台本概要

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タイトル ロールチェンジ・ザ・ゲーム
作者名 ふらん☆くりん  (@Frank_lin01)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男3、女2) ※兼役あり
時間 70 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【あらすじ】
あの人からもらった一冊の冊子によって、私という人生の舞台が輝き始めた…。

【著作権について】
本作品の著作権は全て作者である「ふらん☆くりん」に帰属します。
また、いかなる場合であっても当方は著作権の放棄はいたしません。

【禁止事項】
●商業目的での利用
●台本の無断使用、無断転載、自作発言等
●過度なアドリブ、セリフの大幅な改変等

【ご利用に際してのお願い】
●台本の利用に際しては作者X(旧ツイッター)DMに連絡をお願いいたします。
●配信等で利用される場合は①作品名、②作者名、③台本掲載URLを掲示していただけると嬉しいです。
●たくさんの方の演技を聴きに行きたいので、可能であれば告知文にメンションを付けていただけると嬉しいです。
※18禁ではありませんが、若干センシティブな表現を含みます

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
真奈 192 内田 真奈(うちだ まな)。某劇団に所属する劇団員
団長 30 真奈が所属する劇団の団長。
なぎさ 35 早川 なぎさ(はやかわ なぎさ)。真奈が所属する劇団に最近入団した女性。礼儀正しく人一倍向上心が強い。
謎の男 7 謎の男。ユウリ役の方が演じてください。
政広 116 江口 政広(えぐち まさひろ)。真奈と同じ劇団に所属する。真奈の先輩。
ユウリ 11 正体不明のイケメン。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:ロールチェンジ・ザ・ゲーム : 登場人物: 真奈:*内田 真奈《うちだ まな》。某劇団に所属する劇団員 団長:真奈が所属する劇団の団長。 なぎさ:*早川 なぎさ《はやかわ なぎさ》。真奈が所属する劇団に最近入団した女性。礼儀正しく人一倍向上心が強い。 ユウリ:正体不明のイケメン。謎の男と兼役 政広:*江口 政広《えぐち まさひろ》。真奈と同じ劇団に所属する。真奈の先輩。 : :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : 本編: 団長:というわけで、今回の配役は以上だ。みんな、本番まであと二ヶ月しかないぞ!気を引き締めて稽古にあたれ!いいな! 真奈:(あぁ…まただ。また私は主役から外された。なんで…なんでいつもこうなの!!私はこんなにも頑張っているのに!) なぎさ:精一杯頑張ります!とても緊張していますが、よろしくお願いします! 真奈:(…ちょっと声と顔が良いだけで、いつもチヤホヤされて。演技なんてからっきしなくせに。) なぎさ:真奈さん!一緒に素敵な舞台にしましょうね! 真奈:う、うん。 : 真奈:(M)あの子は眩しいくらいの笑顔で私に話しかけてくる。決して仲が良い訳じゃないのに。そうやっていつも周りの人気を総取りしていくのだ。私はそんな彼女が大嫌いだった。 なぎさ:真奈さん?どうしたの? 真奈:大丈夫、何でもないから。 なぎさ:ほんとに?なんか体調悪そう…。無理しないでね。 真奈:〈小声で〉…誰のせいだと思ってんのよ。 なぎさ:え? 真奈:ううん。こっちの話。 なぎさ:そう…なら良いんだけど。 真奈:そろそろ稽古始まるから行くわ。 なぎさ:あ、うん。これからよろしくね。 真奈:よろしく。 : 真奈:(M)私がこの劇団に入団して早5年。舞台演劇に憧れていろんな所を探し歩いた結果辿り着いたのが今の場所だった。団長が書く台本はどれも本当に面白くて、周りの仲間達は優しい人達ばかり。引っ込み思案の私にとって、ここは夢のような場所だった。ずっと素敵な仲間に囲まれて大好きな演劇を続けていきたい…心からそう思っていた。あの子が入ってくるまでは。 なぎさ:真奈さんお疲れ様。今日も稽古楽しかったね! 真奈:お疲れ様。 なぎさ:ねえ、この後みんなとご飯食べに行くんだけど、真奈さんもどう? 真奈:いや、私はちょっと用事あるから先帰るわ。 なぎさ:そうなんだ。ざーんねん。じゃあまた明日ね! 真奈:うん。また明日。 : 真奈:はぁ…今日もあの子が気になって全然稽古に集中出来なかった。しかしまあ、あの程度の演技でよく主役になれたものだわ。しかも周りはみんなあの子に夢中で…。はぁ…私、嫉妬してんのかな…。なんて醜いんだろ。 謎の男:そこのお嬢さん、溜息なんかついちゃってどうしたんだい? 真奈:な、なんですか急に。別に何でもないのでほっといてください。 謎の男:ふーん。そうかい。おやおや、ちょっと主役を取られたくらいでそんなに落ち込んじゃダメだよ。 真奈:え…どうしてその事を? 謎の男:驚いた?ふふふ、ちょっと君の心を覗いただけだよ。 真奈:うそよ、そんなことできるわけ…。 謎の男:できるんだなぁ、それが。試しに今君が何を望んでいるかも当ててあげようか? 真奈:え…? 謎の男:「私がなぎさに代わって主役を演じたい。なぎさのようにもっと周りから注目を集めたい。なぎさのような人生を送りたい。」 真奈:な、なんでそこまで分かるの? 謎の男:さあ、なんでだろうね?まあ僕は人間じゃないからね。 真奈:人間じゃ…ない? 謎の男:おっと、自己紹介がまだだったね。僕はユウリ。君の願いを叶えるために舞い降りた天使ってとこかな? 真奈:天使…? ユウリ:そう。落ち込んでいる君の姿がふと目に留まってね。どうしても助けたくて君のもとに舞い降りたってわけ。 真奈:ふーん。そう言われて「はい、そうですか」って信じられるわけないじゃない。ファンタジー映画じゃあるまいし。 ユウリ:ふむ…まあそれもそうだね。じゃあそんな君にこれをプレゼントしてあげよう。 真奈:これは…配役表? ユウリ:その通り!よく分かったね。この冊子にはね、君という人生の舞台に登場する人物の名前と、現在の配役が書かれているんだ。君はここに書かれた登場人物に対して、自由に役を追加したり書き換えたりすることができる。そして役を書き換えられた相手はその役に沿った行動を取るようになるんだ。さらに!配役の横にある配役紹介欄に役の性格や特徴なんかを追記すれば、より細かく対象人物の行動を設定することができるよ。どう?すごいでしょ? 真奈:何を言い出すかと思えばバカバカしい。そんなのただの妄想ごっこじゃない。それで私の人生が何か変わるわけでもないのに…。 ユウリ:まあまあ、騙されたと思ってやってみなよ。 真奈:〈無理やり押し付けられる〉あ、ちょっと…。 ユウリ:ただし、一度に書き換えることができるのは一人だけ。書き換えが終わったら「ロールチェンジ」って叫べば更新できるから。あと一度更新したらそこから一週間は何も書けなくなるから注意してね。 真奈:ねえ、この配役表に私の名前が無いんだけど。 ユウリ:君すごいね!実は君自身の配役は変更できないようになっているんだ。というよりも変更する必要がないって言った方が正しいかな。 真奈:どういうこと? ユウリ:つまりこの舞台において、唯一君だけが配役に*囚《とら》われることなく自由に演じることができる存在なんだ。だから君自身に配役なんて必要ないんだよ。気に入らなければどんどん周りを変えていけば良いのさ! 真奈:気に入らなければ周りを変えることができるアイテム…?そんなことができたら確かに素敵だとは思うけど。 ユウリ:あとは君の自由にしなよ。僕は君に笑顔が戻ることをお空の上から見守ってるよ。 真奈:え?ちょっと!うそ…本当に飛んで行っちゃった。もしかして、本物の天使なの?うーん、かなり怪しいけどやってみるか。 : 真奈:(M)私は家に帰ると早速机の上にユウリからもらった配役表を広げた。 : 真奈:えっと…どれどれ。へぇ…一人一人の登場人物にはいろんな役が付いてるのね。例えば私のお父さんだと、【父親】『娘の前では*寡黙《かもく》だが、本当は娘のことを*溺愛《できあい》している』、【営業部課長】『部下思いの上司で、仕事に対しては真面目』、【夫】『妻である*内田 美代子《うちだ みよこ》を誰よりも愛している』、あとは…何これ!【宴会部長】『宴会の席において場を仕切り、盛り上げることに心血を注ぐ』なんてのもあるわ!面白いわね。なるほど、ここに新たに役を追加したり書き換えたりできるわけね。分かったわ。じゃあまずは…私の大嫌いななぎさから見てみましょうか。えっと、【娘】『*孝行娘《こうこうむすめ》で、両親の幸せを第一に考えている』、【劇団員】『常に周りの仲間に感謝して、どんな役でも全力で演じる』か…もしかしたら本当は意外と良い子なのかもしれないわね。ん?【彼女】『彼氏である江口政広のことを心から愛している』…これはどういうことなの…?私がずっと憧れていた政広さんとなぎさが恋人同士?いつの間に…。ははは…馬鹿みたい…二人が幸せな日々を過ごしている間に私は叶うはずのない相手にずっと想いを寄せてたんだ…。なぎさ!あんたはまた私から大切な物を奪って行くのね!絶対に許さない!こうしてやる! : 真奈:(M)そう言って私はなぎさの【彼女】の配役紹介を『彼氏である江口政広の事が大嫌いで、心の底から別れたいと思っている』に書き換えた。それとともに【劇団員】の紹介欄を『自分の演技が最高で、周りは全てクズだと思い込んでいる』に変更したところでこう叫んだ。 : 真奈:ロールチェンジ!(M)一瞬頭の中で「更新完了」という声が響いた気がした。 : :-------------------(翌日) 政広:お、おい、なぎさ。急にどうしたんだよ。 なぎさ:だから!私は前々からあんたのことが死ぬほど大っ嫌いだったって言ってんの! 政広:ウソだろ…昨日まであんなに優しかったのにどうして…。 なぎさ:はぁ?優しかった?あははは!バッカじゃないの?そんなもの、演技に決まってるでしょ?内心*反吐《へど》が出そうだったわ! 政広:なあ、俺に悪い所があったなら直すからさ、機嫌直してくれないか? なぎさ:何度も言わせないでよ!あんたの顔なんか二度と見たくないから今すぐ別れて! 政広:そんな…。 なぎさ:ちょっと、もう稽古始まるんだから邪魔よ!目障りだわ!どうせ下手な演技しかできないクセに! 政広:うう…一体どうなってるんだ…。 真奈:(ウソ…昨日配役表に書いたことが現実になってる…。) 真奈:なぎささん!ちょっと言い過ぎじゃないの! なぎさ:あら?誰かと思えば私に主役を取られた可哀想な真奈さんじゃない。何?あいつの肩を持つの?下手な役者同士仲が良いのね。 政広:おい!なぎさ!お前いい加減にしろよ!ちょっと主役に選ばれたからって良い気になりやがって! なぎさ:何言ってんの?私の演技は最高なのよ。主役に選ばれて当然だわ!それに比べてあんたたちのクズみたいな演技は何? 団長:思い上がるな! なぎさ:!?…団長? 団長:お前を主役に選んだのは演技が上手いからじゃない!演技に対してひたむきに努力する姿勢と周りに対する感謝の心、そして何より将来の伸びしろも*加味《かみ》して俺はお前を主役に選んだんだ。それがなんだその態度は!もういい、お前がそういう態度を取るならお前はうちの劇団にはいらん。とっとと出ていけ! なぎさ:はっ!私の演技の素晴らしさも理解できないクソ団長の元で芝居なんかやってらんないわよ!こんな劇団こっちから願い下げだわ!じゃあね!バイバイ! 政広:ごめんな真奈…お前まで巻き込んでしまって。なぎさはあんなヤツじゃなかったのに…。あれじゃまるで別人みたいだ…。 真奈:ほんとね、私も正直驚いちゃったわ。今までの彼女からは想像もできなかったから。でも、もしかしたら今までずっと自分を押え込んで我慢してたのかもしれないわね。 政広:そうだな…あんなにプライドが高くて人を見下すヤツだったなんて知らなかった。俺も今ので目が醒めたよ。俺自身、あいつと別れて正解だったって思ってるよ。 真奈:それなら良いんだけど…。あまり落ち込まないでね。 団長:真奈、ちょっといいか? 真奈:はい。何でしょう? 団長:なぎさの件はすまなかった。 真奈:いえ、私は当事者ではありませんから。 団長:いや、その事じゃなくてだな。 真奈:え? 団長:実は今回の配役についてなんだが、なぎさがいなければ本当はお前を主役にしようと思っていたんだ。でもあいつの普段の頑張りや今後の成長も含めていろいろ悩んだ末にお前には主役を外れてもらう結果になってしまった。本当に申し訳なかった。 真奈:いえ、それが私の実力ですから仕方ないと思っています。 団長:俺もお前が影で一生懸命努力していたことには気付いていた。だから配役発表の時にお前が落ち込んでいるのを見て主役にしてやれなかったことをひどく後悔したよ。でもあんなことがあってなぎさは劇団を抜けてしまった。今更こんなことを頼むのは都合が良いと思われるかもしれないが、真奈、お前に主役を任せたい。どうだ?引き受けてはくれないだろうか。 真奈:え…私が主役をやってもいいんですか? 団長:もちろんだ。 真奈:嬉しいです!ぜひやらせてください! 団長:ありがとう。期待してるぞ。 真奈:はい!精一杯頑張ります! 団長:というわけだ。みんな、なぎさのことは残念だが、気を落とさずに頑張ってくれ。 真奈:(すごい!全てが私を中心に回ってる!ユウリがくれた配役表があれば何だってできちゃうじゃない!うふふ…もう笑いが止まらないわ。) 政広:真奈、おめでとう!やっぱり主役は真奈が一番似合ってるよ。 真奈:政広さん、ありがとう!私頑張るね! 政広:うん!改めてよろしくな! 真奈:(M)その日を境に私を取り巻く日常は一変した。私は*溢《あふ》れ出る幸せを噛みしめながら日々演技に没頭した。そしてあっという間に一週間が過ぎた。 : :-------------------(一週間後) 政広:真奈、お疲れ! 真奈:政広さんお疲れ様!今日の稽古も充実してたね! 政広:ああ!真奈が主役になってから毎日の稽古が楽しくて仕方ないんだ。 真奈:えへへ、ありがと。ねえ、政広さん。良かったらこの後一緒に飲みに行かない? 政広:お!いいね。俺もちょうど真奈と飲みたいなって思ってた所なんだ。 真奈:ほんと?嬉しい!じゃあ先に着替えて稽古場の前で待ってるね! 政広:うん!俺も後から行くから。 真奈:じゃあまた後で。 政広:おう! : :-------------------(30分後) 真奈:おっかしいな。もうかれこれ30分も待ってるのに、政広さんどうしちゃったんだろ?ちょっと心配だから様子見に行こっかな。 政広:〈通話中〉え…?会って話がしたいって今更何だよ!俺があの時どれだけ辛い想いをしたか分かってんのか! 真奈:あ、政広さんだ。あれ?遅いと思ったら誰かと電話してたのね。何か揉めてるみたいだけど大丈夫かしら? 政広:〈通話中〉俺はお前のことをずっと最高の彼女だって思ってたのに…。そんな俺の気持ちをお前は踏みにじったんだ!いや、俺だけじゃない!真奈やお前のことを主役に選んでくれた団長にさえあんな酷い態度を取って! 真奈:もしかして…電話の相手は…なぎさ? 政広:〈通話中〉…泣いて謝ったって許されるわけないだろ!…え?あの時はどうかしてたって?…なぁ、教えてくれないか。一体何があったんだよ。あんなに明るくて優しいなぎさが急に人が変わったみたいになって…。俺、本当は今でも信じられないんだ。もし、以前のような優しいなぎさに戻ると約束してくれるなら、俺はもう一度なぎさとやり直したい。 真奈:え?政広さん何を言って…。 政広:〈通話中〉うん…分かった。じゃあ一時間後にいつものレストランで会おう。それじゃ。 真奈:ねぇ、政広さん。今の相手ってもしかして…。 政広:ま、真奈!…聞かれてたのか。うん…電話の相手はなぎさだよ。 真奈:政広さん、今日は私と飲みに行ってくれるんでしょ? 政広:ごめん…飲みには行けなくなった。やっぱり俺、どうしてもなぎさのことが忘れられないんだ。本当は何か事情があってあんな態度を取ったんじゃないかって。そうでなきゃ、あのなぎさが理由もなくあんな態度を取るはずがないって思ってるんだ。だから直接なぎさに会って彼女の口から事情を聞きたい。 真奈:政広…さん。 政広:ほんとごめんな。せっかく楽しみにしててくれたのに。この埋め合わせは必ずするから!だから今日は許して欲しい。 真奈:分かった。それで政広さんの気が済むなら私は全然構わないわ。行ってらっしゃい。 政広:真奈、本当にありがとう!それじゃまた明日稽古場で! 真奈:また明日…。(一体どういうこと?なぎさの配役は変更したはずなのに…。あれから一週間…はっ!もしかして一週間経ったら変更した内容がリセットされるのかしら?そうでなければこのタイミングでなぎさから政広さんに電話が掛かってくるはずがないもの。…まあ良いわ。たとえそうだとしてもやり方はいくらでもある。政広さん、あなたが忘れられないと言うのなら、私が忘れさせてあげる。うふふ…。) : 真奈:(M)私は家に帰るとすぐさま配役表を広げた。 : 真奈:やっぱり…なぎさの内容が元に戻ってる!なるほど…そういうことか。でも逆に言うと一週間は効果が持続するという事ね。それなら次は政広さんの配役を変えてあげるわ。えっと、政広さんのは…あった。【息子】『親孝行で優しい。両親を楽にさせてあげたいといつも思っている』、【劇団員】『演技に対して決して妥協せず、常に高みを目指して努力する』、【彼氏】『彼女である早川なぎさのことを心から愛し、信頼している』か…。やっぱり政広さんは素敵な人だわ。そうねぇ…じゃあこういうのはどうかしら? : 真奈:(M)私は政広さんの配役に【*下僕《げぼく》】『主人である内田真奈に対し身も心も捧げ、真奈の言うことには絶対服従する』を付け加えた。 : 真奈:ロールチェンジ!(M)頭の中に「更新完了」の声が響いた。 真奈:うふふ…これで政広さんは私のモノよ。 : :-------------------(翌日) 政広:真奈、昨日は約束守れなくてごめんな。あれからなぎさと会っていろいろ話したんだ。なぜ急にあんな態度を取ってしまったのか彼女自身にも分からないって言ってた。それで彼女すごく反省してて、もう一度よりを戻したいって言ってくれたんだ。だから俺… 真奈:ねぇ、政広。 政広:え…? 真奈:あなたにとって私はどういう存在かしら? 政広:真奈は、いや…真奈様は私のご主人様です。 真奈:そうね。それじゃあ、あなたは私にとっての何なの? 政広:私は真奈様の従順な*下僕《げぼく》です。 真奈:良くできました。なら私が言うことは何でも聞くのね。 政広:はい。どんなことにでも従います。 真奈:うふふ…良い子ね。じゃあ私から政広に命令するわ。早川なぎさとは今すぐ別れて私だけを愛しなさい。 政広:はい。早川なぎさとは別れて真奈様だけを愛します。 真奈:そう。それでいいのよ。さぁ、今すぐ彼女に電話しなさい。 政広:はい。(プルルル…)〈通話中〉あ、なぎさ?昨日のことなんだけどさ、俺やっぱりお前とよりを戻すなんて無理だわ。え?急にどうしたって?別に何もないよ。ただあれからいろいろ思い返してたらお前のことが嫌いになったっていうか、やっぱり許せなくて。そういうことだから。じゃあな。 真奈:良くできました。 政広:ありがとうございます真奈様。 真奈:うーん…その話し方何とかならない?堅苦しくて仕方ないわ。 政広:ですが、真奈様は私のご主人様です。そんな方に対して対等になど話せません。 真奈:じゃあこれも命令よ。あなたと私はこれから恋人同士になるの。だから政広、あなたは私だけを愛する彼氏になりなさい。 政広:はい。分かりました。…真奈、大好きだよ。これからはずっと一緒にいような。 真奈:うふふ、私も政広のことだーい好き!私のこと一生離さないでね。 政広:もちろんだよ。愛してるよ真奈。 真奈:(政広が私の彼氏でいてくれるのは一週間。なぎさの様子から推測すると配役はリセットされてもその間にあった記憶は消えるわけじゃないみたいね。じゃあ今回政広がなぎさと別れたことで二人の配役はどうなるのかしら?後でチェックしなくちゃね。) 政広:真奈?どうかした?ぼーっとして。 真奈:ううん、何でもないの。ちょっと考え事してただけ。 政広:そっか。さて、今日も稽古楽しんでいこーぜ! 真奈:そうね、楽しみましょう。 : :-------------------(その日の夜) 真奈:ふう…今日は最高の一日だったわ!さてと、朝考えてたことを検証しなくちゃ。配役表、配役表っと…あ!私が予想した通り、なぎさの配役から【彼女】が消えてる!でも政広の配役には【彼氏】が残ったままだ。ということは、私が書き換えた配役については一週間でリセットされるけど、それによってもたらされた影響は他者の配役にも変化をもたらすというわけね。しかもこっちはリセットされずに残るってことか。つまり本当に相手を思い通りに動かすためには別の誰かの配役を変えて間接的に対象にアプローチさせれば良いってことね!だんだんこの配役表の使い方が分かってきたわ!じゃあ政広から【彼氏】の役を完全に消すためには今の配役の効果となぎさを使って…うふふ。楽しくなってきたわ♡ : :-------------------(翌朝) 政広:おはよう、真奈!昨日は真奈のことで頭がいっぱいで眠れなかったんだ。 真奈:嬉しいわ!私もずっと政広のことだけ考えていたの。ねぇ政広、私のお願い、聞いてくれる? 政広:もちろん!真奈のお願いなら何だって聞くよ。 真奈:じゃあ…今夜稽古が終わったら私とデートしてくれない? 政広:そんなことならお安い御用さ!真奈と付き合って初めてのデートかぁ!楽しみだなぁ! 真奈:うふふ…私もとっても楽しみよ。それとね、もう一つお願いがあるんだけど…。 : :-------------------(稽古終了後) 政広:はぁー!今日の稽古も大変だったけど充実してたなぁ。 真奈:政広お疲れ様。 政広:お疲れ。最近真奈の演技がどんどんレベルアップしていて、主役として仕上がってきてるなーってすごく感じるんだ。 真奈:嬉しいわ。私ね、今回主役を演じられることが夢みたいで…だから全力で演じたいの。 政広:そっか。活き活きと演じる真奈を一番側で見られて幸せだよ。 真奈:私も政広が応援してくれるから頑張れるんだ。ありがとう! 政広:それじゃあ、約束のデートに行こっか。 真奈:うん!とっても楽しみ~!ねぇねぇ、私、政広と行ってみたい所があるの。 政広:え?どこ? 真奈:えっとね、夜景が素敵な絶景ポイントがあるんだ。 政広:へぇー、そうなんだ。それは楽しみだ。 真奈:行きましょ、政広。 政広:ああ。 : :-------------------(夜景の見える展望台にて) 真奈:着いたわ。どう?素敵でしょ? 政広:ほんとだ。真奈が言うように夜景がとっても素敵だね。でもどうして真奈はここに俺と来たかったの? 真奈:ねぇ…キスして。 政広:え? 真奈:私ね、政広と付き合ったらこの場所でキスしたいってずっと思ってたの。 政広:そうだったんだ。いいよ、キスしよう。 真奈:ほんと?嬉しい…。政広、愛してる。 政広:俺もだよ、真奈。さぁ、目を閉じて…。 真奈:うん…。 政広:んっ…〈真奈にキスをする〉 真奈:んっ…。〈政広のキスに応える〉 : :----------------------------- なぎさ:…政広君がメールで「話したいことがある」って言うから来てみたけど、どこにいるんだろう?私ったら、まだ政広君のこと引きずってるのかな?はぁー…何やってんだろ。もう私達の関係は終わったはずなのに。…え?あれは、もしかして…政広君? 真奈:んふぅ…政広とのキス最高だわ。ねぇ、もっとして。 政広:いいよ。んんっ…〈先程より激しくキスをする〉 真奈:んんっ…〈政広のキスに応える〉 なぎさ:政広…君?これは一体どういうことなの? 政広:んはぁ…。〈真奈の唇から離れる〉お、なぎさ。来てくれたんだ。 真奈:あら?誰かと思えばなぎささんじゃない。こんな所で会うなんて奇遇ね。あ、もしかして今の見られてた?やだ…恥ずかしい…。 なぎさ:えっと…政広君から話したいことがあるって言われて来たんだけど。 政広:ああ、話っていうのは真奈のことを紹介したくてね。こないだは電話で俺から一方的に別れ話を持ちかけただろ?だからもしかしたらまだ俺に未練があるんじゃないかと思ってさ。俺たち付き合うことになったんだ。 なぎさ:うそ…でしょ?そんなことのために私をこんな場所まで呼び出したの?しかも私の目の前であんなことを…うぅ…ひどい…ひどすぎるわ!政広君がこんなことする人だったなんて思わなかった…最っ低!!ちょっとでも期待してた私がバカみたいだわ!あんたなんか大っ嫌いよ!付き合うなり何なり勝手にすればいいじゃない!!私帰る!! 真奈:(ふふふ…これで政広の配役がリセットされても二人の関係が戻ることはないわ。放っておいてもいずれ政広の配役から【彼氏】は消える。あとはどうやって私の彼氏にするかだけね。) 政広:なぎさ、怒って帰っちゃったね。ごめんな、せっかくのデートの雰囲気を台無しにしてしまって。 真奈:ううん、いいの。それよりも彼女の目の前でハッキリと気持ちを伝えてくれた事がとっても嬉しかったわ。 政広:そっか、それなら良かった。じゃあ、さっきの続き…しよっか。 真奈:ええ。んっ…〈政広にキスをする〉 : :----------------------------- 真奈:政広、今日はとっても楽しかったわ。 政広:ああ、俺もだ。なぎさとの縁もバッチリ切れたし、これで迷うことなく真奈だけを愛することができるよ。 真奈:嬉しいわ。ねぇ、政広。一つ聞いてもいい? 政広:ん?何? 真奈:これから先何があっても私のことだけ愛し続けてくれる? 政広:当たり前じゃないか。真奈は俺にとって大切な人なんだから。 真奈:嬉しいわ。その気持ち、絶対に忘れないでね。 政広:ああ、もちろんだよ。何があっても忘れないよ。 真奈:ありがとう。来週また私とデートしてくれるかしら? 政広:ああ、もちろん! 真奈:約束だよ。 政広:うん。 真奈:じゃあ最後に、政広に秘密のおまじないをかけてあげる。ちょっと耳を貸して。 政広:何だろう。すごくドキドキするな。 真奈:政広、あなたの主人として命令するわ。あなたはたった今、私と永遠の愛の契約を結んだ。このことは*未来永劫《みらいえいごう》あなたの潜在意識の奥底に深く刻み込まれて決して消えることはない。そう…たとえ役の効果が消えても絶対に。いいわね? 政広:はい…真奈様。 真奈:じゃあそうね、合言葉を決めておきましょうか。『私だけの政広』…この言葉を聞くとあなたはどんな時でも私との愛の契約を思い出すわ。分かった? 政広:はい。心に刻み込みました。 真奈:よろしい。それじゃ私の彼氏に戻って。 政広:あれ…?俺もしかしてぼーっとしてた? 真奈:いろいろあったから疲れてんのよ。今日はもう帰りましょ。 政広:そうだな。本当に楽しかった。じゃあまた明日。 真奈:またね。 : 真奈:(M)これは一つの賭けだった。もうすぐ政広の役の効果が消える。そのあと合言葉を聞いて政広が今の状態に戻れば私の勝ち。戻らなければ別の方法を考えないといけなくなる。でも不思議と、私は全てがうまくいく気がしていた。 : :-------------------(一週間後) 政広:真奈、稽古お疲れ様。 真奈:政広さん、稽古お疲れ様。本番まであと少しだから頑張っていこうね。 政広:おう! 真奈:ところで…先週の私との約束、覚えてる? 政広:約束?約束…。うーん、俺、何か真奈と約束したっけ? 真奈:あはは…やっぱり覚えてないか。じゃあ私が全て思い出させてあげるね。 政広:え? 真奈:ねえ…『私だけの政広』に戻って。 政広:あ…。 真奈:どう?思い出した? 政広:ああ、今日は真奈とデートする約束だったもんな。もちろん覚えてるよ。 真奈:嬉しい!じゃあ稽古が終わったらここで待ってるね。(うふふ…やったわ!どうやら賭けは私の勝ちのようね!あとは政広の配役がどう変わっているかを確認するだけだわ) : ユウリ:へぇー…あの真奈って子、なかなかユニークな使い方をするね。あの短期間で配役表の特徴を*掴《つか》んだだけじゃなく、効果消滅のデメリットまで克服するとは…さすがこの僕が見込んだだけの事はあるな。さぁて…これからどう『成長』していくか*見物《みもの》だなぁ。ふふふ…。 : 真奈:政広、お疲れ様! 政広:真奈、ごめんな。待たせちまったみたいで。団長の演技指導が長くってさ。 真奈:ううん。大丈夫よ。私もさっき来たとこだから。 政広:それなら良かった。じゃあ、行こっか? 真奈:うん! 政広:じゃあ今日は、俺の行きつけのフレンチレストランで食事した後、先週行ったあの場所で一緒に夜景を眺めるってのはどう? 真奈:いいわね!とても楽しみだわ。 政広:おっけー! : :-------------------(レストランにて) 真奈:はぁ…美味しかったぁ! 政広:良かった。真奈に喜んでもらえて嬉しいよ。 真奈:ところでさ、あれからなぎさに連絡とかした? 政広:二日くらい前に一度だけ。メールや電話をしてみたけど、ブロックされているみたいで連絡がつかなかったんだ。だからどうしようもなくて…。 真奈:そうだったの…。なぎさのこと…まだ未練あったりする? 政広:昨日まではね。でもさっき真奈が全部思い出させてくれたから、今はもう何とも思ってないよ。 真奈:そう…じゃあ私だけを愛してくれる? 政広:ああ!もちろんだよ。俺は真奈だけを愛してるから。 真奈:私…とっても幸せだよ。政広、愛してる。 政広:俺もだよ。真奈。ずっと一緒にいような。 真奈:うん! 政広:じゃあそろそろ出よっか。 真奈:うん。素敵なお店に連れて来てくれてありがとね。 政広:こちらこそ!また来ような。 真奈:うん!楽しみにしてる。 : :-------------------(夜景が見える展望台にて) 政広:やっぱりここから見る夜景は最高だな。 真奈:政広、一つ確認して良い? 政広:うん。何? 真奈:前にここで起きたこと。どこまで覚えてるの? 政広:どこまで…って、真奈とキスをして、なぎさが来て、真奈のことを紹介したらブチ切れて帰っちまって、それから真奈のことだけを愛するって誓って、今日デートする約束をしたところまでは覚えてるよ。 真奈:そうなのね。じゃあもう一つ聞いて良い? 政広:うん。どうぞ。 真奈:あなたにとって私はどういう存在? 政広:え?俺にとって真奈は大切な彼女だけど? 真奈:(ふむ…やっぱり自分が*下僕《げぼく》だっていう部分だけすっぽりと抜け落ちているようね。潜在意識に刻み込んだ内容はガッツリ覚えてるっていうことは…うふふ、この方法を使えばもう役の効果が消えることを気にする必要はないということね。) 真奈:ありがとう!ごめんね、変なこと聞いて。 政広:いや、別にいいけど。何か心配なことでもあるのか?俺で良ければ相談乗るけど? 真奈:大丈夫よ。悩みは全て解消されたから。それよりも…またキスしたいな。 政広:うん。良いよ。…んっ〈真奈にキスをする〉 真奈:んっ…〈政広のキスに応える〉 : :----------------------------- 真奈:今日もとっても楽しかったわ。 政広:俺もだよ。なぁ、真奈。これは提案なんだけど、俺ん家で一緒に暮らさないか? 真奈:え?でもご家族とかいらっしゃるんじゃ…。 政広:大丈夫だよ。今俺一人暮らしだからさ。真奈さえ良ければどうかなって思ってるんだけど? 真奈:とっても嬉しいわ。でも今すぐは難しいかな。いろいろと準備とかあるし、とりあえず舞台が落ち着くまではそっちに集中したいから。 政広:まあそうだよな。分かった。じゃあ舞台が終わって落ち着いたらいろいろと話し合おうよ。 真奈:ええ。分かったわ。じゃあ今日はこの辺で。また明日ね。 政広:ああ。また明日。 : :-------------------(真奈の家) 真奈:さてと、政広の配役はどうなっているかしら?あ!…【*下僕《げぼく》】の役が消えて、代わりに【彼氏】の配役紹介が『彼女である内田真奈を生涯にわたって愛し続ける』に変化してる!あははは!やったわ!大成功よ!これで政広の配役からなぎさは完全にいなくなって私だけのモノになったわ!それじゃあ次は誰を*下僕《げぼく》にしようかしら…そうだ!うふふ…きーめた♡ : :-------------------(翌日) 団長:どうした真奈?お前が俺に相談だなんて珍しいな。何か悩み事でもあるのか? 真奈:いえ、稽古は毎日楽しくてとっても満足しています。ただ…。 団長:ただ…何だ? 真奈:少し台本に刺激が足りないかなと思いまして。 団長:おい、俺が書いた台本に文句でもあるのか? 真奈:はい。台本自体はとても素敵に書かれていますが、この内容だと観客はすぐに飽きてしまいます。特にクライマックスで傷付いた姫が王子に抱きかかえられるシーンでは、お互いに愛を誓い合っておきながらキスの一つもしないなんてありえません。 団長:なんだと!ここは死に*逝《ゆ》く姫を前にして、王子が「死なないで欲しい!」という強い願いを込めて祈る場面だろうが!なぜそんな所にキスシーンがいるんだよ! 真奈:必要です。私がもっと輝くために! 団長:お前、いい加減にしろよ! 真奈:あら団長さん、もう忘れたの?私とあなたの関係を。 団長:あ…私はあなた様に仕える忠実な*下僕《げぼく》です。 真奈:そうよね。いいの?私にそんな口をきいても。 団長:も、申し訳ございませんでした!すぐに台本を修正します。 真奈:分かればよろしい。それからあと一つ。 団長:は、はい!何でしょうか? 真奈:せっかくだからあなたにも魔法をかけてあげるわ。よぉく聞いてね。 団長:はい…。 真奈:あなたはこれから先もずっと私の*下僕《げぼく》として生きていくの。私のためだけに素敵な台本を書き続ける存在として。 団長:はい…真奈様のためだけに台本を書き続けます。 真奈:うふ♡それでいいわ。私と交わしたこの契約はあなたの潜在意識に深く刻み込まれるわ。 団長:深く…刻み込まれる…。 真奈:そう…この契約は役の効果が消えてもあなたの心に永遠に残り続けるの。 団長:永遠に残り続ける…。 真奈:そして私が『団長さん、踊りましょう。』と言うとあなたはいつでも私との契約を思い出すわ。分かった? 団長:分かりました…。 真奈:物分かりが良くて嬉しいわ。それじゃあいつもの団長さんに戻っていいわよ。 団長:うぅ…俺は一体…。 真奈:じゃあそういう訳なので、よろしくお願いしますね。 団長:ああ、分かった。後で追加しておく。 真奈:(うふふ…これで私は舞台でも、人生においても、永遠に主役として輝き続けることができる!あぁ…何て素敵なの!) : :----------------------------- 団長:みんな、稽古の途中にすまんな。実は急遽クライマックスの所にキスシーンを追加することになった。この変更はクライマックスの姫と王子の別れの場面をより引き立たせるためにどうしても必要な変更だ。各自しっかりと読み込んでおくように! 真奈:政広、私達、舞台の上でもキスできるんだって!とっても楽しみだわ! 政広:ああ、そうだな。俺もドキドキしてるよ。お互い精一杯演じような! 真奈:ええ!頑張りましょう! : :-------------------(稽古シーン)〈王子に抱き抱えられる姫〉 真奈:「う、うう…わたしは一体…?」 政広:「姫様、しっかりしてください!」 真奈:「その声は…もしかして、クリス王子なの?」 政広:「そうです!クリスです!」 真奈:「あぁ!…ようやく会えたのですね!…ねぇ、クリス。どこにいるの?」 政広:「私はここにいますよ。」 真奈:「何も見えないの…真っ暗で何も…。」 政広:「姫様…もしかして目が…。」 真奈:「私の愛するクリス…私はもう長くないわ。」 政広:「うう…姫様…そんなこと言わないでください。私もあなたのことをずっとお*慕《した》い申し上げておりました。ようやく…ようやくお会いできたというのに…。」 真奈:「泣かないで、クリス。」 政広:「こんな…こんなことって…。」 真奈:「ねぇクリス…私のお願い聞いてくれる?」 政広:「…はい。何でも言ってください。」 真奈:「キスして…」 政広:「え…?」 真奈:「最期にあなたの温もりを感じたいの。だから…お願い。」 政広:「…分かりました。失礼します。んっ…〈クリスが姫に優しくキスをする〉」 真奈:「んっ…〈クリスのキスに応える〉」 政広:「んんっ…〈さらに熱く激しいキスをする〉」 真奈:「んんっ…〈クリスのキスに応える〉」 政広:「んはぁ…。〈姫の唇から離れる〉」 真奈:「んふぅ…。ありがとう…クリス…かなえてくれて…あいして…る」 政広:「え…?姫…様…?姫様!!うわぁぁぁ!!!」 : :-------------------(稽古シーン終了) 団長:素晴らしい!二人とも最高だったよ! 真奈:ありがとうございます! 政広:これも全て真奈の迫真の演技のおかげです。 団長:うむ、これなら観客も大いに喜んでくれるだろう。この調子で本番も頑張ってくれよ。 真奈:はい!〈同時に〉 政広:はい!〈同時に〉 : :-------------------(稽古終了後) 真奈:政広、今日の稽古は最高だったね! 政広:うん!あれを舞台で演じられると思うとワクワクするよ! 真奈:絶対成功させようね! 政広:ああ、もちろんだ! 真奈:(これで準備は整ったわ。あとは一週間後のリセットのタイミングで団長にあの言葉を聞かせれば全ては私の思い通りになる。うふふ…楽しみで仕方ないわ!) 政広:真奈、なんか嬉しそうだな。 真奈:ええ、政広と一緒にこんな素敵な台本を演じられるんですもの!嬉しいに決まってるじゃない。 政広:俺もだよ。なあ、真奈。これから飲みにでも行かないか? 真奈:ごめんなさい。今日はちょっとやることがあるから帰らないといけないの。 政広:そっか、それじゃあ仕方ないな。また明日な!気を付けて帰れよ。 真奈:うん!政広もね。また明日。 : :-------------------(自宅までの帰り道) 真奈:(帰ったら改めて配役表をチェックしてそれぞれの配役にどんな変化があったかを確認しないとね。それにしても一人ずつ*下僕《げぼく》にしていく方法だと時間がかかるし、何より効率が悪すぎるわ。もっとたくさんの人に対して一度に影響を与える方法とかないかしら?) なぎさ:あら、真奈さんこんばんは。 真奈:え?なぎさ…さん? なぎさ:そんなに驚かないでよ。毎日幸せそうで何よりね。政広君とは上手くいってる? 真奈:え、ええ…まあ。 なぎさ:そう。それは良かったわ。 真奈:何か私に用かしら?急いでるから用がないなら失礼するわね。 なぎさ:あら、良いのかしら?私にそんな態度を取って? 真奈:何を…言ってるの? なぎさ:さぁ真奈さん、思い出して。私はあなたにとってどういう存在だったかしら? 真奈:あ…あぁ♡…私、今全部思い出しました!なぎさ様は私の全てを捧げるべきお方です! なぎさ:その通りよ!素晴らしいわ!私ね、全てを失ったあの日…ある人からとっても素敵な物をもらったの。 真奈:素敵な物…ですか? なぎさ:そう、これなんだけどね。 真奈:それは…本? なぎさ:うふふ。ただの本じゃないわよ。真奈さんだけには特別に教えてあげるわ。この本はね、タイトルの欄に名前を書くとね、その人の人生という台本を全て閲覧できるの。そして、このペンで書き換えることで人生そのものを自由に変えることができる素晴らしいアイテムなの。言うなれば、今は私があなたの人生の脚本家ってわけ。 真奈:私の人生の脚本家…ですか? なぎさ:そうよ。最初にあなたの台本を読んだ時は本当にワクワクしたわ。あなたがユウリって天使からもらった配役表で全てが思い通りになるサクセスストーリー。私から全てを奪って手に入れた素晴らしい人生がそこには*綴《つづ》られていたわ。だからね、私がもっと素敵になるように書き換えてあげたの。 真奈:書き換えた? なぎさ:そう!栄光を*掴《つか》むあと一歩の所で私と出会い、本当のあなたを思い出すの!そしてあなたが*掴《つか》むはずだった全てを心酔して止まない私に捧げるの!どう?素敵だと思わない? 真奈:とっても素敵な人生だと思います!私の人生をなぎさ様の手で書き換えていただけたなんて、天にも昇る気分です♡ なぎさ:さぁ、あなたの全てを私に捧げなさい!そしてこれからは私のためだけに生きるのよ! 真奈:はい♡喜んでなぎさ様に捧げます!あぁ…私、今とっても幸せです♡ なぎさ:うふふ…真奈は本当に可愛い子ね。安心して、私がもっと幸せにしてあげるから。 真奈:はぁ…♡なぎさ様がいてくださるなら、もう何もいらないわ♡ : :----------------------------- ユウリ:あーあ…今回も他の天使に持って行かれちまったか。ちっ…もう少しだったのになぁ。まあ僕としては膨れ上がった欲望が、成就する直前で根こそぎ*掠《かす》め取られる瞬間を見ることができたから満足だけど。あー楽しかった!さてと、次は誰の人生で遊ぼっかなー! : :~完~

タイトル:ロールチェンジ・ザ・ゲーム : 登場人物: 真奈:*内田 真奈《うちだ まな》。某劇団に所属する劇団員 団長:真奈が所属する劇団の団長。 なぎさ:*早川 なぎさ《はやかわ なぎさ》。真奈が所属する劇団に最近入団した女性。礼儀正しく人一倍向上心が強い。 ユウリ:正体不明のイケメン。謎の男と兼役 政広:*江口 政広《えぐち まさひろ》。真奈と同じ劇団に所属する。真奈の先輩。 : :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : 本編: 団長:というわけで、今回の配役は以上だ。みんな、本番まであと二ヶ月しかないぞ!気を引き締めて稽古にあたれ!いいな! 真奈:(あぁ…まただ。また私は主役から外された。なんで…なんでいつもこうなの!!私はこんなにも頑張っているのに!) なぎさ:精一杯頑張ります!とても緊張していますが、よろしくお願いします! 真奈:(…ちょっと声と顔が良いだけで、いつもチヤホヤされて。演技なんてからっきしなくせに。) なぎさ:真奈さん!一緒に素敵な舞台にしましょうね! 真奈:う、うん。 : 真奈:(M)あの子は眩しいくらいの笑顔で私に話しかけてくる。決して仲が良い訳じゃないのに。そうやっていつも周りの人気を総取りしていくのだ。私はそんな彼女が大嫌いだった。 なぎさ:真奈さん?どうしたの? 真奈:大丈夫、何でもないから。 なぎさ:ほんとに?なんか体調悪そう…。無理しないでね。 真奈:〈小声で〉…誰のせいだと思ってんのよ。 なぎさ:え? 真奈:ううん。こっちの話。 なぎさ:そう…なら良いんだけど。 真奈:そろそろ稽古始まるから行くわ。 なぎさ:あ、うん。これからよろしくね。 真奈:よろしく。 : 真奈:(M)私がこの劇団に入団して早5年。舞台演劇に憧れていろんな所を探し歩いた結果辿り着いたのが今の場所だった。団長が書く台本はどれも本当に面白くて、周りの仲間達は優しい人達ばかり。引っ込み思案の私にとって、ここは夢のような場所だった。ずっと素敵な仲間に囲まれて大好きな演劇を続けていきたい…心からそう思っていた。あの子が入ってくるまでは。 なぎさ:真奈さんお疲れ様。今日も稽古楽しかったね! 真奈:お疲れ様。 なぎさ:ねえ、この後みんなとご飯食べに行くんだけど、真奈さんもどう? 真奈:いや、私はちょっと用事あるから先帰るわ。 なぎさ:そうなんだ。ざーんねん。じゃあまた明日ね! 真奈:うん。また明日。 : 真奈:はぁ…今日もあの子が気になって全然稽古に集中出来なかった。しかしまあ、あの程度の演技でよく主役になれたものだわ。しかも周りはみんなあの子に夢中で…。はぁ…私、嫉妬してんのかな…。なんて醜いんだろ。 謎の男:そこのお嬢さん、溜息なんかついちゃってどうしたんだい? 真奈:な、なんですか急に。別に何でもないのでほっといてください。 謎の男:ふーん。そうかい。おやおや、ちょっと主役を取られたくらいでそんなに落ち込んじゃダメだよ。 真奈:え…どうしてその事を? 謎の男:驚いた?ふふふ、ちょっと君の心を覗いただけだよ。 真奈:うそよ、そんなことできるわけ…。 謎の男:できるんだなぁ、それが。試しに今君が何を望んでいるかも当ててあげようか? 真奈:え…? 謎の男:「私がなぎさに代わって主役を演じたい。なぎさのようにもっと周りから注目を集めたい。なぎさのような人生を送りたい。」 真奈:な、なんでそこまで分かるの? 謎の男:さあ、なんでだろうね?まあ僕は人間じゃないからね。 真奈:人間じゃ…ない? 謎の男:おっと、自己紹介がまだだったね。僕はユウリ。君の願いを叶えるために舞い降りた天使ってとこかな? 真奈:天使…? ユウリ:そう。落ち込んでいる君の姿がふと目に留まってね。どうしても助けたくて君のもとに舞い降りたってわけ。 真奈:ふーん。そう言われて「はい、そうですか」って信じられるわけないじゃない。ファンタジー映画じゃあるまいし。 ユウリ:ふむ…まあそれもそうだね。じゃあそんな君にこれをプレゼントしてあげよう。 真奈:これは…配役表? ユウリ:その通り!よく分かったね。この冊子にはね、君という人生の舞台に登場する人物の名前と、現在の配役が書かれているんだ。君はここに書かれた登場人物に対して、自由に役を追加したり書き換えたりすることができる。そして役を書き換えられた相手はその役に沿った行動を取るようになるんだ。さらに!配役の横にある配役紹介欄に役の性格や特徴なんかを追記すれば、より細かく対象人物の行動を設定することができるよ。どう?すごいでしょ? 真奈:何を言い出すかと思えばバカバカしい。そんなのただの妄想ごっこじゃない。それで私の人生が何か変わるわけでもないのに…。 ユウリ:まあまあ、騙されたと思ってやってみなよ。 真奈:〈無理やり押し付けられる〉あ、ちょっと…。 ユウリ:ただし、一度に書き換えることができるのは一人だけ。書き換えが終わったら「ロールチェンジ」って叫べば更新できるから。あと一度更新したらそこから一週間は何も書けなくなるから注意してね。 真奈:ねえ、この配役表に私の名前が無いんだけど。 ユウリ:君すごいね!実は君自身の配役は変更できないようになっているんだ。というよりも変更する必要がないって言った方が正しいかな。 真奈:どういうこと? ユウリ:つまりこの舞台において、唯一君だけが配役に*囚《とら》われることなく自由に演じることができる存在なんだ。だから君自身に配役なんて必要ないんだよ。気に入らなければどんどん周りを変えていけば良いのさ! 真奈:気に入らなければ周りを変えることができるアイテム…?そんなことができたら確かに素敵だとは思うけど。 ユウリ:あとは君の自由にしなよ。僕は君に笑顔が戻ることをお空の上から見守ってるよ。 真奈:え?ちょっと!うそ…本当に飛んで行っちゃった。もしかして、本物の天使なの?うーん、かなり怪しいけどやってみるか。 : 真奈:(M)私は家に帰ると早速机の上にユウリからもらった配役表を広げた。 : 真奈:えっと…どれどれ。へぇ…一人一人の登場人物にはいろんな役が付いてるのね。例えば私のお父さんだと、【父親】『娘の前では*寡黙《かもく》だが、本当は娘のことを*溺愛《できあい》している』、【営業部課長】『部下思いの上司で、仕事に対しては真面目』、【夫】『妻である*内田 美代子《うちだ みよこ》を誰よりも愛している』、あとは…何これ!【宴会部長】『宴会の席において場を仕切り、盛り上げることに心血を注ぐ』なんてのもあるわ!面白いわね。なるほど、ここに新たに役を追加したり書き換えたりできるわけね。分かったわ。じゃあまずは…私の大嫌いななぎさから見てみましょうか。えっと、【娘】『*孝行娘《こうこうむすめ》で、両親の幸せを第一に考えている』、【劇団員】『常に周りの仲間に感謝して、どんな役でも全力で演じる』か…もしかしたら本当は意外と良い子なのかもしれないわね。ん?【彼女】『彼氏である江口政広のことを心から愛している』…これはどういうことなの…?私がずっと憧れていた政広さんとなぎさが恋人同士?いつの間に…。ははは…馬鹿みたい…二人が幸せな日々を過ごしている間に私は叶うはずのない相手にずっと想いを寄せてたんだ…。なぎさ!あんたはまた私から大切な物を奪って行くのね!絶対に許さない!こうしてやる! : 真奈:(M)そう言って私はなぎさの【彼女】の配役紹介を『彼氏である江口政広の事が大嫌いで、心の底から別れたいと思っている』に書き換えた。それとともに【劇団員】の紹介欄を『自分の演技が最高で、周りは全てクズだと思い込んでいる』に変更したところでこう叫んだ。 : 真奈:ロールチェンジ!(M)一瞬頭の中で「更新完了」という声が響いた気がした。 : :-------------------(翌日) 政広:お、おい、なぎさ。急にどうしたんだよ。 なぎさ:だから!私は前々からあんたのことが死ぬほど大っ嫌いだったって言ってんの! 政広:ウソだろ…昨日まであんなに優しかったのにどうして…。 なぎさ:はぁ?優しかった?あははは!バッカじゃないの?そんなもの、演技に決まってるでしょ?内心*反吐《へど》が出そうだったわ! 政広:なあ、俺に悪い所があったなら直すからさ、機嫌直してくれないか? なぎさ:何度も言わせないでよ!あんたの顔なんか二度と見たくないから今すぐ別れて! 政広:そんな…。 なぎさ:ちょっと、もう稽古始まるんだから邪魔よ!目障りだわ!どうせ下手な演技しかできないクセに! 政広:うう…一体どうなってるんだ…。 真奈:(ウソ…昨日配役表に書いたことが現実になってる…。) 真奈:なぎささん!ちょっと言い過ぎじゃないの! なぎさ:あら?誰かと思えば私に主役を取られた可哀想な真奈さんじゃない。何?あいつの肩を持つの?下手な役者同士仲が良いのね。 政広:おい!なぎさ!お前いい加減にしろよ!ちょっと主役に選ばれたからって良い気になりやがって! なぎさ:何言ってんの?私の演技は最高なのよ。主役に選ばれて当然だわ!それに比べてあんたたちのクズみたいな演技は何? 団長:思い上がるな! なぎさ:!?…団長? 団長:お前を主役に選んだのは演技が上手いからじゃない!演技に対してひたむきに努力する姿勢と周りに対する感謝の心、そして何より将来の伸びしろも*加味《かみ》して俺はお前を主役に選んだんだ。それがなんだその態度は!もういい、お前がそういう態度を取るならお前はうちの劇団にはいらん。とっとと出ていけ! なぎさ:はっ!私の演技の素晴らしさも理解できないクソ団長の元で芝居なんかやってらんないわよ!こんな劇団こっちから願い下げだわ!じゃあね!バイバイ! 政広:ごめんな真奈…お前まで巻き込んでしまって。なぎさはあんなヤツじゃなかったのに…。あれじゃまるで別人みたいだ…。 真奈:ほんとね、私も正直驚いちゃったわ。今までの彼女からは想像もできなかったから。でも、もしかしたら今までずっと自分を押え込んで我慢してたのかもしれないわね。 政広:そうだな…あんなにプライドが高くて人を見下すヤツだったなんて知らなかった。俺も今ので目が醒めたよ。俺自身、あいつと別れて正解だったって思ってるよ。 真奈:それなら良いんだけど…。あまり落ち込まないでね。 団長:真奈、ちょっといいか? 真奈:はい。何でしょう? 団長:なぎさの件はすまなかった。 真奈:いえ、私は当事者ではありませんから。 団長:いや、その事じゃなくてだな。 真奈:え? 団長:実は今回の配役についてなんだが、なぎさがいなければ本当はお前を主役にしようと思っていたんだ。でもあいつの普段の頑張りや今後の成長も含めていろいろ悩んだ末にお前には主役を外れてもらう結果になってしまった。本当に申し訳なかった。 真奈:いえ、それが私の実力ですから仕方ないと思っています。 団長:俺もお前が影で一生懸命努力していたことには気付いていた。だから配役発表の時にお前が落ち込んでいるのを見て主役にしてやれなかったことをひどく後悔したよ。でもあんなことがあってなぎさは劇団を抜けてしまった。今更こんなことを頼むのは都合が良いと思われるかもしれないが、真奈、お前に主役を任せたい。どうだ?引き受けてはくれないだろうか。 真奈:え…私が主役をやってもいいんですか? 団長:もちろんだ。 真奈:嬉しいです!ぜひやらせてください! 団長:ありがとう。期待してるぞ。 真奈:はい!精一杯頑張ります! 団長:というわけだ。みんな、なぎさのことは残念だが、気を落とさずに頑張ってくれ。 真奈:(すごい!全てが私を中心に回ってる!ユウリがくれた配役表があれば何だってできちゃうじゃない!うふふ…もう笑いが止まらないわ。) 政広:真奈、おめでとう!やっぱり主役は真奈が一番似合ってるよ。 真奈:政広さん、ありがとう!私頑張るね! 政広:うん!改めてよろしくな! 真奈:(M)その日を境に私を取り巻く日常は一変した。私は*溢《あふ》れ出る幸せを噛みしめながら日々演技に没頭した。そしてあっという間に一週間が過ぎた。 : :-------------------(一週間後) 政広:真奈、お疲れ! 真奈:政広さんお疲れ様!今日の稽古も充実してたね! 政広:ああ!真奈が主役になってから毎日の稽古が楽しくて仕方ないんだ。 真奈:えへへ、ありがと。ねえ、政広さん。良かったらこの後一緒に飲みに行かない? 政広:お!いいね。俺もちょうど真奈と飲みたいなって思ってた所なんだ。 真奈:ほんと?嬉しい!じゃあ先に着替えて稽古場の前で待ってるね! 政広:うん!俺も後から行くから。 真奈:じゃあまた後で。 政広:おう! : :-------------------(30分後) 真奈:おっかしいな。もうかれこれ30分も待ってるのに、政広さんどうしちゃったんだろ?ちょっと心配だから様子見に行こっかな。 政広:〈通話中〉え…?会って話がしたいって今更何だよ!俺があの時どれだけ辛い想いをしたか分かってんのか! 真奈:あ、政広さんだ。あれ?遅いと思ったら誰かと電話してたのね。何か揉めてるみたいだけど大丈夫かしら? 政広:〈通話中〉俺はお前のことをずっと最高の彼女だって思ってたのに…。そんな俺の気持ちをお前は踏みにじったんだ!いや、俺だけじゃない!真奈やお前のことを主役に選んでくれた団長にさえあんな酷い態度を取って! 真奈:もしかして…電話の相手は…なぎさ? 政広:〈通話中〉…泣いて謝ったって許されるわけないだろ!…え?あの時はどうかしてたって?…なぁ、教えてくれないか。一体何があったんだよ。あんなに明るくて優しいなぎさが急に人が変わったみたいになって…。俺、本当は今でも信じられないんだ。もし、以前のような優しいなぎさに戻ると約束してくれるなら、俺はもう一度なぎさとやり直したい。 真奈:え?政広さん何を言って…。 政広:〈通話中〉うん…分かった。じゃあ一時間後にいつものレストランで会おう。それじゃ。 真奈:ねぇ、政広さん。今の相手ってもしかして…。 政広:ま、真奈!…聞かれてたのか。うん…電話の相手はなぎさだよ。 真奈:政広さん、今日は私と飲みに行ってくれるんでしょ? 政広:ごめん…飲みには行けなくなった。やっぱり俺、どうしてもなぎさのことが忘れられないんだ。本当は何か事情があってあんな態度を取ったんじゃないかって。そうでなきゃ、あのなぎさが理由もなくあんな態度を取るはずがないって思ってるんだ。だから直接なぎさに会って彼女の口から事情を聞きたい。 真奈:政広…さん。 政広:ほんとごめんな。せっかく楽しみにしててくれたのに。この埋め合わせは必ずするから!だから今日は許して欲しい。 真奈:分かった。それで政広さんの気が済むなら私は全然構わないわ。行ってらっしゃい。 政広:真奈、本当にありがとう!それじゃまた明日稽古場で! 真奈:また明日…。(一体どういうこと?なぎさの配役は変更したはずなのに…。あれから一週間…はっ!もしかして一週間経ったら変更した内容がリセットされるのかしら?そうでなければこのタイミングでなぎさから政広さんに電話が掛かってくるはずがないもの。…まあ良いわ。たとえそうだとしてもやり方はいくらでもある。政広さん、あなたが忘れられないと言うのなら、私が忘れさせてあげる。うふふ…。) : 真奈:(M)私は家に帰るとすぐさま配役表を広げた。 : 真奈:やっぱり…なぎさの内容が元に戻ってる!なるほど…そういうことか。でも逆に言うと一週間は効果が持続するという事ね。それなら次は政広さんの配役を変えてあげるわ。えっと、政広さんのは…あった。【息子】『親孝行で優しい。両親を楽にさせてあげたいといつも思っている』、【劇団員】『演技に対して決して妥協せず、常に高みを目指して努力する』、【彼氏】『彼女である早川なぎさのことを心から愛し、信頼している』か…。やっぱり政広さんは素敵な人だわ。そうねぇ…じゃあこういうのはどうかしら? : 真奈:(M)私は政広さんの配役に【*下僕《げぼく》】『主人である内田真奈に対し身も心も捧げ、真奈の言うことには絶対服従する』を付け加えた。 : 真奈:ロールチェンジ!(M)頭の中に「更新完了」の声が響いた。 真奈:うふふ…これで政広さんは私のモノよ。 : :-------------------(翌日) 政広:真奈、昨日は約束守れなくてごめんな。あれからなぎさと会っていろいろ話したんだ。なぜ急にあんな態度を取ってしまったのか彼女自身にも分からないって言ってた。それで彼女すごく反省してて、もう一度よりを戻したいって言ってくれたんだ。だから俺… 真奈:ねぇ、政広。 政広:え…? 真奈:あなたにとって私はどういう存在かしら? 政広:真奈は、いや…真奈様は私のご主人様です。 真奈:そうね。それじゃあ、あなたは私にとっての何なの? 政広:私は真奈様の従順な*下僕《げぼく》です。 真奈:良くできました。なら私が言うことは何でも聞くのね。 政広:はい。どんなことにでも従います。 真奈:うふふ…良い子ね。じゃあ私から政広に命令するわ。早川なぎさとは今すぐ別れて私だけを愛しなさい。 政広:はい。早川なぎさとは別れて真奈様だけを愛します。 真奈:そう。それでいいのよ。さぁ、今すぐ彼女に電話しなさい。 政広:はい。(プルルル…)〈通話中〉あ、なぎさ?昨日のことなんだけどさ、俺やっぱりお前とよりを戻すなんて無理だわ。え?急にどうしたって?別に何もないよ。ただあれからいろいろ思い返してたらお前のことが嫌いになったっていうか、やっぱり許せなくて。そういうことだから。じゃあな。 真奈:良くできました。 政広:ありがとうございます真奈様。 真奈:うーん…その話し方何とかならない?堅苦しくて仕方ないわ。 政広:ですが、真奈様は私のご主人様です。そんな方に対して対等になど話せません。 真奈:じゃあこれも命令よ。あなたと私はこれから恋人同士になるの。だから政広、あなたは私だけを愛する彼氏になりなさい。 政広:はい。分かりました。…真奈、大好きだよ。これからはずっと一緒にいような。 真奈:うふふ、私も政広のことだーい好き!私のこと一生離さないでね。 政広:もちろんだよ。愛してるよ真奈。 真奈:(政広が私の彼氏でいてくれるのは一週間。なぎさの様子から推測すると配役はリセットされてもその間にあった記憶は消えるわけじゃないみたいね。じゃあ今回政広がなぎさと別れたことで二人の配役はどうなるのかしら?後でチェックしなくちゃね。) 政広:真奈?どうかした?ぼーっとして。 真奈:ううん、何でもないの。ちょっと考え事してただけ。 政広:そっか。さて、今日も稽古楽しんでいこーぜ! 真奈:そうね、楽しみましょう。 : :-------------------(その日の夜) 真奈:ふう…今日は最高の一日だったわ!さてと、朝考えてたことを検証しなくちゃ。配役表、配役表っと…あ!私が予想した通り、なぎさの配役から【彼女】が消えてる!でも政広の配役には【彼氏】が残ったままだ。ということは、私が書き換えた配役については一週間でリセットされるけど、それによってもたらされた影響は他者の配役にも変化をもたらすというわけね。しかもこっちはリセットされずに残るってことか。つまり本当に相手を思い通りに動かすためには別の誰かの配役を変えて間接的に対象にアプローチさせれば良いってことね!だんだんこの配役表の使い方が分かってきたわ!じゃあ政広から【彼氏】の役を完全に消すためには今の配役の効果となぎさを使って…うふふ。楽しくなってきたわ♡ : :-------------------(翌朝) 政広:おはよう、真奈!昨日は真奈のことで頭がいっぱいで眠れなかったんだ。 真奈:嬉しいわ!私もずっと政広のことだけ考えていたの。ねぇ政広、私のお願い、聞いてくれる? 政広:もちろん!真奈のお願いなら何だって聞くよ。 真奈:じゃあ…今夜稽古が終わったら私とデートしてくれない? 政広:そんなことならお安い御用さ!真奈と付き合って初めてのデートかぁ!楽しみだなぁ! 真奈:うふふ…私もとっても楽しみよ。それとね、もう一つお願いがあるんだけど…。 : :-------------------(稽古終了後) 政広:はぁー!今日の稽古も大変だったけど充実してたなぁ。 真奈:政広お疲れ様。 政広:お疲れ。最近真奈の演技がどんどんレベルアップしていて、主役として仕上がってきてるなーってすごく感じるんだ。 真奈:嬉しいわ。私ね、今回主役を演じられることが夢みたいで…だから全力で演じたいの。 政広:そっか。活き活きと演じる真奈を一番側で見られて幸せだよ。 真奈:私も政広が応援してくれるから頑張れるんだ。ありがとう! 政広:それじゃあ、約束のデートに行こっか。 真奈:うん!とっても楽しみ~!ねぇねぇ、私、政広と行ってみたい所があるの。 政広:え?どこ? 真奈:えっとね、夜景が素敵な絶景ポイントがあるんだ。 政広:へぇー、そうなんだ。それは楽しみだ。 真奈:行きましょ、政広。 政広:ああ。 : :-------------------(夜景の見える展望台にて) 真奈:着いたわ。どう?素敵でしょ? 政広:ほんとだ。真奈が言うように夜景がとっても素敵だね。でもどうして真奈はここに俺と来たかったの? 真奈:ねぇ…キスして。 政広:え? 真奈:私ね、政広と付き合ったらこの場所でキスしたいってずっと思ってたの。 政広:そうだったんだ。いいよ、キスしよう。 真奈:ほんと?嬉しい…。政広、愛してる。 政広:俺もだよ、真奈。さぁ、目を閉じて…。 真奈:うん…。 政広:んっ…〈真奈にキスをする〉 真奈:んっ…。〈政広のキスに応える〉 : :----------------------------- なぎさ:…政広君がメールで「話したいことがある」って言うから来てみたけど、どこにいるんだろう?私ったら、まだ政広君のこと引きずってるのかな?はぁー…何やってんだろ。もう私達の関係は終わったはずなのに。…え?あれは、もしかして…政広君? 真奈:んふぅ…政広とのキス最高だわ。ねぇ、もっとして。 政広:いいよ。んんっ…〈先程より激しくキスをする〉 真奈:んんっ…〈政広のキスに応える〉 なぎさ:政広…君?これは一体どういうことなの? 政広:んはぁ…。〈真奈の唇から離れる〉お、なぎさ。来てくれたんだ。 真奈:あら?誰かと思えばなぎささんじゃない。こんな所で会うなんて奇遇ね。あ、もしかして今の見られてた?やだ…恥ずかしい…。 なぎさ:えっと…政広君から話したいことがあるって言われて来たんだけど。 政広:ああ、話っていうのは真奈のことを紹介したくてね。こないだは電話で俺から一方的に別れ話を持ちかけただろ?だからもしかしたらまだ俺に未練があるんじゃないかと思ってさ。俺たち付き合うことになったんだ。 なぎさ:うそ…でしょ?そんなことのために私をこんな場所まで呼び出したの?しかも私の目の前であんなことを…うぅ…ひどい…ひどすぎるわ!政広君がこんなことする人だったなんて思わなかった…最っ低!!ちょっとでも期待してた私がバカみたいだわ!あんたなんか大っ嫌いよ!付き合うなり何なり勝手にすればいいじゃない!!私帰る!! 真奈:(ふふふ…これで政広の配役がリセットされても二人の関係が戻ることはないわ。放っておいてもいずれ政広の配役から【彼氏】は消える。あとはどうやって私の彼氏にするかだけね。) 政広:なぎさ、怒って帰っちゃったね。ごめんな、せっかくのデートの雰囲気を台無しにしてしまって。 真奈:ううん、いいの。それよりも彼女の目の前でハッキリと気持ちを伝えてくれた事がとっても嬉しかったわ。 政広:そっか、それなら良かった。じゃあ、さっきの続き…しよっか。 真奈:ええ。んっ…〈政広にキスをする〉 : :----------------------------- 真奈:政広、今日はとっても楽しかったわ。 政広:ああ、俺もだ。なぎさとの縁もバッチリ切れたし、これで迷うことなく真奈だけを愛することができるよ。 真奈:嬉しいわ。ねぇ、政広。一つ聞いてもいい? 政広:ん?何? 真奈:これから先何があっても私のことだけ愛し続けてくれる? 政広:当たり前じゃないか。真奈は俺にとって大切な人なんだから。 真奈:嬉しいわ。その気持ち、絶対に忘れないでね。 政広:ああ、もちろんだよ。何があっても忘れないよ。 真奈:ありがとう。来週また私とデートしてくれるかしら? 政広:ああ、もちろん! 真奈:約束だよ。 政広:うん。 真奈:じゃあ最後に、政広に秘密のおまじないをかけてあげる。ちょっと耳を貸して。 政広:何だろう。すごくドキドキするな。 真奈:政広、あなたの主人として命令するわ。あなたはたった今、私と永遠の愛の契約を結んだ。このことは*未来永劫《みらいえいごう》あなたの潜在意識の奥底に深く刻み込まれて決して消えることはない。そう…たとえ役の効果が消えても絶対に。いいわね? 政広:はい…真奈様。 真奈:じゃあそうね、合言葉を決めておきましょうか。『私だけの政広』…この言葉を聞くとあなたはどんな時でも私との愛の契約を思い出すわ。分かった? 政広:はい。心に刻み込みました。 真奈:よろしい。それじゃ私の彼氏に戻って。 政広:あれ…?俺もしかしてぼーっとしてた? 真奈:いろいろあったから疲れてんのよ。今日はもう帰りましょ。 政広:そうだな。本当に楽しかった。じゃあまた明日。 真奈:またね。 : 真奈:(M)これは一つの賭けだった。もうすぐ政広の役の効果が消える。そのあと合言葉を聞いて政広が今の状態に戻れば私の勝ち。戻らなければ別の方法を考えないといけなくなる。でも不思議と、私は全てがうまくいく気がしていた。 : :-------------------(一週間後) 政広:真奈、稽古お疲れ様。 真奈:政広さん、稽古お疲れ様。本番まであと少しだから頑張っていこうね。 政広:おう! 真奈:ところで…先週の私との約束、覚えてる? 政広:約束?約束…。うーん、俺、何か真奈と約束したっけ? 真奈:あはは…やっぱり覚えてないか。じゃあ私が全て思い出させてあげるね。 政広:え? 真奈:ねえ…『私だけの政広』に戻って。 政広:あ…。 真奈:どう?思い出した? 政広:ああ、今日は真奈とデートする約束だったもんな。もちろん覚えてるよ。 真奈:嬉しい!じゃあ稽古が終わったらここで待ってるね。(うふふ…やったわ!どうやら賭けは私の勝ちのようね!あとは政広の配役がどう変わっているかを確認するだけだわ) : ユウリ:へぇー…あの真奈って子、なかなかユニークな使い方をするね。あの短期間で配役表の特徴を*掴《つか》んだだけじゃなく、効果消滅のデメリットまで克服するとは…さすがこの僕が見込んだだけの事はあるな。さぁて…これからどう『成長』していくか*見物《みもの》だなぁ。ふふふ…。 : 真奈:政広、お疲れ様! 政広:真奈、ごめんな。待たせちまったみたいで。団長の演技指導が長くってさ。 真奈:ううん。大丈夫よ。私もさっき来たとこだから。 政広:それなら良かった。じゃあ、行こっか? 真奈:うん! 政広:じゃあ今日は、俺の行きつけのフレンチレストランで食事した後、先週行ったあの場所で一緒に夜景を眺めるってのはどう? 真奈:いいわね!とても楽しみだわ。 政広:おっけー! : :-------------------(レストランにて) 真奈:はぁ…美味しかったぁ! 政広:良かった。真奈に喜んでもらえて嬉しいよ。 真奈:ところでさ、あれからなぎさに連絡とかした? 政広:二日くらい前に一度だけ。メールや電話をしてみたけど、ブロックされているみたいで連絡がつかなかったんだ。だからどうしようもなくて…。 真奈:そうだったの…。なぎさのこと…まだ未練あったりする? 政広:昨日まではね。でもさっき真奈が全部思い出させてくれたから、今はもう何とも思ってないよ。 真奈:そう…じゃあ私だけを愛してくれる? 政広:ああ!もちろんだよ。俺は真奈だけを愛してるから。 真奈:私…とっても幸せだよ。政広、愛してる。 政広:俺もだよ。真奈。ずっと一緒にいような。 真奈:うん! 政広:じゃあそろそろ出よっか。 真奈:うん。素敵なお店に連れて来てくれてありがとね。 政広:こちらこそ!また来ような。 真奈:うん!楽しみにしてる。 : :-------------------(夜景が見える展望台にて) 政広:やっぱりここから見る夜景は最高だな。 真奈:政広、一つ確認して良い? 政広:うん。何? 真奈:前にここで起きたこと。どこまで覚えてるの? 政広:どこまで…って、真奈とキスをして、なぎさが来て、真奈のことを紹介したらブチ切れて帰っちまって、それから真奈のことだけを愛するって誓って、今日デートする約束をしたところまでは覚えてるよ。 真奈:そうなのね。じゃあもう一つ聞いて良い? 政広:うん。どうぞ。 真奈:あなたにとって私はどういう存在? 政広:え?俺にとって真奈は大切な彼女だけど? 真奈:(ふむ…やっぱり自分が*下僕《げぼく》だっていう部分だけすっぽりと抜け落ちているようね。潜在意識に刻み込んだ内容はガッツリ覚えてるっていうことは…うふふ、この方法を使えばもう役の効果が消えることを気にする必要はないということね。) 真奈:ありがとう!ごめんね、変なこと聞いて。 政広:いや、別にいいけど。何か心配なことでもあるのか?俺で良ければ相談乗るけど? 真奈:大丈夫よ。悩みは全て解消されたから。それよりも…またキスしたいな。 政広:うん。良いよ。…んっ〈真奈にキスをする〉 真奈:んっ…〈政広のキスに応える〉 : :----------------------------- 真奈:今日もとっても楽しかったわ。 政広:俺もだよ。なぁ、真奈。これは提案なんだけど、俺ん家で一緒に暮らさないか? 真奈:え?でもご家族とかいらっしゃるんじゃ…。 政広:大丈夫だよ。今俺一人暮らしだからさ。真奈さえ良ければどうかなって思ってるんだけど? 真奈:とっても嬉しいわ。でも今すぐは難しいかな。いろいろと準備とかあるし、とりあえず舞台が落ち着くまではそっちに集中したいから。 政広:まあそうだよな。分かった。じゃあ舞台が終わって落ち着いたらいろいろと話し合おうよ。 真奈:ええ。分かったわ。じゃあ今日はこの辺で。また明日ね。 政広:ああ。また明日。 : :-------------------(真奈の家) 真奈:さてと、政広の配役はどうなっているかしら?あ!…【*下僕《げぼく》】の役が消えて、代わりに【彼氏】の配役紹介が『彼女である内田真奈を生涯にわたって愛し続ける』に変化してる!あははは!やったわ!大成功よ!これで政広の配役からなぎさは完全にいなくなって私だけのモノになったわ!それじゃあ次は誰を*下僕《げぼく》にしようかしら…そうだ!うふふ…きーめた♡ : :-------------------(翌日) 団長:どうした真奈?お前が俺に相談だなんて珍しいな。何か悩み事でもあるのか? 真奈:いえ、稽古は毎日楽しくてとっても満足しています。ただ…。 団長:ただ…何だ? 真奈:少し台本に刺激が足りないかなと思いまして。 団長:おい、俺が書いた台本に文句でもあるのか? 真奈:はい。台本自体はとても素敵に書かれていますが、この内容だと観客はすぐに飽きてしまいます。特にクライマックスで傷付いた姫が王子に抱きかかえられるシーンでは、お互いに愛を誓い合っておきながらキスの一つもしないなんてありえません。 団長:なんだと!ここは死に*逝《ゆ》く姫を前にして、王子が「死なないで欲しい!」という強い願いを込めて祈る場面だろうが!なぜそんな所にキスシーンがいるんだよ! 真奈:必要です。私がもっと輝くために! 団長:お前、いい加減にしろよ! 真奈:あら団長さん、もう忘れたの?私とあなたの関係を。 団長:あ…私はあなた様に仕える忠実な*下僕《げぼく》です。 真奈:そうよね。いいの?私にそんな口をきいても。 団長:も、申し訳ございませんでした!すぐに台本を修正します。 真奈:分かればよろしい。それからあと一つ。 団長:は、はい!何でしょうか? 真奈:せっかくだからあなたにも魔法をかけてあげるわ。よぉく聞いてね。 団長:はい…。 真奈:あなたはこれから先もずっと私の*下僕《げぼく》として生きていくの。私のためだけに素敵な台本を書き続ける存在として。 団長:はい…真奈様のためだけに台本を書き続けます。 真奈:うふ♡それでいいわ。私と交わしたこの契約はあなたの潜在意識に深く刻み込まれるわ。 団長:深く…刻み込まれる…。 真奈:そう…この契約は役の効果が消えてもあなたの心に永遠に残り続けるの。 団長:永遠に残り続ける…。 真奈:そして私が『団長さん、踊りましょう。』と言うとあなたはいつでも私との契約を思い出すわ。分かった? 団長:分かりました…。 真奈:物分かりが良くて嬉しいわ。それじゃあいつもの団長さんに戻っていいわよ。 団長:うぅ…俺は一体…。 真奈:じゃあそういう訳なので、よろしくお願いしますね。 団長:ああ、分かった。後で追加しておく。 真奈:(うふふ…これで私は舞台でも、人生においても、永遠に主役として輝き続けることができる!あぁ…何て素敵なの!) : :----------------------------- 団長:みんな、稽古の途中にすまんな。実は急遽クライマックスの所にキスシーンを追加することになった。この変更はクライマックスの姫と王子の別れの場面をより引き立たせるためにどうしても必要な変更だ。各自しっかりと読み込んでおくように! 真奈:政広、私達、舞台の上でもキスできるんだって!とっても楽しみだわ! 政広:ああ、そうだな。俺もドキドキしてるよ。お互い精一杯演じような! 真奈:ええ!頑張りましょう! : :-------------------(稽古シーン)〈王子に抱き抱えられる姫〉 真奈:「う、うう…わたしは一体…?」 政広:「姫様、しっかりしてください!」 真奈:「その声は…もしかして、クリス王子なの?」 政広:「そうです!クリスです!」 真奈:「あぁ!…ようやく会えたのですね!…ねぇ、クリス。どこにいるの?」 政広:「私はここにいますよ。」 真奈:「何も見えないの…真っ暗で何も…。」 政広:「姫様…もしかして目が…。」 真奈:「私の愛するクリス…私はもう長くないわ。」 政広:「うう…姫様…そんなこと言わないでください。私もあなたのことをずっとお*慕《した》い申し上げておりました。ようやく…ようやくお会いできたというのに…。」 真奈:「泣かないで、クリス。」 政広:「こんな…こんなことって…。」 真奈:「ねぇクリス…私のお願い聞いてくれる?」 政広:「…はい。何でも言ってください。」 真奈:「キスして…」 政広:「え…?」 真奈:「最期にあなたの温もりを感じたいの。だから…お願い。」 政広:「…分かりました。失礼します。んっ…〈クリスが姫に優しくキスをする〉」 真奈:「んっ…〈クリスのキスに応える〉」 政広:「んんっ…〈さらに熱く激しいキスをする〉」 真奈:「んんっ…〈クリスのキスに応える〉」 政広:「んはぁ…。〈姫の唇から離れる〉」 真奈:「んふぅ…。ありがとう…クリス…かなえてくれて…あいして…る」 政広:「え…?姫…様…?姫様!!うわぁぁぁ!!!」 : :-------------------(稽古シーン終了) 団長:素晴らしい!二人とも最高だったよ! 真奈:ありがとうございます! 政広:これも全て真奈の迫真の演技のおかげです。 団長:うむ、これなら観客も大いに喜んでくれるだろう。この調子で本番も頑張ってくれよ。 真奈:はい!〈同時に〉 政広:はい!〈同時に〉 : :-------------------(稽古終了後) 真奈:政広、今日の稽古は最高だったね! 政広:うん!あれを舞台で演じられると思うとワクワクするよ! 真奈:絶対成功させようね! 政広:ああ、もちろんだ! 真奈:(これで準備は整ったわ。あとは一週間後のリセットのタイミングで団長にあの言葉を聞かせれば全ては私の思い通りになる。うふふ…楽しみで仕方ないわ!) 政広:真奈、なんか嬉しそうだな。 真奈:ええ、政広と一緒にこんな素敵な台本を演じられるんですもの!嬉しいに決まってるじゃない。 政広:俺もだよ。なあ、真奈。これから飲みにでも行かないか? 真奈:ごめんなさい。今日はちょっとやることがあるから帰らないといけないの。 政広:そっか、それじゃあ仕方ないな。また明日な!気を付けて帰れよ。 真奈:うん!政広もね。また明日。 : :-------------------(自宅までの帰り道) 真奈:(帰ったら改めて配役表をチェックしてそれぞれの配役にどんな変化があったかを確認しないとね。それにしても一人ずつ*下僕《げぼく》にしていく方法だと時間がかかるし、何より効率が悪すぎるわ。もっとたくさんの人に対して一度に影響を与える方法とかないかしら?) なぎさ:あら、真奈さんこんばんは。 真奈:え?なぎさ…さん? なぎさ:そんなに驚かないでよ。毎日幸せそうで何よりね。政広君とは上手くいってる? 真奈:え、ええ…まあ。 なぎさ:そう。それは良かったわ。 真奈:何か私に用かしら?急いでるから用がないなら失礼するわね。 なぎさ:あら、良いのかしら?私にそんな態度を取って? 真奈:何を…言ってるの? なぎさ:さぁ真奈さん、思い出して。私はあなたにとってどういう存在だったかしら? 真奈:あ…あぁ♡…私、今全部思い出しました!なぎさ様は私の全てを捧げるべきお方です! なぎさ:その通りよ!素晴らしいわ!私ね、全てを失ったあの日…ある人からとっても素敵な物をもらったの。 真奈:素敵な物…ですか? なぎさ:そう、これなんだけどね。 真奈:それは…本? なぎさ:うふふ。ただの本じゃないわよ。真奈さんだけには特別に教えてあげるわ。この本はね、タイトルの欄に名前を書くとね、その人の人生という台本を全て閲覧できるの。そして、このペンで書き換えることで人生そのものを自由に変えることができる素晴らしいアイテムなの。言うなれば、今は私があなたの人生の脚本家ってわけ。 真奈:私の人生の脚本家…ですか? なぎさ:そうよ。最初にあなたの台本を読んだ時は本当にワクワクしたわ。あなたがユウリって天使からもらった配役表で全てが思い通りになるサクセスストーリー。私から全てを奪って手に入れた素晴らしい人生がそこには*綴《つづ》られていたわ。だからね、私がもっと素敵になるように書き換えてあげたの。 真奈:書き換えた? なぎさ:そう!栄光を*掴《つか》むあと一歩の所で私と出会い、本当のあなたを思い出すの!そしてあなたが*掴《つか》むはずだった全てを心酔して止まない私に捧げるの!どう?素敵だと思わない? 真奈:とっても素敵な人生だと思います!私の人生をなぎさ様の手で書き換えていただけたなんて、天にも昇る気分です♡ なぎさ:さぁ、あなたの全てを私に捧げなさい!そしてこれからは私のためだけに生きるのよ! 真奈:はい♡喜んでなぎさ様に捧げます!あぁ…私、今とっても幸せです♡ なぎさ:うふふ…真奈は本当に可愛い子ね。安心して、私がもっと幸せにしてあげるから。 真奈:はぁ…♡なぎさ様がいてくださるなら、もう何もいらないわ♡ : :----------------------------- ユウリ:あーあ…今回も他の天使に持って行かれちまったか。ちっ…もう少しだったのになぁ。まあ僕としては膨れ上がった欲望が、成就する直前で根こそぎ*掠《かす》め取られる瞬間を見ることができたから満足だけど。あー楽しかった!さてと、次は誰の人生で遊ぼっかなー! : :~完~