみないか」 熊五郎:「へえ、今度はうな重ですかい。豪勢ですねえ。うん、美味い……! ってご隠居、まさかこいつも」 ご隠居:「そうだ、それもプリンだ」 熊五郎:「マジですかい……。知らなかったなあ……。プリンがこんなに美味しかったなんて」 ご隠居:「そうだ、プリンはうまいのだ」 熊五郎:「ははっ、これがプリンなら、もうプリンが怖くねえなあ」 語り:そう言って、熊五郎は満面の笑顔でご隠居に感謝したのです。 0:  語り:その後、苦手なプリンを克服して自信がついた熊五郎。 語り:何事にも前向きな性格になり、そのお陰か体も強くなっていった。 語り:挙句の果てに、今日は銀座、明日は浅草……と、色んな箇所に出かけて行ってはご当地プリンを食べ歩くようになった。 語り:そして、とあるスイーツ好きの女性と出会って意気投合し……、ついに先月、彼女と結婚したのです。 語り:めでたしめでたし。 0:  語り:……ん?  語り:ご隠居が出したプリンの作り方を教えてほしい、ですって? 語り:やだなあ、そんなものありゃしませんよ。 語り:だって、あれは正真正銘……カレーとうな重でございますから。 語り:『病は気から』というでしょう? 思いの力というものは強力なのです。 0:  語り:え、『オチが甘い』ですって? 語り:それは仕方がございません。今日は暑い日でございますから。 語り:こんな日は甘ーいお話が食べたくなるものです。 語り:……おあとがよろしいようで。