台本概要

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タイトル 声彩の魔女と箱庭
作者名 夢遊 璃兎  (@muyuu_riu)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(不問2)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 20分

声に出すだけで魔法を使いと大変な弟子の話。
弟子は子ども時代出てます。


シナリオ名と作者名明記してくだされば大丈夫です!
シナリオを使う際は必ず演者全員の了承を得てから使用してください。
過度な改変はおやめください。

魔女を魔法使いに変えたりすれば不問できます。
魔女を魔法使いとして使用する場合、名前はサニーとなります。

(漢字)
声彩…せいさい
懺悔…ざんげ
匣…はこ

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 89 声に出すだけで魔法が使える。ユーリの師
不問 82 魔法使いの素質がある。レイモンドの弟子
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:「声彩の魔女と箱庭」 ユ:ユーリ。声彩の魔女の弟子。魔女のせいで家の中から出られない。魔法使いの素質はあるが師を驚かせることができない。17歳くらい。過去回想では8歳、14歳が出てくる。 サ:レイモンド・サリー。声彩の魔女。ユーリの師であり家族である。「あらやだぁ」が口癖。秘密を抱えている。 0: 0:本編 0: ユ:師よ!今日こそ目に物見せてやる!   サ:そう言って模範的な術式かオリジナリティ溢れる魔法をお前は見せに来るわよねぇ   ユ:うるさいです。今回のは本当に素晴らしい魔法なんだ   サ:おや、魔法なんだね。前回は錬成だったのに   ユ:前回は師の薬箱を適当にひっくり返して見つけたものを混ぜてたら、結晶化してただの禍々しい色の石になったから自分で術式を考えて作ることにしたんですよ。それも3つ!   サ:私の私物を使っておいて人のせいにするとはね   ユ:前回の失敗が師のせいとは言っておりません。ここから出られないのだからあるものを使うしかないじゃないですか サ:大変だねぇ ユ:なんで他人事みたいに言ってるんですか!そもそも、僕がここから出られないのは《声彩の魔女》レイモンド・サリー。あんたのせいだ   サ:あらやだ。異名で呼ばれちゃうと、なんだか大魔道士みたいで照れちゃうわね ユ:照れるな!なんで僕を閉じ込める必要があったんだよ サ:そ…、それはお前があまりにも素晴らしい素質があったからァ遂?うっかり、ね?   ユ:うっかり自分の声に魔力乗せて誘拐する魔法使いがどこにいるんですか!   サ:誘拐なんて物騒な言い方しなくてもいいじゃないの。そんなつもりは無かったのよ。許してちょうだい?   ユ:ただのうっかりだったならまだマシなレベルですよ。まさかここから出られないなんて! サ:その代わりに、私がみっちり素質を磨くって約束したじゃない。約束が果たされるまでここから出すことは出来ないわ。 ユ:師がお考えになっている素質ってやつはいつ磨き終わるんですか…。ってか、それだけじゃないんですよ!ここはどこだって聞いたらあんたは   サ:《秘密の箱庭》   ユ:なんですか《秘密の箱庭》って!どんなメルヘンチック脳みそしてんですかカップルじゃないんですよ?!   サ:いいじゃないの。人はいつまで経っても夢を追い続けるものなのよ   ユ:アンタはただの人じゃないでしょうが   サ:確かに、ただの人ではないわね。それでも私は人の心をもちあわせているわ ユ:こ、心の話なんかしてないです。今のは力の話であって…   サ:まあまあ細かいことは気にしないで。それより東洋のお茶は持ってきてくれたかしら? ユ:ええ、ええ。もちろんですとも。あなたのお気に入りのホージチャはここに サ:ふふ、ありがとう。お前が煎れてくれるお茶はなんだってお気に入りだよ。あぁ、おいしい ユ:……そうですか   サ:それで、今回はどんな魔法は見せてくれるのかしら?   ユ:はい、今からやるのでちゃんと見ててくださいよ   サ:楽しみね〜   ユ:1つ目。この濡れタオル持っててください サ:あら、随分と冷たい濡れタオルね。氷水にでもつけてたの?   ユ:…まずはタオルに染み込んでいる水分に魔力を流し…水を動かし術式を書く…術式完成…!《暖まれ。ヴァルム》   サ:あら、ホカホカタオルになったわ    ユ:どうですか寒い時に使う魔法です!火のように危なくないし、これなら野宿でも暖かく過ごせる。ハンカチーフなどにこの術をかければぬくぬくとした快適ライフを過ごせます!   サ:そうね……、ユーリ。この石持ってくれるかしら?   ユ:?いいですけ、うわ!冷たっ   サ:これはフリーレンストーン。名前の通り、冷たさを保った石なの。この石があるってことは…? ユ:逆も然りってことですか…あ、でも、石がない時に使えば!   サ:ただあったまるだけじゃすぐに冷えてしまうわよ。それに魔法を使えば体内の魔力が減るから、もし寒い野宿で使うのなら体力がもたずに死んでしまうのがオチね   ユ:そ、そんな……いい発想だと思ったのに   サ:それじゃあ気を取り直して、次の魔法をみせてくれるかしら?   ユ:はぁ…では、2つ目の前に師よ。僕をもうひとり増やしてくれませんか? サ:いいけれど《共に生きよ。フュムール》   ユ:ありがとうございます。さすが声彩の魔女。術式を書かなくともやってのける   サ:あらやだ、褒められちゃった。もっと褒めてくれてもいいのよ ユ:やぁ僕、協力してもらうよ サ:褒めてくれないのね… ユ:これから僕たちだけの合言葉を決める。合言葉は『師の寝相が悪すぎる』だ。覚えたらこの術式を書いた紙を飲み込め。   サ:ちょっと?その言葉は合言葉にするには向いてないんじゃないかしら? ユ:これから2つ目の魔法お見せします サ:その合言葉は決定事項なのね… ユ:《合言葉。パスヴォルト》 サ:わかった   ユ:え?まだ何も言ってないのに   サ:私にはお見通しよ。2人目のユーリ、合言葉を教えてくれる?   ユ:いやです。合言葉なんだから教えるわけないでしょ   サ:ユーリ? ユ:ひっ…、《▅▅▅》です!   サ:やっぱり『師の寝相が悪すぎる』なんて言葉聞こえないわね。   ユ:…まさか   サ:ええ、既存の魔法よ。この魔法がなくても別の魔法で補うことが出来るわ。別の空間を作ったり、音を遮ったり。なんなら普通の人間だってモールス信号っていうもので秘密の会話をすることがあるんですって   ユ:また…先を越された サ:はやくあなただけの魔法を見つけることが出来たらいいわねユーリ ユ:……やっぱり僕、素質ないんじゃないでしょうか   サ:どうしてそう思うの   ユ:だって、いつまで経っても個性魔法は見つからないし、本の通りに術式を行っても陣を描いてもなにもかも失敗していく。できたとしても既存にある魔法で、しかもその魔法よりも良い魔法が上にいくつもある。どうしたらいいんだよもう…   サ:ユーリ、魔法はすぐに使えるものじゃないのよ。それに魔力を持つ人間は多くはない。素質を持って生まれただけでも奇跡なの ユ:僕は魔法使いの素質があるってだけでしょ?現魔法使いのアンタに僕が苦しむ気持ちなんて分からない サ:ユーリ、聞いて。魔法は人生と同じなの。何度も何度も失敗して、学んでを繰り返してゆっくり習得するものなの。向き不向きだってあるし、できることできないこともあるのよ。私だって、……できないことはたくさんあるし。お前はまだ子どもなんだから、そんなに思い詰めなくてもいいのよ   ユ:もう大人だ!文字だって読めるし、料理だってできるようになった。術式も何個か覚えた。アンタに拾われてからどのくらいの時間が経った?アンタが僕をこの家に閉じ込めてから何年経ったんだよ。いつ外に出られる?いつその素質とやらは開花するんだ?教えてくれよ《声彩の魔女》! サ:…ユーリ、怒らないで。外は危険なの あなたは身をもって知ってるはずよ。魔力をコントロールできなければ体調を崩すし誘拐されて見世物か奴隷として売られるかもしれないのよ    ユ:そんなこと言って、本当は出来損ないの弟子を外に出すのが恥ずかしくて閉じ込めてるんじゃないの?   サ:そんなわけないじゃない。   ユ:じゃあ理由は?僕を外に出すことが出来ない理由はなんなの?コントロールができないからってわけじゃないでしょ    サ:……   ユ:……もういい第3の魔法はやっぱりアンタに使ってやる   サ:待って魔法は人に向けて使ってはいけないのよ   ユ:勿論。でもアンタはただの人じゃない。それにもうアンタは術にかかってる サ:なんですって? ユ:気づかなかったんだ。茶葉に術式をかけといたんだよね。それでアンタのお茶を煎れた。魔力の籠ったホージチャをね サ:まさか…っなんの術をかけたの?! ユ:《告白せよ。ホモロギア》 サ:ユーッ… ユ:……師?……そうだ、試してみよう!この術式が成功ならなんでも答えてくれるはず…。……レイモンド・サリー。あなたは今魔法にかかっているか?   サ:告白魔法をかけられています。全て告白します ユ:答えた…ってことは第3の告白魔法は成功?初めて人にかけたけど……いや演技の可能性があるかもだし、 サ:……   ユ:こほん、レイモンド・サリー。何故弟子の作った豆スープを飲まない? サ:豆が嫌いだからです。弟子の作ったスープでも飲めません。   ユ:師は豆が嫌いだったのか…今度から何か工夫して味付けを…っじゃなくて、…遂にできたー!やったー!みたか、《声彩の魔女》!どんなもんだい!僕ったらやれば出来るんだからね!いずれ僕も魔法界に名を轟かせて異名がつくんだろうなぁ〜、どんなのがいいかな。これからこの魔法を極めるとしたら、告白の魔法使い?なんだかな……懺悔の魔法使い?いやいや、真実の魔法使い?イマイチだなぁ。師はどう思う?……師?あれ、サリー?……そっか今術をかけてるから意志を持って話すことが出来ないんだ。…ねぇサリー。どうして僕と一緒にいてくれるの? サ:レイモンド家は代々守護者として生きてきました。私は1人だった貴方を守るために一緒にいます ユ:レイモンド家…守護者の家系だったんだ…。僕、師のこと全然知らないんだな…。ねぇ、サリー。どうして僕はこの家を出ちゃいけないの?   サ:あなたを封印したためです ユ:え…どういう   サ:ここは家ではありません。大災厄を封印した匣の中です ユ:なに、大災厄って。匣…?箱庭って、ここは本当に…匣の中なの?っ…こんなところ、出ていってやる!どうせ師の部屋には子ども用のじゃなくてちゃんとした魔導書置いてあるんでしょ。時々部屋にこもって何してるのかと思って覗き見してて良かったぁ。なにが「やだぁ覗かないでよエッチ」だ!すぐに封印の解き方をマスターしてやるもんね。弟子を舐めるからこうなるんだ サ:……   ユ:ね、ねぇ……サリーは僕のことどう思ってるの? サ:あなたは私の弟子です。しかし、世界を脅かす大災厄となりうる存在であることを恐れています。 ユ:大災厄、大災厄ってさっきからなんなのそれは サ:大災厄はあなたです。   ユ:……え サ:あなたをこのまま外に出してしまえばきっと世界はあなたを排除するでしょう   ユ:……なん、なんだよそれ僕が大災厄だとして世界がなんなんだよ。僕は…それじゃあ、なんのために生きて……   サ:それでも私は守るべきものとして、弟子として、家族として。ユーリのことが大好きだと思っています ユ: …っ…サリー サ:《眠れ。シュラーフィン》   ユ:(眠る)   サ:…あ…危なかった…!油断して力が弱まったすきにと思ったけど、かなり真実まで聞かれてしまったわね。それに、このお茶。まさかお茶自体に術をかけて飲ませるとは…成長したもんだなぁ。魔力もどんどん強くなって。このままじゃ……。……いや、馬鹿か私は。 0:過去回想 サ:ユーリと出会ったのは偶然だった。大災厄の訪れを予言に聞き、レイモンド家の末裔である私は大災厄を未然に防ぐようにと命令された。物であるならば壊せ。魔物であるならば倒せ。人であるならば……。できることならば何でもしようと誓った。なんとしてでも世界を大災厄から守ると。暗い裏路地で、私の前に現れた大災厄は   ユ:おねーさん、大丈夫? サ:汚れと傷だらけの小さな子どもだった サ:『あなた、魔法使いの素質があるわ!』   サ:咄嗟に出た言葉には嘘と魔力が混じりあって子どもを匣に閉じ込めた。 ユ:まほーつかい?まほうつかいって、あの王都にいる《白銀の魔女》とか《森の魔物使い》のこと? サ:そう、その魔法使い ユ:もしかして、おねーさんが僕の魔力に気づいたのは サ:そう、私も魔法使いなの。《声彩の魔女》っていうんだけど ユ:ふぅん、聞いたことない サ:ま、まだ駆け出しなのよ……そうね、私の魔法がどんなものか見せてあげる ユ:ほんと?!見せて見せてー! サ:うーん、そうだなぁ サ:子どもは自分が先程とは違う別の場所にいることに気がついた様子はなかった。  それなら、怪しまれないうちに囲ってしまおう。 サ:《拠点となれ ホームステッド》 ユ:わぁ!綺麗!すごく明るい…どこもかしこもピカピカしてるーっ!窓もおっきい!わ、これ暖炉?!あったかーい! サ:ふふふ、どうかな、魔法使いって信じてくれた? ユ:うん!信じる!おねーさんってすごい魔女なんだね サ:きらきらと子どもの目が光っている。事実を知ってしまえばこの子はどう思うのだろう。それまで、ただのカモフラージュにしかすぎないのに ユ:素敵な魔法を教えてくれてありがとうおねーさん!でも、 サ:ん? ユ:そろそろおうちに帰らないと…怒られちゃう サ:……そういえば、お父さんとお母さんは?どうして一人でいたの? ユ:お父さんとお母さんはね、もういないんだ。引き取ってくれたおじさんが今の僕の家族なんだけど、お金に困ってるからゴミを拾って売ってたの サ:そっか。君は頑張ってたんだね、偉いね ユ:うん。でも帰りが遅くなっちゃうとおじさん大きな声で怒るし打(ぶ)つから、あんまり好きじゃないんだ サ:そうなの…。…ねぇ、君 ユ:? サ:私と一緒に暮らさない? ユ:えっでもおじさんが サ:大丈夫大丈夫!私言いに行くからさ。それに、ほら!君魔法使いの素質あるし?私の弟子にならない? ユ:弟子? サ:そう!君の素質をもっと磨いて素敵な魔法使いになれるよう私が師になるの。どう? ユ:でも僕、文字も読めないし…本なんて見た事ないし サ:ふふ、じゃあ私が沢山本を読み聞かせてあげるわ ユ:ほんと?僕文字が読めるようになる? サ:もちろん ユ:本が読めたら、お料理もできるようになるかな? サ:もちろんよ。きっと美味しいものができるわ ユ:僕もおねーさんみたいな、すごい魔法使いになれる? サ:……うん、なれるよ ユ:ほんと?やった!僕、おねーさんの弟子になる! サ:よかった。えーっと ユ:僕ユーリって名前なの サ:そう、私はサリー。よろしくね ユ:よろしくお願いします。ねぇ、サリー。僕って初めての弟子なの? サ:ふふ、そうよ。あなたが初めての弟子。 ユ:わぁ、嬉しいなぁ サ:こうして大災厄、ユーリは私の弟子となった。定期的に王都に報告し、何度も封印を試みた。この子の力が暴走しないよう魔力を消費させ、時には記憶を奪った。 ユ:師よ!みてください、新しい魔法です サ:どれどれ? ユ:術にかけた相手の髪型を自由に変えることが出来ます。ためしに師の髪をアフロにさせてください サ:いやよ! ユ:どうしてですか?ハゲよりマシでしょ サ:どっちもいやよ! 0:過去回想終 サ:ユーリは頭がいい。どれだけ隠しても、どれだけ記憶を消しても真実に近づいてしまう。自分が大災厄であると。あと、どのくらいの間隠し通せるだろうか。 ユ:……サリー…? サ:ユーリ、もう少しおやすみ。疲れたでしょう サ:私は《声彩の魔女》。私の言葉が、私の声があなたに聞こえる限り私はあなたを守るわ。あなたを大災厄という運命から守ってみせる。

0:「声彩の魔女と箱庭」 ユ:ユーリ。声彩の魔女の弟子。魔女のせいで家の中から出られない。魔法使いの素質はあるが師を驚かせることができない。17歳くらい。過去回想では8歳、14歳が出てくる。 サ:レイモンド・サリー。声彩の魔女。ユーリの師であり家族である。「あらやだぁ」が口癖。秘密を抱えている。 0: 0:本編 0: ユ:師よ!今日こそ目に物見せてやる!   サ:そう言って模範的な術式かオリジナリティ溢れる魔法をお前は見せに来るわよねぇ   ユ:うるさいです。今回のは本当に素晴らしい魔法なんだ   サ:おや、魔法なんだね。前回は錬成だったのに   ユ:前回は師の薬箱を適当にひっくり返して見つけたものを混ぜてたら、結晶化してただの禍々しい色の石になったから自分で術式を考えて作ることにしたんですよ。それも3つ!   サ:私の私物を使っておいて人のせいにするとはね   ユ:前回の失敗が師のせいとは言っておりません。ここから出られないのだからあるものを使うしかないじゃないですか サ:大変だねぇ ユ:なんで他人事みたいに言ってるんですか!そもそも、僕がここから出られないのは《声彩の魔女》レイモンド・サリー。あんたのせいだ   サ:あらやだ。異名で呼ばれちゃうと、なんだか大魔道士みたいで照れちゃうわね ユ:照れるな!なんで僕を閉じ込める必要があったんだよ サ:そ…、それはお前があまりにも素晴らしい素質があったからァ遂?うっかり、ね?   ユ:うっかり自分の声に魔力乗せて誘拐する魔法使いがどこにいるんですか!   サ:誘拐なんて物騒な言い方しなくてもいいじゃないの。そんなつもりは無かったのよ。許してちょうだい?   ユ:ただのうっかりだったならまだマシなレベルですよ。まさかここから出られないなんて! サ:その代わりに、私がみっちり素質を磨くって約束したじゃない。約束が果たされるまでここから出すことは出来ないわ。 ユ:師がお考えになっている素質ってやつはいつ磨き終わるんですか…。ってか、それだけじゃないんですよ!ここはどこだって聞いたらあんたは   サ:《秘密の箱庭》   ユ:なんですか《秘密の箱庭》って!どんなメルヘンチック脳みそしてんですかカップルじゃないんですよ?!   サ:いいじゃないの。人はいつまで経っても夢を追い続けるものなのよ   ユ:アンタはただの人じゃないでしょうが   サ:確かに、ただの人ではないわね。それでも私は人の心をもちあわせているわ ユ:こ、心の話なんかしてないです。今のは力の話であって…   サ:まあまあ細かいことは気にしないで。それより東洋のお茶は持ってきてくれたかしら? ユ:ええ、ええ。もちろんですとも。あなたのお気に入りのホージチャはここに サ:ふふ、ありがとう。お前が煎れてくれるお茶はなんだってお気に入りだよ。あぁ、おいしい ユ:……そうですか   サ:それで、今回はどんな魔法は見せてくれるのかしら?   ユ:はい、今からやるのでちゃんと見ててくださいよ   サ:楽しみね〜   ユ:1つ目。この濡れタオル持っててください サ:あら、随分と冷たい濡れタオルね。氷水にでもつけてたの?   ユ:…まずはタオルに染み込んでいる水分に魔力を流し…水を動かし術式を書く…術式完成…!《暖まれ。ヴァルム》   サ:あら、ホカホカタオルになったわ    ユ:どうですか寒い時に使う魔法です!火のように危なくないし、これなら野宿でも暖かく過ごせる。ハンカチーフなどにこの術をかければぬくぬくとした快適ライフを過ごせます!   サ:そうね……、ユーリ。この石持ってくれるかしら?   ユ:?いいですけ、うわ!冷たっ   サ:これはフリーレンストーン。名前の通り、冷たさを保った石なの。この石があるってことは…? ユ:逆も然りってことですか…あ、でも、石がない時に使えば!   サ:ただあったまるだけじゃすぐに冷えてしまうわよ。それに魔法を使えば体内の魔力が減るから、もし寒い野宿で使うのなら体力がもたずに死んでしまうのがオチね   ユ:そ、そんな……いい発想だと思ったのに   サ:それじゃあ気を取り直して、次の魔法をみせてくれるかしら?   ユ:はぁ…では、2つ目の前に師よ。僕をもうひとり増やしてくれませんか? サ:いいけれど《共に生きよ。フュムール》   ユ:ありがとうございます。さすが声彩の魔女。術式を書かなくともやってのける   サ:あらやだ、褒められちゃった。もっと褒めてくれてもいいのよ ユ:やぁ僕、協力してもらうよ サ:褒めてくれないのね… ユ:これから僕たちだけの合言葉を決める。合言葉は『師の寝相が悪すぎる』だ。覚えたらこの術式を書いた紙を飲み込め。   サ:ちょっと?その言葉は合言葉にするには向いてないんじゃないかしら? ユ:これから2つ目の魔法お見せします サ:その合言葉は決定事項なのね… ユ:《合言葉。パスヴォルト》 サ:わかった   ユ:え?まだ何も言ってないのに   サ:私にはお見通しよ。2人目のユーリ、合言葉を教えてくれる?   ユ:いやです。合言葉なんだから教えるわけないでしょ   サ:ユーリ? ユ:ひっ…、《▅▅▅》です!   サ:やっぱり『師の寝相が悪すぎる』なんて言葉聞こえないわね。   ユ:…まさか   サ:ええ、既存の魔法よ。この魔法がなくても別の魔法で補うことが出来るわ。別の空間を作ったり、音を遮ったり。なんなら普通の人間だってモールス信号っていうもので秘密の会話をすることがあるんですって   ユ:また…先を越された サ:はやくあなただけの魔法を見つけることが出来たらいいわねユーリ ユ:……やっぱり僕、素質ないんじゃないでしょうか   サ:どうしてそう思うの   ユ:だって、いつまで経っても個性魔法は見つからないし、本の通りに術式を行っても陣を描いてもなにもかも失敗していく。できたとしても既存にある魔法で、しかもその魔法よりも良い魔法が上にいくつもある。どうしたらいいんだよもう…   サ:ユーリ、魔法はすぐに使えるものじゃないのよ。それに魔力を持つ人間は多くはない。素質を持って生まれただけでも奇跡なの ユ:僕は魔法使いの素質があるってだけでしょ?現魔法使いのアンタに僕が苦しむ気持ちなんて分からない サ:ユーリ、聞いて。魔法は人生と同じなの。何度も何度も失敗して、学んでを繰り返してゆっくり習得するものなの。向き不向きだってあるし、できることできないこともあるのよ。私だって、……できないことはたくさんあるし。お前はまだ子どもなんだから、そんなに思い詰めなくてもいいのよ   ユ:もう大人だ!文字だって読めるし、料理だってできるようになった。術式も何個か覚えた。アンタに拾われてからどのくらいの時間が経った?アンタが僕をこの家に閉じ込めてから何年経ったんだよ。いつ外に出られる?いつその素質とやらは開花するんだ?教えてくれよ《声彩の魔女》! サ:…ユーリ、怒らないで。外は危険なの あなたは身をもって知ってるはずよ。魔力をコントロールできなければ体調を崩すし誘拐されて見世物か奴隷として売られるかもしれないのよ    ユ:そんなこと言って、本当は出来損ないの弟子を外に出すのが恥ずかしくて閉じ込めてるんじゃないの?   サ:そんなわけないじゃない。   ユ:じゃあ理由は?僕を外に出すことが出来ない理由はなんなの?コントロールができないからってわけじゃないでしょ    サ:……   ユ:……もういい第3の魔法はやっぱりアンタに使ってやる   サ:待って魔法は人に向けて使ってはいけないのよ   ユ:勿論。でもアンタはただの人じゃない。それにもうアンタは術にかかってる サ:なんですって? ユ:気づかなかったんだ。茶葉に術式をかけといたんだよね。それでアンタのお茶を煎れた。魔力の籠ったホージチャをね サ:まさか…っなんの術をかけたの?! ユ:《告白せよ。ホモロギア》 サ:ユーッ… ユ:……師?……そうだ、試してみよう!この術式が成功ならなんでも答えてくれるはず…。……レイモンド・サリー。あなたは今魔法にかかっているか?   サ:告白魔法をかけられています。全て告白します ユ:答えた…ってことは第3の告白魔法は成功?初めて人にかけたけど……いや演技の可能性があるかもだし、 サ:……   ユ:こほん、レイモンド・サリー。何故弟子の作った豆スープを飲まない? サ:豆が嫌いだからです。弟子の作ったスープでも飲めません。   ユ:師は豆が嫌いだったのか…今度から何か工夫して味付けを…っじゃなくて、…遂にできたー!やったー!みたか、《声彩の魔女》!どんなもんだい!僕ったらやれば出来るんだからね!いずれ僕も魔法界に名を轟かせて異名がつくんだろうなぁ〜、どんなのがいいかな。これからこの魔法を極めるとしたら、告白の魔法使い?なんだかな……懺悔の魔法使い?いやいや、真実の魔法使い?イマイチだなぁ。師はどう思う?……師?あれ、サリー?……そっか今術をかけてるから意志を持って話すことが出来ないんだ。…ねぇサリー。どうして僕と一緒にいてくれるの? サ:レイモンド家は代々守護者として生きてきました。私は1人だった貴方を守るために一緒にいます ユ:レイモンド家…守護者の家系だったんだ…。僕、師のこと全然知らないんだな…。ねぇ、サリー。どうして僕はこの家を出ちゃいけないの?   サ:あなたを封印したためです ユ:え…どういう   サ:ここは家ではありません。大災厄を封印した匣の中です ユ:なに、大災厄って。匣…?箱庭って、ここは本当に…匣の中なの?っ…こんなところ、出ていってやる!どうせ師の部屋には子ども用のじゃなくてちゃんとした魔導書置いてあるんでしょ。時々部屋にこもって何してるのかと思って覗き見してて良かったぁ。なにが「やだぁ覗かないでよエッチ」だ!すぐに封印の解き方をマスターしてやるもんね。弟子を舐めるからこうなるんだ サ:……   ユ:ね、ねぇ……サリーは僕のことどう思ってるの? サ:あなたは私の弟子です。しかし、世界を脅かす大災厄となりうる存在であることを恐れています。 ユ:大災厄、大災厄ってさっきからなんなのそれは サ:大災厄はあなたです。   ユ:……え サ:あなたをこのまま外に出してしまえばきっと世界はあなたを排除するでしょう   ユ:……なん、なんだよそれ僕が大災厄だとして世界がなんなんだよ。僕は…それじゃあ、なんのために生きて……   サ:それでも私は守るべきものとして、弟子として、家族として。ユーリのことが大好きだと思っています ユ: …っ…サリー サ:《眠れ。シュラーフィン》   ユ:(眠る)   サ:…あ…危なかった…!油断して力が弱まったすきにと思ったけど、かなり真実まで聞かれてしまったわね。それに、このお茶。まさかお茶自体に術をかけて飲ませるとは…成長したもんだなぁ。魔力もどんどん強くなって。このままじゃ……。……いや、馬鹿か私は。 0:過去回想 サ:ユーリと出会ったのは偶然だった。大災厄の訪れを予言に聞き、レイモンド家の末裔である私は大災厄を未然に防ぐようにと命令された。物であるならば壊せ。魔物であるならば倒せ。人であるならば……。できることならば何でもしようと誓った。なんとしてでも世界を大災厄から守ると。暗い裏路地で、私の前に現れた大災厄は   ユ:おねーさん、大丈夫? サ:汚れと傷だらけの小さな子どもだった サ:『あなた、魔法使いの素質があるわ!』   サ:咄嗟に出た言葉には嘘と魔力が混じりあって子どもを匣に閉じ込めた。 ユ:まほーつかい?まほうつかいって、あの王都にいる《白銀の魔女》とか《森の魔物使い》のこと? サ:そう、その魔法使い ユ:もしかして、おねーさんが僕の魔力に気づいたのは サ:そう、私も魔法使いなの。《声彩の魔女》っていうんだけど ユ:ふぅん、聞いたことない サ:ま、まだ駆け出しなのよ……そうね、私の魔法がどんなものか見せてあげる ユ:ほんと?!見せて見せてー! サ:うーん、そうだなぁ サ:子どもは自分が先程とは違う別の場所にいることに気がついた様子はなかった。  それなら、怪しまれないうちに囲ってしまおう。 サ:《拠点となれ ホームステッド》 ユ:わぁ!綺麗!すごく明るい…どこもかしこもピカピカしてるーっ!窓もおっきい!わ、これ暖炉?!あったかーい! サ:ふふふ、どうかな、魔法使いって信じてくれた? ユ:うん!信じる!おねーさんってすごい魔女なんだね サ:きらきらと子どもの目が光っている。事実を知ってしまえばこの子はどう思うのだろう。それまで、ただのカモフラージュにしかすぎないのに ユ:素敵な魔法を教えてくれてありがとうおねーさん!でも、 サ:ん? ユ:そろそろおうちに帰らないと…怒られちゃう サ:……そういえば、お父さんとお母さんは?どうして一人でいたの? ユ:お父さんとお母さんはね、もういないんだ。引き取ってくれたおじさんが今の僕の家族なんだけど、お金に困ってるからゴミを拾って売ってたの サ:そっか。君は頑張ってたんだね、偉いね ユ:うん。でも帰りが遅くなっちゃうとおじさん大きな声で怒るし打(ぶ)つから、あんまり好きじゃないんだ サ:そうなの…。…ねぇ、君 ユ:? サ:私と一緒に暮らさない? ユ:えっでもおじさんが サ:大丈夫大丈夫!私言いに行くからさ。それに、ほら!君魔法使いの素質あるし?私の弟子にならない? ユ:弟子? サ:そう!君の素質をもっと磨いて素敵な魔法使いになれるよう私が師になるの。どう? ユ:でも僕、文字も読めないし…本なんて見た事ないし サ:ふふ、じゃあ私が沢山本を読み聞かせてあげるわ ユ:ほんと?僕文字が読めるようになる? サ:もちろん ユ:本が読めたら、お料理もできるようになるかな? サ:もちろんよ。きっと美味しいものができるわ ユ:僕もおねーさんみたいな、すごい魔法使いになれる? サ:……うん、なれるよ ユ:ほんと?やった!僕、おねーさんの弟子になる! サ:よかった。えーっと ユ:僕ユーリって名前なの サ:そう、私はサリー。よろしくね ユ:よろしくお願いします。ねぇ、サリー。僕って初めての弟子なの? サ:ふふ、そうよ。あなたが初めての弟子。 ユ:わぁ、嬉しいなぁ サ:こうして大災厄、ユーリは私の弟子となった。定期的に王都に報告し、何度も封印を試みた。この子の力が暴走しないよう魔力を消費させ、時には記憶を奪った。 ユ:師よ!みてください、新しい魔法です サ:どれどれ? ユ:術にかけた相手の髪型を自由に変えることが出来ます。ためしに師の髪をアフロにさせてください サ:いやよ! ユ:どうしてですか?ハゲよりマシでしょ サ:どっちもいやよ! 0:過去回想終 サ:ユーリは頭がいい。どれだけ隠しても、どれだけ記憶を消しても真実に近づいてしまう。自分が大災厄であると。あと、どのくらいの間隠し通せるだろうか。 ユ:……サリー…? サ:ユーリ、もう少しおやすみ。疲れたでしょう サ:私は《声彩の魔女》。私の言葉が、私の声があなたに聞こえる限り私はあなたを守るわ。あなたを大災厄という運命から守ってみせる。