声劇台本置き場

私：「貴方は私の雨を知らない」 私：「雨が降る学校」 私：「雨が降る電車」 私：「雨が降る路地」 私：「雨が降る玄関」 私：「雨に降るベッド」 私：「私はいつも雨空ばかり見上げている」 私：「傘を忘れたことは無い」 私：「いつだって私は傘を差して、皆と同じように歩いていく」 私：「あの人は雨を知っているのだろうか？」 私：「雨はこんなにも冷たく」 私：「雨はこんなにも痛く」 私：「雨はこんなにも止まないという事を」 私：「時間ばかりが過ぎて」 私：「立ち止まる事も許されなくて」 私：「ただ、雨で溶けていく私を」 私：「貴方は笑うのだろうか？」 私：「そんな孤独（こどく）を埋（う）めようとして」 私：「顔を隠した私は」 私：「小さな液晶にどれだけ叫んだだろうか？」 私：「いったいどれだけの私を生み出して、無意味だと殺してきたのだろうか？」 私：「今日もまた一人に死んでいく」 私：「決してこの空は晴れない」 私：「雨音が煩（うるさ）かった」 私：「ポツリ、ポツリと」 私：「雨が降る」 私：「私は雨の一滴（いってき）くらいの価値はあるだろうか？」 私：「その雫（しずく）に貴方は気づくだろうか？」 私：「少しでもいい」 私：「傘を広げるキッカケになれたら」 私：「私はそれで満足してしまう」 私：「だから、誰よりも早く」 私：「貴方に届く雨になりたいから」 私：「雨を降らし続けている」 私：「そんな事、貴方は知らない」 私：「今はまだそれでいい」 私：「雨が降る」 私：「今日も明日も、明後日も」 私：「誰にも気づかれず」 私：「雨が振り続けている」 私：「傘だけが増えて」 私：「傘の模様（もよう）に気づけても」 私：「傘の下に目を向けない」 私：「私の傘を見て」 私：「貴方は空模様（そらもよう）ばかり気にしている」 私：「上じゃなくて下を見て欲しい」 私：「酷（ひど）い天邪鬼（あまのじゃく）」 私：「私はきっと報われない」 私：「それでも生き方を変えられない」 私：「この先、雨が降って」 私：「いつか私は溢（あふ）れてしまうかもしれない」 私：「早く気づいて欲しいけれど」 私：「まだ、その時は訪（おとず）れない」 私：「だから、貴方は私の雨を知らない」