台本概要
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タイトル | 『世界』 |
---|---|
作者名 | 控 |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女1、不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
声と文字だけで繋がる『世界』の話。 ※宜しければ作品を読んだ感想をお寄せください。 https://marshmallow-qa.com/qi06n2gzygiief6?utm_medium=url_text&utm_source=promotion 243 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ミヤ | 不問 | 67 | オンラインゲームのプレイヤー。Rinとは2年ほどネットで交流がある。 ※女性が読まれる場合は、語尾変更を推奨します |
Rin | 女 | 51 | オンラインゲームのプレイヤー。ミヤとは2年ほどネットで交流がある。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ミヤ:え?そんなに?
Rin:うん。もう、めちゃ泣いた。
ミヤ:いや、でも俺たちってそういう関係じゃん?
Rin:そういう関係……?
ミヤ:文字や声だけの繋がりだよ。画面の向こうの人と顔を合わせない。だからこそ気楽に始められて、気楽に辞めれるっていう――(遮られる)
Rin:(被せて)いや、そうだけどさぁ!にしても、何も言わずに辞めちゃうなんて酷くない?!ここだけの繋がりだからこそ、連絡するの大事じゃん!
ミヤ:いやぁ、まぁそうなんだけどさ。
Rin:私の『世界』には、もうヤオトメさんはいないんだ……。
ミヤ:え?
Rin:私の『世界』のヤオトメさんは永久欠番。代打なんていない……。
ミヤ:重いなぁ……。
Rin:だって次、絶対どっかで会えるとかじゃないんだよ?!
ミヤ:まぁ、仕方ないよな……。俺はそういうもんだと思ってる。
Rin:冷たくない?
ミヤ:そんなこと言ったってなぁ……。
:
Rin:もしさ。
ミヤ:ん?
Rin:もしミヤがこの『世界』から居なくなるってなったら、絶対教えてね?!
ミヤ:え?……あぁ、うん。
Rin:何、今の間?!
ミヤ:いや、ちゃんと言うって。まぁ今は引退する気ないけど。
Rin:絶対だよ?!
ミヤ:うん。
Rin:はぁ……。もうメンタルボロボロだし、めちゃ病んだから今日は寝るわ。
ミヤ:分かった。まだ俺も他のクラメンもいるし、そう落ち込むなよ。
Rin:うん……。(小さく溜息)おやすみー。
ミヤ:うん、おやすみ。また明日な。
:
:
ミヤ:よし、ログインっと。……あれ?まだ Rin 来てない?
0:間
ミヤ:もう十分過ぎてるけど……。なんかあったのかな?
0:間
ミヤ:三十分経った……。あ、さてはアイツ寝落ちしてるな?前はよくしてたけど……。
ミヤ:最近はちょっと忙しそうだったもんな。
ミヤ:……今日はもう寝るか。
:
:
ミヤ:〈M〉その日を境に、Rin は姿を見せなくなった。
ミヤ:日夜、攻略方法を語り合っていた個別チャットにも、一切返信はない。
ミヤ:始めこそ、すぐに帰って来るだろうと思っていた。
ミヤ:だが月日は流れるように過ぎ去り、いつしか俺は「彼女は引退したんだ」と思うようになっていた。
ミヤ:「きっと Rin もどこかで元気にやってる」って。
ミヤ:そう思って、それ以降は Rin のことを考える時間も少なくなった。
:
:
ミヤ:〈M〉――その日は突然やってきた。
ミヤ:Rin のことを、既に記憶の隅へ追いやってしまっていた頃。
ミヤ:突然、彼女から電話が掛かってきた。
:
Rin:久しぶり!元気?
ミヤ:おおー!久しぶり。元気だけど……。お前急にいなくなるじゃん。
ミヤ:Rin が言ったんだぞ?辞める時は連絡しろって。
Rin:あはは……。ごめんごめん、結構急だったからさ。
ミヤ:何かあったんだな。まぁ、生きてりゃ色々あるよな。
Rin:そういうこと。
ミヤ:でもさ、やっぱ思った通りだったよ。
Rin:何が?
ミヤ:Rin ならきっと、リアルで元気にやってんだろうなって思ってたんだ。
ミヤ:だからきっと、ヤオトメさんもこの世界のどこかで元気にやってるよ。
Rin:……それは、分かんないよ。
ミヤ:え?
Rin:それよりさ、私今から遠いところに行こうと思うんだ。
ミヤ:急だな。え、旅行?明日も平日だけど……。仕事は?
Rin:辞めてきた!
ミヤ:えぇ……?てか、さっきからそっち風強くない?外にいるの?
Rin:そうかな?
ミヤ:え、今どこにいるの?
Rin:それよりさ。
ミヤ:何?
Rin:人って、声から忘れていくものらしいよ。
ミヤ:……なに急に。
Rin:言われてみたらさ、私たち声でしか繋がってないのに、もうあの人の声分からなくなってる。どんな声だったっけ?
ミヤ:あー。……確かに、言われてみれば思い出せないな……。
Rin:この電話を切って少ししたら、私もミヤの声、分かんなくなっちゃうのかな?
ミヤ:うーん、どうだろう……。でも俺は、Rin の声は覚えてる自信あるよ。
Rin:え〜?ホントかなぁ。
ミヤ:だって Rin の声特徴的だし、俺たちもう二年もネ友(ネトモ)してるんだよ?
Rin:確かに…。
ミヤ:で、どこにいるの?
Rin:それよりさ。
ミヤ:今日それ多いな。なんだよ。
Rin:今までありがとう。
ミヤ:……は?
Rin:だってもうゲームも、通話することも無くなるし。
ミヤ:あぁ……。
Rin:……さて。そろそろ行くかー。
ミヤ:ちょっと待って。
Rin:何?
ミヤ:これから何しようとしてる?
Rin:ミヤの『世界』から引退するんだよ。実質、もう引退してたようなもんだけどね。
ミヤ:……。
Rin:でも、ミヤが私の声とか、私がここにいたことを覚えててくれるなら、私はそれで満足かな……。
ミヤ:……「世界」って、その世界じゃないだろ…?
Rin:……(小さく吐息)早めに引退するだけだよ。
Rin:放っておいてもみんな引退するでしょ?
Rin:私は放っておかれたら、あと数ヶ月と待たずに引退になるの。
ミヤ:……病気?
Rin:うん。
ミヤ:そっか……。
Rin:……。
ミヤ:………。
Rin:考え直せって言わないんだね。
ミヤ:……お前は言い出したら聞かないだろ。
ミヤ:あと、「絶対に止められない」から俺に掛けた。そうだろ?
Rin:えへへ、正解。
Rin:物理的に考えて、絶対に止めるの無理な友達は、ミヤだけだったからね。
ミヤ:まず、俺は Rin がどこに住んでるのか正確に知らない。
ミヤ:――でも、そんなの関係ないんだろ?……お前もう、どっか高い場所にいるだろ?
Rin:……うん。めっちゃ夜景綺麗だよ。
ミヤ:……。
Rin:ネ友(ネトモ)って非力だよね。
ミヤ:あぁ。今一番それを痛感してるのは俺だよ。
Rin:……ごめん。
ミヤ:ここで謝るのは卑怯だ。
Rin:そうだよね……。
:
Rin:じゃあ……またね。
ミヤ:…「また」があるの?
Rin:んー……。来世、とか??
ミヤ:来世、なぁ……。また会えるといいな。
Rin:ネットもリアルも、めちゃくちゃ広いよ?
ミヤ:なんでそういうこと言うんだよ……。
Rin:ふふ……。じゃあ、また。
ミヤ:うん。……またね。
Rin:うん、……ありがとう。
:
ミヤ:〈M〉その言葉を聞き終えて、刹那。携帯からは通話の終了を示す無機質な機械音がなり始めた。
ミヤ:通話を切った彼女の最期の声は、今まで聞いてきた中で一番満ち足りていた気がした。
ミヤ:え?そんなに?
Rin:うん。もう、めちゃ泣いた。
ミヤ:いや、でも俺たちってそういう関係じゃん?
Rin:そういう関係……?
ミヤ:文字や声だけの繋がりだよ。画面の向こうの人と顔を合わせない。だからこそ気楽に始められて、気楽に辞めれるっていう――(遮られる)
Rin:(被せて)いや、そうだけどさぁ!にしても、何も言わずに辞めちゃうなんて酷くない?!ここだけの繋がりだからこそ、連絡するの大事じゃん!
ミヤ:いやぁ、まぁそうなんだけどさ。
Rin:私の『世界』には、もうヤオトメさんはいないんだ……。
ミヤ:え?
Rin:私の『世界』のヤオトメさんは永久欠番。代打なんていない……。
ミヤ:重いなぁ……。
Rin:だって次、絶対どっかで会えるとかじゃないんだよ?!
ミヤ:まぁ、仕方ないよな……。俺はそういうもんだと思ってる。
Rin:冷たくない?
ミヤ:そんなこと言ったってなぁ……。
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Rin:もしさ。
ミヤ:ん?
Rin:もしミヤがこの『世界』から居なくなるってなったら、絶対教えてね?!
ミヤ:え?……あぁ、うん。
Rin:何、今の間?!
ミヤ:いや、ちゃんと言うって。まぁ今は引退する気ないけど。
Rin:絶対だよ?!
ミヤ:うん。
Rin:はぁ……。もうメンタルボロボロだし、めちゃ病んだから今日は寝るわ。
ミヤ:分かった。まだ俺も他のクラメンもいるし、そう落ち込むなよ。
Rin:うん……。(小さく溜息)おやすみー。
ミヤ:うん、おやすみ。また明日な。
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ミヤ:よし、ログインっと。……あれ?まだ Rin 来てない?
0:間
ミヤ:もう十分過ぎてるけど……。なんかあったのかな?
0:間
ミヤ:三十分経った……。あ、さてはアイツ寝落ちしてるな?前はよくしてたけど……。
ミヤ:最近はちょっと忙しそうだったもんな。
ミヤ:……今日はもう寝るか。
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ミヤ:〈M〉その日を境に、Rin は姿を見せなくなった。
ミヤ:日夜、攻略方法を語り合っていた個別チャットにも、一切返信はない。
ミヤ:始めこそ、すぐに帰って来るだろうと思っていた。
ミヤ:だが月日は流れるように過ぎ去り、いつしか俺は「彼女は引退したんだ」と思うようになっていた。
ミヤ:「きっと Rin もどこかで元気にやってる」って。
ミヤ:そう思って、それ以降は Rin のことを考える時間も少なくなった。
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ミヤ:〈M〉――その日は突然やってきた。
ミヤ:Rin のことを、既に記憶の隅へ追いやってしまっていた頃。
ミヤ:突然、彼女から電話が掛かってきた。
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Rin:久しぶり!元気?
ミヤ:おおー!久しぶり。元気だけど……。お前急にいなくなるじゃん。
ミヤ:Rin が言ったんだぞ?辞める時は連絡しろって。
Rin:あはは……。ごめんごめん、結構急だったからさ。
ミヤ:何かあったんだな。まぁ、生きてりゃ色々あるよな。
Rin:そういうこと。
ミヤ:でもさ、やっぱ思った通りだったよ。
Rin:何が?
ミヤ:Rin ならきっと、リアルで元気にやってんだろうなって思ってたんだ。
ミヤ:だからきっと、ヤオトメさんもこの世界のどこかで元気にやってるよ。
Rin:……それは、分かんないよ。
ミヤ:え?
Rin:それよりさ、私今から遠いところに行こうと思うんだ。
ミヤ:急だな。え、旅行?明日も平日だけど……。仕事は?
Rin:辞めてきた!
ミヤ:えぇ……?てか、さっきからそっち風強くない?外にいるの?
Rin:そうかな?
ミヤ:え、今どこにいるの?
Rin:それよりさ。
ミヤ:何?
Rin:人って、声から忘れていくものらしいよ。
ミヤ:……なに急に。
Rin:言われてみたらさ、私たち声でしか繋がってないのに、もうあの人の声分からなくなってる。どんな声だったっけ?
ミヤ:あー。……確かに、言われてみれば思い出せないな……。
Rin:この電話を切って少ししたら、私もミヤの声、分かんなくなっちゃうのかな?
ミヤ:うーん、どうだろう……。でも俺は、Rin の声は覚えてる自信あるよ。
Rin:え〜?ホントかなぁ。
ミヤ:だって Rin の声特徴的だし、俺たちもう二年もネ友(ネトモ)してるんだよ?
Rin:確かに…。
ミヤ:で、どこにいるの?
Rin:それよりさ。
ミヤ:今日それ多いな。なんだよ。
Rin:今までありがとう。
ミヤ:……は?
Rin:だってもうゲームも、通話することも無くなるし。
ミヤ:あぁ……。
Rin:……さて。そろそろ行くかー。
ミヤ:ちょっと待って。
Rin:何?
ミヤ:これから何しようとしてる?
Rin:ミヤの『世界』から引退するんだよ。実質、もう引退してたようなもんだけどね。
ミヤ:……。
Rin:でも、ミヤが私の声とか、私がここにいたことを覚えててくれるなら、私はそれで満足かな……。
ミヤ:……「世界」って、その世界じゃないだろ…?
Rin:……(小さく吐息)早めに引退するだけだよ。
Rin:放っておいてもみんな引退するでしょ?
Rin:私は放っておかれたら、あと数ヶ月と待たずに引退になるの。
ミヤ:……病気?
Rin:うん。
ミヤ:そっか……。
Rin:……。
ミヤ:………。
Rin:考え直せって言わないんだね。
ミヤ:……お前は言い出したら聞かないだろ。
ミヤ:あと、「絶対に止められない」から俺に掛けた。そうだろ?
Rin:えへへ、正解。
Rin:物理的に考えて、絶対に止めるの無理な友達は、ミヤだけだったからね。
ミヤ:まず、俺は Rin がどこに住んでるのか正確に知らない。
ミヤ:――でも、そんなの関係ないんだろ?……お前もう、どっか高い場所にいるだろ?
Rin:……うん。めっちゃ夜景綺麗だよ。
ミヤ:……。
Rin:ネ友(ネトモ)って非力だよね。
ミヤ:あぁ。今一番それを痛感してるのは俺だよ。
Rin:……ごめん。
ミヤ:ここで謝るのは卑怯だ。
Rin:そうだよね……。
:
Rin:じゃあ……またね。
ミヤ:…「また」があるの?
Rin:んー……。来世、とか??
ミヤ:来世、なぁ……。また会えるといいな。
Rin:ネットもリアルも、めちゃくちゃ広いよ?
ミヤ:なんでそういうこと言うんだよ……。
Rin:ふふ……。じゃあ、また。
ミヤ:うん。……またね。
Rin:うん、……ありがとう。
:
ミヤ:〈M〉その言葉を聞き終えて、刹那。携帯からは通話の終了を示す無機質な機械音がなり始めた。
ミヤ:通話を切った彼女の最期の声は、今まで聞いてきた中で一番満ち足りていた気がした。