台本概要

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タイトル 人の居ない絵
作者名 気分屋  (@Kodokusensi)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 催眠術により大切な人との思い出が消えてしまった、絵を描くのが好きな女性。
記憶を取り戻した時には既に、大切な人は亡くなった後だった。

※一人称の変更など、軽度のアドリブは可となっております。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
3 大切な人を失った絵を描くのが好きな女性
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
私:私の絵から、人が消えた 0:─── 私:私は昔から絵を描くのが好きだった。 私:特に風景画が好きで 私:よく、街ゆく人を眺めながら絵を描いていた。 私:そんな私にも彼氏ができた。 私:風景の写真を撮ることが好きな彼。 私:似た様な趣味で話が盛り上がり、一緒に色々な場所へ行った。 私:お互いに被写体等を頼むことがあり、描いたり撮られたり。 私:私はしだいに、彼の居る風景を描くようになっていた。 私:少し恥じらいながらも、はにかんだような笑顔で笑う彼が 私:私は大好きだった。 私:本当に幸せだった。 私:なのに 私:そんな彼は、もうこの世に居ない。 私:……病気だった。 私:もう長くないとわかった彼は 私:催眠術で、私から彼との記憶を消してしまった。 私:私を悲しませないように…… 私:私の記憶が戻ったのは 私:もう……彼が亡くなった後だった。 私:絶望という深い穴に突き落とされたような気分だった。 私:もう彼と話すことも、笑い合うこともできない。 私:私は無気力になりながらも 私:絵の中だけでも、笑っている彼を見たい 私:そう思い、必死に筆を走らせた。 私:しかし、描いても描いても 私:出来上がった彼の表情は泣いていた。 私:「お願いだから…もう泣かないでよ……」 私:記憶を消されてしまった直後の、彼の表情が頭から離れない。 私:「こんな事なら、記憶を消さないで別れたかったよ……」 私:私は気を紛らわせようと、他の風景画を描いたりしたけど 私:出来上がった物はどれも、人の居ない味気ない風景。 私:「あはは……まるで今の私みたい」 私:乾いたような笑い。 私:たった一人のモデルを見続けてきたせいで、他の人が見えなくなってしまった。 私:そして、その唯一のモデルさえも見えなくなった、味気ない私の人生。 私:「はぁ…今日もダメか」 私:筆を置き、溜息をつく。 私:今日もまた、いい絵が描けなかった。 私:気分転換になるかと思い、昔描いた絵をまとめたアルバムを見ることにした。 私:最初の方はまだ子供の頃に描いた絵。 私:「下手くそだなぁ」 私:昔の自分の絵に思わず笑ってしまう。 私:少しめくると、中学生頃のだろうか 私:少し上達した絵が出てきた。 私:「うーん、まだまだかなw」 私:さらにめくると… 私:「あっ……」 私:彼が描かれている絵。 私:明るい色ばかり使われていて 私:まるで絵が幸せだと言っているかのようだった。 私:「……」 私:めくるたび、彼との思い出が描かれている。 私:「もう、見るのやめよう」 私:これ以上は、辛いだけだから。 私:パタン、とアルバムを閉じた時 私:アルバムの隙間から何かが落ちた。 私:「手紙?」 私:宛名に私の名前が書かれた、封のされた手紙。 私:「私、こんなの入れたっけ?」 私:疑問に思いながらも、封を外し手紙を取り出す。 私:差出人は……彼だった。 私:何枚か紙が入っており、1枚目には 私:『記憶が無ければ捨ててくれ』 私:と書かれていた。 私:「記憶……戻っちゃったよ」 私:そう言いながら私は手紙を読んだ。 0:手紙 手紙:この手紙を読んでいるということは、記憶…戻っちゃったんだね。 手紙:ごめんね、上手くできなくて。 手紙:君のことだから、凄く悲しんでくれたと思う。 手紙:本当にごめんね。 手紙:どうせだから言いたかったことを手紙に残そうと思って書いてるんだけど、聞いてくれる?って言うのはおかしいかw 手紙:読んでくれる? 手紙:まず1つめ、僕の彼女になってくれてありがとう! 手紙:2つめ、僕のワガママに付き合ってくれてありがとう! 手紙:3つめ、騙すようなことをしてごめんね 手紙:4つめ、最後まで一緒にいてあげられなくてごめんね 手紙:5つめ、幸せにしてあげられなくてごめんね 手紙:君と過ごしてきた人生は、本当に幸せだったよ。 手紙:今まで…ありがとう 0:─── 私:手紙の最後は涙で滲んでいた。 私:「私の方こそ…ありがとう」 私:手紙の最後に入っていた写真を抱きしめ、私は泣いた。 私:涙が枯れてしまうほどに。

私:私の絵から、人が消えた 0:─── 私:私は昔から絵を描くのが好きだった。 私:特に風景画が好きで 私:よく、街ゆく人を眺めながら絵を描いていた。 私:そんな私にも彼氏ができた。 私:風景の写真を撮ることが好きな彼。 私:似た様な趣味で話が盛り上がり、一緒に色々な場所へ行った。 私:お互いに被写体等を頼むことがあり、描いたり撮られたり。 私:私はしだいに、彼の居る風景を描くようになっていた。 私:少し恥じらいながらも、はにかんだような笑顔で笑う彼が 私:私は大好きだった。 私:本当に幸せだった。 私:なのに 私:そんな彼は、もうこの世に居ない。 私:……病気だった。 私:もう長くないとわかった彼は 私:催眠術で、私から彼との記憶を消してしまった。 私:私を悲しませないように…… 私:私の記憶が戻ったのは 私:もう……彼が亡くなった後だった。 私:絶望という深い穴に突き落とされたような気分だった。 私:もう彼と話すことも、笑い合うこともできない。 私:私は無気力になりながらも 私:絵の中だけでも、笑っている彼を見たい 私:そう思い、必死に筆を走らせた。 私:しかし、描いても描いても 私:出来上がった彼の表情は泣いていた。 私:「お願いだから…もう泣かないでよ……」 私:記憶を消されてしまった直後の、彼の表情が頭から離れない。 私:「こんな事なら、記憶を消さないで別れたかったよ……」 私:私は気を紛らわせようと、他の風景画を描いたりしたけど 私:出来上がった物はどれも、人の居ない味気ない風景。 私:「あはは……まるで今の私みたい」 私:乾いたような笑い。 私:たった一人のモデルを見続けてきたせいで、他の人が見えなくなってしまった。 私:そして、その唯一のモデルさえも見えなくなった、味気ない私の人生。 私:「はぁ…今日もダメか」 私:筆を置き、溜息をつく。 私:今日もまた、いい絵が描けなかった。 私:気分転換になるかと思い、昔描いた絵をまとめたアルバムを見ることにした。 私:最初の方はまだ子供の頃に描いた絵。 私:「下手くそだなぁ」 私:昔の自分の絵に思わず笑ってしまう。 私:少しめくると、中学生頃のだろうか 私:少し上達した絵が出てきた。 私:「うーん、まだまだかなw」 私:さらにめくると… 私:「あっ……」 私:彼が描かれている絵。 私:明るい色ばかり使われていて 私:まるで絵が幸せだと言っているかのようだった。 私:「……」 私:めくるたび、彼との思い出が描かれている。 私:「もう、見るのやめよう」 私:これ以上は、辛いだけだから。 私:パタン、とアルバムを閉じた時 私:アルバムの隙間から何かが落ちた。 私:「手紙?」 私:宛名に私の名前が書かれた、封のされた手紙。 私:「私、こんなの入れたっけ?」 私:疑問に思いながらも、封を外し手紙を取り出す。 私:差出人は……彼だった。 私:何枚か紙が入っており、1枚目には 私:『記憶が無ければ捨ててくれ』 私:と書かれていた。 私:「記憶……戻っちゃったよ」 私:そう言いながら私は手紙を読んだ。 0:手紙 手紙:この手紙を読んでいるということは、記憶…戻っちゃったんだね。 手紙:ごめんね、上手くできなくて。 手紙:君のことだから、凄く悲しんでくれたと思う。 手紙:本当にごめんね。 手紙:どうせだから言いたかったことを手紙に残そうと思って書いてるんだけど、聞いてくれる?って言うのはおかしいかw 手紙:読んでくれる? 手紙:まず1つめ、僕の彼女になってくれてありがとう! 手紙:2つめ、僕のワガママに付き合ってくれてありがとう! 手紙:3つめ、騙すようなことをしてごめんね 手紙:4つめ、最後まで一緒にいてあげられなくてごめんね 手紙:5つめ、幸せにしてあげられなくてごめんね 手紙:君と過ごしてきた人生は、本当に幸せだったよ。 手紙:今まで…ありがとう 0:─── 私:手紙の最後は涙で滲んでいた。 私:「私の方こそ…ありがとう」 私:手紙の最後に入っていた写真を抱きしめ、私は泣いた。 私:涙が枯れてしまうほどに。