台本概要

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タイトル 輪廻外の輪舞曲
作者名 maturit  (@inui_maturi)
ジャンル ミステリー
演者人数 4人用台本(男1、女2、不問1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 メリーバッドエンドを意識して書かせて頂きました

必要に応じて加筆か続編書きます

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
マリア 131
カナリア 84
サリエル 73
シンク 不問 50
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
マリア:「酷い夢だわ」 カナリア:「私の小鳥さん……歌って、私は貴方を傷つけたりしない」 マリア:「身体が動かないわ…どうしてこんな事をするのかしら?」 カナリア:「貴方が私の手から逃げようとするから…貴方を守る為なの…わかるでしょう?」 マリア:「ええ、わかるわ。だから私の手と足が無いのね…酷く痛いわ」 カナリア:「これで貴方は私だけの小鳥さん」 マリア:「さすがにこれは…死ぬしかないわね」 カナリア:「奥歯の毒薬は抜いてあげたわ、だって危ないでしょう?」 マリア:「口の違和感はそれだったのね、でも足りないわ」 カナリア:「え?」 マリア:「私には死の天使がついているのだから」 サリエル:「随分(ずいぶん)探したぞ?契約どおりに殺すが問題ないか?」 カナリア:「誰よ貴方!!」 マリア:「お願い」 サリエル:「難儀(なんぎ)な人生だな」 マリア:「貴方ほどでは無いわ」 カナリア:「私の小鳥から離れて!!」 サリエル:「あの煩(うるさ)いのはどうする?」 マリア:「好きにすれば? どうせ、その後がどうなったかなんて私には関係ないもの」 サリエル:「そうか、じゃあな主様」 マリア:「ありがとう……またお願いね」 サリエル:「理解不能だ」 マリア:銃声が響く、誰かの嘆(なげ)きが木霊(こだま)する、彼が笑いながら溜息(ためいき)を漏(も)らす。これは夢、夢だったという事にした 0: 0:(タイトルコール) 0:【輪廻外の輪舞曲】 0:(誰か呼んでください) 0: 0:早朝、マリアの部屋にて、マリアが起床する マリア:「最悪の寝起きね」 サリエル:「君が気持ちよく起きる所は見たことが無い」 マリア:「居たのね、あぁそういえば居たわね」 サリエル:「君は僕の理解を越えている」 マリア:「そうね、でもこの世で一番信用できるのも、私を理解しているのもアナタよ」 サリエル:「嬉しくないね」 マリア:「そろそろカナリアが来るわ」 サリエル:「わかったよ」 マリア:「契約は忘れないでね…とくに今日は」 サリエル:「抜かりない」 0:カナリアが扉を勢いよく開き部屋に入ってくる、同時にサリエルが隠れる カナリア:「マーリーアー!!朝よーっ!!」 マリア:「もう起きてるわカナリア、それと抱きつくのは良いけれど、朝から暑苦(あつくる)しいわ」 カナリア:「それは残念、あれ?誰かいた?」 マリア:「誰もいないわ、どうかしたの?」 カナリア:「んー気のせいね、部屋に来る途中に誰かの声が聞こえたのよ」 マリア:「他の部屋の誰かじゃないかしら」 カナリア:「そうかもっ!」 マリア:「ところで今日は早いのね」 カナリア:「礼拝堂(れいはいどう)で歌を歌う日よっ!マリアの歌声が聞ける日なのよ?」 マリア:「歌は嫌いだわ」 カナリア:「そんなぁ、歌は良い物よ?心から幸せになれる!!」 マリア:「(小声で)貴方に監禁されるくらいにはね」 カナリア:「監禁?」 マリア:「なんでもないわ」 カナリア:「そう…それならいいのだけど」 マリア:「準備するから先に行ってて」 カナリア:「着替えなら手伝うわ!」 マリア:「出ていって」 カナリア:「でもぉ」 マリア:「出ていきなさい」 カナリア:「はーい」 0:カナリアが部屋から出る マリア:「朝から疲れるわ」 サリエル:「あいつは厄介(やっかい)だな」 マリア:「アナタもよ、部屋から出ていって」 サリエル:「はいはい」 マリア:「どうだ、忘れる所だったわ」 サリエル:「なんだ?」 マリア:「これを持っていきなさい」 0:マリアが鍵を投げる サリエル:「これは?」 マリア:「カナリアの部屋の鍵よ」 サリエル:「見かけによらず手癖(てくせ)が悪いんだな」 マリア:「あら、女性を見た目で判断してはダメよ?」 サリエル:「はぁ(溜息)…これでどうしろと?」 マリア:「タンスの裏に隠し部屋があるわ、そこを調べて鍵を…昼過ぎにでも渡しに来なさい」 サリエル:「おいおい、探偵じゃないんだぞ」 マリア:「知ってるわ、でも簡単なお使いよ?」 サリエル:「はいはい、わかりましたよ主様」 0:サリエルが部屋から出る マリア:「今日は長い夜になりそうだわ」 0:(長い間) 0:マリアが支度を済ませ、礼拝堂へ向かう 0:礼拝堂の入口にてカナリアと合流 カナリア:「あーやっと来た!」 マリア:「ごめんなさい、待ったかしら?」 カナリア:「そうね、早朝から待ち遠しかったわ!!」 マリア:「そう」 カナリア:「さあ歌いましょうマリア」 マリア:「私は見学でいいわ、喉が痛いの」 カナリア:「そんなぁぁ」 マリア:「だから、ごめんなさいね」 シンク:「おや?マリアは今日も見学かい?」 カナリア:「シンクからも言ってよっ!」 マリア:「…面倒なのが来たわね」 シンク:「僕の事が嫌いなマリアに助言しよう」 マリア:「何かしら?」 シンク:「先延ばしは取り返しのつかない過ちとなるモノだよ」 マリア:「そうね、正論ね…私以外には響くかもしれないわ」 シンク:「君に響かなければこの問答は意味が無いよ」 マリア:「でも…意味はあるわ」 カナリア:「マリア?」 マリア:「歌うわ」 カナリア:「本当にっ!?」 マリア:「ええ、でもシンク…貴方にはひとつお願いを聞いて欲しいの」 シンク:「何かな?」 マリア:「貴方がもしも夜にオオカミに襲(おそ)われるとしたら…何処に銃を隠すかしら?」 シンク:「ふむ…僕ならば天井かな」 マリア:「そうなのね…私はベッドの下よ」 シンク:「…」 0:マリアがシンクの手を握る マリア:「…わかるわね?」 カナリア:「え?なんの話?」 マリア:「単なる世間話よ」 0:マリアがシンクから離れる シンク:「なかなかに愉快(ゆかい)だね」 マリア:「シンク…お願いね」 シンク:「いいだろう、でも…貸(かし)ひとつだよ」 マリア:「高くついたわね」 シンク:「なら、無かった事にするかい?」 マリア:「いいわ、何がどう絡むかなんて分からないもの」 シンク:「流石は未来を見通す聖女」 マリア:「私に未来なんて分からないわ…起こる事しかわからないわ」 カナリア:「もう、難しい話してないで!」 マリア:「ごめんなさいね、カナリア」 カナリア:「いいのよ、それで…歌ってくれるのよねっ!?」 マリア:「いいわよ」 カナリア:「やったぁ!やっとマリアの歌声が聞けるわっ!」 マリア:「気が重いわ」 シンク:「じゃあ、頑張ってね」 マリア:「やれるだけはやるけども…祝福は期待できないわね」 シンク:「…ここにあるのは償(つぐな)いだけさ」 マリア:「それは貴方もかしら?」 シンク:「どうかな」 カナリア:「ほら行くわよマリアっ!」 マリア:「引っ張らないで欲しいわ」 カナリア:「時間は有限なのよ!」 マリア:「(小声)私にとっては無限よ」 カナリア:「何か言った?」 マリア:「いいえ、なにも」 カナリア:「そう?じゃあ歌いましょう!」 0:(長い間) 0:礼拝堂にてカナリアの隣にて歌を歌う 0:歌の後からカナリアが一言もマリアに声を掛けずに礼拝堂から出ていく 0:人気のない庭にてマリアが空を眺めている マリア:「これは再現ね」 サリエル:「サボりか?」 マリア:「貴方を待っていたのよ」 サリエル:「そうですか、流石は聖女様」 マリア:「やっぱりあの時近くに居たのね、気づかれていたわよ」 サリエル:「本当にここは面倒な奴らばかりだ」 マリア:「じゃあ逃げ出してみる?」 サリエル:「面倒だとは言ったが…脅威(きょうい)にはならない」 マリア:「頼もしい限りだわ」 サリエル:「じゃあ返すぞ」 0:サリエルが鍵を返す マリア:「どう?楽しめたかしら」 サリエル:「趣味じゃないな」 マリア:「私は今日、あそこに招待される訳だけど…居心地は良さそうかしら?」 サリエル:「俺ならお断りだな、仕込みは終わってる」 マリア:「流石ね」 サリエル:「さっきから面白いぜ」 マリア:「そう、私も聞きたいわ…仕込んで来たんでしょう?盗聴器」 サリエル:「盗聴器だけじゃないがな」 マリア:「楽しみだわ、貸して」 0:サリエルからワイヤレスイヤホンを受け取り耳を傾ける 0:(少しの間) カナリア:「見つけた、やっぱりそうだった、私の耳に間違いはなかった、私の…私の愛おしい小鳥!…はやく…はやく籠(かご)に入れないと…逃げてしまう逃げてしまう逃げてしまう…探さないと!」 0:ドアをノックする音 カナリア:「っ!?」 シンク:「いるかい?カナリア」 カナリア:「……」 シンク:「居るよね、知ってる、声が外まで漏れていたよ」 カナリア:「何しに来たの?」 シンク:「中に入れてくれないかな」 カナリア:「…なんで?」 シンク:「もしも入れてくれるなら…そうだなぁ……先程マリアの部屋の鍵を拾ったんだ…君に届けてもらおうかと思っ」 0:遮るように扉が開く カナリア:「入って」 シンク:「お邪魔するよ」 0:カナリアはベッドに座り、シンクは椅子に座る カナリア:「それで要件は?」 シンク:「少し忠告を」 カナリア:「何かしら?」 シンク:「鳥から羽を取ったら何が残ると思う?」 カナリア:「そうね、鳴き声かしら」 シンク:「君ならそう言うと思った」 カナリア:「私をバカにしてるの?」 シンク:「いいや、そんな君には聖書の一文を送ろう」 カナリア:「…」 シンク:「人はパンだけで生きるものではない」 カナリア:「当たり前じゃない」 シンク:「どうにも君が彼女を見る目は曇っているように思えたのでね」 カナリア:「何が言いたいの?」 シンク:「ふっ、あはははははっ」 カナリア:「…」 シンク:「君は勘違いをしている!」 カナリア:「は?」 シンク:「償い?そんなのは免罪符(めんざいふ)だ!そして僕らはそんなモノは欲(ほっ)していない!そうだろう?」 カナリア:「私は違うっ!」 シンク:「違わないさっ!僕らは同じ穴のムジナだよ…人は変わらない、変えられない、君は一生同じ罪を重ねる」 カナリア:「そんな事ないっ!!今度こそ私は見つけたの!もう間違わない、絶対に間違えない!!」 シンク:「もうその時点で間違っている事にも気づかないとは…滑稽(こっけい)だね!」 カナリア:「だまれぇええ」 シンク:「ストップ」 0:ベッドの下から何かを取り出そうとしたカナリアの手をシンクが掴む カナリア:「離せぇええ!!」 シンク:「ごめんごめん、今のは嘘だよ」 カナリア:「何をっ!」 シンク:「あーでも、これは僕が預かろう」 0:カナリアがベッドの下から取り出そうとしていた拳銃をシンクが奪う カナリア:「返してっ!!」 シンク:「これは良いリボルバーだね…でもダメだよ、色々と問題になる…代わりに約束通り鍵を渡そう」 0:シンクが鍵を床に落とす カナリア:「…これがあればもういらない、鳥籠(とりかご)の鍵(かぎ)を手に入れた!待っててね私の愛しい小鳥…絶対に守ってあげるから!」 シンク:「あーあ、もう僕の事も忘れてるね」 カナリア:「愛してる、愛してる、アイシテル」 シンク:「君には同情するよ…約束は果たしたよ、貸しは近いうちに」 カナリア:「私の小鳥、どうか私だけの為に歌って!」 0:(少しの間) 0:マリア視点に戻る マリア:「これは酷(ひど)いわね」 サリエル:「愛されてるな主様」 マリア:「そうね、でも私は追いかけられるよりも追いかける方が好きよ?」 サリエル:「追い詰めるの間違いだろう」 マリア:「どちらも変わらないわ」 サリエル:「ところでシンクとか言ったか?あれは協力者なのか?それもと…」 マリア:「私が契約を結んだのは貴方だけよ」 サリエル:「そうかい、でもあれは同業者だ」 マリア:「腕はどちらが上かしら?」 サリエル:「殺しなら俺だが…それ以外は向こうだな」 マリア:「なら安心だわ」 サリエル:「そうか?」 マリア:「貴方に殺し以外は求めていないもの…それ以外は私がどうとでも出来るもの」 サリエル:「ああ、そうかい」 マリア:「今日の夜が楽しみね」 サリエル:「朝と言ってる事が違うぞ?」 マリア:「チェスを始める前とチェックメイトを宣言(せんげん)するだけの状況、心境に変化があるのは当然じゃないかしら」 サリエル:「怖い女だ」 マリア:「褒め言葉よ」 サリエル:「…それで、俺は何をすればいいんだ?」 マリア:「なにも」 サリエル:「は?」 マリア:「言ったでしょ?貴方には殺し以外を求めていないの…だから見守っていなさい…もしも私が零時(れいじ)までに自分の部屋に戻らなかったら…契約どおりに私を殺しにきなさい」 サリエル:「はいはい、わかりましたよ…これは持っていけ」 0:サリエルが小さな箱をマリアに手渡す マリア:「これは?」 サリエル:「お守りだ」 マリア:「そう、ありがとう」 サリエル:「せいぜい俺に殺されるなよ」 マリア:「わかってるわ…今日は月が綺麗だから…よく見えるはずよ」 サリエル:「…何が言いたい」 マリア:「ふふっ、いつも見張ってくれているじゃない」 サリエル:「面倒くさい主様だな」 マリア:今日はもう知らない夜じゃない、全ては私の掌(てのひら)で動く劇でしかないのだから…それ以外の結末(けつまつ)なんて私が認めない 0:(長い間) 0:深夜、マリアの自室にて 0:カナリアが鍵を開けて侵入する カナリア:「迎えに来たわ愛しい小鳥」 マリア:「すぅ(寝ている演技)」 カナリア:「あぁ愛おしい、これからはずっと一緒だからね…愛おしい小鳥さん」 マリア:「私は小鳥では無いわ、ちゃんとマリアという名前があるわ…もしかして…忘れてしまったのかしら?小鳥さん?(嘲笑)うように)」 カナリア:「っ!?」 マリア:「今日は月が綺麗だから…貴方の顔がよく見えるわよ、その歪(ゆが)んだ顔もね」 カナリア:「…マリア?どうかしたの?」 マリア:「今日は銃を持っていないのね」 カナリア:「何を言ってるのマリア?私は鍵を届けるついでにマリアの寝顔を見ていただけよ」 マリア:「こんな深夜に?」 カナリア:「その…驚かせようと思って」 マリア:「そうなのね、そういう事にしてあげてもいいわ」 カナリア:「どうしたのマリア、なんか雰囲気が違うわ」 マリア:「ああ、ごめんなさい…今はちょっと気分が良いのよ」 カナリア:「何かあったの?話を聞かせてよ、確か紅茶があったわよね?入れてあげるから話しましょう」 マリア:「気にしないで、それと服に隠してる睡眠薬は飲みたくないわ」 カナリア:「何言ってるのよマリアぁ」 マリア:「気にしないで独(ひと)り言よ」 カナリア:「…シンクに何か言われたの?」 マリア:「どうかしら」 カナリア:「あんな奴の言うことなんて全部嘘よっ!!私を信じてっ!!」 マリア:「あまり大声を出すと誰か起きてしまうわ」 カナリア:「私はっ!私は貴方が好きなの!!愛しているわ!他には何もいらない!…本当よ?」 マリア:「人はパンだけで生きるものではない」 カナリア:「やっぱりシンクがっ!」 マリア:「あなたは私の歌声だけしか見ていない…いいえ、聞いていないのかしら?だから間違っているのよ」 カナリア:「私は間違ってない!!」 マリア:「私は歌うだけの人間でもなければ、普通に生きる普通の人間でもない…私は前提(ぜんてい)として…人の枠には収まらないのよ」 カナリア:「マリア、アナタ大丈夫?」 マリア:「心配されるのは心外(しんがい)ね…もしも私を攫(さら)ったら…タンス裏の隠し部屋に私を閉じ込めて、逃げられないように四肢を切り落とすのでしょう?」 カナリア:「…なんで」 マリア:「手慣れているようね…今まで何人の小鳥をその手で殺したのかしら?」 カナリア:「違うの…聞いてよマリア、小鳥は弱いの、私無しじゃ生きられないのに私を拒んで歌を歌わないの…ねぇどうしてなの?どうしてかな、どうしてなのっ!!」 マリア:「カナリア、貴女は人を人として見ていないのよ」 カナリア:「え?」 マリア:「小鳥と人は別物よ」 カナリア:「当たり前じゃない」 マリア:「人は弱くない、貴女がというパンがなくとも生きていけるの」 カナリア:「…なによそれ」 マリア:「でも…私は人では無いからとても弱いの」 カナリア:「…」 マリア:「もしも貴女が望むなら歌を歌うわ…その代わりに私に協力して」 カナリア:「いいの?」 マリア:「ええ、もちろん…だって私達は友達でしょう?」 0:(長い間) 0:取り乱していたカナリアが一変していつも通りに戻る カナリア:「そうね!なんか…ごめんなさい…夜中に取り乱してしまってごめんなさい」 マリア:「いいのよ」 カナリア:「明日も…一緒に歌ってくるれる?」 マリア:「もちろんよ」 カナリア:「愛してるわっ!マリアっ!」 マリア:「気にしないで、それと…部屋の鍵を落としているわ」 カナリア:「ありがとうマリアっ!」 マリア:「いい夢を」 カナリア:「ええ、また明日」 0:カナリアが部屋から出ていく マリア:「…もう少し荒事(あらごと)になると予想していたのだけど、拍子抜(ひょうしぬ)けね」 サリエル:「それは良かったな」 マリア:「あら、居たのね…そんなに心配だったのかしら?」 サリエル:「そうでもないさ」 マリア:「このお守りは必要なかったわね、返すわ」 サリエル:「いや…持っておけ」 マリア:「心配性(しんぱいしょう)なのね」 サリエル:「さっきここを見張っている時にアイツに話しかけられた」 マリア:「誰かしら?」 サリエル:「シンクとかいう奴だ」 マリア:「姿は見られたの?」 サリエル:「いや、仕掛けた盗聴器から一方的にだが、やっぱり俺の存在に気がついている」 マリア:「面白いわ」 サリエル:「敵じゃないが味方でもない、あれは誰かに言われて動くタイプじゃない…俺とは真逆だ」 マリア:「そうなのね、じゃあコチラに引き込めるかもしれないわ」 サリエル:「話を聞いてたか?気まぐれで殺されても知らないぞ」 マリア:「殺されるのには慣れてるわ」 サリエル:「はぁ、主様は意味不明だ」 マリア:「そうでもないわ、あと…気付いて無いのかしら?」 サリエル:「何がだ?」 マリア:「頭のココ(眉間の辺り)、長い針が三つ刺さってるわ」 サリエル:「どうりで思考が鈍いと思った」 0:何事も無かったかのように針を引き抜くサリエル マリア:「不死身も考えものね」 サリエル:「お互い様…と言った方が良いのか?」 マリア:「どうかしらね…でもアナタは私より死ねる可能性は高いわ」 サリエル:「生憎(あいにく)と俺は死に魅入(みい)られていないもんでな」 マリア:「あら残念、でもいつか私と同じ事を考えるわ」 サリエル:「怪物め」 マリア:「お互い様よ」 サリエル:「俺のセリフを取るな」 マリア:「ふふっ、おやすみサリエル、今日はいい夢が見れそうだわ」 サリエル:「…良い夢を」 マリア:「ええ」 0:部屋を出るサリエル、中庭でシンクと鉢合わせする サリエル:「まだ居たのか」 シンク:「待っていたよ」 サリエル:「この針はお前だな」 シンク:「そうだよ、即死のはずなのになんで生きてるのかな?」 サリエル:「死ねない体質でな」 シンク:「羨(うらや)ましい限りだよ」 サリエル:「姿を見られたからには生かしておけないな」 シンク:「やめておきなよ、僕は夜に殺しはしないと決めているんだ」 サリエル:「俺には関係の無い話だ」 シンク:「そう言うなよ、お姫様には眠っていて欲しいだろう?君が敵対した瞬間、僕はこのスイッチを押す」 サリエル:「…何を仕掛けた?」 シンク:「単なる爆弾さ、この教会がが一瞬で吹き飛ぶレベルのね」 サリエル:「今日は見逃す」 シンク:「この先も見逃し続けてくれよ、僕の心臓が止まっても起爆するんだ」 サリエル:「悪趣味だな」 シンク:「そういう訳で…よろしく」 サリエル:「最後にひとつ良いか?」 シンク:「なんでも」 サリエル:「お前は誰だ?」 シンク:「僕はシンク、それ以上でもそれ以下でもない、でもあえて名乗るなら…悪役という事にしておこうかな」 サリエル:「俺はお前が嫌いだ」 シンク:「僕も君が心底(しんそこ)嫌いだ」 サリエル:「アイツは俺が殺す…それは譲(ゆず)らない」 シンク:「愛されているね、実にいい…でも…嫉妬(しっと)しちゃうなぁ」 サリエル:「気色(きしょく)悪いな」 シンク:「ふふっ、なんてね」 サリエル:「じゃあな」 0:サリエルが姿を消す シンク:「そろそろ幕(まく)引きだね、これは喜劇(きげき)か悲劇(ひげき)か?」 シンク:「このボタンを押せば再び物語は振り出しに戻る、永遠に終わらない牢獄(ろうごく)でも幸福はある、希望もある、これ以上何を望む?」 シンク:「さぁこのボタンを押すか否か…いや…それはつまらない」 シンク:「ここは運に任せよう…リボルバーの弾倉は六つ、玉は三つ、いい比率じゃないかっ!」 シンク:「さぁ今宵(こよい)の劇が続くか否かっ!神のみぞ知る結末をどうかご覧になってください」 シンク:「では、これにて」 0:引き金を引く、玉が出るかどうかはアナタが決めてください

マリア:「酷い夢だわ」 カナリア:「私の小鳥さん……歌って、私は貴方を傷つけたりしない」 マリア:「身体が動かないわ…どうしてこんな事をするのかしら?」 カナリア:「貴方が私の手から逃げようとするから…貴方を守る為なの…わかるでしょう?」 マリア:「ええ、わかるわ。だから私の手と足が無いのね…酷く痛いわ」 カナリア:「これで貴方は私だけの小鳥さん」 マリア:「さすがにこれは…死ぬしかないわね」 カナリア:「奥歯の毒薬は抜いてあげたわ、だって危ないでしょう?」 マリア:「口の違和感はそれだったのね、でも足りないわ」 カナリア:「え?」 マリア:「私には死の天使がついているのだから」 サリエル:「随分(ずいぶん)探したぞ?契約どおりに殺すが問題ないか?」 カナリア:「誰よ貴方!!」 マリア:「お願い」 サリエル:「難儀(なんぎ)な人生だな」 マリア:「貴方ほどでは無いわ」 カナリア:「私の小鳥から離れて!!」 サリエル:「あの煩(うるさ)いのはどうする?」 マリア:「好きにすれば? どうせ、その後がどうなったかなんて私には関係ないもの」 サリエル:「そうか、じゃあな主様」 マリア:「ありがとう……またお願いね」 サリエル:「理解不能だ」 マリア:銃声が響く、誰かの嘆(なげ)きが木霊(こだま)する、彼が笑いながら溜息(ためいき)を漏(も)らす。これは夢、夢だったという事にした 0: 0:(タイトルコール) 0:【輪廻外の輪舞曲】 0:(誰か呼んでください) 0: 0:早朝、マリアの部屋にて、マリアが起床する マリア:「最悪の寝起きね」 サリエル:「君が気持ちよく起きる所は見たことが無い」 マリア:「居たのね、あぁそういえば居たわね」 サリエル:「君は僕の理解を越えている」 マリア:「そうね、でもこの世で一番信用できるのも、私を理解しているのもアナタよ」 サリエル:「嬉しくないね」 マリア:「そろそろカナリアが来るわ」 サリエル:「わかったよ」 マリア:「契約は忘れないでね…とくに今日は」 サリエル:「抜かりない」 0:カナリアが扉を勢いよく開き部屋に入ってくる、同時にサリエルが隠れる カナリア:「マーリーアー!!朝よーっ!!」 マリア:「もう起きてるわカナリア、それと抱きつくのは良いけれど、朝から暑苦(あつくる)しいわ」 カナリア:「それは残念、あれ?誰かいた?」 マリア:「誰もいないわ、どうかしたの?」 カナリア:「んー気のせいね、部屋に来る途中に誰かの声が聞こえたのよ」 マリア:「他の部屋の誰かじゃないかしら」 カナリア:「そうかもっ!」 マリア:「ところで今日は早いのね」 カナリア:「礼拝堂(れいはいどう)で歌を歌う日よっ!マリアの歌声が聞ける日なのよ?」 マリア:「歌は嫌いだわ」 カナリア:「そんなぁ、歌は良い物よ?心から幸せになれる!!」 マリア:「(小声で)貴方に監禁されるくらいにはね」 カナリア:「監禁?」 マリア:「なんでもないわ」 カナリア:「そう…それならいいのだけど」 マリア:「準備するから先に行ってて」 カナリア:「着替えなら手伝うわ!」 マリア:「出ていって」 カナリア:「でもぉ」 マリア:「出ていきなさい」 カナリア:「はーい」 0:カナリアが部屋から出る マリア:「朝から疲れるわ」 サリエル:「あいつは厄介(やっかい)だな」 マリア:「アナタもよ、部屋から出ていって」 サリエル:「はいはい」 マリア:「どうだ、忘れる所だったわ」 サリエル:「なんだ?」 マリア:「これを持っていきなさい」 0:マリアが鍵を投げる サリエル:「これは?」 マリア:「カナリアの部屋の鍵よ」 サリエル:「見かけによらず手癖(てくせ)が悪いんだな」 マリア:「あら、女性を見た目で判断してはダメよ?」 サリエル:「はぁ(溜息)…これでどうしろと?」 マリア:「タンスの裏に隠し部屋があるわ、そこを調べて鍵を…昼過ぎにでも渡しに来なさい」 サリエル:「おいおい、探偵じゃないんだぞ」 マリア:「知ってるわ、でも簡単なお使いよ?」 サリエル:「はいはい、わかりましたよ主様」 0:サリエルが部屋から出る マリア:「今日は長い夜になりそうだわ」 0:(長い間) 0:マリアが支度を済ませ、礼拝堂へ向かう 0:礼拝堂の入口にてカナリアと合流 カナリア:「あーやっと来た!」 マリア:「ごめんなさい、待ったかしら?」 カナリア:「そうね、早朝から待ち遠しかったわ!!」 マリア:「そう」 カナリア:「さあ歌いましょうマリア」 マリア:「私は見学でいいわ、喉が痛いの」 カナリア:「そんなぁぁ」 マリア:「だから、ごめんなさいね」 シンク:「おや?マリアは今日も見学かい?」 カナリア:「シンクからも言ってよっ!」 マリア:「…面倒なのが来たわね」 シンク:「僕の事が嫌いなマリアに助言しよう」 マリア:「何かしら?」 シンク:「先延ばしは取り返しのつかない過ちとなるモノだよ」 マリア:「そうね、正論ね…私以外には響くかもしれないわ」 シンク:「君に響かなければこの問答は意味が無いよ」 マリア:「でも…意味はあるわ」 カナリア:「マリア?」 マリア:「歌うわ」 カナリア:「本当にっ!?」 マリア:「ええ、でもシンク…貴方にはひとつお願いを聞いて欲しいの」 シンク:「何かな?」 マリア:「貴方がもしも夜にオオカミに襲(おそ)われるとしたら…何処に銃を隠すかしら?」 シンク:「ふむ…僕ならば天井かな」 マリア:「そうなのね…私はベッドの下よ」 シンク:「…」 0:マリアがシンクの手を握る マリア:「…わかるわね?」 カナリア:「え?なんの話?」 マリア:「単なる世間話よ」 0:マリアがシンクから離れる シンク:「なかなかに愉快(ゆかい)だね」 マリア:「シンク…お願いね」 シンク:「いいだろう、でも…貸(かし)ひとつだよ」 マリア:「高くついたわね」 シンク:「なら、無かった事にするかい?」 マリア:「いいわ、何がどう絡むかなんて分からないもの」 シンク:「流石は未来を見通す聖女」 マリア:「私に未来なんて分からないわ…起こる事しかわからないわ」 カナリア:「もう、難しい話してないで!」 マリア:「ごめんなさいね、カナリア」 カナリア:「いいのよ、それで…歌ってくれるのよねっ!?」 マリア:「いいわよ」 カナリア:「やったぁ!やっとマリアの歌声が聞けるわっ!」 マリア:「気が重いわ」 シンク:「じゃあ、頑張ってね」 マリア:「やれるだけはやるけども…祝福は期待できないわね」 シンク:「…ここにあるのは償(つぐな)いだけさ」 マリア:「それは貴方もかしら?」 シンク:「どうかな」 カナリア:「ほら行くわよマリアっ!」 マリア:「引っ張らないで欲しいわ」 カナリア:「時間は有限なのよ!」 マリア:「(小声)私にとっては無限よ」 カナリア:「何か言った?」 マリア:「いいえ、なにも」 カナリア:「そう?じゃあ歌いましょう!」 0:(長い間) 0:礼拝堂にてカナリアの隣にて歌を歌う 0:歌の後からカナリアが一言もマリアに声を掛けずに礼拝堂から出ていく 0:人気のない庭にてマリアが空を眺めている マリア:「これは再現ね」 サリエル:「サボりか?」 マリア:「貴方を待っていたのよ」 サリエル:「そうですか、流石は聖女様」 マリア:「やっぱりあの時近くに居たのね、気づかれていたわよ」 サリエル:「本当にここは面倒な奴らばかりだ」 マリア:「じゃあ逃げ出してみる?」 サリエル:「面倒だとは言ったが…脅威(きょうい)にはならない」 マリア:「頼もしい限りだわ」 サリエル:「じゃあ返すぞ」 0:サリエルが鍵を返す マリア:「どう?楽しめたかしら」 サリエル:「趣味じゃないな」 マリア:「私は今日、あそこに招待される訳だけど…居心地は良さそうかしら?」 サリエル:「俺ならお断りだな、仕込みは終わってる」 マリア:「流石ね」 サリエル:「さっきから面白いぜ」 マリア:「そう、私も聞きたいわ…仕込んで来たんでしょう?盗聴器」 サリエル:「盗聴器だけじゃないがな」 マリア:「楽しみだわ、貸して」 0:サリエルからワイヤレスイヤホンを受け取り耳を傾ける 0:(少しの間) カナリア:「見つけた、やっぱりそうだった、私の耳に間違いはなかった、私の…私の愛おしい小鳥!…はやく…はやく籠(かご)に入れないと…逃げてしまう逃げてしまう逃げてしまう…探さないと!」 0:ドアをノックする音 カナリア:「っ!?」 シンク:「いるかい?カナリア」 カナリア:「……」 シンク:「居るよね、知ってる、声が外まで漏れていたよ」 カナリア:「何しに来たの?」 シンク:「中に入れてくれないかな」 カナリア:「…なんで?」 シンク:「もしも入れてくれるなら…そうだなぁ……先程マリアの部屋の鍵を拾ったんだ…君に届けてもらおうかと思っ」 0:遮るように扉が開く カナリア:「入って」 シンク:「お邪魔するよ」 0:カナリアはベッドに座り、シンクは椅子に座る カナリア:「それで要件は?」 シンク:「少し忠告を」 カナリア:「何かしら?」 シンク:「鳥から羽を取ったら何が残ると思う?」 カナリア:「そうね、鳴き声かしら」 シンク:「君ならそう言うと思った」 カナリア:「私をバカにしてるの?」 シンク:「いいや、そんな君には聖書の一文を送ろう」 カナリア:「…」 シンク:「人はパンだけで生きるものではない」 カナリア:「当たり前じゃない」 シンク:「どうにも君が彼女を見る目は曇っているように思えたのでね」 カナリア:「何が言いたいの?」 シンク:「ふっ、あはははははっ」 カナリア:「…」 シンク:「君は勘違いをしている!」 カナリア:「は?」 シンク:「償い?そんなのは免罪符(めんざいふ)だ!そして僕らはそんなモノは欲(ほっ)していない!そうだろう?」 カナリア:「私は違うっ!」 シンク:「違わないさっ!僕らは同じ穴のムジナだよ…人は変わらない、変えられない、君は一生同じ罪を重ねる」 カナリア:「そんな事ないっ!!今度こそ私は見つけたの!もう間違わない、絶対に間違えない!!」 シンク:「もうその時点で間違っている事にも気づかないとは…滑稽(こっけい)だね!」 カナリア:「だまれぇええ」 シンク:「ストップ」 0:ベッドの下から何かを取り出そうとしたカナリアの手をシンクが掴む カナリア:「離せぇええ!!」 シンク:「ごめんごめん、今のは嘘だよ」 カナリア:「何をっ!」 シンク:「あーでも、これは僕が預かろう」 0:カナリアがベッドの下から取り出そうとしていた拳銃をシンクが奪う カナリア:「返してっ!!」 シンク:「これは良いリボルバーだね…でもダメだよ、色々と問題になる…代わりに約束通り鍵を渡そう」 0:シンクが鍵を床に落とす カナリア:「…これがあればもういらない、鳥籠(とりかご)の鍵(かぎ)を手に入れた!待っててね私の愛しい小鳥…絶対に守ってあげるから!」 シンク:「あーあ、もう僕の事も忘れてるね」 カナリア:「愛してる、愛してる、アイシテル」 シンク:「君には同情するよ…約束は果たしたよ、貸しは近いうちに」 カナリア:「私の小鳥、どうか私だけの為に歌って!」 0:(少しの間) 0:マリア視点に戻る マリア:「これは酷(ひど)いわね」 サリエル:「愛されてるな主様」 マリア:「そうね、でも私は追いかけられるよりも追いかける方が好きよ?」 サリエル:「追い詰めるの間違いだろう」 マリア:「どちらも変わらないわ」 サリエル:「ところでシンクとか言ったか?あれは協力者なのか?それもと…」 マリア:「私が契約を結んだのは貴方だけよ」 サリエル:「そうかい、でもあれは同業者だ」 マリア:「腕はどちらが上かしら?」 サリエル:「殺しなら俺だが…それ以外は向こうだな」 マリア:「なら安心だわ」 サリエル:「そうか?」 マリア:「貴方に殺し以外は求めていないもの…それ以外は私がどうとでも出来るもの」 サリエル:「ああ、そうかい」 マリア:「今日の夜が楽しみね」 サリエル:「朝と言ってる事が違うぞ?」 マリア:「チェスを始める前とチェックメイトを宣言(せんげん)するだけの状況、心境に変化があるのは当然じゃないかしら」 サリエル:「怖い女だ」 マリア:「褒め言葉よ」 サリエル:「…それで、俺は何をすればいいんだ?」 マリア:「なにも」 サリエル:「は?」 マリア:「言ったでしょ?貴方には殺し以外を求めていないの…だから見守っていなさい…もしも私が零時(れいじ)までに自分の部屋に戻らなかったら…契約どおりに私を殺しにきなさい」 サリエル:「はいはい、わかりましたよ…これは持っていけ」 0:サリエルが小さな箱をマリアに手渡す マリア:「これは?」 サリエル:「お守りだ」 マリア:「そう、ありがとう」 サリエル:「せいぜい俺に殺されるなよ」 マリア:「わかってるわ…今日は月が綺麗だから…よく見えるはずよ」 サリエル:「…何が言いたい」 マリア:「ふふっ、いつも見張ってくれているじゃない」 サリエル:「面倒くさい主様だな」 マリア:今日はもう知らない夜じゃない、全ては私の掌(てのひら)で動く劇でしかないのだから…それ以外の結末(けつまつ)なんて私が認めない 0:(長い間) 0:深夜、マリアの自室にて 0:カナリアが鍵を開けて侵入する カナリア:「迎えに来たわ愛しい小鳥」 マリア:「すぅ(寝ている演技)」 カナリア:「あぁ愛おしい、これからはずっと一緒だからね…愛おしい小鳥さん」 マリア:「私は小鳥では無いわ、ちゃんとマリアという名前があるわ…もしかして…忘れてしまったのかしら?小鳥さん?(嘲笑)うように)」 カナリア:「っ!?」 マリア:「今日は月が綺麗だから…貴方の顔がよく見えるわよ、その歪(ゆが)んだ顔もね」 カナリア:「…マリア?どうかしたの?」 マリア:「今日は銃を持っていないのね」 カナリア:「何を言ってるのマリア?私は鍵を届けるついでにマリアの寝顔を見ていただけよ」 マリア:「こんな深夜に?」 カナリア:「その…驚かせようと思って」 マリア:「そうなのね、そういう事にしてあげてもいいわ」 カナリア:「どうしたのマリア、なんか雰囲気が違うわ」 マリア:「ああ、ごめんなさい…今はちょっと気分が良いのよ」 カナリア:「何かあったの?話を聞かせてよ、確か紅茶があったわよね?入れてあげるから話しましょう」 マリア:「気にしないで、それと服に隠してる睡眠薬は飲みたくないわ」 カナリア:「何言ってるのよマリアぁ」 マリア:「気にしないで独(ひと)り言よ」 カナリア:「…シンクに何か言われたの?」 マリア:「どうかしら」 カナリア:「あんな奴の言うことなんて全部嘘よっ!!私を信じてっ!!」 マリア:「あまり大声を出すと誰か起きてしまうわ」 カナリア:「私はっ!私は貴方が好きなの!!愛しているわ!他には何もいらない!…本当よ?」 マリア:「人はパンだけで生きるものではない」 カナリア:「やっぱりシンクがっ!」 マリア:「あなたは私の歌声だけしか見ていない…いいえ、聞いていないのかしら?だから間違っているのよ」 カナリア:「私は間違ってない!!」 マリア:「私は歌うだけの人間でもなければ、普通に生きる普通の人間でもない…私は前提(ぜんてい)として…人の枠には収まらないのよ」 カナリア:「マリア、アナタ大丈夫?」 マリア:「心配されるのは心外(しんがい)ね…もしも私を攫(さら)ったら…タンス裏の隠し部屋に私を閉じ込めて、逃げられないように四肢を切り落とすのでしょう?」 カナリア:「…なんで」 マリア:「手慣れているようね…今まで何人の小鳥をその手で殺したのかしら?」 カナリア:「違うの…聞いてよマリア、小鳥は弱いの、私無しじゃ生きられないのに私を拒んで歌を歌わないの…ねぇどうしてなの?どうしてかな、どうしてなのっ!!」 マリア:「カナリア、貴女は人を人として見ていないのよ」 カナリア:「え?」 マリア:「小鳥と人は別物よ」 カナリア:「当たり前じゃない」 マリア:「人は弱くない、貴女がというパンがなくとも生きていけるの」 カナリア:「…なによそれ」 マリア:「でも…私は人では無いからとても弱いの」 カナリア:「…」 マリア:「もしも貴女が望むなら歌を歌うわ…その代わりに私に協力して」 カナリア:「いいの?」 マリア:「ええ、もちろん…だって私達は友達でしょう?」 0:(長い間) 0:取り乱していたカナリアが一変していつも通りに戻る カナリア:「そうね!なんか…ごめんなさい…夜中に取り乱してしまってごめんなさい」 マリア:「いいのよ」 カナリア:「明日も…一緒に歌ってくるれる?」 マリア:「もちろんよ」 カナリア:「愛してるわっ!マリアっ!」 マリア:「気にしないで、それと…部屋の鍵を落としているわ」 カナリア:「ありがとうマリアっ!」 マリア:「いい夢を」 カナリア:「ええ、また明日」 0:カナリアが部屋から出ていく マリア:「…もう少し荒事(あらごと)になると予想していたのだけど、拍子抜(ひょうしぬ)けね」 サリエル:「それは良かったな」 マリア:「あら、居たのね…そんなに心配だったのかしら?」 サリエル:「そうでもないさ」 マリア:「このお守りは必要なかったわね、返すわ」 サリエル:「いや…持っておけ」 マリア:「心配性(しんぱいしょう)なのね」 サリエル:「さっきここを見張っている時にアイツに話しかけられた」 マリア:「誰かしら?」 サリエル:「シンクとかいう奴だ」 マリア:「姿は見られたの?」 サリエル:「いや、仕掛けた盗聴器から一方的にだが、やっぱり俺の存在に気がついている」 マリア:「面白いわ」 サリエル:「敵じゃないが味方でもない、あれは誰かに言われて動くタイプじゃない…俺とは真逆だ」 マリア:「そうなのね、じゃあコチラに引き込めるかもしれないわ」 サリエル:「話を聞いてたか?気まぐれで殺されても知らないぞ」 マリア:「殺されるのには慣れてるわ」 サリエル:「はぁ、主様は意味不明だ」 マリア:「そうでもないわ、あと…気付いて無いのかしら?」 サリエル:「何がだ?」 マリア:「頭のココ(眉間の辺り)、長い針が三つ刺さってるわ」 サリエル:「どうりで思考が鈍いと思った」 0:何事も無かったかのように針を引き抜くサリエル マリア:「不死身も考えものね」 サリエル:「お互い様…と言った方が良いのか?」 マリア:「どうかしらね…でもアナタは私より死ねる可能性は高いわ」 サリエル:「生憎(あいにく)と俺は死に魅入(みい)られていないもんでな」 マリア:「あら残念、でもいつか私と同じ事を考えるわ」 サリエル:「怪物め」 マリア:「お互い様よ」 サリエル:「俺のセリフを取るな」 マリア:「ふふっ、おやすみサリエル、今日はいい夢が見れそうだわ」 サリエル:「…良い夢を」 マリア:「ええ」 0:部屋を出るサリエル、中庭でシンクと鉢合わせする サリエル:「まだ居たのか」 シンク:「待っていたよ」 サリエル:「この針はお前だな」 シンク:「そうだよ、即死のはずなのになんで生きてるのかな?」 サリエル:「死ねない体質でな」 シンク:「羨(うらや)ましい限りだよ」 サリエル:「姿を見られたからには生かしておけないな」 シンク:「やめておきなよ、僕は夜に殺しはしないと決めているんだ」 サリエル:「俺には関係の無い話だ」 シンク:「そう言うなよ、お姫様には眠っていて欲しいだろう?君が敵対した瞬間、僕はこのスイッチを押す」 サリエル:「…何を仕掛けた?」 シンク:「単なる爆弾さ、この教会がが一瞬で吹き飛ぶレベルのね」 サリエル:「今日は見逃す」 シンク:「この先も見逃し続けてくれよ、僕の心臓が止まっても起爆するんだ」 サリエル:「悪趣味だな」 シンク:「そういう訳で…よろしく」 サリエル:「最後にひとつ良いか?」 シンク:「なんでも」 サリエル:「お前は誰だ?」 シンク:「僕はシンク、それ以上でもそれ以下でもない、でもあえて名乗るなら…悪役という事にしておこうかな」 サリエル:「俺はお前が嫌いだ」 シンク:「僕も君が心底(しんそこ)嫌いだ」 サリエル:「アイツは俺が殺す…それは譲(ゆず)らない」 シンク:「愛されているね、実にいい…でも…嫉妬(しっと)しちゃうなぁ」 サリエル:「気色(きしょく)悪いな」 シンク:「ふふっ、なんてね」 サリエル:「じゃあな」 0:サリエルが姿を消す シンク:「そろそろ幕(まく)引きだね、これは喜劇(きげき)か悲劇(ひげき)か?」 シンク:「このボタンを押せば再び物語は振り出しに戻る、永遠に終わらない牢獄(ろうごく)でも幸福はある、希望もある、これ以上何を望む?」 シンク:「さぁこのボタンを押すか否か…いや…それはつまらない」 シンク:「ここは運に任せよう…リボルバーの弾倉は六つ、玉は三つ、いい比率じゃないかっ!」 シンク:「さぁ今宵(こよい)の劇が続くか否かっ!神のみぞ知る結末をどうかご覧になってください」 シンク:「では、これにて」 0:引き金を引く、玉が出るかどうかはアナタが決めてください