台本概要

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タイトル 青に光る目
作者名
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男3)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 殺し屋たちの三夜。
殺し殺されとりつかれる男たちの話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ティム 198 青年。殺し屋。ホソカワに育てられた。
アッシュ 150 古本屋の店長。裏の顔は情報屋。そして殺し屋。
ホソカワ 87 殺し屋。アッシュとティムの師。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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ティム:「瞳に光が宿っていない」というのは ティム:こういうことを言うのだと ティム:俺はあの青年を見て初めてわかった アッシュ:青に光る目  ティム:(間を置いて)第一夜 0:ー古本屋の扉のベルがなる 0:ー一人の青年が入店する アッシュ:(弱々しく)こんばんは アッシュ:あのーすいません ティム:(客の方を見ず)ん、いらっしゃい ティム:どうぞ、中へ、好きに見てってくれ アッシュ:えっと、ああっ(本棚につまづく) 0:ー本が二、三冊棚から落ちる ティム:ん? ティム:(レジからだるそうに立ち上がる)はあ ティム:(アッシュのもとへ寄って)大丈夫か アッシュ:いてて、、、 ティム:なんだ、本棚につまづいたのか アッシュ:(ゆっくりと顔を上げる)すいません ティム:(アッシュの顔をしばらくみる)、、、あ、ああ、別に構わない ティム:つまずきやすい本棚なんだ アッシュ:(不思議そうに)つまずきやすい本棚? ティム:よっこらしょ(本を拾う) アッシュ:ああ、何冊か落としてしまいました? ティム:気にするな ティム:古本屋だ、どの本も元から汚れてる ティム:それより、立てるか アッシュ:(立ち上がりながら)はい、たいしたことはありません アッシュ:お気遣い、ありがとうございます ティム:はは、礼儀正しい子どもだな アッシュ:(本を拾いながら)僕、目がよく見えなくて ティム:ああ? そうだったのか、すまない、気が付かなかった アッシュ:いいんです ティム:なんで、本屋に? ああ、えっと、別に俺は来てもらって構わないんだが アッシュ:「おつかい」です ティム:おつかい? 目が見えない子供にか? 君の両親の自立教育はなかなかハードだな アッシュ:はは、そうかもしれません ティム:なんていう本を探してるんだ アッシュ:はい、えっと(ポケットに手を入れて)このメモに アッシュ:ああった、これです、ここに書いてある本です、ありますか? ティム:(メモを受け取る)んー ティム:ああこれか ティム:わかった、とってきてやる、ちょっとそこで待ってろ アッシュ:はい ティム:(本を探す)確かこの辺に アッシュ:本がたくさんありますね ティム:そりゃ本屋だからな アッシュ:本当にぎっしり ティム:わかるのか? アッシュ:通り道もないくらいですから ティム:狭くて悪かったな、火事が起きたら一瞬でおしまいだ アッシュ:火事は嫌ですね ティム:あったあった ティム:はい、これ アッシュ:ありがとうございます ティム:目が悪いのはいつから? アッシュ:物心ついた時から、何も見えません ティム:そうか、、、 ティム:家はどこなんだ? ティム:外はもう暗い、、、のは関係ないか、その、ひとりで帰れるのか アッシュ:大丈夫です、すぐそこですから アッシュ:これお代です ティム:ん、確かに アッシュ:最近引っ越してきたんです アッシュ:この通りをまっすぐいって、花屋の隣にある小さなアパートに ティム:ああ ティム:ボロ、、、ああいや、古い建物だな、あそこも アッシュ:ふふ、ええ ティム:小さい割にはエレベーターが二つもある アッシュ:よくご存知ですね ティム:近所だからな ティム:そこならすぐか ティム:じゃ、気をつけろよ アッシュ:はい、ではまた ティム:おう ティム:ああ、少年、名前は アッシュ:アッシュと申します ティム:ほーアッシュか ティム:俺はティムだ、まあその、よろしくな アッシュ:はい、では 0:ー古本屋の扉のベルがなる 0:ボロアパートの一階、暗い管理室の前に立つ青年 アッシュ:(窓ガラスを2度叩く)管理人さん、「今何時ですか」 ホソカワ:「靴紐が解けていますよ」 アッシュ:「猫がないた」 ホソカワ:(暗号を確認)アッシュくん 0:アッシュ、窓越しに姿の見えない相手に話しかける アッシュ:(先程の好青年とは打って変わって無感情)終わりました ホソカワ:ご苦労様です、報告をどうぞ アッシュ:黒です ホソカワ:ふふ、それだけではわかりませんよ アッシュ:(軽くため息)はぁ アッシュ:あの男、古本屋の店主ティム、というのは表の顔で アッシュ:ホソカワさん、あなたがおっしゃったように、あいつは情報屋かなにかでしょう ホソカワ:ほう アッシュ:店に並べてあった本は、古い本ではなく「古く見せた」本でした アッシュ:汚れ方が均等、というか、わざと汚し、わざと破いたような、そんな本が並べてあるだけのようです アッシュ:身元を隠すためのカモフラージュです ホソカワ:なるほど アッシュ:ですが情報屋としての拠点もおそらくその店です アッシュ:彼に終始、不自然な行動が見られました アッシュ:彼は常に、店の中のある一定の場所に、背を向けていました アッシュ:人間が何か「大切なもの」を隠す際にとる行為です アッシュ:その背中の方向には、隠し扉、あるいは情報屋としての重要な資料が隠されているかと ホソカワ:うんうん、それから? アッシュ:あと店の周りが静かすぎます ホソカワ:と言いますと? アッシュ:(少し大きなため息)はあ アッシュ:見張りがいます「あなたが仰ったように」 アッシュ:おそらく、音の出るもの、枯れ葉やアルミ缶などのゴミを、あの店の周辺だけに限って撤去していると思われます アッシュ:数は3か4 アッシュ:それもその見張り、その辺で適当に雇ったものではなく、尾行のプロあるいは ホソカワ:あるいは? アッシュ:同業者です ホソカワ:(間を置いて)殺し屋、ですか アッシュ:はい アッシュ:もちろん、僕を怪しんだり、あとを追ってきたり、ということはありませんでした ホソカワ:そうですか ホソカワ:それだけの人数を雇って自分の周りに置くということは ホソカワ:宝物をもっているのですね アッシュ:もしくは彼自身が重要な人物であるか ホソカワ:とても都合が悪い アッシュ:殺しますか ホソカワ:もちろん アッシュ:明日ですか ホソカワ:はい、大丈夫でしょうか? アッシュ:問題ありません ホソカワ:さすがアッシュくん アッシュ:報告は以上です ホソカワ:素晴らしい! ホソカワ:一回の偵察でここまでわかるとは、やはり私が見込んだだけのことはある、、、なんて、ははは ホソカワ:君は本当に目が見えないのに、ねえ? アッシュ:、、、 ホソカワ:見事ですよ アッシュ:(大きくため息)はあ アッシュ:白々しいですよ、ホソカワさん アッシュ:あなたなら現地に行かずとも、これくらいの予想は立っていたんでしょう ホソカワ:さあどうでしょう ホソカワ:僕には目がありますから アッシュ:はい? ホソカワ:視覚的な情報に頼らない方が見えてくるものもあるということです アッシュ:(無言のまま) ホソカワ:ふふ ホソカワ:アッシュくん アッシュ:何ですか ホソカワ:もう少し近くに寄ってください アッシュ:どうしてですか ホソカワ:君の顔を見たいからです アッシュ:(無言で近づく) ホソカワ:(感慨深く)ああ、君の目は、本当に綺麗ですねえ ホソカワ:青くて ホソカワ:美しい アッシュ:、、、それは任務に必要な情報でしょうか ホソカワ:ふふ ホソカワ:小さい頃から何も変わりません ホソカワ:宝石のように光っています アッシュ:失礼します ホソカワ:ああ、アッシュくん アッシュ:(振り返らず)はい ホソカワ:買ってきた本を、こちらへ アッシュ:本? ホソカワ:君が持っていては不自然でしょう、その、いろいろと ホソカワ:君を「おつかい」に頼んだ人が持っていないと アッシュ:どうぞ ホソカワ:ありがとうございます アッシュ:では ホソカワ:はい、明日お願いしますね、アッシュ ティム:(間を置いて)第二夜 0:ー古本屋のベルがなる アッシュ:(好青年)こんばんはー ティム:んー ティム:ああ、アッシュ ティム:またおつかいか? アッシュ:ええ、まあ ティム:今度はなんだ? アッシュ:えっと、(ポケットからメモを取り出す)これです ティム:ん、わかった アッシュ:どうしたんですか? アッシュ:ティムさん? ティム:ああ、悪い ティム:少しぼうっとしていた アッシュ:お疲れですか ティム:まあな ティム:金曜の夜だ アッシュ:ふふ ティム:探してくるよ アッシュ:はい ティム:(アッシュに背を向けて)アッシュ アッシュ:はい ティム:少し、話をしないか アッシュ:話? 何の話ですか? ティム:お前は目が見えないと言ったな アッシュ:ああ、はい アッシュ:嘘ではありませんよ? ティム:嘘? アッシュ:よく疑われるんです アッシュ:弱いもののフリをして、ずるいことや悪いことを考える人もいますから ティム:それは、自分のことか? アッシュ:はい? ティム:見えないことを疑ってるわけじゃない ティム:むしろ見ただけでわかる ティム:お前の目には光がないからな アッシュ:、、、え ティム:お前の目は見えないというより、何も見ていないように思える アッシュ:ふふ、ティムさん、急にどうされたんですか? ティム:なあ、、アッシュ アッシュ:、、、 ティム:ってのも本当の名前じゃないか アッシュ:(態度が一変する)お前に教える必要はない アッシュ:(勢いよく、隠していたナイフを投げ飛ばす)ふんっ 0:ー衝撃で本が床に散る 0:ーティムがアッシュの腕を掴む ティム:ははっ ティム:隠しナイフか ティム:危ないな アッシュ:(冷静を保ったまま)なぜ避けられる? ティム:なぜ? この状況で、それを聞くのか ティム:ふふ、(アッシュの押しに耐えながら)これは「あの人」から教えてもらったナイフ捌きか? アッシュ:は! ティム:(アッシュの手からナイフを叩き落とす)ふんっ ティム:アッシュ ティム:お前 ティム:殺し屋だな アッシュ:(無言) ティム:沈黙は肯定 アッシュ:黙れ情報屋 アッシュ:どこまで知っている? ティム:ふ、さっきの好青年はどこへ行った? アッシュ:(言葉を遮って)言わないなら殺す ティム:どっちにしろ、だろ ティム:お互い身元がばれてるんだ、そんなに突っかかるなよ ティム:おっと ティム:そのベルトにもう一本ナイフがあるな ティム:ちょっとでも触ったら撃つぞ ティム:俺じゃなくて外で見張っている奴らが、な ティム:あいつらも、お前と同じく殺し屋だ ティム:ここの本棚は普通のよりも背が低い ティム:外からの死角はないぞ アッシュ:(無言) ティム:、、ったく ティム:全く動じないな、この状況を打破する方法を考えてるのか? ティム:さすがだ ティム:さすがホソカワの、、、 アッシュ:気安く呼ぶな ティム:ほう、それはどういう意味だ アッシュ:(無言) ティム:まあいい ティム:目が見えないやつは音に敏感だ ティム:お前は人一倍鍛えられているだろうが ティム:鍛えられすぎたんだ、動じなさすぎる ティム:自分の身の危険に関係のない音を瞬時に判断できる ティム:さっき「見張り」と言ったが、お前が来店した直後 ティム:そのうちの一人がヘマをして、持っている拳銃を壁かなにかにぶつけた音がした ティム:俺はまずいと思った ティム:だがその見張りは、俺を挟んでお前と一直線上の位置にいた、だから ティム:お前は「安全だ」とわかって何も反応を示さなかった アッシュ:(無言) ティム:ホソカワに訓練された殺し屋の青年、アッシュ ティム:青い目をした有能な美少年 ティム:こっちの世界では有名だよ ティム:まさか完璧すぎるところが命取りになるとはな アッシュ:黙れ ティム:小さい頃からホソカワに育てられてきたのか ティム:(間をおいて)かわいそうに アッシュ:(少し力を込めて)うるさい ティム:お? 初めて少し感情的になったな ティム:怒っているのか アッシュ:(無言) ティム:誰に? アッシュ:(無言) ティム:はあ(ため息) ティム:ホソカワってのは日本人の名前か、お前も日本にいたのか?生まれはどこだ?親は? ティム:幼い子供を殺し屋なんかにして アッシュ:黙れ アッシュ:どこまで知っているか教えろ ティム:それはアッシュ、お前のことか ティム:それともホソカワのことか アッシュ:(少し苛立って)答えないならお前に要はない アッシュ:消えろ アッシュ:(もう一本の隠しナイフを投げる)ふんっ ティム:(勢いよく左肩に刺さる)うぐっ ティム:何本持ってんだ、くっ ティム:肩が、裂けそうだ アッシュ:(吐き捨てるように)ちっ ティム:はは ティム:「この僕が心臓を外すなんて」とでも思ったか アッシュ:その避け方をどこで習ったか教えろ ティム:さっきからそればかりだな ティム:お前が知りたいのは、俺がどうしてホソカワのことを知ってるかってことか アッシュ:(肩にささったナイフを足で押す)早く答えろっ ティム:(呻く)うううっ ティム:(苦しみながら)はは、なんでそこまで突っかかる ティム:あいつはお前の何だ? アッシュ:質問をしているのはこっちだ ティム:それを言ったら教えてやってもいいぞ アッシュ:くだらない ティム:俺が指示を出せば見張りの奴らが一斉に引き金を引くぞ アッシュ:だからなんだ ティム:なに? アッシュ:何発打たれようがお前を殺すことはできる アッシュ:立場を考えろっ(押し付けている足の力を強める) ティム:うぐっ ティム:ふっ、死んでも任務を果たす、か ティム:本当に ティム:かわいそうな奴だ アッシュ:ちっ アッシュ:うるさい アッシュ:(ぼそっと)かわいそう、だと ティム:ああ、そうだ、同情されて怒ったか? 目のことを悪く言われてもっと怒る、「お前の後ろ」までのつながり アッシュ:ホソカワさんを悪く言うな ティム:は? アッシュ:ホソカワさんのおかげで僕は力を得た アッシュ:ホソカワさんは アッシュ:僕の光だ ティム:ふふ ティム:なるほどな ティム:俺の聞きたいことは聞けた ティム:じゃあ、お前の知りたいことを教えてやる アッシュ:(銃を構える) ティム:お前の後ろのやつがな アッシュ:(後ろから首に注射される)ぐっ、あっ ホソカワ:やあ、アッシュくん ホソカワ:少しチクリとしますよ アッシュ:はっ! アッシュ:ほ、ほそ、かわ、、、さ、、、 アッシュ:(苦しそうに喘ぐ)あぐぐ、ごほっ ホソカワ:おっと危ない ホソカワ:(アッシュを抱き抱える)美しい顔に傷が付くところでした アッシュ:うぐぐぐっ ホソカワ:ははは、そんな声が出るんですね ホソカワ:首に注射を打たれたのは初めてですか アッシュ:あっ、ぐ、ぐ、おえっ ホソカワ:安心してください ホソカワ:すぐに楽になりますよ アッシュ:(意識が朦朧としながら)ぼ、ぼ アッシュ:ほそ、か、あ ホソカワ:なんですか、アッシュくん ホソカワ:恨みの言葉なら今のうちです アッシュ:な、なん、で ホソカワ:どうして? そうですねえ、僕も残念です、君のような人を失うのは、ね ホソカワ:でも、仕方ありません、そういう世界です アッシュ:う、そ、つき、、、 ホソカワ:そうですね アッシュ:僕の、目、には ホソカワ:はい? アッシュ:僕の、目、に、は アッシュ:光、なんて アッシュ:ないん、だっ、て アッシュ:きれい、なんかじゃ、ない、って アッシュ:ホ、ソカワ、さんは、嘘つ、きで、す ティム:、、、 ホソカワ:ふふ ホソカワ:さあどうでしょう ホソカワ:あと少しです ホソカワ:なにか言い残したことは アッシュ:ホソカワ、さん、僕、は、、、 ホソカワ:(間をおいて)残念 ホソカワ:時間切れです ホソカワ:(その場にアッシュを横たえる) ティム:(間を開けてため息)はあ ティム:なあ ティム:もういいだろ、ホソカワ ティム:(肩を押さえて立ち上がりながら)いてえ、、、 ティム:こいつを、アッシュを殺(や)らなきゃならなかった理由を教えてくれ ホソカワ:ティムさんご苦労様でした ホソカワ:任務完了です ティム:おい ティム:はぐらかすな ホソカワ:はぐらかす? ホソカワ:あなたがその理由を知りたい理由は何なのでしょうか ティム:(語尾は小さく)それは今後の、仕事に生かすために ホソカワ:ふふ ホソカワ:それはあなたの裏の顔、情報屋としての、ですか ホソカワ:それとも ホソカワ:もう一つの裏の顔、殺し屋としての、ですか ティム:どちらでもいいだろ ホソカワ:はぐらかしましたね? ティム:ホソカワ ティム:この任務、俺が手を貸すほどのことじゃないはずだ ティム:相手は子供 ホソカワ:とても優秀な子ですよ? ティム:確かにアッシュは、俺と同じく、一からお前に教わった殺し屋だ ティム:だが、それならなんで殺す必要があるんだ ホソカワ:、、、 ティム:俺は ティム:殺す相手を初めて、怖いと思った ホソカワ:怖い、ですか ホソカワ:アッシュくんが? ホソカワ:でも力比べはあなたが勝ちました、ティムさんの方が優秀な生徒でしたね ティム:そうじゃない ティム:こうやって死んでもなおだ、あいつが怖い ホソカワ:死んでしまいましたね ティム:お前がやったんだろ ホソカワ:そうでした ティム:何者か、何を思って生きているのか ティム:わからないことがこんなに恐ろしいことだとは思わなかった ティム:お前もそうだが ホソカワ:あら ティム:こいつは、なんだか違う ホソカワ:よく喋りますね、ティムさん ティム:もしかしてあいつは、本当は全部わかってたんじゃないのか ティム:あいつは、全部、わかってて ティム:俺たちが自分を殺すように仕向けて ホソカワ:(ニヤリと笑う)ふふ ティム:そう思うと ティム:盲目のか弱そうな少年が、だ ティム:俺にはこの世の何より恐ろしく感じる ホソカワ:(聞き流すように)そうですね ティム:そうだ、あいつは ティム:あいつはお前のことを光だと ティム:そう言った ホソカワ:へえ ティム:(相手の言葉を待たずに)自分にとっての、唯一の光を守るために ティム:お前のためにあいつは(いいかけてやめる) ティム:(大きくため息)はあ ティム:いや、なんでもない ホソカワ:ふふ ホソカワ:ティムさん ティム:なんだよ ホソカワ:あなたも、まだまだですね ティム:は ホソカワ:囚われていたのは ティム:(ホソカワの言葉を待つ) ホソカワ:(落ち着いた声で)アッシュくんの方ではありませんよ ティム:(何かに気付いて)それって ティム:(ホソカワの方を振り返る) ティム:(あたりを見回してから)あれ、いない、いつの間に ティム:(力が抜けたように)はあ ティム:(アッシュを見つめて)ふっ、確かに、綺麗な顔だ ティム:死んだ、とは思えない ティム:いや、生きているときが死んだような顔だったのか ティム:(気持ちを切り替えるように、息をすってはく)痕跡は残しておけないんだ ティム:(マッチに火をつけて)悪いな ティム:(火のついたマッチを本棚に投げ捨てる) ティム:じゃあな、アッシュ 0:ー炎は一気に燃え上がる ティム:(間を開けて)最終夜 0:ーバーの扉のベルがなる ティム:ん ティム:こんな時間に ティム:すいません、お客さん ティム:お店が終わりの時間なんですよ ティム:あのー ティム:お客さん? アッシュ:ふふ   アッシュ:(間をあけて、ほくそ笑みながら)こんばんは

ティム:「瞳に光が宿っていない」というのは ティム:こういうことを言うのだと ティム:俺はあの青年を見て初めてわかった アッシュ:青に光る目  ティム:(間を置いて)第一夜 0:ー古本屋の扉のベルがなる 0:ー一人の青年が入店する アッシュ:(弱々しく)こんばんは アッシュ:あのーすいません ティム:(客の方を見ず)ん、いらっしゃい ティム:どうぞ、中へ、好きに見てってくれ アッシュ:えっと、ああっ(本棚につまづく) 0:ー本が二、三冊棚から落ちる ティム:ん? ティム:(レジからだるそうに立ち上がる)はあ ティム:(アッシュのもとへ寄って)大丈夫か アッシュ:いてて、、、 ティム:なんだ、本棚につまづいたのか アッシュ:(ゆっくりと顔を上げる)すいません ティム:(アッシュの顔をしばらくみる)、、、あ、ああ、別に構わない ティム:つまずきやすい本棚なんだ アッシュ:(不思議そうに)つまずきやすい本棚? ティム:よっこらしょ(本を拾う) アッシュ:ああ、何冊か落としてしまいました? ティム:気にするな ティム:古本屋だ、どの本も元から汚れてる ティム:それより、立てるか アッシュ:(立ち上がりながら)はい、たいしたことはありません アッシュ:お気遣い、ありがとうございます ティム:はは、礼儀正しい子どもだな アッシュ:(本を拾いながら)僕、目がよく見えなくて ティム:ああ? そうだったのか、すまない、気が付かなかった アッシュ:いいんです ティム:なんで、本屋に? ああ、えっと、別に俺は来てもらって構わないんだが アッシュ:「おつかい」です ティム:おつかい? 目が見えない子供にか? 君の両親の自立教育はなかなかハードだな アッシュ:はは、そうかもしれません ティム:なんていう本を探してるんだ アッシュ:はい、えっと(ポケットに手を入れて)このメモに アッシュ:ああった、これです、ここに書いてある本です、ありますか? ティム:(メモを受け取る)んー ティム:ああこれか ティム:わかった、とってきてやる、ちょっとそこで待ってろ アッシュ:はい ティム:(本を探す)確かこの辺に アッシュ:本がたくさんありますね ティム:そりゃ本屋だからな アッシュ:本当にぎっしり ティム:わかるのか? アッシュ:通り道もないくらいですから ティム:狭くて悪かったな、火事が起きたら一瞬でおしまいだ アッシュ:火事は嫌ですね ティム:あったあった ティム:はい、これ アッシュ:ありがとうございます ティム:目が悪いのはいつから? アッシュ:物心ついた時から、何も見えません ティム:そうか、、、 ティム:家はどこなんだ? ティム:外はもう暗い、、、のは関係ないか、その、ひとりで帰れるのか アッシュ:大丈夫です、すぐそこですから アッシュ:これお代です ティム:ん、確かに アッシュ:最近引っ越してきたんです アッシュ:この通りをまっすぐいって、花屋の隣にある小さなアパートに ティム:ああ ティム:ボロ、、、ああいや、古い建物だな、あそこも アッシュ:ふふ、ええ ティム:小さい割にはエレベーターが二つもある アッシュ:よくご存知ですね ティム:近所だからな ティム:そこならすぐか ティム:じゃ、気をつけろよ アッシュ:はい、ではまた ティム:おう ティム:ああ、少年、名前は アッシュ:アッシュと申します ティム:ほーアッシュか ティム:俺はティムだ、まあその、よろしくな アッシュ:はい、では 0:ー古本屋の扉のベルがなる 0:ボロアパートの一階、暗い管理室の前に立つ青年 アッシュ:(窓ガラスを2度叩く)管理人さん、「今何時ですか」 ホソカワ:「靴紐が解けていますよ」 アッシュ:「猫がないた」 ホソカワ:(暗号を確認)アッシュくん 0:アッシュ、窓越しに姿の見えない相手に話しかける アッシュ:(先程の好青年とは打って変わって無感情)終わりました ホソカワ:ご苦労様です、報告をどうぞ アッシュ:黒です ホソカワ:ふふ、それだけではわかりませんよ アッシュ:(軽くため息)はぁ アッシュ:あの男、古本屋の店主ティム、というのは表の顔で アッシュ:ホソカワさん、あなたがおっしゃったように、あいつは情報屋かなにかでしょう ホソカワ:ほう アッシュ:店に並べてあった本は、古い本ではなく「古く見せた」本でした アッシュ:汚れ方が均等、というか、わざと汚し、わざと破いたような、そんな本が並べてあるだけのようです アッシュ:身元を隠すためのカモフラージュです ホソカワ:なるほど アッシュ:ですが情報屋としての拠点もおそらくその店です アッシュ:彼に終始、不自然な行動が見られました アッシュ:彼は常に、店の中のある一定の場所に、背を向けていました アッシュ:人間が何か「大切なもの」を隠す際にとる行為です アッシュ:その背中の方向には、隠し扉、あるいは情報屋としての重要な資料が隠されているかと ホソカワ:うんうん、それから? アッシュ:あと店の周りが静かすぎます ホソカワ:と言いますと? アッシュ:(少し大きなため息)はあ アッシュ:見張りがいます「あなたが仰ったように」 アッシュ:おそらく、音の出るもの、枯れ葉やアルミ缶などのゴミを、あの店の周辺だけに限って撤去していると思われます アッシュ:数は3か4 アッシュ:それもその見張り、その辺で適当に雇ったものではなく、尾行のプロあるいは ホソカワ:あるいは? アッシュ:同業者です ホソカワ:(間を置いて)殺し屋、ですか アッシュ:はい アッシュ:もちろん、僕を怪しんだり、あとを追ってきたり、ということはありませんでした ホソカワ:そうですか ホソカワ:それだけの人数を雇って自分の周りに置くということは ホソカワ:宝物をもっているのですね アッシュ:もしくは彼自身が重要な人物であるか ホソカワ:とても都合が悪い アッシュ:殺しますか ホソカワ:もちろん アッシュ:明日ですか ホソカワ:はい、大丈夫でしょうか? アッシュ:問題ありません ホソカワ:さすがアッシュくん アッシュ:報告は以上です ホソカワ:素晴らしい! ホソカワ:一回の偵察でここまでわかるとは、やはり私が見込んだだけのことはある、、、なんて、ははは ホソカワ:君は本当に目が見えないのに、ねえ? アッシュ:、、、 ホソカワ:見事ですよ アッシュ:(大きくため息)はあ アッシュ:白々しいですよ、ホソカワさん アッシュ:あなたなら現地に行かずとも、これくらいの予想は立っていたんでしょう ホソカワ:さあどうでしょう ホソカワ:僕には目がありますから アッシュ:はい? ホソカワ:視覚的な情報に頼らない方が見えてくるものもあるということです アッシュ:(無言のまま) ホソカワ:ふふ ホソカワ:アッシュくん アッシュ:何ですか ホソカワ:もう少し近くに寄ってください アッシュ:どうしてですか ホソカワ:君の顔を見たいからです アッシュ:(無言で近づく) ホソカワ:(感慨深く)ああ、君の目は、本当に綺麗ですねえ ホソカワ:青くて ホソカワ:美しい アッシュ:、、、それは任務に必要な情報でしょうか ホソカワ:ふふ ホソカワ:小さい頃から何も変わりません ホソカワ:宝石のように光っています アッシュ:失礼します ホソカワ:ああ、アッシュくん アッシュ:(振り返らず)はい ホソカワ:買ってきた本を、こちらへ アッシュ:本? ホソカワ:君が持っていては不自然でしょう、その、いろいろと ホソカワ:君を「おつかい」に頼んだ人が持っていないと アッシュ:どうぞ ホソカワ:ありがとうございます アッシュ:では ホソカワ:はい、明日お願いしますね、アッシュ ティム:(間を置いて)第二夜 0:ー古本屋のベルがなる アッシュ:(好青年)こんばんはー ティム:んー ティム:ああ、アッシュ ティム:またおつかいか? アッシュ:ええ、まあ ティム:今度はなんだ? アッシュ:えっと、(ポケットからメモを取り出す)これです ティム:ん、わかった アッシュ:どうしたんですか? アッシュ:ティムさん? ティム:ああ、悪い ティム:少しぼうっとしていた アッシュ:お疲れですか ティム:まあな ティム:金曜の夜だ アッシュ:ふふ ティム:探してくるよ アッシュ:はい ティム:(アッシュに背を向けて)アッシュ アッシュ:はい ティム:少し、話をしないか アッシュ:話? 何の話ですか? ティム:お前は目が見えないと言ったな アッシュ:ああ、はい アッシュ:嘘ではありませんよ? ティム:嘘? アッシュ:よく疑われるんです アッシュ:弱いもののフリをして、ずるいことや悪いことを考える人もいますから ティム:それは、自分のことか? アッシュ:はい? ティム:見えないことを疑ってるわけじゃない ティム:むしろ見ただけでわかる ティム:お前の目には光がないからな アッシュ:、、、え ティム:お前の目は見えないというより、何も見ていないように思える アッシュ:ふふ、ティムさん、急にどうされたんですか? ティム:なあ、、アッシュ アッシュ:、、、 ティム:ってのも本当の名前じゃないか アッシュ:(態度が一変する)お前に教える必要はない アッシュ:(勢いよく、隠していたナイフを投げ飛ばす)ふんっ 0:ー衝撃で本が床に散る 0:ーティムがアッシュの腕を掴む ティム:ははっ ティム:隠しナイフか ティム:危ないな アッシュ:(冷静を保ったまま)なぜ避けられる? ティム:なぜ? この状況で、それを聞くのか ティム:ふふ、(アッシュの押しに耐えながら)これは「あの人」から教えてもらったナイフ捌きか? アッシュ:は! ティム:(アッシュの手からナイフを叩き落とす)ふんっ ティム:アッシュ ティム:お前 ティム:殺し屋だな アッシュ:(無言) ティム:沈黙は肯定 アッシュ:黙れ情報屋 アッシュ:どこまで知っている? ティム:ふ、さっきの好青年はどこへ行った? アッシュ:(言葉を遮って)言わないなら殺す ティム:どっちにしろ、だろ ティム:お互い身元がばれてるんだ、そんなに突っかかるなよ ティム:おっと ティム:そのベルトにもう一本ナイフがあるな ティム:ちょっとでも触ったら撃つぞ ティム:俺じゃなくて外で見張っている奴らが、な ティム:あいつらも、お前と同じく殺し屋だ ティム:ここの本棚は普通のよりも背が低い ティム:外からの死角はないぞ アッシュ:(無言) ティム:、、ったく ティム:全く動じないな、この状況を打破する方法を考えてるのか? ティム:さすがだ ティム:さすがホソカワの、、、 アッシュ:気安く呼ぶな ティム:ほう、それはどういう意味だ アッシュ:(無言) ティム:まあいい ティム:目が見えないやつは音に敏感だ ティム:お前は人一倍鍛えられているだろうが ティム:鍛えられすぎたんだ、動じなさすぎる ティム:自分の身の危険に関係のない音を瞬時に判断できる ティム:さっき「見張り」と言ったが、お前が来店した直後 ティム:そのうちの一人がヘマをして、持っている拳銃を壁かなにかにぶつけた音がした ティム:俺はまずいと思った ティム:だがその見張りは、俺を挟んでお前と一直線上の位置にいた、だから ティム:お前は「安全だ」とわかって何も反応を示さなかった アッシュ:(無言) ティム:ホソカワに訓練された殺し屋の青年、アッシュ ティム:青い目をした有能な美少年 ティム:こっちの世界では有名だよ ティム:まさか完璧すぎるところが命取りになるとはな アッシュ:黙れ ティム:小さい頃からホソカワに育てられてきたのか ティム:(間をおいて)かわいそうに アッシュ:(少し力を込めて)うるさい ティム:お? 初めて少し感情的になったな ティム:怒っているのか アッシュ:(無言) ティム:誰に? アッシュ:(無言) ティム:はあ(ため息) ティム:ホソカワってのは日本人の名前か、お前も日本にいたのか?生まれはどこだ?親は? ティム:幼い子供を殺し屋なんかにして アッシュ:黙れ アッシュ:どこまで知っているか教えろ ティム:それはアッシュ、お前のことか ティム:それともホソカワのことか アッシュ:(少し苛立って)答えないならお前に要はない アッシュ:消えろ アッシュ:(もう一本の隠しナイフを投げる)ふんっ ティム:(勢いよく左肩に刺さる)うぐっ ティム:何本持ってんだ、くっ ティム:肩が、裂けそうだ アッシュ:(吐き捨てるように)ちっ ティム:はは ティム:「この僕が心臓を外すなんて」とでも思ったか アッシュ:その避け方をどこで習ったか教えろ ティム:さっきからそればかりだな ティム:お前が知りたいのは、俺がどうしてホソカワのことを知ってるかってことか アッシュ:(肩にささったナイフを足で押す)早く答えろっ ティム:(呻く)うううっ ティム:(苦しみながら)はは、なんでそこまで突っかかる ティム:あいつはお前の何だ? アッシュ:質問をしているのはこっちだ ティム:それを言ったら教えてやってもいいぞ アッシュ:くだらない ティム:俺が指示を出せば見張りの奴らが一斉に引き金を引くぞ アッシュ:だからなんだ ティム:なに? アッシュ:何発打たれようがお前を殺すことはできる アッシュ:立場を考えろっ(押し付けている足の力を強める) ティム:うぐっ ティム:ふっ、死んでも任務を果たす、か ティム:本当に ティム:かわいそうな奴だ アッシュ:ちっ アッシュ:うるさい アッシュ:(ぼそっと)かわいそう、だと ティム:ああ、そうだ、同情されて怒ったか? 目のことを悪く言われてもっと怒る、「お前の後ろ」までのつながり アッシュ:ホソカワさんを悪く言うな ティム:は? アッシュ:ホソカワさんのおかげで僕は力を得た アッシュ:ホソカワさんは アッシュ:僕の光だ ティム:ふふ ティム:なるほどな ティム:俺の聞きたいことは聞けた ティム:じゃあ、お前の知りたいことを教えてやる アッシュ:(銃を構える) ティム:お前の後ろのやつがな アッシュ:(後ろから首に注射される)ぐっ、あっ ホソカワ:やあ、アッシュくん ホソカワ:少しチクリとしますよ アッシュ:はっ! アッシュ:ほ、ほそ、かわ、、、さ、、、 アッシュ:(苦しそうに喘ぐ)あぐぐ、ごほっ ホソカワ:おっと危ない ホソカワ:(アッシュを抱き抱える)美しい顔に傷が付くところでした アッシュ:うぐぐぐっ ホソカワ:ははは、そんな声が出るんですね ホソカワ:首に注射を打たれたのは初めてですか アッシュ:あっ、ぐ、ぐ、おえっ ホソカワ:安心してください ホソカワ:すぐに楽になりますよ アッシュ:(意識が朦朧としながら)ぼ、ぼ アッシュ:ほそ、か、あ ホソカワ:なんですか、アッシュくん ホソカワ:恨みの言葉なら今のうちです アッシュ:な、なん、で ホソカワ:どうして? そうですねえ、僕も残念です、君のような人を失うのは、ね ホソカワ:でも、仕方ありません、そういう世界です アッシュ:う、そ、つき、、、 ホソカワ:そうですね アッシュ:僕の、目、には ホソカワ:はい? アッシュ:僕の、目、に、は アッシュ:光、なんて アッシュ:ないん、だっ、て アッシュ:きれい、なんかじゃ、ない、って アッシュ:ホ、ソカワ、さんは、嘘つ、きで、す ティム:、、、 ホソカワ:ふふ ホソカワ:さあどうでしょう ホソカワ:あと少しです ホソカワ:なにか言い残したことは アッシュ:ホソカワ、さん、僕、は、、、 ホソカワ:(間をおいて)残念 ホソカワ:時間切れです ホソカワ:(その場にアッシュを横たえる) ティム:(間を開けてため息)はあ ティム:なあ ティム:もういいだろ、ホソカワ ティム:(肩を押さえて立ち上がりながら)いてえ、、、 ティム:こいつを、アッシュを殺(や)らなきゃならなかった理由を教えてくれ ホソカワ:ティムさんご苦労様でした ホソカワ:任務完了です ティム:おい ティム:はぐらかすな ホソカワ:はぐらかす? ホソカワ:あなたがその理由を知りたい理由は何なのでしょうか ティム:(語尾は小さく)それは今後の、仕事に生かすために ホソカワ:ふふ ホソカワ:それはあなたの裏の顔、情報屋としての、ですか ホソカワ:それとも ホソカワ:もう一つの裏の顔、殺し屋としての、ですか ティム:どちらでもいいだろ ホソカワ:はぐらかしましたね? ティム:ホソカワ ティム:この任務、俺が手を貸すほどのことじゃないはずだ ティム:相手は子供 ホソカワ:とても優秀な子ですよ? ティム:確かにアッシュは、俺と同じく、一からお前に教わった殺し屋だ ティム:だが、それならなんで殺す必要があるんだ ホソカワ:、、、 ティム:俺は ティム:殺す相手を初めて、怖いと思った ホソカワ:怖い、ですか ホソカワ:アッシュくんが? ホソカワ:でも力比べはあなたが勝ちました、ティムさんの方が優秀な生徒でしたね ティム:そうじゃない ティム:こうやって死んでもなおだ、あいつが怖い ホソカワ:死んでしまいましたね ティム:お前がやったんだろ ホソカワ:そうでした ティム:何者か、何を思って生きているのか ティム:わからないことがこんなに恐ろしいことだとは思わなかった ティム:お前もそうだが ホソカワ:あら ティム:こいつは、なんだか違う ホソカワ:よく喋りますね、ティムさん ティム:もしかしてあいつは、本当は全部わかってたんじゃないのか ティム:あいつは、全部、わかってて ティム:俺たちが自分を殺すように仕向けて ホソカワ:(ニヤリと笑う)ふふ ティム:そう思うと ティム:盲目のか弱そうな少年が、だ ティム:俺にはこの世の何より恐ろしく感じる ホソカワ:(聞き流すように)そうですね ティム:そうだ、あいつは ティム:あいつはお前のことを光だと ティム:そう言った ホソカワ:へえ ティム:(相手の言葉を待たずに)自分にとっての、唯一の光を守るために ティム:お前のためにあいつは(いいかけてやめる) ティム:(大きくため息)はあ ティム:いや、なんでもない ホソカワ:ふふ ホソカワ:ティムさん ティム:なんだよ ホソカワ:あなたも、まだまだですね ティム:は ホソカワ:囚われていたのは ティム:(ホソカワの言葉を待つ) ホソカワ:(落ち着いた声で)アッシュくんの方ではありませんよ ティム:(何かに気付いて)それって ティム:(ホソカワの方を振り返る) ティム:(あたりを見回してから)あれ、いない、いつの間に ティム:(力が抜けたように)はあ ティム:(アッシュを見つめて)ふっ、確かに、綺麗な顔だ ティム:死んだ、とは思えない ティム:いや、生きているときが死んだような顔だったのか ティム:(気持ちを切り替えるように、息をすってはく)痕跡は残しておけないんだ ティム:(マッチに火をつけて)悪いな ティム:(火のついたマッチを本棚に投げ捨てる) ティム:じゃあな、アッシュ 0:ー炎は一気に燃え上がる ティム:(間を開けて)最終夜 0:ーバーの扉のベルがなる ティム:ん ティム:こんな時間に ティム:すいません、お客さん ティム:お店が終わりの時間なんですよ ティム:あのー ティム:お客さん? アッシュ:ふふ   アッシュ:(間をあけて、ほくそ笑みながら)こんばんは