台本概要
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タイトル | 私の天使。(合本版) |
---|---|
作者名 | なぎ@泣き虫保護者 (@fuyu_number10) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 60 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
不慮の交通事故で妹の日和(ひより)を喪った姉、小春は、艱難辛苦の末、彼女のクローンを造りだすことに成功した。 しかし、目覚めた妹の記憶は・・・。 姉妹の心の移ろいを描いてみました。 ※台本をご利用になる際は、Twitterにてぜひお報せくださいませ。 お伺いできる限りお邪魔させていただければと存じます。 特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。 359 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
小春 | 女 | 103 | 日和の姉。年齢不詳。喪った日和をクローン技術でよみがえらせた人。 |
日和 | 女 | 104 | 小春の妹。14歳。交通事故で命を落としてしまうが・・・。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
小春:(N)ふと、思い出す。
小春:(N)カプセルトイだ。
小春:(N)あの日も、妹と、「あれカワイイ、これもいい!」などと
小春:(N)はしゃぎながら、厳選した1台のマシンから、ぽんっ、と出てくる
小春:(N)カプセルの中身を、開けるときのあの、ワクワク。
小春:
小春:(N)そんなことを思い出しかけ、はっ、と我に返る。
小春:
小春:違う。
小春:
小春:(N)今は、今目の前にあるカプセルは、違うのだ。
小春:
小春:(N)あの日の、その帰り道に喪(うしな)った、
小春:(N)あの子が、妹が、この中にいる・・・。
小春:(N)そして、カプセルのドアが、ゆっくりと開く。
小春:(N)中を満たし、彼女を優しく包んだ培養液が、
小春:(N)ざざざ、と流れ出しては排水溝に流れ出ていく。
小春:(N)カプセルの水位が下がると、彼女はくたり、と
小春:(N)カプセルの下部で、身体を横たえた。
小春:
小春:(N)フラッシュバック。
小春:(N)車道に飛び出した子犬。
小春:(N)真っ先に「あぶないよ!」と追いかけた彼女。
小春:(N)タイミングを計っていたかのように、
小春:(N)トラック。止まれない。間に合わない。
小春:(N)軽々と、空を舞う、彼女。
小春:(N)ぐったりと、その身を横たえる彼女。
小春:(N)大量の、赤い、紅い、血の色。
小春:(N)赤色灯の、赤。
小春:(N)あれから、どれだけ時間が・・・?
小春:
小春:っ!!!
小春:
小春:(N)また、我に返る。
小春:(N)目の前は、培養液の透き通ったブルー。
小春:(N)その、傷一つない、綺麗で、無垢な身を横たえた彼女に、
小春:(N)ふらふらと、歩み寄る。
小春:
小春:(N)彼女の、その顔が、
小春:(N)うっすらとピンク色に染まって。
小春:(N)ほんの少し、その眼が開く。
小春:
小春:・・・おはよう。
小春:
小春:(N)ああ、妹だ。
小春:(N)あの日から、毎晩のように夢に見た、
小春:(N)私の大切な、妹・・・。
日和:・・・?
小春:・・・おはよう、日和(ひより)、気分はどう?
日和:お姉さん、・・・だ・・・れ・・・・・・?
小春:(N)そう来ると、思った。
小春:(N)頭ではわかっていた。
小春:(N)今回も、完全ではないだろう、と。
小春:
小春:(N)なのに。
小春:(N)それなのに。
小春:(N)くやしさ、切なさが、あふれて、涙が、止まらない。
小春:(N)それでも、言い聞かせるように、震える唇から、言葉を、紡ぎだす。
小春:
小春:あたしは、小春。霜月 小春(しもつき こはる)。
小春:あんたは、・・・あんたは、っ、・・・日和、っていうんだよ?
日和:私は・・・ひ・・・よ、り・・・?
小春:そう、そうだ・・・あんたは、日和、だよ・・・
小春:
小春:(N)そう、私の大好きな、天使のように優しい、妹。
小春:(N)あんたは、これから、どんな風に、生きるんだろうね?
小春:(N)やっと、2度目の人生だよ・・・。
小春:(N)おめでとう、日和。
0:
0:(間)これは、数年前の出来事。
0:
日和:(N)今日は、土曜日。
日和:(N)お天気、快晴!
日和:(N)お買い物びより!
日和:
日和:(N)お姉ちゃん、起きてるかな?
日和:
日和:おはよ、お姉ちゃん!
日和:
日和:(N)起きてた!・・・起きてるけど・・・
小春:んー?・・・日和、おはよ。
日和:(N)はぁあ・・・「いつもの」お姉ちゃんだ・・・
日和:(N)髪はボサボサ、ぴょんぴょん跳ねてて、たぶん起きた時のまんまだね。
日和:(N)きちんとしてたら、ホントに美人さんなのにぃ・・・。
日和:
日和:お姉ちゃん・・・また髪の毛すごいことになってるよ・・・?
日和:
日和:(N)しょうがないなー、ここは日和のがんばりどころ!
日和:(N)お姉ちゃんに人差し指を「びしーっ」と向けて、
日和:
日和:お姉ちゃん!今日はお姉ちゃんと、お出かけします!
小春:お出かけ?あたしと?どこに?
日和:いいから!早く支度して!ほーらー!!
小春:わかった、わかったから・・・。
日和:(N)お姉ちゃんを連れてきたのは、駅近のショッピングモール。
日和:(N)その中にある、お洋服屋さん!
小春:なー、日和~?
日和:んー、やっぱりこっちの方がいいかなー・・・?
日和:
日和:(N)悩む。
日和:(N)お姉ちゃん、普段お家でヨレヨレのTシャツとか着てるけど、
日和:(N)こういう服のほうが絶対いいと思うんだよね・・・よし!
日和:
日和:お姉ちゃん、これ!これ着てみて?
小春:あたし、着せ替え人形じゃないぞー・・・?
日和:いいからー!ほら!
日和:
日和:(N)うふふ、絶対似合うんだから・・・!
小春:おーい、日和ー、どうだぁ~?
日和:うんっ、やっぱりカワイイ!ばっちりだよ!
小春:カワイイ?いや、あたしはそういうキャラじゃないだろ・・・
日和:そんなことなーい!かわいいんだもん!
日和:
日和:(N)ネイビーのシンプルなワンピースに、アイボリーのカーディガン。
日和:(N)レジに持って行って、お会計。うん、大満足!
小春:日和、ホントにいいのか、払わなくって・・・。
日和:だいじょーぶ!日和にお任せだよ!
日和:
日和:(N)だって、この服を買うのは・・・。
小春:次の水曜日?
日和:お姉ちゃん、やっぱり忘れてる・・・お誕生日でしょ?
小春:んああ、そうだな・・・って、日和、あんた
日和:ちょっと早いけど、お誕生日プレゼント、です!
小春:あんたって子は・・・はぁ。ホント、ありがとね。
日和:(N)うふふ、お姉ちゃん照れてる。かわいいなー。
日和:(N)わ、髪を「わしゃわしゃ」しちゃやだよ・・・。
日和:(N)撫でてくれるのはうれしいけど・・・。
日和:
日和:(N)普段とってもだらしなくって、
日和:(N)でも、キめるときはとっても、かっこよくって。
日和:
日和:(N)そして、私にはとびっきり優しい・・・お姉ちゃん。
日和:
日和:(N)それから、お昼ご飯を食べて、モールをぶらぶら。
日和:(N)おもちゃ屋さんの片隅に・・・
日和:
日和:わぁ・・・ガチャガチャがたくさん・・・
日和:お姉ちゃん、あれカワイイ!あー!これもいい!
小春:ちょっと、はしゃぎすぎだよ、日和・・・。
日和:ねぇねぇお姉ちゃん、このペンギン、今朝のお姉ちゃんみたい!
小春:イワトビペンギンじゃないか・・・あたしこんなだったかぁ・・・?
日和:髪の毛ぴょんぴょんしてたの、すごく似てる!あはは!
小春:あんたねー・・・このー!
日和:(N)うぅ・・・お姉ちゃんに「ほっぺたむにむにの刑」にされちゃった。
日和:(N)でも。お姉ちゃんの手、すごく温かい・・・。
小春:で、日和、このガチャガチャ、やるの?
日和:え?
小春:ちょっとは今日のお礼くらい、させろ。
日和:・・・うんっ!
日和:
日和:(N)お姉ちゃんに小銭をもらって、ガチャガチャを、回す。
日和:(N)がちがちっ、っていう音がして、ころん、ってカプセルが出てきた。
日和:(N)どんなペンギンが出てくるかな・・・?
日和:
日和:あ・・・お姉ちゃんが出てきた。
小春:なんでよ。イワトビペンギンだよ。
日和:この子は完全に、お姉ちゃんです!
日和:
日和:(N)またほっぺたむにむにされた・・・うぅ。
日和:(N)でも、この子は日和のお気に入り。お姉ちゃんには内緒だけど。
日和:(N)日和の、宝物。今日の大切な思い出。
日和:
日和:(N)帰り道。今日は楽しかったなーぁ。
日和:(N)お姉ちゃん、あの服いつ着てくれるかな?
日和:(N)どんな時に、着てくれるのかな?早く見たいなぁ。
日和:
日和:(N)あ、わんこ。チワワかな?
日和:(N)え?そっちは!あぶないよ!捕まえないと!
日和:
日和:(N)突然、どん、って大きな音と、衝撃・・・
日和:(N)なんで?急に、身体が重くなってく・・・
日和:(N)お姉ちゃんの、大きな声が、だんだん遠く聞こえて・・・
日和:(N)お姉ちゃん、何?どうしたの?わんこは?
日和:(N)聞こえ、ない、よ?
日和:(N)やだ、急に、眠く・・・
日和:(N)おねえ、ちゃ・・・。
小春:(N)その日、この事故のニュースは。
小春:(N)たった3分の、短いものだった。
0:
0:(間)日和と再会してから、しばらくして。
0:
小春:(N)黙考する。
小春:
小春:(N)何が、おかしかったのか。
小春:(N)何を、間違えたのか。
小春:(N)どうして、こうなった・・・?
小春:
小春:(N)あるいは。
小春:
小春:(N)こんな形で妹を甦(よみがえ)らせた、アタシへの、罰か。
小春:
小春:(N)あの日、妹を喪ったアタシの景色は、
小春:(N)急に色を失ったようになった。
小春:
小春:(N)みっともなく神様に縋(すが)ってでも、生き返ってほしかった。
小春:(N)あの笑顔、あの愛らしい声を、ずっと聴きたい。
小春:(N)スマホの中の動画、それだけじゃ、ダメ、なんだ。
小春:
小春:(N)そして何より、日和に、ちゃんと、
小春:(N)一度失った人生を、過ごしてほしい。
小春:(N)優しい子なんだ。幸せに、なってほしい。
小春:
小春:(N)あの頃。特に将来の夢、とか、目標、なんてものがなかったアタシ。
小春:(N)そこに突然現れた、目標。
小春:(N)そうだ、日和のために、全てを捧げるんだ・・・。
小春:(N)その想いだけが、私を衝(つ)き動かした。
小春:
小春:(N)願いは、成就したと・・・思ったんだけどな。
日和:せんせ?
小春:(N)呼ばれ慣れたくない、よそよそしい、言い方。
小春:(N)それでも、目線を合わせて、ゆっくりと、返す。
小春:
小春:「先生」、じゃないよ。『お姉ちゃん』だよ。
小春:アンタはずっと、アタシをそう呼んでたんだよ。
小春:
小春:(N)ふわっとした髪に、触れる。
小春:(N)くすぐったそうに、目を細める妹。
小春:(N)しばし後(のち)。「んー」と、人差し指を頬に当て、うなったと思うと・・・。
日和:お姉ちゃん先生・・・?
小春:(N)しぐさも、声も、日和、なんだよなぁ・・・。
小春:(N)とりあえず、今はこれでいいか・・・。
小春:(N)時間は、ある。
小春:(N)この日和を元に戻すのが、アタシのすべきこと。
小春:(N)今は、目の前の日和に応えてあげたい。
小春:
小春:それで、どした、日和。お腹空いた?
日和:えっと、・・・ですね・・・はい、空きました。
小春:ん、そっか。じゃあ何か買いに行こう。
小春:
小春:(N)研究所に併設している、病院。
小春:(N)いくつかの検査を受けた日和を連れて、購買に向かう。
小春:(N)大したものは置いていないが、腹の足しになるものくらい、あるだろ。
日和:えっと・・・お姉ちゃん先生、これが、食べたい・・・です・・・。
小春:(N)日和のチョイスは、カスタードとホイップクリームのたっぷり入った菓子パン。
小春:
小春:え・・・それをお昼にするの・・・?
日和:ダメ・・・ですか・・・?
小春:(N)上目遣いで聞いてくる、日和。
小春:(N)あ、いかん・・・。
日和:お姉ちゃん先生・・・?
小春:(N)思わず、涙声で返してしまう。
小春:
小春:日和、あんた・・・。
日和:やっぱり、ダメ、ですよね・・・棚に戻してきま・・・?
小春:(N)気づいたら、アタシは日和を抱きしめていた。
日和:えと・・・お姉ちゃん先生?
小春:いいよ、そのパン、買おう。
日和:あ、・・・はいっ!
小春:(N)どうして日和が、このパンを?
小春:(N)この子は確かに甘いもの好きだったけど・・・キオクは、どうなってる?
小春:(N)あたしは、しばらくこの子に振り回されるのかなぁ・・・。
小春:(N)そんなことをしている場合じゃないけど。
小春:(N)このお昼ご飯の時間は、少しだけ、幸せな時間になりそうだ・・・。
0:
0:(間)小春と日和、お昼ご飯を食べる(視点が日和に)。
0:
日和:(N)私は、ひより。
日和:
日和:(N)せんせ・・・お姉ちゃん先生がそう言ってました。
日和:(N)私はお姉ちゃん先生の、「妹」、なんだって。
日和:(N)でも、私はお姉ちゃん先生のこと、ほとんど、知りません。
日和:(N)だから、これはきっと、お姉ちゃん先生を知るチャンス。
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生と二人で、病院の屋上に来ました。
日和:(N)屋上は庭園になっていて、お昼の日差しを浴びる緑が、とってもきれい。
日和:(N)お姉ちゃん先生は時々、ここにきてお昼を食べるそうです。
日和:(N)今日は、私を連れてきてくれました。
日和:
日和:(N)私は、カスタードとホイップクリームのパン。
日和:(N)お姉ちゃん先生は、指くらいの大きさの、栄養食品。
日和:(N)お仕事大変そうなのに、もっと食べなくっていいのかな・・・?
日和:
日和:あの、・・・お姉ちゃん先生?
小春:どした、日和?
日和:えっと、お昼ご飯、それで足りますか?
小春:アタシはいつもこれだよ。それより日和こそ、それだけでいいの?
日和:はい、大丈夫、です。(パンを食べて)・・・甘い・・・おいしい・・・。
小春:(少し笑って)そか。良かったな。
日和:(N)お姉ちゃん先生は、にっこり笑ってくれました。
日和:(N)それがちょっと、くすぐったくて、照れちゃいます。それよりも・・・。
日和:
日和:お姉ちゃん先生、もしよかったら、私・・・お弁当作ります!
小春:え?お弁当?何で?
日和:その、・・・お姉ちゃん先生、このままじゃ倒れちゃうんじゃないかって。
日和:栄養とか、その・・・心配です。
小春:あー、これか?
日和:(N)栄養食品を持ち上げて、苦笑いのお姉ちゃん先生。
日和:(N)ちなみに、他の物を食べてるの、見たことないです。
小春:まぁずっとこればっかり食ってるしなぁ・・・案外美味しいし。
小春:いいんだよ、頭がちゃんと動けば。
日和:(N)私は、すっく、と立ち上がって、お姉ちゃん先生を指さします!
日和:
日和:ダメです、そんなの!ちゃんと食べないと!
小春:えっ、あの・・・ひより、さん・・・?
日和:お姉ちゃん先生に何かあったらどうするんですか!
日和:
日和:(N)あれ・・・?私、こんなに、どうして怒ってるんだろう・・・?
日和:(N)でも、お姉ちゃん先生が食事をちゃんと取らないからで・・・?
日和:(N)あ・・・お姉ちゃん先生、固まっちゃった・・・。
日和:
日和:お姉ちゃん先生・・・あの、私、言いすぎて・・・!
日和:
日和:(N)謝らなきゃ!えっと、えっとー!?
小春:(吹き出して)ぷっ。・・・あはははははは!!!
日和:(N)え?お姉ちゃん先生が笑ってる・・・!?
日和:(N)はぅ・・・恥ずかしい・・・!
日和:
日和:でっでも!お姉ちゃん先生がちゃんとご飯食べてないから、私、心配で!
小春:うん、うん、分かった、分かったから・・・!
日和:(N)お姉ちゃん先生、まだ笑ってる・・・ううう。あれ?
日和:
日和:お姉ちゃん先生、これ、落としました!
日和:
日和:(N)スマホだ・・・ちょっと、年季の入ったのだ・・・。
日和:(N)かわいいペンギンの、ストラップがついてる・・・。
日和:(N)ペンギン・・・ストラップ・・・あれ・・・?
小春:日和、日和?ひーよーりーさーん・・・?
日和:え?あ、ごめんなさい!はい!どうぞ!
小春:ん、さんきゅーね。悪い悪い、ついはしゃいじゃったよ。
日和:いえ、そんな・・・。
小春:お弁当のコト、ごめんね。
小春:せっかく日和が気遣ってくれたのに。
日和:あ、あの・・・!どうしても、お弁当、ダメですか?
小春:ん?
日和:えっと、私、毎日検査してもらってるだけで、
日和:普段、それ以外って何もしてないし・・・。
小春:(真顔になって)・・・そうか・・・検査、かぁ・・・
日和:(N)お姉ちゃん先生、急に真剣な顔になった・・・
日和:(N)でもなんだろ、不思議と、「嫌な感じ」じゃない・・・
日和:(N)なんだかとっても、「先生」な感じで、かっこいい・・・っていうか。
小春:ん、分かった。じゃあ日和、お弁当、よろしくね。
日和:ふぁ!?
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生の不意打ち!?えっ?検査の話じゃないの?
小春:んー?何びっくりしてんの?作ってくれるんでしょ?
日和:はっ、ふぁい(はい、と言いたいところを噛む)!!
日和:
日和:(N)それにしても何で・・・?
日和:(N)お姉ちゃん先生を、怒っちゃった・・・。
日和:(N)それに、あのストラップを見たときに感じた、あの気持ち・・・。
日和:(N)なんだろ、この感じ・・・何か、ココロにぽっかり穴が空いてたことを
日和:(N)思い出した、みたいな・・・?
0:
0:(間)夕方、小春のアパート(小春の視点で)。
0:
小春:(N)病院でお昼を食べた、その晩。
小春:
小春:(N)レポートだの色々な報告書だの、煩雑(はんざつ)な作業を終えたあと、
小春:(N)夕方にアタシは日和を連れて、アパートに帰ってきた。
小春:
小春:(N)途中、スーパーに寄って、色々な食材を買って。
小春:
小春:(N)日和の負担と調理の手間を考えて、鍋物にしたけれど、
小春:(N)久しぶりの「まとも」な食事に、何ともほっこりとしたもんだ。
小春:
小春:(N)そして、その夜。
日和:お姉ちゃん先生・・・?
小春:ん?・・・日和、どうした?
日和:まだ、寝ないんですか?
小春:あー、もうこんな時間なのか。ごめんね、起こしちゃったか。
日和:いえ、大丈夫です。ちょっと、待っててくださいね。
小春:(N)そう言い残して、キッチンで何やら始める日和。
小春:(N)しばらくして、鼻腔(びくう)をくすぐる、甘い匂い。
小春:(N)これは・・・?
日和:お姉ちゃん先生、お待たせしました。
小春:これ、ホットミルク?
日和:はい!寝つきもよくなりますし、栄養もたっぷりです!どうぞ!
小春:・・・ふふっ、ありがとうね。
小春:
小春:(N)本当は、この子の面倒を見なくちゃいけない側、なんだけどなぁ。
小春:(N)さて、もう少しだけ頑張ったら、寝るかなぁ。
日和:・・・あの、お姉ちゃん先生、・・・
小春:(N)何かを言いかけては、止(や)めて、を繰り返す日和。
小春:(N)4回ほど繰り返しただろうか。意を決したように言う。
日和:私の、・・・昔のコト。教えてほしいです。
小春:・・・。
小春:
小春:(N)いつか、聞かれるだろう。
小春:(N)いつか、教えなければならないのだろう。
小春:(N)その「いつか」は。
小春:
小春:日和、あのね・・・
日和:私は。・・・わたしはっ!
小春:(N)日和のキモチが、ココロが。
日和:どんな妹だったの?教えて!?お姉ちゃん先生っ!!
小春:(N)「今」に、呼び込んだ。
小春:
小春:・・・ひより・・・。
小春:
小春:(N)おなかに「おもり」があるように、急に不安な気持ちになる。
小春:(N)日和に、責められるんじゃないか。怒られるんじゃないか。あるいはもっと・・・。
小春:(N)苦しい。逃げ出したい。許されるなら、一人になりたい。
小春:(N)そんなことを一瞬でも思った自分を、叱咤する。
小春:
小春:(N)向き合うんだ。小春。
小春:
小春:・・・少しだけ、時間をもらっていいかな・・・?
小春:
小春:(N)覚悟を決めたアタシは、クローゼットから、「あの」ワンピースとカーディガンを取り出して、
小春:(N)日和の目の前で、着替えた。そして。
小春:
小春:日和、今から話すことはね、全部、私の「わがまま」だ。
小春:
小春:(N)そしてアタシは、全てを、話すことにした。
小春:(N)あの日の出来事を。日和のくれた、この服のコト。
小春:(N)そのお礼に、と回したガチャガチャ。出てきたペンギンのコト。
小春:(N)あの、事故のこと。・・・日和を喪(うしな)った、あの日の、すべて。
小春:(N)そして、長い時間をかけて、今の日和を「造った」こと。
小春:(N)そのすべてを、日和は、黙って、時折瞳を潤ませて、聴いていた。
小春:
小春:
小春:まぁ・・・その、なんだ。言い訳とかする気もないんだ。
小春:
小春:倫理的(りんりてき)に問題あったり、色々あるんだけどね。
小春:
小春:ただ、アタシが勝手に、日和に、ちゃんと・・・
小春:
小春:幸せな人生をあゆ・・・っと・・・んぐ
小春:
小春:
小春:(N)日和は、嬉しそうに目を細めて、そっとアタシに近づくと、
小春:(N)そのか細い腕で、私を「全力ハグ」した。
小春:
小春:日和・・・?
日和:なぁに?「お姉ちゃん」!
小春:(N)ああ、そうだ。
小春:(N)そう、呼んでほしかった。
小春:(N)その甘やかな声で、そう、呼んで欲しかったんだ・・・。
小春:
小春:日和、ごめん、ごめんね・・・辛かったね・・・迷惑、かけたよね・・・。
小春:
小春:(N)そう言うのが、精一杯だった。
小春:(N)アタシの止まらない涙が、日和にも、ぱた、ぱたと、落ちる。
日和:逆です、お姉ちゃん。
日和:あたしは、今、とっても、幸せ、です!
小春:(N)敬語は変わんないのか、なんて、益体(やくたい)もないことを考えるが、
小春:(N)すぐに、胸が温かくなるのに気づいた。
小春:(N)日和の背中をそっと、そっと、撫でながら、ふと時計を見る。
小春:(N)これから先、どれだけの時間があるか、分からない。
小春:(N)それでもアタシは、日和を必ず幸せにする。そう改めて誓った、夜だった。
小春:(N)それからアタシたちは、どちらからともなく手をつないで、深い眠りに落ちた。
0:
0:(間)同じく夕方。(日和の視点に切り替わる。)
0:
日和:(N)病院でお昼を食べた、その晩。
日和:
日和:(N)私はお姉ちゃん先生と一緒に、アパートに来ました。
日和:(N)途中、お夕飯とお弁当の食材を買って。
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生が、「今夜は簡単なものにしよう」って言ってくれました。
日和:(N)でも、せっかくお姉ちゃん先生と一緒のお夕飯なので、
日和:(N)ちょっと贅沢な気分になれる、お鍋にしよう、とお話して、
日和:(N)二人っきりの鍋パーティー!
日和:
日和:お姉ちゃん先生、そんなに急いで食べなくっても・・・
小春:んー・・・?でもさ、ほら、煮えてるよ?
日和:そうじゃなくって・・・熱くないですか?
小春:んーん、んまひ(美味い)!
日和:あはは、お姉ちゃん先生ってば・・・
日和:
日和:(N)栄養食品をもくもくと食べてるお姉ちゃん先生と、全然違います。
日和:(N)とっても美味しそうに、どんどん食べちゃいます・・・。
小春:ほら、日和も食べなって。なくなるよ?
日和:え?あー!お姉ちゃん先生、食べ過ぎです!
二人:(笑う)
日和:(N)こうして、二人でお話していると、とっても安心できます。
日和:(N)まるで、お家に帰ってきたみたいな。
日和:(N)おうち・・・そうだ、あのこと、聞かなきゃ・・・。
日和:(N)わたしの、過去のこと。
日和:(N)わたしは、どんな妹だったのかな?
日和:(N)「昔のわたし」は、「今のわたし」と違うと思うけど、
日和:(N)お姉ちゃん先生のココロの中の「わたし」になれたら、
日和:(N)とっても、とっても、気持ちがぽかぽかするんじゃないかな、って。
日和:(N)何か「大切なこと」を、思い出せるんじゃないかな、って。
日和:
日和:(N)でも、それを聞くのは、とても怖いです。
日和:(N)もし「今のわたし」がお姉ちゃん先生の中の「わたし」と
日和:(N)全然違っていたら・・・?
日和:
日和:(N)胸が、「ぎゅーっ」と締め付けられそう。
日和:
日和:(N)それでも、お姉ちゃん先生に聞かなきゃ。
日和:
日和:(N)夜中の1時。
日和:(N)何となく目が覚めた私は、
日和:(N)まだお姉ちゃん先生の机の明かりがついているのに気づきました。
日和:
日和:(N)声を掛けたら、まだお仕事をしているみたいでした。
日和:(N)いつ、終わるのかな・・・?
日和:(N)ちゃんとお休みできるといいのにな・・・。
日和:(N)そうだ!こういう時こそ、私の出番!
日和:
日和:(N)キッチンで牛乳とハチミツ、シナモンを入れた、ホットミルク!
日和:(N)温かいうちに、お姉ちゃん先生にお届けです!
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生、ちょっとずつ飲んでる・・・味わってくれてるのかな…?
日和:
日和:あ、そうだ・・・あのこと、聞かなきゃ・・・。
小春:ひよりー?何してんの?ぼーっとして。
日和:・・・あの、お姉ちゃん先生
日和:
日和:(N)深呼吸。何回も。
日和:(N)そして。
日和:
日和:私の、・・・昔のコト。教えてほしいです。
小春:日和、あのね・・・。
日和:(N)知りたい。
日和:
日和:私は。・・・わたしはっ!
日和:どんな妹だったの?教えて!?お姉ちゃん先生っ!!
日和:
日和:(N)夜中なのに、大きな声が出ちゃった。
日和:(N)でも、止まれない・・・。
日和:(N)知りたい気持ちが、大きな声に、なっちゃった。
日和:
日和:(N)ちょっと時間をくれ、と言って、
日和:(N)お姉ちゃん先生は、いきなり着替え始めました。
日和:(N)ネイビーのワンピースに、アイボリーのカーディガン。
日和:(N)白衣を着たお姉ちゃん先生とは一味、違います。
日和:
日和:(N)あれ?
日和:(N)この格好、見たことあるような…?
日和:(N)いつ?どうして?
日和:(N)分からないよ、「今のわたし」は。
小春:日和、今から話すことはね、全部、私の「わがまま」だ。
日和:(N)そう言って、「昔のわたし」のことを話してくれました。
日和:(N)誕生日から、性格も、想い出話に、動画も。
日和:(N)お姉ちゃん先生の服は、わたしがプレゼントしたものだ、ってこと。
日和:(N)わたしが、・・・事故で、亡くなったことも。
日和:
日和:(N)そして、長い時間をかけて、「わたし」を造ってくれたことも。
日和:
日和:(N)わたしは何も、言えませんでした。
日和:(N)そんなに大切に思ってくれてたことが、
日和:(N)ただただ、とっても、とっても嬉しいです。
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生は、まだ何かお話していますが、頭に入ってきません。
日和:
日和:(N)だから。
日和:
日和:(N)お姉ちゃんを、全力で抱きしめちゃいます!
日和:(N)お姉ちゃんは、目を丸くしてます!えへへ。
小春:日和・・・?
日和:なぁに?「お姉ちゃん」!
小春:日和、ごめん、ごめんね・・・辛かったね・・・迷惑、かけたよね・・・。
日和:(N)どうして、謝るの?
日和:
日和:逆です、お姉ちゃん。
日和:あたしは、今、とっても、幸せ、です!
日和:
日和:(N)そうだよ。
日和:(N)わたしは、とっても、しあわせ。
日和:(N)だって、お姉ちゃんに一杯、愛してもらっているのが分かったから。
日和:
日和:(N)背中を優しく撫でてもらっていると、とても、眠たくなってきました。
日和:
日和:(N)お姉ちゃんと、一つのお布団で、手をつないで。
日和:(N)とっても幸せな夢が、見られそうです!
0:
0:(間)(日和の視点で)
0:
日和:(N)お姉ちゃんに、昔のことを全部聞いた、次の週末。朝。
日和:
日和:お姉ちゃん!お・ね・え・ちゃん!!
小春:んぐ・・・あと48時間・・・
日和:だめですー!お休みが終わっちゃいます!
日和:
日和:(N)48時間なんて、だめ!ゼッタイ!布団を引っ張りながら、お姉ちゃんを起こします!
日和:
日和:今日は!お姉ちゃん、デート、で、しょ・・・!
小春:あたし・・・、かれし・・・ズッと・・・イナイ・・・
日和:え?お姉ちゃん?
日和:
日和:(N)今すごい報告を聞いたような・・・?
小春:だーかーらー、デートの相手なんて・・・ん?
日和:(N)えっと・・・。
小春:ん・・・?ひより・・・?あー・・・。
日和:(N)ぼんやりしていたお姉ちゃんの目の焦点が、すこーしずつ、合っていきます。
小春:そか、今日はアンタとデートだったね、日和・・・。
日和:(N)身体を起こすと、アヒル座りで、両目をこするお姉ちゃん。かわいい・・・
日和:
日和:そ、そう!デート!!ですよ!!!わたしと!
日和:
日和:(N)お姉ちゃんの動作が可愛すぎてキュンキュンしてる、って言ったら、
日和:(N)また何かされそう・・・今は黙っておきます。
小春:うんうん、ちょっと待ってて・・・とりあえずごはんだなー・・・。
日和:違います!顔を洗ってきてください!髪もちゃんとするんですっ!
小春:わかった、わかったから・・・
日和:(N)お姉ちゃんの背中を押しながら、洗面所に行きます。
0:(間)(ここで視点が小春に)
小春:(N)いかん、いかんぞ・・・。
小春:(N)アタシ完全に、目が据(す)わってる・・・クマもある。
小春:(N)いや、それはいい、それはいいんだ。
小春:
小春:あのね、日和・・・。
日和:なぁに?お姉ちゃんっ!
小春:(N)大事な妹の、弾んだ声。
小春:(N)うん、カワイイ。
小春:(N)いや、そうじゃなくて。
小春:
小春:あのさ、髪くらいアタシ自分で何とかするって・・・。
日和:だーめーでーすぅ!お姉ちゃんポニテしかしないんですから・・・んっ、と・・・。
小春:(N)半自動的に結い上げられる、アタシの髪。
日和:これでよし、っと!
小春:え・・・。
小春:
小春:(N)なんだこれは。
日和:はい、これ後ろ側!
小春:(N)日和がアタシの後頭部から鏡を映して、アタシからも自分の後頭部が見えた。
小春:何だこりゃ・・・。
日和:え・・・シニヨン・・・。
小春:しによん・・・?
日和:そう、シニヨンっ!今日はこの髪型でお出かけします!
小春:あっはい・・・。
小春:
小春:(N)あれ?なんか立場がおかしなことになってないか・・・?
0:(ここで視点は日和に戻る)
日和:(N)お姉ちゃんの髪をセットして、朝ごはんを食べて、いよいよ出発です!
日和:(N)お姉ちゃんの服装は、あのワンピースと、カーディガンです!やった!
小春:で?今日はどこ行くの?
日和:今日はですね・・・ここです!
日和:
日和:(N)「初めてのデート」の行先は、電車で30分ほどのところにある、
日和:(N)「四つ星水族館」です!
小春:あー、あそこか・・・。
日和:ペンギンのお散歩が見れるんですよ!とっても楽しみ!
小春:日和、ペンギン好きだもんなぁ・・・
日和:自分でも不思議ですけど・・・でも、ちょこちょこ歩いてるのがとってもかわいいです!
小春:あー、まぁペンギン以外にも見てやれよ・・・せっかくいるんだし・・・。
日和:もちろんです!イルカショーはありませんけど、ラッコさんとか、
日和:サメさん、チンアナゴさん、メンダコさん、ダイオウグソクムシさんも!とっても楽しみです!
小春:ダイオウグソク・・・何?まぁいいや、行こうか、日和。
日和:はいっ!
日和:
日和:(N)水族館デート、・・・ワクワクが止まりません!
日和:(N)昔のわたし、ちゃんと思い出したいから・・・。
日和:(N)今なら、きっと、思い出しても、怖くない。
日和:(N)きっと、ちゃんと「お姉ちゃんの」妹になれる。
日和:(N)そんな予感が、しました。
0:
0:(間)水族館のテラスカフェにて。(視点は小春に)
0:
小春:(N)水族館を一通り見て回り、併設のテラスカフェでの遅めの昼食。
小春:(N)泳ぐクラゲたちを横目にしながらも、パンケーキを食べる日和の様子をうかがう。
小春:(N)・・・どうも、日和の様子がおかしい。
小春:(N)ペンギンのお散歩行列を見たあたりから、だな・・・疲れているだけならいいが。
小春:
小春:日和、疲れた?大丈夫?
日和:はい、だいじょうぶ、です。えへへ、はしゃぎすぎちゃいました。
小春:だったらいいけど、今日は早めに帰ろう、な?
日和:はい。はぁ~ぁ・・・ペンギンさん可愛かったぁ・・・。
日和:あ、お姉ちゃん知ってましたか?ペンギンさんって、意外と足長いんですよ!
小春:(N)知ってるよ、と苦笑いで返すアタシ。
小春:(N)とはいえ、このテンションなら家までもつかな。
小春:
小春:よかったな、ずっと見たがってたもんね。
日和:あの、お姉ちゃん・・・?
小春:(N)あの時と同じように、何かを言いかけてはやめる。だけど、今回は一度きり。
日和:わたし、・・・ペンギンさんのお散歩のとき・・・急に思い出したことがあるんです。
小春:うん・・・。
日和:この間、夜にお話ししてくれたことが、急に頭の中に浮かんできたんです。
小春:(N)アタシの頭の中のスイッチが、切り替わる。
日和:お散歩行列の中に、一羽だけ、イワトビペンギンさんが居たじゃないですか。
日和:あの子を見たときに、えっと、・・・「走馬灯(そうまとう)」?みたいな感じで。
小春:うん・・・。
小春:
小春:(N)つい、日和の顔を舐めるように見てしまう。異変は、・・・なさそうだ。
日和:そしたら、なんだか急に、・・・んと・・・えっと~・・・
小春:(N)言葉が浮かばないんだろう。難しい顔で考え込む日和。
小春:
小春:いろんなことが頭に浮かんだ、そんな感じ?
日和:そう!そうなんです!でも、お姉ちゃんはお姉ちゃんだし、
日和:わたしは、わたし。・・・なんですよね。何も、変わらない・・・。
日和:事故のことが頭に浮かぶと、苦しいんですけど、でも・・・。
日和:わたしは、今、ここにいるんだ、って。
小春:・・・そっか。
小春:
小春:(N)たとえ、日和が、アタシの造ったクローンだとしても・・・。
小春:(N)アタシたちは、きっと、変わらないんだろうな。
小春:
小春:日和、これからさ。
日和:はい?
小春:どんなことがしたい?
日和:そう、ですね・・・。
小春:(N)穏やかな、沈黙。
小春:(N)この子の将来の夢、聞いたことなかったよなぁ・・・。
日和:ん、やっぱり・・・学校、行きたいです。
小春:学校?
日和:はい、学校に行って、いっぱいお勉強して、
日和:お姉ちゃんのお仕事のお手伝い、したいです。
小春:アタシの手伝い?
日和:お姉ちゃん、わたしがいないときっとまただらしなくなっちゃいます!
小春:(N)え・・・そういうことが聞きたかったんじゃないんだけど・・・。
小春:(N)ま、いいか。
小春:
小春:あははははは!・・・そっか。まずは学校、だなぁ。
日和:はい!せっかくお姉ちゃんが用意してくれた、2回目の人生だから!
小春:・・・日和、(少しだけ涙ぐむ)・・・ん、そだな。
小春:そろそろ、帰ろうか。夕飯の支度もしなくちゃいけない。
日和:はいっ!今夜はオムライスとかどうですか?
小春:いいねぇ。一緒につくるか。
日和:はい!
0:
0:-おしまい-
0:
小春:(N)ふと、思い出す。
小春:(N)カプセルトイだ。
小春:(N)あの日も、妹と、「あれカワイイ、これもいい!」などと
小春:(N)はしゃぎながら、厳選した1台のマシンから、ぽんっ、と出てくる
小春:(N)カプセルの中身を、開けるときのあの、ワクワク。
小春:
小春:(N)そんなことを思い出しかけ、はっ、と我に返る。
小春:
小春:違う。
小春:
小春:(N)今は、今目の前にあるカプセルは、違うのだ。
小春:
小春:(N)あの日の、その帰り道に喪(うしな)った、
小春:(N)あの子が、妹が、この中にいる・・・。
小春:(N)そして、カプセルのドアが、ゆっくりと開く。
小春:(N)中を満たし、彼女を優しく包んだ培養液が、
小春:(N)ざざざ、と流れ出しては排水溝に流れ出ていく。
小春:(N)カプセルの水位が下がると、彼女はくたり、と
小春:(N)カプセルの下部で、身体を横たえた。
小春:
小春:(N)フラッシュバック。
小春:(N)車道に飛び出した子犬。
小春:(N)真っ先に「あぶないよ!」と追いかけた彼女。
小春:(N)タイミングを計っていたかのように、
小春:(N)トラック。止まれない。間に合わない。
小春:(N)軽々と、空を舞う、彼女。
小春:(N)ぐったりと、その身を横たえる彼女。
小春:(N)大量の、赤い、紅い、血の色。
小春:(N)赤色灯の、赤。
小春:(N)あれから、どれだけ時間が・・・?
小春:
小春:っ!!!
小春:
小春:(N)また、我に返る。
小春:(N)目の前は、培養液の透き通ったブルー。
小春:(N)その、傷一つない、綺麗で、無垢な身を横たえた彼女に、
小春:(N)ふらふらと、歩み寄る。
小春:
小春:(N)彼女の、その顔が、
小春:(N)うっすらとピンク色に染まって。
小春:(N)ほんの少し、その眼が開く。
小春:
小春:・・・おはよう。
小春:
小春:(N)ああ、妹だ。
小春:(N)あの日から、毎晩のように夢に見た、
小春:(N)私の大切な、妹・・・。
日和:・・・?
小春:・・・おはよう、日和(ひより)、気分はどう?
日和:お姉さん、・・・だ・・・れ・・・・・・?
小春:(N)そう来ると、思った。
小春:(N)頭ではわかっていた。
小春:(N)今回も、完全ではないだろう、と。
小春:
小春:(N)なのに。
小春:(N)それなのに。
小春:(N)くやしさ、切なさが、あふれて、涙が、止まらない。
小春:(N)それでも、言い聞かせるように、震える唇から、言葉を、紡ぎだす。
小春:
小春:あたしは、小春。霜月 小春(しもつき こはる)。
小春:あんたは、・・・あんたは、っ、・・・日和、っていうんだよ?
日和:私は・・・ひ・・・よ、り・・・?
小春:そう、そうだ・・・あんたは、日和、だよ・・・
小春:
小春:(N)そう、私の大好きな、天使のように優しい、妹。
小春:(N)あんたは、これから、どんな風に、生きるんだろうね?
小春:(N)やっと、2度目の人生だよ・・・。
小春:(N)おめでとう、日和。
0:
0:(間)これは、数年前の出来事。
0:
日和:(N)今日は、土曜日。
日和:(N)お天気、快晴!
日和:(N)お買い物びより!
日和:
日和:(N)お姉ちゃん、起きてるかな?
日和:
日和:おはよ、お姉ちゃん!
日和:
日和:(N)起きてた!・・・起きてるけど・・・
小春:んー?・・・日和、おはよ。
日和:(N)はぁあ・・・「いつもの」お姉ちゃんだ・・・
日和:(N)髪はボサボサ、ぴょんぴょん跳ねてて、たぶん起きた時のまんまだね。
日和:(N)きちんとしてたら、ホントに美人さんなのにぃ・・・。
日和:
日和:お姉ちゃん・・・また髪の毛すごいことになってるよ・・・?
日和:
日和:(N)しょうがないなー、ここは日和のがんばりどころ!
日和:(N)お姉ちゃんに人差し指を「びしーっ」と向けて、
日和:
日和:お姉ちゃん!今日はお姉ちゃんと、お出かけします!
小春:お出かけ?あたしと?どこに?
日和:いいから!早く支度して!ほーらー!!
小春:わかった、わかったから・・・。
日和:(N)お姉ちゃんを連れてきたのは、駅近のショッピングモール。
日和:(N)その中にある、お洋服屋さん!
小春:なー、日和~?
日和:んー、やっぱりこっちの方がいいかなー・・・?
日和:
日和:(N)悩む。
日和:(N)お姉ちゃん、普段お家でヨレヨレのTシャツとか着てるけど、
日和:(N)こういう服のほうが絶対いいと思うんだよね・・・よし!
日和:
日和:お姉ちゃん、これ!これ着てみて?
小春:あたし、着せ替え人形じゃないぞー・・・?
日和:いいからー!ほら!
日和:
日和:(N)うふふ、絶対似合うんだから・・・!
小春:おーい、日和ー、どうだぁ~?
日和:うんっ、やっぱりカワイイ!ばっちりだよ!
小春:カワイイ?いや、あたしはそういうキャラじゃないだろ・・・
日和:そんなことなーい!かわいいんだもん!
日和:
日和:(N)ネイビーのシンプルなワンピースに、アイボリーのカーディガン。
日和:(N)レジに持って行って、お会計。うん、大満足!
小春:日和、ホントにいいのか、払わなくって・・・。
日和:だいじょーぶ!日和にお任せだよ!
日和:
日和:(N)だって、この服を買うのは・・・。
小春:次の水曜日?
日和:お姉ちゃん、やっぱり忘れてる・・・お誕生日でしょ?
小春:んああ、そうだな・・・って、日和、あんた
日和:ちょっと早いけど、お誕生日プレゼント、です!
小春:あんたって子は・・・はぁ。ホント、ありがとね。
日和:(N)うふふ、お姉ちゃん照れてる。かわいいなー。
日和:(N)わ、髪を「わしゃわしゃ」しちゃやだよ・・・。
日和:(N)撫でてくれるのはうれしいけど・・・。
日和:
日和:(N)普段とってもだらしなくって、
日和:(N)でも、キめるときはとっても、かっこよくって。
日和:
日和:(N)そして、私にはとびっきり優しい・・・お姉ちゃん。
日和:
日和:(N)それから、お昼ご飯を食べて、モールをぶらぶら。
日和:(N)おもちゃ屋さんの片隅に・・・
日和:
日和:わぁ・・・ガチャガチャがたくさん・・・
日和:お姉ちゃん、あれカワイイ!あー!これもいい!
小春:ちょっと、はしゃぎすぎだよ、日和・・・。
日和:ねぇねぇお姉ちゃん、このペンギン、今朝のお姉ちゃんみたい!
小春:イワトビペンギンじゃないか・・・あたしこんなだったかぁ・・・?
日和:髪の毛ぴょんぴょんしてたの、すごく似てる!あはは!
小春:あんたねー・・・このー!
日和:(N)うぅ・・・お姉ちゃんに「ほっぺたむにむにの刑」にされちゃった。
日和:(N)でも。お姉ちゃんの手、すごく温かい・・・。
小春:で、日和、このガチャガチャ、やるの?
日和:え?
小春:ちょっとは今日のお礼くらい、させろ。
日和:・・・うんっ!
日和:
日和:(N)お姉ちゃんに小銭をもらって、ガチャガチャを、回す。
日和:(N)がちがちっ、っていう音がして、ころん、ってカプセルが出てきた。
日和:(N)どんなペンギンが出てくるかな・・・?
日和:
日和:あ・・・お姉ちゃんが出てきた。
小春:なんでよ。イワトビペンギンだよ。
日和:この子は完全に、お姉ちゃんです!
日和:
日和:(N)またほっぺたむにむにされた・・・うぅ。
日和:(N)でも、この子は日和のお気に入り。お姉ちゃんには内緒だけど。
日和:(N)日和の、宝物。今日の大切な思い出。
日和:
日和:(N)帰り道。今日は楽しかったなーぁ。
日和:(N)お姉ちゃん、あの服いつ着てくれるかな?
日和:(N)どんな時に、着てくれるのかな?早く見たいなぁ。
日和:
日和:(N)あ、わんこ。チワワかな?
日和:(N)え?そっちは!あぶないよ!捕まえないと!
日和:
日和:(N)突然、どん、って大きな音と、衝撃・・・
日和:(N)なんで?急に、身体が重くなってく・・・
日和:(N)お姉ちゃんの、大きな声が、だんだん遠く聞こえて・・・
日和:(N)お姉ちゃん、何?どうしたの?わんこは?
日和:(N)聞こえ、ない、よ?
日和:(N)やだ、急に、眠く・・・
日和:(N)おねえ、ちゃ・・・。
小春:(N)その日、この事故のニュースは。
小春:(N)たった3分の、短いものだった。
0:
0:(間)日和と再会してから、しばらくして。
0:
小春:(N)黙考する。
小春:
小春:(N)何が、おかしかったのか。
小春:(N)何を、間違えたのか。
小春:(N)どうして、こうなった・・・?
小春:
小春:(N)あるいは。
小春:
小春:(N)こんな形で妹を甦(よみがえ)らせた、アタシへの、罰か。
小春:
小春:(N)あの日、妹を喪ったアタシの景色は、
小春:(N)急に色を失ったようになった。
小春:
小春:(N)みっともなく神様に縋(すが)ってでも、生き返ってほしかった。
小春:(N)あの笑顔、あの愛らしい声を、ずっと聴きたい。
小春:(N)スマホの中の動画、それだけじゃ、ダメ、なんだ。
小春:
小春:(N)そして何より、日和に、ちゃんと、
小春:(N)一度失った人生を、過ごしてほしい。
小春:(N)優しい子なんだ。幸せに、なってほしい。
小春:
小春:(N)あの頃。特に将来の夢、とか、目標、なんてものがなかったアタシ。
小春:(N)そこに突然現れた、目標。
小春:(N)そうだ、日和のために、全てを捧げるんだ・・・。
小春:(N)その想いだけが、私を衝(つ)き動かした。
小春:
小春:(N)願いは、成就したと・・・思ったんだけどな。
日和:せんせ?
小春:(N)呼ばれ慣れたくない、よそよそしい、言い方。
小春:(N)それでも、目線を合わせて、ゆっくりと、返す。
小春:
小春:「先生」、じゃないよ。『お姉ちゃん』だよ。
小春:アンタはずっと、アタシをそう呼んでたんだよ。
小春:
小春:(N)ふわっとした髪に、触れる。
小春:(N)くすぐったそうに、目を細める妹。
小春:(N)しばし後(のち)。「んー」と、人差し指を頬に当て、うなったと思うと・・・。
日和:お姉ちゃん先生・・・?
小春:(N)しぐさも、声も、日和、なんだよなぁ・・・。
小春:(N)とりあえず、今はこれでいいか・・・。
小春:(N)時間は、ある。
小春:(N)この日和を元に戻すのが、アタシのすべきこと。
小春:(N)今は、目の前の日和に応えてあげたい。
小春:
小春:それで、どした、日和。お腹空いた?
日和:えっと、・・・ですね・・・はい、空きました。
小春:ん、そっか。じゃあ何か買いに行こう。
小春:
小春:(N)研究所に併設している、病院。
小春:(N)いくつかの検査を受けた日和を連れて、購買に向かう。
小春:(N)大したものは置いていないが、腹の足しになるものくらい、あるだろ。
日和:えっと・・・お姉ちゃん先生、これが、食べたい・・・です・・・。
小春:(N)日和のチョイスは、カスタードとホイップクリームのたっぷり入った菓子パン。
小春:
小春:え・・・それをお昼にするの・・・?
日和:ダメ・・・ですか・・・?
小春:(N)上目遣いで聞いてくる、日和。
小春:(N)あ、いかん・・・。
日和:お姉ちゃん先生・・・?
小春:(N)思わず、涙声で返してしまう。
小春:
小春:日和、あんた・・・。
日和:やっぱり、ダメ、ですよね・・・棚に戻してきま・・・?
小春:(N)気づいたら、アタシは日和を抱きしめていた。
日和:えと・・・お姉ちゃん先生?
小春:いいよ、そのパン、買おう。
日和:あ、・・・はいっ!
小春:(N)どうして日和が、このパンを?
小春:(N)この子は確かに甘いもの好きだったけど・・・キオクは、どうなってる?
小春:(N)あたしは、しばらくこの子に振り回されるのかなぁ・・・。
小春:(N)そんなことをしている場合じゃないけど。
小春:(N)このお昼ご飯の時間は、少しだけ、幸せな時間になりそうだ・・・。
0:
0:(間)小春と日和、お昼ご飯を食べる(視点が日和に)。
0:
日和:(N)私は、ひより。
日和:
日和:(N)せんせ・・・お姉ちゃん先生がそう言ってました。
日和:(N)私はお姉ちゃん先生の、「妹」、なんだって。
日和:(N)でも、私はお姉ちゃん先生のこと、ほとんど、知りません。
日和:(N)だから、これはきっと、お姉ちゃん先生を知るチャンス。
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生と二人で、病院の屋上に来ました。
日和:(N)屋上は庭園になっていて、お昼の日差しを浴びる緑が、とってもきれい。
日和:(N)お姉ちゃん先生は時々、ここにきてお昼を食べるそうです。
日和:(N)今日は、私を連れてきてくれました。
日和:
日和:(N)私は、カスタードとホイップクリームのパン。
日和:(N)お姉ちゃん先生は、指くらいの大きさの、栄養食品。
日和:(N)お仕事大変そうなのに、もっと食べなくっていいのかな・・・?
日和:
日和:あの、・・・お姉ちゃん先生?
小春:どした、日和?
日和:えっと、お昼ご飯、それで足りますか?
小春:アタシはいつもこれだよ。それより日和こそ、それだけでいいの?
日和:はい、大丈夫、です。(パンを食べて)・・・甘い・・・おいしい・・・。
小春:(少し笑って)そか。良かったな。
日和:(N)お姉ちゃん先生は、にっこり笑ってくれました。
日和:(N)それがちょっと、くすぐったくて、照れちゃいます。それよりも・・・。
日和:
日和:お姉ちゃん先生、もしよかったら、私・・・お弁当作ります!
小春:え?お弁当?何で?
日和:その、・・・お姉ちゃん先生、このままじゃ倒れちゃうんじゃないかって。
日和:栄養とか、その・・・心配です。
小春:あー、これか?
日和:(N)栄養食品を持ち上げて、苦笑いのお姉ちゃん先生。
日和:(N)ちなみに、他の物を食べてるの、見たことないです。
小春:まぁずっとこればっかり食ってるしなぁ・・・案外美味しいし。
小春:いいんだよ、頭がちゃんと動けば。
日和:(N)私は、すっく、と立ち上がって、お姉ちゃん先生を指さします!
日和:
日和:ダメです、そんなの!ちゃんと食べないと!
小春:えっ、あの・・・ひより、さん・・・?
日和:お姉ちゃん先生に何かあったらどうするんですか!
日和:
日和:(N)あれ・・・?私、こんなに、どうして怒ってるんだろう・・・?
日和:(N)でも、お姉ちゃん先生が食事をちゃんと取らないからで・・・?
日和:(N)あ・・・お姉ちゃん先生、固まっちゃった・・・。
日和:
日和:お姉ちゃん先生・・・あの、私、言いすぎて・・・!
日和:
日和:(N)謝らなきゃ!えっと、えっとー!?
小春:(吹き出して)ぷっ。・・・あはははははは!!!
日和:(N)え?お姉ちゃん先生が笑ってる・・・!?
日和:(N)はぅ・・・恥ずかしい・・・!
日和:
日和:でっでも!お姉ちゃん先生がちゃんとご飯食べてないから、私、心配で!
小春:うん、うん、分かった、分かったから・・・!
日和:(N)お姉ちゃん先生、まだ笑ってる・・・ううう。あれ?
日和:
日和:お姉ちゃん先生、これ、落としました!
日和:
日和:(N)スマホだ・・・ちょっと、年季の入ったのだ・・・。
日和:(N)かわいいペンギンの、ストラップがついてる・・・。
日和:(N)ペンギン・・・ストラップ・・・あれ・・・?
小春:日和、日和?ひーよーりーさーん・・・?
日和:え?あ、ごめんなさい!はい!どうぞ!
小春:ん、さんきゅーね。悪い悪い、ついはしゃいじゃったよ。
日和:いえ、そんな・・・。
小春:お弁当のコト、ごめんね。
小春:せっかく日和が気遣ってくれたのに。
日和:あ、あの・・・!どうしても、お弁当、ダメですか?
小春:ん?
日和:えっと、私、毎日検査してもらってるだけで、
日和:普段、それ以外って何もしてないし・・・。
小春:(真顔になって)・・・そうか・・・検査、かぁ・・・
日和:(N)お姉ちゃん先生、急に真剣な顔になった・・・
日和:(N)でもなんだろ、不思議と、「嫌な感じ」じゃない・・・
日和:(N)なんだかとっても、「先生」な感じで、かっこいい・・・っていうか。
小春:ん、分かった。じゃあ日和、お弁当、よろしくね。
日和:ふぁ!?
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生の不意打ち!?えっ?検査の話じゃないの?
小春:んー?何びっくりしてんの?作ってくれるんでしょ?
日和:はっ、ふぁい(はい、と言いたいところを噛む)!!
日和:
日和:(N)それにしても何で・・・?
日和:(N)お姉ちゃん先生を、怒っちゃった・・・。
日和:(N)それに、あのストラップを見たときに感じた、あの気持ち・・・。
日和:(N)なんだろ、この感じ・・・何か、ココロにぽっかり穴が空いてたことを
日和:(N)思い出した、みたいな・・・?
0:
0:(間)夕方、小春のアパート(小春の視点で)。
0:
小春:(N)病院でお昼を食べた、その晩。
小春:
小春:(N)レポートだの色々な報告書だの、煩雑(はんざつ)な作業を終えたあと、
小春:(N)夕方にアタシは日和を連れて、アパートに帰ってきた。
小春:
小春:(N)途中、スーパーに寄って、色々な食材を買って。
小春:
小春:(N)日和の負担と調理の手間を考えて、鍋物にしたけれど、
小春:(N)久しぶりの「まとも」な食事に、何ともほっこりとしたもんだ。
小春:
小春:(N)そして、その夜。
日和:お姉ちゃん先生・・・?
小春:ん?・・・日和、どうした?
日和:まだ、寝ないんですか?
小春:あー、もうこんな時間なのか。ごめんね、起こしちゃったか。
日和:いえ、大丈夫です。ちょっと、待っててくださいね。
小春:(N)そう言い残して、キッチンで何やら始める日和。
小春:(N)しばらくして、鼻腔(びくう)をくすぐる、甘い匂い。
小春:(N)これは・・・?
日和:お姉ちゃん先生、お待たせしました。
小春:これ、ホットミルク?
日和:はい!寝つきもよくなりますし、栄養もたっぷりです!どうぞ!
小春:・・・ふふっ、ありがとうね。
小春:
小春:(N)本当は、この子の面倒を見なくちゃいけない側、なんだけどなぁ。
小春:(N)さて、もう少しだけ頑張ったら、寝るかなぁ。
日和:・・・あの、お姉ちゃん先生、・・・
小春:(N)何かを言いかけては、止(や)めて、を繰り返す日和。
小春:(N)4回ほど繰り返しただろうか。意を決したように言う。
日和:私の、・・・昔のコト。教えてほしいです。
小春:・・・。
小春:
小春:(N)いつか、聞かれるだろう。
小春:(N)いつか、教えなければならないのだろう。
小春:(N)その「いつか」は。
小春:
小春:日和、あのね・・・
日和:私は。・・・わたしはっ!
小春:(N)日和のキモチが、ココロが。
日和:どんな妹だったの?教えて!?お姉ちゃん先生っ!!
小春:(N)「今」に、呼び込んだ。
小春:
小春:・・・ひより・・・。
小春:
小春:(N)おなかに「おもり」があるように、急に不安な気持ちになる。
小春:(N)日和に、責められるんじゃないか。怒られるんじゃないか。あるいはもっと・・・。
小春:(N)苦しい。逃げ出したい。許されるなら、一人になりたい。
小春:(N)そんなことを一瞬でも思った自分を、叱咤する。
小春:
小春:(N)向き合うんだ。小春。
小春:
小春:・・・少しだけ、時間をもらっていいかな・・・?
小春:
小春:(N)覚悟を決めたアタシは、クローゼットから、「あの」ワンピースとカーディガンを取り出して、
小春:(N)日和の目の前で、着替えた。そして。
小春:
小春:日和、今から話すことはね、全部、私の「わがまま」だ。
小春:
小春:(N)そしてアタシは、全てを、話すことにした。
小春:(N)あの日の出来事を。日和のくれた、この服のコト。
小春:(N)そのお礼に、と回したガチャガチャ。出てきたペンギンのコト。
小春:(N)あの、事故のこと。・・・日和を喪(うしな)った、あの日の、すべて。
小春:(N)そして、長い時間をかけて、今の日和を「造った」こと。
小春:(N)そのすべてを、日和は、黙って、時折瞳を潤ませて、聴いていた。
小春:
小春:
小春:まぁ・・・その、なんだ。言い訳とかする気もないんだ。
小春:
小春:倫理的(りんりてき)に問題あったり、色々あるんだけどね。
小春:
小春:ただ、アタシが勝手に、日和に、ちゃんと・・・
小春:
小春:幸せな人生をあゆ・・・っと・・・んぐ
小春:
小春:
小春:(N)日和は、嬉しそうに目を細めて、そっとアタシに近づくと、
小春:(N)そのか細い腕で、私を「全力ハグ」した。
小春:
小春:日和・・・?
日和:なぁに?「お姉ちゃん」!
小春:(N)ああ、そうだ。
小春:(N)そう、呼んでほしかった。
小春:(N)その甘やかな声で、そう、呼んで欲しかったんだ・・・。
小春:
小春:日和、ごめん、ごめんね・・・辛かったね・・・迷惑、かけたよね・・・。
小春:
小春:(N)そう言うのが、精一杯だった。
小春:(N)アタシの止まらない涙が、日和にも、ぱた、ぱたと、落ちる。
日和:逆です、お姉ちゃん。
日和:あたしは、今、とっても、幸せ、です!
小春:(N)敬語は変わんないのか、なんて、益体(やくたい)もないことを考えるが、
小春:(N)すぐに、胸が温かくなるのに気づいた。
小春:(N)日和の背中をそっと、そっと、撫でながら、ふと時計を見る。
小春:(N)これから先、どれだけの時間があるか、分からない。
小春:(N)それでもアタシは、日和を必ず幸せにする。そう改めて誓った、夜だった。
小春:(N)それからアタシたちは、どちらからともなく手をつないで、深い眠りに落ちた。
0:
0:(間)同じく夕方。(日和の視点に切り替わる。)
0:
日和:(N)病院でお昼を食べた、その晩。
日和:
日和:(N)私はお姉ちゃん先生と一緒に、アパートに来ました。
日和:(N)途中、お夕飯とお弁当の食材を買って。
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生が、「今夜は簡単なものにしよう」って言ってくれました。
日和:(N)でも、せっかくお姉ちゃん先生と一緒のお夕飯なので、
日和:(N)ちょっと贅沢な気分になれる、お鍋にしよう、とお話して、
日和:(N)二人っきりの鍋パーティー!
日和:
日和:お姉ちゃん先生、そんなに急いで食べなくっても・・・
小春:んー・・・?でもさ、ほら、煮えてるよ?
日和:そうじゃなくって・・・熱くないですか?
小春:んーん、んまひ(美味い)!
日和:あはは、お姉ちゃん先生ってば・・・
日和:
日和:(N)栄養食品をもくもくと食べてるお姉ちゃん先生と、全然違います。
日和:(N)とっても美味しそうに、どんどん食べちゃいます・・・。
小春:ほら、日和も食べなって。なくなるよ?
日和:え?あー!お姉ちゃん先生、食べ過ぎです!
二人:(笑う)
日和:(N)こうして、二人でお話していると、とっても安心できます。
日和:(N)まるで、お家に帰ってきたみたいな。
日和:(N)おうち・・・そうだ、あのこと、聞かなきゃ・・・。
日和:(N)わたしの、過去のこと。
日和:(N)わたしは、どんな妹だったのかな?
日和:(N)「昔のわたし」は、「今のわたし」と違うと思うけど、
日和:(N)お姉ちゃん先生のココロの中の「わたし」になれたら、
日和:(N)とっても、とっても、気持ちがぽかぽかするんじゃないかな、って。
日和:(N)何か「大切なこと」を、思い出せるんじゃないかな、って。
日和:
日和:(N)でも、それを聞くのは、とても怖いです。
日和:(N)もし「今のわたし」がお姉ちゃん先生の中の「わたし」と
日和:(N)全然違っていたら・・・?
日和:
日和:(N)胸が、「ぎゅーっ」と締め付けられそう。
日和:
日和:(N)それでも、お姉ちゃん先生に聞かなきゃ。
日和:
日和:(N)夜中の1時。
日和:(N)何となく目が覚めた私は、
日和:(N)まだお姉ちゃん先生の机の明かりがついているのに気づきました。
日和:
日和:(N)声を掛けたら、まだお仕事をしているみたいでした。
日和:(N)いつ、終わるのかな・・・?
日和:(N)ちゃんとお休みできるといいのにな・・・。
日和:(N)そうだ!こういう時こそ、私の出番!
日和:
日和:(N)キッチンで牛乳とハチミツ、シナモンを入れた、ホットミルク!
日和:(N)温かいうちに、お姉ちゃん先生にお届けです!
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生、ちょっとずつ飲んでる・・・味わってくれてるのかな…?
日和:
日和:あ、そうだ・・・あのこと、聞かなきゃ・・・。
小春:ひよりー?何してんの?ぼーっとして。
日和:・・・あの、お姉ちゃん先生
日和:
日和:(N)深呼吸。何回も。
日和:(N)そして。
日和:
日和:私の、・・・昔のコト。教えてほしいです。
小春:日和、あのね・・・。
日和:(N)知りたい。
日和:
日和:私は。・・・わたしはっ!
日和:どんな妹だったの?教えて!?お姉ちゃん先生っ!!
日和:
日和:(N)夜中なのに、大きな声が出ちゃった。
日和:(N)でも、止まれない・・・。
日和:(N)知りたい気持ちが、大きな声に、なっちゃった。
日和:
日和:(N)ちょっと時間をくれ、と言って、
日和:(N)お姉ちゃん先生は、いきなり着替え始めました。
日和:(N)ネイビーのワンピースに、アイボリーのカーディガン。
日和:(N)白衣を着たお姉ちゃん先生とは一味、違います。
日和:
日和:(N)あれ?
日和:(N)この格好、見たことあるような…?
日和:(N)いつ?どうして?
日和:(N)分からないよ、「今のわたし」は。
小春:日和、今から話すことはね、全部、私の「わがまま」だ。
日和:(N)そう言って、「昔のわたし」のことを話してくれました。
日和:(N)誕生日から、性格も、想い出話に、動画も。
日和:(N)お姉ちゃん先生の服は、わたしがプレゼントしたものだ、ってこと。
日和:(N)わたしが、・・・事故で、亡くなったことも。
日和:
日和:(N)そして、長い時間をかけて、「わたし」を造ってくれたことも。
日和:
日和:(N)わたしは何も、言えませんでした。
日和:(N)そんなに大切に思ってくれてたことが、
日和:(N)ただただ、とっても、とっても嬉しいです。
日和:
日和:(N)お姉ちゃん先生は、まだ何かお話していますが、頭に入ってきません。
日和:
日和:(N)だから。
日和:
日和:(N)お姉ちゃんを、全力で抱きしめちゃいます!
日和:(N)お姉ちゃんは、目を丸くしてます!えへへ。
小春:日和・・・?
日和:なぁに?「お姉ちゃん」!
小春:日和、ごめん、ごめんね・・・辛かったね・・・迷惑、かけたよね・・・。
日和:(N)どうして、謝るの?
日和:
日和:逆です、お姉ちゃん。
日和:あたしは、今、とっても、幸せ、です!
日和:
日和:(N)そうだよ。
日和:(N)わたしは、とっても、しあわせ。
日和:(N)だって、お姉ちゃんに一杯、愛してもらっているのが分かったから。
日和:
日和:(N)背中を優しく撫でてもらっていると、とても、眠たくなってきました。
日和:
日和:(N)お姉ちゃんと、一つのお布団で、手をつないで。
日和:(N)とっても幸せな夢が、見られそうです!
0:
0:(間)(日和の視点で)
0:
日和:(N)お姉ちゃんに、昔のことを全部聞いた、次の週末。朝。
日和:
日和:お姉ちゃん!お・ね・え・ちゃん!!
小春:んぐ・・・あと48時間・・・
日和:だめですー!お休みが終わっちゃいます!
日和:
日和:(N)48時間なんて、だめ!ゼッタイ!布団を引っ張りながら、お姉ちゃんを起こします!
日和:
日和:今日は!お姉ちゃん、デート、で、しょ・・・!
小春:あたし・・・、かれし・・・ズッと・・・イナイ・・・
日和:え?お姉ちゃん?
日和:
日和:(N)今すごい報告を聞いたような・・・?
小春:だーかーらー、デートの相手なんて・・・ん?
日和:(N)えっと・・・。
小春:ん・・・?ひより・・・?あー・・・。
日和:(N)ぼんやりしていたお姉ちゃんの目の焦点が、すこーしずつ、合っていきます。
小春:そか、今日はアンタとデートだったね、日和・・・。
日和:(N)身体を起こすと、アヒル座りで、両目をこするお姉ちゃん。かわいい・・・
日和:
日和:そ、そう!デート!!ですよ!!!わたしと!
日和:
日和:(N)お姉ちゃんの動作が可愛すぎてキュンキュンしてる、って言ったら、
日和:(N)また何かされそう・・・今は黙っておきます。
小春:うんうん、ちょっと待ってて・・・とりあえずごはんだなー・・・。
日和:違います!顔を洗ってきてください!髪もちゃんとするんですっ!
小春:わかった、わかったから・・・
日和:(N)お姉ちゃんの背中を押しながら、洗面所に行きます。
0:(間)(ここで視点が小春に)
小春:(N)いかん、いかんぞ・・・。
小春:(N)アタシ完全に、目が据(す)わってる・・・クマもある。
小春:(N)いや、それはいい、それはいいんだ。
小春:
小春:あのね、日和・・・。
日和:なぁに?お姉ちゃんっ!
小春:(N)大事な妹の、弾んだ声。
小春:(N)うん、カワイイ。
小春:(N)いや、そうじゃなくて。
小春:
小春:あのさ、髪くらいアタシ自分で何とかするって・・・。
日和:だーめーでーすぅ!お姉ちゃんポニテしかしないんですから・・・んっ、と・・・。
小春:(N)半自動的に結い上げられる、アタシの髪。
日和:これでよし、っと!
小春:え・・・。
小春:
小春:(N)なんだこれは。
日和:はい、これ後ろ側!
小春:(N)日和がアタシの後頭部から鏡を映して、アタシからも自分の後頭部が見えた。
小春:何だこりゃ・・・。
日和:え・・・シニヨン・・・。
小春:しによん・・・?
日和:そう、シニヨンっ!今日はこの髪型でお出かけします!
小春:あっはい・・・。
小春:
小春:(N)あれ?なんか立場がおかしなことになってないか・・・?
0:(ここで視点は日和に戻る)
日和:(N)お姉ちゃんの髪をセットして、朝ごはんを食べて、いよいよ出発です!
日和:(N)お姉ちゃんの服装は、あのワンピースと、カーディガンです!やった!
小春:で?今日はどこ行くの?
日和:今日はですね・・・ここです!
日和:
日和:(N)「初めてのデート」の行先は、電車で30分ほどのところにある、
日和:(N)「四つ星水族館」です!
小春:あー、あそこか・・・。
日和:ペンギンのお散歩が見れるんですよ!とっても楽しみ!
小春:日和、ペンギン好きだもんなぁ・・・
日和:自分でも不思議ですけど・・・でも、ちょこちょこ歩いてるのがとってもかわいいです!
小春:あー、まぁペンギン以外にも見てやれよ・・・せっかくいるんだし・・・。
日和:もちろんです!イルカショーはありませんけど、ラッコさんとか、
日和:サメさん、チンアナゴさん、メンダコさん、ダイオウグソクムシさんも!とっても楽しみです!
小春:ダイオウグソク・・・何?まぁいいや、行こうか、日和。
日和:はいっ!
日和:
日和:(N)水族館デート、・・・ワクワクが止まりません!
日和:(N)昔のわたし、ちゃんと思い出したいから・・・。
日和:(N)今なら、きっと、思い出しても、怖くない。
日和:(N)きっと、ちゃんと「お姉ちゃんの」妹になれる。
日和:(N)そんな予感が、しました。
0:
0:(間)水族館のテラスカフェにて。(視点は小春に)
0:
小春:(N)水族館を一通り見て回り、併設のテラスカフェでの遅めの昼食。
小春:(N)泳ぐクラゲたちを横目にしながらも、パンケーキを食べる日和の様子をうかがう。
小春:(N)・・・どうも、日和の様子がおかしい。
小春:(N)ペンギンのお散歩行列を見たあたりから、だな・・・疲れているだけならいいが。
小春:
小春:日和、疲れた?大丈夫?
日和:はい、だいじょうぶ、です。えへへ、はしゃぎすぎちゃいました。
小春:だったらいいけど、今日は早めに帰ろう、な?
日和:はい。はぁ~ぁ・・・ペンギンさん可愛かったぁ・・・。
日和:あ、お姉ちゃん知ってましたか?ペンギンさんって、意外と足長いんですよ!
小春:(N)知ってるよ、と苦笑いで返すアタシ。
小春:(N)とはいえ、このテンションなら家までもつかな。
小春:
小春:よかったな、ずっと見たがってたもんね。
日和:あの、お姉ちゃん・・・?
小春:(N)あの時と同じように、何かを言いかけてはやめる。だけど、今回は一度きり。
日和:わたし、・・・ペンギンさんのお散歩のとき・・・急に思い出したことがあるんです。
小春:うん・・・。
日和:この間、夜にお話ししてくれたことが、急に頭の中に浮かんできたんです。
小春:(N)アタシの頭の中のスイッチが、切り替わる。
日和:お散歩行列の中に、一羽だけ、イワトビペンギンさんが居たじゃないですか。
日和:あの子を見たときに、えっと、・・・「走馬灯(そうまとう)」?みたいな感じで。
小春:うん・・・。
小春:
小春:(N)つい、日和の顔を舐めるように見てしまう。異変は、・・・なさそうだ。
日和:そしたら、なんだか急に、・・・んと・・・えっと~・・・
小春:(N)言葉が浮かばないんだろう。難しい顔で考え込む日和。
小春:
小春:いろんなことが頭に浮かんだ、そんな感じ?
日和:そう!そうなんです!でも、お姉ちゃんはお姉ちゃんだし、
日和:わたしは、わたし。・・・なんですよね。何も、変わらない・・・。
日和:事故のことが頭に浮かぶと、苦しいんですけど、でも・・・。
日和:わたしは、今、ここにいるんだ、って。
小春:・・・そっか。
小春:
小春:(N)たとえ、日和が、アタシの造ったクローンだとしても・・・。
小春:(N)アタシたちは、きっと、変わらないんだろうな。
小春:
小春:日和、これからさ。
日和:はい?
小春:どんなことがしたい?
日和:そう、ですね・・・。
小春:(N)穏やかな、沈黙。
小春:(N)この子の将来の夢、聞いたことなかったよなぁ・・・。
日和:ん、やっぱり・・・学校、行きたいです。
小春:学校?
日和:はい、学校に行って、いっぱいお勉強して、
日和:お姉ちゃんのお仕事のお手伝い、したいです。
小春:アタシの手伝い?
日和:お姉ちゃん、わたしがいないときっとまただらしなくなっちゃいます!
小春:(N)え・・・そういうことが聞きたかったんじゃないんだけど・・・。
小春:(N)ま、いいか。
小春:
小春:あははははは!・・・そっか。まずは学校、だなぁ。
日和:はい!せっかくお姉ちゃんが用意してくれた、2回目の人生だから!
小春:・・・日和、(少しだけ涙ぐむ)・・・ん、そだな。
小春:そろそろ、帰ろうか。夕飯の支度もしなくちゃいけない。
日和:はいっ!今夜はオムライスとかどうですか?
小春:いいねぇ。一緒につくるか。
日和:はい!
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0:-おしまい-
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