台本概要
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タイトル | 【家族愛】三つ目は心を見つめる |
---|---|
作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 4人用台本(男1、女2、不問1) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
心矢の額にはもう一つ目がある その目は人の心を見つめることが出来る こんな自分を受け入れられない心矢であったが 様々な葛藤がありながら家族、幼なじみと心を通わせることで心矢は成長していく そんな物語 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ()の部分は心の声になってるので感情込めて読んでください。 1話で女の人と男の人の心の声がありますが兼役で誰か読んでも良いですし、読まなくても大丈夫です! 269 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
心矢 | 不問 | 211 | 高校1年生の男の子 三つ目であることに負い目を感じてる 少しひねくれていて、テンションは常に低いが 感情的になるシーンもあるので落差はあるかもです |
優斗 | 男 | 99 | 心矢の父親 一見、陽気なおじさんで能天気だが 心矢と千鶴と幸せな家庭を築くために努力している 本当に優しくていいお父ちゃん |
千鶴 | 女 | 83 | 心矢の母親 子供が出来ない身体でとある行動に出てしまう 自分のせいで心矢の身体に異常があったため自分を何度も責める このキャラもあまりテンションが低めですが場面によって感情的になるシーンがあります |
愛理 | 女 | 91 | 心矢の幼なじみ 幼なじみだが両親には心矢に関わらないようにされていた それでも昔、心矢に助けられた感謝の気持ちを忘れず 心矢の心に触れていく 素直で嘘つけない気の強い女の子です |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
心矢:(人は表の顔と裏の顔がある
心矢:表の顔は自分以外の人に見せる仮面を被った悪魔だ
心矢:誰々ちゃんは優しいねとか、誰々君は面白いねとか、表面はいい顔してるだけで人はその人をいい人だと判断する
心矢:でもどうだ。みんなはその人の裏の顔を知らないだろう
心矢:みんな知らないくせに知ったようなことを言うんだ
心矢:例えばそこの綺麗な女の人は何を考えてるんだろう
心矢:僕にはそれがわかる)
:(はあ、今の彼氏とさっさっと別れてイケメンの空君と付き合いたいなー)
心矢:(裏の顔はこう思ってるらしい
心矢:表では彼氏さんと付き合ってるのにも関わらず裏では他の男の人と付き合いたいと言っている。酷い人だな
心矢:あの真面目そうな男の人は?)
:(仕事終わったら花石萌のグラビア写真集見なきゃ)
心矢:(真面目な人でもちゃんと楽しみを持って生きている
心矢:こうやって人は裏の顔を隠すために表の顔で日常を送ってるんだ
心矢:今の僕もそうだけどね)
愛理:心矢?
心矢:・・・っ!
0:心矢は後ろの声に気付き慌てて帽子を被る
愛理:おはよー。慌てて帽子被ってなに?寝癖付いてるの?
心矢:お、おはよう。まぁそんなところかな
愛理:学校で帽子被るの校則違反だよ?
心矢:いいんだよ、先生に許可もらってるから
愛理:そんなんだからクラスでも浮いた存在になるんだよ?帽子取りなさい!
心矢:や、やめろ!これは絶対に外せないんだ
愛理:意味わかんない
心矢:わかろうとしなくていい
愛理:どうせ教えてくれないってわかってるからいいわよ
心矢:物分りが良くて助かるよ
心矢:(この女子は愛理。隣の家に住んでる一応幼なじみだ
心矢:幼なじみと言っても話すようになったのは高校生の頃からだからあまり親しい関係ではない)
愛理:あんたも早く友達作りなさいよ?一人ぼっちの人生なんて寂しいんだから
心矢:めんどくさいな
愛理:なんか言った!?そういうのは心の中で言いなさい!
心矢:(はあ、本当にうるさいなー
心矢:心の中なんて覗いたら見えるじゃないか
心矢:まあ、そんなこと出来るの僕だけなんだけどね)
愛理:んもう。そんなに人に冷たくしなくてもいいじゃない
心矢:別に。冷たくしてはないけど
愛理:そんな態度じゃ嫌われるよ?
心矢:嫌いになればいいよ。僕は人を嫌いになれるほど人に興味がないから、興味持ってくれてどうもありがとう
心矢:君も僕とそんなに仲良くないんだからかまわなくていいよ
愛理:仲良くないって、隣に住んでる幼なじみでしょ?
心矢:話すようになったのは高校生になってからじゃん
愛理:それは私の両親が・・・
心矢:ん?
愛理:なんでもない
心矢:そう?じゃあ僕学校行くから
愛理:あ、ちょっ!
愛理:・・・きも!ムカつく!うざいうざい!
愛理:・・・でも、仲悪い幼なじみなんて寂しいじゃない
0:学校が終わり心矢は家に帰る
心矢:ただいま
千鶴:・・・おかえり
心矢:父さんはまだ帰ってきてないの?
千鶴:まだ仕事よ
心矢:そっか
千鶴:・・・・・
心矢:・・・・・
心矢:(僕は母さんが苦手だ
心矢:昔からあんまり喋らないし何を考えてるかわからない
心矢:僕がこんな風になってしまったから母さんは僕のこと嫌いなんじゃないかとも思ってる)
千鶴:・・・心矢
心矢:ん?
千鶴:お隣の娘さんとは仲良くなれたかしら?
心矢:仲良くはないけど、話すようにはなったよ
千鶴:・・・そう
0:しばらくすると
優斗:たっだいまー!
心矢:おかえり、父さん
優斗:おー心矢ー!高校はどうだー?
心矢:まだわかんないよ。友達もいないし
優斗:友達いないのかー?学校で帽子被ってたら人気者になるだろ
心矢:ならないよ。むしろみんな不思議がってる
優斗:そうかー?でも家でも帽子被ることないだろ?
心矢:いいんだよ。隠させて
心矢:(僕は父さんは嫌いじゃない
心矢:何も考えて無さそうだし脳天気な感じが逆に面白いからだ)
千鶴:あなた、早くご飯食べなさい?
優斗:わかったよ。心矢はもう飯食ったのか?
心矢:うん、食べたよ
優斗:そっか、そういえばお隣の娘さんとは
心矢:(被せるように)仲良くなってない
優斗:なんだー?駅までは一緒じゃないか。話して
心矢:(被せるように)話しただけ。それ以上もそれ以下もないよ
優斗:・・・ははっそうか
心矢:なんでちょっと嬉しそうなの?
優斗:いいやー?何でもないよ
優斗:楽しい高校生活になるといいな
心矢:・・・どうだかね
:場面転換
0:ある日のこと
愛理:あ、いたいた、おーい!心矢ー!
心矢:・・・
愛理:何ぼけーっとしてんの?学校行こ?
心矢:君と僕は同じ学校じゃないよ
愛理:駅は同じなんだから途中までならいいでしょ?
心矢:僕なんかにかまわなくていいって言ったのに
愛理:かまってないの!知ってる人だから話しかけてるだけでしょ?
心矢:・・・知ってる人に話しかけるの?
愛理:当たり前でしょ、バカじゃない?知らない人と学校に行くわけないじゃん。仲良くなろうとしてるのわからない?
心矢:だとしてもわざわざ一緒に学校に行かなくてもよくない?そもそも僕は仲良くなる気はないよ
愛理:じゃあ今すぐ家引っ越して
心矢:ついにボケが始まったの?
愛理:始まらないわよ!ほんとにうざい!
愛理:隣の家に住んでる人と仲良くなれないのって昔からおかしいと思ってたの
心矢:・・・昔からって何?
愛理:昔は昔よ。それ以上の詮索(せんさく)はしないで
愛理:親にも仲良くするなって言われたけど、あんたにまで仲良くなる気がないなんて言われたらムカつくじゃない
愛理:私と仲良くする気がないなら二度と関わらないように引っ越しなさいよ!
心矢:・・・なんで僕なんかに?
愛理:あんた、僕なんかって口癖なの?ダサいよ?
心矢:・・・
愛理:自分のことを好きになれないから人のことも好きになれないの
愛理:だからひとりぼっちになるんだよ
心矢:・・・じゃあ言わせてもらうけどさ、僕の何を知ってるの?
愛理:それは・・・知らないわよ、まだ仲良くないもん
心矢:仲良くもない人の心に付けこもうとするのはやめなよ
愛理:はあ?
心矢:見えないんだろ?心が
愛理:何言ってんの?
心矢:人の心が瞳に映った時、僕はこう思うんだよ
心矢:人は表の顔と裏の顔があるってね
愛理:意味がわかんない。じゃあなに?私が本心で言ってないって思ってるの?
心矢:そうは言ってないよ。でも、僕は軽はずみに心に触れようとする人はどうなのかなって思っただけだから
愛理:だから!それをあんたが言ったら仲良くなれないでしょって言ってんの!
心矢:ならなきゃいいんじゃない?僕なんかにかまってたら君まで人に嫌われちゃうよ。じゃあ、僕はこっちの電車に乗るね
愛理:ちょっと!
愛理:もうー!!本当にムカつくんだけどー!!
愛理:何が人の心に触れるよ!触れなきゃ何も始まらないじゃない!
愛理:何があってあんなにこじらせたのよ
愛理:私はただ・・・あいつに感謝してるだけなのに
0:心矢は家に戻る
心矢:ただいま
千鶴:おかえり
心矢:(母さんとはこれ以上の会話はあまりしない
心矢:何故かはわからないけどそれを楽に感じてる部分はある
心矢:母さんは今の自分のことを好きで居られてるのだろうか?)
優斗:ただいまー!
心矢:おかえり父さん
千鶴:おかえりなさい
優斗:ひぇー。今日は疲れたなー
千鶴:お疲れ様。先お風呂入る?
優斗:おう、先風呂に入ろうかな。心矢はもう飯食ったんだろ?
心矢:食べたよ
優斗:ふっふっふ。一緒に風呂入ろうぜ
心矢:やだよ
優斗:はや!即答で断ることないだろ。
優斗:なんか考え事でもしてるんだろ?
心矢:・・・してないよ
優斗:そうかー?そんな風に見えたけど気のせいだったかな
心矢:先にお風呂入っててよ
優斗:おー?わかった
心矢:(父さんなら何か教えてくれるかな?
心矢:人を好きになる事、自分を好きになること)
:場面転換
優斗:ふぅー。風呂は1日の疲れが一気に取れるなー
優斗:心矢のやつ、なんか考え事してるよなー
優斗:あいつの考えてる事は俺にはわかるぞー。もう高校生だもんな
心矢:父さん、入っていい?
優斗:おー?心矢か?いいぞ
心矢:・・・
優斗:何恥ずかしがってんだよ。男同士だろー?
優斗:額を隠すことは無いだろ?
心矢:・・・いいでしょ?別に
優斗:まあ、他の人と体の作りが違うのは嫌だよな。
心矢:・・・
優斗:額の目は嫌いか?
心矢:・・・嫌いに決まってる
心矢:(僕の額には生まれつき目がある。
心矢:なんかの漫画で見た事があったけど、これは三つ目と言われるものらしい
心矢:もちろん額に目がある人なんて僕以外見たことがない
心矢:僕が普段から帽子を被ってるのはこの三つ目を隠すためだ)
優斗:んまぁそうだよな。額に目がある人なんて居ないし、なかなか人と馴染めないのもわかる
優斗:でも、額に目があるだけであとは何も無いんだろ?
心矢:・・・うん
心矢:(僕は父さんに嘘をついた)
優斗:なら心矢は普通の子だ
心矢:・・・普通?
優斗:そうだ、ただ額に目があるだけの高校生だ
心矢:普通なのかな?
優斗:体は普通じゃないかもしれない。でもな
優斗:心は優しいんだ
心矢:・・・心?
優斗:そうだ。心矢は昔から優しかったんだ
優斗:心矢が小学生の時に、犬を助けたことがあっただろ?
心矢:何となく覚えてる
優斗:目が三つあるおかげか、心矢は周りをよく見てる
優斗:あの犬が誰の犬だったかはわからない。でも、お前は人も動物も助けれる心優しい人間だ
優斗:周りの目が気になると思うけど、心矢、お前はもっと自分を好きになれ
心矢:父さんまで
優斗:1番やってはいけないことは自分を惨め(みじめ)とか醜い(みにくい)人間だと思うことだ
優斗:辛いことがあったり、泣きたいことがあったとしても、たまには強がることも大事だ
優斗:かっこいいでも可愛いでもいい、かっこ悪いでもダサいでもいい。そんな自分を好きになれ
優斗:自分を見つめればきっと未来が明るく見えるはずだ
心矢:・・・
心矢(僕は父さんは嫌いじゃない
心矢:何も考えてないようで色々知っているから
心矢:父さんの言葉も思いも全部伝わる
心矢:父さんの心なら、見てみたいと思える
心矢:僕は隠していた額を父さんに向ける
心矢:この三つ目で父さんの心を見つめてみた
優斗:(心矢、俺は心矢が立派に成長してくれる日をいつまでも待ってるぞ)
心矢:・・・
心矢:(僕は父さんが好きだ。父さんのためにも、1歩踏み出そう)
0:ある日のこと
心矢:・・・おはよう
愛理:・・・えぇ!?
心矢:何をそんな驚いてんの?
愛理:驚くでしょ、何のつもり?
心矢:何のつもりって僕が歩み寄ると不気味がるのやめなよ
愛理:不気味に思うでしょ!日頃の行いが悪すぎるのよ!
愛理:・・・何か用?
心矢:・・・この間はごめん、言い過ぎた
愛理:何よ、今更すぎるわ。許してあげない
心矢:・・・
愛理:なんて思ってたけど別にいいわよ。全部あんたなんでしょ?受け入れるわ
心矢:・・・ありがとう
愛理:だからあんたも、私を受け入れなさいよ
心矢:わかったよ
愛理:やけに素直ね、何かあったの?
心矢:別に。ただ、自分を好きになる方法を僕なりに考えてみたんだ
愛理:何?
心矢:僕を受け入れてくれる人と向き合うこと
愛理:・・・ふーん。それで?
心矢:僕はどう頑張っても自分を好きになれないんだ。
心矢:だから、僕を受け入れてくれる人と向き合うことで自分を見つめて、好きになれるんじゃないかと思って
心矢:教えて欲しいんだ。僕を受け入れてくれる理由を
愛理:・・・そうね、わかったわ。昔の話だけどね
愛理:あんた、うちの犬を助けてくれたでしょ?
心矢:・・・犬?
愛理:そう、たったそれだけ。でも家族を助けてくれたあんたには感謝してるのよ
愛理:だからあんたと仲良くなりたいと思ってたけど私の両親はあんたと関わるなって言うの
愛理:幼稚園も小学校も中学校もあんたとは違う学校に通わされてたのよ。ほんとにうざいよね
愛理:だから高校生になったら私の自由にさせて貰うように反発したの。家が隣なのに目も合わせてもくれないなんて酷い話よ
心矢:・・・そうだったんだ
心矢:あの犬は君の犬だったんだね
愛理:そうよ。何年越しかわからないけどありがとう
心矢:ううん。じゃあ君はどんな僕でも受け入れてくれるの?
愛理:当たり前じゃない
心矢:じゃあ、帽子を取った僕を見ても、受け入れてくれる?
愛理:・・・?
心矢:(僕は手を震わせながら帽子に手をかける
心矢:きっと彼女なら、僕を受け入れてくれるはずだ
心矢:(僕は帽子を取った)
愛理:・・・え?
:場面転換
優斗:よし!来月は心矢の誕生日だな!
千鶴:そうね
優斗:久々の平日休みだし、プレゼントでも買うか
千鶴:・・・それもそうね
優斗:千鶴も行くか?
千鶴:私はいいわ。
優斗:そうか、そしたら家で待っててくれ
優斗:心矢の欲しそうな物があったら連絡するよ
千鶴:うん
優斗:・・・千鶴は心矢を生んで良かったと思えるか?
千鶴:・・・どうしてそんなこと聞くの?
優斗:いいや?千鶴は何も表情を変えないから定期的に聞きたいだけなんだ
優斗:心矢を生んでよかったか?
千鶴:聞くまでもないでしょ?
優斗:・・・そうだな
優斗:じゃあ行ってくる
千鶴:うん。いってらっしゃい
0:今から17年前のこと
優斗:千鶴、どうだった?
千鶴:・・・だめだった
優斗:・・・そうか
千鶴:ごめんね。優斗にまで迷惑かけて
優斗:俺はいいんだよ。一緒にがんばろ?
0:月日は経つ
千鶴:優斗・・・ごめん、まただめだった
優斗:千鶴が謝ることじゃないよ。俺は千鶴が居てくれればそれでいいんだから
千鶴:・・・じゃあ子供は諦めるってこと?
優斗:そ、そうは言ってない
千鶴:そう聞こえたよ
優斗:違うよ
千鶴:違くない!私はあなたに迷惑かけてるの!
優斗:バカなこと言うなよ!迷惑なんて思ってない!
千鶴:・・・ご子供が出来ない身体でごめんね
優斗:・・・千鶴
0:さらに月日は経つ
優斗:ただいまー
優斗:千鶴?何してんだ?
千鶴:・・・見て優斗。子供が出来る薬飲んだの
優斗:・・・どこで貰ってきたんだよ
千鶴:ネットで調べて1番効果が効きそうな物を買ったの
優斗:・・・ネット?それって確かな物なのか?
千鶴:わからない
優斗:ふざけんな!そんな信用出来ない薬なんか飲むなよ!
千鶴:やるだけやった方がいいじゃない!
優斗:俺は!お前の体を心配してるんだよ!
千鶴:っ!・・・ごめんなさい(涙声)
優斗:・・・謝るくらいなら・・・いや、なんでもない
優斗:俺のためを思ってやってくれたんだよな
優斗:ありがとう
0:またある日のこと
千鶴:・・・優斗
優斗:どうだった?
千鶴:子供・・・出来てた
優斗:・・・
優斗:素直に喜んでいいのか?
千鶴:わからない
優也:もし生まれてきた子供に何らかの障害があった時、千鶴はその子を愛せるか?
千鶴:・・・自信はないわ
優斗:どんな障害があったとしても、俺たちが愛さないといけないんだ
優斗:後悔しないように一緒に育てていこう
千鶴:うん
0:2人は生まれてきた子供の姿を見る
千鶴:・・・
優斗:・・・これは
0:三つ目の子供が生まれた
千鶴:・・・優斗
優斗:・・・
千鶴:私、この子のこと捨てる
優斗:・・・何言ってんだよ
千鶴:この子の未来が・・・見えない
優斗:千鶴・・・
千鶴:やっぱり、諦めるべきだったんだ。私があんな薬飲まなきゃ・・・
優斗:千鶴。俺との子を生んでくれてありがとう
千鶴:・・・え?
優斗:千鶴が頑張って生んでくれたこの子を俺たちが愛情を持って育てるんだ
優斗:俺たちがこの子に愛情をあげ続ければきっと明るい未来が見えるはず
優斗:俺と千鶴とこの子と。家族3人で心を一つにする
優斗:幸せな家庭を築いていこう。千鶴
千鶴:・・・優斗
千鶴:ありがとう。優斗。
0:そして現在
優斗:心矢、お前は大丈夫だ。自分を好きになれば必ず明るい未来が見えてくるはずだ
優斗:俺は千鶴と一緒に心矢を育てることが出来て本当によかった
優斗:俺は後悔なんてしてないから。心矢も後悔がないように生きてくれ
優斗:後悔がない生き方しか俺にはわからない
愛理:・・・え?
心矢:僕の額にはもう一つ目があるんだ
心矢:これを見ても君は僕を受け入れてくれるの?
愛理:・・・ちょっと
心矢:(僕はこんな僕を受け入れられない君を受け入れることは出来るんだろうか?
心矢:わからない。分からないからそこ、怖い
心矢:君の心を見つめるのは怖い
心矢:それでも見つめないといけないから、君の心を見るよ
心矢:君は僕を受け入れてくれるって信じてる
愛理:(・・・怖い)
心矢:・・・え?
愛理:(何この目、怖い。気持ち悪い。)
心矢:・・・ねえ
愛理:っ!
愛理:(近寄らないで!化け物!)
心矢:・・・そっか
心矢:そうだよね、僕は化け物だ
愛理:・・・え?
心矢:勝手に君の心に触れてごめん。僕はやっぱり醜い人間だ
愛理:何言ってんの?
心矢:僕はやっぱり君を受け入れることは出来なかった
愛理:ちょ、ちょっと!
0:心矢はまた帽子を深く被り走ってその場から離れた
心矢:(僕はバカだ。こんな目を受け入れてくれる人なんているはずがない
心矢:こんな自分、好きになれるわけが無い
:場面転換
心矢:くっ!
0:心矢は家に戻っていた
千鶴:心矢?あなた、学校は?
心矢:もういいんだよ
千鶴:・・・何を言ってるの?
心矢:もういいんだ!!
心矢:僕を受け入れてくれる人なんて誰もいない!
心矢:こんな目に生まれてきたんだからずっと僕は一人で居るべきだ!
千鶴:・・・心矢
心矢:母さんもそう思うだろ?僕は醜い三つ目の人間
心矢:どう頑張ったって僕には幸せになれる未来なんてない!
心矢:こんな目・・・無くなればいいんだ!
千鶴:心矢・・・
0:心矢は包丁を取り出す
心矢:うわあああああ!!
千鶴:心矢!!
心矢:くっ!離して!母さん!
千鶴:やめなさい!
心矢:どうして!
千鶴: あなたのもう一つの目は普通の目でしょ?
心矢:違う!僕のもう一つの目は普通の目じゃない!
千鶴:・・・何があるの?
心矢:・・・人の心が見えるんだ
千鶴:人の心?
心矢:そうだよ、生まれてからずっとこの目には人の心が映っている
心矢:だから人の心に触れるのが怖かった!人の心に触れて、こんな僕を拒絶する人だって沢山いるだろ
心矢:母さんだっていつも何考えてるかわからない。だから母さんの心を見るのも怖い!
心矢:もう何も見たくないんだよ!
千鶴:・・・心矢
千鶴:それなら、私の心を見てみなさい
心矢:・・・でも
千鶴:見てみなさい
心矢:・・・
0:心矢は帽子を取る
千鶴:(心矢・・・)
千鶴:(愛してるわ)
心矢:・・・え?
千鶴:私の心は見えた?
心矢:・・・うん
千鶴:心矢を生んだのは私よ。全部の責任は私にある。生きたくないとか死にたいと思うなら私は心矢について行くわ
心矢:何言ってんの
千鶴:自分を嫌いになる時もある。どうしようもなく苦しい時もある
千鶴:生きていて辛いことも沢山ある。生きてることに疲れることもある
千鶴:でもね、心矢、それを乗り越えなさい
千鶴:それを乗り越えた先には絶対に幸せが待ってるの
心矢:・・・
千鶴:私は心矢を生んだ事に何度も後悔した
千鶴:心矢にも後悔させてしまうと何度も責めた
千鶴:それでもあなたを受け入れて、あなたを育てて、あなたを愛した
千鶴:あなたを愛して見えた先にあったものは
千鶴:幸せだったの
心矢:・・・母さん
千鶴:こんな身体のあなたでもあなたは可愛かった。愛くるしかった
千鶴:あなたの寝顔も、泣き顔も、笑顔も全部可愛い
千鶴:あなたの存在で再確認出来たの
千鶴:私の心にも愛があったと
心矢:・・・母さん(涙声)
千鶴:例え世界中の人達があなたに非難の目を向けても、どんなにひどい罵声を浴びせても、私の、あなたに対する気持ちは変わらない
千鶴:愛してるわ。心矢
心矢:・・・
心矢:(僕は母さんが苦手だ
心矢:それでも嫌いだと思ったことは一度もない
心矢:それは、母さんも父さんも僕を今まで大切に育ててくれたからだ
心矢:二人の間に生まれてきて良かったと思える)
心矢:・・・ありがとう。母さん
千鶴:いいのよ、心矢。あなたが立派に成長してくれる日をいつまでも待ってるわ
心矢:・・・
心矢:(僕は母さんが好きだ。母さんのためにも前を向いて生きよう)
千鶴:心矢、落ち着いた?
心矢:・・・うん
千鶴:何があったか話してもらえる?
心矢:・・・うん
愛理:心矢ーー!!
心矢:え?
愛理:心矢ーー!!居るのー!?
心矢:この声・・・
愛理:顔出しなさい!
心矢:・・・
千鶴:心矢、行ってきなさい
心矢:・・・でも
千鶴:それでも怖くなったら、また戻ってきなさい
心矢:・・・わかった
0:心矢は家の玄関を開ける
愛理:・・・
心矢:・・・
心矢:(やばい、帽子被るの忘れてた)
心矢:(彼女は今何を・・・)
愛理:(きもい。何なのその目。怖すぎ。きもい。本当にきもい)
心矢:(僕は思い出した。人には表の顔と裏の顔があるって
心矢:つまり彼女も僕と仲良くなりたいのが表の顔で、裏の顔は僕を気持ち悪いと思うこと
心矢:人間なんてそんなもんだ)
愛理:あんたのその目!気持ち悪いのよーー!!
心矢:・・・え?
心矢:・・・え?
愛理:聞こえなかったの!?あんたのその目気持ち悪いの!
心矢:い、いや、聞こえてたよ
愛理:じゃあ言わせてもらうわよ!その目、なんなの!?初見で気持ち悪がらない人なんて居ないわよ!
愛理:それを踏まえた上で、あんたを受け入れたいの!
心矢:・・・
愛理:私は嘘つけないタイプなの。あんたのその目は気持ち悪いし怖い!
愛理:けど、私はそんなあんたを受け入れる!私の家族を助けてくれた感謝は絶対に忘れないんだから!
心矢:・・・
愛理:私の名前を呼びなさい
心矢:え?
愛理:いつまでも君って言われるのむず痒いのよ。仲良くなりたくなきゃ名前で呼ばなくてもいいけどね
心矢:・・・愛理
愛理:何よ、早くそうやって呼びなさいよね?ぎこちないけど
心矢:人の名前、呼び慣れてないだけだよ
優斗:お?心矢?学校はどうしたんだ?
心矢:父さん?
愛理:え?心矢のお父さん?
優斗:あれ?その子はお隣さんの?
愛理:愛理です
優斗:心矢のー・・・友達でいいんだよな?
心矢:友達!
優斗:はっはっは!からかっただけだ。心矢に友達が出来ただけでも父さんは嬉しいぞ
優斗:さあ、せっかくだから中に入って。
愛理:あ、私学校があるんで!
優斗:んー?そうかー?まあ、また心矢と遊んでくれよ
愛理:もちろんですよ!
心矢:・・・
心矢:(僕は彼女の心を見つめる)
愛理:(私ばかりが感謝して、心矢に感謝されないなんて納得出来ないわ
愛理:でも、少しは心矢の心に触れられたかな?)
心矢:・・・愛理!
愛理:ん?
心矢:・・・ありがとう
愛理:ばーか!これからもよろしく!
心矢:・・・ああ
0:愛理はその場を去る
優斗:よし、心矢、父さんとゲームしよう!
心矢:なんでよ。一人でやってよ
優斗:一人でやってもつまんないだろー?な!母さん
千鶴:あなた?心矢に学校サボらせて何してるの?
優斗:・・・え?
千鶴:心矢も早く学校行きなさい
心矢:わ、忘れてた・・・
千鶴:・・・でも、今日くらい悪くないわね
心矢:か、母さん!?
優斗:そうだろ!じゃあ母さんもゲームしよう!
千鶴:一人でやって
優斗:お前らほんと親子だな
心矢:・・・ふふっ
心矢:(僕は父さんと母さんの心を見つめる
心矢:きっと、二人は同じことを思っているだろう)
:優斗、千鶴、同時に
優斗:(心矢を生んでよかった)
千鶴:(心矢を生んでよかった)
心矢:(僕もそう思う)
心矢:(二人の間に生まれてきてよかった)
心矢:(そして、僕を受け入れてくれる愛理に出会えてよかった)
心矢:(人は表の顔と裏の顔があると思っていたけど)
心矢:(僕の周りの人は、本音しか言えないみたいだ)
心矢:(僕を受け入れてくれる人たちのおかげで僕は自分を好きになれる)
心矢:(そうやって。三つ目の僕は自分の心を見つめる)
〜End〜
心矢:(人は表の顔と裏の顔がある
心矢:表の顔は自分以外の人に見せる仮面を被った悪魔だ
心矢:誰々ちゃんは優しいねとか、誰々君は面白いねとか、表面はいい顔してるだけで人はその人をいい人だと判断する
心矢:でもどうだ。みんなはその人の裏の顔を知らないだろう
心矢:みんな知らないくせに知ったようなことを言うんだ
心矢:例えばそこの綺麗な女の人は何を考えてるんだろう
心矢:僕にはそれがわかる)
:(はあ、今の彼氏とさっさっと別れてイケメンの空君と付き合いたいなー)
心矢:(裏の顔はこう思ってるらしい
心矢:表では彼氏さんと付き合ってるのにも関わらず裏では他の男の人と付き合いたいと言っている。酷い人だな
心矢:あの真面目そうな男の人は?)
:(仕事終わったら花石萌のグラビア写真集見なきゃ)
心矢:(真面目な人でもちゃんと楽しみを持って生きている
心矢:こうやって人は裏の顔を隠すために表の顔で日常を送ってるんだ
心矢:今の僕もそうだけどね)
愛理:心矢?
心矢:・・・っ!
0:心矢は後ろの声に気付き慌てて帽子を被る
愛理:おはよー。慌てて帽子被ってなに?寝癖付いてるの?
心矢:お、おはよう。まぁそんなところかな
愛理:学校で帽子被るの校則違反だよ?
心矢:いいんだよ、先生に許可もらってるから
愛理:そんなんだからクラスでも浮いた存在になるんだよ?帽子取りなさい!
心矢:や、やめろ!これは絶対に外せないんだ
愛理:意味わかんない
心矢:わかろうとしなくていい
愛理:どうせ教えてくれないってわかってるからいいわよ
心矢:物分りが良くて助かるよ
心矢:(この女子は愛理。隣の家に住んでる一応幼なじみだ
心矢:幼なじみと言っても話すようになったのは高校生の頃からだからあまり親しい関係ではない)
愛理:あんたも早く友達作りなさいよ?一人ぼっちの人生なんて寂しいんだから
心矢:めんどくさいな
愛理:なんか言った!?そういうのは心の中で言いなさい!
心矢:(はあ、本当にうるさいなー
心矢:心の中なんて覗いたら見えるじゃないか
心矢:まあ、そんなこと出来るの僕だけなんだけどね)
愛理:んもう。そんなに人に冷たくしなくてもいいじゃない
心矢:別に。冷たくしてはないけど
愛理:そんな態度じゃ嫌われるよ?
心矢:嫌いになればいいよ。僕は人を嫌いになれるほど人に興味がないから、興味持ってくれてどうもありがとう
心矢:君も僕とそんなに仲良くないんだからかまわなくていいよ
愛理:仲良くないって、隣に住んでる幼なじみでしょ?
心矢:話すようになったのは高校生になってからじゃん
愛理:それは私の両親が・・・
心矢:ん?
愛理:なんでもない
心矢:そう?じゃあ僕学校行くから
愛理:あ、ちょっ!
愛理:・・・きも!ムカつく!うざいうざい!
愛理:・・・でも、仲悪い幼なじみなんて寂しいじゃない
0:学校が終わり心矢は家に帰る
心矢:ただいま
千鶴:・・・おかえり
心矢:父さんはまだ帰ってきてないの?
千鶴:まだ仕事よ
心矢:そっか
千鶴:・・・・・
心矢:・・・・・
心矢:(僕は母さんが苦手だ
心矢:昔からあんまり喋らないし何を考えてるかわからない
心矢:僕がこんな風になってしまったから母さんは僕のこと嫌いなんじゃないかとも思ってる)
千鶴:・・・心矢
心矢:ん?
千鶴:お隣の娘さんとは仲良くなれたかしら?
心矢:仲良くはないけど、話すようにはなったよ
千鶴:・・・そう
0:しばらくすると
優斗:たっだいまー!
心矢:おかえり、父さん
優斗:おー心矢ー!高校はどうだー?
心矢:まだわかんないよ。友達もいないし
優斗:友達いないのかー?学校で帽子被ってたら人気者になるだろ
心矢:ならないよ。むしろみんな不思議がってる
優斗:そうかー?でも家でも帽子被ることないだろ?
心矢:いいんだよ。隠させて
心矢:(僕は父さんは嫌いじゃない
心矢:何も考えて無さそうだし脳天気な感じが逆に面白いからだ)
千鶴:あなた、早くご飯食べなさい?
優斗:わかったよ。心矢はもう飯食ったのか?
心矢:うん、食べたよ
優斗:そっか、そういえばお隣の娘さんとは
心矢:(被せるように)仲良くなってない
優斗:なんだー?駅までは一緒じゃないか。話して
心矢:(被せるように)話しただけ。それ以上もそれ以下もないよ
優斗:・・・ははっそうか
心矢:なんでちょっと嬉しそうなの?
優斗:いいやー?何でもないよ
優斗:楽しい高校生活になるといいな
心矢:・・・どうだかね
:場面転換
0:ある日のこと
愛理:あ、いたいた、おーい!心矢ー!
心矢:・・・
愛理:何ぼけーっとしてんの?学校行こ?
心矢:君と僕は同じ学校じゃないよ
愛理:駅は同じなんだから途中までならいいでしょ?
心矢:僕なんかにかまわなくていいって言ったのに
愛理:かまってないの!知ってる人だから話しかけてるだけでしょ?
心矢:・・・知ってる人に話しかけるの?
愛理:当たり前でしょ、バカじゃない?知らない人と学校に行くわけないじゃん。仲良くなろうとしてるのわからない?
心矢:だとしてもわざわざ一緒に学校に行かなくてもよくない?そもそも僕は仲良くなる気はないよ
愛理:じゃあ今すぐ家引っ越して
心矢:ついにボケが始まったの?
愛理:始まらないわよ!ほんとにうざい!
愛理:隣の家に住んでる人と仲良くなれないのって昔からおかしいと思ってたの
心矢:・・・昔からって何?
愛理:昔は昔よ。それ以上の詮索(せんさく)はしないで
愛理:親にも仲良くするなって言われたけど、あんたにまで仲良くなる気がないなんて言われたらムカつくじゃない
愛理:私と仲良くする気がないなら二度と関わらないように引っ越しなさいよ!
心矢:・・・なんで僕なんかに?
愛理:あんた、僕なんかって口癖なの?ダサいよ?
心矢:・・・
愛理:自分のことを好きになれないから人のことも好きになれないの
愛理:だからひとりぼっちになるんだよ
心矢:・・・じゃあ言わせてもらうけどさ、僕の何を知ってるの?
愛理:それは・・・知らないわよ、まだ仲良くないもん
心矢:仲良くもない人の心に付けこもうとするのはやめなよ
愛理:はあ?
心矢:見えないんだろ?心が
愛理:何言ってんの?
心矢:人の心が瞳に映った時、僕はこう思うんだよ
心矢:人は表の顔と裏の顔があるってね
愛理:意味がわかんない。じゃあなに?私が本心で言ってないって思ってるの?
心矢:そうは言ってないよ。でも、僕は軽はずみに心に触れようとする人はどうなのかなって思っただけだから
愛理:だから!それをあんたが言ったら仲良くなれないでしょって言ってんの!
心矢:ならなきゃいいんじゃない?僕なんかにかまってたら君まで人に嫌われちゃうよ。じゃあ、僕はこっちの電車に乗るね
愛理:ちょっと!
愛理:もうー!!本当にムカつくんだけどー!!
愛理:何が人の心に触れるよ!触れなきゃ何も始まらないじゃない!
愛理:何があってあんなにこじらせたのよ
愛理:私はただ・・・あいつに感謝してるだけなのに
0:心矢は家に戻る
心矢:ただいま
千鶴:おかえり
心矢:(母さんとはこれ以上の会話はあまりしない
心矢:何故かはわからないけどそれを楽に感じてる部分はある
心矢:母さんは今の自分のことを好きで居られてるのだろうか?)
優斗:ただいまー!
心矢:おかえり父さん
千鶴:おかえりなさい
優斗:ひぇー。今日は疲れたなー
千鶴:お疲れ様。先お風呂入る?
優斗:おう、先風呂に入ろうかな。心矢はもう飯食ったんだろ?
心矢:食べたよ
優斗:ふっふっふ。一緒に風呂入ろうぜ
心矢:やだよ
優斗:はや!即答で断ることないだろ。
優斗:なんか考え事でもしてるんだろ?
心矢:・・・してないよ
優斗:そうかー?そんな風に見えたけど気のせいだったかな
心矢:先にお風呂入っててよ
優斗:おー?わかった
心矢:(父さんなら何か教えてくれるかな?
心矢:人を好きになる事、自分を好きになること)
:場面転換
優斗:ふぅー。風呂は1日の疲れが一気に取れるなー
優斗:心矢のやつ、なんか考え事してるよなー
優斗:あいつの考えてる事は俺にはわかるぞー。もう高校生だもんな
心矢:父さん、入っていい?
優斗:おー?心矢か?いいぞ
心矢:・・・
優斗:何恥ずかしがってんだよ。男同士だろー?
優斗:額を隠すことは無いだろ?
心矢:・・・いいでしょ?別に
優斗:まあ、他の人と体の作りが違うのは嫌だよな。
心矢:・・・
優斗:額の目は嫌いか?
心矢:・・・嫌いに決まってる
心矢:(僕の額には生まれつき目がある。
心矢:なんかの漫画で見た事があったけど、これは三つ目と言われるものらしい
心矢:もちろん額に目がある人なんて僕以外見たことがない
心矢:僕が普段から帽子を被ってるのはこの三つ目を隠すためだ)
優斗:んまぁそうだよな。額に目がある人なんて居ないし、なかなか人と馴染めないのもわかる
優斗:でも、額に目があるだけであとは何も無いんだろ?
心矢:・・・うん
心矢:(僕は父さんに嘘をついた)
優斗:なら心矢は普通の子だ
心矢:・・・普通?
優斗:そうだ、ただ額に目があるだけの高校生だ
心矢:普通なのかな?
優斗:体は普通じゃないかもしれない。でもな
優斗:心は優しいんだ
心矢:・・・心?
優斗:そうだ。心矢は昔から優しかったんだ
優斗:心矢が小学生の時に、犬を助けたことがあっただろ?
心矢:何となく覚えてる
優斗:目が三つあるおかげか、心矢は周りをよく見てる
優斗:あの犬が誰の犬だったかはわからない。でも、お前は人も動物も助けれる心優しい人間だ
優斗:周りの目が気になると思うけど、心矢、お前はもっと自分を好きになれ
心矢:父さんまで
優斗:1番やってはいけないことは自分を惨め(みじめ)とか醜い(みにくい)人間だと思うことだ
優斗:辛いことがあったり、泣きたいことがあったとしても、たまには強がることも大事だ
優斗:かっこいいでも可愛いでもいい、かっこ悪いでもダサいでもいい。そんな自分を好きになれ
優斗:自分を見つめればきっと未来が明るく見えるはずだ
心矢:・・・
心矢(僕は父さんは嫌いじゃない
心矢:何も考えてないようで色々知っているから
心矢:父さんの言葉も思いも全部伝わる
心矢:父さんの心なら、見てみたいと思える
心矢:僕は隠していた額を父さんに向ける
心矢:この三つ目で父さんの心を見つめてみた
優斗:(心矢、俺は心矢が立派に成長してくれる日をいつまでも待ってるぞ)
心矢:・・・
心矢:(僕は父さんが好きだ。父さんのためにも、1歩踏み出そう)
0:ある日のこと
心矢:・・・おはよう
愛理:・・・えぇ!?
心矢:何をそんな驚いてんの?
愛理:驚くでしょ、何のつもり?
心矢:何のつもりって僕が歩み寄ると不気味がるのやめなよ
愛理:不気味に思うでしょ!日頃の行いが悪すぎるのよ!
愛理:・・・何か用?
心矢:・・・この間はごめん、言い過ぎた
愛理:何よ、今更すぎるわ。許してあげない
心矢:・・・
愛理:なんて思ってたけど別にいいわよ。全部あんたなんでしょ?受け入れるわ
心矢:・・・ありがとう
愛理:だからあんたも、私を受け入れなさいよ
心矢:わかったよ
愛理:やけに素直ね、何かあったの?
心矢:別に。ただ、自分を好きになる方法を僕なりに考えてみたんだ
愛理:何?
心矢:僕を受け入れてくれる人と向き合うこと
愛理:・・・ふーん。それで?
心矢:僕はどう頑張っても自分を好きになれないんだ。
心矢:だから、僕を受け入れてくれる人と向き合うことで自分を見つめて、好きになれるんじゃないかと思って
心矢:教えて欲しいんだ。僕を受け入れてくれる理由を
愛理:・・・そうね、わかったわ。昔の話だけどね
愛理:あんた、うちの犬を助けてくれたでしょ?
心矢:・・・犬?
愛理:そう、たったそれだけ。でも家族を助けてくれたあんたには感謝してるのよ
愛理:だからあんたと仲良くなりたいと思ってたけど私の両親はあんたと関わるなって言うの
愛理:幼稚園も小学校も中学校もあんたとは違う学校に通わされてたのよ。ほんとにうざいよね
愛理:だから高校生になったら私の自由にさせて貰うように反発したの。家が隣なのに目も合わせてもくれないなんて酷い話よ
心矢:・・・そうだったんだ
心矢:あの犬は君の犬だったんだね
愛理:そうよ。何年越しかわからないけどありがとう
心矢:ううん。じゃあ君はどんな僕でも受け入れてくれるの?
愛理:当たり前じゃない
心矢:じゃあ、帽子を取った僕を見ても、受け入れてくれる?
愛理:・・・?
心矢:(僕は手を震わせながら帽子に手をかける
心矢:きっと彼女なら、僕を受け入れてくれるはずだ
心矢:(僕は帽子を取った)
愛理:・・・え?
:場面転換
優斗:よし!来月は心矢の誕生日だな!
千鶴:そうね
優斗:久々の平日休みだし、プレゼントでも買うか
千鶴:・・・それもそうね
優斗:千鶴も行くか?
千鶴:私はいいわ。
優斗:そうか、そしたら家で待っててくれ
優斗:心矢の欲しそうな物があったら連絡するよ
千鶴:うん
優斗:・・・千鶴は心矢を生んで良かったと思えるか?
千鶴:・・・どうしてそんなこと聞くの?
優斗:いいや?千鶴は何も表情を変えないから定期的に聞きたいだけなんだ
優斗:心矢を生んでよかったか?
千鶴:聞くまでもないでしょ?
優斗:・・・そうだな
優斗:じゃあ行ってくる
千鶴:うん。いってらっしゃい
0:今から17年前のこと
優斗:千鶴、どうだった?
千鶴:・・・だめだった
優斗:・・・そうか
千鶴:ごめんね。優斗にまで迷惑かけて
優斗:俺はいいんだよ。一緒にがんばろ?
0:月日は経つ
千鶴:優斗・・・ごめん、まただめだった
優斗:千鶴が謝ることじゃないよ。俺は千鶴が居てくれればそれでいいんだから
千鶴:・・・じゃあ子供は諦めるってこと?
優斗:そ、そうは言ってない
千鶴:そう聞こえたよ
優斗:違うよ
千鶴:違くない!私はあなたに迷惑かけてるの!
優斗:バカなこと言うなよ!迷惑なんて思ってない!
千鶴:・・・ご子供が出来ない身体でごめんね
優斗:・・・千鶴
0:さらに月日は経つ
優斗:ただいまー
優斗:千鶴?何してんだ?
千鶴:・・・見て優斗。子供が出来る薬飲んだの
優斗:・・・どこで貰ってきたんだよ
千鶴:ネットで調べて1番効果が効きそうな物を買ったの
優斗:・・・ネット?それって確かな物なのか?
千鶴:わからない
優斗:ふざけんな!そんな信用出来ない薬なんか飲むなよ!
千鶴:やるだけやった方がいいじゃない!
優斗:俺は!お前の体を心配してるんだよ!
千鶴:っ!・・・ごめんなさい(涙声)
優斗:・・・謝るくらいなら・・・いや、なんでもない
優斗:俺のためを思ってやってくれたんだよな
優斗:ありがとう
0:またある日のこと
千鶴:・・・優斗
優斗:どうだった?
千鶴:子供・・・出来てた
優斗:・・・
優斗:素直に喜んでいいのか?
千鶴:わからない
優也:もし生まれてきた子供に何らかの障害があった時、千鶴はその子を愛せるか?
千鶴:・・・自信はないわ
優斗:どんな障害があったとしても、俺たちが愛さないといけないんだ
優斗:後悔しないように一緒に育てていこう
千鶴:うん
0:2人は生まれてきた子供の姿を見る
千鶴:・・・
優斗:・・・これは
0:三つ目の子供が生まれた
千鶴:・・・優斗
優斗:・・・
千鶴:私、この子のこと捨てる
優斗:・・・何言ってんだよ
千鶴:この子の未来が・・・見えない
優斗:千鶴・・・
千鶴:やっぱり、諦めるべきだったんだ。私があんな薬飲まなきゃ・・・
優斗:千鶴。俺との子を生んでくれてありがとう
千鶴:・・・え?
優斗:千鶴が頑張って生んでくれたこの子を俺たちが愛情を持って育てるんだ
優斗:俺たちがこの子に愛情をあげ続ければきっと明るい未来が見えるはず
優斗:俺と千鶴とこの子と。家族3人で心を一つにする
優斗:幸せな家庭を築いていこう。千鶴
千鶴:・・・優斗
千鶴:ありがとう。優斗。
0:そして現在
優斗:心矢、お前は大丈夫だ。自分を好きになれば必ず明るい未来が見えてくるはずだ
優斗:俺は千鶴と一緒に心矢を育てることが出来て本当によかった
優斗:俺は後悔なんてしてないから。心矢も後悔がないように生きてくれ
優斗:後悔がない生き方しか俺にはわからない
愛理:・・・え?
心矢:僕の額にはもう一つ目があるんだ
心矢:これを見ても君は僕を受け入れてくれるの?
愛理:・・・ちょっと
心矢:(僕はこんな僕を受け入れられない君を受け入れることは出来るんだろうか?
心矢:わからない。分からないからそこ、怖い
心矢:君の心を見つめるのは怖い
心矢:それでも見つめないといけないから、君の心を見るよ
心矢:君は僕を受け入れてくれるって信じてる
愛理:(・・・怖い)
心矢:・・・え?
愛理:(何この目、怖い。気持ち悪い。)
心矢:・・・ねえ
愛理:っ!
愛理:(近寄らないで!化け物!)
心矢:・・・そっか
心矢:そうだよね、僕は化け物だ
愛理:・・・え?
心矢:勝手に君の心に触れてごめん。僕はやっぱり醜い人間だ
愛理:何言ってんの?
心矢:僕はやっぱり君を受け入れることは出来なかった
愛理:ちょ、ちょっと!
0:心矢はまた帽子を深く被り走ってその場から離れた
心矢:(僕はバカだ。こんな目を受け入れてくれる人なんているはずがない
心矢:こんな自分、好きになれるわけが無い
:場面転換
心矢:くっ!
0:心矢は家に戻っていた
千鶴:心矢?あなた、学校は?
心矢:もういいんだよ
千鶴:・・・何を言ってるの?
心矢:もういいんだ!!
心矢:僕を受け入れてくれる人なんて誰もいない!
心矢:こんな目に生まれてきたんだからずっと僕は一人で居るべきだ!
千鶴:・・・心矢
心矢:母さんもそう思うだろ?僕は醜い三つ目の人間
心矢:どう頑張ったって僕には幸せになれる未来なんてない!
心矢:こんな目・・・無くなればいいんだ!
千鶴:心矢・・・
0:心矢は包丁を取り出す
心矢:うわあああああ!!
千鶴:心矢!!
心矢:くっ!離して!母さん!
千鶴:やめなさい!
心矢:どうして!
千鶴: あなたのもう一つの目は普通の目でしょ?
心矢:違う!僕のもう一つの目は普通の目じゃない!
千鶴:・・・何があるの?
心矢:・・・人の心が見えるんだ
千鶴:人の心?
心矢:そうだよ、生まれてからずっとこの目には人の心が映っている
心矢:だから人の心に触れるのが怖かった!人の心に触れて、こんな僕を拒絶する人だって沢山いるだろ
心矢:母さんだっていつも何考えてるかわからない。だから母さんの心を見るのも怖い!
心矢:もう何も見たくないんだよ!
千鶴:・・・心矢
千鶴:それなら、私の心を見てみなさい
心矢:・・・でも
千鶴:見てみなさい
心矢:・・・
0:心矢は帽子を取る
千鶴:(心矢・・・)
千鶴:(愛してるわ)
心矢:・・・え?
千鶴:私の心は見えた?
心矢:・・・うん
千鶴:心矢を生んだのは私よ。全部の責任は私にある。生きたくないとか死にたいと思うなら私は心矢について行くわ
心矢:何言ってんの
千鶴:自分を嫌いになる時もある。どうしようもなく苦しい時もある
千鶴:生きていて辛いことも沢山ある。生きてることに疲れることもある
千鶴:でもね、心矢、それを乗り越えなさい
千鶴:それを乗り越えた先には絶対に幸せが待ってるの
心矢:・・・
千鶴:私は心矢を生んだ事に何度も後悔した
千鶴:心矢にも後悔させてしまうと何度も責めた
千鶴:それでもあなたを受け入れて、あなたを育てて、あなたを愛した
千鶴:あなたを愛して見えた先にあったものは
千鶴:幸せだったの
心矢:・・・母さん
千鶴:こんな身体のあなたでもあなたは可愛かった。愛くるしかった
千鶴:あなたの寝顔も、泣き顔も、笑顔も全部可愛い
千鶴:あなたの存在で再確認出来たの
千鶴:私の心にも愛があったと
心矢:・・・母さん(涙声)
千鶴:例え世界中の人達があなたに非難の目を向けても、どんなにひどい罵声を浴びせても、私の、あなたに対する気持ちは変わらない
千鶴:愛してるわ。心矢
心矢:・・・
心矢:(僕は母さんが苦手だ
心矢:それでも嫌いだと思ったことは一度もない
心矢:それは、母さんも父さんも僕を今まで大切に育ててくれたからだ
心矢:二人の間に生まれてきて良かったと思える)
心矢:・・・ありがとう。母さん
千鶴:いいのよ、心矢。あなたが立派に成長してくれる日をいつまでも待ってるわ
心矢:・・・
心矢:(僕は母さんが好きだ。母さんのためにも前を向いて生きよう)
千鶴:心矢、落ち着いた?
心矢:・・・うん
千鶴:何があったか話してもらえる?
心矢:・・・うん
愛理:心矢ーー!!
心矢:え?
愛理:心矢ーー!!居るのー!?
心矢:この声・・・
愛理:顔出しなさい!
心矢:・・・
千鶴:心矢、行ってきなさい
心矢:・・・でも
千鶴:それでも怖くなったら、また戻ってきなさい
心矢:・・・わかった
0:心矢は家の玄関を開ける
愛理:・・・
心矢:・・・
心矢:(やばい、帽子被るの忘れてた)
心矢:(彼女は今何を・・・)
愛理:(きもい。何なのその目。怖すぎ。きもい。本当にきもい)
心矢:(僕は思い出した。人には表の顔と裏の顔があるって
心矢:つまり彼女も僕と仲良くなりたいのが表の顔で、裏の顔は僕を気持ち悪いと思うこと
心矢:人間なんてそんなもんだ)
愛理:あんたのその目!気持ち悪いのよーー!!
心矢:・・・え?
心矢:・・・え?
愛理:聞こえなかったの!?あんたのその目気持ち悪いの!
心矢:い、いや、聞こえてたよ
愛理:じゃあ言わせてもらうわよ!その目、なんなの!?初見で気持ち悪がらない人なんて居ないわよ!
愛理:それを踏まえた上で、あんたを受け入れたいの!
心矢:・・・
愛理:私は嘘つけないタイプなの。あんたのその目は気持ち悪いし怖い!
愛理:けど、私はそんなあんたを受け入れる!私の家族を助けてくれた感謝は絶対に忘れないんだから!
心矢:・・・
愛理:私の名前を呼びなさい
心矢:え?
愛理:いつまでも君って言われるのむず痒いのよ。仲良くなりたくなきゃ名前で呼ばなくてもいいけどね
心矢:・・・愛理
愛理:何よ、早くそうやって呼びなさいよね?ぎこちないけど
心矢:人の名前、呼び慣れてないだけだよ
優斗:お?心矢?学校はどうしたんだ?
心矢:父さん?
愛理:え?心矢のお父さん?
優斗:あれ?その子はお隣さんの?
愛理:愛理です
優斗:心矢のー・・・友達でいいんだよな?
心矢:友達!
優斗:はっはっは!からかっただけだ。心矢に友達が出来ただけでも父さんは嬉しいぞ
優斗:さあ、せっかくだから中に入って。
愛理:あ、私学校があるんで!
優斗:んー?そうかー?まあ、また心矢と遊んでくれよ
愛理:もちろんですよ!
心矢:・・・
心矢:(僕は彼女の心を見つめる)
愛理:(私ばかりが感謝して、心矢に感謝されないなんて納得出来ないわ
愛理:でも、少しは心矢の心に触れられたかな?)
心矢:・・・愛理!
愛理:ん?
心矢:・・・ありがとう
愛理:ばーか!これからもよろしく!
心矢:・・・ああ
0:愛理はその場を去る
優斗:よし、心矢、父さんとゲームしよう!
心矢:なんでよ。一人でやってよ
優斗:一人でやってもつまんないだろー?な!母さん
千鶴:あなた?心矢に学校サボらせて何してるの?
優斗:・・・え?
千鶴:心矢も早く学校行きなさい
心矢:わ、忘れてた・・・
千鶴:・・・でも、今日くらい悪くないわね
心矢:か、母さん!?
優斗:そうだろ!じゃあ母さんもゲームしよう!
千鶴:一人でやって
優斗:お前らほんと親子だな
心矢:・・・ふふっ
心矢:(僕は父さんと母さんの心を見つめる
心矢:きっと、二人は同じことを思っているだろう)
:優斗、千鶴、同時に
優斗:(心矢を生んでよかった)
千鶴:(心矢を生んでよかった)
心矢:(僕もそう思う)
心矢:(二人の間に生まれてきてよかった)
心矢:(そして、僕を受け入れてくれる愛理に出会えてよかった)
心矢:(人は表の顔と裏の顔があると思っていたけど)
心矢:(僕の周りの人は、本音しか言えないみたいだ)
心矢:(僕を受け入れてくれる人たちのおかげで僕は自分を好きになれる)
心矢:(そうやって。三つ目の僕は自分の心を見つめる)
〜End〜