台本概要

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タイトル 『世界』
作者名
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(女1、不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 声と文字だけで繋がる『世界』の話。

※宜しければ作品を読んだ感想をお寄せください。
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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ミヤ 不問 67 オンラインゲームのプレイヤー。Rinとは2年ほどネットで交流がある。 ※女性が読まれる場合は、語尾変更を推奨します
Rin 51 オンラインゲームのプレイヤー。ミヤとは2年ほどネットで交流がある。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ミヤ:え?そんなに? Rin:うん。もう、めちゃ泣いた。 ミヤ:いや、でも俺たちってそういう関係じゃん? Rin:そういう関係……? ミヤ:文字や声だけの繋がりだよ。画面の向こうの人と顔を合わせない。だからこそ気楽に始められて、気楽に辞めれるっていう――(遮られる) Rin:(被せて)いや、そうだけどさぁ!にしても、何も言わずに辞めちゃうなんて酷くない?!ここだけの繋がりだからこそ、連絡するの大事じゃん! ミヤ:いやぁ、まぁそうなんだけどさ。 Rin:私の『世界』には、もうヤオトメさんはいないんだ……。 ミヤ:え? Rin:私の『世界』のヤオトメさんは永久欠番。代打なんていない……。 ミヤ:重いなぁ……。 Rin:だって次、絶対どっかで会えるとかじゃないんだよ?! ミヤ:まぁ、仕方ないよな……。俺はそういうもんだと思ってる。 Rin:冷たくない? ミヤ:そんなこと言ったってなぁ……。 : Rin:もしさ。 ミヤ:ん? Rin:もしミヤがこの『世界』から居なくなるってなったら、絶対教えてね?! ミヤ:え?……あぁ、うん。 Rin:何、今の間?! ミヤ:いや、ちゃんと言うって。まぁ今は引退する気ないけど。 Rin:絶対だよ?! ミヤ:うん。 Rin:はぁ……。もうメンタルボロボロだし、めちゃ病んだから今日は寝るわ。 ミヤ:分かった。まだ俺も他のクラメンもいるし、そう落ち込むなよ。 Rin:うん……。(小さく溜息)おやすみー。 ミヤ:うん、おやすみ。また明日な。 : : ミヤ:よし、ログインっと。……あれ?まだ Rin 来てない? 0:間 ミヤ:もう十分過ぎてるけど……。なんかあったのかな? 0:間 ミヤ:三十分経った……。あ、さてはアイツ寝落ちしてるな?前はよくしてたけど……。 ミヤ:最近はちょっと忙しそうだったもんな。 ミヤ:……今日はもう寝るか。 : : ミヤ:〈M〉その日を境に、Rin は姿を見せなくなった。 ミヤ:日夜、攻略方法を語り合っていた個別チャットにも、一切返信はない。 ミヤ:始めこそ、すぐに帰って来るだろうと思っていた。 ミヤ:だが月日は流れるように過ぎ去り、いつしか俺は「彼女は引退したんだ」と思うようになっていた。 ミヤ:「きっと Rin もどこかで元気にやってる」って。 ミヤ:そう思って、それ以降は Rin のことを考える時間も少なくなった。 : : ミヤ:〈M〉――その日は突然やってきた。 ミヤ:Rin のことを、既に記憶の隅へ追いやってしまっていた頃。 ミヤ:突然、彼女から電話が掛かってきた。 : Rin:久しぶり!元気? ミヤ:おおー!久しぶり。元気だけど……。お前急にいなくなるじゃん。 ミヤ:Rin が言ったんだぞ?辞める時は連絡しろって。 Rin:あはは……。ごめんごめん、結構急だったからさ。 ミヤ:何かあったんだな。まぁ、生きてりゃ色々あるよな。 Rin:そういうこと。 ミヤ:でもさ、やっぱ思った通りだったよ。 Rin:何が? ミヤ:Rin ならきっと、リアルで元気にやってんだろうなって思ってたんだ。 ミヤ:だからきっと、ヤオトメさんもこの世界のどこかで元気にやってるよ。 Rin:……それは、分かんないよ。 ミヤ:え? Rin:それよりさ、私今から遠いところに行こうと思うんだ。 ミヤ:急だな。え、旅行?明日も平日だけど……。仕事は? Rin:辞めてきた! ミヤ:えぇ……?てか、さっきからそっち風強くない?外にいるの? Rin:そうかな? ミヤ:え、今どこにいるの? Rin:それよりさ。 ミヤ:何? Rin:人って、声から忘れていくものらしいよ。 ミヤ:……なに急に。 Rin:言われてみたらさ、私たち声でしか繋がってないのに、もうあの人の声分からなくなってる。どんな声だったっけ? ミヤ:あー。……確かに、言われてみれば思い出せないな……。 Rin:この電話を切って少ししたら、私もミヤの声、分かんなくなっちゃうのかな? ミヤ:うーん、どうだろう……。でも俺は、Rin の声は覚えてる自信あるよ。 Rin:え〜?ホントかなぁ。 ミヤ:だって Rin の声特徴的だし、俺たちもう二年もネ友(ネトモ)してるんだよ? Rin:確かに…。 ミヤ:で、どこにいるの? Rin:それよりさ。 ミヤ:今日それ多いな。なんだよ。 Rin:今までありがとう。 ミヤ:……は? Rin:だってもうゲームも、通話することも無くなるし。 ミヤ:あぁ……。 Rin:……さて。そろそろ行くかー。 ミヤ:ちょっと待って。 Rin:何? ミヤ:これから何しようとしてる? Rin:ミヤの『世界』から引退するんだよ。実質、もう引退してたようなもんだけどね。 ミヤ:……。 Rin:でも、ミヤが私の声とか、私がここにいたことを覚えててくれるなら、私はそれで満足かな……。 ミヤ:……「世界」って、その世界じゃないだろ…? Rin:……(小さく吐息)早めに引退するだけだよ。 Rin:放っておいてもみんな引退するでしょ? Rin:私は放っておかれたら、あと数ヶ月と待たずに引退になるの。 ミヤ:……病気? Rin:うん。 ミヤ:そっか……。 Rin:……。 ミヤ:………。 Rin:考え直せって言わないんだね。 ミヤ:……お前は言い出したら聞かないだろ。 ミヤ:あと、「絶対に止められない」から俺に掛けた。そうだろ? Rin:えへへ、正解。 Rin:物理的に考えて、絶対に止めるの無理な友達は、ミヤだけだったからね。 ミヤ:まず、俺は Rin がどこに住んでるのか正確に知らない。 ミヤ:――でも、そんなの関係ないんだろ?……お前もう、どっか高い場所にいるだろ? Rin:……うん。めっちゃ夜景綺麗だよ。 ミヤ:……。 Rin:ネ友(ネトモ)って非力だよね。 ミヤ:あぁ。今一番それを痛感してるのは俺だよ。 Rin:……ごめん。 ミヤ:ここで謝るのは卑怯だ。 Rin:そうだよね……。 : Rin:じゃあ……またね。 ミヤ:…「また」があるの? Rin:んー……。来世、とか?? ミヤ:来世、なぁ……。また会えるといいな。 Rin:ネットもリアルも、めちゃくちゃ広いよ? ミヤ:なんでそういうこと言うんだよ……。 Rin:ふふ……。じゃあ、また。 ミヤ:うん。……またね。 Rin:うん、……ありがとう。 : ミヤ:〈M〉その言葉を聞き終えて、刹那。携帯からは通話の終了を示す無機質な機械音がなり始めた。 ミヤ:通話を切った彼女の最期の声は、今まで聞いてきた中で一番満ち足りていた気がした。

ミヤ:え?そんなに? Rin:うん。もう、めちゃ泣いた。 ミヤ:いや、でも俺たちってそういう関係じゃん? Rin:そういう関係……? ミヤ:文字や声だけの繋がりだよ。画面の向こうの人と顔を合わせない。だからこそ気楽に始められて、気楽に辞めれるっていう――(遮られる) Rin:(被せて)いや、そうだけどさぁ!にしても、何も言わずに辞めちゃうなんて酷くない?!ここだけの繋がりだからこそ、連絡するの大事じゃん! ミヤ:いやぁ、まぁそうなんだけどさ。 Rin:私の『世界』には、もうヤオトメさんはいないんだ……。 ミヤ:え? Rin:私の『世界』のヤオトメさんは永久欠番。代打なんていない……。 ミヤ:重いなぁ……。 Rin:だって次、絶対どっかで会えるとかじゃないんだよ?! ミヤ:まぁ、仕方ないよな……。俺はそういうもんだと思ってる。 Rin:冷たくない? ミヤ:そんなこと言ったってなぁ……。 : Rin:もしさ。 ミヤ:ん? Rin:もしミヤがこの『世界』から居なくなるってなったら、絶対教えてね?! ミヤ:え?……あぁ、うん。 Rin:何、今の間?! ミヤ:いや、ちゃんと言うって。まぁ今は引退する気ないけど。 Rin:絶対だよ?! ミヤ:うん。 Rin:はぁ……。もうメンタルボロボロだし、めちゃ病んだから今日は寝るわ。 ミヤ:分かった。まだ俺も他のクラメンもいるし、そう落ち込むなよ。 Rin:うん……。(小さく溜息)おやすみー。 ミヤ:うん、おやすみ。また明日な。 : : ミヤ:よし、ログインっと。……あれ?まだ Rin 来てない? 0:間 ミヤ:もう十分過ぎてるけど……。なんかあったのかな? 0:間 ミヤ:三十分経った……。あ、さてはアイツ寝落ちしてるな?前はよくしてたけど……。 ミヤ:最近はちょっと忙しそうだったもんな。 ミヤ:……今日はもう寝るか。 : : ミヤ:〈M〉その日を境に、Rin は姿を見せなくなった。 ミヤ:日夜、攻略方法を語り合っていた個別チャットにも、一切返信はない。 ミヤ:始めこそ、すぐに帰って来るだろうと思っていた。 ミヤ:だが月日は流れるように過ぎ去り、いつしか俺は「彼女は引退したんだ」と思うようになっていた。 ミヤ:「きっと Rin もどこかで元気にやってる」って。 ミヤ:そう思って、それ以降は Rin のことを考える時間も少なくなった。 : : ミヤ:〈M〉――その日は突然やってきた。 ミヤ:Rin のことを、既に記憶の隅へ追いやってしまっていた頃。 ミヤ:突然、彼女から電話が掛かってきた。 : Rin:久しぶり!元気? ミヤ:おおー!久しぶり。元気だけど……。お前急にいなくなるじゃん。 ミヤ:Rin が言ったんだぞ?辞める時は連絡しろって。 Rin:あはは……。ごめんごめん、結構急だったからさ。 ミヤ:何かあったんだな。まぁ、生きてりゃ色々あるよな。 Rin:そういうこと。 ミヤ:でもさ、やっぱ思った通りだったよ。 Rin:何が? ミヤ:Rin ならきっと、リアルで元気にやってんだろうなって思ってたんだ。 ミヤ:だからきっと、ヤオトメさんもこの世界のどこかで元気にやってるよ。 Rin:……それは、分かんないよ。 ミヤ:え? Rin:それよりさ、私今から遠いところに行こうと思うんだ。 ミヤ:急だな。え、旅行?明日も平日だけど……。仕事は? Rin:辞めてきた! ミヤ:えぇ……?てか、さっきからそっち風強くない?外にいるの? Rin:そうかな? ミヤ:え、今どこにいるの? Rin:それよりさ。 ミヤ:何? Rin:人って、声から忘れていくものらしいよ。 ミヤ:……なに急に。 Rin:言われてみたらさ、私たち声でしか繋がってないのに、もうあの人の声分からなくなってる。どんな声だったっけ? ミヤ:あー。……確かに、言われてみれば思い出せないな……。 Rin:この電話を切って少ししたら、私もミヤの声、分かんなくなっちゃうのかな? ミヤ:うーん、どうだろう……。でも俺は、Rin の声は覚えてる自信あるよ。 Rin:え〜?ホントかなぁ。 ミヤ:だって Rin の声特徴的だし、俺たちもう二年もネ友(ネトモ)してるんだよ? Rin:確かに…。 ミヤ:で、どこにいるの? Rin:それよりさ。 ミヤ:今日それ多いな。なんだよ。 Rin:今までありがとう。 ミヤ:……は? Rin:だってもうゲームも、通話することも無くなるし。 ミヤ:あぁ……。 Rin:……さて。そろそろ行くかー。 ミヤ:ちょっと待って。 Rin:何? ミヤ:これから何しようとしてる? Rin:ミヤの『世界』から引退するんだよ。実質、もう引退してたようなもんだけどね。 ミヤ:……。 Rin:でも、ミヤが私の声とか、私がここにいたことを覚えててくれるなら、私はそれで満足かな……。 ミヤ:……「世界」って、その世界じゃないだろ…? Rin:……(小さく吐息)早めに引退するだけだよ。 Rin:放っておいてもみんな引退するでしょ? Rin:私は放っておかれたら、あと数ヶ月と待たずに引退になるの。 ミヤ:……病気? Rin:うん。 ミヤ:そっか……。 Rin:……。 ミヤ:………。 Rin:考え直せって言わないんだね。 ミヤ:……お前は言い出したら聞かないだろ。 ミヤ:あと、「絶対に止められない」から俺に掛けた。そうだろ? Rin:えへへ、正解。 Rin:物理的に考えて、絶対に止めるの無理な友達は、ミヤだけだったからね。 ミヤ:まず、俺は Rin がどこに住んでるのか正確に知らない。 ミヤ:――でも、そんなの関係ないんだろ?……お前もう、どっか高い場所にいるだろ? Rin:……うん。めっちゃ夜景綺麗だよ。 ミヤ:……。 Rin:ネ友(ネトモ)って非力だよね。 ミヤ:あぁ。今一番それを痛感してるのは俺だよ。 Rin:……ごめん。 ミヤ:ここで謝るのは卑怯だ。 Rin:そうだよね……。 : Rin:じゃあ……またね。 ミヤ:…「また」があるの? Rin:んー……。来世、とか?? ミヤ:来世、なぁ……。また会えるといいな。 Rin:ネットもリアルも、めちゃくちゃ広いよ? ミヤ:なんでそういうこと言うんだよ……。 Rin:ふふ……。じゃあ、また。 ミヤ:うん。……またね。 Rin:うん、……ありがとう。 : ミヤ:〈M〉その言葉を聞き終えて、刹那。携帯からは通話の終了を示す無機質な機械音がなり始めた。 ミヤ:通話を切った彼女の最期の声は、今まで聞いてきた中で一番満ち足りていた気がした。