台本概要

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タイトル CONNECT~鴉とテディベアと怪盗と刑事~
作者名 レイフロ  (@nana75927107)
ジャンル コメディ
演者人数 4人用台本(男1、不問3)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ある日、カラスは可愛らしい片目のテディベアをゴミ捨て場から拾ってきた。
テディベアは“ぼっちゃん”と名づけられ、二人は仲良く日々を過ごしていた。
その頃世間では、「怪盗・鴉」によるお宝強奪事件が発生。
次に怪盗が狙うは、幻のブルーサファイア『人魚の泪』。
カラスとテディベアと怪盗と刑事が織り成すハチャメチャ劇!

↓レイフロ作の声劇台本はHPに全作品載っています。
https://reifuro12daihon.amebaownd.com

↓生声劇等でご使用の際の張り付け用にどうぞ
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CONNECT~鴉とテディベアと怪盗と刑事~
作:レイフロ
カラス:
ぼっちゃん:
在原(ありはら):
山樹(やまき):
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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
カラス 不問 63 大きな山鴉(やまがらす)。ピカピカな物に目がない。几帳面。 ボケの量:少し。
ぼっちゃん 不問 51 テディベア。青い瞳が特徴的だが、片目が取れてしまっている。 ボケの量:ほぼなし。 ※兼役としてニュースキャスターのセリフも1つだけあります。
在原 不問 52 ありはら。「怪盗・鴉」を追う刑事で、山樹の指導係。極度の方向音痴。 ボケの量:やや多め。 ※女性が演じる場合は一人称を「私」に変えて下さい。
山樹 69 やまき。在原についている新人の刑事。アホだがその正体は…? ボケの量:多い。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ぼっちゃん:カラス、今日もゴミ捨て場に行くの? カラス:ええ、行きますよ。 ぼっちゃん:クチバシをピカピカに磨いてから行くんでしょ?タオルを持っててあげるからこっちで磨いたら? カラス:はい、ありがとうございます。 ぼっちゃん:♪カラス~なぜ鳴くの~ カラス:なぜと言われましても。私の勝手です。 ぼっちゃん:歌につっこまないでよ! カラス:おかしな歌を歌うからです。 ぼっちゃん:おかしくないよー。「可愛い子ガラスが待ってるから早く山に帰ろ~」っていうほのぼのした歌じゃないか。 カラス:カラスにだって事情はあります!どのカラスもみんな所帯を持つと思ったら大間違いで…! ぼっちゃん:ストップストップ!そんな真面目な回答は求めてなかったよぉ。 カラス:私はそんな所帯じみたことよりも、ピカピカしている物をとにかくもう、まじですんごい集めつくしたいんですっ! ぼっちゃん:執念を感じるっ!カラスは本当に綺麗なものが好きなんだね。 カラス:はい! ぼっちゃん:あのさ、カラス。…ボクを拾ってくれてほんとにありがとね。 カラス:急にどうしたんです?捨てる阿呆(あほう)あれば拾うカラスあり、ですよ! ぼっちゃん:なにそれ、ふふふ。 カラス:すぐに物を捨ててしまう人間は愚か者です。ぼっちゃんだって片目が取れてしまっただけなのに…。 ぼっちゃん:しょうがないよ。ショウタくんが飼い始めたワンちゃんがボクで遊んじゃってさ。片方の目を食べられちゃったんだ。 カラス:ショウタくんとやらが、まだ恋しいですか? ぼっちゃん:そんなんじゃないよ!ボクは今までだって持ち主を点々としてきたし…。ショウタくんもぬいぐるみで遊ぶような歳じゃなくなって…。オトナになったんだよ、嬉しいことだよ! カラス:でも寂しいでしょう…? ぼっちゃん:でもさ!捨てられたからこそゴミ捨て場でカラスに会えたんだ!残った片目だけでもピカピカしててよかったぁ。じゃなかったらカラスに気付いてもらえなかったもんね。えへへ。 カラス:確かに最初に目に留まったのはぼっちゃんの青くて美しい瞳でしたが、一緒に暮らすようになって、私は 「青い瞳のテディベア」ではなく、「ぼっちゃん」が好きになったんですよ。 ぼっちゃん:ふふ、なんだかくすぐったいなぁ。ありがとう。カラスがいてくれるから今はもう寂しくないよ! カラス:それならよかったです。…さて、そうは言ってもぼっちゃんも片目のままでは不便でしょう。左目は青いガラス玉ですから、それに合う右目を宝の山から探してきます。 ぼっちゃん:宝の山ってゴミ置き場のこと? カラス:えぇ。私は「ゴミ」が大好きですから。 ぼっちゃん:ふふふ。じゃあ気をつけて行ってきてね!青いビー玉とかがあればいいなぁ。 カラス:探してみます。では行ってきます。 0:  0:  0:(間) 0:  0:  カラス:何箇所かゴミ捨て場を回ってみたけれどビー玉はありませんでしたね。ここはどうかな? カラス:イテっ!!なんだ?石でも投げつけられたか? カラス:おや?これはなんと綺麗な青い石!ぼっちゃんの瞳にどうだろう?ビー玉より少し大きいけれどいいかもしれません!捨ててあるということはこれも「ゴミ」なんでしょうし! カラス:こんなに綺麗な物を捨てるなんて、人間は史上最強のアホですね。ぼっちゃん、喜んでくれるといいなぁ。 0:  0:  0:(間) 0:  0:  ニュースキャスター:(ぼっちゃん役の方が兼役して下さい) ニュースキャスター:本日未明、「怪盗・鴉(からす)」の予告状通り、博物館より、幻のブルーサファイア「人魚の泪(なみだ)」 が盗まれる事件が発生しました。警察が厳重な警備を行う中で起こった事件であり、現代に颯爽(さっそう)と現れた怪盗の正体は、未だ検討もついていない模様です。次のニュースです… 0:  0:  0:(間) 0:  0:[時系列…カラスがゴミ捨て場へ出発した頃] 0:  0:  在原:(棒読みで) 在原:ナンテコッター!「怪盗・鴉(からす)」の予告状通りに、まんまと「人魚の泪(なみだ)」と呼ばれる幻のブルーサファイアが盗まれてしまったぞー! 山樹:在原(ありはら)先輩!わざとらしい状況説明ありがとうございますっ!こっちですっ! 在原:状況説明とかメタい事を言うな!山樹(やまき)?!おまえ口から血が出ているぞ!まさか怪盗・鴉にやられたのか?! 山樹:やだなぁ先輩、ケチャですよ!ケチャップ!怪盗・鴉が来るまで暇だったのでホットドック食ってました! 在原:は? 山樹:いやぁ警備って言っても俺、博物館の外の、目立たない裏の道が持ち場じゃないですかぁ。正直ちょー暇だったんすよ! 在原:はぁ? 山樹:そしたらちょうどホットドックの移動販売が通ったんで、買って食ってたんですよねー。そしたら急に奴がバッて現れて!「嘘だろ?!」ってなって慌てて追ったんですけど、食べ過ぎたせいでわき腹痛くなっちゃってぇ…。俺ってば!警官の自覚が足りないぞっ!めっ☆ 在原:キモイ!ウザイ!可愛くない!で、ヤツはどっちに逃げた?! 山樹:埠頭(ふとう)の方です!「人魚の泪」 を持って海から逃亡しようだなんて…ちくしょー!なんてオシャレな奴なんだッ! 在原:上手いこと言ったつもりかこの阿呆! 山樹:でも本当についさっきのことなので追いつくかもしれません!ですが…!くっ…はぁはぁ…俺のわき腹はもうダメです!先輩、後は頼みました、よ…ガクッ! 在原:ただの食いすぎだろこの役立たずがっ!クソが!…クソがっ! 山樹:なんで二回言ったんすか?ほら先輩、早く追いかけないと逃げられちゃいますよー?また女子高生に「警察ってまじ無能~」「まじありえないんだけど~」「怪盗とかまじかっこいい~」とか言われちゃいますよ! 在原:無能はお前だ!俺は先にいくからお前も早く来いよ!取り逃がしたらお前のせいだからな!バーカバーカッ! 0:(在原走り去る) 山樹:フッフッフ、先輩すみません…。まさか俺が「怪盗・鴉」だなんて夢にも思ってないんだろうなぁ。ああ…それにしてもなんて美しいブルーサファイア!こんなに小さいのに時価数十億はくだらないなんて…あはは! 山樹:でもさすがに潮時かなぁ。この宝石も日本では売りさばけないし…。在原先輩との刑事ごっこの日々はけっこう気に入ってたんだけど、そろそろ海外に高飛びする時期か… 在原:山樹(やまき)ッ! 山樹:うわぁぁぁ!(びっくりして宝石を投げる) 山樹:ななななんですか先輩!怪盗・鴉を追いかけたんじゃなかったんですか!? 在原:山樹!怪盗・鴉を見たんだろう?!特徴はどんなだった?! 山樹え?!えーっと…黒づくめでした! 在原:よし、黒づくめだな!お前も腹が治ったなら早く来い!クソがっ! 山樹:あ…イダダダ!まだダメです!激痛です!ホットドック八個は食いすぎました!サーセン!! 在原:そんなに食ったの?!お前職務をなんだと思ってんの?! 山樹:先輩!説教は後で聞きますから!逃げちゃいますよ!怪盗・鴉! 在原:そうだった!絶対に逃がさんぞ!うぉぉぉぉ! 0:(在原走り去る) 山樹:はぁ、心臓に悪い…正体バレたかと思ったぁ…。びっくりして「人魚の泪」をゴミ捨て場の方にブン投げちゃったよ…。 カラス:…ぼっちゃん、この綺麗な石、喜んでくれるといいなぁ。 山樹:あれ?どこ行った?うわっカラスだ!邪魔だ、どっか行け!シッシッ! カラス:はいはい、どうせカラスは邪魔ものですよぉ… 山樹:でけぇカラスだなぁ。人間様の出したゴミ食べてあんなにデカく育つなんてほんといいよなぁ。こっちは汗水垂らして怪盗と刑事の両立してるってのにさぁ…。嘴(くちばし)もデカくてピカピカで鋭くて…ん?なんか青くて光るものを咥えてる…?まさかあれは!「人魚の泪」?! カラス:さぁ帰りますか。ぼっちゃんが待っていますし… 山樹:嘘だろおい!待てコラぁ!怪盗・鴉がリアルのカラスにお宝を盗まれるなんてシャレにならないだろぉぉぉ!それは俺のだ!返せぇ! カラス:(空を飛びながら) カラス:あの人間、まだなにか叫んでますね。ゴミ捨て場から避けてあげたのにまだ何か不満なんでしょうか?そんなに邪険(じゃけん)にしなくてもいいのに…。早く帰ろう…。 0:  0:  0:(間) 0:  在原:はぁはぁ…しまった…。自分が方向音痴だということを失念(しつねん)していた!!埠頭(ふとう)はどっちだ?!海どころか何故か森に迷い込んでしまったが…。ん?あそこの木の上に小屋みたいなものが出来ているな。懐かしいなぁ、ガキのころは木の上の秘密基地に憧れたもんだぁ。うふふ。 カラスふぅ…到着っと…。ただいま帰りました~! 在原:カラスが木の家に入っていった?ねぐらにしているのか?…ん?窓辺にはぬいぐるみのようなものが見えるなぁ。 ぼっちゃん:おかえりカラス!どうだった? カラス:イイ物を見つけましたよ!見て驚かないでください?ジャーン! ぼっちゃん:わっ!なにこれ!すごく綺麗! カラス:博物館の近くのゴミ捨て場にあったんです。完全な丸ではなくて、滴(しずく)のような形をしていますが、ぼっちゃんの瞳に合うのではないかと…! ぼっちゃん:こんな綺麗なもの見たことないよ!わぁ!いいのかな? カラス:いいんですよ。捨ててあったのですから。試しにつけてみますか? ぼっちゃん:うん! カラス:落ちないように糸で固定しますからね。ちょっとチクッとしますよ? ぼっちゃん:大丈夫だよ。ボクはぬいぐるみなんだから痛みは感じないよ。 カラス:物理的な痛みは感じなくてもぼっちゃんには心が在りますから。気持ちの問題ですよ。 ぼっちゃん:カラスは本当に優しいね。 カラス:ほら、動かないで? 在原:んん?さっきのカラスがぬいぐるみをつっつき回している?ここからじゃ良く見えんが…なにかキラキラしたものを咥えているように見えるな…。 在原:お!この木、はしごがついてるじゃないか!本部には埠頭の方に怪盗・鴉が向かったという情報は伝えたし、気になるからちょっと登って様子を見てから俺も向かおう!どうせ海がどっちかわからんしな!多分右の方だろ!困ったら右に行くに限る!なんとなく! カラス:よし!つきましたよ!私のピカピカの嘴に自分の姿を映してみて下さい? ぼっちゃん:わぁすごい!両目が揃ったのは久しぶりだぁ!嬉しいなぁ! カラス:こうやってつけてみると、この石の形、滴(しずく)というか涙のようにも見えますね。 ぼっちゃん:それじゃあ、これは嬉し涙だね! カラス:えぇ、そうですね。とてもお似合いです。 ぼっちゃん:ふふ、ありがとうカラス! 在原:(こっそり覗きながら/心の声) 在原:なんてことだ!!ぬいぐるみの目にくくり付けられているのは、間違いなく「人魚の泪」!一体どういうことなんだ?!まさか…!「怪盗・鴉」というのは通り名ではなく、ガチの鳥類のカラスだったってことなのか?!山樹が言っていた「黒づくめ」という特徴にも合致する!とにかく鳥だろうがなんだろうが「人魚の泪」を取り戻さなければ! 在原:うっ、動くな!怪盗・鴉め! ぼっちゃん:ふぇ?!人間がどうしてここに?! 在原:もう逃げられんぞ!「人魚の泪」は返してもらう! カラス:ハッ!…まさかこの綺麗な石を狙っているのか!? ぼっちゃん:カラス… カラス:大丈夫です!私が守りますから! 在原:観念して手をあげろ!…ん?羽を上げろ!…でいいのか? カラス:ここから出て行け! 在原:ぐっ…そんなデカイ声でカァカァ行っても俺は引き下がらんぞ!この泥棒鴉め!そのぬいぐるみを渡せ! ぼっちゃん:カラス…恐いよぉ カラス:人間はぼっちゃんを捨てたくせに!ようやく両目の揃ったぼっちゃんからまた幸せを奪う気か! 在原:嘴が黒光りしているし、めちゃくちゃ鋭い…あんなので突かれたら怪我ではすまないかもしれない!もはやあれは凶器だ!こうなったら発砲もやむを得ない!無傷で逮捕してしっかり裁判にかけたかったが! 在原:…ん?リアルカラスでも人権はあるんだったかな?いや、鳥だから鳥権(とりけん)か?というかそもそも供述は出来るのか?!答えろ!怪盗・鴉! カラス:くっ…!人間を傷つけるのは信条に反しますが、ぼっちゃんを守るためです…攻撃しなくては!狙いやすい急所は…目玉! ぼっちゃん:カラスやめて!人間を傷つけちゃダメだよ!この石なら渡すから! カラス:ぼっちゃん… 山樹:センパーイ!どこですかー?在原(ありはら)せんぱーい!アホの在原ぁぁ? 在原:あの声は、山樹?!…おーい!上だ!木の家にいる! 山樹:は?上?…あ!あんなところに木の家が!なに遊んでるんすかー? 在原:バカヤロウ!ここに怪盗・鴉がいるんだ!お前も手伝え!早く登って来い!クソが! 山樹:は?!怪盗・鴉が?!鴉は俺ですけど……じゃなくて!わかりましたー!今から登りますー! 山樹:(心の声) 山樹:どういうことだ?こっそり先輩にしかけておいたGPSを頼りにここまで来てみたけど、怪盗・鴉がこんなところにいるわけが…!てゆーか俺なんですけど?!怪盗・鴉は俺なんですけどぉぉぉ?! ぼっちゃん:もう一人来るみたい…どうしようカラス… カラス:チッ…!ん?あの男は…さっきゴミ捨て場でギャーギャー騒いでいた奴では…? 山樹:よっと…うわぁまじで木の家だぁ。先輩何やってるんですか…って、カラスゥ?! 在原:そっちじゃない!クマのぬいぐるみの右目をよく見てみろ! 山樹:なっ!あれはまさか「人魚の泪」?!ということはあのカラスさっきの…! 在原:さっきの? 山樹:え?!あ、いや、そういやさっき博物館の近くで、ちょうど同じくらいの大きさの、嘴がピッカピカのカラスを見かけたなぁ、なんて…。 在原:なにぃ?やはりコイツが怪盗・鴉なのか!?でもお前、博物館から逃げていく怪盗・鴉の特徴が「黒づくめ」だと言っていたが、なぜその時点で、人間ではなく鳥類のカラスだと言わなかった! 山樹:はぁ?怪盗・鴉がリアルカラスなわけが……あ、でも待てよ…? 山樹:(心の声) 山樹:怪盗・鴉がそこにいるリアルカラスだったってことになれば、「なーんだカラスが犯人か~!頭のいいカラスも居たもんだな~!あはは!捜査は止めだ!あはは!飲みに行くぞフゥ~!」ってことになるのでは?! 在原:どうした?山樹。 山樹:ああ!そうでした!埠頭(ふとう)の方へ行ったのはそこのカラスで間違いありません!! 在原:やはりそうか…! 山樹:(心の声) 山樹:「やはりそうか」って、そんなわけねーだろ! 在原:でも待てよ?怪盗・鴉からは予告状が届いているんだぞ!あれもこのカラスが作ったというのか?! 山樹:か、カラスは頭が良いんですよ!ゴミ捨て場に施してあるカラス避けだってだいたい意味ないでしょう!あとクルミを壊すためにわざと道路に置いて車に轢(ひ)かせたりするって「ビックリ動物100連発!」で観た気がします!だからきっと人間がパソコンを打つのを見て覚えたんですよ! 在原:そんなに頭がいいカラスがいるとは!なんてこったぁ!確かに、さっきこのカラスが糸を使ってそこのぬいぐるみに「人魚の泪」を括(くく)りつけるところを見た!どおりで頭がいいわけだ! 山樹:(心の声) 山樹:え?あのカラスがぬいぐるみに目をつけてあげてたの?優しくね?…てゆーか、カラスにばかりに気を取られてたけど、あのテディベア、どこかで…? 在原:だったら下手に近づくのは余計に危険だな。生け捕りにしたかったが、やはり撃つしか…! 山樹:あああああああああ! 在原:なんだ?!どうした急にデカイ声を出して! 山樹:あのテディベア…!あれはまさか…!! ぼっちゃん:何だろうあの人、めっちゃボクのこと見てくる…きもちわるっ! カラス:ぼっちゃん、あの男はゴミ捨て場でも何かギャーギャー騒いでいたし、ヘンタイかもしれません!気をつけて! 山樹:先輩!ここは俺に任せて、先輩は応援を呼んで来てください! 在原:なんだと?!だが山樹…!相手はパソコンで予告状を作るほどの天才カラスだぞ! 山樹:ヤツはあのテディベアを守っているようです!きっとヤツも大人二人に囲まれては警戒心を解けないと思うんですよ。俺がなんとか説得してみせます! 在原:説得ってお前…!カラス語が話せるのか?! 山樹:はぁ?そんなわけ…あ、いや、えーと…そうだ!昔、通信教育で「カラス語検定2級」を取ったことがあったようなないような… 在原:お前…!そんな特技があったなんて!すごいじゃないか!でかしたぞ!ヨーシヨシヨシ! 山樹:(心の声) 山樹:なんか信じたー!「カラス語検定」ってなんだよー! 在原:で、俺は応援を呼んで来ればいいんだな!わかった!あと、山樹…! 山樹:はい? 在原:死ぬなよ?(キリッ) 山樹:はよ行け!…じゃなくて、わかりました!必ず生きて帰ります! カラス:一人どっか行きましたね…なんだったんだ、くそウザかった… 山樹:邪魔者がいなくなったところで、腹を割って話そうじゃないか。カラス君。 カラス:くっ!ヘンタイの方が残るとは…! 山樹:申し訳ないが、俺はカラス語が話せない!だが、そのクマちゃんのことなら知っているぞ! ぼっちゃん:なんかボクのことすごいカッコつけて指差してくるぅ…きもちわるいっ! 山樹:薄汚れていてすぐには気がつかなかったが、そのクマちゃんは一九三〇年代にドイツで作られ、世界でたったの数十体しか存在しないとされる超貴重なテディベアだ!ブルーの瞳と足の裏に特殊な刻印があるのがその証拠だ! カラス:なにか力説しているが、私は人間の言葉が全然わからない!どうしよう…なんかめんどくさい! ぼっちゃん:カラス!ボクはずっと人間と過ごしてきたし、だいたいわかるから通訳するね! カラス:おー!さすがぼっちゃん! 山樹:実は俺は、そのクマちゃんを盗もうとしたことが過去にある!日本で唯一この貴重なテディベアを所有している 山樹:鳳凰院薔薇麒麟櫻瑪瑙燦燦家(ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサンけ)に盗みに入ろうとしたんだ!セキュリティが「NASAか!」ってくらい厳しかったからやめたけどな!! ぼっちゃん:今、ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサン家って言った…?それってショウタくんの名字だ! カラス:え?ショウタくんって、「ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサン ショウタ」って名前だったんですか?!長っ! 山樹:鳳凰院薔薇麒麟櫻瑪瑙燦燦家(ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサンけ) 程の大財閥が所持していたはずのテディベアが、何故今こんな木の家にあるのかはわからないが…そんなことはどうでもいい!俺はテディベアが!クマちゃんが!大好きなんだぁ! ぼっちゃん:この人やっぱりヘンタイだよカラスぅ!恐いよぉ! カラス:やはりヘンタイか!!納得!来るなら来いっ!目玉をえぐり出してやります! 山樹:カラス君!俺はお前の味方だ!!俺はテディベア愛好家!そのクマちゃんを直してあげたいだけなんだぁ! ぼっちゃん:カラス、このヘンタイ、ボクたちの味方だって言ってるよ?ボクを直したいだけだって。 カラス:騙されてはいけません!ヘンタイはハァハァ言いながらあの手この手で欲しいものを手に入れようとするものです! ぼっちゃん:なんかカラスの偏見がすごい!何か嫌な思い出でもあるのかなぁ?! 山樹:カラスは頭がいいんだろ?今はこれくらいしかないが!ほら見てみろ!これでも俺がクマちゃん好きではないと疑うのかッ?! カラス:いい歳して財布が「リラックスくま」だと?!キーケースもキーホルダーも「くまもんヌ」や「くまのぷーたろう」だ!ダメ押しでインナーシャツがテディベア柄だとぉぉぉ!認めざるを得ない!ちくしょー!クマちゃん大好きかよぉ! ぼっちゃん:カラス!落ち着いて?!キャラがブレてるよ?! 山樹:嘴を向けるのをやめてくれたんだな…!カラス君、わかってくれたのか?! カラス:大のクマちゃん好きが、ぼっちゃんに酷いことをするはずがありません…。くっ…不本意ですが、信じましょう! ぼっちゃん:え?なに?カラスもクマが好きだったの?ボクを拾ったのは瞳がピカピカしているからじゃなくてクマ好きだったからなの?! カラス:ピカピカは大好きですよっ!でででもその…クマちゃんは例えピカピカしたものがついていなくても、か、可愛いじゃないですか! ぼっちゃん:ヘンタイさんとの意外な共通点が… カラス:ぼっちゃん?!なんですかその白い目は!!私はヘンタイじゃありませんよ?!断じてヘンタイなどでは! 山樹:よし!それじゃあ先輩が応援を呼んでくるからここから逃げよう!俺に作戦がある!協力してくれるか?カラス君! ぼっちゃん:協力してくれたらここから逃げられるってさ! カラス:やむを得ませんね… 山樹:その優しげな顔は「協力を惜しまない!」という意味にとらえていいかな!心強い!でもな、その右目の「人魚の泪」だけは先輩にも見つかってしまった以上、どうしても返さなければならないんだ。 ぼっちゃん:え…! 山樹:このまま逃げる方法がないわけじゃない…でも、カラスが貴重な宝石を盗んでいったとなれば、「都内のカラス一斉駆除計画」なんかが実行される可能性もありえる。それじゃ困るだろ? ぼっちゃん:「くじょ」って…カラスが死んじゃうってこと?!そんなの絶対にダメだよ!カラス…せっかくカラスが見つけてきてくれた石だけど、これは返そう?ボクは片目でも全然平気だから! カラス:…ぼっちゃんがそれでいいのなら… 山樹:(心の声) 山樹:このカラス、ちょいちょいクマちゃんの方を見ているな…。まるでクマちゃんの声に耳を傾けているみたいだ。なんか会話でもしてんのか?まさかな… カラス:では、取りますね…?必ずまた新しい瞳を探してきますから… ぼっちゃん:ぐすん…うん… 山樹:(心の声) 山樹:ああ…カラスがクマちゃんの目を優しく取ってあげている!なんか親子みたいな愛情を感じる!ヤバイ…なんか俺泣きそう…!かあちゃーん! ぼっちゃん:あれ?なんでヘンタイさんまで泣いてるんだろう…気持ち悪い… カラス:この石が原因でこんなことになっているのなら返しましょう。ただし、ぼっちゃんを絶対に安全なところに逃がしてもらいますよ! 山樹:ありがとう、カラス君…!俺は決めたよ!この宝石さえ取り戻ればさっさと高飛びでもしようかと思っていたけれど、君たちを宝石泥棒にするわけにはいかない!ここは天下の大泥棒「怪盗・鴉」とリアルカラスによる共同戦線だ!共にクマちゃんを救おうではないか! カラス:何を言っているかはわかりませんが、気合いは伝わりました!この人は信用していいヘンタイですね! ぼっちゃん:うん、ボクもそう思うよ!ヘンタイバンザイ! 山樹:では作戦を説明する!ゴニョゴニョゴニョ… 0:  0:(間) 0:  在原:クッ…なんてこった…!応援を呼ぼうにも、電波が悪くてその辺をずっとウロウロしていたら迷ってしまった!いや、最初から迷ってはいたのだが!一生この森から抜けられる気がしない!ジーザス! 山樹:すぇーんぷゎーい(先輩)! 在原:ハッ!山樹!おまえ、無事だったのか! 山樹:はぁ、はぁ…怪盗・鴉からなんとか「人魚の泪」を奪い返すことに成功しました! 在原:おお!でかしたぞ、山樹! 山樹:で、でも…怪盗・鴉に逃げられてしまって… カラス:カァァァ! 在原:あっ!あれは怪盗・鴉! 山樹:(棒読みで) 山樹:クソー、怪盗・鴉メ!絶対ニ逃ガサナイゾー! 在原:逃げていくぞ! 山樹:俺がヤツを追いますから、先輩はこの宝石をお願いします! 在原:あぁ!はわわわ…こ、これが時価数十億の宝石か!なんて美しいんだ!目が眩むっ!あぁ/// 山樹:では!また合流しましょう! 在原:ちょっと待て!その小脇に抱えているクマのぬいぐるみも持っていくのか? 山樹:へ?ああ…これですか?いやぁ…これはその、小汚いのできちんとゴミに出しておきます!森の自然を守るのも警察官の勤めですから!…ですよね?!不法投棄!ダメ!ゼッタイ! 在原:おお!お前にもついに警察官としての自覚が出てきたようだな!俺は嬉しいぞ! あの買い食いばっかりしていたクズでアホで頭にお花が咲いてる目クソ鼻クソみたいな山樹がなぁ…グスン。 山樹:やめて下さいよ先輩…テレるじゃないっすか…! 在原:よし!宝石は俺に任せて、お前は怪盗・鴉を追え!お前の刑事魂(けいじだましい)を…いや!デカ魂を見せてみろ! 山樹:はい!行って参ります! 0:  0:(山樹、走り去る) 0:  在原:よし!では俺も森を出るとするか! 在原:ハッ!しまったー!俺迷子だったー!山樹ぃぃぃカムバァァァック! 0:  0:(間) 0:  カラス:とにかくあのヘンタイとの待ち合わせ場所まで急がないと!はぁ…あのヘンタイにぼっちゃんを預けて本当に大丈夫だったのでしょうか…。「ボクを信じて」なんてぼっちゃんに言われたら信じないわけには…! カラス:クッ…もしぼっちゃんに何かあったら目玉をくり抜いて鼻の穴に突っ込んで…えーっと…なんかアレをコウしてソレをナニした挙句、奥歯ガタガタ言わしてやるから覚悟しておけぇい! 0:  0:(間) 0:  山樹:…尾行はないな?よし!先に行ったはずのカラス君はもう来てるかな? カラス:じーーーーーーーっ 山樹:お!電柱にいるな。…ん?心なしか俺めっちゃ睨まれてるような気がするけど…。あ、そうか!クマちゃんもちゃんと持ってきたぞー!安心しろー! ぼっちゃん:カラスー!ボクなら大丈夫だよー! カラス:ぼっちゃん!よかった! 山樹:ここの地下に潰れたバーがあるんだ。そこが俺の隠れ家なんだけど…ほら!扉の脇に猫用の入り口があるだろ?そこからお前も自由に入れる! ぼっちゃん:カラス、猫用の入り口から入ってだって! カラス:むっ…。猫はいないでしょうね?じーーーーーっ 山樹:そんな睨まなくても猫はいないっての!ほら、今はドア開けてやるから一緒に入れ! 0:  0:(扉を開ける) 0:  ぼっちゃん:わぁ!すごい!テディベアが棚にたくさん! カラス:ほう、自称テディベア愛好家は伊達じゃありませんでしたね 山樹:ふぅ…まずはクマちゃんを洗おうか。俺の目に狂いはないと思うけど、本当にあの貴重なテディベアかどうかも確かめないと…。 在原:(ナレーション) 在原:どうも!突如(とつじょ)ナレーションに抜擢された在原(ありはら)です。イイ声で読みます。ゴホン(咳払い)。 在原:カラスがそばで見守る中、山樹は慣れた手つきでテディベアを綺麗に洗った。その後、特徴的な青い瞳や足の裏にある特殊な刻印を調べた結果、間違いなく世界に十数体しかないと言われる貴重なテディベアだと判明したのだった。 カラス:ぼっちゃん!見違えるようです!こんなに綺麗になって! ぼっちゃん:えへへ、フワフワになったよぉ! 在原:(ナレーション) 在原:テディベアは「人魚の泪」ほどではないとしても十分な収穫と言えた。片目が失われているとはいえ、売ればきっと世界中のテディベア愛好家たちがこぞって値段を付けるだろう。 在原:それなのに山樹は迷っていた。テディベアに幸せそうにすり寄るカラスの姿を見て、心を打たれてしまったのだ。だから売らない!テディベアは売らないのだ!絶対にッ! 山樹:いや!ナレーションの圧がすごい!まだ売ろうか売るまいか迷ってるよ!俺は! 在原:(ナレーション) 在原:山樹は強い意思を持って売らないと決めた!今決めた!カラスとクマちゃんには人間には計り知れない絆があると感じたのだ!そんな二人を離れ離れにしてはいけない。ここにはちょうど猫用の入り口も付いていることだし、カラスがクマちゃんに会いたい時にいつでも会いに来ることが出来る。二人の絆を守ってやろうと山樹は心に誓った!神様や仏様…あと…ガンジーとか、ドラ○もんとか、なんかそこらへんに誓った! 山樹:うるせーなわかったよ!売らない!売りませんンン!これでいいですかぁぁぁ?! 在原:(ナレーション) 在原:それでこそ男の中の男!山樹!イケメン、というわけではないが…むしろどっちかと言えば顔は冴えないが!でも、ほら…あれだ!心がイケメン!それだ!人間は顔じゃない!顔じゃあないんだ!だから元気出せ?な? 山樹:いいよ無理やり褒めてくれなくてもぉぉぉ! カラス:なんか独り言いってますね… ぼっちゃん:ヘンタイさんだからね… 山樹:はぁ…なんにせよ、片目じゃ可哀相だしクマちゃんの左目どうしようかなぁ。まぁ同じものは手に入らないから似てるものを探すしかないんだけど…。 カラス:ぼっちゃんの瞳は私が探してきますっ! 山樹:いててて!つっつくなよぉ。売らない!クマちゃんはどこにも売らないってばー! ぼっちゃん:ふふふ…この二人、案外仲良くなれるかもなぁ カラス:ぼっちゃんの瞳は必ずや私がぴったりなものを探してきますから任せて下さい! 山樹:いででで!絶対売ったりしないから!約束するから!!そのデカイ嘴でつっつくなぁ! 在原:(ナレーション) 在原:めでたしめでたし! 在原:…ん?いや、俺まだ森ん中で迷子なんですけどぉぉぉぉ?! 0:  0:  0:  0:  0:了

ぼっちゃん:カラス、今日もゴミ捨て場に行くの? カラス:ええ、行きますよ。 ぼっちゃん:クチバシをピカピカに磨いてから行くんでしょ?タオルを持っててあげるからこっちで磨いたら? カラス:はい、ありがとうございます。 ぼっちゃん:♪カラス~なぜ鳴くの~ カラス:なぜと言われましても。私の勝手です。 ぼっちゃん:歌につっこまないでよ! カラス:おかしな歌を歌うからです。 ぼっちゃん:おかしくないよー。「可愛い子ガラスが待ってるから早く山に帰ろ~」っていうほのぼのした歌じゃないか。 カラス:カラスにだって事情はあります!どのカラスもみんな所帯を持つと思ったら大間違いで…! ぼっちゃん:ストップストップ!そんな真面目な回答は求めてなかったよぉ。 カラス:私はそんな所帯じみたことよりも、ピカピカしている物をとにかくもう、まじですんごい集めつくしたいんですっ! ぼっちゃん:執念を感じるっ!カラスは本当に綺麗なものが好きなんだね。 カラス:はい! ぼっちゃん:あのさ、カラス。…ボクを拾ってくれてほんとにありがとね。 カラス:急にどうしたんです?捨てる阿呆(あほう)あれば拾うカラスあり、ですよ! ぼっちゃん:なにそれ、ふふふ。 カラス:すぐに物を捨ててしまう人間は愚か者です。ぼっちゃんだって片目が取れてしまっただけなのに…。 ぼっちゃん:しょうがないよ。ショウタくんが飼い始めたワンちゃんがボクで遊んじゃってさ。片方の目を食べられちゃったんだ。 カラス:ショウタくんとやらが、まだ恋しいですか? ぼっちゃん:そんなんじゃないよ!ボクは今までだって持ち主を点々としてきたし…。ショウタくんもぬいぐるみで遊ぶような歳じゃなくなって…。オトナになったんだよ、嬉しいことだよ! カラス:でも寂しいでしょう…? ぼっちゃん:でもさ!捨てられたからこそゴミ捨て場でカラスに会えたんだ!残った片目だけでもピカピカしててよかったぁ。じゃなかったらカラスに気付いてもらえなかったもんね。えへへ。 カラス:確かに最初に目に留まったのはぼっちゃんの青くて美しい瞳でしたが、一緒に暮らすようになって、私は 「青い瞳のテディベア」ではなく、「ぼっちゃん」が好きになったんですよ。 ぼっちゃん:ふふ、なんだかくすぐったいなぁ。ありがとう。カラスがいてくれるから今はもう寂しくないよ! カラス:それならよかったです。…さて、そうは言ってもぼっちゃんも片目のままでは不便でしょう。左目は青いガラス玉ですから、それに合う右目を宝の山から探してきます。 ぼっちゃん:宝の山ってゴミ置き場のこと? カラス:えぇ。私は「ゴミ」が大好きですから。 ぼっちゃん:ふふふ。じゃあ気をつけて行ってきてね!青いビー玉とかがあればいいなぁ。 カラス:探してみます。では行ってきます。 0:  0:  0:(間) 0:  0:  カラス:何箇所かゴミ捨て場を回ってみたけれどビー玉はありませんでしたね。ここはどうかな? カラス:イテっ!!なんだ?石でも投げつけられたか? カラス:おや?これはなんと綺麗な青い石!ぼっちゃんの瞳にどうだろう?ビー玉より少し大きいけれどいいかもしれません!捨ててあるということはこれも「ゴミ」なんでしょうし! カラス:こんなに綺麗な物を捨てるなんて、人間は史上最強のアホですね。ぼっちゃん、喜んでくれるといいなぁ。 0:  0:  0:(間) 0:  0:  ニュースキャスター:(ぼっちゃん役の方が兼役して下さい) ニュースキャスター:本日未明、「怪盗・鴉(からす)」の予告状通り、博物館より、幻のブルーサファイア「人魚の泪(なみだ)」 が盗まれる事件が発生しました。警察が厳重な警備を行う中で起こった事件であり、現代に颯爽(さっそう)と現れた怪盗の正体は、未だ検討もついていない模様です。次のニュースです… 0:  0:  0:(間) 0:  0:[時系列…カラスがゴミ捨て場へ出発した頃] 0:  0:  在原:(棒読みで) 在原:ナンテコッター!「怪盗・鴉(からす)」の予告状通りに、まんまと「人魚の泪(なみだ)」と呼ばれる幻のブルーサファイアが盗まれてしまったぞー! 山樹:在原(ありはら)先輩!わざとらしい状況説明ありがとうございますっ!こっちですっ! 在原:状況説明とかメタい事を言うな!山樹(やまき)?!おまえ口から血が出ているぞ!まさか怪盗・鴉にやられたのか?! 山樹:やだなぁ先輩、ケチャですよ!ケチャップ!怪盗・鴉が来るまで暇だったのでホットドック食ってました! 在原:は? 山樹:いやぁ警備って言っても俺、博物館の外の、目立たない裏の道が持ち場じゃないですかぁ。正直ちょー暇だったんすよ! 在原:はぁ? 山樹:そしたらちょうどホットドックの移動販売が通ったんで、買って食ってたんですよねー。そしたら急に奴がバッて現れて!「嘘だろ?!」ってなって慌てて追ったんですけど、食べ過ぎたせいでわき腹痛くなっちゃってぇ…。俺ってば!警官の自覚が足りないぞっ!めっ☆ 在原:キモイ!ウザイ!可愛くない!で、ヤツはどっちに逃げた?! 山樹:埠頭(ふとう)の方です!「人魚の泪」 を持って海から逃亡しようだなんて…ちくしょー!なんてオシャレな奴なんだッ! 在原:上手いこと言ったつもりかこの阿呆! 山樹:でも本当についさっきのことなので追いつくかもしれません!ですが…!くっ…はぁはぁ…俺のわき腹はもうダメです!先輩、後は頼みました、よ…ガクッ! 在原:ただの食いすぎだろこの役立たずがっ!クソが!…クソがっ! 山樹:なんで二回言ったんすか?ほら先輩、早く追いかけないと逃げられちゃいますよー?また女子高生に「警察ってまじ無能~」「まじありえないんだけど~」「怪盗とかまじかっこいい~」とか言われちゃいますよ! 在原:無能はお前だ!俺は先にいくからお前も早く来いよ!取り逃がしたらお前のせいだからな!バーカバーカッ! 0:(在原走り去る) 山樹:フッフッフ、先輩すみません…。まさか俺が「怪盗・鴉」だなんて夢にも思ってないんだろうなぁ。ああ…それにしてもなんて美しいブルーサファイア!こんなに小さいのに時価数十億はくだらないなんて…あはは! 山樹:でもさすがに潮時かなぁ。この宝石も日本では売りさばけないし…。在原先輩との刑事ごっこの日々はけっこう気に入ってたんだけど、そろそろ海外に高飛びする時期か… 在原:山樹(やまき)ッ! 山樹:うわぁぁぁ!(びっくりして宝石を投げる) 山樹:ななななんですか先輩!怪盗・鴉を追いかけたんじゃなかったんですか!? 在原:山樹!怪盗・鴉を見たんだろう?!特徴はどんなだった?! 山樹え?!えーっと…黒づくめでした! 在原:よし、黒づくめだな!お前も腹が治ったなら早く来い!クソがっ! 山樹:あ…イダダダ!まだダメです!激痛です!ホットドック八個は食いすぎました!サーセン!! 在原:そんなに食ったの?!お前職務をなんだと思ってんの?! 山樹:先輩!説教は後で聞きますから!逃げちゃいますよ!怪盗・鴉! 在原:そうだった!絶対に逃がさんぞ!うぉぉぉぉ! 0:(在原走り去る) 山樹:はぁ、心臓に悪い…正体バレたかと思ったぁ…。びっくりして「人魚の泪」をゴミ捨て場の方にブン投げちゃったよ…。 カラス:…ぼっちゃん、この綺麗な石、喜んでくれるといいなぁ。 山樹:あれ?どこ行った?うわっカラスだ!邪魔だ、どっか行け!シッシッ! カラス:はいはい、どうせカラスは邪魔ものですよぉ… 山樹:でけぇカラスだなぁ。人間様の出したゴミ食べてあんなにデカく育つなんてほんといいよなぁ。こっちは汗水垂らして怪盗と刑事の両立してるってのにさぁ…。嘴(くちばし)もデカくてピカピカで鋭くて…ん?なんか青くて光るものを咥えてる…?まさかあれは!「人魚の泪」?! カラス:さぁ帰りますか。ぼっちゃんが待っていますし… 山樹:嘘だろおい!待てコラぁ!怪盗・鴉がリアルのカラスにお宝を盗まれるなんてシャレにならないだろぉぉぉ!それは俺のだ!返せぇ! カラス:(空を飛びながら) カラス:あの人間、まだなにか叫んでますね。ゴミ捨て場から避けてあげたのにまだ何か不満なんでしょうか?そんなに邪険(じゃけん)にしなくてもいいのに…。早く帰ろう…。 0:  0:  0:(間) 0:  在原:はぁはぁ…しまった…。自分が方向音痴だということを失念(しつねん)していた!!埠頭(ふとう)はどっちだ?!海どころか何故か森に迷い込んでしまったが…。ん?あそこの木の上に小屋みたいなものが出来ているな。懐かしいなぁ、ガキのころは木の上の秘密基地に憧れたもんだぁ。うふふ。 カラスふぅ…到着っと…。ただいま帰りました~! 在原:カラスが木の家に入っていった?ねぐらにしているのか?…ん?窓辺にはぬいぐるみのようなものが見えるなぁ。 ぼっちゃん:おかえりカラス!どうだった? カラス:イイ物を見つけましたよ!見て驚かないでください?ジャーン! ぼっちゃん:わっ!なにこれ!すごく綺麗! カラス:博物館の近くのゴミ捨て場にあったんです。完全な丸ではなくて、滴(しずく)のような形をしていますが、ぼっちゃんの瞳に合うのではないかと…! ぼっちゃん:こんな綺麗なもの見たことないよ!わぁ!いいのかな? カラス:いいんですよ。捨ててあったのですから。試しにつけてみますか? ぼっちゃん:うん! カラス:落ちないように糸で固定しますからね。ちょっとチクッとしますよ? ぼっちゃん:大丈夫だよ。ボクはぬいぐるみなんだから痛みは感じないよ。 カラス:物理的な痛みは感じなくてもぼっちゃんには心が在りますから。気持ちの問題ですよ。 ぼっちゃん:カラスは本当に優しいね。 カラス:ほら、動かないで? 在原:んん?さっきのカラスがぬいぐるみをつっつき回している?ここからじゃ良く見えんが…なにかキラキラしたものを咥えているように見えるな…。 在原:お!この木、はしごがついてるじゃないか!本部には埠頭の方に怪盗・鴉が向かったという情報は伝えたし、気になるからちょっと登って様子を見てから俺も向かおう!どうせ海がどっちかわからんしな!多分右の方だろ!困ったら右に行くに限る!なんとなく! カラス:よし!つきましたよ!私のピカピカの嘴に自分の姿を映してみて下さい? ぼっちゃん:わぁすごい!両目が揃ったのは久しぶりだぁ!嬉しいなぁ! カラス:こうやってつけてみると、この石の形、滴(しずく)というか涙のようにも見えますね。 ぼっちゃん:それじゃあ、これは嬉し涙だね! カラス:えぇ、そうですね。とてもお似合いです。 ぼっちゃん:ふふ、ありがとうカラス! 在原:(こっそり覗きながら/心の声) 在原:なんてことだ!!ぬいぐるみの目にくくり付けられているのは、間違いなく「人魚の泪」!一体どういうことなんだ?!まさか…!「怪盗・鴉」というのは通り名ではなく、ガチの鳥類のカラスだったってことなのか?!山樹が言っていた「黒づくめ」という特徴にも合致する!とにかく鳥だろうがなんだろうが「人魚の泪」を取り戻さなければ! 在原:うっ、動くな!怪盗・鴉め! ぼっちゃん:ふぇ?!人間がどうしてここに?! 在原:もう逃げられんぞ!「人魚の泪」は返してもらう! カラス:ハッ!…まさかこの綺麗な石を狙っているのか!? ぼっちゃん:カラス… カラス:大丈夫です!私が守りますから! 在原:観念して手をあげろ!…ん?羽を上げろ!…でいいのか? カラス:ここから出て行け! 在原:ぐっ…そんなデカイ声でカァカァ行っても俺は引き下がらんぞ!この泥棒鴉め!そのぬいぐるみを渡せ! ぼっちゃん:カラス…恐いよぉ カラス:人間はぼっちゃんを捨てたくせに!ようやく両目の揃ったぼっちゃんからまた幸せを奪う気か! 在原:嘴が黒光りしているし、めちゃくちゃ鋭い…あんなので突かれたら怪我ではすまないかもしれない!もはやあれは凶器だ!こうなったら発砲もやむを得ない!無傷で逮捕してしっかり裁判にかけたかったが! 在原:…ん?リアルカラスでも人権はあるんだったかな?いや、鳥だから鳥権(とりけん)か?というかそもそも供述は出来るのか?!答えろ!怪盗・鴉! カラス:くっ…!人間を傷つけるのは信条に反しますが、ぼっちゃんを守るためです…攻撃しなくては!狙いやすい急所は…目玉! ぼっちゃん:カラスやめて!人間を傷つけちゃダメだよ!この石なら渡すから! カラス:ぼっちゃん… 山樹:センパーイ!どこですかー?在原(ありはら)せんぱーい!アホの在原ぁぁ? 在原:あの声は、山樹?!…おーい!上だ!木の家にいる! 山樹:は?上?…あ!あんなところに木の家が!なに遊んでるんすかー? 在原:バカヤロウ!ここに怪盗・鴉がいるんだ!お前も手伝え!早く登って来い!クソが! 山樹:は?!怪盗・鴉が?!鴉は俺ですけど……じゃなくて!わかりましたー!今から登りますー! 山樹:(心の声) 山樹:どういうことだ?こっそり先輩にしかけておいたGPSを頼りにここまで来てみたけど、怪盗・鴉がこんなところにいるわけが…!てゆーか俺なんですけど?!怪盗・鴉は俺なんですけどぉぉぉ?! ぼっちゃん:もう一人来るみたい…どうしようカラス… カラス:チッ…!ん?あの男は…さっきゴミ捨て場でギャーギャー騒いでいた奴では…? 山樹:よっと…うわぁまじで木の家だぁ。先輩何やってるんですか…って、カラスゥ?! 在原:そっちじゃない!クマのぬいぐるみの右目をよく見てみろ! 山樹:なっ!あれはまさか「人魚の泪」?!ということはあのカラスさっきの…! 在原:さっきの? 山樹:え?!あ、いや、そういやさっき博物館の近くで、ちょうど同じくらいの大きさの、嘴がピッカピカのカラスを見かけたなぁ、なんて…。 在原:なにぃ?やはりコイツが怪盗・鴉なのか!?でもお前、博物館から逃げていく怪盗・鴉の特徴が「黒づくめ」だと言っていたが、なぜその時点で、人間ではなく鳥類のカラスだと言わなかった! 山樹:はぁ?怪盗・鴉がリアルカラスなわけが……あ、でも待てよ…? 山樹:(心の声) 山樹:怪盗・鴉がそこにいるリアルカラスだったってことになれば、「なーんだカラスが犯人か~!頭のいいカラスも居たもんだな~!あはは!捜査は止めだ!あはは!飲みに行くぞフゥ~!」ってことになるのでは?! 在原:どうした?山樹。 山樹:ああ!そうでした!埠頭(ふとう)の方へ行ったのはそこのカラスで間違いありません!! 在原:やはりそうか…! 山樹:(心の声) 山樹:「やはりそうか」って、そんなわけねーだろ! 在原:でも待てよ?怪盗・鴉からは予告状が届いているんだぞ!あれもこのカラスが作ったというのか?! 山樹:か、カラスは頭が良いんですよ!ゴミ捨て場に施してあるカラス避けだってだいたい意味ないでしょう!あとクルミを壊すためにわざと道路に置いて車に轢(ひ)かせたりするって「ビックリ動物100連発!」で観た気がします!だからきっと人間がパソコンを打つのを見て覚えたんですよ! 在原:そんなに頭がいいカラスがいるとは!なんてこったぁ!確かに、さっきこのカラスが糸を使ってそこのぬいぐるみに「人魚の泪」を括(くく)りつけるところを見た!どおりで頭がいいわけだ! 山樹:(心の声) 山樹:え?あのカラスがぬいぐるみに目をつけてあげてたの?優しくね?…てゆーか、カラスにばかりに気を取られてたけど、あのテディベア、どこかで…? 在原:だったら下手に近づくのは余計に危険だな。生け捕りにしたかったが、やはり撃つしか…! 山樹:あああああああああ! 在原:なんだ?!どうした急にデカイ声を出して! 山樹:あのテディベア…!あれはまさか…!! ぼっちゃん:何だろうあの人、めっちゃボクのこと見てくる…きもちわるっ! カラス:ぼっちゃん、あの男はゴミ捨て場でも何かギャーギャー騒いでいたし、ヘンタイかもしれません!気をつけて! 山樹:先輩!ここは俺に任せて、先輩は応援を呼んで来てください! 在原:なんだと?!だが山樹…!相手はパソコンで予告状を作るほどの天才カラスだぞ! 山樹:ヤツはあのテディベアを守っているようです!きっとヤツも大人二人に囲まれては警戒心を解けないと思うんですよ。俺がなんとか説得してみせます! 在原:説得ってお前…!カラス語が話せるのか?! 山樹:はぁ?そんなわけ…あ、いや、えーと…そうだ!昔、通信教育で「カラス語検定2級」を取ったことがあったようなないような… 在原:お前…!そんな特技があったなんて!すごいじゃないか!でかしたぞ!ヨーシヨシヨシ! 山樹:(心の声) 山樹:なんか信じたー!「カラス語検定」ってなんだよー! 在原:で、俺は応援を呼んで来ればいいんだな!わかった!あと、山樹…! 山樹:はい? 在原:死ぬなよ?(キリッ) 山樹:はよ行け!…じゃなくて、わかりました!必ず生きて帰ります! カラス:一人どっか行きましたね…なんだったんだ、くそウザかった… 山樹:邪魔者がいなくなったところで、腹を割って話そうじゃないか。カラス君。 カラス:くっ!ヘンタイの方が残るとは…! 山樹:申し訳ないが、俺はカラス語が話せない!だが、そのクマちゃんのことなら知っているぞ! ぼっちゃん:なんかボクのことすごいカッコつけて指差してくるぅ…きもちわるいっ! 山樹:薄汚れていてすぐには気がつかなかったが、そのクマちゃんは一九三〇年代にドイツで作られ、世界でたったの数十体しか存在しないとされる超貴重なテディベアだ!ブルーの瞳と足の裏に特殊な刻印があるのがその証拠だ! カラス:なにか力説しているが、私は人間の言葉が全然わからない!どうしよう…なんかめんどくさい! ぼっちゃん:カラス!ボクはずっと人間と過ごしてきたし、だいたいわかるから通訳するね! カラス:おー!さすがぼっちゃん! 山樹:実は俺は、そのクマちゃんを盗もうとしたことが過去にある!日本で唯一この貴重なテディベアを所有している 山樹:鳳凰院薔薇麒麟櫻瑪瑙燦燦家(ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサンけ)に盗みに入ろうとしたんだ!セキュリティが「NASAか!」ってくらい厳しかったからやめたけどな!! ぼっちゃん:今、ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサン家って言った…?それってショウタくんの名字だ! カラス:え?ショウタくんって、「ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサン ショウタ」って名前だったんですか?!長っ! 山樹:鳳凰院薔薇麒麟櫻瑪瑙燦燦家(ホウオウインバラキリンサクラメノウサンサンけ) 程の大財閥が所持していたはずのテディベアが、何故今こんな木の家にあるのかはわからないが…そんなことはどうでもいい!俺はテディベアが!クマちゃんが!大好きなんだぁ! ぼっちゃん:この人やっぱりヘンタイだよカラスぅ!恐いよぉ! カラス:やはりヘンタイか!!納得!来るなら来いっ!目玉をえぐり出してやります! 山樹:カラス君!俺はお前の味方だ!!俺はテディベア愛好家!そのクマちゃんを直してあげたいだけなんだぁ! ぼっちゃん:カラス、このヘンタイ、ボクたちの味方だって言ってるよ?ボクを直したいだけだって。 カラス:騙されてはいけません!ヘンタイはハァハァ言いながらあの手この手で欲しいものを手に入れようとするものです! ぼっちゃん:なんかカラスの偏見がすごい!何か嫌な思い出でもあるのかなぁ?! 山樹:カラスは頭がいいんだろ?今はこれくらいしかないが!ほら見てみろ!これでも俺がクマちゃん好きではないと疑うのかッ?! カラス:いい歳して財布が「リラックスくま」だと?!キーケースもキーホルダーも「くまもんヌ」や「くまのぷーたろう」だ!ダメ押しでインナーシャツがテディベア柄だとぉぉぉ!認めざるを得ない!ちくしょー!クマちゃん大好きかよぉ! ぼっちゃん:カラス!落ち着いて?!キャラがブレてるよ?! 山樹:嘴を向けるのをやめてくれたんだな…!カラス君、わかってくれたのか?! カラス:大のクマちゃん好きが、ぼっちゃんに酷いことをするはずがありません…。くっ…不本意ですが、信じましょう! ぼっちゃん:え?なに?カラスもクマが好きだったの?ボクを拾ったのは瞳がピカピカしているからじゃなくてクマ好きだったからなの?! カラス:ピカピカは大好きですよっ!でででもその…クマちゃんは例えピカピカしたものがついていなくても、か、可愛いじゃないですか! ぼっちゃん:ヘンタイさんとの意外な共通点が… カラス:ぼっちゃん?!なんですかその白い目は!!私はヘンタイじゃありませんよ?!断じてヘンタイなどでは! 山樹:よし!それじゃあ先輩が応援を呼んでくるからここから逃げよう!俺に作戦がある!協力してくれるか?カラス君! ぼっちゃん:協力してくれたらここから逃げられるってさ! カラス:やむを得ませんね… 山樹:その優しげな顔は「協力を惜しまない!」という意味にとらえていいかな!心強い!でもな、その右目の「人魚の泪」だけは先輩にも見つかってしまった以上、どうしても返さなければならないんだ。 ぼっちゃん:え…! 山樹:このまま逃げる方法がないわけじゃない…でも、カラスが貴重な宝石を盗んでいったとなれば、「都内のカラス一斉駆除計画」なんかが実行される可能性もありえる。それじゃ困るだろ? ぼっちゃん:「くじょ」って…カラスが死んじゃうってこと?!そんなの絶対にダメだよ!カラス…せっかくカラスが見つけてきてくれた石だけど、これは返そう?ボクは片目でも全然平気だから! カラス:…ぼっちゃんがそれでいいのなら… 山樹:(心の声) 山樹:このカラス、ちょいちょいクマちゃんの方を見ているな…。まるでクマちゃんの声に耳を傾けているみたいだ。なんか会話でもしてんのか?まさかな… カラス:では、取りますね…?必ずまた新しい瞳を探してきますから… ぼっちゃん:ぐすん…うん… 山樹:(心の声) 山樹:ああ…カラスがクマちゃんの目を優しく取ってあげている!なんか親子みたいな愛情を感じる!ヤバイ…なんか俺泣きそう…!かあちゃーん! ぼっちゃん:あれ?なんでヘンタイさんまで泣いてるんだろう…気持ち悪い… カラス:この石が原因でこんなことになっているのなら返しましょう。ただし、ぼっちゃんを絶対に安全なところに逃がしてもらいますよ! 山樹:ありがとう、カラス君…!俺は決めたよ!この宝石さえ取り戻ればさっさと高飛びでもしようかと思っていたけれど、君たちを宝石泥棒にするわけにはいかない!ここは天下の大泥棒「怪盗・鴉」とリアルカラスによる共同戦線だ!共にクマちゃんを救おうではないか! カラス:何を言っているかはわかりませんが、気合いは伝わりました!この人は信用していいヘンタイですね! ぼっちゃん:うん、ボクもそう思うよ!ヘンタイバンザイ! 山樹:では作戦を説明する!ゴニョゴニョゴニョ… 0:  0:(間) 0:  在原:クッ…なんてこった…!応援を呼ぼうにも、電波が悪くてその辺をずっとウロウロしていたら迷ってしまった!いや、最初から迷ってはいたのだが!一生この森から抜けられる気がしない!ジーザス! 山樹:すぇーんぷゎーい(先輩)! 在原:ハッ!山樹!おまえ、無事だったのか! 山樹:はぁ、はぁ…怪盗・鴉からなんとか「人魚の泪」を奪い返すことに成功しました! 在原:おお!でかしたぞ、山樹! 山樹:で、でも…怪盗・鴉に逃げられてしまって… カラス:カァァァ! 在原:あっ!あれは怪盗・鴉! 山樹:(棒読みで) 山樹:クソー、怪盗・鴉メ!絶対ニ逃ガサナイゾー! 在原:逃げていくぞ! 山樹:俺がヤツを追いますから、先輩はこの宝石をお願いします! 在原:あぁ!はわわわ…こ、これが時価数十億の宝石か!なんて美しいんだ!目が眩むっ!あぁ/// 山樹:では!また合流しましょう! 在原:ちょっと待て!その小脇に抱えているクマのぬいぐるみも持っていくのか? 山樹:へ?ああ…これですか?いやぁ…これはその、小汚いのできちんとゴミに出しておきます!森の自然を守るのも警察官の勤めですから!…ですよね?!不法投棄!ダメ!ゼッタイ! 在原:おお!お前にもついに警察官としての自覚が出てきたようだな!俺は嬉しいぞ! あの買い食いばっかりしていたクズでアホで頭にお花が咲いてる目クソ鼻クソみたいな山樹がなぁ…グスン。 山樹:やめて下さいよ先輩…テレるじゃないっすか…! 在原:よし!宝石は俺に任せて、お前は怪盗・鴉を追え!お前の刑事魂(けいじだましい)を…いや!デカ魂を見せてみろ! 山樹:はい!行って参ります! 0:  0:(山樹、走り去る) 0:  在原:よし!では俺も森を出るとするか! 在原:ハッ!しまったー!俺迷子だったー!山樹ぃぃぃカムバァァァック! 0:  0:(間) 0:  カラス:とにかくあのヘンタイとの待ち合わせ場所まで急がないと!はぁ…あのヘンタイにぼっちゃんを預けて本当に大丈夫だったのでしょうか…。「ボクを信じて」なんてぼっちゃんに言われたら信じないわけには…! カラス:クッ…もしぼっちゃんに何かあったら目玉をくり抜いて鼻の穴に突っ込んで…えーっと…なんかアレをコウしてソレをナニした挙句、奥歯ガタガタ言わしてやるから覚悟しておけぇい! 0:  0:(間) 0:  山樹:…尾行はないな?よし!先に行ったはずのカラス君はもう来てるかな? カラス:じーーーーーーーっ 山樹:お!電柱にいるな。…ん?心なしか俺めっちゃ睨まれてるような気がするけど…。あ、そうか!クマちゃんもちゃんと持ってきたぞー!安心しろー! ぼっちゃん:カラスー!ボクなら大丈夫だよー! カラス:ぼっちゃん!よかった! 山樹:ここの地下に潰れたバーがあるんだ。そこが俺の隠れ家なんだけど…ほら!扉の脇に猫用の入り口があるだろ?そこからお前も自由に入れる! ぼっちゃん:カラス、猫用の入り口から入ってだって! カラス:むっ…。猫はいないでしょうね?じーーーーーっ 山樹:そんな睨まなくても猫はいないっての!ほら、今はドア開けてやるから一緒に入れ! 0:  0:(扉を開ける) 0:  ぼっちゃん:わぁ!すごい!テディベアが棚にたくさん! カラス:ほう、自称テディベア愛好家は伊達じゃありませんでしたね 山樹:ふぅ…まずはクマちゃんを洗おうか。俺の目に狂いはないと思うけど、本当にあの貴重なテディベアかどうかも確かめないと…。 在原:(ナレーション) 在原:どうも!突如(とつじょ)ナレーションに抜擢された在原(ありはら)です。イイ声で読みます。ゴホン(咳払い)。 在原:カラスがそばで見守る中、山樹は慣れた手つきでテディベアを綺麗に洗った。その後、特徴的な青い瞳や足の裏にある特殊な刻印を調べた結果、間違いなく世界に十数体しかないと言われる貴重なテディベアだと判明したのだった。 カラス:ぼっちゃん!見違えるようです!こんなに綺麗になって! ぼっちゃん:えへへ、フワフワになったよぉ! 在原:(ナレーション) 在原:テディベアは「人魚の泪」ほどではないとしても十分な収穫と言えた。片目が失われているとはいえ、売ればきっと世界中のテディベア愛好家たちがこぞって値段を付けるだろう。 在原:それなのに山樹は迷っていた。テディベアに幸せそうにすり寄るカラスの姿を見て、心を打たれてしまったのだ。だから売らない!テディベアは売らないのだ!絶対にッ! 山樹:いや!ナレーションの圧がすごい!まだ売ろうか売るまいか迷ってるよ!俺は! 在原:(ナレーション) 在原:山樹は強い意思を持って売らないと決めた!今決めた!カラスとクマちゃんには人間には計り知れない絆があると感じたのだ!そんな二人を離れ離れにしてはいけない。ここにはちょうど猫用の入り口も付いていることだし、カラスがクマちゃんに会いたい時にいつでも会いに来ることが出来る。二人の絆を守ってやろうと山樹は心に誓った!神様や仏様…あと…ガンジーとか、ドラ○もんとか、なんかそこらへんに誓った! 山樹:うるせーなわかったよ!売らない!売りませんンン!これでいいですかぁぁぁ?! 在原:(ナレーション) 在原:それでこそ男の中の男!山樹!イケメン、というわけではないが…むしろどっちかと言えば顔は冴えないが!でも、ほら…あれだ!心がイケメン!それだ!人間は顔じゃない!顔じゃあないんだ!だから元気出せ?な? 山樹:いいよ無理やり褒めてくれなくてもぉぉぉ! カラス:なんか独り言いってますね… ぼっちゃん:ヘンタイさんだからね… 山樹:はぁ…なんにせよ、片目じゃ可哀相だしクマちゃんの左目どうしようかなぁ。まぁ同じものは手に入らないから似てるものを探すしかないんだけど…。 カラス:ぼっちゃんの瞳は私が探してきますっ! 山樹:いててて!つっつくなよぉ。売らない!クマちゃんはどこにも売らないってばー! ぼっちゃん:ふふふ…この二人、案外仲良くなれるかもなぁ カラス:ぼっちゃんの瞳は必ずや私がぴったりなものを探してきますから任せて下さい! 山樹:いででで!絶対売ったりしないから!約束するから!!そのデカイ嘴でつっつくなぁ! 在原:(ナレーション) 在原:めでたしめでたし! 在原:…ん?いや、俺まだ森ん中で迷子なんですけどぉぉぉぉ?! 0:  0:  0:  0:  0:了