台本概要
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タイトル | 掃転使 |
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作者名 | あまくケイ (@amak0331) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男2) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
幻想からはほど遠い、現実 自殺率の上昇した日本で 「ゴミ」を駆除する組織「掃転使(そうてんし)」が裏で暗躍していた そんな中、取締役の「明同」のもとに、ある課題が訪れる ※注意※ 射殺シーンが多いので、苦手な方はご遠慮ください 前読み推奨です 明同、仮矢ともに性転換可 一人称変更、語尾変更可 展開が大きく崩れないアドリブは可 ご自由にどうぞ 931 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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明同 | 男 | 171 | 明同(めいどう) 冷静なビジネスマン 「掃転使(そうてんし)」の取締役 地球のゴミを駆除し、綺麗な世界に変えるという理念のもと、動いている 掃転使を設立する前、当時働いていた会社で、社長に精神的に追い込まれ、自殺した同僚や恋人がいた 理念に反したゴミ共を見ると、ふつふつと怒りがこみあがる 男性で書きましたが、女性でも可 |
仮矢 | 男 | 172 | ひょうきんな現場作業員 「掃転使」の掃除屋 元は別の人間に雇われていた殺し屋だったが 明同と出会い、自分の殺しに意味ができたことを感謝している 10代のころ、酷い虐めなどにあっている 男性で書きましたが、女性でも可 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
仮矢:はい、どーん! ドアを蹴り破ってこんばんは~!
仮矢:そこの君! おめでとう!あなたは駆除対象に選ばれました~!
仮矢:ということで、選ばれた感想は? ……ふむ、ふむふむ!
仮矢:「俺は悪くない」か。
仮矢:みんな、言うんだわ、それ
仮矢:はい! さようなら! バーン!(銃声)
仮矢:……さて、人員手配と、死体処理をするかな
仮矢:あぁー失礼しました! それではみなさん、今日も一日、キレイに生きましょう~!
0:清掃会社「掃転使」の社内。取締役室
明同:はい、はい……ええ
明同:大企業の人間を抹殺しました。いや
明同:「駆除」でしたね。失敬。
明同:「掃転使」が始めた、「駆除計画」、あなたには感謝してますよ。「尼羅(あまら)」議員
明同:昨日も1人、仮矢が……「掃除屋」がやってくれました。
明同:引き合わせてくれたこと、もちろん、設備や人員に関しても、頭が上がりません
明同:では、また何かありましたら
0:(ドアをノックする音)
仮矢:コンコンコーン
明同:ノックは一回で十分だ
仮矢:失礼します! 明同取締役どの~!
明同:毎回その、ふざけた挨拶はセットか?
仮矢:何をいうとりますか。清掃会社の取締役さんが
明同:表向きはな。昨日はご苦労だった、仮矢
仮矢:みんなびっくりした顔で見てたよ。ま、そりゃそうか
明同:起きたことは他言無用
仮矢:喋っても、情報統制でなかったことになる
仮矢:……そもそも、あの会社にやらかしそうな人間はいなかったな
明同:測ったのか?
仮矢:測定値が低かった。マイナスだ
明同:全員、駆除対象に何らかの被害を受けていたと考えるのが筋だろう
仮矢:精神的な、やつをな
明同:反省という言葉は、この世から消えてしまったのだろうかな
仮矢:だから、俺達で「これ」をやってんじゃん
明同:そうだ
明同:環境汚染を止めるために
仮矢:世の中のゴミを駆除する
仮矢:明同の理念には、こう見えても賛同してんだぜ
明同:そうなれば、俺を今頃、ころしていると?
仮矢:俺は「掃転使」の殺し屋だ
仮矢:意味をくれたのを、マジで感謝してんだよ。明同取締役殿
明同:その言い方は、ふざけているのか、真面目なのか
仮矢:大真面目に、10票
明同:……俺も、お前のおかげで、理想へと近づいている。いつもすまないな
仮矢:仰せのとーりに。
仮矢:よし、じゃあ次のターゲット。行ってくるぜ
明同:確か、テーマパーク関係の社員だったな、次は
明同:重労働、ご苦労
仮矢:それ、お給料ストライキしてくださいって、言っているようなものよ?
仮矢:ま、尼羅(あまら)の奴が、変にそっぽを向かなきゃ、収入面は安泰だろうけどな
明同:今日のところはご機嫌だった。頭を下げるのは慣れているから、こっちは問題ない
明同:では、次も頼んだ
仮矢:あいよ~
仮矢:さて! 今日も元気にゴミ掃除っと~!
明同:……ん? 尼羅(あまら)から電話?
明同:はい……明同です……え?
明同:成果が欲しい? 毎月、一定のノルマは達成しているはずですが
明同:パフォーマンスがほしい、ですか
0:とある街の、大きな橋梁の下
仮矢:はいこんにちは~。ひっそり隅っこでご登場
仮矢:おおー。測定しなくても分かるゴミみたいな顔つき。果たして心を殺した人間はどれくらいいるんでしょうなぁ
仮矢:はい、さいなら~! バーン!(銃声)
仮矢:……そしたらさっそく処理班に連絡を、と。ん? 何か落ちたな? これは?
0:清掃会社「掃転使」の社内。取締役室
明同:くそ……遊びじゃないというのに……。いや、あの議員からすれば、俺の理想はどうでもいいことか。いつの時代も変わらないな
明同:こちらも利用できるところまで、させてもらうさ
仮矢:なーに深刻な表情してんだよ? 測定したら、マイナス反応が出ちゃうような顔つきだぜ
明同:終わったのか?
仮矢:いつも通りにな
明同:……お前が仕事に言っている間、尼羅(あまら)議員から電話があった
仮矢:もしや、ボーナス待遇?
明同:そんな顔に見えるか?
仮矢:全然!
明同:全く
仮矢:で、何があったん?
明同:パフォーマンスが欲しいと
仮矢:ぱふぉーまんす? なんだ、ダンスでも踊れってか?
仮矢:フォウ、フォウ、アァーオ! ……いや踊りは苦手だな
明同:違う。今まで以上の、大きな成果が欲しいということだ
仮矢:ほうほう
明同:他の殺し屋を雇ってる議員を、黙らせたい成果が必要だと言われた
仮矢:コンスタントに掃除してるだけじゃ、ナンセンスっていいたいのかなー
明同:どうすればいい…
仮矢:…そこまでする、大きなものが欲しいと。
仮矢:でかいねぇ
明同:出来なければ、俺達に猶予はないそうだ
仮矢:余命宣告ってこと?
明同:突然撃たれて、この建物を火事にされる。火事のニュースが流れて、もみ消されるのだろうな
仮矢:用意周到なことで。ってそれは、この組織も変わらねえか! はは!
明同:大きな結果……か
仮矢:うーん
仮矢:……あ、そういえば
明同:なんだ?
仮矢:これ
明同:……お前な、死体の持ち物は拾うなと
仮矢:処理班にうまくごまかしてって言っといたから。だいじょぶだいじょぶ
明同:調子のいいやつだ……
仮矢:それでさ、スマホの中探ってみたら、どうも面白い物が
明同:?
仮矢:これ、テーマパーク「マスヒューマ」の社員さんっぽいのよ
明同:……マスヒューマといえば、業界でも大きな企業だな
仮矢:んで、チャットのここ。「VIP客リスト」って単語が気になった
仮矢:社長さんとやり取りしてたようでさ。どうもこのリストには100人のっているらしい
明同:それで?
仮矢:俺の勘だが
仮矢:このリストに乗っている人間、全員「臭う」
明同:……尼羅(あまら)のいう成果に結びつくかは、まだ決定打はないが……今はそれしかないか
明同:シャクにさわるが、お手柄といっておこう
仮矢:じゃあさっそくいこうぜ
明同:俺も行けと?
仮矢:いつ死ぬか分からない状況だろ
仮矢:それに、事の大きさだって、ここは取締役が動かなきゃならない場面じゃない?
明同:……分かった
仮矢:現場に出る重役はモテるんだぜ~?明同くん!
明同:早く終わらせるぞ
0:
0:マスヒューマテーマパーク 入り口前
仮矢:ここが、マスヒューマ
明同:ありきたりなテーマパークだな
仮矢:周りを塀で囲んでるねぇ。入り口は一つだけ
明同:それで、この状況でどうやって会うと?
仮矢:このスマホに社長の連絡先が入ってる
明同:そこまでの人物だったのか、お前が駆除したのは
仮矢:同じ匂いは、同じものを呼ぶってな
仮矢:で、尼羅(あまら)の名前を出したらどうなるか
明同:やってみろ
仮矢:言われなくても
0:仮矢は、スマホで電話をかけ、マスヒューマの社長に挨拶をし、尼羅(あまら)の名前を出しつつ要件を言った
仮矢:おっけ。電話終わり
仮矢:奥にある本部まで来い、いや、来てくださいって
明同:尼羅(あまら)の名前も通るのか……ここは
仮矢:顔が広いよねぇ
仮矢:じゃ、さっそく、名簿を手に入れてくるか
明同:必要最低限にとどめるぞ
0:マスヒューマ事務所 社長室
仮矢:コンコン! 失礼しまーす! あ、先ほどお電話した、仮矢というものです~
明同:明同です。あなたが、マスヒューマの社長様ですか
明同:話は、先ほどこちらの仮矢が申した通り
仮矢:そう! 是非に、VIPの名簿リストをいただきたくてね
明同:……「尼羅(あまら)の差し金が何の用だ?」 と
明同:そうですね……我々の目的は一つ
明同:要らないゴミを排除するだけです
仮矢:そのゴミかどうかを測れるのが、この、手のひらサイズの「HT(エイチティー測定器)」
仮矢:あ、HT(エイチティー)ってのは、ヘイティスの略。ヘイティスの意味は……えっと
明同:「意思のある毒性(どくせい)」
仮矢:いえす
仮矢:掃転使が作ったこのシステムを元に、駆除をしているわけでございますよ
明同:攻撃性、内省力、正義感、虚言性……様々な観点から人間を測定し、「ゴミ」であるかどうかを判定する。
仮矢:というわけなんで、このマスヒューマは、俺達掃転使の「駆除対象」に選ばれた、ということでございます
明同:では、社長。リストを……。?
仮矢:おっとぉ、後ろにいつの間にか、同業者が1人。しかも、女の子…かっちり銃を向けられたと……
仮矢:明同さん、ごめん。今動けない状態
明同:…俺はノーマークでいいんですか? 社長さん
明同:交渉ですって? 何の?
明同:尼羅(あまら)を殺せ? そうでなければお前の相棒は死ぬ……はぁ、なるほど
仮矢:ありゃー、俺、人質ってわけ? じゃあ人質らしく……キャータスケテー!
明同:でもあいにく、俺も訓練はしているんですよ
0:明同はすかさず社長の机を撃つ
仮矢:おっとぉ! 社長さんが撃たれそうだからって、驚いちゃあかんでしょう! かわいこちゃん!
明同:次は身体を狙う
仮矢:よっ! ほっ! これで、無力化達成!
仮矢:銃も解体しとくかー
明同:その殺し屋は、生かしておけ
仮矢:なんで?
明同:……測定してみろ
仮矢:…マイナス反応
明同:雇われた人間側の「顔つき」をしていた
明同:俺にはそれがわかる。大方、この社長に何かをされてきたんだろう
仮矢:…なるほどね
明同:さて、どうする? 協力するか? ここで死ぬか? 殺し屋くん
明同:「“喜んで”協力する」…か
仮矢:よろしくな、えーっと……名前は?
仮矢:……イヴちゃん、ね。了解
明同:では、リストの提供を、よろしくお願い致します
0:清掃会社「掃転使」社内
仮矢:ふぅー!やっぱり自社の空気は心地いいですなぁ~!
明同:社畜か
仮矢:そんな明同さんも、社畜のごとく重労働。リストとにらめっこしてるじゃん
明同:100人もいるんだ。目を通すのに時間がかかる
仮矢:ご苦労さん~。……お、あれは。測定研究部の社員さん? 何か持ってきたねぇ
明同:測定器と、リストの人間を紐づけさせておいた
仮矢:ほう
明同:見事に100人とも、プラスだよ
仮矢:100個のゴミ……というよりは、害虫だね
明同:しかし、100人もいるとなると…1人ずつ、潰していくのか……悠長にしていたら殺される
明同:害虫駆除……。っ!
明同:そうか。パフォーマンスか
仮矢:えっ?
明同:マスヒューマは、塀に囲まれたアトラクションテーマパーク
仮矢:それが、どうしたって? まさか明同さん、マスヒューマオタクになりたいとか?
明同:違う
仮矢:じゃあなんだよ?
明同:入り口は1つ
明同:そこを封鎖して、害虫を集めたら?
仮矢:まぁ、うじゃうじゃテーマパークの中を……
仮矢:…あぁ
明同:「テーマパークのゴミ掃除」
明同:パフォーマンスとしても、成果としても十分だろう
明同:尼羅(あまら)に連絡をとる
仮矢:いや、でも100人って
明同:俺も参加する
明同:俺とお前で、駆除を進める
仮矢:こりゃ、大仕事になりそうだ
明同:イヴはまで正式な社員ではない。補助として連れていく
仮矢:なるへそ
仮矢:にしても、囲い込みか…明同さんも、なかなかえげつなーい事を思いつくね
明同:いや、ただのビジネスアイデアさ
明同:社長を通じて、VIPの人間を集めろ。奴に後ろ盾は、もうない
仮矢:あいよ
0:
0:
0:翌日、マスヒューマのテーマパーク内
仮矢:いやぁ、なんだかんだ準備してこの日が来たか~。緊張しますなぁ
明同:緊張? 殺し屋のお前が?
仮矢:いや、俺のキャリアでも。これは流石に、今までなかったぜ
仮矢:というか、殺し屋のやることじゃねえし
明同:そういうものなのか?
仮矢:1人ターゲットを決めたら、そいつを安全に殺せる手段を考え、準備して、殺しに行く。まぁ掃転使の中では「駆除」って表現だけど…、要は時間がかかる
明同:それでもコンスタントに駆除をしているじゃないか
仮矢:尼羅(あまら)の力があるからな
仮矢:……その力があっても、ここまでの規模はない
仮矢:まるでシリアルキラーかってくらい、死体が目の前に散らばる事になるんだからな
仮矢:死体処理班に同情するぜ
明同:あとは、俺達の考えた「パフォーマンス」が、尼羅(あまら)に認められれば
仮矢:お目にかかりゃ、殺されない。
仮矢:良くなければ
明同:殺される。この仕事が終わった後に、尼羅(あまら)に雇われた殺し屋に取り囲まれ、速攻射殺
仮矢:射殺されなければ
明同:合格。会社は存続する
仮矢:いちかばちか、ですねぇ
明同:理想の前には、時に試練が訪れる。
仮矢:現場に出てきて良かったのかい?
明同:尼羅(あまら)から、俺も「絡め」と言われた
仮矢:ハードだね
明同:ああ
仮矢:……お、イヴちゃん。どうだった? 全員そろってる? ……お!
明同:いるか?
仮矢:オッケーだって
明同:よし、頼む
仮矢:はーい。マイクを、っと。
仮矢:コホン。みなさーん。こーんにーちはー!
仮矢:…あれ? ちょっと元気ないなぁ。こーんにーちはー!
明同:馬鹿なことしてないで、早く進めろ
仮矢:どうも!マスヒューマのVIPの皆様! この度は集まっていただき、誠にありがとうございます!
仮矢:私、株式会社「掃転使」の仮矢と申します! そして!こちらにいるのがぁ! ……ほい、マイク
明同:……「掃転使」取締役の、明同だ
仮矢:はい、返して―。……ということで、えー我々が、今回みなさまをお集めいたしました!
仮矢:その理由は一体なんでしょうか? 社長様から直々に声がかかって、律儀に集まったのに。いきなり知らない人が「なんか喋ってるなぁ」と思いますよね? では、心当たりあるかた~! 手をあげて~!
仮矢:あれ? みなさん、心辺りがないですかぁ? おかしいなぁ
仮矢:じゃあ、質問を変えましょうか
仮矢:「人を、追い詰めたことは?」
仮矢:「人を、言葉で刺したことは?」
仮矢:法に触れなきゃ、何を言ってもいいと思っている人は、この中にいませんか?
仮矢:……ありゃーさらに静かになった
明同:仮矢、マイク
仮矢:はい、どうぞ
0:明同は仮矢からマイクをうけとる
明同:……何もわかっていない
明同:何もしていない。私は悪いことをしていない
明同:残念ながら、貴方たちの目からは、そういったものを感じる
明同:社会にバレないように人を傷つければよいと思っている。それに対して、何の反省もない
明同:これを何と呼ぶか、皆さん分かりますか?
明同:「ゴミ」です。世の中に要らない、地球には必要のないもの
明同:貴方たちは、いや、お前達はそれに成り果ててしまった
明同:年々、自殺率は増加傾向だ。だがその裏には、追い込んだ明確な原因がある
明同:それがお前達、ゴミ共だ。お前達がやってきたことだ
仮矢:……ありゃりゃ、みんな笑っちゃってるねぇ
明同:…。はは、は
仮矢:へ? 明同さんも笑うの、そこ?
明同:いや…はは
明同:つくづく、馬鹿な連中だと思ってな……くく
仮矢:うーん、俺がしゃべろうか。ほい。マイクプリーズ
仮矢:…よーし! じゃあここで! みなさん、駆除対象に選ばれたわけですけど、その駆除対象はどうなるか? わかりますか?
仮矢:……ほう! わからない! わからないと! 分かりました!
仮矢:ならさっそく、どうなるかお見せしましょう!
仮矢:えーと、じゃあ、あいつかなぁ
仮矢:あー動かない動かない、そのまま
仮矢:はい、バーン
0:仮矢は笑っている人間1人に向かって銃を向けて撃つ
仮矢:あいつは……10番だな。よし、10番駆除完了
仮矢:つまり、このように「掃除」されちゃうということですなぁ……あっ、ちょっとみなさん
仮矢:あーあーあー、もう。悲鳴上げちゃってぇ。
仮矢:ここテーマパークですよ~! みんなが笑顔で楽しむ場所です!
仮矢:動物園じゃないんですって~! もっと楽しく、楽しくいきましょうって!
明同:……仮矢。マイク
仮矢:ん? はい、どうぞ
0:明同が息を整える
明同:お前ら、つくづく
明同:そろいもそろって、ゴミばかりだな
仮矢:おおう、怒り爆発
明同:自分達になんの悪気もないと思えば、身の危険を感じた瞬間に、自制を失ったサルのごとく悲鳴を上げる……
明同:「怖い」「死にたくない」「嫌だ」? 愚かもいいところだ
明同:いいか? お前らは無自覚に毒をばらまき、相手を傷つけて、精神を汚していく
明同:純粋な人間が、腐ったゴミ共の行いで、自殺をする
明同:これがどれだけ悲しいことか、わかるか?
明同:何気なく向けた怒りや悪口、人を刺す批判という名の暴力、社会に見えない虐待やいじめ
明同:そんなものは、ただの害悪で必要がない。クソまみれな、魂の冒涜(ぼうとく)なんだよ
明同:考える事を辞めたお前達に、命を乞う権利はない
明同:反省する機会など、いくらでもあったはずだ。人に謝る、自分が悪かったと頭を下げる。傷つけて申し訳なかったと
明同:それすらもしないとは。呆れた
明同:笑って過ごすゴミ共に、明日は要らない
明同:貴様らは全員、駆除対象だ。
明同:以上
仮矢:はい! 演説、お疲れさまでした~! 明同取締役!
仮矢:拍手~! パチパチパチ
仮矢:いやぁ~その通りですね。実に!私もそう思います!
仮矢:もちろん、怒りや批判というのも大切ですが、それで味をしめたら論外ですし、学校の先生に見つからなったり、警察に捕まらないからって、いじめや虐待をするなんて、非常によろしくない!
仮矢:私も、それに賛同できるから、この仕事をやっているわけなんですよね~、ええ。
仮矢:なので皆さん、もう取り返しのつかないところまで来てしまいました
仮矢:もう今世では、人間に戻れません。ただのゴミです
仮矢:じゃあ、今からできることはなにか? なんでしょうかね?
仮矢:考えてみましょうか……。(3秒ほどおいてから)どうです? 分かりました?
仮矢:答えは……来世こそ、ゴミにならず、人として生きること
仮矢:それを最後まで思ってください。それが僕達の使命です
仮矢:人間を辞めたゴミの「掃」除を行い、その魂の死をもって「転」じさせ、来世こそいい行いをしてもらいたいと思う、天上の「使」いからの願い
仮矢:それが、「掃転使(そうてんし)」の仕事であり、皆さんへ提供するサービスです
仮矢:なにとぞ、ご協力のほうを、よろしくお願いいたします
明同:これより、11時20分。「マスヒューマ駆除作業」開始
仮矢:ではではみなさん! 最後の最後まで、ゴミとして生きましょ~う!
仮矢:さぁさぁ、逃げて逃げて!
明同:仕事を始めるぞ
0:
0:
明同:15番、25番、駆除
明同:……こいつは、30番。女性。
明同:高校生の「子供」がいる? 嘘をつけ
明同:自殺しているぞ、その子供
明同:「お前らはそれでも人間か!」か
明同:コロリと主張を変えてきたな
明同:もう話すのもばかばかしい。とっとと消えろ
0:明同は引き金を引く
明同:30番、駆除完了
0:
仮矢:あーちょっとちょっと逃げないで逃げないで!
仮矢:いや逃げろっていったけど! すばしっこいと照準がズレるのよ~
仮矢:あ、イヴちゃん。そいつ抑えて!よーし、ナイスサポートゥ~。その調子なら正社員も夢じゃないよ~
仮矢:ということで、えーっと42番ね。
仮矢:あぁーあぁー、命乞いしちゃって……え? 何?
仮矢:「俺は悪くない?」……はぁ
仮矢:だから聞き飽きてんのよ、それ
仮矢:はい! さよなら~!
0:仮矢は引き金を引く
仮矢:よし、42番、駆除完了~
明同:調子はどうだ
仮矢:いやぁー、いいね!
仮矢:こんなに殺すのは初めてだから、最初はどうかと思ったけど、案外楽しいね!
明同:顔から伝わるぞ、仮矢
仮矢:どうだい? 殺しの感想?
明同:…15番が初めてだったが
明同:まるで人形のように動かなくなるものだな
仮矢:それ、俺も最初の殺しで思った
仮矢:でもさ、表情が暗いぜ、明同さん。ここまで来たってのに
仮矢:……あ、そうだ。
明同:なんだ、いきなり
仮矢:せっかくだったら音楽流したいよなー
明同:音楽?
仮矢:あれが聞きたい。カレトニア・シルクの「ワンダーキラーズ」
明同:カレトニア・シルク?
仮矢:俺の好きなアーティスト。ジャズの
明同:クラシックのほうが落ち着く
仮矢:いやぁ、落ち着いたら、台無しだぜ? こんな大仕事やってるのに
明同:仕事は遊びじゃない
仮矢:仕事だから遊ぶのよ
仮矢:ってことで、ミュージックスタート
明同:おい、いつの間に流すように設定した?
仮矢:さっき、イヴちゃんに頼んで、ちょちょいと流すようにしてもらったのさ
明同:お前というやつは……
仮矢:で? どう? この曲?
明同:…
仮矢:いい感じ?
明同:好きな曲と、似ているな
仮矢:よし。じゃあ駆除再開
仮矢:ほれ、あそこにさっそく害虫が
0:
仮矢:ようし! えーっと? 32と79と82かな? はい三人まとめてパイナラ!
明同:59番、64番。駆除完了
明同:悲鳴の多いテーマパークだ
仮矢:あー、明同くん。そっち行った
明同:お前、殺し屋だろう。簡単に逃がすなよ
仮矢:フツーに殺したってつまんないでしょ
仮矢:って後ろぉ! 明同さん!
明同:っ!
仮矢:おおーあっぶない! イヴちゃんのおかげで助かったね
明同:助かった、イヴ
明同:…68番、ナイフを持ち込んでいたか。抑えておけ
明同:……やけに暴れ回るな。なんだ? 何が言いたい?
明同:「このエゴイストが」、か。口が絶えないな
明同:データを見ると、お前はその暴言で、3人を自殺に追い込んでる
明同:ネットでもリアルでも
仮矢:はい、バーン!
0:仮矢が、68番を射殺
明同:68番、駆除完了。
仮矢:さぁさぁ、ノリよくいこうぜ、明同取締役
明同:ああ
0:
仮矢:さてさてどーこに隠れたかなぁ、出ておいで~出ておいで!
仮矢:あー見つかっちゃったねぇ残念! はいさよならー!
仮矢:えっーと。32と33番、駆除完了~!
明同:69番……あぁ、あの会社の社長か
明同:どうだ? 権力をもって、弱者に怒りをぶつける気分は?
明同:自殺率上昇に貢献してしまっているのは、お前達のような、資本主義に乗っ取った世界で、忠実に権力を持った連中なのかもな
0:明同は69番の額に撃った
明同:……69番。駆除完了
0:
仮矢:あー20番くん、頭がひょっこり出てるよ~ はい、バーン!
0:仮矢、20番を射殺
仮矢:……よしよし、生きてないな。20番、駆除完了!
明同:49番。あぁ、嘔吐(おうと)しているのか
明同:そのまま動かず、吐いててくれ
0:明同、49番射殺
明同:49番、駆除完了
仮矢:あー明同さん! 13と95! そっちに行った!
明同:あそこか
仮矢:おっけ! 反対側から追い込むね~!
明同:逃がすなよ?
仮矢:よし、よし、よーし! これで挟み撃ち
仮矢:えっと、俺が13を撃つ?
明同:どっちでもいいだろ
明同:なら、俺が95か?
仮矢:ま、とにかく終わらせようぜ!
仮矢:はい、バキューン!
0:仮矢が95番を射殺。明同は13番を射殺
仮矢:……ん? あれ? こっちが95番か!
明同:おい、13番を撃つんじゃなかったのか?
仮矢:逆だったわ~、はは!
明同:仕事なんだから、きっちりこなしてくれ
仮矢:はいはいすいませーん。明同取締役殿~!
明同:次、行くぞ
0:
仮矢:あーりゃりゃ。そこ、行き止まりじゃんよー
仮矢:ざっと、10人……拳銃は面倒だな
仮矢:じゃ、こっちの散弾銃で
明同:虫が大量に、一つの場所に集まるのは見たことがあるが
明同:形が人間だと、こうも気持ちが悪いものか
仮矢:逃げ場がないのに~壁のほうにみんな寄っちゃってさぁ
明同:これは……あれか。おしくらまんじゅうというやつだな
仮矢:おっしくらまんじゅう~! 押っされて泣くな!
仮矢:おっしくらまんじゅう~! 押っされて泣くなぁ~!……こんな歌だっけ?
明同:俺に聞くな。検索しろ
仮矢:それもそうだな!
明同:にしても、どいつもこいつも、自分だけが助かりたい気持ちでいっぱいか
明同:…「お前が先に死んでこい」「私は死にたくない」
明同:人に毒をばらまいておきながら、その態度か
仮矢:あ、なーんかいってるぞぉ~? 12番君、なんだって?!
仮矢:「元の生活に返してください…?」と、ねぇ
仮矢:でもさ、あんたらその、元の生活で、人を殺しちゃってるわけよ?
明同:12番は…家族を一人、29番は会社の部下を一人、己の毒で殺している
仮矢:だからねぇ、測定値でマイナスが出てる以上、もう無理なんだって
明同:システムの話をしても、わからんだろう
仮矢:ま、それもそっか! じゃ……とっとと掃除を
仮矢:ほれ! バキューン!!
0:散弾銃を撃つ仮矢
仮矢:ひやぁ、悲鳴がうるさいのなんの
仮矢:ちょーっと黙ってくれないかなぁ~!
仮矢:こっちは仕事してるの!
仮矢:ほれ、ばきゅ~ん!
0:さらに散弾銃を撃つ
明同:……片付いたか?
仮矢:はい、終わりましたよ~
仮矢:えーっと、12、29、70、3、6番と
仮矢:7、56、32、81…67番、で合ってる
明同:まだ生きてるぞ
仮矢:え?
明同:ここ
0:明同がぴくぴく動いてた6番を撃つ
仮矢:しまった……俺としたことが…申し訳ねえ! 給料カットは勘弁!
明同:そこまでしないさ
0:明同は6番を撃った
明同:6番、駆除完了
明同:体が微妙ながら、動いていた
仮矢:部下の尻拭(しりぬぐ)い、さながら見事でございます
明同:うるさい、給料減らすぞ
0:
仮矢:おおー! メリーゴーランドに隠れてたのかぁ! 愛しの王子様がやってこればよかったね!
仮矢:でも君のような人間に、王子さまは来ないと思うけどなぁ~!
明同:見えないところでうずくまっていたか
明同:そうやって、お前が傷つけた人も、うずくまって、死んでいったんだよ
仮矢:はい、52番、駆除終わり!
明同:73番、駆除完了
0:
明同:そこにいるのは、48番か
明同:イヴ、その女、48番を抑えろ
仮矢:おっと、48番以外にも、37番と50番もいるじゃないか~!
仮矢:あー! ちょっと待ってよ~! 楽しく鬼ごっこしようぜ~!
明同:……動くな、48番。
明同:その目で、色んな人間の、悲しくも追い込まれた姿を見たはずだ
明同:お前が目に入れてきた人間たちは、自殺している
仮矢:37番ちゃん、こけちゃった~! あーいたいねぇ、痛い
仮矢:すりむいちゃったねぇ。よしよし、泣かないの~!
仮矢:……と見せかけて、はいバーン!
0:37番を射殺する仮矢
明同:48番、震えているぞ、どうした?
仮矢:50番ちゃ~ん! そこの37番、あと48番とも友達だっけ? じゃあ君も一緒に、さよならー!
明同:安心しろ、その目を失えば、次はきっとまともな人間になれるさ
0:仮矢は50番を射殺した
0:明同は48番の目を撃つ
明同:汚い声をあげるな
明同:もう一発
0:明同は48番の頭を撃って殺した
0:
仮矢:さてと。これで、最後の一人か!
仮矢:100番のあなた!よく逃げ切りましたな~!
明同:お前で最後だ
仮矢:って、もう口が震えまくってるじゃん。え?なんだって?
仮矢:ふむふむ……「なんでこんなむごいことをするんだ!」って言ってるけど?
明同:むごいこと? 見えない事を影でするほど、むごいことはないだろう
仮矢:「いいじゃないか! そんなもの死んだ奴が悪いんだから!」ってさ
明同:……どこまでも、腐ってるな
明同:いいか。誰かがやらなければと、ゴミと勘違いした人間は消えない
明同:世の中には、そんなゴミのような人間が多すぎる
仮矢:「それは、お前達が勝手にやってることだろ! 人間がやることじゃない!」……ってよ
明同:その反論を優しく聞き入れていたら、何も変わらない
明同:変えるのは、行動だ
明同:いくら無駄な奴に反論を用いても、平行線
明同:アクションを起こした瞬間、論理を講じる口は消えうせる
仮矢:「この悪魔め! 死ね!」……ですと
明同:来世は
明同:優しい言葉を使えるようになっているといいな
明同:さようならだ
0:明同は、100番を射殺した
明同:100番、駆除完了
仮矢:ありゃ―殺しちゃった。もうちょっと長引いても面白そうだったのに
明同:仕事だといったろ
明同:もう、靴も血まみれだ
仮矢:そうね。後ろを見れば
仮矢:大量の死体と、血に染まったテーマパーク
仮矢:狂気の殺人犯なら、ここで高らかと笑うもんかな
明同:いっそのこと、笑ってみたらどうだ
明同:お前なら似合うぞ
仮矢:そういう明同さんも、全然、手が震えてないじゃない?
仮矢:初めて人殺しをした人間……というか、こんなに殺しまくった奴が、そんな平気な顔してねえぜ?
明同:曲のおかげかもな
明同:気分は、良かった
仮矢:……そしたら、今度ライブヴァージョン聴かせてやるよ
明同:楽しみにしている
明同:しかし……時間のかかる大仕事だった
仮矢:これ、ナマの殺人事件だったら
仮矢:ワールドサイコキラーリストへ、殿堂入りかもなぁ。でも
明同:そうはならない
明同:テーマパークで大規模な爆発事故と火災
明同:社長のイベントに呼ばれていたVIP100人は全員死亡。これが筋書きだ
仮矢:おっそろしい事故なことで
明同:あとは今から、尼羅(あまら)の息がかかった「人間たち」が来て
仮矢:大量殺人事件として処理されず、殺されなかったら、合格と
0:そこに、黒スーツや、コートを来た複数の人間がやってきた
明同:……来たぞ
仮矢:はてさて、どうなることやら
明同:死ぬかもしれないな
仮矢:そうですなー
明同:……何? 合格?
仮矢:マジか!
明同:尼羅(あまら)はご機嫌だったようだな
仮矢:ふぅ、助かった~
明同:倒産は免れたか
仮矢:お……イヴちゃんも、特に捕まってもいねぇ
仮矢:こりゃ、本当にOKってことだな
明同:なら、戻るか
仮矢:余韻に浸ろうぜ?
仮矢:100匹駆除ですよ、一気に
明同:駆除はこれからも続く。その大仕事が一つ、終わっただけだ
明同:取締役は忙しいんだよ
仮矢:かーっ。せっかく現場を、こんなにどっぷり体験したのに
仮矢:さすが明同取締役殿
明同:……悪いものじゃなかったな
仮矢:へ?
明同:現場に出るのも、悪くないと言ったんだ
仮矢:じゃ、取締役の現場デビューも近いという事で
明同:何を言ってる。お前が現場に出向くのに変わりないぞ
仮矢:やっぱりぃ?
明同:それに、社員も1人増える
明同:2人もいるなら、管理者がいなければ
仮矢:ありがとうございます、明同取締役殿~
明同:その調子で、これからも頼む
仮矢:こちらこそ
仮矢:そして? …尼羅(あまら)からのお咎めも無く……シナリオ通りなら
明同:これから火の海だ、ここは
仮矢:なら、海を拝んでかえる?
明同:メディアがカメラを持ってやって来る、見つかれば面倒なことになるな
仮矢:冗談冗談
明同:なら、戻るぞ
仮矢:そういや、マスヒューマの社長はどうすんだ?
明同:ああ、その件か
明同:これからイヴに、始末させる
仮矢:え?あの子にやらせるの?
明同:最後の面接テストだ
0:
0:掃転使 社内
仮矢:ようし! ゴミ掃除終わり!
仮矢:いやぁ、たくさん片付けると、スッキリするよね~!
仮矢:お、イヴちゃんお帰り~
仮矢:どう? 仕事後した後って、いい空気感じない?
明同:駆除は終わったようだな
明同:顔で分かる。合格だ
仮矢:これで、イヴちゃんも仲間入りで。よろしくね~
明同:ニュースはどうだ?
仮矢:今見てるぜ
仮矢:……マスヒューマで大火災が発生。原因は調査中
仮矢:当時、VIP客限定のイベントだったが、100人の死亡が確認されている。火の手は予想以上に速く、外に出られなかった模様
仮矢:歴史に残る大事故ですなー。というわけで、これにて一件落着~!
明同:やれやれ、報告が長くなりそうだ
明同:世の中の捨てられるべきゴミ共は、まだまだ多い
明同:環境汚染は、止めなければな
明同:それが、掃転使の仕事だ
仮矢:さぁ、クリーンな世界を目指して、頑張っていきまっしょ~い
仮矢:はい、どーん! ドアを蹴り破ってこんばんは~!
仮矢:そこの君! おめでとう!あなたは駆除対象に選ばれました~!
仮矢:ということで、選ばれた感想は? ……ふむ、ふむふむ!
仮矢:「俺は悪くない」か。
仮矢:みんな、言うんだわ、それ
仮矢:はい! さようなら! バーン!(銃声)
仮矢:……さて、人員手配と、死体処理をするかな
仮矢:あぁー失礼しました! それではみなさん、今日も一日、キレイに生きましょう~!
0:清掃会社「掃転使」の社内。取締役室
明同:はい、はい……ええ
明同:大企業の人間を抹殺しました。いや
明同:「駆除」でしたね。失敬。
明同:「掃転使」が始めた、「駆除計画」、あなたには感謝してますよ。「尼羅(あまら)」議員
明同:昨日も1人、仮矢が……「掃除屋」がやってくれました。
明同:引き合わせてくれたこと、もちろん、設備や人員に関しても、頭が上がりません
明同:では、また何かありましたら
0:(ドアをノックする音)
仮矢:コンコンコーン
明同:ノックは一回で十分だ
仮矢:失礼します! 明同取締役どの~!
明同:毎回その、ふざけた挨拶はセットか?
仮矢:何をいうとりますか。清掃会社の取締役さんが
明同:表向きはな。昨日はご苦労だった、仮矢
仮矢:みんなびっくりした顔で見てたよ。ま、そりゃそうか
明同:起きたことは他言無用
仮矢:喋っても、情報統制でなかったことになる
仮矢:……そもそも、あの会社にやらかしそうな人間はいなかったな
明同:測ったのか?
仮矢:測定値が低かった。マイナスだ
明同:全員、駆除対象に何らかの被害を受けていたと考えるのが筋だろう
仮矢:精神的な、やつをな
明同:反省という言葉は、この世から消えてしまったのだろうかな
仮矢:だから、俺達で「これ」をやってんじゃん
明同:そうだ
明同:環境汚染を止めるために
仮矢:世の中のゴミを駆除する
仮矢:明同の理念には、こう見えても賛同してんだぜ
明同:そうなれば、俺を今頃、ころしていると?
仮矢:俺は「掃転使」の殺し屋だ
仮矢:意味をくれたのを、マジで感謝してんだよ。明同取締役殿
明同:その言い方は、ふざけているのか、真面目なのか
仮矢:大真面目に、10票
明同:……俺も、お前のおかげで、理想へと近づいている。いつもすまないな
仮矢:仰せのとーりに。
仮矢:よし、じゃあ次のターゲット。行ってくるぜ
明同:確か、テーマパーク関係の社員だったな、次は
明同:重労働、ご苦労
仮矢:それ、お給料ストライキしてくださいって、言っているようなものよ?
仮矢:ま、尼羅(あまら)の奴が、変にそっぽを向かなきゃ、収入面は安泰だろうけどな
明同:今日のところはご機嫌だった。頭を下げるのは慣れているから、こっちは問題ない
明同:では、次も頼んだ
仮矢:あいよ~
仮矢:さて! 今日も元気にゴミ掃除っと~!
明同:……ん? 尼羅(あまら)から電話?
明同:はい……明同です……え?
明同:成果が欲しい? 毎月、一定のノルマは達成しているはずですが
明同:パフォーマンスがほしい、ですか
0:とある街の、大きな橋梁の下
仮矢:はいこんにちは~。ひっそり隅っこでご登場
仮矢:おおー。測定しなくても分かるゴミみたいな顔つき。果たして心を殺した人間はどれくらいいるんでしょうなぁ
仮矢:はい、さいなら~! バーン!(銃声)
仮矢:……そしたらさっそく処理班に連絡を、と。ん? 何か落ちたな? これは?
0:清掃会社「掃転使」の社内。取締役室
明同:くそ……遊びじゃないというのに……。いや、あの議員からすれば、俺の理想はどうでもいいことか。いつの時代も変わらないな
明同:こちらも利用できるところまで、させてもらうさ
仮矢:なーに深刻な表情してんだよ? 測定したら、マイナス反応が出ちゃうような顔つきだぜ
明同:終わったのか?
仮矢:いつも通りにな
明同:……お前が仕事に言っている間、尼羅(あまら)議員から電話があった
仮矢:もしや、ボーナス待遇?
明同:そんな顔に見えるか?
仮矢:全然!
明同:全く
仮矢:で、何があったん?
明同:パフォーマンスが欲しいと
仮矢:ぱふぉーまんす? なんだ、ダンスでも踊れってか?
仮矢:フォウ、フォウ、アァーオ! ……いや踊りは苦手だな
明同:違う。今まで以上の、大きな成果が欲しいということだ
仮矢:ほうほう
明同:他の殺し屋を雇ってる議員を、黙らせたい成果が必要だと言われた
仮矢:コンスタントに掃除してるだけじゃ、ナンセンスっていいたいのかなー
明同:どうすればいい…
仮矢:…そこまでする、大きなものが欲しいと。
仮矢:でかいねぇ
明同:出来なければ、俺達に猶予はないそうだ
仮矢:余命宣告ってこと?
明同:突然撃たれて、この建物を火事にされる。火事のニュースが流れて、もみ消されるのだろうな
仮矢:用意周到なことで。ってそれは、この組織も変わらねえか! はは!
明同:大きな結果……か
仮矢:うーん
仮矢:……あ、そういえば
明同:なんだ?
仮矢:これ
明同:……お前な、死体の持ち物は拾うなと
仮矢:処理班にうまくごまかしてって言っといたから。だいじょぶだいじょぶ
明同:調子のいいやつだ……
仮矢:それでさ、スマホの中探ってみたら、どうも面白い物が
明同:?
仮矢:これ、テーマパーク「マスヒューマ」の社員さんっぽいのよ
明同:……マスヒューマといえば、業界でも大きな企業だな
仮矢:んで、チャットのここ。「VIP客リスト」って単語が気になった
仮矢:社長さんとやり取りしてたようでさ。どうもこのリストには100人のっているらしい
明同:それで?
仮矢:俺の勘だが
仮矢:このリストに乗っている人間、全員「臭う」
明同:……尼羅(あまら)のいう成果に結びつくかは、まだ決定打はないが……今はそれしかないか
明同:シャクにさわるが、お手柄といっておこう
仮矢:じゃあさっそくいこうぜ
明同:俺も行けと?
仮矢:いつ死ぬか分からない状況だろ
仮矢:それに、事の大きさだって、ここは取締役が動かなきゃならない場面じゃない?
明同:……分かった
仮矢:現場に出る重役はモテるんだぜ~?明同くん!
明同:早く終わらせるぞ
0:
0:マスヒューマテーマパーク 入り口前
仮矢:ここが、マスヒューマ
明同:ありきたりなテーマパークだな
仮矢:周りを塀で囲んでるねぇ。入り口は一つだけ
明同:それで、この状況でどうやって会うと?
仮矢:このスマホに社長の連絡先が入ってる
明同:そこまでの人物だったのか、お前が駆除したのは
仮矢:同じ匂いは、同じものを呼ぶってな
仮矢:で、尼羅(あまら)の名前を出したらどうなるか
明同:やってみろ
仮矢:言われなくても
0:仮矢は、スマホで電話をかけ、マスヒューマの社長に挨拶をし、尼羅(あまら)の名前を出しつつ要件を言った
仮矢:おっけ。電話終わり
仮矢:奥にある本部まで来い、いや、来てくださいって
明同:尼羅(あまら)の名前も通るのか……ここは
仮矢:顔が広いよねぇ
仮矢:じゃ、さっそく、名簿を手に入れてくるか
明同:必要最低限にとどめるぞ
0:マスヒューマ事務所 社長室
仮矢:コンコン! 失礼しまーす! あ、先ほどお電話した、仮矢というものです~
明同:明同です。あなたが、マスヒューマの社長様ですか
明同:話は、先ほどこちらの仮矢が申した通り
仮矢:そう! 是非に、VIPの名簿リストをいただきたくてね
明同:……「尼羅(あまら)の差し金が何の用だ?」 と
明同:そうですね……我々の目的は一つ
明同:要らないゴミを排除するだけです
仮矢:そのゴミかどうかを測れるのが、この、手のひらサイズの「HT(エイチティー測定器)」
仮矢:あ、HT(エイチティー)ってのは、ヘイティスの略。ヘイティスの意味は……えっと
明同:「意思のある毒性(どくせい)」
仮矢:いえす
仮矢:掃転使が作ったこのシステムを元に、駆除をしているわけでございますよ
明同:攻撃性、内省力、正義感、虚言性……様々な観点から人間を測定し、「ゴミ」であるかどうかを判定する。
仮矢:というわけなんで、このマスヒューマは、俺達掃転使の「駆除対象」に選ばれた、ということでございます
明同:では、社長。リストを……。?
仮矢:おっとぉ、後ろにいつの間にか、同業者が1人。しかも、女の子…かっちり銃を向けられたと……
仮矢:明同さん、ごめん。今動けない状態
明同:…俺はノーマークでいいんですか? 社長さん
明同:交渉ですって? 何の?
明同:尼羅(あまら)を殺せ? そうでなければお前の相棒は死ぬ……はぁ、なるほど
仮矢:ありゃー、俺、人質ってわけ? じゃあ人質らしく……キャータスケテー!
明同:でもあいにく、俺も訓練はしているんですよ
0:明同はすかさず社長の机を撃つ
仮矢:おっとぉ! 社長さんが撃たれそうだからって、驚いちゃあかんでしょう! かわいこちゃん!
明同:次は身体を狙う
仮矢:よっ! ほっ! これで、無力化達成!
仮矢:銃も解体しとくかー
明同:その殺し屋は、生かしておけ
仮矢:なんで?
明同:……測定してみろ
仮矢:…マイナス反応
明同:雇われた人間側の「顔つき」をしていた
明同:俺にはそれがわかる。大方、この社長に何かをされてきたんだろう
仮矢:…なるほどね
明同:さて、どうする? 協力するか? ここで死ぬか? 殺し屋くん
明同:「“喜んで”協力する」…か
仮矢:よろしくな、えーっと……名前は?
仮矢:……イヴちゃん、ね。了解
明同:では、リストの提供を、よろしくお願い致します
0:清掃会社「掃転使」社内
仮矢:ふぅー!やっぱり自社の空気は心地いいですなぁ~!
明同:社畜か
仮矢:そんな明同さんも、社畜のごとく重労働。リストとにらめっこしてるじゃん
明同:100人もいるんだ。目を通すのに時間がかかる
仮矢:ご苦労さん~。……お、あれは。測定研究部の社員さん? 何か持ってきたねぇ
明同:測定器と、リストの人間を紐づけさせておいた
仮矢:ほう
明同:見事に100人とも、プラスだよ
仮矢:100個のゴミ……というよりは、害虫だね
明同:しかし、100人もいるとなると…1人ずつ、潰していくのか……悠長にしていたら殺される
明同:害虫駆除……。っ!
明同:そうか。パフォーマンスか
仮矢:えっ?
明同:マスヒューマは、塀に囲まれたアトラクションテーマパーク
仮矢:それが、どうしたって? まさか明同さん、マスヒューマオタクになりたいとか?
明同:違う
仮矢:じゃあなんだよ?
明同:入り口は1つ
明同:そこを封鎖して、害虫を集めたら?
仮矢:まぁ、うじゃうじゃテーマパークの中を……
仮矢:…あぁ
明同:「テーマパークのゴミ掃除」
明同:パフォーマンスとしても、成果としても十分だろう
明同:尼羅(あまら)に連絡をとる
仮矢:いや、でも100人って
明同:俺も参加する
明同:俺とお前で、駆除を進める
仮矢:こりゃ、大仕事になりそうだ
明同:イヴはまで正式な社員ではない。補助として連れていく
仮矢:なるへそ
仮矢:にしても、囲い込みか…明同さんも、なかなかえげつなーい事を思いつくね
明同:いや、ただのビジネスアイデアさ
明同:社長を通じて、VIPの人間を集めろ。奴に後ろ盾は、もうない
仮矢:あいよ
0:
0:
0:翌日、マスヒューマのテーマパーク内
仮矢:いやぁ、なんだかんだ準備してこの日が来たか~。緊張しますなぁ
明同:緊張? 殺し屋のお前が?
仮矢:いや、俺のキャリアでも。これは流石に、今までなかったぜ
仮矢:というか、殺し屋のやることじゃねえし
明同:そういうものなのか?
仮矢:1人ターゲットを決めたら、そいつを安全に殺せる手段を考え、準備して、殺しに行く。まぁ掃転使の中では「駆除」って表現だけど…、要は時間がかかる
明同:それでもコンスタントに駆除をしているじゃないか
仮矢:尼羅(あまら)の力があるからな
仮矢:……その力があっても、ここまでの規模はない
仮矢:まるでシリアルキラーかってくらい、死体が目の前に散らばる事になるんだからな
仮矢:死体処理班に同情するぜ
明同:あとは、俺達の考えた「パフォーマンス」が、尼羅(あまら)に認められれば
仮矢:お目にかかりゃ、殺されない。
仮矢:良くなければ
明同:殺される。この仕事が終わった後に、尼羅(あまら)に雇われた殺し屋に取り囲まれ、速攻射殺
仮矢:射殺されなければ
明同:合格。会社は存続する
仮矢:いちかばちか、ですねぇ
明同:理想の前には、時に試練が訪れる。
仮矢:現場に出てきて良かったのかい?
明同:尼羅(あまら)から、俺も「絡め」と言われた
仮矢:ハードだね
明同:ああ
仮矢:……お、イヴちゃん。どうだった? 全員そろってる? ……お!
明同:いるか?
仮矢:オッケーだって
明同:よし、頼む
仮矢:はーい。マイクを、っと。
仮矢:コホン。みなさーん。こーんにーちはー!
仮矢:…あれ? ちょっと元気ないなぁ。こーんにーちはー!
明同:馬鹿なことしてないで、早く進めろ
仮矢:どうも!マスヒューマのVIPの皆様! この度は集まっていただき、誠にありがとうございます!
仮矢:私、株式会社「掃転使」の仮矢と申します! そして!こちらにいるのがぁ! ……ほい、マイク
明同:……「掃転使」取締役の、明同だ
仮矢:はい、返して―。……ということで、えー我々が、今回みなさまをお集めいたしました!
仮矢:その理由は一体なんでしょうか? 社長様から直々に声がかかって、律儀に集まったのに。いきなり知らない人が「なんか喋ってるなぁ」と思いますよね? では、心当たりあるかた~! 手をあげて~!
仮矢:あれ? みなさん、心辺りがないですかぁ? おかしいなぁ
仮矢:じゃあ、質問を変えましょうか
仮矢:「人を、追い詰めたことは?」
仮矢:「人を、言葉で刺したことは?」
仮矢:法に触れなきゃ、何を言ってもいいと思っている人は、この中にいませんか?
仮矢:……ありゃーさらに静かになった
明同:仮矢、マイク
仮矢:はい、どうぞ
0:明同は仮矢からマイクをうけとる
明同:……何もわかっていない
明同:何もしていない。私は悪いことをしていない
明同:残念ながら、貴方たちの目からは、そういったものを感じる
明同:社会にバレないように人を傷つければよいと思っている。それに対して、何の反省もない
明同:これを何と呼ぶか、皆さん分かりますか?
明同:「ゴミ」です。世の中に要らない、地球には必要のないもの
明同:貴方たちは、いや、お前達はそれに成り果ててしまった
明同:年々、自殺率は増加傾向だ。だがその裏には、追い込んだ明確な原因がある
明同:それがお前達、ゴミ共だ。お前達がやってきたことだ
仮矢:……ありゃりゃ、みんな笑っちゃってるねぇ
明同:…。はは、は
仮矢:へ? 明同さんも笑うの、そこ?
明同:いや…はは
明同:つくづく、馬鹿な連中だと思ってな……くく
仮矢:うーん、俺がしゃべろうか。ほい。マイクプリーズ
仮矢:…よーし! じゃあここで! みなさん、駆除対象に選ばれたわけですけど、その駆除対象はどうなるか? わかりますか?
仮矢:……ほう! わからない! わからないと! 分かりました!
仮矢:ならさっそく、どうなるかお見せしましょう!
仮矢:えーと、じゃあ、あいつかなぁ
仮矢:あー動かない動かない、そのまま
仮矢:はい、バーン
0:仮矢は笑っている人間1人に向かって銃を向けて撃つ
仮矢:あいつは……10番だな。よし、10番駆除完了
仮矢:つまり、このように「掃除」されちゃうということですなぁ……あっ、ちょっとみなさん
仮矢:あーあーあー、もう。悲鳴上げちゃってぇ。
仮矢:ここテーマパークですよ~! みんなが笑顔で楽しむ場所です!
仮矢:動物園じゃないんですって~! もっと楽しく、楽しくいきましょうって!
明同:……仮矢。マイク
仮矢:ん? はい、どうぞ
0:明同が息を整える
明同:お前ら、つくづく
明同:そろいもそろって、ゴミばかりだな
仮矢:おおう、怒り爆発
明同:自分達になんの悪気もないと思えば、身の危険を感じた瞬間に、自制を失ったサルのごとく悲鳴を上げる……
明同:「怖い」「死にたくない」「嫌だ」? 愚かもいいところだ
明同:いいか? お前らは無自覚に毒をばらまき、相手を傷つけて、精神を汚していく
明同:純粋な人間が、腐ったゴミ共の行いで、自殺をする
明同:これがどれだけ悲しいことか、わかるか?
明同:何気なく向けた怒りや悪口、人を刺す批判という名の暴力、社会に見えない虐待やいじめ
明同:そんなものは、ただの害悪で必要がない。クソまみれな、魂の冒涜(ぼうとく)なんだよ
明同:考える事を辞めたお前達に、命を乞う権利はない
明同:反省する機会など、いくらでもあったはずだ。人に謝る、自分が悪かったと頭を下げる。傷つけて申し訳なかったと
明同:それすらもしないとは。呆れた
明同:笑って過ごすゴミ共に、明日は要らない
明同:貴様らは全員、駆除対象だ。
明同:以上
仮矢:はい! 演説、お疲れさまでした~! 明同取締役!
仮矢:拍手~! パチパチパチ
仮矢:いやぁ~その通りですね。実に!私もそう思います!
仮矢:もちろん、怒りや批判というのも大切ですが、それで味をしめたら論外ですし、学校の先生に見つからなったり、警察に捕まらないからって、いじめや虐待をするなんて、非常によろしくない!
仮矢:私も、それに賛同できるから、この仕事をやっているわけなんですよね~、ええ。
仮矢:なので皆さん、もう取り返しのつかないところまで来てしまいました
仮矢:もう今世では、人間に戻れません。ただのゴミです
仮矢:じゃあ、今からできることはなにか? なんでしょうかね?
仮矢:考えてみましょうか……。(3秒ほどおいてから)どうです? 分かりました?
仮矢:答えは……来世こそ、ゴミにならず、人として生きること
仮矢:それを最後まで思ってください。それが僕達の使命です
仮矢:人間を辞めたゴミの「掃」除を行い、その魂の死をもって「転」じさせ、来世こそいい行いをしてもらいたいと思う、天上の「使」いからの願い
仮矢:それが、「掃転使(そうてんし)」の仕事であり、皆さんへ提供するサービスです
仮矢:なにとぞ、ご協力のほうを、よろしくお願いいたします
明同:これより、11時20分。「マスヒューマ駆除作業」開始
仮矢:ではではみなさん! 最後の最後まで、ゴミとして生きましょ~う!
仮矢:さぁさぁ、逃げて逃げて!
明同:仕事を始めるぞ
0:
0:
明同:15番、25番、駆除
明同:……こいつは、30番。女性。
明同:高校生の「子供」がいる? 嘘をつけ
明同:自殺しているぞ、その子供
明同:「お前らはそれでも人間か!」か
明同:コロリと主張を変えてきたな
明同:もう話すのもばかばかしい。とっとと消えろ
0:明同は引き金を引く
明同:30番、駆除完了
0:
仮矢:あーちょっとちょっと逃げないで逃げないで!
仮矢:いや逃げろっていったけど! すばしっこいと照準がズレるのよ~
仮矢:あ、イヴちゃん。そいつ抑えて!よーし、ナイスサポートゥ~。その調子なら正社員も夢じゃないよ~
仮矢:ということで、えーっと42番ね。
仮矢:あぁーあぁー、命乞いしちゃって……え? 何?
仮矢:「俺は悪くない?」……はぁ
仮矢:だから聞き飽きてんのよ、それ
仮矢:はい! さよなら~!
0:仮矢は引き金を引く
仮矢:よし、42番、駆除完了~
明同:調子はどうだ
仮矢:いやぁー、いいね!
仮矢:こんなに殺すのは初めてだから、最初はどうかと思ったけど、案外楽しいね!
明同:顔から伝わるぞ、仮矢
仮矢:どうだい? 殺しの感想?
明同:…15番が初めてだったが
明同:まるで人形のように動かなくなるものだな
仮矢:それ、俺も最初の殺しで思った
仮矢:でもさ、表情が暗いぜ、明同さん。ここまで来たってのに
仮矢:……あ、そうだ。
明同:なんだ、いきなり
仮矢:せっかくだったら音楽流したいよなー
明同:音楽?
仮矢:あれが聞きたい。カレトニア・シルクの「ワンダーキラーズ」
明同:カレトニア・シルク?
仮矢:俺の好きなアーティスト。ジャズの
明同:クラシックのほうが落ち着く
仮矢:いやぁ、落ち着いたら、台無しだぜ? こんな大仕事やってるのに
明同:仕事は遊びじゃない
仮矢:仕事だから遊ぶのよ
仮矢:ってことで、ミュージックスタート
明同:おい、いつの間に流すように設定した?
仮矢:さっき、イヴちゃんに頼んで、ちょちょいと流すようにしてもらったのさ
明同:お前というやつは……
仮矢:で? どう? この曲?
明同:…
仮矢:いい感じ?
明同:好きな曲と、似ているな
仮矢:よし。じゃあ駆除再開
仮矢:ほれ、あそこにさっそく害虫が
0:
仮矢:ようし! えーっと? 32と79と82かな? はい三人まとめてパイナラ!
明同:59番、64番。駆除完了
明同:悲鳴の多いテーマパークだ
仮矢:あー、明同くん。そっち行った
明同:お前、殺し屋だろう。簡単に逃がすなよ
仮矢:フツーに殺したってつまんないでしょ
仮矢:って後ろぉ! 明同さん!
明同:っ!
仮矢:おおーあっぶない! イヴちゃんのおかげで助かったね
明同:助かった、イヴ
明同:…68番、ナイフを持ち込んでいたか。抑えておけ
明同:……やけに暴れ回るな。なんだ? 何が言いたい?
明同:「このエゴイストが」、か。口が絶えないな
明同:データを見ると、お前はその暴言で、3人を自殺に追い込んでる
明同:ネットでもリアルでも
仮矢:はい、バーン!
0:仮矢が、68番を射殺
明同:68番、駆除完了。
仮矢:さぁさぁ、ノリよくいこうぜ、明同取締役
明同:ああ
0:
仮矢:さてさてどーこに隠れたかなぁ、出ておいで~出ておいで!
仮矢:あー見つかっちゃったねぇ残念! はいさよならー!
仮矢:えっーと。32と33番、駆除完了~!
明同:69番……あぁ、あの会社の社長か
明同:どうだ? 権力をもって、弱者に怒りをぶつける気分は?
明同:自殺率上昇に貢献してしまっているのは、お前達のような、資本主義に乗っ取った世界で、忠実に権力を持った連中なのかもな
0:明同は69番の額に撃った
明同:……69番。駆除完了
0:
仮矢:あー20番くん、頭がひょっこり出てるよ~ はい、バーン!
0:仮矢、20番を射殺
仮矢:……よしよし、生きてないな。20番、駆除完了!
明同:49番。あぁ、嘔吐(おうと)しているのか
明同:そのまま動かず、吐いててくれ
0:明同、49番射殺
明同:49番、駆除完了
仮矢:あー明同さん! 13と95! そっちに行った!
明同:あそこか
仮矢:おっけ! 反対側から追い込むね~!
明同:逃がすなよ?
仮矢:よし、よし、よーし! これで挟み撃ち
仮矢:えっと、俺が13を撃つ?
明同:どっちでもいいだろ
明同:なら、俺が95か?
仮矢:ま、とにかく終わらせようぜ!
仮矢:はい、バキューン!
0:仮矢が95番を射殺。明同は13番を射殺
仮矢:……ん? あれ? こっちが95番か!
明同:おい、13番を撃つんじゃなかったのか?
仮矢:逆だったわ~、はは!
明同:仕事なんだから、きっちりこなしてくれ
仮矢:はいはいすいませーん。明同取締役殿~!
明同:次、行くぞ
0:
仮矢:あーりゃりゃ。そこ、行き止まりじゃんよー
仮矢:ざっと、10人……拳銃は面倒だな
仮矢:じゃ、こっちの散弾銃で
明同:虫が大量に、一つの場所に集まるのは見たことがあるが
明同:形が人間だと、こうも気持ちが悪いものか
仮矢:逃げ場がないのに~壁のほうにみんな寄っちゃってさぁ
明同:これは……あれか。おしくらまんじゅうというやつだな
仮矢:おっしくらまんじゅう~! 押っされて泣くな!
仮矢:おっしくらまんじゅう~! 押っされて泣くなぁ~!……こんな歌だっけ?
明同:俺に聞くな。検索しろ
仮矢:それもそうだな!
明同:にしても、どいつもこいつも、自分だけが助かりたい気持ちでいっぱいか
明同:…「お前が先に死んでこい」「私は死にたくない」
明同:人に毒をばらまいておきながら、その態度か
仮矢:あ、なーんかいってるぞぉ~? 12番君、なんだって?!
仮矢:「元の生活に返してください…?」と、ねぇ
仮矢:でもさ、あんたらその、元の生活で、人を殺しちゃってるわけよ?
明同:12番は…家族を一人、29番は会社の部下を一人、己の毒で殺している
仮矢:だからねぇ、測定値でマイナスが出てる以上、もう無理なんだって
明同:システムの話をしても、わからんだろう
仮矢:ま、それもそっか! じゃ……とっとと掃除を
仮矢:ほれ! バキューン!!
0:散弾銃を撃つ仮矢
仮矢:ひやぁ、悲鳴がうるさいのなんの
仮矢:ちょーっと黙ってくれないかなぁ~!
仮矢:こっちは仕事してるの!
仮矢:ほれ、ばきゅ~ん!
0:さらに散弾銃を撃つ
明同:……片付いたか?
仮矢:はい、終わりましたよ~
仮矢:えーっと、12、29、70、3、6番と
仮矢:7、56、32、81…67番、で合ってる
明同:まだ生きてるぞ
仮矢:え?
明同:ここ
0:明同がぴくぴく動いてた6番を撃つ
仮矢:しまった……俺としたことが…申し訳ねえ! 給料カットは勘弁!
明同:そこまでしないさ
0:明同は6番を撃った
明同:6番、駆除完了
明同:体が微妙ながら、動いていた
仮矢:部下の尻拭(しりぬぐ)い、さながら見事でございます
明同:うるさい、給料減らすぞ
0:
仮矢:おおー! メリーゴーランドに隠れてたのかぁ! 愛しの王子様がやってこればよかったね!
仮矢:でも君のような人間に、王子さまは来ないと思うけどなぁ~!
明同:見えないところでうずくまっていたか
明同:そうやって、お前が傷つけた人も、うずくまって、死んでいったんだよ
仮矢:はい、52番、駆除終わり!
明同:73番、駆除完了
0:
明同:そこにいるのは、48番か
明同:イヴ、その女、48番を抑えろ
仮矢:おっと、48番以外にも、37番と50番もいるじゃないか~!
仮矢:あー! ちょっと待ってよ~! 楽しく鬼ごっこしようぜ~!
明同:……動くな、48番。
明同:その目で、色んな人間の、悲しくも追い込まれた姿を見たはずだ
明同:お前が目に入れてきた人間たちは、自殺している
仮矢:37番ちゃん、こけちゃった~! あーいたいねぇ、痛い
仮矢:すりむいちゃったねぇ。よしよし、泣かないの~!
仮矢:……と見せかけて、はいバーン!
0:37番を射殺する仮矢
明同:48番、震えているぞ、どうした?
仮矢:50番ちゃ~ん! そこの37番、あと48番とも友達だっけ? じゃあ君も一緒に、さよならー!
明同:安心しろ、その目を失えば、次はきっとまともな人間になれるさ
0:仮矢は50番を射殺した
0:明同は48番の目を撃つ
明同:汚い声をあげるな
明同:もう一発
0:明同は48番の頭を撃って殺した
0:
仮矢:さてと。これで、最後の一人か!
仮矢:100番のあなた!よく逃げ切りましたな~!
明同:お前で最後だ
仮矢:って、もう口が震えまくってるじゃん。え?なんだって?
仮矢:ふむふむ……「なんでこんなむごいことをするんだ!」って言ってるけど?
明同:むごいこと? 見えない事を影でするほど、むごいことはないだろう
仮矢:「いいじゃないか! そんなもの死んだ奴が悪いんだから!」ってさ
明同:……どこまでも、腐ってるな
明同:いいか。誰かがやらなければと、ゴミと勘違いした人間は消えない
明同:世の中には、そんなゴミのような人間が多すぎる
仮矢:「それは、お前達が勝手にやってることだろ! 人間がやることじゃない!」……ってよ
明同:その反論を優しく聞き入れていたら、何も変わらない
明同:変えるのは、行動だ
明同:いくら無駄な奴に反論を用いても、平行線
明同:アクションを起こした瞬間、論理を講じる口は消えうせる
仮矢:「この悪魔め! 死ね!」……ですと
明同:来世は
明同:優しい言葉を使えるようになっているといいな
明同:さようならだ
0:明同は、100番を射殺した
明同:100番、駆除完了
仮矢:ありゃ―殺しちゃった。もうちょっと長引いても面白そうだったのに
明同:仕事だといったろ
明同:もう、靴も血まみれだ
仮矢:そうね。後ろを見れば
仮矢:大量の死体と、血に染まったテーマパーク
仮矢:狂気の殺人犯なら、ここで高らかと笑うもんかな
明同:いっそのこと、笑ってみたらどうだ
明同:お前なら似合うぞ
仮矢:そういう明同さんも、全然、手が震えてないじゃない?
仮矢:初めて人殺しをした人間……というか、こんなに殺しまくった奴が、そんな平気な顔してねえぜ?
明同:曲のおかげかもな
明同:気分は、良かった
仮矢:……そしたら、今度ライブヴァージョン聴かせてやるよ
明同:楽しみにしている
明同:しかし……時間のかかる大仕事だった
仮矢:これ、ナマの殺人事件だったら
仮矢:ワールドサイコキラーリストへ、殿堂入りかもなぁ。でも
明同:そうはならない
明同:テーマパークで大規模な爆発事故と火災
明同:社長のイベントに呼ばれていたVIP100人は全員死亡。これが筋書きだ
仮矢:おっそろしい事故なことで
明同:あとは今から、尼羅(あまら)の息がかかった「人間たち」が来て
仮矢:大量殺人事件として処理されず、殺されなかったら、合格と
0:そこに、黒スーツや、コートを来た複数の人間がやってきた
明同:……来たぞ
仮矢:はてさて、どうなることやら
明同:死ぬかもしれないな
仮矢:そうですなー
明同:……何? 合格?
仮矢:マジか!
明同:尼羅(あまら)はご機嫌だったようだな
仮矢:ふぅ、助かった~
明同:倒産は免れたか
仮矢:お……イヴちゃんも、特に捕まってもいねぇ
仮矢:こりゃ、本当にOKってことだな
明同:なら、戻るか
仮矢:余韻に浸ろうぜ?
仮矢:100匹駆除ですよ、一気に
明同:駆除はこれからも続く。その大仕事が一つ、終わっただけだ
明同:取締役は忙しいんだよ
仮矢:かーっ。せっかく現場を、こんなにどっぷり体験したのに
仮矢:さすが明同取締役殿
明同:……悪いものじゃなかったな
仮矢:へ?
明同:現場に出るのも、悪くないと言ったんだ
仮矢:じゃ、取締役の現場デビューも近いという事で
明同:何を言ってる。お前が現場に出向くのに変わりないぞ
仮矢:やっぱりぃ?
明同:それに、社員も1人増える
明同:2人もいるなら、管理者がいなければ
仮矢:ありがとうございます、明同取締役殿~
明同:その調子で、これからも頼む
仮矢:こちらこそ
仮矢:そして? …尼羅(あまら)からのお咎めも無く……シナリオ通りなら
明同:これから火の海だ、ここは
仮矢:なら、海を拝んでかえる?
明同:メディアがカメラを持ってやって来る、見つかれば面倒なことになるな
仮矢:冗談冗談
明同:なら、戻るぞ
仮矢:そういや、マスヒューマの社長はどうすんだ?
明同:ああ、その件か
明同:これからイヴに、始末させる
仮矢:え?あの子にやらせるの?
明同:最後の面接テストだ
0:
0:掃転使 社内
仮矢:ようし! ゴミ掃除終わり!
仮矢:いやぁ、たくさん片付けると、スッキリするよね~!
仮矢:お、イヴちゃんお帰り~
仮矢:どう? 仕事後した後って、いい空気感じない?
明同:駆除は終わったようだな
明同:顔で分かる。合格だ
仮矢:これで、イヴちゃんも仲間入りで。よろしくね~
明同:ニュースはどうだ?
仮矢:今見てるぜ
仮矢:……マスヒューマで大火災が発生。原因は調査中
仮矢:当時、VIP客限定のイベントだったが、100人の死亡が確認されている。火の手は予想以上に速く、外に出られなかった模様
仮矢:歴史に残る大事故ですなー。というわけで、これにて一件落着~!
明同:やれやれ、報告が長くなりそうだ
明同:世の中の捨てられるべきゴミ共は、まだまだ多い
明同:環境汚染は、止めなければな
明同:それが、掃転使の仕事だ
仮矢:さぁ、クリーンな世界を目指して、頑張っていきまっしょ~い