台本概要
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タイトル | 【微グロ注意】瞳の国の甘い願い |
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作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 5人用台本(男1、女2、不問2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
瞳の国は目に映る物を動かすことが出来る そしてその瞳で熱を送りお菓子など作ることが出来る 突如、そんな不思議の国に訪れたアイはキャラの濃い人物たちと出会い 真実と現実世界で見てきた記憶と向き合っていく 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 少しグロテスクな表現が含まれてるので苦手じゃなければ楽しんでもらえると助かりますm(_ _)m 707 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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アイ | 女 | 143 | 女 瞳の国を創り上げた女の子 目に映る過去を消したいと思っている ※叫びシーン有り |
サワヤカ | 男 | 72 | 爽やかな王子。文字通りの爽やかさが特徴 女癖は少々悪い |
シンラツ | 女 | 52 | 辛辣なメイド。辛辣なあだ名を付けるのが特徴 裁縫が得意 |
トベル | 不問 | 52 | 飛べない鳥。飛べると思い込んでるけど飛べない ゆるキャラではある |
キサク | 不問 | 41 | 気さくなシェフ。明るく振る舞うのが特徴 料理は最高にうまい |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
アイ:昔昔、そのまた昔、お菓子の美味しい国がありました
アイ:その国は瞳に映るものを動かしたり、冷やしたり暖めたり出来る不思議な魔法が使える国です
アイ:その瞳でタルトの生地を作ったり、生クリームをかき混ぜたり、工夫をすればオーブンで焼いたような熱を送ることが出来るとても素敵な魔法なのです
アイ:でも、これも作り話。私が考えた瞳の国のお話ってだけで、こんなもの現実世界ではありえない話です
アイ:私が作る世界はいつも現実味がない。ただの妄想なのです
アイ:だからただの現実逃避…現実世界では……生きたくないのです
アイ:もう…何も見たくない。いっぱいお菓子を食べて……いっぱい楽しいことして……そのまま………カンナと………
0:【間】
サワヤカ:さあ、その瞳で世界を映してごらん?
アイ:………ん?
キサク:美味しいお菓子を用意して待ってるよー!!
アイ:……誰の声?
シンラツ:そんな厚ぼったい瞼で恥ずかしくないの??
アイ:……誰か話してる?
トベル:飛べる!飛べる!今日こそ飛べるっペ!
アイ:外が騒がしい。寝れないよこんなんじゃ
サワヤカ:そう。そのまま、目を開けるんだ
アイ:…………え?
0:アイが目を覚ますと
アイ:………な、何ここー!
0:目を覚ましたアイの視界にはお菓子の家があった
アイ:いい匂いがするー!バターの香り?バニラの香り?甘い匂いが体に染み渡るよう!ここはどこなんだろう?
トベル:お困りっぺ?お嬢ちゃん
アイ:え?
トベル:え?
アイ:と、鳥が喋った!?
トベル:鳥が喋ったらおかしいっぺ?
アイ:だいぶおかしいでしょ!何者なの!?
トベル:ワシか?ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
アイ:飛べない鳥のトベル!?ややこしい名前だねー
アイ:ねえ、トベル。ここはどこなの?
トベル:んー?この国はお嬢ちゃんもよーく知ってる国だろ?
アイ:………どういうこと?
トベル:知らないっぺ?まあいいよ、王宮まで飛んでみたらわかることっぺ
アイ:王宮まで?
トベル:そう。その王宮に行けば君がこの国に来た理由がわかるっぺ。さあ!ワシに乗れ!飛ぶぞ!
アイ:え?トベル、飛べるの?
トベル:飛べない!!
アイ:飛べないんかい!
トベル:そうだっぺ!ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
アイ:何回も自己紹介いらないよ!じゃあ王宮まで連れてって
トベル:んだっぺ!さあ!乗れ!
アイ:乗っていいの?
トベル:乗るな!ワシが潰れるっぺ!
アイ:どっちなのよー!
トベル:ワシは乗らせない鳥のトベルだっぺ!
アイ:もう、うるさーい!
0:王宮にたどり着く
トベル:王宮に着いたぞー!
アイ:ここが?なんだかまた甘い匂いがする。それに……どこかで見たような王宮だ
トベル:中に入るっぺ
アイ:失礼しまーす
シンラツ:あら、トベル。この方は誰?
トベル:おー!シンラツ!ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
シンラツ:あんたに聞いてないわよ。ポンコツバード。グリルにして調理するわよ?
トベル:シンラツ料理出来ないっぺ!このお嬢ちゃんは例のお嬢ちゃんだっぺ!
シンラツ:例の?
アイ:こ、こんにちはー。トベルに連れられてここに来ました
シンラツ:ふーん。私は辛辣なメイドのシンラツよ
アイ:またややこしい名前……でもないのかな?
シンラツ:汚い顔ね。王宮に入ったらお風呂に入りなさい。
アイ:き、汚い?
0:王宮の中に入る
アイ:ねえ、シンラツさん、この王宮と私、なんの関係があるの?
シンラツ:なんのって。この王宮に見覚えはないのかしら?記憶力ない?それともただの頭の悪いクソアマってこと?
アイ:い、いや。見覚えはあるの。この甘い匂いと大きな王宮。夢なんじゃないかと思うんだけど違うのかな?
シンラツ:夢ならその甘い匂いはどう説明するっていうの?ここはあなたの理想の場所に決まってるわ
アイ:理想の場所……?
シンラツ:さあ。お風呂に入りなさい。この王宮は甘い匂いで溢れてるけどあんたは臭すぎる
アイ:わ、私そんなに臭い!?
0:アイはお風呂に入る
アイ:シャンプーがハニーシロップ?泡立つしベタベタしないけどはちみつの香りがする。洗顔も生クリーム。ボディーソープは練乳かな?
アイ:お菓子の国……どこかで見たことある
0:浴場から出てきたアイはシンラツに案内された部屋に入る
アイ:………ど、どうもー
トベル:あ!お嬢ちゃん!
アイ:こ、この部屋は?
トベル:王子の部屋だっペ!
アイ:お、王子?王様がここに居るの?それに、この部屋の壁、板チョコで出来てるの?
シンラツ:触るんじゃないよ。クソアマ
アイ:あ、シンラツさん
シンラツ:紅茶を用意したわ
アイ:………え?ティーポットが浮いている?
シンラツ:当たり前でしょ?私の瞳に映ってるんだもの。物を動かすなんて容易いわ。考えたらわかるでしょ脳無し女
アイ:………その不思議な能力、どこで手に入れたの?
シンラツ:どこでって……あんた本気で言ってるつもり?
アイ:え?
キサク:はーいどいてどいてー!
アイ:う、うわああ!今度はケーキが浮いてる!?
キサク:なんだいなんだい!小娘ー!どきなさーい!
アイ:どいてるよ!
キサク:わ、わああ!!ケーキがひっくりかえ……らなーい!!私のケーキは全然ひっくり返らなーい!
アイ:いや、ひっくり返ってるよ!?地面に落ちてるし!
キサク:だっはっはっはー!!私のせいじゃない!ひっくり返ったケーキが悪い!そして世の中は景気が悪い!なんつってなー!だっはっはっはー!!
アイ:う、うるさい人だね……この人の名前は?
トベル:ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
アイ:トベルには聞いてないよ!
キサク:私は気さくなシェフのキサクだよー!よろしくピーナッツ!
シンラツ:ちなみに私はこいつが嫌い
キサク:ハッキリ言わないでよシンラツちゃん!
アイ:賑やかなんだね
トベル:おおい!そろそろおやつの時間だっペ!王子がやってくるっぺー!
アイ:王子様?
キサク:あ、ああー!ケーキ持ってこないとー!
0:部屋にある男が入ってくる
サワヤカ:やあ。みんな。相変わらず賑わってるね。席に着いたらどうだい?おやつの時間だ
トベル:王子ー!今日は例のお嬢ちゃんを呼んできたよー!
サワヤカ:ん?例のお嬢ちゃん?
アイ:あ、アイです!こんにちは
サワヤカ:おおー!君がアイか!
アイ:きゃ!
0:サワヤカはアイを抱き寄せる
サワヤカ:待っていたよ。マイスイートハニー。僕は君に会える日を楽しみにしていた
アイ:ど、どうして?私は初めてここにきたんだよ?
サワヤカ:いいや、君はここに何度も訪れているよ。こうやって姿を見せてくれるのは初めてだけどね
アイ:ど、どういうこと?
シンラツ:ニート王子。テーブルに唾が付くのでお喋りもここまでにしなさい
サワヤカ:ああ。そうだったね。ごめんごめん。君に会えたのが嬉しくてつい抱き寄せてしまった
アイ:い、いえ。私は何とも……
サワヤカ:おや?椅子の飾りが取れかかってるじゃないか
トベル:ほんとだっぺ!
サワヤカ:シンラツ。縫っておいてくれ
シンラツ:はい
アイ:か、飾りを縫うの?
シンラツ:私は裁縫が得意だから、これくらい簡単よ
0:シンラツは物凄い速さで飾りを縫い付ける
シンラツ:出来たわよ。ニート王子
アイ:すごい…本当に縫われてる……
サワヤカ:ありがとう。ご褒美に頭を撫でてやろう
シンラツ:気色悪いし気持ち悪いし吐き気がするし虫唾が走るのでやめなさい
サワヤカ:相変わらず辛辣だなー
キサク:さあさあ!皆さん!新しいケーキをご用意しましたよー!食べてお食べになって召し上がれー!
トベル:やったー!ケーキだっぺー!
シンラツ:今度は落とすんじゃないわよ?騒音シェフ
キサク:落とさないよー!そこの小娘には特別にいちごレアチーズタルトを作ったとさー!さあ食べてお食べになって召し上がれー!
アイ:お、美味しそー!本当にいいの?
キサク:うん!飛び上がるくらい美味しいからね!
サワヤカ:よし、じゃあみんな、ケーキを食べよう!
トベル:豆なんていらない!ワシはケーキを食べる鳥のトベルだっぺ!
シンラツ:何よこのケーキ。腐ってるんじゃない?
キサク:腐ってるわけないさー!甘さは絶妙!そしてスポンジは卵の泡立てからこだわりにこだわった!そーしーてー!?どうだい小娘!食べてみてどうだいって聞いてんだ!
アイ:う、うん。パクっ。………美味しい!
キサク:そうだろー!私の作るお菓子はキチガイ!あ、違った。間違いはないのさ!
サワヤカ:キサクはこの国の一流のシェフだ。アイもきっと気に入るはずだよ
アイ:うん!すごく美味しい!
サワヤカ:はっはっは!いい笑顔だね。まるでお姫様みたいだ
アイ:………え?
サワヤカ:ん?どうした?そんなに頬を赤らめて
アイ:い、いや!なんでもない!それにしてもこれ美味しいわ。この丸いものはなんなの?
キサク:これは瞳玉(どうぎょく)と言われるお菓子さ!私の瞳で焼いた特別な生地に特製ソースを掛けた極上の逸品なのさ!!
アイ:瞳で……焼く?
キサク:そう。小娘がその魔法をくれたんだろ?
アイ:………え?何の話?
トベル:君がこの国と不思議な魔法を創り上げた話だっペ!
アイ:…………え?
サワヤカ:この国に見覚えがあるんだろ?
アイ:………うん。私が作ったお話にお菓子の国があった。それで、瞳に映るものを動かしたり冷やしたり温めたり出来る不思議な魔法
サワヤカ:そう。この国を。僕達を創り上げてくれたんだよ。そして不思議な魔法まで与えてくれた
サワヤカ:僕たちにとって君は神同然なのさ!だから君に会えて嬉しいんだよ。
アイ:………サワヤカさん……
シンラツ:私はあんたに会えてちっとも嬉しくないわ。むしろ顔が気持ち悪くて目障りよ
アイ:辛辣すぎるよ……
サワヤカ:とにかく、今日はやっと出会えたアイに祝福をしたいと思っている!みんな準備はいいかな?
シンラツ:いいえ、ニート王子、今日はこの後食材を分けてくれる者が2名ほど来られるみたいよ
トベル:おー!今日も来てくれるっぺ!
キサク:へぇー!トベルやけに張り切ってるなー
トベル:そうだっペ!なんせ2人目の人は高級食材を渡してくれるみたいだっぺ!
サワヤカ:んー。そうか。じゃあ祝福は後にしよう。食材を分けてくれる人は国宝だからね
アイ:食材?国の人たちから貰ってるの?
サワヤカ:そうだよ。まあ僕は立ち会えないからお礼を言うだけになっちゃうんだけどね
キサク:毎回すんげー食材をくれるんだよ!楽しみだー!!
シンラツ:騒音シェフ。遊びでは無いのよ。来たお客様にはおもてなしをしなさい
キサク:当たり前だ!!とびっきりのお菓子を用意するぞー!!
トベル:ワシもクチバシから火炎放射を出してお菓子を焼くっぺ!
アイ:え?トベル火炎放射出せるの?
トベル:出せない!!
アイ:もう!それなんなの!
トベル:ワシは焼けない鳥のトベルだっぺ!
アイ:わかったってば!
サワヤカ:じゃあ、アイ。ここは3人に任せて僕達は外で待とう。
アイ:うん。わかった
0:アイとサワヤカは外に出る
トベル:…………
シンラツ:…………
キサク:…………
シンラツ:さて、騒音シェフは食器類を片付けなさい
キサク:そうだねー!お客さんが来る時は綺麗にしないといけないからね!
トベル:今日も美味しい食材が欲しいっぺ!
0:そして、王宮の扉からノックの音が聞こえる
シンラツ:来たわね。誰か出なさい
キサク:私はお菓子を用意しとくね。トベル。お客さんを中に入れといてくれ
トベル:了解だっペ!
シンラツ:私はいつもの道具を準備するわ。…ふふっ
キサク:なーんか楽しんでない?シンラツちゃん。あの小娘のお友達が来てくれたから?
シンラツ:楽しむに決まってるでしょ。アイとかいうクソアマがここに来た時点で私たちはもうここまでだから。最後まで楽しむのよ。………うふっ
0:一方外では
サワヤカ:ん〜!甘い匂いがするなー。今日もこの国は平和だ
アイ:……………
サワヤカ:ん?どうした?浮かない顔をして
アイ:……この甘い香りは…夢じゃないのかな?って
サワヤカ:夢?……どうして?夢なら甘い香りなんてしないはずだろう
アイ:そう。そのはずなのにどうして私は急にこの国に来たのかわからないの
サワヤカ:そうだなー。例えばだけど、君が僕たちに会いに来た。とかはどうかな?
アイ:………あなた達に?
サワヤカ:そう。君がこの国を創り出したのは間違いないんだ。元々君がどこに居たかは僕らにはわからない
サワヤカ:でも現実世界と自分が創り出した世界が入れ替わることなんてよくある話じゃないかな?
アイ:そんな話…聞いたことないよ
サワヤカ:いいや。そう考えないと辻褄が合わないだろう?君が現実世界での生活に嫌気がさして君が創り出したこの国にやってきた。そう考えるべきじゃないかな?
アイ:………確かに、私は現実世界に嫌気がさしてた…
サワヤカ:そうだろう?君は僕たちにこんな素敵な国と力を与えてくれたんだ。僕だって君と一緒にこの国で暮らしたいさ
アイ:……サワヤカさん…
サワヤカ:さあ。この国のお菓子でも食べて未来のことでも話そうじゃないか!
アイ:うん!私、自分のお話の中に行けると思わなかったからこれからが楽しみ!
サワヤカ:そうだね!
アイ:(M)私は自分が創り出した物語の国に行くことが出来た
アイ:(M)現実世界には戻りたくない。もう二度とあんな目に合いたくない。もう何も見たくない。何も……見たくない
アイ:(M)カンナの……あんな姿も……見たくない
0:王宮では一一
シンラツ:さあ、そこに寝なさい。大丈夫。私は裁縫が得意だから痛くしないわよ
トベル:おおー!最高の食材だっぺ!ワシは食材をつつく鳥のトベルだっぺ!
キサク:その取れたてホヤホヤの食材を特製ソースに付けてーっと!んー!!美味しそうな匂いだぁー!
シンラツ:うふっ。可愛い顔してるじゃない
トベル:シンラツが褒めるなんて珍しいっペ!
シンラツ:私はこうして食材を渡してくれる人達のこの顔が好きなのよ。幸せそうな顔してるじゃない
キサク:確かにね。じゃあ早速食材を食べさせてあげるよ。そして恍惚(こうこつ)な表情でよだれを垂らしておくれ!
シンラツ:………2人目のお客様、早く来ないかしら?
0:王宮に向かうアイとサワヤカ
アイ:………だからね、私は現実世界にはもう戻りたくないの
サワヤカ:……そんなことがあったなんてね。それは酷く悲しい出来事だ。
アイ:でももう、私はこの国で一生暮らすって決めたから!きっとまた新しい人生が始まったのよ!この願いは…私の叶わない願いよ
サワヤカ:新しい……人生ね。君の願いは僕が叶えてあげたい
アイ:いや、私の願いなんて叶えなくていいよ。私はあなた達に出会えただけでとっても嬉しい。私の作ったこの国に行けただけでも最高の気分なの
サワヤカ:だからこそだよ。僕だって君に会えた事が嬉しいんだ!君のその願いで僕達はもっと幸せに生きることが出来るはずだ!だから君の望んでいることを教えて欲しい
アイ:………そう。じゃあ分かったわ。ええ。みんないい人達だもんね。あんなやつらとは訳が違う。私の作ったこの国はいい人達ばかりよ!
アイ:私の願いはただ一つ。現実世界の人達を殺して欲しい
サワヤカ:………わかった。僕の瞳を見て?
アイ:ん?
サワヤカ:僕のこの瞳は君の願いを、望んでいることを真実にする瞳なのさ。王の僕にしか出来ない魔法だ
アイ:………私の願いを…真実に?
サワヤカ:うん。僕の瞳の中に君を招待するよ
アイ:ありがとう。私は今、心強い味方が居て安心してるよ
サワヤカ:うん。君に真実を見せてあげる
0:アイはサワヤカの瞳の中に入る
キサク:さあて!甘い香りがしてきたぞ〜!
トベル:いい焼き加減だっペ!
シンラツ:あんたが焼いてるわけじゃないでしょポンコツバード
キサク:お?そろそろお客さんが来たかなー?
トベル:ほんとだっぺ!高級食材を渡してくれるお客さんだっペ!
シンラツ:遅かったじゃない、ニート王子
サワヤカ:ごめんごめん。アイの昔話を聞いてたらこんな時間になってしまった
アイ:………サワヤカさん?ここ王宮じゃない。私の嫌いな人達は?
サワヤカ:ん?ああ。君の嫌いな人達はここには居ないよ?
アイ:………どうして?話が違う。現実世界の人達を殺して欲しい。それが私の願いだよ?
サワヤカ:ここは現実世界ではない。君の作りあげた世界だ。だから君の嫌いな人は殺せないよ。
サワヤカ:………それに、君はもう現実世界には戻れないしね
アイ:…………え?
サワヤカ:ま、君はここで一生暮らすって言ってくれてたもんね!それが本望ならそれでいいじゃないか。ね?
アイ:………うっ!
0:サワヤカがアイを見つめる
アイ:動かない……
サワヤカ:瞳に映るものを動かすことが出来る。それは逆に動かなくすることも出来るんだよ。君が僕たちにくれた魔法さ。ありがとう
アイ:そうだけど……どうしてそんなことするの?
サワヤカ:君の願いを叶えるためさ
アイ:………どういうこと?
シンラツ:あんたの瞳には何が映ってたのかしら?興味無いけどろくなことが無かったのは確かね
アイ:………シンラツさん?な、何をするの?
シンラツ:大丈夫。私は裁縫が得意だから痛くしないわよ
0:シンラツはアイのまぶたに針を刺す
アイ:いやあああ!!痛い!
シンラツ:大人しくしなさい
アイ:何してるの!?やめて!!
シンラツ:あんたの瞳が閉じないようにまぶたを縫ってるのよ
アイ:どうして!!
シンラツ:あんたの願いを叶えるためよ
アイ:こんなこと望んでないよ!!
シンラツ:まぶたを縫ったわ。これで閉じることは出来ない
アイ:いや!やめて!!
トベル:お嬢ちゃんの食材は高級食材だっぺ!いっただっきまーす!
0:トベルはアイの目をつつく
アイ:いたあああい!!!トベル!!やめて!!!
トベル:やっぱり最高級の食材だっぺ!ワシは食材をつつく鳥のトベルだっぺ!
アイ:そんなつついたら……目が……!!
トベル:あともうちょっとだっぺー!
アイ:いやああああああああぁぁぁ!!!
トベル:取れたっぺー!
アイ:………あ……っ!どうして……
キサク:綺麗に食材を取ってくれたねぇー!じゃあここに特製ソースを絡ませるよー!
アイ:………は?
キサク:その取れたてホヤホヤの食材を特製ソースに付けてーっと!んー!!美味しそうな匂いだぁー!
アイ:………ちょっと…!
キサク:じゃあ早速食材を食べさせてあげるよ。そして恍惚(こうこつ)な表情でよだれを垂らしておくれ!
アイ:何しようとしてるの!!
シンラツ:可愛い顔してるわね。んふふっ!
トベル:高級食材を食べれるなんてお嬢ちゃんはラッキーだっぺ!
キサク:私も食べてみたいよー!この国を創った神様みたいな存在のその瞳を
アイ:瞳を……食べる?
キサク:あれー?小娘よ。瞳玉(どうぎょく)を食べたじゃないか。忘れたのかー?
アイ:………あれは…人の目だったの?
キサク:そうだよー!食材を渡してくれる人達の瞳なんだ!
アイ:………あ……あぁ……
アイ:うわああああああああ!!!!
サワヤカ:暴れないでよアイ。君の願いを叶えてあげるんだから
アイ:だから!!こんなこと望んでないって言ってるでしょ!!
サワヤカ:君の瞳には何が映っていた?
アイ:………
サワヤカ:さっき話してくれてたでしょ?
アイ:………イオリと…カンナが………
サワヤカ:うんうん。そうだね。酷く悲しい事があったのは間違いない
サワヤカ:だからこそ、君の悲しみも、怒りも、憎しみも、その瞳に映ったものを全て飲み込むのさ
アイ:………っ!
サワヤカ:飲み込んで、我慢して、限界を迎えて、終わりを迎えた君だから、ここに居る。
サワヤカ:君が望む現実世界の人達を殺す事なんて叶わない願いさ、だって君はもう死んでいるのだから
アイ:…………え?
サワヤカ:さあ、キサクの特製ソースを付けた君の瞳玉を飲み込もう。どうせ死んでいるのだから受け入れるしかないさ
アイ:じゃあどうして!痛みがあるの!?どうして甘い香りがするの!?
サワヤカ:甘い香りは現実世界の思い出。痛みは現実世界の心の痛みさ
アイ:………何それ
サワヤカ:この痛みに耐えられなかったから君は死んだんだろ?じゃあまた死んじゃうかもね
アイ:………やだよ…やだ!やだああああーー!!
アイ:イオリを殺して!!カンナを助けてあげて!!お願いだよ!カンナだって今頃!!
サワヤカ:そのカンナって子の瞳は今、片方はここにあるよ
アイ:…………え?
キサク:さっき食材をくれた人だよ!彼女は美味しそうに瞳を食べていた。嬉しかったなー!
シンラツ:さすがの私もあの子は可愛いと思ったわ
トベル:まあもう死んだけどね
アイ:……カンナが…死んだ?
サワヤカ:うん。君のお友達はもう死んだ。痛みもなければ匂いもしていなかったみたいだけどね
アイ:…………うっ…ううぅぅぅー!
サワヤカ:泣かないでおくれ。君の涙で瞳玉が濡れてしまう。今度は君の番だから。さあ。口を開けて
0:サワヤカは瞳の魔法でアイの口を開かせる
アイ:カンナ……
サワヤカ:さあ。酷く悲しい甘みの詰まった瞳玉を食べてくれ
アイ:…………いただきます。……っ
シンラツ:あんたもなかなか可愛い顔するじゃない
トベル:お味はどうだっぺー?
アイ:………美味しい
サワヤカ:そうかそうか!よかった。じゃあさっき出来なかったアイとの出会いに祝福をしようじゃないか!!
アイ:………あはは……怒りの味がする…孤独の味がする…みんな……みんな死ね!!死ね!!死ね死ね死ね死ね死ね!!あいつらも!!それを見て見ぬふりしてた大人たちも!!全員死ねー!!
シンラツ:………いい表情ね
キサク:みんなー!準備するよー!ほらほらテーブルへ集まれー!
アイ:私が……カンナを守ってあげられたら……イオリを突き飛ばしてたら……
アイ:イオリの……周りの人達を全員…殺しとけば……
アイ:あ……あぁ……ああああああー!!!
サワヤカ:あっははははは!!!美味しそうに食べるね。恍惚(こうこつ)の表情とはこの事だ!
シンラツ:たまらないわ!私にも分けてちょうだい!
トベル:ワシもワシもー!ワシは鷲ではない鳥のトベルだっぺ!
キサク:こんなに喜んでもらえるなんて、幸せピーナッツ!
サワヤカ:色んな味を噛み締めて、共に朽ちていこう。アイ
0:アイの視界は暗くなる
アイ:生きていれば必ず報われると誰かが言った
サワヤカ:幸せを願い続けると幸福がやってくると誰かが言った
シンラツ:愛を乞うことは人の人生だと誰かが言った
トベル:希望を持つことは命を読むことだと誰かが言った
キサク:笑いかけることは心を洗うことだと誰かが言った
アイ:遠いお話は未来と絶望の味
サワヤカ:鋭利な戯言にうつつを抜かし
シンラツ:時たま現れる雲のような綿菓子
トベル:道草を辿る子供たちのように
キサク:無邪気な心を半分に折り曲げたりして
アイ:高い場所が好きなら目線は高くあれと
サワヤカ:寒い所が好きなら人肌もいらないと
シンラツ:一人で背負った重い苦玉を
トベル:飴玉のように溶かしてみても
キサク:気づいた時にはりんご飴
アイ:無いなら作ればよかったんだ
サワヤカ:誰もが羨むとびきりのお菓子を
シンラツ:嘘と空口(からくち)のバターを溶かし
トベル:ほろ苦い暴言のココアパウダー
キサク:痛みを感じる砂糖の塊
アイ:机の上にはチョコペンと
サワヤカ:飴で作られた花飾り
シンラツ:頭でシュガーシロップを浴びて
トベル:ミルクでまろやかになじませる
キサク:熱で膨らむ痛みの生地は
アイ:瞳の中でいただきます
0:【間】
サワヤカ:さあ。食事の時間だ
シンラツ:ヨダレなんて垂らして汚いわ
トベル:ワシは汚くない鳥のトベルだっぺ!
キサク:んー!さすが高級食材は美味しいねぇー!
サワヤカ:ありがとう。アイ。そして
サワヤカ:お粗末さま
0:〜END〜
アイ:昔昔、そのまた昔、お菓子の美味しい国がありました
アイ:その国は瞳に映るものを動かしたり、冷やしたり暖めたり出来る不思議な魔法が使える国です
アイ:その瞳でタルトの生地を作ったり、生クリームをかき混ぜたり、工夫をすればオーブンで焼いたような熱を送ることが出来るとても素敵な魔法なのです
アイ:でも、これも作り話。私が考えた瞳の国のお話ってだけで、こんなもの現実世界ではありえない話です
アイ:私が作る世界はいつも現実味がない。ただの妄想なのです
アイ:だからただの現実逃避…現実世界では……生きたくないのです
アイ:もう…何も見たくない。いっぱいお菓子を食べて……いっぱい楽しいことして……そのまま………カンナと………
0:【間】
サワヤカ:さあ、その瞳で世界を映してごらん?
アイ:………ん?
キサク:美味しいお菓子を用意して待ってるよー!!
アイ:……誰の声?
シンラツ:そんな厚ぼったい瞼で恥ずかしくないの??
アイ:……誰か話してる?
トベル:飛べる!飛べる!今日こそ飛べるっペ!
アイ:外が騒がしい。寝れないよこんなんじゃ
サワヤカ:そう。そのまま、目を開けるんだ
アイ:…………え?
0:アイが目を覚ますと
アイ:………な、何ここー!
0:目を覚ましたアイの視界にはお菓子の家があった
アイ:いい匂いがするー!バターの香り?バニラの香り?甘い匂いが体に染み渡るよう!ここはどこなんだろう?
トベル:お困りっぺ?お嬢ちゃん
アイ:え?
トベル:え?
アイ:と、鳥が喋った!?
トベル:鳥が喋ったらおかしいっぺ?
アイ:だいぶおかしいでしょ!何者なの!?
トベル:ワシか?ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
アイ:飛べない鳥のトベル!?ややこしい名前だねー
アイ:ねえ、トベル。ここはどこなの?
トベル:んー?この国はお嬢ちゃんもよーく知ってる国だろ?
アイ:………どういうこと?
トベル:知らないっぺ?まあいいよ、王宮まで飛んでみたらわかることっぺ
アイ:王宮まで?
トベル:そう。その王宮に行けば君がこの国に来た理由がわかるっぺ。さあ!ワシに乗れ!飛ぶぞ!
アイ:え?トベル、飛べるの?
トベル:飛べない!!
アイ:飛べないんかい!
トベル:そうだっぺ!ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
アイ:何回も自己紹介いらないよ!じゃあ王宮まで連れてって
トベル:んだっぺ!さあ!乗れ!
アイ:乗っていいの?
トベル:乗るな!ワシが潰れるっぺ!
アイ:どっちなのよー!
トベル:ワシは乗らせない鳥のトベルだっぺ!
アイ:もう、うるさーい!
0:王宮にたどり着く
トベル:王宮に着いたぞー!
アイ:ここが?なんだかまた甘い匂いがする。それに……どこかで見たような王宮だ
トベル:中に入るっぺ
アイ:失礼しまーす
シンラツ:あら、トベル。この方は誰?
トベル:おー!シンラツ!ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
シンラツ:あんたに聞いてないわよ。ポンコツバード。グリルにして調理するわよ?
トベル:シンラツ料理出来ないっぺ!このお嬢ちゃんは例のお嬢ちゃんだっぺ!
シンラツ:例の?
アイ:こ、こんにちはー。トベルに連れられてここに来ました
シンラツ:ふーん。私は辛辣なメイドのシンラツよ
アイ:またややこしい名前……でもないのかな?
シンラツ:汚い顔ね。王宮に入ったらお風呂に入りなさい。
アイ:き、汚い?
0:王宮の中に入る
アイ:ねえ、シンラツさん、この王宮と私、なんの関係があるの?
シンラツ:なんのって。この王宮に見覚えはないのかしら?記憶力ない?それともただの頭の悪いクソアマってこと?
アイ:い、いや。見覚えはあるの。この甘い匂いと大きな王宮。夢なんじゃないかと思うんだけど違うのかな?
シンラツ:夢ならその甘い匂いはどう説明するっていうの?ここはあなたの理想の場所に決まってるわ
アイ:理想の場所……?
シンラツ:さあ。お風呂に入りなさい。この王宮は甘い匂いで溢れてるけどあんたは臭すぎる
アイ:わ、私そんなに臭い!?
0:アイはお風呂に入る
アイ:シャンプーがハニーシロップ?泡立つしベタベタしないけどはちみつの香りがする。洗顔も生クリーム。ボディーソープは練乳かな?
アイ:お菓子の国……どこかで見たことある
0:浴場から出てきたアイはシンラツに案内された部屋に入る
アイ:………ど、どうもー
トベル:あ!お嬢ちゃん!
アイ:こ、この部屋は?
トベル:王子の部屋だっペ!
アイ:お、王子?王様がここに居るの?それに、この部屋の壁、板チョコで出来てるの?
シンラツ:触るんじゃないよ。クソアマ
アイ:あ、シンラツさん
シンラツ:紅茶を用意したわ
アイ:………え?ティーポットが浮いている?
シンラツ:当たり前でしょ?私の瞳に映ってるんだもの。物を動かすなんて容易いわ。考えたらわかるでしょ脳無し女
アイ:………その不思議な能力、どこで手に入れたの?
シンラツ:どこでって……あんた本気で言ってるつもり?
アイ:え?
キサク:はーいどいてどいてー!
アイ:う、うわああ!今度はケーキが浮いてる!?
キサク:なんだいなんだい!小娘ー!どきなさーい!
アイ:どいてるよ!
キサク:わ、わああ!!ケーキがひっくりかえ……らなーい!!私のケーキは全然ひっくり返らなーい!
アイ:いや、ひっくり返ってるよ!?地面に落ちてるし!
キサク:だっはっはっはー!!私のせいじゃない!ひっくり返ったケーキが悪い!そして世の中は景気が悪い!なんつってなー!だっはっはっはー!!
アイ:う、うるさい人だね……この人の名前は?
トベル:ワシは飛べない鳥のトベルだっぺ!
アイ:トベルには聞いてないよ!
キサク:私は気さくなシェフのキサクだよー!よろしくピーナッツ!
シンラツ:ちなみに私はこいつが嫌い
キサク:ハッキリ言わないでよシンラツちゃん!
アイ:賑やかなんだね
トベル:おおい!そろそろおやつの時間だっペ!王子がやってくるっぺー!
アイ:王子様?
キサク:あ、ああー!ケーキ持ってこないとー!
0:部屋にある男が入ってくる
サワヤカ:やあ。みんな。相変わらず賑わってるね。席に着いたらどうだい?おやつの時間だ
トベル:王子ー!今日は例のお嬢ちゃんを呼んできたよー!
サワヤカ:ん?例のお嬢ちゃん?
アイ:あ、アイです!こんにちは
サワヤカ:おおー!君がアイか!
アイ:きゃ!
0:サワヤカはアイを抱き寄せる
サワヤカ:待っていたよ。マイスイートハニー。僕は君に会える日を楽しみにしていた
アイ:ど、どうして?私は初めてここにきたんだよ?
サワヤカ:いいや、君はここに何度も訪れているよ。こうやって姿を見せてくれるのは初めてだけどね
アイ:ど、どういうこと?
シンラツ:ニート王子。テーブルに唾が付くのでお喋りもここまでにしなさい
サワヤカ:ああ。そうだったね。ごめんごめん。君に会えたのが嬉しくてつい抱き寄せてしまった
アイ:い、いえ。私は何とも……
サワヤカ:おや?椅子の飾りが取れかかってるじゃないか
トベル:ほんとだっぺ!
サワヤカ:シンラツ。縫っておいてくれ
シンラツ:はい
アイ:か、飾りを縫うの?
シンラツ:私は裁縫が得意だから、これくらい簡単よ
0:シンラツは物凄い速さで飾りを縫い付ける
シンラツ:出来たわよ。ニート王子
アイ:すごい…本当に縫われてる……
サワヤカ:ありがとう。ご褒美に頭を撫でてやろう
シンラツ:気色悪いし気持ち悪いし吐き気がするし虫唾が走るのでやめなさい
サワヤカ:相変わらず辛辣だなー
キサク:さあさあ!皆さん!新しいケーキをご用意しましたよー!食べてお食べになって召し上がれー!
トベル:やったー!ケーキだっぺー!
シンラツ:今度は落とすんじゃないわよ?騒音シェフ
キサク:落とさないよー!そこの小娘には特別にいちごレアチーズタルトを作ったとさー!さあ食べてお食べになって召し上がれー!
アイ:お、美味しそー!本当にいいの?
キサク:うん!飛び上がるくらい美味しいからね!
サワヤカ:よし、じゃあみんな、ケーキを食べよう!
トベル:豆なんていらない!ワシはケーキを食べる鳥のトベルだっぺ!
シンラツ:何よこのケーキ。腐ってるんじゃない?
キサク:腐ってるわけないさー!甘さは絶妙!そしてスポンジは卵の泡立てからこだわりにこだわった!そーしーてー!?どうだい小娘!食べてみてどうだいって聞いてんだ!
アイ:う、うん。パクっ。………美味しい!
キサク:そうだろー!私の作るお菓子はキチガイ!あ、違った。間違いはないのさ!
サワヤカ:キサクはこの国の一流のシェフだ。アイもきっと気に入るはずだよ
アイ:うん!すごく美味しい!
サワヤカ:はっはっは!いい笑顔だね。まるでお姫様みたいだ
アイ:………え?
サワヤカ:ん?どうした?そんなに頬を赤らめて
アイ:い、いや!なんでもない!それにしてもこれ美味しいわ。この丸いものはなんなの?
キサク:これは瞳玉(どうぎょく)と言われるお菓子さ!私の瞳で焼いた特別な生地に特製ソースを掛けた極上の逸品なのさ!!
アイ:瞳で……焼く?
キサク:そう。小娘がその魔法をくれたんだろ?
アイ:………え?何の話?
トベル:君がこの国と不思議な魔法を創り上げた話だっペ!
アイ:…………え?
サワヤカ:この国に見覚えがあるんだろ?
アイ:………うん。私が作ったお話にお菓子の国があった。それで、瞳に映るものを動かしたり冷やしたり温めたり出来る不思議な魔法
サワヤカ:そう。この国を。僕達を創り上げてくれたんだよ。そして不思議な魔法まで与えてくれた
サワヤカ:僕たちにとって君は神同然なのさ!だから君に会えて嬉しいんだよ。
アイ:………サワヤカさん……
シンラツ:私はあんたに会えてちっとも嬉しくないわ。むしろ顔が気持ち悪くて目障りよ
アイ:辛辣すぎるよ……
サワヤカ:とにかく、今日はやっと出会えたアイに祝福をしたいと思っている!みんな準備はいいかな?
シンラツ:いいえ、ニート王子、今日はこの後食材を分けてくれる者が2名ほど来られるみたいよ
トベル:おー!今日も来てくれるっぺ!
キサク:へぇー!トベルやけに張り切ってるなー
トベル:そうだっペ!なんせ2人目の人は高級食材を渡してくれるみたいだっぺ!
サワヤカ:んー。そうか。じゃあ祝福は後にしよう。食材を分けてくれる人は国宝だからね
アイ:食材?国の人たちから貰ってるの?
サワヤカ:そうだよ。まあ僕は立ち会えないからお礼を言うだけになっちゃうんだけどね
キサク:毎回すんげー食材をくれるんだよ!楽しみだー!!
シンラツ:騒音シェフ。遊びでは無いのよ。来たお客様にはおもてなしをしなさい
キサク:当たり前だ!!とびっきりのお菓子を用意するぞー!!
トベル:ワシもクチバシから火炎放射を出してお菓子を焼くっぺ!
アイ:え?トベル火炎放射出せるの?
トベル:出せない!!
アイ:もう!それなんなの!
トベル:ワシは焼けない鳥のトベルだっぺ!
アイ:わかったってば!
サワヤカ:じゃあ、アイ。ここは3人に任せて僕達は外で待とう。
アイ:うん。わかった
0:アイとサワヤカは外に出る
トベル:…………
シンラツ:…………
キサク:…………
シンラツ:さて、騒音シェフは食器類を片付けなさい
キサク:そうだねー!お客さんが来る時は綺麗にしないといけないからね!
トベル:今日も美味しい食材が欲しいっぺ!
0:そして、王宮の扉からノックの音が聞こえる
シンラツ:来たわね。誰か出なさい
キサク:私はお菓子を用意しとくね。トベル。お客さんを中に入れといてくれ
トベル:了解だっペ!
シンラツ:私はいつもの道具を準備するわ。…ふふっ
キサク:なーんか楽しんでない?シンラツちゃん。あの小娘のお友達が来てくれたから?
シンラツ:楽しむに決まってるでしょ。アイとかいうクソアマがここに来た時点で私たちはもうここまでだから。最後まで楽しむのよ。………うふっ
0:一方外では
サワヤカ:ん〜!甘い匂いがするなー。今日もこの国は平和だ
アイ:……………
サワヤカ:ん?どうした?浮かない顔をして
アイ:……この甘い香りは…夢じゃないのかな?って
サワヤカ:夢?……どうして?夢なら甘い香りなんてしないはずだろう
アイ:そう。そのはずなのにどうして私は急にこの国に来たのかわからないの
サワヤカ:そうだなー。例えばだけど、君が僕たちに会いに来た。とかはどうかな?
アイ:………あなた達に?
サワヤカ:そう。君がこの国を創り出したのは間違いないんだ。元々君がどこに居たかは僕らにはわからない
サワヤカ:でも現実世界と自分が創り出した世界が入れ替わることなんてよくある話じゃないかな?
アイ:そんな話…聞いたことないよ
サワヤカ:いいや。そう考えないと辻褄が合わないだろう?君が現実世界での生活に嫌気がさして君が創り出したこの国にやってきた。そう考えるべきじゃないかな?
アイ:………確かに、私は現実世界に嫌気がさしてた…
サワヤカ:そうだろう?君は僕たちにこんな素敵な国と力を与えてくれたんだ。僕だって君と一緒にこの国で暮らしたいさ
アイ:……サワヤカさん…
サワヤカ:さあ。この国のお菓子でも食べて未来のことでも話そうじゃないか!
アイ:うん!私、自分のお話の中に行けると思わなかったからこれからが楽しみ!
サワヤカ:そうだね!
アイ:(M)私は自分が創り出した物語の国に行くことが出来た
アイ:(M)現実世界には戻りたくない。もう二度とあんな目に合いたくない。もう何も見たくない。何も……見たくない
アイ:(M)カンナの……あんな姿も……見たくない
0:王宮では一一
シンラツ:さあ、そこに寝なさい。大丈夫。私は裁縫が得意だから痛くしないわよ
トベル:おおー!最高の食材だっぺ!ワシは食材をつつく鳥のトベルだっぺ!
キサク:その取れたてホヤホヤの食材を特製ソースに付けてーっと!んー!!美味しそうな匂いだぁー!
シンラツ:うふっ。可愛い顔してるじゃない
トベル:シンラツが褒めるなんて珍しいっペ!
シンラツ:私はこうして食材を渡してくれる人達のこの顔が好きなのよ。幸せそうな顔してるじゃない
キサク:確かにね。じゃあ早速食材を食べさせてあげるよ。そして恍惚(こうこつ)な表情でよだれを垂らしておくれ!
シンラツ:………2人目のお客様、早く来ないかしら?
0:王宮に向かうアイとサワヤカ
アイ:………だからね、私は現実世界にはもう戻りたくないの
サワヤカ:……そんなことがあったなんてね。それは酷く悲しい出来事だ。
アイ:でももう、私はこの国で一生暮らすって決めたから!きっとまた新しい人生が始まったのよ!この願いは…私の叶わない願いよ
サワヤカ:新しい……人生ね。君の願いは僕が叶えてあげたい
アイ:いや、私の願いなんて叶えなくていいよ。私はあなた達に出会えただけでとっても嬉しい。私の作ったこの国に行けただけでも最高の気分なの
サワヤカ:だからこそだよ。僕だって君に会えた事が嬉しいんだ!君のその願いで僕達はもっと幸せに生きることが出来るはずだ!だから君の望んでいることを教えて欲しい
アイ:………そう。じゃあ分かったわ。ええ。みんないい人達だもんね。あんなやつらとは訳が違う。私の作ったこの国はいい人達ばかりよ!
アイ:私の願いはただ一つ。現実世界の人達を殺して欲しい
サワヤカ:………わかった。僕の瞳を見て?
アイ:ん?
サワヤカ:僕のこの瞳は君の願いを、望んでいることを真実にする瞳なのさ。王の僕にしか出来ない魔法だ
アイ:………私の願いを…真実に?
サワヤカ:うん。僕の瞳の中に君を招待するよ
アイ:ありがとう。私は今、心強い味方が居て安心してるよ
サワヤカ:うん。君に真実を見せてあげる
0:アイはサワヤカの瞳の中に入る
キサク:さあて!甘い香りがしてきたぞ〜!
トベル:いい焼き加減だっペ!
シンラツ:あんたが焼いてるわけじゃないでしょポンコツバード
キサク:お?そろそろお客さんが来たかなー?
トベル:ほんとだっぺ!高級食材を渡してくれるお客さんだっペ!
シンラツ:遅かったじゃない、ニート王子
サワヤカ:ごめんごめん。アイの昔話を聞いてたらこんな時間になってしまった
アイ:………サワヤカさん?ここ王宮じゃない。私の嫌いな人達は?
サワヤカ:ん?ああ。君の嫌いな人達はここには居ないよ?
アイ:………どうして?話が違う。現実世界の人達を殺して欲しい。それが私の願いだよ?
サワヤカ:ここは現実世界ではない。君の作りあげた世界だ。だから君の嫌いな人は殺せないよ。
サワヤカ:………それに、君はもう現実世界には戻れないしね
アイ:…………え?
サワヤカ:ま、君はここで一生暮らすって言ってくれてたもんね!それが本望ならそれでいいじゃないか。ね?
アイ:………うっ!
0:サワヤカがアイを見つめる
アイ:動かない……
サワヤカ:瞳に映るものを動かすことが出来る。それは逆に動かなくすることも出来るんだよ。君が僕たちにくれた魔法さ。ありがとう
アイ:そうだけど……どうしてそんなことするの?
サワヤカ:君の願いを叶えるためさ
アイ:………どういうこと?
シンラツ:あんたの瞳には何が映ってたのかしら?興味無いけどろくなことが無かったのは確かね
アイ:………シンラツさん?な、何をするの?
シンラツ:大丈夫。私は裁縫が得意だから痛くしないわよ
0:シンラツはアイのまぶたに針を刺す
アイ:いやあああ!!痛い!
シンラツ:大人しくしなさい
アイ:何してるの!?やめて!!
シンラツ:あんたの瞳が閉じないようにまぶたを縫ってるのよ
アイ:どうして!!
シンラツ:あんたの願いを叶えるためよ
アイ:こんなこと望んでないよ!!
シンラツ:まぶたを縫ったわ。これで閉じることは出来ない
アイ:いや!やめて!!
トベル:お嬢ちゃんの食材は高級食材だっぺ!いっただっきまーす!
0:トベルはアイの目をつつく
アイ:いたあああい!!!トベル!!やめて!!!
トベル:やっぱり最高級の食材だっぺ!ワシは食材をつつく鳥のトベルだっぺ!
アイ:そんなつついたら……目が……!!
トベル:あともうちょっとだっぺー!
アイ:いやああああああああぁぁぁ!!!
トベル:取れたっぺー!
アイ:………あ……っ!どうして……
キサク:綺麗に食材を取ってくれたねぇー!じゃあここに特製ソースを絡ませるよー!
アイ:………は?
キサク:その取れたてホヤホヤの食材を特製ソースに付けてーっと!んー!!美味しそうな匂いだぁー!
アイ:………ちょっと…!
キサク:じゃあ早速食材を食べさせてあげるよ。そして恍惚(こうこつ)な表情でよだれを垂らしておくれ!
アイ:何しようとしてるの!!
シンラツ:可愛い顔してるわね。んふふっ!
トベル:高級食材を食べれるなんてお嬢ちゃんはラッキーだっぺ!
キサク:私も食べてみたいよー!この国を創った神様みたいな存在のその瞳を
アイ:瞳を……食べる?
キサク:あれー?小娘よ。瞳玉(どうぎょく)を食べたじゃないか。忘れたのかー?
アイ:………あれは…人の目だったの?
キサク:そうだよー!食材を渡してくれる人達の瞳なんだ!
アイ:………あ……あぁ……
アイ:うわああああああああ!!!!
サワヤカ:暴れないでよアイ。君の願いを叶えてあげるんだから
アイ:だから!!こんなこと望んでないって言ってるでしょ!!
サワヤカ:君の瞳には何が映っていた?
アイ:………
サワヤカ:さっき話してくれてたでしょ?
アイ:………イオリと…カンナが………
サワヤカ:うんうん。そうだね。酷く悲しい事があったのは間違いない
サワヤカ:だからこそ、君の悲しみも、怒りも、憎しみも、その瞳に映ったものを全て飲み込むのさ
アイ:………っ!
サワヤカ:飲み込んで、我慢して、限界を迎えて、終わりを迎えた君だから、ここに居る。
サワヤカ:君が望む現実世界の人達を殺す事なんて叶わない願いさ、だって君はもう死んでいるのだから
アイ:…………え?
サワヤカ:さあ、キサクの特製ソースを付けた君の瞳玉を飲み込もう。どうせ死んでいるのだから受け入れるしかないさ
アイ:じゃあどうして!痛みがあるの!?どうして甘い香りがするの!?
サワヤカ:甘い香りは現実世界の思い出。痛みは現実世界の心の痛みさ
アイ:………何それ
サワヤカ:この痛みに耐えられなかったから君は死んだんだろ?じゃあまた死んじゃうかもね
アイ:………やだよ…やだ!やだああああーー!!
アイ:イオリを殺して!!カンナを助けてあげて!!お願いだよ!カンナだって今頃!!
サワヤカ:そのカンナって子の瞳は今、片方はここにあるよ
アイ:…………え?
キサク:さっき食材をくれた人だよ!彼女は美味しそうに瞳を食べていた。嬉しかったなー!
シンラツ:さすがの私もあの子は可愛いと思ったわ
トベル:まあもう死んだけどね
アイ:……カンナが…死んだ?
サワヤカ:うん。君のお友達はもう死んだ。痛みもなければ匂いもしていなかったみたいだけどね
アイ:…………うっ…ううぅぅぅー!
サワヤカ:泣かないでおくれ。君の涙で瞳玉が濡れてしまう。今度は君の番だから。さあ。口を開けて
0:サワヤカは瞳の魔法でアイの口を開かせる
アイ:カンナ……
サワヤカ:さあ。酷く悲しい甘みの詰まった瞳玉を食べてくれ
アイ:…………いただきます。……っ
シンラツ:あんたもなかなか可愛い顔するじゃない
トベル:お味はどうだっぺー?
アイ:………美味しい
サワヤカ:そうかそうか!よかった。じゃあさっき出来なかったアイとの出会いに祝福をしようじゃないか!!
アイ:………あはは……怒りの味がする…孤独の味がする…みんな……みんな死ね!!死ね!!死ね死ね死ね死ね死ね!!あいつらも!!それを見て見ぬふりしてた大人たちも!!全員死ねー!!
シンラツ:………いい表情ね
キサク:みんなー!準備するよー!ほらほらテーブルへ集まれー!
アイ:私が……カンナを守ってあげられたら……イオリを突き飛ばしてたら……
アイ:イオリの……周りの人達を全員…殺しとけば……
アイ:あ……あぁ……ああああああー!!!
サワヤカ:あっははははは!!!美味しそうに食べるね。恍惚(こうこつ)の表情とはこの事だ!
シンラツ:たまらないわ!私にも分けてちょうだい!
トベル:ワシもワシもー!ワシは鷲ではない鳥のトベルだっぺ!
キサク:こんなに喜んでもらえるなんて、幸せピーナッツ!
サワヤカ:色んな味を噛み締めて、共に朽ちていこう。アイ
0:アイの視界は暗くなる
アイ:生きていれば必ず報われると誰かが言った
サワヤカ:幸せを願い続けると幸福がやってくると誰かが言った
シンラツ:愛を乞うことは人の人生だと誰かが言った
トベル:希望を持つことは命を読むことだと誰かが言った
キサク:笑いかけることは心を洗うことだと誰かが言った
アイ:遠いお話は未来と絶望の味
サワヤカ:鋭利な戯言にうつつを抜かし
シンラツ:時たま現れる雲のような綿菓子
トベル:道草を辿る子供たちのように
キサク:無邪気な心を半分に折り曲げたりして
アイ:高い場所が好きなら目線は高くあれと
サワヤカ:寒い所が好きなら人肌もいらないと
シンラツ:一人で背負った重い苦玉を
トベル:飴玉のように溶かしてみても
キサク:気づいた時にはりんご飴
アイ:無いなら作ればよかったんだ
サワヤカ:誰もが羨むとびきりのお菓子を
シンラツ:嘘と空口(からくち)のバターを溶かし
トベル:ほろ苦い暴言のココアパウダー
キサク:痛みを感じる砂糖の塊
アイ:机の上にはチョコペンと
サワヤカ:飴で作られた花飾り
シンラツ:頭でシュガーシロップを浴びて
トベル:ミルクでまろやかになじませる
キサク:熱で膨らむ痛みの生地は
アイ:瞳の中でいただきます
0:【間】
サワヤカ:さあ。食事の時間だ
シンラツ:ヨダレなんて垂らして汚いわ
トベル:ワシは汚くない鳥のトベルだっぺ!
キサク:んー!さすが高級食材は美味しいねぇー!
サワヤカ:ありがとう。アイ。そして
サワヤカ:お粗末さま
0:〜END〜