台本概要
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タイトル | 星はまだ、君を知らない |
---|---|
作者名 | maturit (@inui_maturi) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ご自由に
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ソラ | 男 | 216 | |
ミア | 女 | 213 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ソラ:「はるか彼方に僕は飛び立つ」
ミア:「新しいポエム?」
ソラ:「ちがう、新しい脚本」
ミア:「へえ、痛々しいと思うよ?」
ソラ:「感想は求めてない」
ミア:「第三者からの視点も必要だよ? 人付き合いも大切って事」
ソラ:「余計なお世話だよ」
ミア:「そんなこと言ってると、友達出来ないよ?」
ソラ:「別にいいよ」
ミア:「本当に心配だよ?」
ソラ:「…じゃあ、いつもみたく、僕を無理やり振り回せばいいじゃないか」
ミア:「…それは…もう無理かな」
ソラ:「だったら…早く消えてくれ」
ミア:「…それも…無理かな」
ソラ:「なんでだよ」
ミア:「だって…ソラが望んでないから」
ソラ:「…空は遠く、雲は高く、願いは過去の星となる」
ミア:「私は星みたいに、過去の光でソラの前に居るんだよ」
ソラ:「…ミア」
ミア:「なに?」
ソラ:「僕はミアにとってのなんなの?」
ミア:「…ソラはね、私にとっての」
ソラ:「…」
ソラ:「もう…時間か」
ソラ:まるで幻想のように消えたミアは、もう今に居ない
ソラ:沈んだ太陽を僕は恨(うら)めしく睨(にらん)んで帰路(きろ)に着く
ソラ:「僕はまだ…君の答えを聞いてない」
ソラ:
ソラ:
ソラ:
ソラ:
ミア:『星はまだ、君を知らない』
ミア:
ミア:
ミア:
0:朝の教室
ミア:「ソラぁ宿題ちょうだい」
ソラ:「え、なに? 宿題をもっと欲しいとかマゾなの?」
ミア:「ちがーう、欲しいのは答案が埋まった宿題のプリント」
ソラ:「いいよ」
ミア:「え、本当にっ!?」
ソラ:「あげる」
ミア:「わーい、ソラのこと愛してるー」
ソラ:「感情がこもってない」
ミア:「いいじゃん…え、これ」
ソラ:「なに?」
ミア:「答案が見た事ない文字で埋まってる」
ソラ:「昨日はロシア語の勉強してたから」
ミア:「そうなんだー」
ソラ:「答えは合ってるから」
ミア:「ならいいや」
ソラ:「んじゃ」
ミア:「ソラはどうするの?」
ソラ:「プリント忘れたことにする」
ミア:「おーけー」
ミア:
ミア:
ミア:
0:放課後
ソラ:「遅かったね」
ミア:「誰のせいよ」
ソラ:「僕のせいなの?」
ミア:「ソラがロシア語で書くから呼び出しくらったじゃん」
ソラ:「元はと言えば、ミアが宿題してないのが悪い」
ミア:「正論は受け付けません」
ソラ:「理不尽すぎる」
ミア:「ねぇソラ、帰りに商店街に寄って帰ろうよ」
ソラ:「買い食いはダメ」
ミア:「えーケチ」
ソラ:「ミアの事はくれぐれもって頼まれてるから」
ミア:「お願いっ!」
ソラ:「はぁぁ(大きなため息)」
ミア:「ありがとっ! ソラは私に甘いから大好きっ」
ソラ:「まだ何も言ってないんだけど」
ミア:「えー、でもソラがため息をついた時は要望が通るって鉄板じゃん」
ソラ:「まあ、いいんだけどさ」
ミア:「だよねー」
ソラ:「僕の幸せが逃げていく」
ミア:「大丈夫っ! 逃げた分の幸せは私が補充するから」
ソラ:「なんか無くなったジュースをコーヒーで補充しましたって聞こえる」
ミア:「失礼なっ! コーヒーじゃなくてコーラだよ」
ソラ:「あんまり変わらない」
ミア:「そう? コーラはいい物だよ、甘いし刺激的っ!」
ソラ:「医者に止められてるでしょ?」
ミア:「うっ! そ、その時はソラが飲んだ事に…」
ソラ:「僕が炭酸嫌いなの知ってて言ってる?」
ミア:「好き嫌いはダメだよっ!」
ソラ:「いやいや、健康を考えれば」
ミア:「正論は受け付けませーん、罰としてコーラを一気飲みね」
ソラ:「理不尽だ」
ミア:「私はソラの事を思って、ここを鬼にして言ってるんだよ?」
ソラ:「悪魔じゃなくて?」
ミア:「そこは小悪魔と言いたまえ」
ソラ:「はぁ(ため息)ミアがコーラ飲みたいだけでしょ」
ミア:「バレた?」
ソラ:「商店街って単語が出てきたくらいから予想はしてた」
ミア:「さすが幼なじみーわかってるね」
ソラ:「頭が痛いよ」
ミア:「頭が痛い、そんな貴方にっ!」
ソラ:「それ何?」
ミア:「ドクターペッパー…略してドクペっ!」
ソラ:「はい没収ぅ」
ミア:「あぁああああ」
ソラ:「妙に生暖かいんだけど」
ミア:「ふっふっふ、懐(ふところ)で温めておきましたぜ、殿(との)っ!」
ソラ:「いや、美味しくないだろ」
ミア:「えーそんな事ないよー」
ソラ:「とりあえず、これは僕がカバンに入れて、後で誰かに飲んでもらう」
ミア:「生温い炭酸を人に飲ませるなんて…なんて恐ろしい子っ!?」
ソラ:「それを僕に飲ませようとしたミアはもっと恐ろしいね」
ミア:「私はコーラ一筋だから」
ソラ:「このドクペどうしたの?」
ミア:「さっき先生に貰った」
ソラ:「生温いドクペを?」
ミア:「そうだよ」
ソラ:「…えーと、元気だして」
ミア:「いやっ私は嫌われてないからっ! むしろ好かれてるからっ!」
ソラ:「どのあたりが?」
ミア:「えーと、よく先生に、手のかかる子は可愛いって言われるし」
ソラ:「そっか…良かったね」
ミア:「なにその優しい目はっ!?」
ソラ:「いや、やっぱりミアはミアだなぁって」
ミア:「どういう意味っ!?」
ソラ:「ほら、日が暮れる前に帰るよ」
ミア:「釈然(しゃくぜん)としない」
ミア:
ミア:
ソラ:少し怒ったような、それでいて楽しそうなミアの顔が焼き付いている
ソラ:
ソラ:
ソラ:
0:商店街
ミア:「みてみてー、惣菜(そうざい)半額だって、コロッケが50円だよっ」
ソラ:「買い食いは300円まで」
ミア:「ソラ…ガチャガチャは買い食いに入らないよね?」
ソラ:「なんのガチャ?」
ミア:「星座」
ソラ:「本当にミアは星が好きだね」
ミア:「うん、綺麗だから」
ソラ:「一回くらいならいいんじゃない?」
ミア:「やっぱりソラは優しいね」
ソラ:「いくら?」
ミア:「んー500円」
ソラ:「地味に高い」
ミア:「だめ?」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ソラ:
ソラ:
ソラ:
0:商店街の帰り、公園
ミア:「ご開帳(かいちょう)ぉおおお」
ソラ:「なんの星座?」
ミア:「おとめ座だね」
ソラ:「へぇ」
ミア:「この星をソラにあげる」
ソラ:「組み立てないの?」
ミア:「うん、この星をソラにあげたいから」
ソラ:「…これ、なんて星?」
ミア:「スピカ」
ソラ:「聞いたことはあるけどよく知らない、なんで僕に?」
ミア:「星言葉って知ってる?」
ソラ:「花言葉みたいなやつ?」
ミア:「そうそう、それがピッタリだから」
ソラ:「なんて星言葉?」
ミア:「強運 」
ソラ:「あーなるほど」
ミア:「逃げた不幸はその星で帳消(ちょうけ)しだね」
ソラ:「ならいいんだけどね、ありがたく貰っとく」
ミア:「実は他にも星言葉があってね」
ソラ:「なに?」
ミア:「隠れた才能」
ソラ:「?」
ミア:「ソラはきっと脚本家になれるよ」
ソラ:「え?」
ミア:「だって、昔から本とか劇の台本とか隠れて書いてるの知ってるよ?」
ソラ:「い、いつから」
ミア:「えーと小学三年?」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ミア:「いつか見せてね」
ソラ:「いつかね」
ミア:「さーて、お待ちかねの罰ゲーム…もとい、教育の時間です」
ソラ:「うっ」
ミア:「コーラを一気飲み、いってみよー」
ソラ:「はぁぁぁ(大きなため息)」
ミア:「いっきっ! いっきっ!」
ソラ:「うくっ(飲む)ごほっ(むせる)」
ミア:「あーあ、もったいない」
ソラ:「ごほっ(せき込む)最悪だ」
ミア:「あーーーーー」
ソラ:「なに?」
ミア:「私の分を買い忘れたぁあああ」
ソラ:「どんまい」
ミア:「ソラはもう飲まないでしょ! 残りは私が飲むっ!」
ソラ:「あっ(コーラを奪われる)」
ミア:「うくっ(一気飲み)ぷはーこの一杯の為に生きてるぅうううう」
ソラ:「縁起でもない」
ミア:「なに? そんな目で見てもコーラは私のモノよ」
ソラ:「いらないよ」
ミア:「それとも…私と関節キスでもしたかった?」
ソラ:「それも…いらないよ」
ミア:「あ、一瞬悩んだでしょ?」
ソラ:「うるさい」
ミア:「どうしてもって言うなら…飲んだ後に空(から)をあげるっ」
ソラ:「ゴミを押し付けたいだけだよね?」
ミア:「えーどうだろう?」
ソラ:「いいから飲んだら帰るよ」
ミア:「そうだねっ!」
ソラ:「ミア」
ミア:「何?」
ソラ:「ミアは生きたい?」
ミア:「…んー私はたぶん(言いかけで止まる)」
ソラ:「(遮りながら)ごめん電話、母さんからだ」
ミア:「いいよ、出ても」
ソラ:「そうする…もしもし(電話に出る)」
ミア:「…今日は星が綺麗だろうなー
ソラ:僕がその後に、同じ質問をしても、ミアはちゃんと答えてはくれなかった
ソラ:もしも、あの時に電話がこなれば…ミアはちゃんと答えてくれただろうか?
ソラ:『過去の光は、決して今には追いつかない』
ソラ:電車に乗って二十分
ソラ:隣の街の病院にミアはいる
0:病室
ソラ:(ノック音)
ミア:「はーい」
ソラ:「ソラだけど」
ミア:「入っていいよ」
ソラ:「入るよ…今日はどう?」
ミア:「うん、まぁまぁかな」
ソラ:「そっか」
ミア:「ソラは大丈夫?」
ソラ:「なにが?」
ミア:「学校でイジメられたりとか?」
ソラ:「なんでだよ」
ミア:「だって炭酸も飲めない付き合いの悪いやつだーとか」
ソラ:「ミアの中で炭酸ってなんなんだ?」
ミア:「お酒の親戚(しんせき)」
ソラ:「ないから、安心して寝てろ」
ミア:「はーい」
ソラ:「なんか欲しいものとかある?」
ミア:「んー本が欲しい」
ソラ:「どんな本?」
ミア:「ソラの本」
ソラ:「風景画(ふうけいが)?」
ミア:「ちがーうっ! ソラが書いた本が読みたい」
ソラ:「…いや、それは」
ミア:「あーあ、死んでも死にきれないなーソラのちっぽけなプライドのせいで」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ミア:「見せてくれるの?」
ソラ:「いいけど…あんまり面白くないし、たぶんつまらない」
ミア:「いいよ、それでも」
ソラ:「今まで書いたやつは全部中途半端(ちゅうとはんぱ)で、書ききった事なんてないから」
ミア:「えー私は全巻一気読み派なのに」
ソラ:「…短い話なら書いておく」
ミア:「本当っ!?」
ソラ:「でも期待するなよ?」
ミア:「無理、ちょー期待する! どんな話?」
ソラ:「まだ決めてないけど、何か要望はある?」
ミア:「星の話がいい」
ソラ:「本当に好きだね」
ミア:「うんっ、今はもっと好き」
ソラ:「なんで?」
ミア:「ここから綺麗に見えるから」
ソラ:「夜に窓を開けたら悪化するよ」
ミア:「ごめんね」
ソラ:「誰にも言わないけど」
ミア:「ねえソラ…ソラが私に優しいのは同情(どうじょう)?」
ソラ:「ちがうよ」
ミア:「もしかして私が好き…とか?」
ソラ:「嫌いな奴を見舞いになんて行かないだろ」
ミア:「答えになってない」
ソラ:「ほら、他に要望はないの?」
ミア:「じゃあね、星が見る夢」
ソラ:「星が見る夢?」
ミア:「そう、星は何を夢見て過去から光を今に飛ばすんだろうって…星を見てて思ったの」
ソラ:「星は夢なんて見ないよ」
ミア:「そこは想像力を働かせてよっ!」
ソラ:「わかったよ」
ミア:「楽しみだなぁ」
ソラ:「そういえばテレビで流星群が見れるって言ってた」
ミア:「いつっ!?」
ソラ:「え、いつかは覚えてない」
ミア:「調べて」
ソラ:「はいはい、今調べるよ」
ミア:「あっ…そのスマホのキーホルダー」
ソラ:「ああ、これ?」
ミア:「前に私があげたスピカだー」
ソラ:「失(な)くしたら悪いと思って、キーホルダーにした」
ミア:「そっか…ありがとう」
ソラ:「…えーと、明後日の夜だって」
ミア:「そっか」
ソラ:「どうかした? もっと喜ぶかと思ったのに」
ミア:「え? いやぁ、その…う、うれしーなぁ」
ソラ:「?」
ミア:「ソラ」
ソラ:「なに?」
ミア:「わがまま聞いてくれる?」
ソラ:「いいよ」
ミア:「明後日の夜に、ソラの物語が聞きたい」
ソラ:「急だね」
ミア:「だめ?」
ソラ:「わかった、でもクオリティは保証(ほしょう)しない」
ミア:「ありがとう、私だけに…んーん(首を横に振る)、私が唯一、弱さを見せられる相手だよ」
ソラ:「僕はミアの前でだけ、本当の僕でいられる」
ミア:「変なの、あはは」
ソラ:「付き合いが長いのも考え物だね」
ミア:「そうだね」
ソラ:「じゃあ、明日も来るから」
ミア:「うん…またね」
ソラ:ミアは知っていたのだろうか?
ソラ:自分が星に近づくまでの時間を
次の日、病室
ミア:「ソラだぁ」
ソラ:「うん、今日は…調子が悪そうだね」
ミア:「うん…ごめんね」
ソラ:「どうして謝るの?」
ミア:「だってソラが遠いのに私に会いに来てくれるのが嬉しくって」
ソラ:「気にするな(軽くチョップ)」
ミア:「いたいよぉ」
ソラ:「そんなに痛くしてない」
ミア:「心が痛いよぉ」
ソラ:「それは自業自得だ」
ミア:「因果応報(いんがおうほう)じゃなく?」
ソラ:「それは違う」
ミア:「?」
ソラ:「本当に因果応報なら…ミアは元気じゃないとおかしい」
ミア:「えへへ、今日のソラはいつにも増して優しいね」
ソラ:「いつも通り優しいの間違いだろう?」
ミア:「そうだった」
ソラ:「ほら、今日は前に好きだった曲をスマホに入れてきた」
ミア:「ありがとう」
ソラ:「もしも、ミアが元気だったら…何になりたかった?」
ミア:「えーそうだなぁ」
ソラ:「いっぱいあるの?」
ミア:「そうでも無いけど、もしも…ソラが脚本家になったら女優になりたかった…かな?」
ソラ:「女優とは大きく出たね」
ミア:「でも、一番はね」
ソラ:「うん」
ミア:「歌手になりたかった」
ソラ:「うん」
ミア:「歌手になって一杯の歌を歌ってね、沢山の人に私を見てもらいたい」
ソラ:「うん」
ミア:「私の歌で笑顔になる人、私の歌で辛さを忘れる人、私の歌で明日も頑張ろうって思う人」
ソラ:「うん」
ミア:「私は誰かの記憶に残りたい」
ソラ:「うん」
ミア:「私は生きていたんだって叫びたい」
ソラ:「うん」
ミア:「だから…歌手になってみたい」
ソラ:「なれるよ」
ミア:「そうかな?」
ソラ:「だってミアは歌が上手いから」
ミア:「照れるなぁ」
ソラ:「なんだったら今歌おう」
ミア:「えー病室でダメだよー」
ソラ:「ミアの歌を止める人なんていないよ」
ミア:「じゃあ、ソラは私の歌を独り占めだね」
ソラ:「そうだね」
ミア:「じゃあ、歌うね」
ソラ:僕はスマホで録音した
ソラ:綺麗な歌声だった、綺麗すぎて…僕は涙を流してしまう
ソラ:ネットにあげようとして、僕は辞めた
ソラ:『独り占め』をしたかったから
次の日、病室
ミア:「今日…だね」
ソラ:「そうだよ、今日が流星群で約束の日だよ」
ミア:「楽しみだなぁ」
ソラ:「急いで書いたから、あんまり自信ないけど」
ミア:「ねぇ、聞かせて」
ソラ:「いいよ」
ミア:「題名は?」
ソラ:「題名は『星の夢』」
ミア:「要望どおりだね」
ソラ:「主人公はスピカ、歌が大好き」
ミア:「歌が好きなの?」
ソラ:「そう、汽車(きしゃ)に乗って旅をしている」
ミア:「なんかいいね」
ソラ:「そんな話」
ミア:「聞かせて」
ソラ:「いいよ」
ソラ:僕は短い物語を語った
ソラ:もう、時間が無い事も…なんとなくわかっていた
ミア:「うん、やっぱりソラは才能あるよ」
ソラ:「そうかな?」
ミア:「流星群…一緒に見たいなぁ」
ソラ:「流石にそれは」
ミア:「お願い」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ミア:「ありがとう」
ソラ:「看護師にお願いしてくる」
ミア:「うん」
0:(間をあける)
ソラ:「大丈夫だって」
ミア:「やったぁ」
ソラ:「あんまりはしゃぐと悪化するよ」
ミア:「はーい」
ソラ:「流星群なんて初めて見る」
ミア:「私も」
ソラ:「…」
ミア:「ソラ…手を握ってて」
ソラ:「いいよ」
ミア:「まだかな?」
ソラ:「もうそろそろだよ」
ミア:「あ、流れた」
ソラ:「うん、綺麗だね」
ミア:「綺麗だね」
ソラ:「ミアの事、僕は大好きだよ」
ミア:「私もソラが大好きだよ」
ソラ:「そっか…もっと早くに言ってれば良かった」
ミア:「そんな事ないよ」
ソラ:「え?」
ミア:「今じゃなかったら…ソラを嫌いになろうとしてたよ」
ソラ:「なんで?」
ミア:「だって…私はもう」
ソラ:「ミア?」
ミア:「(意識がなくなる)」
ソラ:「ミアっ!?」
ソラ:「誰かっ! 来てくださいっ!」
ソラ:ミアはその夜に星になった
ソラ:流星群に惹(ひ)かれて、空から流れて消えてしまった
ソラ:僕は星が嫌いになった
ミア:『星は夢を見る、君に出会い』
ミア:『君を知り、好きになる』
ミア:『そんな短い夢をみた』
ソラ:「はるか遠くに来た…そこは海だった」
ミア:「新しい物語?」
ソラ:「そうだけど」
ミア:「今度は何処に行くの?」
ソラ:「誰もいない海、夜の来ない永遠の朝…星の終わり」
ミア:「ちょっと寂(さみ)しいよぉ」
ソラ:「もういいだろう」
ミア:「えー」
ソラ:「この物語はここで終わり」
ミア:「そっかぁ、うん…やっぱりソラには才能があるよ」
ソラ:「やめてくれ」
ミア:「大丈夫っ! 私が空から見守るから」
ソラ:「もう…いいだろう?」
ミア:「ダメだよ」
ソラ:「理不尽だ」
ミア:「だって…ソラは私の」
ソラ:「僕はミアのなんなの?」
ミア:「ソラは私のアトリア」
ソラ:「アトリア?」
ミア:「未来を見通すって星言葉なんだけどね、私はソラを見て、未来を考えていたんだよ」
ソラ:「僕を見て?」
ミア:「だって、未来のない私が願うのは、ソラの幸福だけだもん」
ソラ:「なんでっ! どうしてなんだよっ!」
ミア:「えーだって好きな人には幸せになって欲しいから」
ソラ:「ミアのいない世界に幸せなんてないよっ!」
ミア:「無いなら作らないと」
ソラ:「作れない」
ミア:「大丈夫、私の運は全部ソラにあげたから…きっとソラは二人分の幸せになれるよっ!」
ソラ:「僕も星になりたい」
ミア:「ダメ、ソラは私のアトリアだって言ったけど、星になるのはもっと先だよ」
ソラ:「理不尽だ」
ミア:「そんな事ないよー、でもね」
ソラ:「…」
ミア:「もしもソラがどうしようも無くなったら…私が歌を歌って応援するから」
ソラ:「聞こえないよ」
ミア:「私の歌…録音したの知ってるよ」
ソラ:「バレてたのか」
ミア:「うん、だから…ソラは大丈夫」
ソラ:「…もう…会えないのかな?」
ミア:「いつかまた逢(あ)えるよっ!」
ソラ:「じゃあ、またなミア」
ミア:「うん、またねソラ」
ソラ:『夢を見ていた』
ソラ:『遠い、遠い星の夢を見ていた』
ミア:『星が流れる刹那(せつな)、過去が僅(わず)かに今に近づいた』
ソラ:『過去の光はいつか忘れる』
ミア:『それはもう無くなった物だから』
ソラ:『でも、歌は残る』
ソラ:『星の歌は永遠に残る』
ミア:『星の夢』
ミア:『綺麗なだけの物語はどこかで紡がれていく』
ソラ:『いつか巡(めぐ)り逢(あ)う、その日まで、彼女は歌い続けるのだろう』
ミア:『だから』
ミア:『星はまだ、君を知らない』
ソラ:「はるか彼方に僕は飛び立つ」
ミア:「新しいポエム?」
ソラ:「ちがう、新しい脚本」
ミア:「へえ、痛々しいと思うよ?」
ソラ:「感想は求めてない」
ミア:「第三者からの視点も必要だよ? 人付き合いも大切って事」
ソラ:「余計なお世話だよ」
ミア:「そんなこと言ってると、友達出来ないよ?」
ソラ:「別にいいよ」
ミア:「本当に心配だよ?」
ソラ:「…じゃあ、いつもみたく、僕を無理やり振り回せばいいじゃないか」
ミア:「…それは…もう無理かな」
ソラ:「だったら…早く消えてくれ」
ミア:「…それも…無理かな」
ソラ:「なんでだよ」
ミア:「だって…ソラが望んでないから」
ソラ:「…空は遠く、雲は高く、願いは過去の星となる」
ミア:「私は星みたいに、過去の光でソラの前に居るんだよ」
ソラ:「…ミア」
ミア:「なに?」
ソラ:「僕はミアにとってのなんなの?」
ミア:「…ソラはね、私にとっての」
ソラ:「…」
ソラ:「もう…時間か」
ソラ:まるで幻想のように消えたミアは、もう今に居ない
ソラ:沈んだ太陽を僕は恨(うら)めしく睨(にらん)んで帰路(きろ)に着く
ソラ:「僕はまだ…君の答えを聞いてない」
ソラ:
ソラ:
ソラ:
ソラ:
ミア:『星はまだ、君を知らない』
ミア:
ミア:
ミア:
0:朝の教室
ミア:「ソラぁ宿題ちょうだい」
ソラ:「え、なに? 宿題をもっと欲しいとかマゾなの?」
ミア:「ちがーう、欲しいのは答案が埋まった宿題のプリント」
ソラ:「いいよ」
ミア:「え、本当にっ!?」
ソラ:「あげる」
ミア:「わーい、ソラのこと愛してるー」
ソラ:「感情がこもってない」
ミア:「いいじゃん…え、これ」
ソラ:「なに?」
ミア:「答案が見た事ない文字で埋まってる」
ソラ:「昨日はロシア語の勉強してたから」
ミア:「そうなんだー」
ソラ:「答えは合ってるから」
ミア:「ならいいや」
ソラ:「んじゃ」
ミア:「ソラはどうするの?」
ソラ:「プリント忘れたことにする」
ミア:「おーけー」
ミア:
ミア:
ミア:
0:放課後
ソラ:「遅かったね」
ミア:「誰のせいよ」
ソラ:「僕のせいなの?」
ミア:「ソラがロシア語で書くから呼び出しくらったじゃん」
ソラ:「元はと言えば、ミアが宿題してないのが悪い」
ミア:「正論は受け付けません」
ソラ:「理不尽すぎる」
ミア:「ねぇソラ、帰りに商店街に寄って帰ろうよ」
ソラ:「買い食いはダメ」
ミア:「えーケチ」
ソラ:「ミアの事はくれぐれもって頼まれてるから」
ミア:「お願いっ!」
ソラ:「はぁぁ(大きなため息)」
ミア:「ありがとっ! ソラは私に甘いから大好きっ」
ソラ:「まだ何も言ってないんだけど」
ミア:「えー、でもソラがため息をついた時は要望が通るって鉄板じゃん」
ソラ:「まあ、いいんだけどさ」
ミア:「だよねー」
ソラ:「僕の幸せが逃げていく」
ミア:「大丈夫っ! 逃げた分の幸せは私が補充するから」
ソラ:「なんか無くなったジュースをコーヒーで補充しましたって聞こえる」
ミア:「失礼なっ! コーヒーじゃなくてコーラだよ」
ソラ:「あんまり変わらない」
ミア:「そう? コーラはいい物だよ、甘いし刺激的っ!」
ソラ:「医者に止められてるでしょ?」
ミア:「うっ! そ、その時はソラが飲んだ事に…」
ソラ:「僕が炭酸嫌いなの知ってて言ってる?」
ミア:「好き嫌いはダメだよっ!」
ソラ:「いやいや、健康を考えれば」
ミア:「正論は受け付けませーん、罰としてコーラを一気飲みね」
ソラ:「理不尽だ」
ミア:「私はソラの事を思って、ここを鬼にして言ってるんだよ?」
ソラ:「悪魔じゃなくて?」
ミア:「そこは小悪魔と言いたまえ」
ソラ:「はぁ(ため息)ミアがコーラ飲みたいだけでしょ」
ミア:「バレた?」
ソラ:「商店街って単語が出てきたくらいから予想はしてた」
ミア:「さすが幼なじみーわかってるね」
ソラ:「頭が痛いよ」
ミア:「頭が痛い、そんな貴方にっ!」
ソラ:「それ何?」
ミア:「ドクターペッパー…略してドクペっ!」
ソラ:「はい没収ぅ」
ミア:「あぁああああ」
ソラ:「妙に生暖かいんだけど」
ミア:「ふっふっふ、懐(ふところ)で温めておきましたぜ、殿(との)っ!」
ソラ:「いや、美味しくないだろ」
ミア:「えーそんな事ないよー」
ソラ:「とりあえず、これは僕がカバンに入れて、後で誰かに飲んでもらう」
ミア:「生温い炭酸を人に飲ませるなんて…なんて恐ろしい子っ!?」
ソラ:「それを僕に飲ませようとしたミアはもっと恐ろしいね」
ミア:「私はコーラ一筋だから」
ソラ:「このドクペどうしたの?」
ミア:「さっき先生に貰った」
ソラ:「生温いドクペを?」
ミア:「そうだよ」
ソラ:「…えーと、元気だして」
ミア:「いやっ私は嫌われてないからっ! むしろ好かれてるからっ!」
ソラ:「どのあたりが?」
ミア:「えーと、よく先生に、手のかかる子は可愛いって言われるし」
ソラ:「そっか…良かったね」
ミア:「なにその優しい目はっ!?」
ソラ:「いや、やっぱりミアはミアだなぁって」
ミア:「どういう意味っ!?」
ソラ:「ほら、日が暮れる前に帰るよ」
ミア:「釈然(しゃくぜん)としない」
ミア:
ミア:
ソラ:少し怒ったような、それでいて楽しそうなミアの顔が焼き付いている
ソラ:
ソラ:
ソラ:
0:商店街
ミア:「みてみてー、惣菜(そうざい)半額だって、コロッケが50円だよっ」
ソラ:「買い食いは300円まで」
ミア:「ソラ…ガチャガチャは買い食いに入らないよね?」
ソラ:「なんのガチャ?」
ミア:「星座」
ソラ:「本当にミアは星が好きだね」
ミア:「うん、綺麗だから」
ソラ:「一回くらいならいいんじゃない?」
ミア:「やっぱりソラは優しいね」
ソラ:「いくら?」
ミア:「んー500円」
ソラ:「地味に高い」
ミア:「だめ?」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ソラ:
ソラ:
ソラ:
0:商店街の帰り、公園
ミア:「ご開帳(かいちょう)ぉおおお」
ソラ:「なんの星座?」
ミア:「おとめ座だね」
ソラ:「へぇ」
ミア:「この星をソラにあげる」
ソラ:「組み立てないの?」
ミア:「うん、この星をソラにあげたいから」
ソラ:「…これ、なんて星?」
ミア:「スピカ」
ソラ:「聞いたことはあるけどよく知らない、なんで僕に?」
ミア:「星言葉って知ってる?」
ソラ:「花言葉みたいなやつ?」
ミア:「そうそう、それがピッタリだから」
ソラ:「なんて星言葉?」
ミア:「強運 」
ソラ:「あーなるほど」
ミア:「逃げた不幸はその星で帳消(ちょうけ)しだね」
ソラ:「ならいいんだけどね、ありがたく貰っとく」
ミア:「実は他にも星言葉があってね」
ソラ:「なに?」
ミア:「隠れた才能」
ソラ:「?」
ミア:「ソラはきっと脚本家になれるよ」
ソラ:「え?」
ミア:「だって、昔から本とか劇の台本とか隠れて書いてるの知ってるよ?」
ソラ:「い、いつから」
ミア:「えーと小学三年?」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ミア:「いつか見せてね」
ソラ:「いつかね」
ミア:「さーて、お待ちかねの罰ゲーム…もとい、教育の時間です」
ソラ:「うっ」
ミア:「コーラを一気飲み、いってみよー」
ソラ:「はぁぁぁ(大きなため息)」
ミア:「いっきっ! いっきっ!」
ソラ:「うくっ(飲む)ごほっ(むせる)」
ミア:「あーあ、もったいない」
ソラ:「ごほっ(せき込む)最悪だ」
ミア:「あーーーーー」
ソラ:「なに?」
ミア:「私の分を買い忘れたぁあああ」
ソラ:「どんまい」
ミア:「ソラはもう飲まないでしょ! 残りは私が飲むっ!」
ソラ:「あっ(コーラを奪われる)」
ミア:「うくっ(一気飲み)ぷはーこの一杯の為に生きてるぅうううう」
ソラ:「縁起でもない」
ミア:「なに? そんな目で見てもコーラは私のモノよ」
ソラ:「いらないよ」
ミア:「それとも…私と関節キスでもしたかった?」
ソラ:「それも…いらないよ」
ミア:「あ、一瞬悩んだでしょ?」
ソラ:「うるさい」
ミア:「どうしてもって言うなら…飲んだ後に空(から)をあげるっ」
ソラ:「ゴミを押し付けたいだけだよね?」
ミア:「えーどうだろう?」
ソラ:「いいから飲んだら帰るよ」
ミア:「そうだねっ!」
ソラ:「ミア」
ミア:「何?」
ソラ:「ミアは生きたい?」
ミア:「…んー私はたぶん(言いかけで止まる)」
ソラ:「(遮りながら)ごめん電話、母さんからだ」
ミア:「いいよ、出ても」
ソラ:「そうする…もしもし(電話に出る)」
ミア:「…今日は星が綺麗だろうなー
ソラ:僕がその後に、同じ質問をしても、ミアはちゃんと答えてはくれなかった
ソラ:もしも、あの時に電話がこなれば…ミアはちゃんと答えてくれただろうか?
ソラ:『過去の光は、決して今には追いつかない』
ソラ:電車に乗って二十分
ソラ:隣の街の病院にミアはいる
0:病室
ソラ:(ノック音)
ミア:「はーい」
ソラ:「ソラだけど」
ミア:「入っていいよ」
ソラ:「入るよ…今日はどう?」
ミア:「うん、まぁまぁかな」
ソラ:「そっか」
ミア:「ソラは大丈夫?」
ソラ:「なにが?」
ミア:「学校でイジメられたりとか?」
ソラ:「なんでだよ」
ミア:「だって炭酸も飲めない付き合いの悪いやつだーとか」
ソラ:「ミアの中で炭酸ってなんなんだ?」
ミア:「お酒の親戚(しんせき)」
ソラ:「ないから、安心して寝てろ」
ミア:「はーい」
ソラ:「なんか欲しいものとかある?」
ミア:「んー本が欲しい」
ソラ:「どんな本?」
ミア:「ソラの本」
ソラ:「風景画(ふうけいが)?」
ミア:「ちがーうっ! ソラが書いた本が読みたい」
ソラ:「…いや、それは」
ミア:「あーあ、死んでも死にきれないなーソラのちっぽけなプライドのせいで」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ミア:「見せてくれるの?」
ソラ:「いいけど…あんまり面白くないし、たぶんつまらない」
ミア:「いいよ、それでも」
ソラ:「今まで書いたやつは全部中途半端(ちゅうとはんぱ)で、書ききった事なんてないから」
ミア:「えー私は全巻一気読み派なのに」
ソラ:「…短い話なら書いておく」
ミア:「本当っ!?」
ソラ:「でも期待するなよ?」
ミア:「無理、ちょー期待する! どんな話?」
ソラ:「まだ決めてないけど、何か要望はある?」
ミア:「星の話がいい」
ソラ:「本当に好きだね」
ミア:「うんっ、今はもっと好き」
ソラ:「なんで?」
ミア:「ここから綺麗に見えるから」
ソラ:「夜に窓を開けたら悪化するよ」
ミア:「ごめんね」
ソラ:「誰にも言わないけど」
ミア:「ねえソラ…ソラが私に優しいのは同情(どうじょう)?」
ソラ:「ちがうよ」
ミア:「もしかして私が好き…とか?」
ソラ:「嫌いな奴を見舞いになんて行かないだろ」
ミア:「答えになってない」
ソラ:「ほら、他に要望はないの?」
ミア:「じゃあね、星が見る夢」
ソラ:「星が見る夢?」
ミア:「そう、星は何を夢見て過去から光を今に飛ばすんだろうって…星を見てて思ったの」
ソラ:「星は夢なんて見ないよ」
ミア:「そこは想像力を働かせてよっ!」
ソラ:「わかったよ」
ミア:「楽しみだなぁ」
ソラ:「そういえばテレビで流星群が見れるって言ってた」
ミア:「いつっ!?」
ソラ:「え、いつかは覚えてない」
ミア:「調べて」
ソラ:「はいはい、今調べるよ」
ミア:「あっ…そのスマホのキーホルダー」
ソラ:「ああ、これ?」
ミア:「前に私があげたスピカだー」
ソラ:「失(な)くしたら悪いと思って、キーホルダーにした」
ミア:「そっか…ありがとう」
ソラ:「…えーと、明後日の夜だって」
ミア:「そっか」
ソラ:「どうかした? もっと喜ぶかと思ったのに」
ミア:「え? いやぁ、その…う、うれしーなぁ」
ソラ:「?」
ミア:「ソラ」
ソラ:「なに?」
ミア:「わがまま聞いてくれる?」
ソラ:「いいよ」
ミア:「明後日の夜に、ソラの物語が聞きたい」
ソラ:「急だね」
ミア:「だめ?」
ソラ:「わかった、でもクオリティは保証(ほしょう)しない」
ミア:「ありがとう、私だけに…んーん(首を横に振る)、私が唯一、弱さを見せられる相手だよ」
ソラ:「僕はミアの前でだけ、本当の僕でいられる」
ミア:「変なの、あはは」
ソラ:「付き合いが長いのも考え物だね」
ミア:「そうだね」
ソラ:「じゃあ、明日も来るから」
ミア:「うん…またね」
ソラ:ミアは知っていたのだろうか?
ソラ:自分が星に近づくまでの時間を
次の日、病室
ミア:「ソラだぁ」
ソラ:「うん、今日は…調子が悪そうだね」
ミア:「うん…ごめんね」
ソラ:「どうして謝るの?」
ミア:「だってソラが遠いのに私に会いに来てくれるのが嬉しくって」
ソラ:「気にするな(軽くチョップ)」
ミア:「いたいよぉ」
ソラ:「そんなに痛くしてない」
ミア:「心が痛いよぉ」
ソラ:「それは自業自得だ」
ミア:「因果応報(いんがおうほう)じゃなく?」
ソラ:「それは違う」
ミア:「?」
ソラ:「本当に因果応報なら…ミアは元気じゃないとおかしい」
ミア:「えへへ、今日のソラはいつにも増して優しいね」
ソラ:「いつも通り優しいの間違いだろう?」
ミア:「そうだった」
ソラ:「ほら、今日は前に好きだった曲をスマホに入れてきた」
ミア:「ありがとう」
ソラ:「もしも、ミアが元気だったら…何になりたかった?」
ミア:「えーそうだなぁ」
ソラ:「いっぱいあるの?」
ミア:「そうでも無いけど、もしも…ソラが脚本家になったら女優になりたかった…かな?」
ソラ:「女優とは大きく出たね」
ミア:「でも、一番はね」
ソラ:「うん」
ミア:「歌手になりたかった」
ソラ:「うん」
ミア:「歌手になって一杯の歌を歌ってね、沢山の人に私を見てもらいたい」
ソラ:「うん」
ミア:「私の歌で笑顔になる人、私の歌で辛さを忘れる人、私の歌で明日も頑張ろうって思う人」
ソラ:「うん」
ミア:「私は誰かの記憶に残りたい」
ソラ:「うん」
ミア:「私は生きていたんだって叫びたい」
ソラ:「うん」
ミア:「だから…歌手になってみたい」
ソラ:「なれるよ」
ミア:「そうかな?」
ソラ:「だってミアは歌が上手いから」
ミア:「照れるなぁ」
ソラ:「なんだったら今歌おう」
ミア:「えー病室でダメだよー」
ソラ:「ミアの歌を止める人なんていないよ」
ミア:「じゃあ、ソラは私の歌を独り占めだね」
ソラ:「そうだね」
ミア:「じゃあ、歌うね」
ソラ:僕はスマホで録音した
ソラ:綺麗な歌声だった、綺麗すぎて…僕は涙を流してしまう
ソラ:ネットにあげようとして、僕は辞めた
ソラ:『独り占め』をしたかったから
次の日、病室
ミア:「今日…だね」
ソラ:「そうだよ、今日が流星群で約束の日だよ」
ミア:「楽しみだなぁ」
ソラ:「急いで書いたから、あんまり自信ないけど」
ミア:「ねぇ、聞かせて」
ソラ:「いいよ」
ミア:「題名は?」
ソラ:「題名は『星の夢』」
ミア:「要望どおりだね」
ソラ:「主人公はスピカ、歌が大好き」
ミア:「歌が好きなの?」
ソラ:「そう、汽車(きしゃ)に乗って旅をしている」
ミア:「なんかいいね」
ソラ:「そんな話」
ミア:「聞かせて」
ソラ:「いいよ」
ソラ:僕は短い物語を語った
ソラ:もう、時間が無い事も…なんとなくわかっていた
ミア:「うん、やっぱりソラは才能あるよ」
ソラ:「そうかな?」
ミア:「流星群…一緒に見たいなぁ」
ソラ:「流石にそれは」
ミア:「お願い」
ソラ:「はぁ(ため息)」
ミア:「ありがとう」
ソラ:「看護師にお願いしてくる」
ミア:「うん」
0:(間をあける)
ソラ:「大丈夫だって」
ミア:「やったぁ」
ソラ:「あんまりはしゃぐと悪化するよ」
ミア:「はーい」
ソラ:「流星群なんて初めて見る」
ミア:「私も」
ソラ:「…」
ミア:「ソラ…手を握ってて」
ソラ:「いいよ」
ミア:「まだかな?」
ソラ:「もうそろそろだよ」
ミア:「あ、流れた」
ソラ:「うん、綺麗だね」
ミア:「綺麗だね」
ソラ:「ミアの事、僕は大好きだよ」
ミア:「私もソラが大好きだよ」
ソラ:「そっか…もっと早くに言ってれば良かった」
ミア:「そんな事ないよ」
ソラ:「え?」
ミア:「今じゃなかったら…ソラを嫌いになろうとしてたよ」
ソラ:「なんで?」
ミア:「だって…私はもう」
ソラ:「ミア?」
ミア:「(意識がなくなる)」
ソラ:「ミアっ!?」
ソラ:「誰かっ! 来てくださいっ!」
ソラ:ミアはその夜に星になった
ソラ:流星群に惹(ひ)かれて、空から流れて消えてしまった
ソラ:僕は星が嫌いになった
ミア:『星は夢を見る、君に出会い』
ミア:『君を知り、好きになる』
ミア:『そんな短い夢をみた』
ソラ:「はるか遠くに来た…そこは海だった」
ミア:「新しい物語?」
ソラ:「そうだけど」
ミア:「今度は何処に行くの?」
ソラ:「誰もいない海、夜の来ない永遠の朝…星の終わり」
ミア:「ちょっと寂(さみ)しいよぉ」
ソラ:「もういいだろう」
ミア:「えー」
ソラ:「この物語はここで終わり」
ミア:「そっかぁ、うん…やっぱりソラには才能があるよ」
ソラ:「やめてくれ」
ミア:「大丈夫っ! 私が空から見守るから」
ソラ:「もう…いいだろう?」
ミア:「ダメだよ」
ソラ:「理不尽だ」
ミア:「だって…ソラは私の」
ソラ:「僕はミアのなんなの?」
ミア:「ソラは私のアトリア」
ソラ:「アトリア?」
ミア:「未来を見通すって星言葉なんだけどね、私はソラを見て、未来を考えていたんだよ」
ソラ:「僕を見て?」
ミア:「だって、未来のない私が願うのは、ソラの幸福だけだもん」
ソラ:「なんでっ! どうしてなんだよっ!」
ミア:「えーだって好きな人には幸せになって欲しいから」
ソラ:「ミアのいない世界に幸せなんてないよっ!」
ミア:「無いなら作らないと」
ソラ:「作れない」
ミア:「大丈夫、私の運は全部ソラにあげたから…きっとソラは二人分の幸せになれるよっ!」
ソラ:「僕も星になりたい」
ミア:「ダメ、ソラは私のアトリアだって言ったけど、星になるのはもっと先だよ」
ソラ:「理不尽だ」
ミア:「そんな事ないよー、でもね」
ソラ:「…」
ミア:「もしもソラがどうしようも無くなったら…私が歌を歌って応援するから」
ソラ:「聞こえないよ」
ミア:「私の歌…録音したの知ってるよ」
ソラ:「バレてたのか」
ミア:「うん、だから…ソラは大丈夫」
ソラ:「…もう…会えないのかな?」
ミア:「いつかまた逢(あ)えるよっ!」
ソラ:「じゃあ、またなミア」
ミア:「うん、またねソラ」
ソラ:『夢を見ていた』
ソラ:『遠い、遠い星の夢を見ていた』
ミア:『星が流れる刹那(せつな)、過去が僅(わず)かに今に近づいた』
ソラ:『過去の光はいつか忘れる』
ミア:『それはもう無くなった物だから』
ソラ:『でも、歌は残る』
ソラ:『星の歌は永遠に残る』
ミア:『星の夢』
ミア:『綺麗なだけの物語はどこかで紡がれていく』
ソラ:『いつか巡(めぐ)り逢(あ)う、その日まで、彼女は歌い続けるのだろう』
ミア:『だから』
ミア:『星はまだ、君を知らない』