台本概要
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タイトル | 「白い悪魔と黒い魔女」 |
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作者名 | 精霊の守り人 (@seirei_3) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男2、女2、不問1) |
時間 | 70 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
これは地球とは違う別の星の物語。 その星には「白い悪魔」と「黒い魔女」の英雄としての物語が伝説として伝えられてきた。 しかし実際のお話は・・・ 思いと想いが交錯するダークファンタジー。 ・一部グロイ描写があります。苦手な方はご遠慮ください。 ・世界観にそぐわない過度なアドリブはお控えください。 ・この話はフィクションです。 途中でお母さんが出てきますが、読まなくてもメアリー役の方が読んでもどちらでも構いません。 簡単なワード説明 ・スリント 固有スキルのようなもの。これにより身分が決まる。 ・「天贈(スリント)の儀式」 五才の時に行われる。スリントの判別を行う儀式。 ・「リナント帝国事件」 15年前にリナント帝国で起きた事件。国の半分程度が壊滅状態となった。 ・「白い悪魔」 各国を恐怖に陥れた連続殺人犯。この物語の中では連続殺人が起きていたのは8年前なので、ただの都市伝説となっている。 ・「黒い魔女」 15年前の「リナント帝国事件」を起こした犯人。 ・スリントムーン 16年に一度、月が最も黒く輝く日のこと。 ・帝国警備隊 警察のようなもの。 371 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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アンジュ | 女 | 78 | 年齢18くらい アステリア帝国の王女。 お転婆で好奇心旺盛な性格。俗にいうヒロイン。 リアムと婚約している。 |
リアム | 男 | 86 | 年齢18くらい リナント帝国の王子。 真面目で礼儀正しい。 アンジュと婚約している。 |
メアリー | 女 | 106 | 年齢?(見た目は20歳くらい) 無感情。 |
ジェーラドス | 男 | 68 | リナント帝国の王。 リアムのお父さん。 彼は自分のスリントを「占い」だと言っている。 温厚だという噂だが、国民は彼の姿を見たことがない。謎。 |
シェイ | 不問 | 114 | 年齢15歳 アルビノの少年(少年の声であれば男女どちらでも可) 過去についてのトラウマがあるためしゃべるのが苦手である。 一般的な15歳よりも知能が低い。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
リアム:かつてこの世界にはスリントすなわち固有スキルと呼ばれるものが存在した。
リアム:その固有スキルはあまりに力が強く、スキルにより身分が別れる仕組みとなっていた。
リアム:そしてその「天贈(スリント)の儀式」は5歳の時に行われる。
リアム:努力なんて報われるわけがない。そんな世界だった
リアム:この話は今となっては「英雄」の物語として知られているけれど、実際は違う
リアム:本当は「悲劇」の物語である
リアム:君も聞いたことがあるはずだ。「白い悪魔」と「黒い魔女」の伝説を
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0:「白い悪魔と黒い魔女」
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0:リナント帝国城内
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リアム:(ノック音)お父様、リアムです。失礼します。
ジェーラドス:戻ったかリアム!どうだ「白い悪魔」の情報は手に入ったか?
リアム:ごめんなさいお父様。今日も白い悪魔についての情報を手に入れることは出来ませんでした。
ジェーラドス:そうか...これで私の占いが外れたのも...
リアム:お父様。白い悪魔とは都市伝説の存在では無いのですか?
ジェーラドス:いや、実在する。実際、リナント帝国内でも白い悪魔による殺人は起きているからな。
リアム:...お父様の占いが外れるだなんて。
ジェーラドス:白い悪魔はそれほどに手強い存在なのだ。
リアム:...あの、そういえば、白い悪魔のスリントって??
ジェーラドス:あー教えてなかったな。スリントは...
リアム:スリントは...?
ジェーラドス:(間をあけて)はっはっはっ!可愛いやつだな
リアム:え?、、えぇ?
ジェーラドス:わかっておらん。
リアム:わ、わかってない。そ、そんな未知な存在を探してるんですか?!
ジェーラドス:落ち着けリアム。白い悪魔とはいえ所詮人間だ。...戦いに負けたことは?
リアム:あり...ません。
ジェーラドス:なら大丈夫だ。引き続き「アルビノ」の人間は見つけ次第、あぁどんな状態でもいい。連行するように、
リアム:もちろんです。とはいえ、出会ったことはありませんが...
ジェーラドス:...(明るく)ところで国の復興は順調かい?
リアム:え?あ、あぁ順調ですよ。この世界にスリントがあって良かったなとつくづく思います。
ジェーラドス:それは良かった...
リアム:15年前の事件、本当に残念です。...僕は当時3歳だったのでほとんど覚えていませんが...
ジェーラドス:そうだな。だが、
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ジェーラドス:妻を殺した「黒い魔女」だけは許さん
リアム:(ゾッとして言葉が詰まる)っ...そ、その、黒い魔女って...処刑されましたよね?
ジェーラドス:そうだ。しかし最近わかったことがあってな。今日はその話をするために呼び出したんだ。
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シェイ:(N)夢を見ていた
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0:過去回想(8年前)
0:森の隠れ家
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メアリー:今日からここがあなたの家よ
シェイ:...僕の、家?
メアリー:(ドアを開けて)さぁ入って
シェイ:...閉じ、、こめるの?
メアリー:閉じ込める?どこに何を閉じ込めるのかしら?
シェイ:僕..を、そこ、に(燃えている暖炉を指さす)
メアリー:そんなことしないわ。第1そんなことしたら...
シェイ:僕は...死ね、ない。でも...
メアリー:でも?
シェイ:(震え出す)僕の...こと、、引きとる、人...みんな...死ん、じゃう。
メアリー:...
シェイ:お姉さん、も...僕が、殺す、かも、しれない...からっ(僕の、ことは)
メアリー:(かぶせて)シェイ。
シェイ:っ!あ...の、ごめん、なさい
メアリー:怒っているわけじゃないわ。安心して
メアリー:私感情が表に出ないから怒っているように見えるかもしれないけれど(シェイを抱きしめようとする)
シェイ:(怯えて目を瞑る)っ...!
メアリー:あ、ごめんなさい。怖がらせたかしら
シェイ:ち、ちが、くて...あ、あのっ
メアリー:大丈夫よ。ここはもうあなたのお家なの。誰も貴方をいじめないし攻撃してくる人もいない。
シェイ:...ほんと、に?
メアリー:えぇ。本当よ。...ようこそ。そして、おかえりシェイ。
シェイ:(涙が出てくる)あ...あぁ、、
メアリー:おかえりと言われたらただいまと言うのよ
シェイ:た、だいま。お、お姉さん
メアリー:えぇ...そうねぇ。
メアリー:私のことは先生と呼びなさい
シェイ:せ、んせい
メアリー:そう。さぁ家に入ってご飯でも食べましょ
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メアリー:よく眠れたかしら?おはよう
シェイ:...おはよう先生
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シェイ:(N)とても懐かしい夢だった。
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0:アステリア帝国城内
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アンジュ:あーー!!つまんない!
アンジュ:どうして女の子は女の子らしくしてなきゃ行けないのかしら?意味がわからないわ!
アンジュ:絶対に馬に乗ったり剣を振るったりしたほうが楽しいと言うのに、、
アンジュ:刺繍にダンスに読書に...
アンジュ:もう!飽きたわ!!!!
アンジュ:唯一の楽しみと言えばスリントを使って人の心を読むことだけれど...
アンジュ:城内の人の心なんて読んだって面白くないし...
アンジュ:何か心躍る楽しいことは起きないかしら...
アンジュ:例えば...
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0:母親「アンジュ?刺繍は終わりましたの?」
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アンジュ:やってます!!!やってますわ!!
アンジュ:あーもう!ほんとに!やってられるかー!!
アンジュ:お、あそこにお馬さんが...
アンジュ:ふふっ。1日くらい...いいよね?
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0:リナント帝国城内
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リアム:それでお父様、お話と言うのは?
ジェーラドス:「黒い魔女」のことなんだがな...生きてるかもしれん
リアム:なっ!このリナント帝国をほとんど壊滅状態にしたという黒い魔女がですか?!
ジェーラドス:あぁ、そうだ
リアム:し、しかし...彼女は処刑されたはずでは?その光景はよく覚えてますし...
ジェーラドス:...とにかく実際見てもらった方がいいだろう。着いてきなさい
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0:リナント帝国城内地下牢
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リアム:...酷い場所だ
ジェーラドス:彼女の遺体はここの焼却炉の中に閉じ込めていた
リアム:閉じ込めていた...?なぜ燃やさなかったんです?
ジェーラドス:死んでいるとはいえ魔女だ。呪われるかもしれん。その影響で誰も燃やせなかったんだ。
リアム:...ははっ。そんな、ばかな
ジェーラドス:開けて確認してみると良い
リアム:...(恐る恐る開ける)
リアム:っ?!何も、無い!
ジェーラドス:それどころか中は綺麗になっている。おかしいとは思わんかね?
リアム:死体が逃げ出したとでも言うんですか...?
ジェーラドス:どーやったかは知らんがな。相手は「黒い魔女」だ。...(小声で)必ず見つけださねば
リアム:...わかりました。つまり明日からは「白い悪魔」と「黒い魔女」この2人の捜索をすればいいんですね?
ジェーラドス:よくわかってるじゃないか!さすがは我が息子
リアム:お父様のお役に必ずたちます!では僕は早速訓練に行ってきます!
ジェーラドス:あぁ。怪我に気をつけるんだぞ
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ジェーラドス:いつから私は騙されていたのだ...
ジェーラドス:とにかく早く見つけなければ...大変なことになるぞ...
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0:森の隠れ家
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メアリー:シェイ。顔色が優れないわね。夜更かしでもしてたの?
シェイ:いや、昨日はちゃんと寝たよ。...ちょっと昔の夢を見て...
メアリー:...ちょうどパンが焼けたところなの。はちみつかけるわよね?
シェイ:もちろん。ありがとう先生
メアリー:(N)シェイが生まれてから共に暮らすようになるまでの7年間、彼への扱いはその辺にいる虫やネズミ、雑草より酷かったように思う。
メアリー:(N)スリントを使って彼の能力、過去を覗き見た。それは、到底人間の耐えうるものではなかった。
メアリー:(N)8年たった今でも心の傷は残ったままなのだろう。
メアリー:(N)そう、15年前彼の誕生日にあんな悲劇が起こらなければ。私が...
シェイ:(食べながら)...先生?食べないの?
メアリー:...ごめんなさい考え事をしていたの。一緒に食べましょう。
シェイ:...先生調子悪いの?休む?
メアリー:先生は調子悪くならないから大丈夫よ
シェイ:...確かに。先生そういえば今日どこか行くの?
メアリー:今日は街へ買い出しに行くけど、どうしてそう思ったの?
シェイ:え、あ、いや。...なんだか今日は綺麗、だから
メアリー:あら、お世辞を言えるようになったの。成長したわね。
シェイ:...(小声で)子供扱いしないでよ
メアリー:ふふっ。今日は自由な日にするから好きにしてね
シェイ:...わかった。先生、気をつけてね
メアリー:ありがとう。あ、そうだ。シェイ無理はしちゃダメよ。
シェイ:っ...バレてたの?
メアリー:毎日見てるんだから分かるわよ。あなたのスリントの制御が難しいのは知ってるわ。
メアリー:でも、自分のことは傷つけないであげて?
シェイ:気を、つけます
メアリー:じゃあ行ってくるわね。お留守番頼んだわよ
シェイ:うん。行ってらっしゃい先生
0:どこかの森
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アンジュ:あれ...ここどこだろう、
アンジュ:(可愛こぶって)お城に閉じ込められていたプリンセスアンジュは、誰にも見つかることも無く無事に脱出できたのであった。
アンジュ:だがしかーしっ!まさか、森で迷子になるなんて...
アンジュ:木に登ってみたらなにかわかったりするかしら?
アンジュ:(木に登る)よっと...
アンジュ:あのー!!だれかー!いますかー?
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アンジュ:まぁ、いる(わけないよね)
シェイ:(割り込んで)何、してるんですか?
アンジュ:ひっ!?おばけ!?わっーー!(木から落ちる)
シェイ:っ!危ない!!
アンジュ:痛ー...くない?あれ?でも今私、落ちたよね...?
シェイ:っ...大丈夫、ですか?
アンジュ:(飛び退く)ごめんなさい!怪我しちゃってますね...すぐに治しますから!(手を近づける)
シェイ:っ...(何かをこらえるように目を瞑る)
0:シェイ(心)「怖い。どうしてこの森に人がいるんだ?そもそもここは...」
アンジュ:あ、ごめんなさい。初対面で急に手を近づけられたら誰だって怖いものよね。
シェイ:(凄く驚いた顔をして)...い、いえ。...あ、(あの)
アンジュ:(ブツブツと独り言を言うように。割り込んで)そうよね、やっぱりちゃんと自己紹介しないと治される側も怖いわよね
シェイ:あの?どうしましたか?
アンジュ:私の名前はアンジュ。アステリア帝国の王女よ。
シェイ:おう、じょ...王女様?!
アンジュ:そう。そして私のスリントは、「だ」じゃなくて。...「天使」よ
シェイ:天使...ってなんですか?
アンジュ:天使はね...
アンジュ:(N)説明しようとしたその時、強い風が吹いた。その時深く被っていた彼のフードが脱げ彼の顔が露(あらわ)となった。
シェイ:っ!(すぐにフードを被る)
アンジュ:...
アンジュ:(N)私はしばらくの間見惚れて動くことが出来なかった。なぜなら彼は白雪のようにとても美しかったから
シェイ:(怯えて)ご、ごめ(んなさい...)
アンジュ:(さえぎって)とても綺麗ね!
シェイ:...ぇ?
アンジュ:(見惚れて)うふふっ。まるで白雪姫のよう!いや、男の子だから白雪王子?とにかく!とても素敵!こんなに綺麗な人初めて見たわ!
アンジュ:(N)艶のある白髪。女の子のような白いまつ毛。ガラスのような澄んだ青色の瞳。透き通った白い肌。
アンジュ:(N)こんなに綺麗な男の子は見たことがなかった。私はこの時、一目惚れと言うやつをしたのかもしれない
シェイ:(照れて)あ、ありがとう?
シェイ:(N)僕は今までだれかにこの容姿のことを褒められたことは無かった。
シェイ:(N)気持ち悪い。汚い。悪魔。死神。呪いの子。今まで会った人たちはみんなそう言っていた。
シェイ:(N)だから反応の仕方が分からなかった。でもなぜだかとてもくすぐったい気持ちになった
アンジュ:あなたの名前はなんて言うの?
シェイ:...シェイ
アンジュ:素敵な名前ね。あっ!そうだ忘れてた!怪我治すわね!
シェイ:いや...ありがとう。
シェイ:(N)初対面なのに。人間なんて皆同じだと思ってたのに。どうして大丈夫だと思ってしまったのか。
シェイ:(N)僕には分からなかった。
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0:リナント帝国城下町
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メアリー:(N)リナント帝国は元の形を取り戻しつつあった。
メアリー:(N)そう。元の形を
リアム:「白い悪魔」と「黒い魔女」についての情報を持っているものは直ちに僕に言うように!
メアリー:(小声で)「白い悪魔」と「黒い魔女」。あの王はなぜその情報を求めているのかしら
リアム:お、そこのお姉さん。見ない顔だね。もしかして観光で来たのかい?
メアリー:えぇそうよ。最近になってようやくこの国へ観光に来れるようになったから
リアム:15年前の事件で国は壊滅状態になり、さらにその魔力の影響でなかなか復興が進まなかったからね
リアム:まだまだ復興途中だけど、ゆっくりしていってくれ
メアリー:...えぇありがとう
リアム:あぁ、そうだお姉さん
メアリー:なにかしら?
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リアム:「白い悪魔」と「黒い魔女」について何か知っているかい?
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メアリー:...白い悪魔は都市伝説でしょ?それに黒い魔女って15年前の事件の後、処刑されたんじゃなかったかしら?
リアム:そうだなぁ。お姉さん綺麗だから特別に教えてあげるよ
メアリー:...
リアム:お姉さんは死体がいなくなった。って言ったら信じる?
メアリー:信じないわ。そもそも死体は動かないじゃない
リアム:だよね。でも実際僕はこの目で確認した。死体が置いてある場所には何も残っていなかった。
リアム:おかしいよね。まるで魔法のようだ。まぁその死体は黒い魔女なわけだから魔法は使いたい放題なんだけどね
メアリー:...つまり、黒い魔女は生きている。と言いたいの?
リアム:まぁ確証はないけどね。
メアリー:なるほど。...私も探しておくわ
リアム:お姉さんあともうひとついいかい?
メアリー:...なに
リアム:お姉さん僕と会ったことある?
メアリー:ないわ。ナンパかしら?
リアム:おっとごめんなさい。そんなつもりはなかったよ。
メアリー:お探しの人が見つかるといいわね
リアム:ありがとう。あなたの旅路に幸福がありますように
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メアリー:...そろそろ潮時かしら
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ジェーラドス:ふはは...
ジェーラドス:ふははははははははははは!
ジェーラドス:見つけたぞ!黒い魔女!!!
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メアリー:(N)私はこの国の王を元王をを絶対に許さない
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0:数ヶ月後。どこかの森
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シェイ:先生。大丈夫?
メアリー:どうして?いつも通り元気よ
シェイ:いや、大丈夫ならいい、けど
メアリー:少なくともシェイよりは元気よ。何度も言うけど自分にもう少し優しくしなさい。無理しすぎよ
シェイ:僕は...大丈夫だよ。無理することくらい、なんてことない
メアリー:そういう(ことじゃないわ)
シェイ:(遮って)それより先生。
メアリー:どうしたのかしら?
シェイ:...いや、なんでもない
メアリー:...(何か言いたいことが)
アンジュ:(メアリーとセリフかぶせて)こんにちはー!
シェイ:アンジュ...何度も抜け出して怒られないの?
アンジュ:大丈夫大丈夫!既に何回も抜け出してるのに怒られないんだもの!不思議だよね
メアリー:アンジュちゃんこんにちは
アンジュ:メアリーさん!お久しぶりです!
アンジュ:(N)シェイにあったあの日から何度かここへは遊びに来ていた。私たちはすっかり仲良くなっていた
メアリー:不思議ね。ここの森は結界で人は入れないようになっているんだけど、どうやらアンジュちゃんには効かないみたいね
アンジュ:えっ!そーなんですか!な、なんでだろう。知らなかった...
メアリー:恐らくあなたのスリントに関係してるんでしょうね
アンジュ:っ!そ、そーかもですね
シェイ:...
メアリー:そうね、シェイ今日の勉強はまた後でにしましょ。せっかくアンジュちゃんが来たんだし
アンジュ:え!いいんですか!
シェイ:...わかりました
メアリー:それじゃアンジュちゃんごゆっくりね。お城には早く戻るのよ
アンジュ:はい!ありがとうございます!
シェイ:...
アンジュ:...少し散歩でもしよっか
0:どこかの森
0:
アンジュ:何か悩み事?
シェイ:え?悩み事なんて、ないよ
アンジュ:そっか...
アンジュ:(N)彼は何か悩んでいると言うより抱え込んでいるようだった。
シェイ:...ねぇ
アンジュ:ん?どうしたの?
シェイ:...僕のスリント教えてなかったよね
アンジュ:え?確かにそうだけど、急にどうしたの?
アンジュ:(N)今日の彼はどこか違った。どこか悲しそうで、そして何かを壊してしまいそうな
シェイ:僕のスリントはね
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シェイ:「死神」だよ
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アンジュ:(N)時が止まったようだった。私たちの周りの音だけ消えてしまったようだった。
0:
シェイ:僕が...「白い悪魔」なんだ
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アンジュ:ぇ?
アンジュ:(動揺して)「白い悪魔」って、あの「白い悪魔」?
シェイ:...うん
アンジュ:あ、あはは。シェイが?そんなわけないじゃん!だって、だってシェイは...
シェイ:これで、信じてくれる?
アンジュ:(N)そう言うと彼は近くにあったアロエの花を手に取り
アンジュ:(N)その手の中で枯らしてしまった
アンジュ:...本当に?
アンジュ:(N)白い悪魔なんてただの都市伝説だと思っていた。本当に、本当に現実にいたなんて
アンジュ:(N)名前の由来にも納得が行く。彼は白雪のように白く、そして悪魔の契約のように寿命をいとも簡単に吸い取ってしまうのだから
アンジュ:(深呼吸して)...あなたが白い悪魔だとして、なぜ今それを私に話そうと思ったの?
シェイ:友達を辞めようと思って、
アンジュ:ぇ?どういうこと?
シェイ:...僕のスリントは、近くにいる人の生命力を無意識のうちに吸ってしまう
シェイ:10年もすれば、僕のそばにいた人の寿命は1年短くなるんです
シェイ:それに僕はまだ(このスリントを)
アンジュ:(遮って)そんなの関係ない!アルビノという病を患ったのはたまたま。「死神」というスリントを授かったのもたまたまでしょ?
アンジュ:たとえあなたが白い悪魔だったとしても私は...私は!あなたの友達でいたい!
シェイ:っ!...(バレないように涙をこらえて)
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シェイ:それは...
シェイ:僕がたくさんの人を殺した「殺人鬼」だとわかっていても、同じことが言えるの?
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アンジュ:っ!それは!...そ、れは
アンジュ:(N)彼の心の声は混ざりに混ざった感情でききとることが出来なかった。その時の私は動揺しすぎて何も気づくことが出来なかった。
アンジュ:(N)彼の発する声が震えていることに、彼が助けを求めるような悲痛な顔をしていることに気づけなかった。
シェイ:...分かったなら、出て行ってくれ
アンジュ:どうして、どうしてなの...
シェイ:二度と、来ないでくれ、、
アンジュ:っ!なんでそんなこと言うのよ!
シェイ:...
アンジュ:どうして何も言わないの?
シェイ:...
アンジュ:どうして!理由も教えてくれないの!
アンジュ:(涙を堪えながら)...この人殺し!
シェイ:っ...
アンジュ:あ...ぁ、あの、ごめんなさい(走り去る)
アンジュ:(N)私は冷静ではなかった。彼に1番言ってはいけない言葉を言ってしまった
シェイ:(泣きながら)...ごめん、なさい
シェイ:(N)彼女と色んな話をするのは楽しかった。でも同時に僕の胸を締め付けた
シェイ:(N)彼女はアステリア帝国の王女様だ。人殺しの僕が話していい相手ではない
シェイ:(N)それに僕は近くにいるだけで生命力を少しずつ吸ってしまう。彼女のためにも友達になるべきではなかった
アンジュ:"この人殺し!"
シェイ:(N)誰かに罵倒されても殴られても刺されてもなんとも思わなかった。思わないようにしていた。
シェイ:(N)期待しても自分が傷つくだけだから。それなのにどうしてこんなにも心が痛いのだろう
シェイ:(N)なぜ僕は泣いているのだろう
シェイ:(消え入るような声で)僕なんか...生まれてこなきゃ、よかった
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0:どこかの森
0:
メアリー:あら、アンジュちゃんもう帰るの?
アンジュ:っ...さすがにお母様に怒られそうなので...失礼します
メアリー:...気をつけて
メアリー:(N)彼女は私には理解ができない、とても複雑な表情をしていた
メアリー:なにがあったのかしら...
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0:
メアリー:シェイ。
シェイ:...先生。どうしたの?
メアリー:アンジュちゃん帰ったけれど、何かあったの?
シェイ:...別に、なにも、ない。
メアリー:そう
メアリー:(N)過去の経験からだろう。彼は感情を隠すのがとてもうまい。ただ、彼は嘘をつくのが苦手だ
メアリー:(N)私のスリントを使えば彼に何があったのかくらいは簡単に知ることが出来る。でも、そんなことをしようとは思わなかった
メアリー:(N)彼の顔は初めて出会った頃と同じような眼になっていたから
メアリー:授業を再会しようと思うのだけれど、できそう?
シェイ:もちろんです。先生
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0:
0:
0:アステリア帝国城内
0:数日後
0:
リアム:酷く沈んだ顔をしているね。可愛い顔が台無しだぞ?
アンジュ:うるさい...リアムには関係ない
リアム:プリンセスがそんな言葉を使うんじゃないよ。はぁ、、あれかい?失恋ってやつかい?
アンジュ:はぁ?!失恋なんか...してないし、
リアム:君ってやつは僕と婚約しているというのに外部で好きな人を作っていたとは...
アンジュ:...
リアム:それに何度も抜け出した挙句城からの外出を禁じられるとはね。なかなかにお転婆なプリンセス様だ。
アンジュ:だから、リアムには関係ないでしょ...
リアム:はぁ。そんで、誰に恋してたのさ?
アンジュ:白い悪魔。
リアム:へぇ婚約者に恋してた人を教えるなんてね。なかなか肝が据わってるじゃないか
リアム:白い悪魔ねぇ...
リアム:って!「白い悪魔」だって!?
アンジュ:リアムうるさい。そうだって言ってんじゃん
リアム:僕が情報を求めているのは知っていただろう?なんで言わなかった?
アンジュ:知ったの数日前だし...
リアム:はぁ。アンジュ、もしかしてだけど手配書と言うものをを見た事がないのか?
アンジュ:手配書?なによそれ?
リアム:これだからチヤホヤされて育ったプリンセスは...
アンジュ:何か言った?
リアム:いや、なんでも。それより...
アンジュ:何?出来れば話しかけないで欲しいのだけれど
リアム:どこにいたんだい?その白い悪魔は。それに誰といたんだい?彼の年齢は恐らく今15だろう?一人でいるとは到底考えられない
アンジュ:(小声で)そんなに若かったんだ...
アンジュ:別にどこにいても誰といてもいいじゃない。私は思い出したくない...
リアム:僕は情報を求めていると言っただろう?教えてくれよ?
アンジュ:嫌よ。そもそも私あなたとの婚約認めてないし
リアム:(トーンを落として)教えろ
アンジュ:っ...ちょっと、急にどうしたのよ
リアム:(小声で)やはり、「大天使」様相手にはこのスリントは効かぬか
アンジュ:リアム?何言って...
リアム:何って情報を求めているだけだ。どうかしたのか?
アンジュ:あ、あなた。誰?
リアム:誰って、見たらわかるだろう?リアムだ
アンジュ:そうじゃなくて...
リアム:あーはいはい。別にいいよ無理して教えろとは言わないさ。失恋中に悪かったねプリンセス
アンジュ:(N)私の目には一瞬知らない誰かが見えたように感じた。気の所為だろうか?
アンジュ:...それにしても、どうしてあなたのお父さんは「白い悪魔」を探しているの?手配書?だっけ?が出されてるなら帝国警備隊に任せたらいいじゃない?
リアム:帝国警備隊に任せたんじゃ処刑されてしまうだろ?
0:
リアム:利用するためさ
0:
アンジュ:どういうこと?
リアム:おっと、そろそろ時間だね。また話そうね。僕のプリンセス(去る)
アンジュ:なんだったの...
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0:
ジェーラドス:ふははは
ジェーラドス:ふははははははははは!
ジェーラドス:なるほどなるほど。ようやく謎が解けたぞ
ジェーラドス:さぁ、あとはどうやって手に入れようか
ジェーラドス:よくも泳がせてくれたな。「黒い魔女」メアリー
ジェーラドス:悪はしっかり裁かないとな
ジェーラドス:ふははははははは
0:
0:
メアリー:...
シェイ:先生?雪かき行かないの?
メアリー:もちろん。行くわよ
メアリー:(N)シェイごめんなさいね。私は正義のヒーローにはなれないの
0:リナント帝国のとある場所
0:0時頃
0:
メアリー:アリー先生ただいま。あの事件からもう16年になったのね
メアリー:今日で全てを終わりにするわ
ジェーラドス:やぁ。久しぶりだねお人形さん。いや...
ジェーラドス:「黒い魔女」と呼ぶべきかな?
メアリー:王が直々に来てくれるなんて光栄ね。あと、私その名前は嫌いなの。やめてくれる?
ジェーラドス:そう怒らないでくれよ。まぁ無理もないさ
ジェーラドス:君はアリーの友達のお人形さん。アリーの影の存在でしかないのだから。
メアリー:だからなんだって言うの?
ジェーラドス:チョーカーの下に隠してるんだろ?処刑で首を切られた傷跡を
ジェーラドス:確かに君はアリーの友達のお人形さんだった。でも本当に「人形」だとは思わなかったな
メアリー:やっと気づいたのね
ジェーラドス:そう言うなよ。感情がないからお人形さんと呼ばれているだけだと思っていたんだ。飛んだ思い込みだったよ
メアリー:私を見つけるのに随分時間がかかったようだけどなぜ焼却炉の確認をしなかったのかしら?
ジェーラドス:君が気づかないように魔法をかけたんじゃないのか?
メアリー:あら、気づいてたの?
ジェーラドス:気づかないわけないだろ。なんせ君の魔力が弱ってきているからな
メアリー:...
ジェーラドス:おや?図星かい?ただの推測だったんだがな
メアリー:それよりも、私の質問に答えてくれるかしら?
ジェーラドス:なんだい?お人形さん?
メアリー:どうしてこの場所がわかったの?
ジェーラドス:なぜって、理由は3つある
ジェーラドス:ひとつ、最近になって始めて黒い魔女と白い悪魔についての情報を掴んだ。
ジェーラドス:ふたつ、何故かお人形さんが封印を弱めてわざと見つかるようにした?それとも弱くなったの方が正しいのか?
メアリー:冗談はいいから。続けて
ジェーラドス:つれないねぇ。みっつ、今日はスリントムーン。16年に1度月が最も黒く輝く日だ
メアリー:そうよ。よくわかってるじゃない。ちゃんと掌の上で踊ってくれたのね
ジェーラドス:お人形さんに踊らされるのは気に食わないが、確かにそのようだ。私はずっと誑(たぶら)かされていた
メアリー:復興をおくらせたのも、死体をわざと無くしたのも、黒い魔女についての情報を与えたのも全部このためよ
メアリー:あなたに私と同じ絶望を味わってもらおうと思って
ジェーラドス:...ほぅ
メアリー:スリントムーンそう呼ばれる理由は知ってるわよね?
ジェーラドス:もちろん。スリントの威力が普段の5倍になる。あるスリントにとっては有利な、別のスリントにとっては不利になる月の事だろ?
メアリー:よくわかってるじゃない。
メアリー:私はね、ずっとこの時を待ってたのよ。何せ私はただの人形。どうせ長くは生きられない。だから...
0:
メアリー:16年前の事件をもう一度起こすわ
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ジェーラドス:分かってはいたが...手強そうだ
メアリー:(N)今回こそは失敗しない
0:
0:どこかの森
0:
0:過去回想(夢の中)
シェイ:(N)ずっと押し殺していた。声を出すと殴られるから。泣くと叩かれるから。生きていると殺されかけるから
シェイ:(N)声を殺し、感情を殺したとしても猛烈な痛みには耐えられない。思わず声が涙が出てしまう。そんな自分が酷く憎かった
シェイ:(声を押し殺して)...っ!いった...ぐっ、ごめ、なさい
シェイ:やめ...っ...
シェイ:ぐっ...ぃっ...うぅ
シェイ:(N)早く死んでしまいたかった。でもスリントのせいで死ねなかった。
シェイ:(N)こんな見た目で産まれなかったら、こんなスリントを持たなければもしかしたら親もみんなも先生のように接してくれていたのかもしれない。
0:
シェイ:また...夢。そうか今日は僕の誕生日か
シェイ:(N)毎年誕生日にこの夢を見る。年月がたとうとも傷が癒えることはない
シェイ:(N)僕が生きている限り
シェイ:(N)でも今日はやけに胸騒ぎがした。何かを警告するかのように頭痛が止まらない
シェイ:スリントムーン...のせいか...?
シェイ:あれ、先生?
シェイ:(N)先生は人形だから睡眠は必要ない。この時間は窓辺でよく悲しそうな顔をして月を見上げているはずだった
シェイ:(N)直感ではあるけど、先生が恐らく動き出したんだ
シェイ:(N)僕は急いで家を出た
シェイ:(N)だって、このままだと先生は...
0:シェイの周りの植物たちは酷く元気がなくなってしまっていた
アンジュ:(N)16年に一度のスリントムーン。その月は黒く、黒く。私たちを染めていく
アンジュ:(N)黒い月は天使にとって心を沈めてしまうものでしかないから。もちろんスリントも弱まる
アンジュ:そっか...今日はシェイの誕生日か。
アンジュ:(N)白い粉雪が黒い月に照らされ、愉しげに不気味に踊る夜。私はとても寝れそうになかった。
0:
0:
リアム:やぁ。はじめまして「白い悪魔」
シェイ:っ!だ、れだ?
シェイ:(N)先生と暮らすようになってから僕は森の外に出たことがない。もちろん先生の行き先もわからない
シェイ:(N)今日は森に結界がなかった。本当に先生は何かをしようとしているのだ
リアム:僕はリアム。リナント帝国の王子さ
シェイ:リナント帝国...って、、
リアム:そりゃ知ってるよね「黒い魔女」が崩壊させた場所なんだから
シェイ:っ...それが、なんだ
リアム:わざわざお迎えに来てやったんだから、そんなに警戒しないでくれよ。
リアム:国民の避難も既に済ませてあるしね
シェイ:...どういう、ことだ?
リアム:ふふふ。だからさ、
リアム:(声のトーンを落として)大人しく着いてこい
シェイ:っ!(少し抗って)ぐっ.....
シェイ:(操られたように)はい
リアム:スリントムーンの効果は絶大だな...ふふ
0:
0:
0:リナント帝国のとある場所
0:戦闘が始まっていた
ジェーラドス:ははは!さすがスリントムーンだ。威力が桁違いだ。
メアリー:1度口を閉じてはどうかしら?何を喋ろうと「人形」である私にあなたの「呪い」が効くことはないんだから
ジェーラドス:なにをいう?私のスリントは「占い」だ、外れたことは無いんだぞ?
メアリー:「人」であればあなたの言った通りになる呪いをかけれるからね?
ジェーラドス:...
メアリー:あら、図星かしら?
ジェーラドス:そうだったな魔女の前では嘘は通用しないんだったな
ジェーラドス:それにしても呪いが効かないとなると私としてはすごく戦いにくいのだが
メアリー:あらそう。さっさと死んで
ジェーラドス:無感情で言われるのは怖いな。はははっ
メアリー:(N)この王は呪いの効かない人形を前にして笑っている。圧倒的に不利な状態だと言うのに
メアリー:(N)結界を強めているのだからシェイは来れないはず、それなら何故こんなにも笑えるのか
ジェーラドス:さぁ行くといい。我が部下よ。はははは!黒い魔女を殺してしまえ!
メアリー:なんてことを!
ジェーラドス:何をそんなに怒ってるんだい?お人形さんの綺麗な顔が台無しだぞ?
メアリー:あなたは、人のことをなんだと思っているの!
ジェーラドス:「道具」だが?私が絶対的な王になるための道具さ
メアリー:本当の悪魔はあなたの方じゃない
ジェーラドス:私の国を壊滅させた張本人にそれを言われるとはな
メアリー:あなたがあの時あんな呪いを国民にかけなければアリーは、生きていたのよ!
ジェーラドス:アリーが私の秘密を知ってしまったのが悪い。仕方がないじゃないか。私が王になる上で邪魔だったのだから
メアリー:濡れ衣を着せて何が楽しいの。病気を広めたのはあなた自身だと言うのに
ジェーラドス:ははは!楽しいわけないだろう?ただいらなくなった玩具を捨てる。それと同じさ
メアリー:やはりあなたはいなくなるべきだわ。
ジェーラドス:ただ、ひとつ失敗だったのは捨てた玩具が私の1番欲しいものだったってことだな
メアリー:...いきなりなに
ジェーラドス:彼は醜い見た目だった。彼が私の。王の息子だなんて国民が聞いて呆れる
ジェーラドス:だから、捨てたんだ。生まれたその日に「災いの子」と言う呪いをかけて
ジェーラドス:それがまさか、私の1番欲しい「死神」のスリント持ちだったとはな。不覚だったよ。なぁ?シェイ
シェイ:(酷く動揺して)...ぇ?どういう、こと?
メアリー:シェイ!どうしてここに
ジェーラドス:リアムご苦労だった。黒い魔女を殺せ
リアム:はい。もちろんです
シェイ:捨て、られた?呪い、を?かけ...られた?
メアリー:シェイ!王の言うことは聞いてはダメ!くっ!近づけない
ジェーラドス:そうさ。ようやく見つけたよシェイ。今日から君は私の息子だ
ジェーラドス:(トーンを落として)私の道具(むすこ)となれ
シェイ:(酷く苦しんで)...ぐぁ、うがぅ..い、、や...だ
メアリー:シェイ!ジェーラドス、貴方だけは絶対に許さない!
ジェーラドス:やはり大天使と死神にはスリントが効きにくいんだな。スリントムーンに感謝だな!ははは!
シェイ:せ...ん、せ。ぼ..くは...だい、じょぶ
ジェーラドス:認めてしまえばいいものを。なぜ認めんかね?
メアリー:(N)私はシェイに苦しんで欲しくなかっただけなのに。なぜこうなってしまうの
0:
0:アステリア帝国城内
アンジュ:あー寝れない。それに、、あー!!!もう!モヤモヤするー!
アンジュ:こんな時間に行ったら失礼だよね、いや、でも!
アンジュ:(N)失礼かもしれないけど、行動あるのみだよね
アンジュ:この時間なら簡単にお城を抜け出せるもの。そうよ。この時間にしか出られなかったの
アンジュ:(N)ちゃんと謝ろう。許されなくても。
0:
0:
ジェーラドス:認めないかシェイ。ならひとつ話をしよう
シェイ:ぐっ...
シェイ:(N)少しでも気を抜くと闇に飲み込まれそうだった。
シェイ:(N)痛みが分からない。心が分からない僕でもこれだけはわかる
シェイ:(N)僕の親だというこの男の闇には呑まれてはいけないと
ジェーラドス:君のスリントは死神
ジェーラドス:君を拾ったメアリーは「人形」
ジェーラドス:死神は身近にある生命力を少しづつだが吸ってしまう
ジェーラドス:人形である彼女からは何を吸っているのか、わかるか?
シェイ:...し、ら..ない
メアリー:シェイこの人の話は聞かなくていいのよ!っ!もう!しつこいわね、
リアム:殺せと言われてるので
メアリー:(N)はやくシェイの所に行きたいのに埒が明かない。さすが王族のスリント。一筋縄ではいかない
ジェーラドス:魔力だよ
メアリー:シェイ!聞かないで!
シェイ:ま、、りょ...
ジェーラドス:そう。魔力。スリントムーンだと言うのに彼女は16年前より衰えている。
ジェーラドス:それはなぜか?君が少しづつ少しづつ吸い上げたからだよ
シェイ:...そ、ん
ジェーラドス:見てみろ。メアリーはあんな雑魚相手にも苦戦しているじゃないか
シェイ:せ、...んせ、は...
ジェーラドス:お前は生きているだけで周りに不幸しか与えないんだよ
ジェーラドス:大人しく道具(むすこ)になれ
シェイ:(N)確かにそうだ。生きているだけで邪魔にしかならない自分は、先生にも...
0:
メアリー:そんなことないわ。
シェイ:先生?...あの人達は?
メアリー:凍らせてきたわ。すごい馬鹿力だから少ししか持たないと思うけど
シェイ:(N)そういう先生は腕が取れかけ、ボロボロになっていた
シェイ:(N)それでも昔のように僕を抱きしめてくれていた
メアリー:私の結界内だから呪いの効果も薄まると思うけど長くは持たないから手短に話すわね
シェイ:先生、ごめんな、さい
メアリー:謝らなくていいのよ。一緒にいたのは私がシェイのそばにいたかったからよ。魔力が吸われることくらい知ってたわ
メアリー:私の魔力は上限がない。だからいくらでも補えることができたのよだから、心配しないで
シェイ:せん、せい
メアリー:(涙ぐんで)むしろ、謝るのは私の方なのよ
シェイ:...なんで?
メアリー:あの時ちゃんと殺せていたならあなたが不幸になることは無かった。私だけが悪者でいられた
シェイ:先生。そんなこと、、
メアリー:あなたに辛い思いをさせてしまった。ごめんなさい。
シェイ:あれはあの、僕の親?のせいなんでしょ?先生は...
メアリー:...そろそろ時間かしら
メアリー:シェイを二度と不幸な目に合わせないと決めたのに、結局果たせそうにない
シェイ:な、なにをいってるの?
メアリー:本当はこの方法は使いたくなかったのだけど
メアリー:ごめんねシェイ。愛しているわ。貴方は、生きてね(シェイの額に口付けする)
シェイ:(N)先生との会話はこれが最後だった
0:
シェイ:(吐血)...ぐっ、ぁ、先生?
シェイ:...っ!
シェイ:(N)結界がなくなった瞬間また猛烈な痛みと闇に襲われた
シェイ:(N)でも、目の前の光景を見た瞬間そんなことはどうでもよくなった。
シェイ:(N)先生は僕を抱きしめたまま自分で心臓を貫ぬいていた
シェイ:せ、んせ...?せんせい、起きて...ねぇ
シェイ:(N)先生は死んでしまった。そんなこと見れば誰でも理解出来ることだ。でも僕は信じることが出来なかった。
シェイ:(N)痛い、とても痛い。痛いはずなのに、涙は出てこなかった
シェイ:なんで、...なんで、だよ
ジェーラドス:(吐血)ぐはっ!クソアリーが!心臓を自爆装置にしやがって!ありったけの魔力を入れやがって!
メアリー:(N)ごめんなさいシェイ。こうするしか無かったの
メアリー:(N)約束、守れなくてごめんなさい
0:過去回想
メアリー:シェイ。私はずっとあなたの先生であり、友達でいるわ
シェイ:...?とも、だち?
メアリー:そう友達。ずっとそばにいるわ
シェイ:ほんと、に?
メアリー:えぇほんとよ。約束(小指を差し出す)
シェイ:...やく、そく
0:
0:
シェイ:(小声で)..先生の、嘘つき
ジェーラドス:クソっ!魔力が蔓延(はびこ)っているせいでまともに動けん...あと少しで私は歴代最強の王となれるというのに...!
0:
シェイ:僕の、親、だったっけ?
ジェーラドス:はは、だからなんだ?私の道具になる気になった...
ジェーラドス:(N)思わず言葉を失ってしまった。呪いを受け逆らい続けているはずなのに彼は普通に喋り立っている。それは、彼のスリントの暴走を意味していた
ジェーラドス:(N)沈みかけた黒い月がちょうど後ろに重なってまるで本当に白い悪魔のようだった
ジェーラドス:今までのことは悪かったよ。全てなかったことにしよう!私ならすぐに忘れさすことが出来る!
ジェーラドス:だから、な?私と一緒に国を作り上げよう!
シェイ:...うるさい
ジェーラドス:(命を吸われていく)かっ...あ
シェイ:(N)僕はこの時初めて意志を持って、人を殺した
0:この時シェイの周りは全ての植物がなくなり砂漠のような状態になっていた
0:
0:
アンジュ:(N)私がリナント帝国に着いたのはもうまもなく朝が来ようとしている時だった。
アンジュ:(N)森の家には誰もいなかった。嫌な予感がして来てみれば戦いは終わった後のようだった
アンジュ:ここ、ほんとにリナント帝国なの?
アンジュ:(N)リナント帝国があったところはほぼ森の様になっていてその中心には
アンジュ:リアム...何をしているの?
アンジュ:(N)シェイの心臓にナイフを突き立てているリアムの姿があった
0:
0:数分前
リアム:(N)目を覚ました時、どうやら自分は森にいるようだった
リアム:...?僕は家にいたはず。なぜ森にいるんだ?っ!いった!
リアム:(N)何故か自分はとてもボロボロで血だらけだった。
リアム:(N)目の前にはずっと探していた「白い悪魔」と「黒い魔女」がおり、そして実の父が息絶えていた
リアム:(N)そして遠くからはスリントでこの光景を見ていたのであろう国民の歓声が上がっていた
リアム:(N)そう。僕の父の呪いが解け、悪事がバレたため、「白い悪魔」と「黒い魔女」は悪者ではなく英雄となった
リアム:(N)しかし...
シェイ:(貧血による息切れ)...なお、れ...かえっ、て...きてくれ
リアム:(N)目の前には既に事切れている「黒い魔女」と、スリントの限界を超越しきっている「白い悪魔」の姿があった
リアム:(N)そして思い出した。自分はただの道具でしか無かったのだと、ただの使い捨ての駒だったのだと、全てを思い出してしまった
リアム:(N)しかし今は絶望にくれている場合ではなかった。この少年のことを止めなければ、彼まで死んでしまう
リアム:シェイくん。であっているかな?
シェイ:(憔悴しきったカスれた声で)っ!...な、なん、ですか?
リアム:君のスリントは「死神」だったね。治癒するにはシェイくんに相当な負担がかかるだろ?それに彼女は...
シェイ:そんな、こと!わか...て、る(倒れる)
リアム:おっと!危ない!...どうして自らを傷つけようとする?君はこの国の...
シェイ:もう、死にたいんだ
リアム:え、?
シェイ:僕は、先生の..いない世界で、生きていけない。
シェイ:人には、生きているだけで、迷惑をかけてしまう
シェイ:でもいくら死のうとしても、スリントのせいで死ねないんだ
リアム:(N)弱々しい彼の声に僕は反論したくなった
リアム:(N)生きていればいいことがある。と
リアム:(N)でも、そんな安易な発言が出来るわけなかった。彼にとって生きるということは地獄そのものでしかないのだから
シェイ:だから、..ころ、して
リアム:(N)実の父に道具として生かされ、彼のことを傷つけまくった僕にはそれくらいしか罪を償う方法はなかった。
リアム:(N)無心で何度も何度も彼の心臓目掛けて刺した。出来れば痛くありませんように。ちゃんと死ねるようにと願いながら
シェイ:あ...り、が..とぅ...や、っと..らく、、に...な
リアム:(N)最後の瞬間彼は笑っていた。その顔はとても不格好だったけどとても幸せそうだった
0:
アンジュ:(平手打ちする)リアム!あなた、なんてことしてるのよ!
リアム:っ...見たらわかるだろ。「白い悪魔」を殺したんだ
アンジュ:そんなことわかってるわよ!私が彼を好きな事をわかってて!...っ、なんで、殺したのよ
リアム:...僕は「帝国警備隊」だ。自分の仕事をしたまでだよ
アンジュ:そんな...分かってる、...分かってるけど、、
リアム:アンジュ、
アンジュ:...なに?
リアム:婚約は解消しよう。
アンジュ:ぇ?
リアム:今まですまなかった。僕のことは未来永劫(みらいえいごう)忘れてくれ
アンジュ:リアム?
アンジュ:(N)彼にしては珍しく頭を下げていた。まるで昔の彼に戻ったように、
アンジュ:待って!あなたまさか
リアム:さようなら
0:
0:過去回想
アンジュ:リアムの国大変なことになっちゃったね
リアム:うん。なんだかとても怖かった、
アンジュ:大丈夫だよ!きっと元通りになるって!
リアム:うん!そうだね!...ねぇアンジュ
アンジュ:なぁに?
リアム:大きくなったら!僕と結婚しよ!
アンジュ:うん!!ふふっ!絶対、ぜーったい!約束だよ!
リアム:うん!もちろん!
0:
0:
アンジュ:リアム!ねぇ!待ってよリアム!
リアム:(N)僕はリナント帝国の王族の1人。きっと一族の罪と「白い英雄」を殺した罰で処刑されるだろう。
リアム:(N)それによって、婚約者としてのアンジュの評価は落としたくなかった。君にはずっと笑っていて欲しい
リアム:(N)父の道具でなければ、もっと役に立てていたらアンジュのことを幸せにできたのかもしれない
リアム:ごめんなアンジュ。ずっと愛してるよ。元気でね
0:
0:
リアム:(N)僕は数日後国家反逆罪で処刑された
0:
0:
アンジュ:(N)世界はなんて残酷なんだろう。どうして私の愛する人ばかりが死ななくてはならないのだろう
アンジュ:バカリアム...私は心の声が聞こえるって何度も言ったのに...
アンジュ:(N)彼は実の父親に道具として操られているだけだった。それに私は気づくことが出来なかった。
アンジュ:婚約解消なんてしたくなかったくせに、最後まで...さいごまで、、
アンジュ:(N)私はシェイにもリアムにも謝ることが出来なかった。シェイにはこれ以上ない酷いことを言ってしまったのに
アンジュ:なんでそんなに幸せそうに眠っているの?
アンジュ:(N)シェイは滅多刺しにされているのにもかかわらず、とても幸せそうな顔で眠っていた
アンジュ:(N)私はシェイについてもリアムについてもちゃんと知らなかった。知ろうともしなかった
アンジュ:(N)もしかしたら救えたかもしれないのに、
アンジュ:なんて、これはただの私のエゴか
アンジュ:(N)結局私は全てにおいて中途半端だった。でもまだやれることはある
アンジュ:大天使様この先世界から...
0:
0:
アンジュ:(N)この先同じような悲劇を繰り返さないよう心から祈った。きっと届くと信じて
アンジュ:シェイ...ごめ、んね...もう、すぐ...そっちに、行くね
0:それは月がまだ顔を覗く明け方の出来事だった
0:
0:
リアム:これが「白い悪魔」と「黒い魔女」の悲劇の物語だ。
リアム:相変わらずこの世界はスリントで溢れている。もちろん悲劇の事件や悲劇の事故もね
リアム:いつの時代になっても、世界なんてそんなものなのさ
0:歯車はいつ狂ったのでしょうか?
リアム:かつてこの世界にはスリントすなわち固有スキルと呼ばれるものが存在した。
リアム:その固有スキルはあまりに力が強く、スキルにより身分が別れる仕組みとなっていた。
リアム:そしてその「天贈(スリント)の儀式」は5歳の時に行われる。
リアム:努力なんて報われるわけがない。そんな世界だった
リアム:この話は今となっては「英雄」の物語として知られているけれど、実際は違う
リアム:本当は「悲劇」の物語である
リアム:君も聞いたことがあるはずだ。「白い悪魔」と「黒い魔女」の伝説を
0:
0:
0:
0:「白い悪魔と黒い魔女」
0:
0:
0:リナント帝国城内
0:
リアム:(ノック音)お父様、リアムです。失礼します。
ジェーラドス:戻ったかリアム!どうだ「白い悪魔」の情報は手に入ったか?
リアム:ごめんなさいお父様。今日も白い悪魔についての情報を手に入れることは出来ませんでした。
ジェーラドス:そうか...これで私の占いが外れたのも...
リアム:お父様。白い悪魔とは都市伝説の存在では無いのですか?
ジェーラドス:いや、実在する。実際、リナント帝国内でも白い悪魔による殺人は起きているからな。
リアム:...お父様の占いが外れるだなんて。
ジェーラドス:白い悪魔はそれほどに手強い存在なのだ。
リアム:...あの、そういえば、白い悪魔のスリントって??
ジェーラドス:あー教えてなかったな。スリントは...
リアム:スリントは...?
ジェーラドス:(間をあけて)はっはっはっ!可愛いやつだな
リアム:え?、、えぇ?
ジェーラドス:わかっておらん。
リアム:わ、わかってない。そ、そんな未知な存在を探してるんですか?!
ジェーラドス:落ち着けリアム。白い悪魔とはいえ所詮人間だ。...戦いに負けたことは?
リアム:あり...ません。
ジェーラドス:なら大丈夫だ。引き続き「アルビノ」の人間は見つけ次第、あぁどんな状態でもいい。連行するように、
リアム:もちろんです。とはいえ、出会ったことはありませんが...
ジェーラドス:...(明るく)ところで国の復興は順調かい?
リアム:え?あ、あぁ順調ですよ。この世界にスリントがあって良かったなとつくづく思います。
ジェーラドス:それは良かった...
リアム:15年前の事件、本当に残念です。...僕は当時3歳だったのでほとんど覚えていませんが...
ジェーラドス:そうだな。だが、
0:
ジェーラドス:妻を殺した「黒い魔女」だけは許さん
リアム:(ゾッとして言葉が詰まる)っ...そ、その、黒い魔女って...処刑されましたよね?
ジェーラドス:そうだ。しかし最近わかったことがあってな。今日はその話をするために呼び出したんだ。
0:
0:
0:
シェイ:(N)夢を見ていた
0:
0:過去回想(8年前)
0:森の隠れ家
0:
メアリー:今日からここがあなたの家よ
シェイ:...僕の、家?
メアリー:(ドアを開けて)さぁ入って
シェイ:...閉じ、、こめるの?
メアリー:閉じ込める?どこに何を閉じ込めるのかしら?
シェイ:僕..を、そこ、に(燃えている暖炉を指さす)
メアリー:そんなことしないわ。第1そんなことしたら...
シェイ:僕は...死ね、ない。でも...
メアリー:でも?
シェイ:(震え出す)僕の...こと、、引きとる、人...みんな...死ん、じゃう。
メアリー:...
シェイ:お姉さん、も...僕が、殺す、かも、しれない...からっ(僕の、ことは)
メアリー:(かぶせて)シェイ。
シェイ:っ!あ...の、ごめん、なさい
メアリー:怒っているわけじゃないわ。安心して
メアリー:私感情が表に出ないから怒っているように見えるかもしれないけれど(シェイを抱きしめようとする)
シェイ:(怯えて目を瞑る)っ...!
メアリー:あ、ごめんなさい。怖がらせたかしら
シェイ:ち、ちが、くて...あ、あのっ
メアリー:大丈夫よ。ここはもうあなたのお家なの。誰も貴方をいじめないし攻撃してくる人もいない。
シェイ:...ほんと、に?
メアリー:えぇ。本当よ。...ようこそ。そして、おかえりシェイ。
シェイ:(涙が出てくる)あ...あぁ、、
メアリー:おかえりと言われたらただいまと言うのよ
シェイ:た、だいま。お、お姉さん
メアリー:えぇ...そうねぇ。
メアリー:私のことは先生と呼びなさい
シェイ:せ、んせい
メアリー:そう。さぁ家に入ってご飯でも食べましょ
0:
0:
メアリー:よく眠れたかしら?おはよう
シェイ:...おはよう先生
0:
シェイ:(N)とても懐かしい夢だった。
0:
0:アステリア帝国城内
0:
0:
アンジュ:あーー!!つまんない!
アンジュ:どうして女の子は女の子らしくしてなきゃ行けないのかしら?意味がわからないわ!
アンジュ:絶対に馬に乗ったり剣を振るったりしたほうが楽しいと言うのに、、
アンジュ:刺繍にダンスに読書に...
アンジュ:もう!飽きたわ!!!!
アンジュ:唯一の楽しみと言えばスリントを使って人の心を読むことだけれど...
アンジュ:城内の人の心なんて読んだって面白くないし...
アンジュ:何か心躍る楽しいことは起きないかしら...
アンジュ:例えば...
0:
0:母親「アンジュ?刺繍は終わりましたの?」
0:
アンジュ:やってます!!!やってますわ!!
アンジュ:あーもう!ほんとに!やってられるかー!!
アンジュ:お、あそこにお馬さんが...
アンジュ:ふふっ。1日くらい...いいよね?
0:
0:
0:リナント帝国城内
0:
リアム:それでお父様、お話と言うのは?
ジェーラドス:「黒い魔女」のことなんだがな...生きてるかもしれん
リアム:なっ!このリナント帝国をほとんど壊滅状態にしたという黒い魔女がですか?!
ジェーラドス:あぁ、そうだ
リアム:し、しかし...彼女は処刑されたはずでは?その光景はよく覚えてますし...
ジェーラドス:...とにかく実際見てもらった方がいいだろう。着いてきなさい
0:
0:
0:リナント帝国城内地下牢
0:
リアム:...酷い場所だ
ジェーラドス:彼女の遺体はここの焼却炉の中に閉じ込めていた
リアム:閉じ込めていた...?なぜ燃やさなかったんです?
ジェーラドス:死んでいるとはいえ魔女だ。呪われるかもしれん。その影響で誰も燃やせなかったんだ。
リアム:...ははっ。そんな、ばかな
ジェーラドス:開けて確認してみると良い
リアム:...(恐る恐る開ける)
リアム:っ?!何も、無い!
ジェーラドス:それどころか中は綺麗になっている。おかしいとは思わんかね?
リアム:死体が逃げ出したとでも言うんですか...?
ジェーラドス:どーやったかは知らんがな。相手は「黒い魔女」だ。...(小声で)必ず見つけださねば
リアム:...わかりました。つまり明日からは「白い悪魔」と「黒い魔女」この2人の捜索をすればいいんですね?
ジェーラドス:よくわかってるじゃないか!さすがは我が息子
リアム:お父様のお役に必ずたちます!では僕は早速訓練に行ってきます!
ジェーラドス:あぁ。怪我に気をつけるんだぞ
0:
0:
ジェーラドス:いつから私は騙されていたのだ...
ジェーラドス:とにかく早く見つけなければ...大変なことになるぞ...
0:
0:
0:
0:森の隠れ家
0:
メアリー:シェイ。顔色が優れないわね。夜更かしでもしてたの?
シェイ:いや、昨日はちゃんと寝たよ。...ちょっと昔の夢を見て...
メアリー:...ちょうどパンが焼けたところなの。はちみつかけるわよね?
シェイ:もちろん。ありがとう先生
メアリー:(N)シェイが生まれてから共に暮らすようになるまでの7年間、彼への扱いはその辺にいる虫やネズミ、雑草より酷かったように思う。
メアリー:(N)スリントを使って彼の能力、過去を覗き見た。それは、到底人間の耐えうるものではなかった。
メアリー:(N)8年たった今でも心の傷は残ったままなのだろう。
メアリー:(N)そう、15年前彼の誕生日にあんな悲劇が起こらなければ。私が...
シェイ:(食べながら)...先生?食べないの?
メアリー:...ごめんなさい考え事をしていたの。一緒に食べましょう。
シェイ:...先生調子悪いの?休む?
メアリー:先生は調子悪くならないから大丈夫よ
シェイ:...確かに。先生そういえば今日どこか行くの?
メアリー:今日は街へ買い出しに行くけど、どうしてそう思ったの?
シェイ:え、あ、いや。...なんだか今日は綺麗、だから
メアリー:あら、お世辞を言えるようになったの。成長したわね。
シェイ:...(小声で)子供扱いしないでよ
メアリー:ふふっ。今日は自由な日にするから好きにしてね
シェイ:...わかった。先生、気をつけてね
メアリー:ありがとう。あ、そうだ。シェイ無理はしちゃダメよ。
シェイ:っ...バレてたの?
メアリー:毎日見てるんだから分かるわよ。あなたのスリントの制御が難しいのは知ってるわ。
メアリー:でも、自分のことは傷つけないであげて?
シェイ:気を、つけます
メアリー:じゃあ行ってくるわね。お留守番頼んだわよ
シェイ:うん。行ってらっしゃい先生
0:どこかの森
0:
0:
アンジュ:あれ...ここどこだろう、
アンジュ:(可愛こぶって)お城に閉じ込められていたプリンセスアンジュは、誰にも見つかることも無く無事に脱出できたのであった。
アンジュ:だがしかーしっ!まさか、森で迷子になるなんて...
アンジュ:木に登ってみたらなにかわかったりするかしら?
アンジュ:(木に登る)よっと...
アンジュ:あのー!!だれかー!いますかー?
0:
0:
アンジュ:まぁ、いる(わけないよね)
シェイ:(割り込んで)何、してるんですか?
アンジュ:ひっ!?おばけ!?わっーー!(木から落ちる)
シェイ:っ!危ない!!
アンジュ:痛ー...くない?あれ?でも今私、落ちたよね...?
シェイ:っ...大丈夫、ですか?
アンジュ:(飛び退く)ごめんなさい!怪我しちゃってますね...すぐに治しますから!(手を近づける)
シェイ:っ...(何かをこらえるように目を瞑る)
0:シェイ(心)「怖い。どうしてこの森に人がいるんだ?そもそもここは...」
アンジュ:あ、ごめんなさい。初対面で急に手を近づけられたら誰だって怖いものよね。
シェイ:(凄く驚いた顔をして)...い、いえ。...あ、(あの)
アンジュ:(ブツブツと独り言を言うように。割り込んで)そうよね、やっぱりちゃんと自己紹介しないと治される側も怖いわよね
シェイ:あの?どうしましたか?
アンジュ:私の名前はアンジュ。アステリア帝国の王女よ。
シェイ:おう、じょ...王女様?!
アンジュ:そう。そして私のスリントは、「だ」じゃなくて。...「天使」よ
シェイ:天使...ってなんですか?
アンジュ:天使はね...
アンジュ:(N)説明しようとしたその時、強い風が吹いた。その時深く被っていた彼のフードが脱げ彼の顔が露(あらわ)となった。
シェイ:っ!(すぐにフードを被る)
アンジュ:...
アンジュ:(N)私はしばらくの間見惚れて動くことが出来なかった。なぜなら彼は白雪のようにとても美しかったから
シェイ:(怯えて)ご、ごめ(んなさい...)
アンジュ:(さえぎって)とても綺麗ね!
シェイ:...ぇ?
アンジュ:(見惚れて)うふふっ。まるで白雪姫のよう!いや、男の子だから白雪王子?とにかく!とても素敵!こんなに綺麗な人初めて見たわ!
アンジュ:(N)艶のある白髪。女の子のような白いまつ毛。ガラスのような澄んだ青色の瞳。透き通った白い肌。
アンジュ:(N)こんなに綺麗な男の子は見たことがなかった。私はこの時、一目惚れと言うやつをしたのかもしれない
シェイ:(照れて)あ、ありがとう?
シェイ:(N)僕は今までだれかにこの容姿のことを褒められたことは無かった。
シェイ:(N)気持ち悪い。汚い。悪魔。死神。呪いの子。今まで会った人たちはみんなそう言っていた。
シェイ:(N)だから反応の仕方が分からなかった。でもなぜだかとてもくすぐったい気持ちになった
アンジュ:あなたの名前はなんて言うの?
シェイ:...シェイ
アンジュ:素敵な名前ね。あっ!そうだ忘れてた!怪我治すわね!
シェイ:いや...ありがとう。
シェイ:(N)初対面なのに。人間なんて皆同じだと思ってたのに。どうして大丈夫だと思ってしまったのか。
シェイ:(N)僕には分からなかった。
0:
0:リナント帝国城下町
0:
メアリー:(N)リナント帝国は元の形を取り戻しつつあった。
メアリー:(N)そう。元の形を
リアム:「白い悪魔」と「黒い魔女」についての情報を持っているものは直ちに僕に言うように!
メアリー:(小声で)「白い悪魔」と「黒い魔女」。あの王はなぜその情報を求めているのかしら
リアム:お、そこのお姉さん。見ない顔だね。もしかして観光で来たのかい?
メアリー:えぇそうよ。最近になってようやくこの国へ観光に来れるようになったから
リアム:15年前の事件で国は壊滅状態になり、さらにその魔力の影響でなかなか復興が進まなかったからね
リアム:まだまだ復興途中だけど、ゆっくりしていってくれ
メアリー:...えぇありがとう
リアム:あぁ、そうだお姉さん
メアリー:なにかしら?
0:
リアム:「白い悪魔」と「黒い魔女」について何か知っているかい?
0:
メアリー:...白い悪魔は都市伝説でしょ?それに黒い魔女って15年前の事件の後、処刑されたんじゃなかったかしら?
リアム:そうだなぁ。お姉さん綺麗だから特別に教えてあげるよ
メアリー:...
リアム:お姉さんは死体がいなくなった。って言ったら信じる?
メアリー:信じないわ。そもそも死体は動かないじゃない
リアム:だよね。でも実際僕はこの目で確認した。死体が置いてある場所には何も残っていなかった。
リアム:おかしいよね。まるで魔法のようだ。まぁその死体は黒い魔女なわけだから魔法は使いたい放題なんだけどね
メアリー:...つまり、黒い魔女は生きている。と言いたいの?
リアム:まぁ確証はないけどね。
メアリー:なるほど。...私も探しておくわ
リアム:お姉さんあともうひとついいかい?
メアリー:...なに
リアム:お姉さん僕と会ったことある?
メアリー:ないわ。ナンパかしら?
リアム:おっとごめんなさい。そんなつもりはなかったよ。
メアリー:お探しの人が見つかるといいわね
リアム:ありがとう。あなたの旅路に幸福がありますように
0:
0:
メアリー:...そろそろ潮時かしら
0:
0:
ジェーラドス:ふはは...
ジェーラドス:ふははははははははははは!
ジェーラドス:見つけたぞ!黒い魔女!!!
0:
0:
メアリー:(N)私はこの国の王を元王をを絶対に許さない
0:
0:
0:
0:数ヶ月後。どこかの森
0:
シェイ:先生。大丈夫?
メアリー:どうして?いつも通り元気よ
シェイ:いや、大丈夫ならいい、けど
メアリー:少なくともシェイよりは元気よ。何度も言うけど自分にもう少し優しくしなさい。無理しすぎよ
シェイ:僕は...大丈夫だよ。無理することくらい、なんてことない
メアリー:そういう(ことじゃないわ)
シェイ:(遮って)それより先生。
メアリー:どうしたのかしら?
シェイ:...いや、なんでもない
メアリー:...(何か言いたいことが)
アンジュ:(メアリーとセリフかぶせて)こんにちはー!
シェイ:アンジュ...何度も抜け出して怒られないの?
アンジュ:大丈夫大丈夫!既に何回も抜け出してるのに怒られないんだもの!不思議だよね
メアリー:アンジュちゃんこんにちは
アンジュ:メアリーさん!お久しぶりです!
アンジュ:(N)シェイにあったあの日から何度かここへは遊びに来ていた。私たちはすっかり仲良くなっていた
メアリー:不思議ね。ここの森は結界で人は入れないようになっているんだけど、どうやらアンジュちゃんには効かないみたいね
アンジュ:えっ!そーなんですか!な、なんでだろう。知らなかった...
メアリー:恐らくあなたのスリントに関係してるんでしょうね
アンジュ:っ!そ、そーかもですね
シェイ:...
メアリー:そうね、シェイ今日の勉強はまた後でにしましょ。せっかくアンジュちゃんが来たんだし
アンジュ:え!いいんですか!
シェイ:...わかりました
メアリー:それじゃアンジュちゃんごゆっくりね。お城には早く戻るのよ
アンジュ:はい!ありがとうございます!
シェイ:...
アンジュ:...少し散歩でもしよっか
0:どこかの森
0:
アンジュ:何か悩み事?
シェイ:え?悩み事なんて、ないよ
アンジュ:そっか...
アンジュ:(N)彼は何か悩んでいると言うより抱え込んでいるようだった。
シェイ:...ねぇ
アンジュ:ん?どうしたの?
シェイ:...僕のスリント教えてなかったよね
アンジュ:え?確かにそうだけど、急にどうしたの?
アンジュ:(N)今日の彼はどこか違った。どこか悲しそうで、そして何かを壊してしまいそうな
シェイ:僕のスリントはね
0:
シェイ:「死神」だよ
0:
アンジュ:(N)時が止まったようだった。私たちの周りの音だけ消えてしまったようだった。
0:
シェイ:僕が...「白い悪魔」なんだ
0:
アンジュ:ぇ?
アンジュ:(動揺して)「白い悪魔」って、あの「白い悪魔」?
シェイ:...うん
アンジュ:あ、あはは。シェイが?そんなわけないじゃん!だって、だってシェイは...
シェイ:これで、信じてくれる?
アンジュ:(N)そう言うと彼は近くにあったアロエの花を手に取り
アンジュ:(N)その手の中で枯らしてしまった
アンジュ:...本当に?
アンジュ:(N)白い悪魔なんてただの都市伝説だと思っていた。本当に、本当に現実にいたなんて
アンジュ:(N)名前の由来にも納得が行く。彼は白雪のように白く、そして悪魔の契約のように寿命をいとも簡単に吸い取ってしまうのだから
アンジュ:(深呼吸して)...あなたが白い悪魔だとして、なぜ今それを私に話そうと思ったの?
シェイ:友達を辞めようと思って、
アンジュ:ぇ?どういうこと?
シェイ:...僕のスリントは、近くにいる人の生命力を無意識のうちに吸ってしまう
シェイ:10年もすれば、僕のそばにいた人の寿命は1年短くなるんです
シェイ:それに僕はまだ(このスリントを)
アンジュ:(遮って)そんなの関係ない!アルビノという病を患ったのはたまたま。「死神」というスリントを授かったのもたまたまでしょ?
アンジュ:たとえあなたが白い悪魔だったとしても私は...私は!あなたの友達でいたい!
シェイ:っ!...(バレないように涙をこらえて)
0:
シェイ:それは...
シェイ:僕がたくさんの人を殺した「殺人鬼」だとわかっていても、同じことが言えるの?
0:
アンジュ:っ!それは!...そ、れは
アンジュ:(N)彼の心の声は混ざりに混ざった感情でききとることが出来なかった。その時の私は動揺しすぎて何も気づくことが出来なかった。
アンジュ:(N)彼の発する声が震えていることに、彼が助けを求めるような悲痛な顔をしていることに気づけなかった。
シェイ:...分かったなら、出て行ってくれ
アンジュ:どうして、どうしてなの...
シェイ:二度と、来ないでくれ、、
アンジュ:っ!なんでそんなこと言うのよ!
シェイ:...
アンジュ:どうして何も言わないの?
シェイ:...
アンジュ:どうして!理由も教えてくれないの!
アンジュ:(涙を堪えながら)...この人殺し!
シェイ:っ...
アンジュ:あ...ぁ、あの、ごめんなさい(走り去る)
アンジュ:(N)私は冷静ではなかった。彼に1番言ってはいけない言葉を言ってしまった
シェイ:(泣きながら)...ごめん、なさい
シェイ:(N)彼女と色んな話をするのは楽しかった。でも同時に僕の胸を締め付けた
シェイ:(N)彼女はアステリア帝国の王女様だ。人殺しの僕が話していい相手ではない
シェイ:(N)それに僕は近くにいるだけで生命力を少しずつ吸ってしまう。彼女のためにも友達になるべきではなかった
アンジュ:"この人殺し!"
シェイ:(N)誰かに罵倒されても殴られても刺されてもなんとも思わなかった。思わないようにしていた。
シェイ:(N)期待しても自分が傷つくだけだから。それなのにどうしてこんなにも心が痛いのだろう
シェイ:(N)なぜ僕は泣いているのだろう
シェイ:(消え入るような声で)僕なんか...生まれてこなきゃ、よかった
0:
0:どこかの森
0:
メアリー:あら、アンジュちゃんもう帰るの?
アンジュ:っ...さすがにお母様に怒られそうなので...失礼します
メアリー:...気をつけて
メアリー:(N)彼女は私には理解ができない、とても複雑な表情をしていた
メアリー:なにがあったのかしら...
0:
0:
メアリー:シェイ。
シェイ:...先生。どうしたの?
メアリー:アンジュちゃん帰ったけれど、何かあったの?
シェイ:...別に、なにも、ない。
メアリー:そう
メアリー:(N)過去の経験からだろう。彼は感情を隠すのがとてもうまい。ただ、彼は嘘をつくのが苦手だ
メアリー:(N)私のスリントを使えば彼に何があったのかくらいは簡単に知ることが出来る。でも、そんなことをしようとは思わなかった
メアリー:(N)彼の顔は初めて出会った頃と同じような眼になっていたから
メアリー:授業を再会しようと思うのだけれど、できそう?
シェイ:もちろんです。先生
0:
0:
0:
0:アステリア帝国城内
0:数日後
0:
リアム:酷く沈んだ顔をしているね。可愛い顔が台無しだぞ?
アンジュ:うるさい...リアムには関係ない
リアム:プリンセスがそんな言葉を使うんじゃないよ。はぁ、、あれかい?失恋ってやつかい?
アンジュ:はぁ?!失恋なんか...してないし、
リアム:君ってやつは僕と婚約しているというのに外部で好きな人を作っていたとは...
アンジュ:...
リアム:それに何度も抜け出した挙句城からの外出を禁じられるとはね。なかなかにお転婆なプリンセス様だ。
アンジュ:だから、リアムには関係ないでしょ...
リアム:はぁ。そんで、誰に恋してたのさ?
アンジュ:白い悪魔。
リアム:へぇ婚約者に恋してた人を教えるなんてね。なかなか肝が据わってるじゃないか
リアム:白い悪魔ねぇ...
リアム:って!「白い悪魔」だって!?
アンジュ:リアムうるさい。そうだって言ってんじゃん
リアム:僕が情報を求めているのは知っていただろう?なんで言わなかった?
アンジュ:知ったの数日前だし...
リアム:はぁ。アンジュ、もしかしてだけど手配書と言うものをを見た事がないのか?
アンジュ:手配書?なによそれ?
リアム:これだからチヤホヤされて育ったプリンセスは...
アンジュ:何か言った?
リアム:いや、なんでも。それより...
アンジュ:何?出来れば話しかけないで欲しいのだけれど
リアム:どこにいたんだい?その白い悪魔は。それに誰といたんだい?彼の年齢は恐らく今15だろう?一人でいるとは到底考えられない
アンジュ:(小声で)そんなに若かったんだ...
アンジュ:別にどこにいても誰といてもいいじゃない。私は思い出したくない...
リアム:僕は情報を求めていると言っただろう?教えてくれよ?
アンジュ:嫌よ。そもそも私あなたとの婚約認めてないし
リアム:(トーンを落として)教えろ
アンジュ:っ...ちょっと、急にどうしたのよ
リアム:(小声で)やはり、「大天使」様相手にはこのスリントは効かぬか
アンジュ:リアム?何言って...
リアム:何って情報を求めているだけだ。どうかしたのか?
アンジュ:あ、あなた。誰?
リアム:誰って、見たらわかるだろう?リアムだ
アンジュ:そうじゃなくて...
リアム:あーはいはい。別にいいよ無理して教えろとは言わないさ。失恋中に悪かったねプリンセス
アンジュ:(N)私の目には一瞬知らない誰かが見えたように感じた。気の所為だろうか?
アンジュ:...それにしても、どうしてあなたのお父さんは「白い悪魔」を探しているの?手配書?だっけ?が出されてるなら帝国警備隊に任せたらいいじゃない?
リアム:帝国警備隊に任せたんじゃ処刑されてしまうだろ?
0:
リアム:利用するためさ
0:
アンジュ:どういうこと?
リアム:おっと、そろそろ時間だね。また話そうね。僕のプリンセス(去る)
アンジュ:なんだったの...
0:
0:
ジェーラドス:ふははは
ジェーラドス:ふははははははははは!
ジェーラドス:なるほどなるほど。ようやく謎が解けたぞ
ジェーラドス:さぁ、あとはどうやって手に入れようか
ジェーラドス:よくも泳がせてくれたな。「黒い魔女」メアリー
ジェーラドス:悪はしっかり裁かないとな
ジェーラドス:ふははははははは
0:
0:
メアリー:...
シェイ:先生?雪かき行かないの?
メアリー:もちろん。行くわよ
メアリー:(N)シェイごめんなさいね。私は正義のヒーローにはなれないの
0:リナント帝国のとある場所
0:0時頃
0:
メアリー:アリー先生ただいま。あの事件からもう16年になったのね
メアリー:今日で全てを終わりにするわ
ジェーラドス:やぁ。久しぶりだねお人形さん。いや...
ジェーラドス:「黒い魔女」と呼ぶべきかな?
メアリー:王が直々に来てくれるなんて光栄ね。あと、私その名前は嫌いなの。やめてくれる?
ジェーラドス:そう怒らないでくれよ。まぁ無理もないさ
ジェーラドス:君はアリーの友達のお人形さん。アリーの影の存在でしかないのだから。
メアリー:だからなんだって言うの?
ジェーラドス:チョーカーの下に隠してるんだろ?処刑で首を切られた傷跡を
ジェーラドス:確かに君はアリーの友達のお人形さんだった。でも本当に「人形」だとは思わなかったな
メアリー:やっと気づいたのね
ジェーラドス:そう言うなよ。感情がないからお人形さんと呼ばれているだけだと思っていたんだ。飛んだ思い込みだったよ
メアリー:私を見つけるのに随分時間がかかったようだけどなぜ焼却炉の確認をしなかったのかしら?
ジェーラドス:君が気づかないように魔法をかけたんじゃないのか?
メアリー:あら、気づいてたの?
ジェーラドス:気づかないわけないだろ。なんせ君の魔力が弱ってきているからな
メアリー:...
ジェーラドス:おや?図星かい?ただの推測だったんだがな
メアリー:それよりも、私の質問に答えてくれるかしら?
ジェーラドス:なんだい?お人形さん?
メアリー:どうしてこの場所がわかったの?
ジェーラドス:なぜって、理由は3つある
ジェーラドス:ひとつ、最近になって始めて黒い魔女と白い悪魔についての情報を掴んだ。
ジェーラドス:ふたつ、何故かお人形さんが封印を弱めてわざと見つかるようにした?それとも弱くなったの方が正しいのか?
メアリー:冗談はいいから。続けて
ジェーラドス:つれないねぇ。みっつ、今日はスリントムーン。16年に1度月が最も黒く輝く日だ
メアリー:そうよ。よくわかってるじゃない。ちゃんと掌の上で踊ってくれたのね
ジェーラドス:お人形さんに踊らされるのは気に食わないが、確かにそのようだ。私はずっと誑(たぶら)かされていた
メアリー:復興をおくらせたのも、死体をわざと無くしたのも、黒い魔女についての情報を与えたのも全部このためよ
メアリー:あなたに私と同じ絶望を味わってもらおうと思って
ジェーラドス:...ほぅ
メアリー:スリントムーンそう呼ばれる理由は知ってるわよね?
ジェーラドス:もちろん。スリントの威力が普段の5倍になる。あるスリントにとっては有利な、別のスリントにとっては不利になる月の事だろ?
メアリー:よくわかってるじゃない。
メアリー:私はね、ずっとこの時を待ってたのよ。何せ私はただの人形。どうせ長くは生きられない。だから...
0:
メアリー:16年前の事件をもう一度起こすわ
0:
ジェーラドス:分かってはいたが...手強そうだ
メアリー:(N)今回こそは失敗しない
0:
0:どこかの森
0:
0:過去回想(夢の中)
シェイ:(N)ずっと押し殺していた。声を出すと殴られるから。泣くと叩かれるから。生きていると殺されかけるから
シェイ:(N)声を殺し、感情を殺したとしても猛烈な痛みには耐えられない。思わず声が涙が出てしまう。そんな自分が酷く憎かった
シェイ:(声を押し殺して)...っ!いった...ぐっ、ごめ、なさい
シェイ:やめ...っ...
シェイ:ぐっ...ぃっ...うぅ
シェイ:(N)早く死んでしまいたかった。でもスリントのせいで死ねなかった。
シェイ:(N)こんな見た目で産まれなかったら、こんなスリントを持たなければもしかしたら親もみんなも先生のように接してくれていたのかもしれない。
0:
シェイ:また...夢。そうか今日は僕の誕生日か
シェイ:(N)毎年誕生日にこの夢を見る。年月がたとうとも傷が癒えることはない
シェイ:(N)僕が生きている限り
シェイ:(N)でも今日はやけに胸騒ぎがした。何かを警告するかのように頭痛が止まらない
シェイ:スリントムーン...のせいか...?
シェイ:あれ、先生?
シェイ:(N)先生は人形だから睡眠は必要ない。この時間は窓辺でよく悲しそうな顔をして月を見上げているはずだった
シェイ:(N)直感ではあるけど、先生が恐らく動き出したんだ
シェイ:(N)僕は急いで家を出た
シェイ:(N)だって、このままだと先生は...
0:シェイの周りの植物たちは酷く元気がなくなってしまっていた
アンジュ:(N)16年に一度のスリントムーン。その月は黒く、黒く。私たちを染めていく
アンジュ:(N)黒い月は天使にとって心を沈めてしまうものでしかないから。もちろんスリントも弱まる
アンジュ:そっか...今日はシェイの誕生日か。
アンジュ:(N)白い粉雪が黒い月に照らされ、愉しげに不気味に踊る夜。私はとても寝れそうになかった。
0:
0:
リアム:やぁ。はじめまして「白い悪魔」
シェイ:っ!だ、れだ?
シェイ:(N)先生と暮らすようになってから僕は森の外に出たことがない。もちろん先生の行き先もわからない
シェイ:(N)今日は森に結界がなかった。本当に先生は何かをしようとしているのだ
リアム:僕はリアム。リナント帝国の王子さ
シェイ:リナント帝国...って、、
リアム:そりゃ知ってるよね「黒い魔女」が崩壊させた場所なんだから
シェイ:っ...それが、なんだ
リアム:わざわざお迎えに来てやったんだから、そんなに警戒しないでくれよ。
リアム:国民の避難も既に済ませてあるしね
シェイ:...どういう、ことだ?
リアム:ふふふ。だからさ、
リアム:(声のトーンを落として)大人しく着いてこい
シェイ:っ!(少し抗って)ぐっ.....
シェイ:(操られたように)はい
リアム:スリントムーンの効果は絶大だな...ふふ
0:
0:
0:リナント帝国のとある場所
0:戦闘が始まっていた
ジェーラドス:ははは!さすがスリントムーンだ。威力が桁違いだ。
メアリー:1度口を閉じてはどうかしら?何を喋ろうと「人形」である私にあなたの「呪い」が効くことはないんだから
ジェーラドス:なにをいう?私のスリントは「占い」だ、外れたことは無いんだぞ?
メアリー:「人」であればあなたの言った通りになる呪いをかけれるからね?
ジェーラドス:...
メアリー:あら、図星かしら?
ジェーラドス:そうだったな魔女の前では嘘は通用しないんだったな
ジェーラドス:それにしても呪いが効かないとなると私としてはすごく戦いにくいのだが
メアリー:あらそう。さっさと死んで
ジェーラドス:無感情で言われるのは怖いな。はははっ
メアリー:(N)この王は呪いの効かない人形を前にして笑っている。圧倒的に不利な状態だと言うのに
メアリー:(N)結界を強めているのだからシェイは来れないはず、それなら何故こんなにも笑えるのか
ジェーラドス:さぁ行くといい。我が部下よ。はははは!黒い魔女を殺してしまえ!
メアリー:なんてことを!
ジェーラドス:何をそんなに怒ってるんだい?お人形さんの綺麗な顔が台無しだぞ?
メアリー:あなたは、人のことをなんだと思っているの!
ジェーラドス:「道具」だが?私が絶対的な王になるための道具さ
メアリー:本当の悪魔はあなたの方じゃない
ジェーラドス:私の国を壊滅させた張本人にそれを言われるとはな
メアリー:あなたがあの時あんな呪いを国民にかけなければアリーは、生きていたのよ!
ジェーラドス:アリーが私の秘密を知ってしまったのが悪い。仕方がないじゃないか。私が王になる上で邪魔だったのだから
メアリー:濡れ衣を着せて何が楽しいの。病気を広めたのはあなた自身だと言うのに
ジェーラドス:ははは!楽しいわけないだろう?ただいらなくなった玩具を捨てる。それと同じさ
メアリー:やはりあなたはいなくなるべきだわ。
ジェーラドス:ただ、ひとつ失敗だったのは捨てた玩具が私の1番欲しいものだったってことだな
メアリー:...いきなりなに
ジェーラドス:彼は醜い見た目だった。彼が私の。王の息子だなんて国民が聞いて呆れる
ジェーラドス:だから、捨てたんだ。生まれたその日に「災いの子」と言う呪いをかけて
ジェーラドス:それがまさか、私の1番欲しい「死神」のスリント持ちだったとはな。不覚だったよ。なぁ?シェイ
シェイ:(酷く動揺して)...ぇ?どういう、こと?
メアリー:シェイ!どうしてここに
ジェーラドス:リアムご苦労だった。黒い魔女を殺せ
リアム:はい。もちろんです
シェイ:捨て、られた?呪い、を?かけ...られた?
メアリー:シェイ!王の言うことは聞いてはダメ!くっ!近づけない
ジェーラドス:そうさ。ようやく見つけたよシェイ。今日から君は私の息子だ
ジェーラドス:(トーンを落として)私の道具(むすこ)となれ
シェイ:(酷く苦しんで)...ぐぁ、うがぅ..い、、や...だ
メアリー:シェイ!ジェーラドス、貴方だけは絶対に許さない!
ジェーラドス:やはり大天使と死神にはスリントが効きにくいんだな。スリントムーンに感謝だな!ははは!
シェイ:せ...ん、せ。ぼ..くは...だい、じょぶ
ジェーラドス:認めてしまえばいいものを。なぜ認めんかね?
メアリー:(N)私はシェイに苦しんで欲しくなかっただけなのに。なぜこうなってしまうの
0:
0:アステリア帝国城内
アンジュ:あー寝れない。それに、、あー!!!もう!モヤモヤするー!
アンジュ:こんな時間に行ったら失礼だよね、いや、でも!
アンジュ:(N)失礼かもしれないけど、行動あるのみだよね
アンジュ:この時間なら簡単にお城を抜け出せるもの。そうよ。この時間にしか出られなかったの
アンジュ:(N)ちゃんと謝ろう。許されなくても。
0:
0:
ジェーラドス:認めないかシェイ。ならひとつ話をしよう
シェイ:ぐっ...
シェイ:(N)少しでも気を抜くと闇に飲み込まれそうだった。
シェイ:(N)痛みが分からない。心が分からない僕でもこれだけはわかる
シェイ:(N)僕の親だというこの男の闇には呑まれてはいけないと
ジェーラドス:君のスリントは死神
ジェーラドス:君を拾ったメアリーは「人形」
ジェーラドス:死神は身近にある生命力を少しづつだが吸ってしまう
ジェーラドス:人形である彼女からは何を吸っているのか、わかるか?
シェイ:...し、ら..ない
メアリー:シェイこの人の話は聞かなくていいのよ!っ!もう!しつこいわね、
リアム:殺せと言われてるので
メアリー:(N)はやくシェイの所に行きたいのに埒が明かない。さすが王族のスリント。一筋縄ではいかない
ジェーラドス:魔力だよ
メアリー:シェイ!聞かないで!
シェイ:ま、、りょ...
ジェーラドス:そう。魔力。スリントムーンだと言うのに彼女は16年前より衰えている。
ジェーラドス:それはなぜか?君が少しづつ少しづつ吸い上げたからだよ
シェイ:...そ、ん
ジェーラドス:見てみろ。メアリーはあんな雑魚相手にも苦戦しているじゃないか
シェイ:せ、...んせ、は...
ジェーラドス:お前は生きているだけで周りに不幸しか与えないんだよ
ジェーラドス:大人しく道具(むすこ)になれ
シェイ:(N)確かにそうだ。生きているだけで邪魔にしかならない自分は、先生にも...
0:
メアリー:そんなことないわ。
シェイ:先生?...あの人達は?
メアリー:凍らせてきたわ。すごい馬鹿力だから少ししか持たないと思うけど
シェイ:(N)そういう先生は腕が取れかけ、ボロボロになっていた
シェイ:(N)それでも昔のように僕を抱きしめてくれていた
メアリー:私の結界内だから呪いの効果も薄まると思うけど長くは持たないから手短に話すわね
シェイ:先生、ごめんな、さい
メアリー:謝らなくていいのよ。一緒にいたのは私がシェイのそばにいたかったからよ。魔力が吸われることくらい知ってたわ
メアリー:私の魔力は上限がない。だからいくらでも補えることができたのよだから、心配しないで
シェイ:せん、せい
メアリー:(涙ぐんで)むしろ、謝るのは私の方なのよ
シェイ:...なんで?
メアリー:あの時ちゃんと殺せていたならあなたが不幸になることは無かった。私だけが悪者でいられた
シェイ:先生。そんなこと、、
メアリー:あなたに辛い思いをさせてしまった。ごめんなさい。
シェイ:あれはあの、僕の親?のせいなんでしょ?先生は...
メアリー:...そろそろ時間かしら
メアリー:シェイを二度と不幸な目に合わせないと決めたのに、結局果たせそうにない
シェイ:な、なにをいってるの?
メアリー:本当はこの方法は使いたくなかったのだけど
メアリー:ごめんねシェイ。愛しているわ。貴方は、生きてね(シェイの額に口付けする)
シェイ:(N)先生との会話はこれが最後だった
0:
シェイ:(吐血)...ぐっ、ぁ、先生?
シェイ:...っ!
シェイ:(N)結界がなくなった瞬間また猛烈な痛みと闇に襲われた
シェイ:(N)でも、目の前の光景を見た瞬間そんなことはどうでもよくなった。
シェイ:(N)先生は僕を抱きしめたまま自分で心臓を貫ぬいていた
シェイ:せ、んせ...?せんせい、起きて...ねぇ
シェイ:(N)先生は死んでしまった。そんなこと見れば誰でも理解出来ることだ。でも僕は信じることが出来なかった。
シェイ:(N)痛い、とても痛い。痛いはずなのに、涙は出てこなかった
シェイ:なんで、...なんで、だよ
ジェーラドス:(吐血)ぐはっ!クソアリーが!心臓を自爆装置にしやがって!ありったけの魔力を入れやがって!
メアリー:(N)ごめんなさいシェイ。こうするしか無かったの
メアリー:(N)約束、守れなくてごめんなさい
0:過去回想
メアリー:シェイ。私はずっとあなたの先生であり、友達でいるわ
シェイ:...?とも、だち?
メアリー:そう友達。ずっとそばにいるわ
シェイ:ほんと、に?
メアリー:えぇほんとよ。約束(小指を差し出す)
シェイ:...やく、そく
0:
0:
シェイ:(小声で)..先生の、嘘つき
ジェーラドス:クソっ!魔力が蔓延(はびこ)っているせいでまともに動けん...あと少しで私は歴代最強の王となれるというのに...!
0:
シェイ:僕の、親、だったっけ?
ジェーラドス:はは、だからなんだ?私の道具になる気になった...
ジェーラドス:(N)思わず言葉を失ってしまった。呪いを受け逆らい続けているはずなのに彼は普通に喋り立っている。それは、彼のスリントの暴走を意味していた
ジェーラドス:(N)沈みかけた黒い月がちょうど後ろに重なってまるで本当に白い悪魔のようだった
ジェーラドス:今までのことは悪かったよ。全てなかったことにしよう!私ならすぐに忘れさすことが出来る!
ジェーラドス:だから、な?私と一緒に国を作り上げよう!
シェイ:...うるさい
ジェーラドス:(命を吸われていく)かっ...あ
シェイ:(N)僕はこの時初めて意志を持って、人を殺した
0:この時シェイの周りは全ての植物がなくなり砂漠のような状態になっていた
0:
0:
アンジュ:(N)私がリナント帝国に着いたのはもうまもなく朝が来ようとしている時だった。
アンジュ:(N)森の家には誰もいなかった。嫌な予感がして来てみれば戦いは終わった後のようだった
アンジュ:ここ、ほんとにリナント帝国なの?
アンジュ:(N)リナント帝国があったところはほぼ森の様になっていてその中心には
アンジュ:リアム...何をしているの?
アンジュ:(N)シェイの心臓にナイフを突き立てているリアムの姿があった
0:
0:数分前
リアム:(N)目を覚ました時、どうやら自分は森にいるようだった
リアム:...?僕は家にいたはず。なぜ森にいるんだ?っ!いった!
リアム:(N)何故か自分はとてもボロボロで血だらけだった。
リアム:(N)目の前にはずっと探していた「白い悪魔」と「黒い魔女」がおり、そして実の父が息絶えていた
リアム:(N)そして遠くからはスリントでこの光景を見ていたのであろう国民の歓声が上がっていた
リアム:(N)そう。僕の父の呪いが解け、悪事がバレたため、「白い悪魔」と「黒い魔女」は悪者ではなく英雄となった
リアム:(N)しかし...
シェイ:(貧血による息切れ)...なお、れ...かえっ、て...きてくれ
リアム:(N)目の前には既に事切れている「黒い魔女」と、スリントの限界を超越しきっている「白い悪魔」の姿があった
リアム:(N)そして思い出した。自分はただの道具でしか無かったのだと、ただの使い捨ての駒だったのだと、全てを思い出してしまった
リアム:(N)しかし今は絶望にくれている場合ではなかった。この少年のことを止めなければ、彼まで死んでしまう
リアム:シェイくん。であっているかな?
シェイ:(憔悴しきったカスれた声で)っ!...な、なん、ですか?
リアム:君のスリントは「死神」だったね。治癒するにはシェイくんに相当な負担がかかるだろ?それに彼女は...
シェイ:そんな、こと!わか...て、る(倒れる)
リアム:おっと!危ない!...どうして自らを傷つけようとする?君はこの国の...
シェイ:もう、死にたいんだ
リアム:え、?
シェイ:僕は、先生の..いない世界で、生きていけない。
シェイ:人には、生きているだけで、迷惑をかけてしまう
シェイ:でもいくら死のうとしても、スリントのせいで死ねないんだ
リアム:(N)弱々しい彼の声に僕は反論したくなった
リアム:(N)生きていればいいことがある。と
リアム:(N)でも、そんな安易な発言が出来るわけなかった。彼にとって生きるということは地獄そのものでしかないのだから
シェイ:だから、..ころ、して
リアム:(N)実の父に道具として生かされ、彼のことを傷つけまくった僕にはそれくらいしか罪を償う方法はなかった。
リアム:(N)無心で何度も何度も彼の心臓目掛けて刺した。出来れば痛くありませんように。ちゃんと死ねるようにと願いながら
シェイ:あ...り、が..とぅ...や、っと..らく、、に...な
リアム:(N)最後の瞬間彼は笑っていた。その顔はとても不格好だったけどとても幸せそうだった
0:
アンジュ:(平手打ちする)リアム!あなた、なんてことしてるのよ!
リアム:っ...見たらわかるだろ。「白い悪魔」を殺したんだ
アンジュ:そんなことわかってるわよ!私が彼を好きな事をわかってて!...っ、なんで、殺したのよ
リアム:...僕は「帝国警備隊」だ。自分の仕事をしたまでだよ
アンジュ:そんな...分かってる、...分かってるけど、、
リアム:アンジュ、
アンジュ:...なに?
リアム:婚約は解消しよう。
アンジュ:ぇ?
リアム:今まですまなかった。僕のことは未来永劫(みらいえいごう)忘れてくれ
アンジュ:リアム?
アンジュ:(N)彼にしては珍しく頭を下げていた。まるで昔の彼に戻ったように、
アンジュ:待って!あなたまさか
リアム:さようなら
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0:過去回想
アンジュ:リアムの国大変なことになっちゃったね
リアム:うん。なんだかとても怖かった、
アンジュ:大丈夫だよ!きっと元通りになるって!
リアム:うん!そうだね!...ねぇアンジュ
アンジュ:なぁに?
リアム:大きくなったら!僕と結婚しよ!
アンジュ:うん!!ふふっ!絶対、ぜーったい!約束だよ!
リアム:うん!もちろん!
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アンジュ:リアム!ねぇ!待ってよリアム!
リアム:(N)僕はリナント帝国の王族の1人。きっと一族の罪と「白い英雄」を殺した罰で処刑されるだろう。
リアム:(N)それによって、婚約者としてのアンジュの評価は落としたくなかった。君にはずっと笑っていて欲しい
リアム:(N)父の道具でなければ、もっと役に立てていたらアンジュのことを幸せにできたのかもしれない
リアム:ごめんなアンジュ。ずっと愛してるよ。元気でね
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リアム:(N)僕は数日後国家反逆罪で処刑された
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アンジュ:(N)世界はなんて残酷なんだろう。どうして私の愛する人ばかりが死ななくてはならないのだろう
アンジュ:バカリアム...私は心の声が聞こえるって何度も言ったのに...
アンジュ:(N)彼は実の父親に道具として操られているだけだった。それに私は気づくことが出来なかった。
アンジュ:婚約解消なんてしたくなかったくせに、最後まで...さいごまで、、
アンジュ:(N)私はシェイにもリアムにも謝ることが出来なかった。シェイにはこれ以上ない酷いことを言ってしまったのに
アンジュ:なんでそんなに幸せそうに眠っているの?
アンジュ:(N)シェイは滅多刺しにされているのにもかかわらず、とても幸せそうな顔で眠っていた
アンジュ:(N)私はシェイについてもリアムについてもちゃんと知らなかった。知ろうともしなかった
アンジュ:(N)もしかしたら救えたかもしれないのに、
アンジュ:なんて、これはただの私のエゴか
アンジュ:(N)結局私は全てにおいて中途半端だった。でもまだやれることはある
アンジュ:大天使様この先世界から...
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アンジュ:(N)この先同じような悲劇を繰り返さないよう心から祈った。きっと届くと信じて
アンジュ:シェイ...ごめ、んね...もう、すぐ...そっちに、行くね
0:それは月がまだ顔を覗く明け方の出来事だった
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リアム:これが「白い悪魔」と「黒い魔女」の悲劇の物語だ。
リアム:相変わらずこの世界はスリントで溢れている。もちろん悲劇の事件や悲劇の事故もね
リアム:いつの時代になっても、世界なんてそんなものなのさ
0:歯車はいつ狂ったのでしょうか?