台本概要
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タイトル | 影響を受けやすい、二人~アベンジャーズ風ver. |
---|---|
作者名 | 砂糖シロ (@siro0satou) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
とある影響を受けやすい男女の日常の一コマです。今回は某アメコミ映画に影響を受けた慎一と彩夏が二人で年末大掃除をやっつけるシーンとなっています。 ご使用の際はTwitterでご一報くださると嬉しいです(強制ではありません)。 商用目的の場合は必ずTwitter(@siro0satou)のDMにて作者の了承を得てください。 Skype・discord環境であればぜひ拝聴させて頂けると、今後もさらに意欲が増します! 音声ファイルなども大歓迎です!! 248 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
慎一 | 男 | 148 | (しんいち) 彩夏の夫。 流されやすい。 |
彩夏 | 女 | 149 | (あやか) 慎一の妻。 結構したたかで、慎一を上手に掌で転がしている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:影響を受けやすい、二人~アベンジャーズ風ver.
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0:舞台は自宅のリビング、年末の大掃除をしている慎一と彩夏
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0:ここからは素で
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慎一:はぁーーー、つっかれたぁ…。
彩夏:お疲れさまー。はい、コーヒー。
慎一:お、さんきゅ。
:
彩夏:…いやぁ舐めてたねー、年末の大掃除。
慎一:だなー。意外とやばいぞコレ。余裕もって始めたはずがいつの間にか大晦日だろー?
慎一:…今年中に終わるか?
彩夏:うーん…。一応リビング以外は全部終わったけど…ね…。
慎一:無駄に広いんだよなー、ここのリビング…。
彩夏:ねー。
慎一:………。
彩夏:………。
慎一:だぁあっ、もーっ!ぜんっぜん気分が乗らないっ!!
彩夏:同感。(笑)
慎一:ぬぁあっ!なんつーかさぁ、ちまっちま下向いて黙々と作業してんのがどうも飽きるっつーか、地味に肩と腰にダメージが蓄積されていく感じっつーか…。
彩夏:いやわかるよ、わかる。あたしも今、全身バッキバキだもん。
慎一:(溜息)…。
彩夏:っ、でもさっ、リビング以外はやっつけたじゃん!ねっ?ほらっ、それだけでも偉いよ!
慎一:…えー…そーかなぁ…?
彩夏:うんっ!偉い!
慎一:…偉い、か。…そうか、偉い、なっ!
彩夏:うんうんっ。
慎一:だなっ、俺たちは頑張った!
彩夏:うんっ!めちゃくちゃ頑張ったよ!
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彩夏:あ、そーだ!時間もさ、ちょうどお昼だし、ちょっと長めの休憩にしよ?
彩夏:慎一の好きなペペロンチーノ作るからっ♪
慎一:えっ!まじでっ!?やったぁあああ!
慎一:あっ、じゃあさ、飯食いながらあれ観ようぜ。『ブラック・リベンジャーズ』!
彩夏:いいねいいねっ!そうしよ!
彩夏:じゃあ、パパっと作ってきちゃうねっ。
慎一:サンキュー!
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0:それぞれ準備をする二人
:
彩夏:おまたせー!
慎一:うわぁーー!やっべぇ、これナス入ってんじゃん!まじ旨そーっ!!
彩夏:ふふっ、さっ、食べよ食べよ!
慎一:おうっ、じゃあ『ブラック・リベンジャーズ』再生するぞ!
彩夏:おっけーー♪
慎一:………これでよし。それじゃあ…。
彩夏:(同時に)いっただっきまぁーーーす。
慎一:(同時に)いただきます!
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0:ここからアベンジャーズ風に
:
彩夏:こちらキャプテン・アシッド。コード『L-03』、レベル4(フォー)の汚染区域に到着。これより隊員ナンバー09と共に、ミッション『Cアップ1530(ひとごー、さんまる)』を開始。
彩夏:……了解。追って20-00(ふたまる、まるまる)に報告します。
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彩夏:……ふぅ、思った以上に汚染がひどいわね…。
0:背伸びをしながらリビングに入ってくる慎一
慎一:……どれどれー、今回のバカンスは一体どんなとこ…ろ、って…うげぇ、なんだこれ…。
彩夏:やっと来たわね。早速任務開始よ。
慎一:(溜息)やれやれ、長い区間移動を終えたばかりでもう仕事かよ…。少しくらい休んだって文句は出ないと思うけど?
慎一:つー事で、どう?一緒にコーヒーでも…
彩夏:(被せて)無駄口を叩いている暇があるならさっさと来て。
:
彩夏:大体、事前に渡された資料を読みもせず、五時間もの間移動ポットの中で随分快適に過ごしていたみたいだけれど…一体あと何時間休めば仕事をする気になるのかしら?
慎一:しょうがないだろ?俺は、乗り物酔いが酷いんだ。
慎一:動く部屋の中であんなもん読んだら、一発で……(嘔吐するリアクション)だ。
彩夏:給料はアナタの休み時間に払われるわけではないのよ?ミスター。
慎一:(小馬鹿にした感じで)はっはっはっ、こりゃ随分手厳しいお姉様だ。そんなに眉間にしわ寄せちゃあ折角のお綺麗な顔が台無しだぜぇ?
彩夏:(睨む)…。
慎一:へーへー、りょーかいしましたよ。
彩夏:まったく…。
0:流しの排水溝を覗く彩夏
彩夏:……これはっ…酷いわね。…報告時よりも大分汚染が進んでいるみたい。レベル5を超えるフォーコリーダストの大気汚染に、有害なヘドロとバクテリアの浸潤。
彩夏:(鼻をつまんで)それにこの臭い。くっ…まるでマンハッタンの下水道だわ。
慎一:まぁ俺にとっては?そんなに悪い環境でもないけどなっ♪
彩夏:はぁ?っ、ちょっと…腰に手を回さないで。
慎一:これはこれは、とんだ失礼を。ミス・キャサリン。
彩夏:(素で)ふっ…。(笑)またキャサリン…。
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彩夏:(咳払い)…それで?悪い環境じゃないとは一体どういう意味?
慎一:そんなの聞かなくてもわかるだろ?組織の中でもトップクラスの美女と名高い君となら、何処に居たって天国って事さ♪
慎一:それが世界一臭い下水道だろうとスラム街だろうと、ね。
彩夏:(溜息)…この物質はサンプルとして持ち帰りましょ。
慎一:おいおい、無視しないでくれよ。クールな君も素敵だけどあんまり虐めると俺、落ち込んじゃうよー。
彩夏:仕事をする気が無いのならせめて邪魔しないで。
慎一:なー、キャサリーン。折角二人っきりになれたんだぜ?そんなに冷たくしなくたっていいじゃないか。
彩夏:………。
慎一:ウチの近くにおすすめのオイスターバーが出来たんだ。新鮮な牡蠣と美味いクラフトビールを出すってんでちょっとした話題になってるんだぜ。な?いいだろ?試しに一回だけ…
彩夏:「キャプテン」。
慎一:は?
彩夏:私の事は「キャプテン」と呼んで。
慎一:おいおいおいおい、そんな呼び方じゃ親密になれないじゃないか、キャサリ…
彩夏:(被せて)なる必要ないし、なるつもりもない。これは「命令」よ。
慎一:………(舌打ち)なんだよ…白けるな。
0:うんざりと言った様子で慎一に詰め寄る彩夏
彩夏:お願い、スポーン。
慎一:おわっ!?
慎一:(素で)…ん?え?…す、スポーン?
彩夏:えぇ、貴方の名前はスポーン。そうでしょ?
慎一:…あ、あぁそうだった。ははは、長距離移動の後遺症がまぁだ残ってるみたいだ。(笑)
彩夏:ねぇ、これは私が初めてキャプテンを任された大事な任務なの。私一人でどうにか出来る作業だったら初めからスポーン、アナタを呼んだりしてない。
慎一:あー…(小声)スポーンって名前一体どっからきたんだ…?
彩夏:「ツーマンセル」、つまり二人でこなさなきゃならないって意味よ、分かる?
慎一:あ……あぁ。
彩夏:(冷たく)…わかったなら速やかに自分の作業に入って頂戴。
0:一人離れる彩夏
慎一:けっ、何だアイツ。口を開けば「任務、にんむ、ニンム」…任務の事しか頭にねぇのかよ、ったく。
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慎一:あーあー、クソ真面目女なだぜ。なぁーにが「お願い、スポーン」だ、お高くとまりやがって。そんなに好きなら一生任務とヤってろっての、ビッチが。
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慎一:しっかし…本当にしけた場所だな…。人どころかモンスター一匹居やしねー…。
0:足元に落ちているエアコンのリモコンを見つける慎一
慎一:……ん?何だこれ、…何かのリモコンか?……随分汚れてんな…。
慎一:おーい、キャサリーン!
彩夏:………。
慎一:(舌打ち)めんどくせえな…おいっ、キャプテ……ちょ、何だよそりゃあ…。
彩夏:……これが、ここのボスよ。
0:目の前にあるのは埃とカビで汚れたエアコン
慎一:マ…ジかよ…。
慎一:…?ボディになんか書いてあるぞ。M、I、T、S…U…ミツ、ビシ?その後の文字は…(舌打ち)あぁ駄目だ、俺には読めそうにもない。
彩夏:あれは旧ジャポニカ文字ね。恐らく「霧ヶ峰」と書いてあるわ。
慎一:どういう意味だ…?いや、それよりも、この薄汚れた白いデカブツが、ここいら全域のほこりダスト…
彩夏:(被せて)フォーコリーよ。
慎一:あ、あぁ…そのフォーコリーダストを生み出してる、って事か…。
彩夏:えぇ、その通りよ…。
彩夏:私たちの最初の任務は、この汚れた子猫ちゃんを泡風呂に入れて綺麗にブラッシングしてあげる事になりそうね。
慎一:ははっ、そりゃあ楽しそうなお仕事だ。
0:エアコンのセンサーが二人を感知して動き出す
彩夏:はっ!!スポーン、ヤツがこっちに気づいたわ!能力を開放したらすぐに動けるよう待機して。
慎一:オッケー、そんじゃあ遠慮なくいくぜぇっ!!来いっ!俺のスティーン、グローーーブッ!!
0:ズボンの後ろポケットから黄色いゴム手袋を取り出し、説明口調になる慎一
慎一:(M)説明しよう!一見ただの黄色いゴム手袋に見えるこの「スティーン・グローブ」は、特殊な性状のゴムを特殊な方法で特殊な手袋に加工した、オレ専用の特殊な防具である。耐電性に加え、耐熱性にも優れたこの世に二つと無い、特殊で特殊な特殊装備なのだっ!
彩夏:(笑いを堪える)特殊が多過ぎる……っ。
慎一:(笑う)…。
0:両手に黄色いゴム手袋をはめる慎一
慎一:よしっ!これで俺はいつでも行けるぜ!
彩夏:…了解。(笑)
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彩夏:目標を前方上空に確認!ターゲットロック!
慎一:ロックオン!!まずはその硬い装甲を開かせてやるっ!
彩夏:……いいわっ、その調子よ!
慎一:くっ……見えた!!
彩夏:オーケイ、内部が露出した!スポーン、そのまま中へ潜入して。くれぐれも慎重に…。
慎一:ぐっ……くそっ。
彩夏:?…どうしたの、スポーン!
慎一:(苦しそうに)こいつ…羽が邪魔して…それに汚染された熱風がもろに当たって…ごほっ、ごほっ!……これじゃあ、先に進めそうもないっ。
彩夏:……なるほど。先にそいつの動きを止めなきゃならないってことね。
慎一:くっ…顔が焼けそうだ…!
彩夏:だけど……どうやって…。
慎一:キャサリン!!早くこいつをどうにかしてくれ!!このままじゃ敵をせん滅する前に俺が干上がっちまう!
彩夏:…っ。
0:床に落ちているリモコンを見つける彩夏
彩夏:……はっ!あれは…?
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彩夏:……さっきスポーンが持っていた物だわ…何かのスイッチみたいね。けれど、一体何の…?
慎一:キャサリーーーーンッ!!
彩夏:……この文字!ミツ、ビシ…って、あの機体と同じ!?はっ!まさか、これはっ!あのモンスターを操る事ができるリモコンなの!?
慎一:げっほごっほごっほ!!
彩夏:ここの旧ジャポニカ文字……意味は、「運転」と…「停止」?それと…「風量」ですって?押したらどうなるのかしら。……ポチっ。
慎一:ぐああぁぁっ!か、風がっ、強くなって……あっちぃいいいっ!って、キャサリィン!?そこに居たら俺が逃げられな…
彩夏:(被せて)頑張って、スポーン!もう少しで何か掴めそうよ!
慎一:(素で)あちっ、あちちちちっ!!あっつい!あついってっっ!!!
彩夏:くっ…一体どれを押せば…
慎一:(素で)「停止」に決まってるだろ!!!!
彩夏:(素で)ふっ……。(笑)
彩夏:……ん?これは「モード」?…「モード」ってどういう意味かしら。……ポチっと。
慎一:(素で)いやポチっとじゃねえんだよっ!!……って、さむっ!!
彩夏:スポーン?何か変わった事が!?
慎一:(素で)さむーーーーーいっ!!
彩夏:サム…?サムなんて名前の隊員ウチの組織に居たかしら…?
慎一:(素で)いやダメダメダメダメっ、十二月にクーラーはまずいってっ!!あかんこれマジで風邪ひくっ!止めて!!!
彩夏:(笑いを堪える)…っ。
彩夏:…もうっ(笑)、何か変化があったのならちゃんと報告して!(笑)
慎一:きゅ、急に熱風が冷風に変わった!!……このままじゃ、氷漬けにされちまうっ!何とかしてくれキャサリン!!
彩夏:「キャ・プ・テ・ン」。私の事はそう呼ぶように言ったはずよ?
慎一:ちょっ、今そんなことを言っている場合じゃ…っ。
彩夏:あら、私みたいなくそ真面目なビッチの事なんて「キャプテン」とは呼べない、そう言う事かしら?
慎一:っ、くそ…さっきの聞いてやがったのか…。
彩夏:んんー?これはなぁーんのボタンかしらぁー?「ス、ウィ、ン、グ」?
慎一:っ!?ちょ、ばっか、やめろ!
彩夏:押してみればわかるわよね、そーれ、ポチッとな♪
慎一:やめっ、……ぐっ、は、羽がっ、羽が上下に動いてっ、全身に冷風が当たるうううううっ!!!
彩夏:(笑いを堪える)……っ。(笑)
慎一:さみぃいいいいっ!
慎一:(震えだす)や、やめてくれ…俺が悪かった…あ、謝るから…。
彩夏:えぇー?なぁーんて言ったのかしらー?ぜぇーんぜん聞えないわぁー?
慎一:……くっ、…すまないっ、俺が悪かった……もう二度と逆らわないっ!だからコイツを止めてくれキャプテン!!
彩夏:ふふっ、ギリギリ及第点よミスター。……「停止」っと。
0:エアコンが止まる
慎一:はぁーっ、はぁーっ、……凍え死ぬかと思った…。
彩夏:ご苦労様、スポーン。アナタの尊い犠牲のお陰でとっても良いサンプルが採れたわ。
慎一:(小声)……くそっ、悪魔め。
彩夏:(ドスを効かせて)もう一度風、浴びとく?
慎一:すみませんでした。
彩夏:よろしい♪
彩夏:それじゃあ気を取り直して、子猫ちゃんのバスタイムと行きましょ。
慎一:…イエス、マム。
0:
慎一:……くっ、なかなかしつこいぞこのミュータント・モルド。がっつりこびりついて俺の「ミスター・ゲキオチCX」だけじゃ駆除しきれない…。
彩夏:仕方ないわね…私の「クローリーン」を出すわ。
0:彩夏が手に持ったハイターの原液を見て驚く慎一
慎一:(素で)?クロー…、っていやそれハイター…
彩夏:(咳払い)何か?
慎一:あ、い、いや。
:
慎一:…なぁ、それってデンジャーレベル3(スリー)の特殊スキルだろ?組織の中でも特に危険物扱いされてるって…。
彩夏:そんな大層なモノじゃないわ。取り扱いにちょっぴり注意が必要なだけのなんてことない便利な能力よ。
慎一:いや、だけど…。
彩夏:そうね…確かに直接触れれば皮膚は溶け、ひどい炎症を起こすし、気体を吸い込めば重度の呼吸困難と意識障害をひき起こすわ。
慎一:げっ…。
彩夏:特に、私の双子の妹、アンジェリーンの「オキシマイト」と併せたら、小規模の都市を丸ごと機能停止に出来るくらいの毒ガスだって作り出せる。
慎一:どこが「なんてことない能力」だよ…ぞっとしないぜ。
彩夏:けれど、しっかり換気してきちんと防具を身に着けさえすれば人体に悪い影響は出ない。この能力ほど今回の任務に適した武器は無いと思うけど?
慎一:いや、でも…。
彩夏:……あーら、無敵のエース「アブソープション」様が、クソビッチごときのなぁーんてことない能力にまさかビビってるのかしらぁ?
慎一:何だと…?(小声)あ、あぶ…アブソー…?
彩夏:あれだけ偉そうに息巻いていたクセに、案外チキンなのね。
慎一:(小声)アブソープってなんだ…?
彩夏:「アブソープション」よ。「吸収」って意味。自分の二つ名を忘れたの?スポーン・G。
慎一:………スポンジ。(笑)
彩夏:………。(笑)
慎一:(咳払い)おいっ、いい加減にしろよ。
彩夏:何よ、違うって言いたいの?
慎一:当たり前だ、俺を誰だと思っている。
彩夏:んふふ、誰だったかしら?
慎一:…む、無敵のエース、「アブショープソン」様だ!(笑)
彩夏:(素で)決め台詞噛むなし(笑)
慎一:(素で)……ふっ。(笑)
慎一:キャサ…
彩夏:(強めの咳払い)
慎一:……君のハイター…じゃなくて、その強力なクロなんちゃらってヤツを俺の「ミスター・ゲキオチCX」に出してくれ。
彩夏:えぇ、お安い御用よ、エース。
慎一:………よし。それじゃあ、行くぞ!うおりゃぁあああっ!!
彩夏:必要以上に顔を近づけないで、スポーン!クローリーンを吸い込めば、いくらその黄色い手袋型の特殊な防具を着けたアナタでも無傷ではいられないわ!
慎一:わかってるよっ!生憎このグローブは両手専用!顔には装着出来ないからな!!
彩夏:(素で)……そうね。(笑)手袋は手にはめるものだから…。(笑)
慎一:ここは俺に任せとけっ!おりゃおりゃおりゃおりゃーっ!
彩夏:はっ!見て、スポーン!見る見るうちにカビが…じゃなくてミュータント・モルド?が落ちていくわ!!
慎一:こりゃスゲー!あっという間に消えていく…っ!
彩夏:これなら一網打尽ね。
0:急に手を止める慎一
慎一:………っ。
彩夏:………スポーン?
慎一:くっ……なんだ…これは…っ。
彩夏:スポーン!?一体何が……。
慎一:ぐっ、ぐあああっ、手がっ、俺の手がぁあああっ!
彩夏:っ…これは…スポーンの右手が…汚染されている!?
慎一:……くぅっ、右手がっ……い、う事を…きか……ないっ!
彩夏:スポーン!!しっかりして!スポーン!!
慎一:………逃げろ…キャサリン…。
彩夏:何を言ってるのスポーン!アナタを置いて行けるわけが…
慎一:(被せて)いいから行けっ!!
彩夏:……スポーン…。
慎一:右手から…モルドが侵食してきているのが……わかるんだ…。
彩夏:っ!……そんな…。
慎一:……っ、すごいスピードだ。この調子じゃ、あと数分もすれば……俺の身体は……完全に、乗っ取られ…ちまう…。
彩夏:っ、何か、何か手があるはずっ!
慎一:………無駄だ。
彩夏:どうしてっ!?
慎一:時間が……足りない。いくら君が……優秀だろうと…、もう、手遅れ……っぐあああっ!
彩夏:スポーン!!
慎一:………頼む、行ってくれ……君に、これ以上無様なところを見られたくないんだ……。
彩夏:………。
慎一:ははっ、丁度おあつらえ向きに……ポケットにこんなものが入ってた…。
0:ポケットからナスビを取り出す慎一
彩夏:(素で)……え?なんでナスビ?
慎一:君が行ったら……俺はコイツで頭をぶち抜く。
彩夏:(素で)ぶっ。(笑)
:
彩夏:……そ、そんな……その「銃」で自害するつもり!?
慎一:あぁ…カッコいいだろ?……わかったら、さっさと行ってくれ…もう、限界…だ。
彩夏:(涙を堪えた演技)………アナタの事は……忘れないわ。
慎一:ふっ、光栄だよ。一生君の記憶の中に居られるなんて……。
彩夏:……さようなら、スポーン。
慎一:………さようなら、……キャプテン・アシッド。
0:リビングから出ていく彩夏
彩夏:…………アナタは最高のヒーローよ、スポーン・G・ボブ……。
:
:
:
0:ここから素に戻って
:
慎一:ふぅーー、やっと終わったー。
彩夏:お疲れ様ー。
慎一:遊びながらやると案外捗るもんだな。
彩夏:だねー。おかげでキッチンもリビングもピッカピカだよー。
慎一:なりきりゲームしながら掃除ってのも結構楽しいな。
彩夏:まぁねー。でも序盤遊びすぎてエアコンの周り拭いただけで三十分かかっちゃったけど。(笑)
慎一:いや、ほんとそれな。
慎一:ってかさ。
彩夏:え?
慎一:俺の名前、スポンジ・ボブだったの?(笑)
彩夏:あぁ…えーだって、慎一がキャサリンって言うから。(笑)
慎一:それと何の関係があんだよー。
彩夏:あたしがキャサリンだったら、慎一はボブでしょ?
慎一:だったらボブでいいじゃんか。
彩夏:いやぁー掃除でボブって言ったらスポンジ・ボブ一択っしょ。(笑)
慎一:はぁ?
彩夏:それに黄色い手袋持ってたし。
慎一:へ?それ…関係ある?
彩夏:スポンジ・ボブって黄色いイメージない?
慎一:なんだよそれ。(笑)
慎一:それにしても、フォーコリーとかアブソーなんちゃらなんてそれらしい単語よく咄嗟に思いついたな。
彩夏:えー、思いつくって言うか…アブソープションはただ「吸収」って言葉を英語にしただけだし。
慎一:いや、そんな英単語そうそう出てこないって。
彩夏:そう?
彩夏:あ、あとフォーコリーは…
慎一:「ほこり」だろ?
彩夏:そう。(笑)
彩夏:よくわかったね。
慎一:まぁな。他にもさー、あの、何て言ってたっけ?最初の方で言ってた…。
彩夏:…ごめん、適当に言ってたからあたしもよく覚えてない。何て言ってたっけ?(笑)
慎一:いやっ、俺に聞くなよ。(笑)
彩夏:それもそっか。(笑)
:
慎一:お……カウントダウン始まった。
彩夏:あー、ほんとだぁ。あと少しで今年も終わるねぇー。
慎一:だな…。
彩夏:………。
慎一:今年も色々あったな。
彩夏:そうだねぇ。六月に結婚式挙げて、夏祭り行って…。
慎一:そうそう、山田さんちと俺の同僚の田中に遭遇したんだったな。(笑)
彩夏:あぁー、あったねー。
彩夏:もー、あのあとすっごい大変だったんだからー。
慎一:ははっ、そーいや言ってたな。会うたびに質問攻めにされたって。
彩夏:そうだよー!しかも毎っ回「仲が良くて羨ましいわぁー、ウチなんて旦那が無口でねー、何言っても『うん』とか『すん』とかしか言わないのよー」なぁんて嫌味かましてくるんだから。
慎一:いや、「うん」はわかるけど「すん」って何だよ。(笑)
彩夏:知らないよー。しかもあの後から、山田さんだけじゃなくって上の階の城山さんとか市川さんにまで生ぬるーい目で見られるようになっちゃってさぁ。
慎一:ははは、お疲れ。
彩夏:…むぅー。慎一は良いよねっ。山田さんに会う事もあんま無いしさ。
慎一:いや、それはそうだけど、こっちだって結構大変だったんだぞ?
彩夏:え、何が?
慎一:あの夏祭りの時。やっぱ田中のヤツにがっつり見られてたみたいでさぁ。
彩夏:え……。
慎一:「嫁とごっこ遊びなんていいなぁーーー」って羨ましがられて。
彩夏:あはは……。
慎一:しかもアイツ、俺らのなりきりに影響されたのか「好きな子に告白する予行練習に付き合ってくれ!」なんつって、すんげーしつこくってさー。
彩夏:えー、何それ。(笑)
慎一:あんまりにも必死だったから仕方なく付き合ってやったら、…その現場、部長に見られてて…。
彩夏:はぁっ!?えっ、そ、それで!?
慎一:部長には「田中が演劇やってるんです」っつってなんとか誤魔化したけど…部長が課長にも話したみたいでさ…未だに俺と田中がそーゆー関係だって誤解してんだよぉー…。
彩夏:ぶっ…。(笑)
慎一:おいー、マジで笑い事じゃないんだってー。
彩夏:あっははは、ごめんごめん。
慎一:……つーか、この間の高級しゃぶしゃぶ、俺のその犠牲から出た棚ぼただからな。
彩夏:え?どういう事?
慎一:変なことに付き合わせた詫びに田中に奢らせたんだよ。(笑)
彩夏:あー、なるほどねー。急に「西麻布の高級しゃぶしゃぶ食べに行こうぜ」なんて言うからどうしたのかと思ったけど……そーいう事だったのね。(笑)
慎一:いやー、あれは旨かったよなー。
彩夏:美味しかったねー。
慎一:あ、そう言やさ、駅前に新しく出来たオイスターバー行ってみたくね?
彩夏:え、それって…さっきのナリキリ中に言ってたやつ?
慎一:そうそう。
彩夏:えっ、本当にあるの!?
慎一:ああ。新鮮な牡蠣と美味いクラフトビールだぜ!?これは行くっきゃないだろー!!
彩夏:えぇー!行きたい行きたいっ!!
慎一:オッケー。じゃあ年明けて、落ち着いたら行ってみようぜ。
彩夏:やだー、今からもう楽しみなんだけどーっ。
慎一:俺も俺もっ。
彩夏:(同時に)………あ。
慎一:(同時に)………お。
:
慎一:明けたな。
彩夏:ね。あけましておめでとう。
慎一:あぁ、おめでとう。今年もよろしくな。
彩夏:うん。よろしくね。
0:影響を受けやすい、二人~アベンジャーズ風ver.
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0:舞台は自宅のリビング、年末の大掃除をしている慎一と彩夏
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0:ここからは素で
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慎一:はぁーーー、つっかれたぁ…。
彩夏:お疲れさまー。はい、コーヒー。
慎一:お、さんきゅ。
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彩夏:…いやぁ舐めてたねー、年末の大掃除。
慎一:だなー。意外とやばいぞコレ。余裕もって始めたはずがいつの間にか大晦日だろー?
慎一:…今年中に終わるか?
彩夏:うーん…。一応リビング以外は全部終わったけど…ね…。
慎一:無駄に広いんだよなー、ここのリビング…。
彩夏:ねー。
慎一:………。
彩夏:………。
慎一:だぁあっ、もーっ!ぜんっぜん気分が乗らないっ!!
彩夏:同感。(笑)
慎一:ぬぁあっ!なんつーかさぁ、ちまっちま下向いて黙々と作業してんのがどうも飽きるっつーか、地味に肩と腰にダメージが蓄積されていく感じっつーか…。
彩夏:いやわかるよ、わかる。あたしも今、全身バッキバキだもん。
慎一:(溜息)…。
彩夏:っ、でもさっ、リビング以外はやっつけたじゃん!ねっ?ほらっ、それだけでも偉いよ!
慎一:…えー…そーかなぁ…?
彩夏:うんっ!偉い!
慎一:…偉い、か。…そうか、偉い、なっ!
彩夏:うんうんっ。
慎一:だなっ、俺たちは頑張った!
彩夏:うんっ!めちゃくちゃ頑張ったよ!
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彩夏:あ、そーだ!時間もさ、ちょうどお昼だし、ちょっと長めの休憩にしよ?
彩夏:慎一の好きなペペロンチーノ作るからっ♪
慎一:えっ!まじでっ!?やったぁあああ!
慎一:あっ、じゃあさ、飯食いながらあれ観ようぜ。『ブラック・リベンジャーズ』!
彩夏:いいねいいねっ!そうしよ!
彩夏:じゃあ、パパっと作ってきちゃうねっ。
慎一:サンキュー!
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0:それぞれ準備をする二人
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彩夏:おまたせー!
慎一:うわぁーー!やっべぇ、これナス入ってんじゃん!まじ旨そーっ!!
彩夏:ふふっ、さっ、食べよ食べよ!
慎一:おうっ、じゃあ『ブラック・リベンジャーズ』再生するぞ!
彩夏:おっけーー♪
慎一:………これでよし。それじゃあ…。
彩夏:(同時に)いっただっきまぁーーーす。
慎一:(同時に)いただきます!
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0:ここからアベンジャーズ風に
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彩夏:こちらキャプテン・アシッド。コード『L-03』、レベル4(フォー)の汚染区域に到着。これより隊員ナンバー09と共に、ミッション『Cアップ1530(ひとごー、さんまる)』を開始。
彩夏:……了解。追って20-00(ふたまる、まるまる)に報告します。
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彩夏:……ふぅ、思った以上に汚染がひどいわね…。
0:背伸びをしながらリビングに入ってくる慎一
慎一:……どれどれー、今回のバカンスは一体どんなとこ…ろ、って…うげぇ、なんだこれ…。
彩夏:やっと来たわね。早速任務開始よ。
慎一:(溜息)やれやれ、長い区間移動を終えたばかりでもう仕事かよ…。少しくらい休んだって文句は出ないと思うけど?
慎一:つー事で、どう?一緒にコーヒーでも…
彩夏:(被せて)無駄口を叩いている暇があるならさっさと来て。
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彩夏:大体、事前に渡された資料を読みもせず、五時間もの間移動ポットの中で随分快適に過ごしていたみたいだけれど…一体あと何時間休めば仕事をする気になるのかしら?
慎一:しょうがないだろ?俺は、乗り物酔いが酷いんだ。
慎一:動く部屋の中であんなもん読んだら、一発で……(嘔吐するリアクション)だ。
彩夏:給料はアナタの休み時間に払われるわけではないのよ?ミスター。
慎一:(小馬鹿にした感じで)はっはっはっ、こりゃ随分手厳しいお姉様だ。そんなに眉間にしわ寄せちゃあ折角のお綺麗な顔が台無しだぜぇ?
彩夏:(睨む)…。
慎一:へーへー、りょーかいしましたよ。
彩夏:まったく…。
0:流しの排水溝を覗く彩夏
彩夏:……これはっ…酷いわね。…報告時よりも大分汚染が進んでいるみたい。レベル5を超えるフォーコリーダストの大気汚染に、有害なヘドロとバクテリアの浸潤。
彩夏:(鼻をつまんで)それにこの臭い。くっ…まるでマンハッタンの下水道だわ。
慎一:まぁ俺にとっては?そんなに悪い環境でもないけどなっ♪
彩夏:はぁ?っ、ちょっと…腰に手を回さないで。
慎一:これはこれは、とんだ失礼を。ミス・キャサリン。
彩夏:(素で)ふっ…。(笑)またキャサリン…。
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彩夏:(咳払い)…それで?悪い環境じゃないとは一体どういう意味?
慎一:そんなの聞かなくてもわかるだろ?組織の中でもトップクラスの美女と名高い君となら、何処に居たって天国って事さ♪
慎一:それが世界一臭い下水道だろうとスラム街だろうと、ね。
彩夏:(溜息)…この物質はサンプルとして持ち帰りましょ。
慎一:おいおい、無視しないでくれよ。クールな君も素敵だけどあんまり虐めると俺、落ち込んじゃうよー。
彩夏:仕事をする気が無いのならせめて邪魔しないで。
慎一:なー、キャサリーン。折角二人っきりになれたんだぜ?そんなに冷たくしなくたっていいじゃないか。
彩夏:………。
慎一:ウチの近くにおすすめのオイスターバーが出来たんだ。新鮮な牡蠣と美味いクラフトビールを出すってんでちょっとした話題になってるんだぜ。な?いいだろ?試しに一回だけ…
彩夏:「キャプテン」。
慎一:は?
彩夏:私の事は「キャプテン」と呼んで。
慎一:おいおいおいおい、そんな呼び方じゃ親密になれないじゃないか、キャサリ…
彩夏:(被せて)なる必要ないし、なるつもりもない。これは「命令」よ。
慎一:………(舌打ち)なんだよ…白けるな。
0:うんざりと言った様子で慎一に詰め寄る彩夏
彩夏:お願い、スポーン。
慎一:おわっ!?
慎一:(素で)…ん?え?…す、スポーン?
彩夏:えぇ、貴方の名前はスポーン。そうでしょ?
慎一:…あ、あぁそうだった。ははは、長距離移動の後遺症がまぁだ残ってるみたいだ。(笑)
彩夏:ねぇ、これは私が初めてキャプテンを任された大事な任務なの。私一人でどうにか出来る作業だったら初めからスポーン、アナタを呼んだりしてない。
慎一:あー…(小声)スポーンって名前一体どっからきたんだ…?
彩夏:「ツーマンセル」、つまり二人でこなさなきゃならないって意味よ、分かる?
慎一:あ……あぁ。
彩夏:(冷たく)…わかったなら速やかに自分の作業に入って頂戴。
0:一人離れる彩夏
慎一:けっ、何だアイツ。口を開けば「任務、にんむ、ニンム」…任務の事しか頭にねぇのかよ、ったく。
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慎一:あーあー、クソ真面目女なだぜ。なぁーにが「お願い、スポーン」だ、お高くとまりやがって。そんなに好きなら一生任務とヤってろっての、ビッチが。
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慎一:しっかし…本当にしけた場所だな…。人どころかモンスター一匹居やしねー…。
0:足元に落ちているエアコンのリモコンを見つける慎一
慎一:……ん?何だこれ、…何かのリモコンか?……随分汚れてんな…。
慎一:おーい、キャサリーン!
彩夏:………。
慎一:(舌打ち)めんどくせえな…おいっ、キャプテ……ちょ、何だよそりゃあ…。
彩夏:……これが、ここのボスよ。
0:目の前にあるのは埃とカビで汚れたエアコン
慎一:マ…ジかよ…。
慎一:…?ボディになんか書いてあるぞ。M、I、T、S…U…ミツ、ビシ?その後の文字は…(舌打ち)あぁ駄目だ、俺には読めそうにもない。
彩夏:あれは旧ジャポニカ文字ね。恐らく「霧ヶ峰」と書いてあるわ。
慎一:どういう意味だ…?いや、それよりも、この薄汚れた白いデカブツが、ここいら全域のほこりダスト…
彩夏:(被せて)フォーコリーよ。
慎一:あ、あぁ…そのフォーコリーダストを生み出してる、って事か…。
彩夏:えぇ、その通りよ…。
彩夏:私たちの最初の任務は、この汚れた子猫ちゃんを泡風呂に入れて綺麗にブラッシングしてあげる事になりそうね。
慎一:ははっ、そりゃあ楽しそうなお仕事だ。
0:エアコンのセンサーが二人を感知して動き出す
彩夏:はっ!!スポーン、ヤツがこっちに気づいたわ!能力を開放したらすぐに動けるよう待機して。
慎一:オッケー、そんじゃあ遠慮なくいくぜぇっ!!来いっ!俺のスティーン、グローーーブッ!!
0:ズボンの後ろポケットから黄色いゴム手袋を取り出し、説明口調になる慎一
慎一:(M)説明しよう!一見ただの黄色いゴム手袋に見えるこの「スティーン・グローブ」は、特殊な性状のゴムを特殊な方法で特殊な手袋に加工した、オレ専用の特殊な防具である。耐電性に加え、耐熱性にも優れたこの世に二つと無い、特殊で特殊な特殊装備なのだっ!
彩夏:(笑いを堪える)特殊が多過ぎる……っ。
慎一:(笑う)…。
0:両手に黄色いゴム手袋をはめる慎一
慎一:よしっ!これで俺はいつでも行けるぜ!
彩夏:…了解。(笑)
:
彩夏:目標を前方上空に確認!ターゲットロック!
慎一:ロックオン!!まずはその硬い装甲を開かせてやるっ!
彩夏:……いいわっ、その調子よ!
慎一:くっ……見えた!!
彩夏:オーケイ、内部が露出した!スポーン、そのまま中へ潜入して。くれぐれも慎重に…。
慎一:ぐっ……くそっ。
彩夏:?…どうしたの、スポーン!
慎一:(苦しそうに)こいつ…羽が邪魔して…それに汚染された熱風がもろに当たって…ごほっ、ごほっ!……これじゃあ、先に進めそうもないっ。
彩夏:……なるほど。先にそいつの動きを止めなきゃならないってことね。
慎一:くっ…顔が焼けそうだ…!
彩夏:だけど……どうやって…。
慎一:キャサリン!!早くこいつをどうにかしてくれ!!このままじゃ敵をせん滅する前に俺が干上がっちまう!
彩夏:…っ。
0:床に落ちているリモコンを見つける彩夏
彩夏:……はっ!あれは…?
:
彩夏:……さっきスポーンが持っていた物だわ…何かのスイッチみたいね。けれど、一体何の…?
慎一:キャサリーーーーンッ!!
彩夏:……この文字!ミツ、ビシ…って、あの機体と同じ!?はっ!まさか、これはっ!あのモンスターを操る事ができるリモコンなの!?
慎一:げっほごっほごっほ!!
彩夏:ここの旧ジャポニカ文字……意味は、「運転」と…「停止」?それと…「風量」ですって?押したらどうなるのかしら。……ポチっ。
慎一:ぐああぁぁっ!か、風がっ、強くなって……あっちぃいいいっ!って、キャサリィン!?そこに居たら俺が逃げられな…
彩夏:(被せて)頑張って、スポーン!もう少しで何か掴めそうよ!
慎一:(素で)あちっ、あちちちちっ!!あっつい!あついってっっ!!!
彩夏:くっ…一体どれを押せば…
慎一:(素で)「停止」に決まってるだろ!!!!
彩夏:(素で)ふっ……。(笑)
彩夏:……ん?これは「モード」?…「モード」ってどういう意味かしら。……ポチっと。
慎一:(素で)いやポチっとじゃねえんだよっ!!……って、さむっ!!
彩夏:スポーン?何か変わった事が!?
慎一:(素で)さむーーーーーいっ!!
彩夏:サム…?サムなんて名前の隊員ウチの組織に居たかしら…?
慎一:(素で)いやダメダメダメダメっ、十二月にクーラーはまずいってっ!!あかんこれマジで風邪ひくっ!止めて!!!
彩夏:(笑いを堪える)…っ。
彩夏:…もうっ(笑)、何か変化があったのならちゃんと報告して!(笑)
慎一:きゅ、急に熱風が冷風に変わった!!……このままじゃ、氷漬けにされちまうっ!何とかしてくれキャサリン!!
彩夏:「キャ・プ・テ・ン」。私の事はそう呼ぶように言ったはずよ?
慎一:ちょっ、今そんなことを言っている場合じゃ…っ。
彩夏:あら、私みたいなくそ真面目なビッチの事なんて「キャプテン」とは呼べない、そう言う事かしら?
慎一:っ、くそ…さっきの聞いてやがったのか…。
彩夏:んんー?これはなぁーんのボタンかしらぁー?「ス、ウィ、ン、グ」?
慎一:っ!?ちょ、ばっか、やめろ!
彩夏:押してみればわかるわよね、そーれ、ポチッとな♪
慎一:やめっ、……ぐっ、は、羽がっ、羽が上下に動いてっ、全身に冷風が当たるうううううっ!!!
彩夏:(笑いを堪える)……っ。(笑)
慎一:さみぃいいいいっ!
慎一:(震えだす)や、やめてくれ…俺が悪かった…あ、謝るから…。
彩夏:えぇー?なぁーんて言ったのかしらー?ぜぇーんぜん聞えないわぁー?
慎一:……くっ、…すまないっ、俺が悪かった……もう二度と逆らわないっ!だからコイツを止めてくれキャプテン!!
彩夏:ふふっ、ギリギリ及第点よミスター。……「停止」っと。
0:エアコンが止まる
慎一:はぁーっ、はぁーっ、……凍え死ぬかと思った…。
彩夏:ご苦労様、スポーン。アナタの尊い犠牲のお陰でとっても良いサンプルが採れたわ。
慎一:(小声)……くそっ、悪魔め。
彩夏:(ドスを効かせて)もう一度風、浴びとく?
慎一:すみませんでした。
彩夏:よろしい♪
彩夏:それじゃあ気を取り直して、子猫ちゃんのバスタイムと行きましょ。
慎一:…イエス、マム。
0:
慎一:……くっ、なかなかしつこいぞこのミュータント・モルド。がっつりこびりついて俺の「ミスター・ゲキオチCX」だけじゃ駆除しきれない…。
彩夏:仕方ないわね…私の「クローリーン」を出すわ。
0:彩夏が手に持ったハイターの原液を見て驚く慎一
慎一:(素で)?クロー…、っていやそれハイター…
彩夏:(咳払い)何か?
慎一:あ、い、いや。
:
慎一:…なぁ、それってデンジャーレベル3(スリー)の特殊スキルだろ?組織の中でも特に危険物扱いされてるって…。
彩夏:そんな大層なモノじゃないわ。取り扱いにちょっぴり注意が必要なだけのなんてことない便利な能力よ。
慎一:いや、だけど…。
彩夏:そうね…確かに直接触れれば皮膚は溶け、ひどい炎症を起こすし、気体を吸い込めば重度の呼吸困難と意識障害をひき起こすわ。
慎一:げっ…。
彩夏:特に、私の双子の妹、アンジェリーンの「オキシマイト」と併せたら、小規模の都市を丸ごと機能停止に出来るくらいの毒ガスだって作り出せる。
慎一:どこが「なんてことない能力」だよ…ぞっとしないぜ。
彩夏:けれど、しっかり換気してきちんと防具を身に着けさえすれば人体に悪い影響は出ない。この能力ほど今回の任務に適した武器は無いと思うけど?
慎一:いや、でも…。
彩夏:……あーら、無敵のエース「アブソープション」様が、クソビッチごときのなぁーんてことない能力にまさかビビってるのかしらぁ?
慎一:何だと…?(小声)あ、あぶ…アブソー…?
彩夏:あれだけ偉そうに息巻いていたクセに、案外チキンなのね。
慎一:(小声)アブソープってなんだ…?
彩夏:「アブソープション」よ。「吸収」って意味。自分の二つ名を忘れたの?スポーン・G。
慎一:………スポンジ。(笑)
彩夏:………。(笑)
慎一:(咳払い)おいっ、いい加減にしろよ。
彩夏:何よ、違うって言いたいの?
慎一:当たり前だ、俺を誰だと思っている。
彩夏:んふふ、誰だったかしら?
慎一:…む、無敵のエース、「アブショープソン」様だ!(笑)
彩夏:(素で)決め台詞噛むなし(笑)
慎一:(素で)……ふっ。(笑)
慎一:キャサ…
彩夏:(強めの咳払い)
慎一:……君のハイター…じゃなくて、その強力なクロなんちゃらってヤツを俺の「ミスター・ゲキオチCX」に出してくれ。
彩夏:えぇ、お安い御用よ、エース。
慎一:………よし。それじゃあ、行くぞ!うおりゃぁあああっ!!
彩夏:必要以上に顔を近づけないで、スポーン!クローリーンを吸い込めば、いくらその黄色い手袋型の特殊な防具を着けたアナタでも無傷ではいられないわ!
慎一:わかってるよっ!生憎このグローブは両手専用!顔には装着出来ないからな!!
彩夏:(素で)……そうね。(笑)手袋は手にはめるものだから…。(笑)
慎一:ここは俺に任せとけっ!おりゃおりゃおりゃおりゃーっ!
彩夏:はっ!見て、スポーン!見る見るうちにカビが…じゃなくてミュータント・モルド?が落ちていくわ!!
慎一:こりゃスゲー!あっという間に消えていく…っ!
彩夏:これなら一網打尽ね。
0:急に手を止める慎一
慎一:………っ。
彩夏:………スポーン?
慎一:くっ……なんだ…これは…っ。
彩夏:スポーン!?一体何が……。
慎一:ぐっ、ぐあああっ、手がっ、俺の手がぁあああっ!
彩夏:っ…これは…スポーンの右手が…汚染されている!?
慎一:……くぅっ、右手がっ……い、う事を…きか……ないっ!
彩夏:スポーン!!しっかりして!スポーン!!
慎一:………逃げろ…キャサリン…。
彩夏:何を言ってるのスポーン!アナタを置いて行けるわけが…
慎一:(被せて)いいから行けっ!!
彩夏:……スポーン…。
慎一:右手から…モルドが侵食してきているのが……わかるんだ…。
彩夏:っ!……そんな…。
慎一:……っ、すごいスピードだ。この調子じゃ、あと数分もすれば……俺の身体は……完全に、乗っ取られ…ちまう…。
彩夏:っ、何か、何か手があるはずっ!
慎一:………無駄だ。
彩夏:どうしてっ!?
慎一:時間が……足りない。いくら君が……優秀だろうと…、もう、手遅れ……っぐあああっ!
彩夏:スポーン!!
慎一:………頼む、行ってくれ……君に、これ以上無様なところを見られたくないんだ……。
彩夏:………。
慎一:ははっ、丁度おあつらえ向きに……ポケットにこんなものが入ってた…。
0:ポケットからナスビを取り出す慎一
彩夏:(素で)……え?なんでナスビ?
慎一:君が行ったら……俺はコイツで頭をぶち抜く。
彩夏:(素で)ぶっ。(笑)
:
彩夏:……そ、そんな……その「銃」で自害するつもり!?
慎一:あぁ…カッコいいだろ?……わかったら、さっさと行ってくれ…もう、限界…だ。
彩夏:(涙を堪えた演技)………アナタの事は……忘れないわ。
慎一:ふっ、光栄だよ。一生君の記憶の中に居られるなんて……。
彩夏:……さようなら、スポーン。
慎一:………さようなら、……キャプテン・アシッド。
0:リビングから出ていく彩夏
彩夏:…………アナタは最高のヒーローよ、スポーン・G・ボブ……。
:
:
:
0:ここから素に戻って
:
慎一:ふぅーー、やっと終わったー。
彩夏:お疲れ様ー。
慎一:遊びながらやると案外捗るもんだな。
彩夏:だねー。おかげでキッチンもリビングもピッカピカだよー。
慎一:なりきりゲームしながら掃除ってのも結構楽しいな。
彩夏:まぁねー。でも序盤遊びすぎてエアコンの周り拭いただけで三十分かかっちゃったけど。(笑)
慎一:いや、ほんとそれな。
慎一:ってかさ。
彩夏:え?
慎一:俺の名前、スポンジ・ボブだったの?(笑)
彩夏:あぁ…えーだって、慎一がキャサリンって言うから。(笑)
慎一:それと何の関係があんだよー。
彩夏:あたしがキャサリンだったら、慎一はボブでしょ?
慎一:だったらボブでいいじゃんか。
彩夏:いやぁー掃除でボブって言ったらスポンジ・ボブ一択っしょ。(笑)
慎一:はぁ?
彩夏:それに黄色い手袋持ってたし。
慎一:へ?それ…関係ある?
彩夏:スポンジ・ボブって黄色いイメージない?
慎一:なんだよそれ。(笑)
慎一:それにしても、フォーコリーとかアブソーなんちゃらなんてそれらしい単語よく咄嗟に思いついたな。
彩夏:えー、思いつくって言うか…アブソープションはただ「吸収」って言葉を英語にしただけだし。
慎一:いや、そんな英単語そうそう出てこないって。
彩夏:そう?
彩夏:あ、あとフォーコリーは…
慎一:「ほこり」だろ?
彩夏:そう。(笑)
彩夏:よくわかったね。
慎一:まぁな。他にもさー、あの、何て言ってたっけ?最初の方で言ってた…。
彩夏:…ごめん、適当に言ってたからあたしもよく覚えてない。何て言ってたっけ?(笑)
慎一:いやっ、俺に聞くなよ。(笑)
彩夏:それもそっか。(笑)
:
慎一:お……カウントダウン始まった。
彩夏:あー、ほんとだぁ。あと少しで今年も終わるねぇー。
慎一:だな…。
彩夏:………。
慎一:今年も色々あったな。
彩夏:そうだねぇ。六月に結婚式挙げて、夏祭り行って…。
慎一:そうそう、山田さんちと俺の同僚の田中に遭遇したんだったな。(笑)
彩夏:あぁー、あったねー。
彩夏:もー、あのあとすっごい大変だったんだからー。
慎一:ははっ、そーいや言ってたな。会うたびに質問攻めにされたって。
彩夏:そうだよー!しかも毎っ回「仲が良くて羨ましいわぁー、ウチなんて旦那が無口でねー、何言っても『うん』とか『すん』とかしか言わないのよー」なぁんて嫌味かましてくるんだから。
慎一:いや、「うん」はわかるけど「すん」って何だよ。(笑)
彩夏:知らないよー。しかもあの後から、山田さんだけじゃなくって上の階の城山さんとか市川さんにまで生ぬるーい目で見られるようになっちゃってさぁ。
慎一:ははは、お疲れ。
彩夏:…むぅー。慎一は良いよねっ。山田さんに会う事もあんま無いしさ。
慎一:いや、それはそうだけど、こっちだって結構大変だったんだぞ?
彩夏:え、何が?
慎一:あの夏祭りの時。やっぱ田中のヤツにがっつり見られてたみたいでさぁ。
彩夏:え……。
慎一:「嫁とごっこ遊びなんていいなぁーーー」って羨ましがられて。
彩夏:あはは……。
慎一:しかもアイツ、俺らのなりきりに影響されたのか「好きな子に告白する予行練習に付き合ってくれ!」なんつって、すんげーしつこくってさー。
彩夏:えー、何それ。(笑)
慎一:あんまりにも必死だったから仕方なく付き合ってやったら、…その現場、部長に見られてて…。
彩夏:はぁっ!?えっ、そ、それで!?
慎一:部長には「田中が演劇やってるんです」っつってなんとか誤魔化したけど…部長が課長にも話したみたいでさ…未だに俺と田中がそーゆー関係だって誤解してんだよぉー…。
彩夏:ぶっ…。(笑)
慎一:おいー、マジで笑い事じゃないんだってー。
彩夏:あっははは、ごめんごめん。
慎一:……つーか、この間の高級しゃぶしゃぶ、俺のその犠牲から出た棚ぼただからな。
彩夏:え?どういう事?
慎一:変なことに付き合わせた詫びに田中に奢らせたんだよ。(笑)
彩夏:あー、なるほどねー。急に「西麻布の高級しゃぶしゃぶ食べに行こうぜ」なんて言うからどうしたのかと思ったけど……そーいう事だったのね。(笑)
慎一:いやー、あれは旨かったよなー。
彩夏:美味しかったねー。
慎一:あ、そう言やさ、駅前に新しく出来たオイスターバー行ってみたくね?
彩夏:え、それって…さっきのナリキリ中に言ってたやつ?
慎一:そうそう。
彩夏:えっ、本当にあるの!?
慎一:ああ。新鮮な牡蠣と美味いクラフトビールだぜ!?これは行くっきゃないだろー!!
彩夏:えぇー!行きたい行きたいっ!!
慎一:オッケー。じゃあ年明けて、落ち着いたら行ってみようぜ。
彩夏:やだー、今からもう楽しみなんだけどーっ。
慎一:俺も俺もっ。
彩夏:(同時に)………あ。
慎一:(同時に)………お。
:
慎一:明けたな。
彩夏:ね。あけましておめでとう。
慎一:あぁ、おめでとう。今年もよろしくな。
彩夏:うん。よろしくね。