台本概要
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タイトル | Moonlight Killers(ムーンライトキラーズ) |
---|---|
作者名 | あまくケイ (@amak0331) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
それはそれは、綺麗なお月さまの夜だったことで カサドラと呼ばれる、殺し屋の街 ダルケスは同業者のジャックと共に、殺し稼業をこなしていた そんな男女の、一夜の話 「迅雷の最適解」外伝 男1:女1 10分くらい 一人称変更可 展開を崩さない程度のアドリブは可 良かったらどうぞ 944 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ダルケス | 女 | 85 | カサドラの殺し屋 「罠師のダルケス」の異名を持つ 物腰の柔らかく、ベッドの似合う魅惑的な女性だが 仕事など、いざという時は冷静 |
ジャック | 男 | 81 | ダルケスと組んでいる殺し屋の青年 ひょんな仕事で彼女と手を組むことになってしばらく経つ 紳士的な雰囲気を感じるが、底が見えないミステリアスさを持つ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ダルケス:それはそれは、綺麗なお月さまの夜だったことで
0:とある酒場の前
ダルケス:今回は、かくれんぼがお上手だったわね
ジャック:調べるの、時間がかかったんだよ?
ジャック:もう少し褒めてもいいんじゃないか?
ダルケス:ごめんなさいね、褒め方を良く知らないのよ、私
ジャック:思ったことをいえばいいのさ
ジャック:でも、ほめ言葉は、これが終わったあと
ジャック:騒がしくて、夜も眠れない
ダルケス:慣れているじゃない、夜なんて
ジャック:「いつもの」夜がいいんだよ
ダルケス:あらそう
ダルケス:じゃ、さっそく
ジャック:乗り込むとしようか
0:酒場に入り込むダルケスとジャック
ダルケス:は~い。お手を上げて~。殺し屋のみなさま
ジャック:酒飲みは、冥府でしていただこう
0:ジャックとダルケスは銃で、殺し屋たちと応戦する
ダルケス:わーお、激しい銃撃なことで
ジャック:酔いどれをなめてはいけない。瓶が空っぽだ
ダルケス:残念。酔いを冷ましちゃったかしらね?
ジャック:どうだろうか。彼らにとっては、銃とお酒はセットなのかも
ダルケス:どういうこと?
ジャック:飲んだほうが当てやすくなったり
ダルケス:そんな人いるのかしら
ジャック:知らないね
ダルケス:無責任ねぇ
ジャック:殺しに責任感が必要かい?
ダルケス:あったほうが、仕事をしてる感覚、あると思うけど?
0:ダルケスは拳銃で、ジャックはアサルトライフルで、物陰から顔を出し、相手に撃ち込む
ジャック:ふうむ。惜しい
ダルケス:次当てたら、キスの1つでもしてあげようかしら?
ジャック:それはいいね。なら今ここで、どうだい?
ダルケス:冗談よね? それ
ジャック:本音さ
ダルケス:正直なことで
0:ダルケスに殺し屋が1人近づいてくる
ダルケス:あら、そこはもう仕掛けたわよ……?
ダルケス:ビリビリときちゃうやつ
ジャック:おやおや
ジャック:どっぷり罠にかかっていくとは、酔狂(すいきょう)だね
ダルケス:しびれ癖の強い子かしらね
ジャック:ん? 今日はそんな道具ばかりかい?
ダルケス:いいえ
ダルケス:花火もあるわよ
ダルケス:ほれ、ドカンと
0:ダルケスは、酒場に仕掛けていた罠を起動支える
ジャック:おいおい
ジャック:酒場で花火は、ジョークでも無理があるよ
ダルケス:ちょ~っとやりすぎたかしらね
ダルケス:退散しましょ
0:二人は酒場を後にする
ジャック:あぶないあぶない
ジャック:でも、外から見れば。見栄えがいい
ダルケス:そう?
ダルケス:ただの火事じゃないかしらね
ジャック:火の燃え盛り方は、千差万別
ジャック:まるで万華鏡のごとく、その姿を変える
ダルケス:お星さまでも見ている気分ということかしら
ジャック:星なんてみなくても、君が居るじゃないか
ダルケス:まぁ、お上手なことで
ジャック:この後、時間は?
ダルケス:もちろん
0:とあるホテル内。8階建ての建物の、一部の部屋
ダルケス:お月様がきれいね
ジャック:ロマンと月は、夜にかかせない
ダルケス:同感
ダルケス:……それにしても、カサドラも随分と。殺し屋が増えたわね
ジャック:急にどうしたんだい?
ダルケス:ターゲットがいる酒場、何人いたか覚えてる?
ジャック:10人
ダルケス:みんなグルでしょ? 一斉に撃ってきたもの
ダルケス:この前は、せいぜい5人が、ターゲットの取り巻きで、大したことなかったのに
ジャック:殺し屋稼業は、今年は繁盛かな?
ジャック:油断してたら、仕事をとられてお給料が減ってしまうね
ダルケス:嘘つきなさいな
ダルケス:お得意のマジックでご飯食べていけばいいじゃない
ジャック:職業は選びたいんだ
ダルケス:まぁ、ワガママで
ジャック:じゃなければ、ここまで続かないし
ジャック:君にも会えなかった
ダルケス:私もよ、ジャック
ダルケス:ちょうど飽き飽きしていたころだったのよね。殺しにも
ジャック:たまには息抜きが必要さ
ダルケス:最近は、教えてばかりだったもの
ジャック:? 殺し屋志望にお金の計算でも、教えていたのかい?
ダルケス:いいえ
ジャック:なら、数学か
ダルケス:それも違うわ
ダルケス:正解は、殺しの授業
ジャック:……セミナーでも開いてるのかい?
ダルケス:1人しかいないわよ
ジャック:赤字だな
ダルケス:そりゃタダだもの
ジャック:講師にならずとも、何かお店をはじめたらいいのに
ジャック:コーヒー、好きなんだろ?
ダルケス:好きだけど、誰も来ないわよ
ダルケス:それに、こんな職についてるもの。転職なんてもってのほか。このままおばあさんまで続けるか、死ぬかのどっちかよ
ジャック:世の中、二択で物事を考えるのはよくない
ジャック:寄り道こそ面白いというのに
ダルケス:どうも
ダルケス:でも、はじめるとしても、もう少し先だわ
ジャック:それは是非とも、開業したら飲みにいきたいものだ
ジャック:ただ今日は、飲むより、こっちのほう
0:ジャックはゆっくりとカーテンを閉める
ジャック:そろそろいい時間だ。満月も浮かんでいる
ジャック:脱ぐには早いか、ダルケス?
ダルケス:前戯(ぜんぎ)は必須条件よ、私
ジャック:ピロートークは常識さ
ダルケス:……あなたと仕事を始めて、どれくだいかしらね?
ジャック:さぁ、忘れた
ダルケス:忘れないわ
ダルケス:あなたとの最初の仕事
ジャック:あぁ、撃ち間違えた案件か、懐かしい
ダルケス:私が、ターゲットのトムを追いかけていたら
ジャック:俺がそのトムを撃っていた
ジャック:でも、俺はてっきりジムを追いかけているものかと思って
ダルケス:私は知らない間に、トムの双子の「ジム」を撃っていたのよね
ジャック:顔が似てもにつかない殺し屋二人、追いかけっこに苦労した
ダルケス:コメディって、本当に偶然が重なるものねぇ
ジャック:すれ違いは、愛と喜劇の王道らしいよ
ダルケス:美味しいということかしら
ジャック:ああ
ジャック:快感をそそるよ。よく
ダルケス:ジャック?
ジャック:アンドロイドは知ってる?
ダルケス:何かと思えば、無縁の機械人形のはなし?
ジャック:おもちゃが好きでね
ダルケス:アンドロイドのおもちゃなんて売ってたかしら?
ジャック:人形を、みたてていたんだ
ジャック:それがもし、表面が光のように輝く肌だとしたら
ジャック:人間なのに、固さを感じる美麗な体つきだとしたら
ダルケス:なに? 私をさしおいて、別の女の話?
ダルケス:しかも人形と比較されるなんて、ナメられたものね
ジャック:いいや、ダルケス
ジャック:君の肌は、理想に近いんだ
0:ジャックはダルケスの顔を触る
ダルケス:……ジャック
ジャック:だから、欲しいんだよ。君が
ジャック:喉から、手が出るほどに
ダルケス:そんなに?
ジャック:幼い時からの夢さ
ダルケス:夢、ね。羨ましい
ジャック:何がだい?
ダルケス:大人になるにつれて、忘れたわ
ダルケス:たまに、よくわからなくなるのよね。こんなことしてると
ジャック:あるあるだな、そんなこと
ジャック:ここはひとつ、溺れてみたらどうだい?
ジャック:同じ肉に飽きた獣は、刺激を求めて違う場所へとさ迷い歩く
ダルケス:食べられちゃうわよ、悠長に散歩なんてしてたら
ジャック:どうかな? それは
ダルケス:あと、私
ダルケス:そんな肉食系ではないから
ジャック:人それぞれタイプがあるさ
ジャック:そして俺も、そんなに好みじゃない
ダルケス:レストランで頼むメニューが、似ていると?
ジャック:食事の類似は、本能的に親しくなりやすい、という説もある
ジャック:だから、ダルケス
ジャック:悪くない関係になれると思うよ?
ダルケス:……そうね
ダルケス:でも、残念
0:ダルケスがポケットの中で何かを押す
ジャック:おっとこれは
ジャック:お得意のトラップじゃないか、罠師のダルケス
0:ジャックはすぐさま銃を引き抜いた
ダルケス:最初から抜く準備、していたでしょうに
ダルケス:口元、笑ってるわよ
ジャック:早撃ちはスリルを持ってくる
ジャック:どっちが先に殺せるか、競い合う快感をね
ダルケス:物騒なスリルじゃないの
ジャック:そうでもないさ。……ただ、弟の場合は、もっと違う意味のスリルだろうが
ダルケス:あら、弟がいるの
ダルケス:死ぬ前に家族紹介なんて、面白いじゃない
ジャック:少しは気に入ってくれたかい? 俺のこと
ダルケス:そうね
ダルケス:男としては、悪くないわ
ダルケス:でも、人としては、若干ネジが外れているのが、どうしても引っかかる
ジャック:似たようなことを思っていたよ
ジャック:甘い蜜を、君は全身から漂わせるように見せつけてくる。少しでも手を伸ばしたら、身体ごと蜜に取り込まれてしまうように
ジャック:ただ、後ろに何かを向けられている気が、常にしていた
ダルケス:何を向けていたんでしょうね?
ジャック:それは、俺が君に向けているものと、全く同じものさ
ジャック:どこまでも気が合うね、ダルケス
ダルケス:お互いさまで!
0:ジャックとダルケスは撃ち合う
ダルケス:…おかしいわね
ダルケス:当たってるはずなんだけど
ジャック:眠たくなってきたのかい?
ダルケス:飲まされてないはずよ
ジャック:いきなり無抵抗は、つまらない
ジャック:ほら、照準がブレてるよ?
ダルケス:私、最近は夜型なのよ
0:ダルケスは撃ち返す
ジャック:それじゃおかしいよね、もっとハツラツとしなきゃ
ダルケス:おかしいのはあなたよ
ジャック:俺は手品をしているだけさ。どこがおかしいんだい?
ダルケス:ふぅん、手品ねぇ
ダルケス:それはそれは、ネタ晴らしをしてくれると助かるのだけど?
ジャック:バレたらマジックショーは終わる
ジャック:でも君は特別だ。ゆっくりと教えてあげるさ
ジャック:バラバラにした後ね……!
0:ジャックが物陰から飛び出て、銃を向けようとする
ダルケス:怖いことで
ジャック:……?
ダルケス:気づいたかしら?
ジャック:この部屋……
ジャック:予想していたより、「多い」な
ダルケス:私が動かないと、はっきりと起動しないようにセットしてあるのよ
ダルケス:でも、私はあなたと銃撃の挨拶を交わした
ダルケス:だから、トラップちゃん達には起きてもらっただけ
ジャック:寝かせてやればいいのに。可哀想だ
ダルケス:ウチの教育方針に、手を出さないでもらえる?
ジャック:干渉しない彼氏がいるのかい?
ダルケス:あらぁ、私、デキた覚えがこれっぽっちもないのよね
ダルケス:……逃がさないわ
ジャック:これは、怖い怖い
ジャック:あまりみない表情だ
ダルケス:その様子だと、あなたも「そう」だと
ジャック:悲しいことに、今日を最後の記念日にしろと、雇い主から言われてね
ダルケス:本当に、どこまでシンクロしてるのかしらねぇ、あなたとは
ジャック:相性がいいと言っただろう
ジャック:でも、こんなに罠が貼られてしまっては、夜伽(よとぎ)の一つも交わせない
ダルケス:知らなかった? 私は罠でイカせるタイプなのよ
ジャック:嘘だな
ダルケス:なぜ?
ジャック:イカせる奴の表情じゃない
ジャック:そんなに真面目な顔したら、気持ちよくなれないよ
ダルケス:それはそれは、相性が悪いことで
ジャック:セックスの仕方、ぜひとも話し合いたいね
ダルケス:生きていればの、話だけどねぇ
ジャック:なら、人間らしく精一杯生きようじゃないか
ダルケス:っ!?
ジャック:冥(めい)を歩け
ジャック:ハディスタ・ウォーク
ダルケス:ジャックが消えた?
ジャック:後ろだよ
ダルケス:……でも
ダルケス:後ろにもあるのよ
ダルケス:クリテ・シューティカル!
ジャック:っ! なんと、鋭い弾丸を仕込んでいるか!
ダルケス:はぁ? これも避けた?
ジャック:面白いマジックだろう? 今度教えてあげるよ
ダルケス:待ちなさい!
ジャック:さようならだ、ダルケス
0:ダルケスは引き金を引いたが、ジャックに当たらず逃がしてしまう
ダルケス:っ……逃がしちゃったわね
ダルケス:…散々な夜。ほんと
0:ダルケスは一呼吸おき、部屋の窓から月を見る
ダルケス:こんな日は、お月様にでも祈ろうかしら
ダルケス:イカれたあいつが馬鹿を見ますようにって
0:
ジャック:任務は失敗か。まぁ、いい
ジャック:……こんな日は、月に祈ろう
ジャック:魅惑の君(きみ)が、もっと綺麗になるように、と
ダルケス:それはそれは、綺麗なお月さまの夜だったことで
0:とある酒場の前
ダルケス:今回は、かくれんぼがお上手だったわね
ジャック:調べるの、時間がかかったんだよ?
ジャック:もう少し褒めてもいいんじゃないか?
ダルケス:ごめんなさいね、褒め方を良く知らないのよ、私
ジャック:思ったことをいえばいいのさ
ジャック:でも、ほめ言葉は、これが終わったあと
ジャック:騒がしくて、夜も眠れない
ダルケス:慣れているじゃない、夜なんて
ジャック:「いつもの」夜がいいんだよ
ダルケス:あらそう
ダルケス:じゃ、さっそく
ジャック:乗り込むとしようか
0:酒場に入り込むダルケスとジャック
ダルケス:は~い。お手を上げて~。殺し屋のみなさま
ジャック:酒飲みは、冥府でしていただこう
0:ジャックとダルケスは銃で、殺し屋たちと応戦する
ダルケス:わーお、激しい銃撃なことで
ジャック:酔いどれをなめてはいけない。瓶が空っぽだ
ダルケス:残念。酔いを冷ましちゃったかしらね?
ジャック:どうだろうか。彼らにとっては、銃とお酒はセットなのかも
ダルケス:どういうこと?
ジャック:飲んだほうが当てやすくなったり
ダルケス:そんな人いるのかしら
ジャック:知らないね
ダルケス:無責任ねぇ
ジャック:殺しに責任感が必要かい?
ダルケス:あったほうが、仕事をしてる感覚、あると思うけど?
0:ダルケスは拳銃で、ジャックはアサルトライフルで、物陰から顔を出し、相手に撃ち込む
ジャック:ふうむ。惜しい
ダルケス:次当てたら、キスの1つでもしてあげようかしら?
ジャック:それはいいね。なら今ここで、どうだい?
ダルケス:冗談よね? それ
ジャック:本音さ
ダルケス:正直なことで
0:ダルケスに殺し屋が1人近づいてくる
ダルケス:あら、そこはもう仕掛けたわよ……?
ダルケス:ビリビリときちゃうやつ
ジャック:おやおや
ジャック:どっぷり罠にかかっていくとは、酔狂(すいきょう)だね
ダルケス:しびれ癖の強い子かしらね
ジャック:ん? 今日はそんな道具ばかりかい?
ダルケス:いいえ
ダルケス:花火もあるわよ
ダルケス:ほれ、ドカンと
0:ダルケスは、酒場に仕掛けていた罠を起動支える
ジャック:おいおい
ジャック:酒場で花火は、ジョークでも無理があるよ
ダルケス:ちょ~っとやりすぎたかしらね
ダルケス:退散しましょ
0:二人は酒場を後にする
ジャック:あぶないあぶない
ジャック:でも、外から見れば。見栄えがいい
ダルケス:そう?
ダルケス:ただの火事じゃないかしらね
ジャック:火の燃え盛り方は、千差万別
ジャック:まるで万華鏡のごとく、その姿を変える
ダルケス:お星さまでも見ている気分ということかしら
ジャック:星なんてみなくても、君が居るじゃないか
ダルケス:まぁ、お上手なことで
ジャック:この後、時間は?
ダルケス:もちろん
0:とあるホテル内。8階建ての建物の、一部の部屋
ダルケス:お月様がきれいね
ジャック:ロマンと月は、夜にかかせない
ダルケス:同感
ダルケス:……それにしても、カサドラも随分と。殺し屋が増えたわね
ジャック:急にどうしたんだい?
ダルケス:ターゲットがいる酒場、何人いたか覚えてる?
ジャック:10人
ダルケス:みんなグルでしょ? 一斉に撃ってきたもの
ダルケス:この前は、せいぜい5人が、ターゲットの取り巻きで、大したことなかったのに
ジャック:殺し屋稼業は、今年は繁盛かな?
ジャック:油断してたら、仕事をとられてお給料が減ってしまうね
ダルケス:嘘つきなさいな
ダルケス:お得意のマジックでご飯食べていけばいいじゃない
ジャック:職業は選びたいんだ
ダルケス:まぁ、ワガママで
ジャック:じゃなければ、ここまで続かないし
ジャック:君にも会えなかった
ダルケス:私もよ、ジャック
ダルケス:ちょうど飽き飽きしていたころだったのよね。殺しにも
ジャック:たまには息抜きが必要さ
ダルケス:最近は、教えてばかりだったもの
ジャック:? 殺し屋志望にお金の計算でも、教えていたのかい?
ダルケス:いいえ
ジャック:なら、数学か
ダルケス:それも違うわ
ダルケス:正解は、殺しの授業
ジャック:……セミナーでも開いてるのかい?
ダルケス:1人しかいないわよ
ジャック:赤字だな
ダルケス:そりゃタダだもの
ジャック:講師にならずとも、何かお店をはじめたらいいのに
ジャック:コーヒー、好きなんだろ?
ダルケス:好きだけど、誰も来ないわよ
ダルケス:それに、こんな職についてるもの。転職なんてもってのほか。このままおばあさんまで続けるか、死ぬかのどっちかよ
ジャック:世の中、二択で物事を考えるのはよくない
ジャック:寄り道こそ面白いというのに
ダルケス:どうも
ダルケス:でも、はじめるとしても、もう少し先だわ
ジャック:それは是非とも、開業したら飲みにいきたいものだ
ジャック:ただ今日は、飲むより、こっちのほう
0:ジャックはゆっくりとカーテンを閉める
ジャック:そろそろいい時間だ。満月も浮かんでいる
ジャック:脱ぐには早いか、ダルケス?
ダルケス:前戯(ぜんぎ)は必須条件よ、私
ジャック:ピロートークは常識さ
ダルケス:……あなたと仕事を始めて、どれくだいかしらね?
ジャック:さぁ、忘れた
ダルケス:忘れないわ
ダルケス:あなたとの最初の仕事
ジャック:あぁ、撃ち間違えた案件か、懐かしい
ダルケス:私が、ターゲットのトムを追いかけていたら
ジャック:俺がそのトムを撃っていた
ジャック:でも、俺はてっきりジムを追いかけているものかと思って
ダルケス:私は知らない間に、トムの双子の「ジム」を撃っていたのよね
ジャック:顔が似てもにつかない殺し屋二人、追いかけっこに苦労した
ダルケス:コメディって、本当に偶然が重なるものねぇ
ジャック:すれ違いは、愛と喜劇の王道らしいよ
ダルケス:美味しいということかしら
ジャック:ああ
ジャック:快感をそそるよ。よく
ダルケス:ジャック?
ジャック:アンドロイドは知ってる?
ダルケス:何かと思えば、無縁の機械人形のはなし?
ジャック:おもちゃが好きでね
ダルケス:アンドロイドのおもちゃなんて売ってたかしら?
ジャック:人形を、みたてていたんだ
ジャック:それがもし、表面が光のように輝く肌だとしたら
ジャック:人間なのに、固さを感じる美麗な体つきだとしたら
ダルケス:なに? 私をさしおいて、別の女の話?
ダルケス:しかも人形と比較されるなんて、ナメられたものね
ジャック:いいや、ダルケス
ジャック:君の肌は、理想に近いんだ
0:ジャックはダルケスの顔を触る
ダルケス:……ジャック
ジャック:だから、欲しいんだよ。君が
ジャック:喉から、手が出るほどに
ダルケス:そんなに?
ジャック:幼い時からの夢さ
ダルケス:夢、ね。羨ましい
ジャック:何がだい?
ダルケス:大人になるにつれて、忘れたわ
ダルケス:たまに、よくわからなくなるのよね。こんなことしてると
ジャック:あるあるだな、そんなこと
ジャック:ここはひとつ、溺れてみたらどうだい?
ジャック:同じ肉に飽きた獣は、刺激を求めて違う場所へとさ迷い歩く
ダルケス:食べられちゃうわよ、悠長に散歩なんてしてたら
ジャック:どうかな? それは
ダルケス:あと、私
ダルケス:そんな肉食系ではないから
ジャック:人それぞれタイプがあるさ
ジャック:そして俺も、そんなに好みじゃない
ダルケス:レストランで頼むメニューが、似ていると?
ジャック:食事の類似は、本能的に親しくなりやすい、という説もある
ジャック:だから、ダルケス
ジャック:悪くない関係になれると思うよ?
ダルケス:……そうね
ダルケス:でも、残念
0:ダルケスがポケットの中で何かを押す
ジャック:おっとこれは
ジャック:お得意のトラップじゃないか、罠師のダルケス
0:ジャックはすぐさま銃を引き抜いた
ダルケス:最初から抜く準備、していたでしょうに
ダルケス:口元、笑ってるわよ
ジャック:早撃ちはスリルを持ってくる
ジャック:どっちが先に殺せるか、競い合う快感をね
ダルケス:物騒なスリルじゃないの
ジャック:そうでもないさ。……ただ、弟の場合は、もっと違う意味のスリルだろうが
ダルケス:あら、弟がいるの
ダルケス:死ぬ前に家族紹介なんて、面白いじゃない
ジャック:少しは気に入ってくれたかい? 俺のこと
ダルケス:そうね
ダルケス:男としては、悪くないわ
ダルケス:でも、人としては、若干ネジが外れているのが、どうしても引っかかる
ジャック:似たようなことを思っていたよ
ジャック:甘い蜜を、君は全身から漂わせるように見せつけてくる。少しでも手を伸ばしたら、身体ごと蜜に取り込まれてしまうように
ジャック:ただ、後ろに何かを向けられている気が、常にしていた
ダルケス:何を向けていたんでしょうね?
ジャック:それは、俺が君に向けているものと、全く同じものさ
ジャック:どこまでも気が合うね、ダルケス
ダルケス:お互いさまで!
0:ジャックとダルケスは撃ち合う
ダルケス:…おかしいわね
ダルケス:当たってるはずなんだけど
ジャック:眠たくなってきたのかい?
ダルケス:飲まされてないはずよ
ジャック:いきなり無抵抗は、つまらない
ジャック:ほら、照準がブレてるよ?
ダルケス:私、最近は夜型なのよ
0:ダルケスは撃ち返す
ジャック:それじゃおかしいよね、もっとハツラツとしなきゃ
ダルケス:おかしいのはあなたよ
ジャック:俺は手品をしているだけさ。どこがおかしいんだい?
ダルケス:ふぅん、手品ねぇ
ダルケス:それはそれは、ネタ晴らしをしてくれると助かるのだけど?
ジャック:バレたらマジックショーは終わる
ジャック:でも君は特別だ。ゆっくりと教えてあげるさ
ジャック:バラバラにした後ね……!
0:ジャックが物陰から飛び出て、銃を向けようとする
ダルケス:怖いことで
ジャック:……?
ダルケス:気づいたかしら?
ジャック:この部屋……
ジャック:予想していたより、「多い」な
ダルケス:私が動かないと、はっきりと起動しないようにセットしてあるのよ
ダルケス:でも、私はあなたと銃撃の挨拶を交わした
ダルケス:だから、トラップちゃん達には起きてもらっただけ
ジャック:寝かせてやればいいのに。可哀想だ
ダルケス:ウチの教育方針に、手を出さないでもらえる?
ジャック:干渉しない彼氏がいるのかい?
ダルケス:あらぁ、私、デキた覚えがこれっぽっちもないのよね
ダルケス:……逃がさないわ
ジャック:これは、怖い怖い
ジャック:あまりみない表情だ
ダルケス:その様子だと、あなたも「そう」だと
ジャック:悲しいことに、今日を最後の記念日にしろと、雇い主から言われてね
ダルケス:本当に、どこまでシンクロしてるのかしらねぇ、あなたとは
ジャック:相性がいいと言っただろう
ジャック:でも、こんなに罠が貼られてしまっては、夜伽(よとぎ)の一つも交わせない
ダルケス:知らなかった? 私は罠でイカせるタイプなのよ
ジャック:嘘だな
ダルケス:なぜ?
ジャック:イカせる奴の表情じゃない
ジャック:そんなに真面目な顔したら、気持ちよくなれないよ
ダルケス:それはそれは、相性が悪いことで
ジャック:セックスの仕方、ぜひとも話し合いたいね
ダルケス:生きていればの、話だけどねぇ
ジャック:なら、人間らしく精一杯生きようじゃないか
ダルケス:っ!?
ジャック:冥(めい)を歩け
ジャック:ハディスタ・ウォーク
ダルケス:ジャックが消えた?
ジャック:後ろだよ
ダルケス:……でも
ダルケス:後ろにもあるのよ
ダルケス:クリテ・シューティカル!
ジャック:っ! なんと、鋭い弾丸を仕込んでいるか!
ダルケス:はぁ? これも避けた?
ジャック:面白いマジックだろう? 今度教えてあげるよ
ダルケス:待ちなさい!
ジャック:さようならだ、ダルケス
0:ダルケスは引き金を引いたが、ジャックに当たらず逃がしてしまう
ダルケス:っ……逃がしちゃったわね
ダルケス:…散々な夜。ほんと
0:ダルケスは一呼吸おき、部屋の窓から月を見る
ダルケス:こんな日は、お月様にでも祈ろうかしら
ダルケス:イカれたあいつが馬鹿を見ますようにって
0:
ジャック:任務は失敗か。まぁ、いい
ジャック:……こんな日は、月に祈ろう
ジャック:魅惑の君(きみ)が、もっと綺麗になるように、と