台本概要

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タイトル 白と黒(仮)第四部「オペラ座の復讐劇」
作者名 maturit  (@inui_maturi)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 お試しPart4

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
メルト 70
カルマ 70
オルカ 53
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
オルカ:「着いたわね!ここが私の劇場、ロイヤル・オペラハウスよ!!」 カルマ:「お前のじゃないだろ、支配人と他の演者に謝れ」 オルカ:「細かい事はいいじゃない!!」 メルト:「凄く、綺麗ですね」 メルト:宮殿(きゅうでん)を思わせる白い建物が眩(まぶ)しく、身なりの綺麗な貴婦人達が絶えず行き来している カルマ:「ほらメルトちゃん!行きましょう!」 メルト:「場違いでは無いでしょう?」 オルカ:「そんな事気にしなくていいのよ!ねぇカルマ!どうせ特等席のチケットを貰ってるんでしょ?」 カルマ:「そうだな、ちょうど二枚ここに」 オルカ:「特等席は上階で個室になってるから気にしなくても大丈夫!でも、もしもカルマに変な事されたら叫びなさい、私が駆けつけるから」 カルマ:「聞こえてるぞオルカ、そんな事したら俺が主から殺される」 オルカ:「……それもそうね」 メルト:「少し緊張(きんちょう)します」 オルカ:「怖がらなくても大丈夫よ!幕が開いたらそんな気持ちも吹き飛ぶと思うわ!」 カルマ:「おいオルカ、あっちで支配人が血眼(ちまなこ)でお前を探してるぞ」 オルカ:「やばっ!」 カルマ:「早く行け」 オルカ:「わかってるわよ!じゃあメルトちゃん…楽しんでね!」 メルト:「はい、頑張ってください」 オルカ:「任しといて!!」 カルマ:「ほら行くぞ」 メルト:「はい」 0: 0:「オペラ座の復讐劇」 0: メルト:建物の入ると一変して闇に包まれ、壇上が黄金の装飾(そうしょく)で彩られている カルマ:「最上階、しかも壇上(だんじょう)が一番よく見える席かよ…売れば幾らになるのか考えたくもないな」 メルト:「そんなに高いんですか?」 カルマ:「売れば一年は不自由なく生きれるだろうさ」 メルト:「良いのでしょうか?」 カルマ:「気にするな、俺たちの懐(ふところ)が痛くなる訳じゃない」 メルト:「それはそうなのですが」 カルマ:「気前よく年代物のワインまで置かれてる、店じゃ絶対に飲めないヤツだ」 メルト:「私はお酒が好きでは無いので結構です」 カルマ:「そりゃ残念…じゃあ、ここからは仕事の話をしよう」 メルト:「わかりました」 カルマ:「俺は人を見る目だけは誰にも負けない」 メルト:「?」 カルマ:「まぁ聞け、これは単なる前提(ぜんてい)の話だ」 メルト:「はい」 カルマ:「例えば、お前が甘いものを好きでは無いと答えた時に言い淀(よ)んだ、あれは甘いものというよりも何かを思い出す素振りだ」 メルト:「…」 カルマ:「何かと言うより誰か、という方が正しいな?」 メルト:「その通りです」 カルマ:「大方(おおかた)、お前が惚(ほ)れてるあの方とやらだろうがな」 メルト:「惚(ほ)れているなどという事はっ!」 カルマ:「その反応だけで十分だ」 メルト:「……」 カルマ:「という訳でだ、俺はある程度は人を見れば大体わかる」 メルト:「自慢(じまん)でしょうか?」 カルマ:「前提(ぜんてい)だって最初に言っただろ、メルト、お前が始末する相手はオペラ座の怪人だ」 メルト:「怪人ですか?」 カルマ:「ああ、得体の知れない何かだ」 メルト:「何処にいるのでしょうか?」 カルマ:「そんなものはココにいるに決まっているだろう…だが見つけ出すのは至難(しなん)だ」 メルト:「顔が分からない…という事でしょうか?」 カルマ:「理解が早くて助かる、俺は怪人を探し出す、後はそっちが始末する、これが今回の仕事だ」 メルト:「怪人とは人なのでしょうか?」 カルマ:「それは分からない、だが…消さなければいけない」 メルト:「わかりました」 カルマ:「既に役者の何人かが殺されている」 メルト:「指向性はあるのですか?」 カルマ:「……オルカだ」 メルト:「え?」 カルマ:「オルカと対立、もしくは役を奪い合っていた主演級の役者が五人殺された」 メルト:「それは…偶然主役だけが狙われたのでは?」 カルマ:「ここはロンドンで最高峰(さいこうほう)の場所だ、主演張れる程の役者が何人もいる訳じゃない」 メルト:「……」 カルマ:「気味が悪い程タイミングよく殺されているんだ…オルカは選ばれてしまったんだよ」 メルト:「何にでしょうか?」 カルマ:「怪人の愛する歌姫にだ」 メルト:幕が開く、壇上(だんじょう)で歌姫が歌いながら物語を明るく照らす カルマ:「オルカ」 メルト:誰もがオルカに感嘆(かんたん)の眼差(まなざ)しを送る中で、カルマだけはその瞳に別の感情を載せていた 0:(長い間) メルト:オペラという物は今まで見た全てよりも輝いていた メルト:心臓が少しだけ高鳴(たかな)り、私はそれを必死に抑(おさ)える メルト:これが何に対する高鳴りなのか、今はまだ知りたく無かった メルト:時間を忘れ、煌(きら)びやかな時間が終わる メルト:カルマは既に五本の高級そうなワインを空にしていた メルト:「そんなに飲んで大丈夫なのですか?」 カルマ:「気にするな、どうせ俺は酔えないからな」 メルト:「そう…ですか」 カルマ:「味がしねぇ、くそっ、仕事だ!」 メルト:「本当に酔っていないのですか?」 カルマ:「どうだろうな…自分には酔っているかもしれないな…情けねぇ事だが」 メルト:「……そうですか」 オルカ:「メルトちゃあああん!!」 メルト:「っ!?オルカさん、もう良いのですか?」 オルカ:「いいのいいの、面倒なことは誰かがやってくれるし!」 メルト:「それはそれで問題があるような」 オルカ:「今はこれでいいの、どうせそこの酔っ払いに聞いたんでしょ?怪人のこと」 メルト:「はい」 オルカ:「今じゃ腫物(はれもの)を扱うような対応よ、嫌になっちゃうわ」 メルト:「大丈夫です、必ず私が始末しますので」 オルカ:「頼もしい限りね!」 カルマ:「ここに居ろ、探してくる」 オルカ:「ついでに酔いも冷まして来なさい!!」 カルマ:「わかってる」 オルカ:「本当に…どうしようもないんだから」 メルト:「オルカさん」 オルカ:「何かしらメルトちゃん」 メルト:「話の続きを聞かせては貰えないでしょうか?」 オルカ:「…どうしたの急に」 メルト:「何となく、聞かなければと思ったのです…話したくなければ話さなくても結構です」 オルカ:「んーそうんねぇ(背伸びをするように)、私の妹は戦争の熱で死んだのよ」 メルト:「熱…ですか?」 オルカ:「国は戦争を決めた、勿論(もちろん)反対する人も居た、ここロンドンもふたつに割れた」 メルト:「それは…」 オルカ:「普通なら鎮圧(ちんあつ)されて終わり、そんな結末のはずだった…でも軍から情報が漏れて敵国の諜報員(ちょうほういん)が軍の組織体制を崩し、雪崩(なだれ)のように戦争に反対する組織がテロを起こした……これによってロンドンは炎に包まれたの」 メルト:「…その情報というのは」 オルカ:「そう…カルマがワザと流した情報…これによって戦争は少しだけ小さくなった、死人も減った、ロンドンも致命傷を追わなかった…カルマは英雄よ」 メルト:「妹さんは」 オルカ:「戦争に反対した組織が仕掛けた爆弾テロに巻き込まれて死んだわ…鳥と歌が好きな少しだけ危なっかしい少女」 メルト:「……」 オルカ:「カルマは悪くない、正しいのよ…でも私の心は彼を許せない」 メルト:「オルカさんは」 オルカ:「身勝手な女でしょ?私はこんなにも醜(みにく)いのに、誰もが私を美しいというの…本当に滑稽(こっけい)よね?上辺だけ、私はただの装飾(そうしょく)、きっとカルマに銃口を向けろと言われたら…引き金まで引いてしまうわ」 オルカ:「……」 オルカ:「軽蔑(けいべつ)した?」 メルト:「いいえ、とても人間らしいです」 オルカ:「そうかぁ、私は普通かぁ」 メルト:「オルカさん…オペラ座の怪人というのは…貴方ですよね?」 オルカ:「…そうね、私よ」 メルト:「どうして」 オルカ:「私は怪物になりたかったの…英雄を殺してしまえるように、ね」 メルト:「わかりません」 オルカ:「私が怪人だと分かればカルマは自分を酷(ひど)く責める、薄情(はくじょう)に見えてどこまでも人を思える優しい人だから」 メルト:「復讐(ふくしゅう)ですか?」 オルカ:「そうね、これは復讐劇(ヴェンデッタ)、哀(かな)しき怪人が叶(かな)わぬ愛に焼かれ、最後には愛する英雄を殺してしまうの…これは喜劇か悲劇か、メルトちゃん…貴方はどう思う?」 メルト:「きっとカルマさんは気づいています…おそらく誰よりも早く、誰よりも重く、誰よりも貴女を思って!」 オルカ:「そうね……じゃあそろそろ幕引きをしましょう」 メルト:「オルカさん?」 オルカ:「最後の晩餐(ばんさん)は心地よかったわ…いい眺めね、この景色を最後に焼き付けてここから飛び降りる」 メルト:「ダメです」 オルカ:「あーあ、最後に可愛い貴女泣かせてしまった罪な女…本当に私って重い女ね…ごめんねカルマ」 メルト:「オルカさん!!」 カルマ:「だぁああああああ!!」 オルカ:「っ!?」 カルマ:「バカヤロウ!!くそっ!!間に合ったぞバカっ!!」 オルカ:「なんでっ!?」 カルマ:「うるせぇ!」 オルカ:「離してよ!!私はもう!!」 カルマ:「いいから黙れ!!お前の性格が面倒くさく重い女なんてのはずっと前から知ってんだよ!!」 オルカ:「っ!?」 カルマ:「ミートスパゲティの食べ過ぎで体重まで重くなりやがって!!」 オルカ:「なんでそういう事言うのよ!!」 カルマ:「俺だけがお前の特別でいてやるって言ってんだ!!」 オルカ:「なんで…」 カルマ:「誰もがお前を賞賛(しょうさん)するなら、俺がまだまだだと笑ってやる!!」 オルカ:「誰もがお前を軽蔑(けいべつ)するなら、俺がお前を尊敬してやる!そういう特別が良いんだろうがっ!!めんどくせぇ女だなぁあああああ」 オルカ:「カルマぁ」 カルマ:「うおっ、やべぇ落ちっ」 メルト:「大丈夫です、カルマさんごと引き上げますので、その手は死んでも離さないでください」 カルマ:「俺は二の次かよ」 0:メルトがカルマごとオルカを引き上げる カルマ:「いててて、こりゃ肩が外れてるな」 メルト:「戻します」 0:メルトがカルマの外れた肩を戻す カルマ:「うぎっ!?いってぇぇええ」 メルト:「これで大丈夫です、ですが念の為に病院で診てもらう事を進めます」 カルマ:「お前凄い力だな」 メルト:「こう見えて体の殆どは機械ですから…自力が違います」 カルマ:「そりゃお強い訳だ、ふー痛みも引いた」 メルト:「無理はしないでください」 カルマ:「心配してくれるのか?ありがとな」 メルト:「そういう訳ではありません」 カルマ:「つれないねぇ」 オルカ:「……どうしてよ」 カルマ:「そういうのいいから」 オルカ:「なんでいつもいつも、私の事をずっと見てるのよ!同情?それとも償い?」 カルマ:「ばーか、愛情に決まってんだろ」 オルカ:「嘘よ!だって…だって私は!」 カルマ:「お前が殺人鬼?どこの喜劇だよ…演技も程々にしろ」 メルト:「え?嘘なのですか?」 オルカ:「いいえ!私はこの手で殺したわ!!」 カルマ:「いいや、殺しちゃいない」 オルカ:「現に死体もこの手の感触も…」 カルマ:「お前は誰も殺してない、お前が心臓を抉(えぐ)り、突き落とし、轢(ひ)いて、沈(しず)めて、燃やしたのは…全部俺だ」 オルカ:「何を…言って」 カルマ:「俺はある意味で怪人だ、そして怪物でもあり、英雄でもある」 オルカ:「どういう事?」 カルマ:「俺は変装が得意なんだ、軍にいた時も諜報部で他国へ妨害工作から潜入調査まで幅広く行い、ついた通り名は怪人」 オルカ:「でも確かに死んで」 カルマ:「そしてもうひとつ、俺は死ねない…毒も効かなければ銃も剣も、バラバラにされようと灰になろうと元通りだ…さすがに石に括り付けられて沈められた時はヤバかったが…こうして生きてる」 オルカ:「じゃあ…本物の役者は…」 カルマ:「俺が主と取引をして全員他の街の劇場で主役をやってるさ」 オルカ:「…バカみたいじゃない」 カルマ:「みたいじゃなくて馬鹿なんだよ」 オルカ:「ねぇ、カルマ…私はどうしたらいいの?」 カルマ:「そんなもん決まってるだろ、お前の居場所は舞台の上だ」 オルカ:「ごめんね、本当に…ごめんね」 カルマ:「お前がもしもどうしようも無くなったら、いつでも殺されてやるよ…死ねないけどな」 オルカ:「カルマ、ごめんね」 カルマ:「お前は本当に面倒くさい女だよ、ほらメルト…行くぞ」 メルト:「良いのですか?オルカさんを一人にして」 カルマ:「あ?あいつは面倒くせぇけど、弱い奴じゃないからな」 メルト:「それよりも、オペラ座の怪人というのは」 カルマ:「まぁ俺だな、悪いなつまらない小芝居に巻き込んで…本当は俺一人でやるつもりだったんだが、主の気まぐれでお前を巻き込んじまった…でも、助かったよ」 メルト:「少々、思うところはあります」 カルマ:「そうかい」 メルト:「所で聞きたいのですが、オペラ座の怪人というのは変装の怪物なのですか?それとも不死身の怪物なのですか?」 カルマ:「そうだなぁ、それは…」 メルト:「それは?」 カルマ:「秘密だ」 メルト:「男の秘密は女々しいと言われたばかりですよ?」 カルマ:「お前の心臓は高鳴(たかな)っている…悪くはねぇんだろ?」 メルト:「そうですね、そういう事にしておきましょう」

オルカ:「着いたわね!ここが私の劇場、ロイヤル・オペラハウスよ!!」 カルマ:「お前のじゃないだろ、支配人と他の演者に謝れ」 オルカ:「細かい事はいいじゃない!!」 メルト:「凄く、綺麗ですね」 メルト:宮殿(きゅうでん)を思わせる白い建物が眩(まぶ)しく、身なりの綺麗な貴婦人達が絶えず行き来している カルマ:「ほらメルトちゃん!行きましょう!」 メルト:「場違いでは無いでしょう?」 オルカ:「そんな事気にしなくていいのよ!ねぇカルマ!どうせ特等席のチケットを貰ってるんでしょ?」 カルマ:「そうだな、ちょうど二枚ここに」 オルカ:「特等席は上階で個室になってるから気にしなくても大丈夫!でも、もしもカルマに変な事されたら叫びなさい、私が駆けつけるから」 カルマ:「聞こえてるぞオルカ、そんな事したら俺が主から殺される」 オルカ:「……それもそうね」 メルト:「少し緊張(きんちょう)します」 オルカ:「怖がらなくても大丈夫よ!幕が開いたらそんな気持ちも吹き飛ぶと思うわ!」 カルマ:「おいオルカ、あっちで支配人が血眼(ちまなこ)でお前を探してるぞ」 オルカ:「やばっ!」 カルマ:「早く行け」 オルカ:「わかってるわよ!じゃあメルトちゃん…楽しんでね!」 メルト:「はい、頑張ってください」 オルカ:「任しといて!!」 カルマ:「ほら行くぞ」 メルト:「はい」 0: 0:「オペラ座の復讐劇」 0: メルト:建物の入ると一変して闇に包まれ、壇上が黄金の装飾(そうしょく)で彩られている カルマ:「最上階、しかも壇上(だんじょう)が一番よく見える席かよ…売れば幾らになるのか考えたくもないな」 メルト:「そんなに高いんですか?」 カルマ:「売れば一年は不自由なく生きれるだろうさ」 メルト:「良いのでしょうか?」 カルマ:「気にするな、俺たちの懐(ふところ)が痛くなる訳じゃない」 メルト:「それはそうなのですが」 カルマ:「気前よく年代物のワインまで置かれてる、店じゃ絶対に飲めないヤツだ」 メルト:「私はお酒が好きでは無いので結構です」 カルマ:「そりゃ残念…じゃあ、ここからは仕事の話をしよう」 メルト:「わかりました」 カルマ:「俺は人を見る目だけは誰にも負けない」 メルト:「?」 カルマ:「まぁ聞け、これは単なる前提(ぜんてい)の話だ」 メルト:「はい」 カルマ:「例えば、お前が甘いものを好きでは無いと答えた時に言い淀(よ)んだ、あれは甘いものというよりも何かを思い出す素振りだ」 メルト:「…」 カルマ:「何かと言うより誰か、という方が正しいな?」 メルト:「その通りです」 カルマ:「大方(おおかた)、お前が惚(ほ)れてるあの方とやらだろうがな」 メルト:「惚(ほ)れているなどという事はっ!」 カルマ:「その反応だけで十分だ」 メルト:「……」 カルマ:「という訳でだ、俺はある程度は人を見れば大体わかる」 メルト:「自慢(じまん)でしょうか?」 カルマ:「前提(ぜんてい)だって最初に言っただろ、メルト、お前が始末する相手はオペラ座の怪人だ」 メルト:「怪人ですか?」 カルマ:「ああ、得体の知れない何かだ」 メルト:「何処にいるのでしょうか?」 カルマ:「そんなものはココにいるに決まっているだろう…だが見つけ出すのは至難(しなん)だ」 メルト:「顔が分からない…という事でしょうか?」 カルマ:「理解が早くて助かる、俺は怪人を探し出す、後はそっちが始末する、これが今回の仕事だ」 メルト:「怪人とは人なのでしょうか?」 カルマ:「それは分からない、だが…消さなければいけない」 メルト:「わかりました」 カルマ:「既に役者の何人かが殺されている」 メルト:「指向性はあるのですか?」 カルマ:「……オルカだ」 メルト:「え?」 カルマ:「オルカと対立、もしくは役を奪い合っていた主演級の役者が五人殺された」 メルト:「それは…偶然主役だけが狙われたのでは?」 カルマ:「ここはロンドンで最高峰(さいこうほう)の場所だ、主演張れる程の役者が何人もいる訳じゃない」 メルト:「……」 カルマ:「気味が悪い程タイミングよく殺されているんだ…オルカは選ばれてしまったんだよ」 メルト:「何にでしょうか?」 カルマ:「怪人の愛する歌姫にだ」 メルト:幕が開く、壇上(だんじょう)で歌姫が歌いながら物語を明るく照らす カルマ:「オルカ」 メルト:誰もがオルカに感嘆(かんたん)の眼差(まなざ)しを送る中で、カルマだけはその瞳に別の感情を載せていた 0:(長い間) メルト:オペラという物は今まで見た全てよりも輝いていた メルト:心臓が少しだけ高鳴(たかな)り、私はそれを必死に抑(おさ)える メルト:これが何に対する高鳴りなのか、今はまだ知りたく無かった メルト:時間を忘れ、煌(きら)びやかな時間が終わる メルト:カルマは既に五本の高級そうなワインを空にしていた メルト:「そんなに飲んで大丈夫なのですか?」 カルマ:「気にするな、どうせ俺は酔えないからな」 メルト:「そう…ですか」 カルマ:「味がしねぇ、くそっ、仕事だ!」 メルト:「本当に酔っていないのですか?」 カルマ:「どうだろうな…自分には酔っているかもしれないな…情けねぇ事だが」 メルト:「……そうですか」 オルカ:「メルトちゃあああん!!」 メルト:「っ!?オルカさん、もう良いのですか?」 オルカ:「いいのいいの、面倒なことは誰かがやってくれるし!」 メルト:「それはそれで問題があるような」 オルカ:「今はこれでいいの、どうせそこの酔っ払いに聞いたんでしょ?怪人のこと」 メルト:「はい」 オルカ:「今じゃ腫物(はれもの)を扱うような対応よ、嫌になっちゃうわ」 メルト:「大丈夫です、必ず私が始末しますので」 オルカ:「頼もしい限りね!」 カルマ:「ここに居ろ、探してくる」 オルカ:「ついでに酔いも冷まして来なさい!!」 カルマ:「わかってる」 オルカ:「本当に…どうしようもないんだから」 メルト:「オルカさん」 オルカ:「何かしらメルトちゃん」 メルト:「話の続きを聞かせては貰えないでしょうか?」 オルカ:「…どうしたの急に」 メルト:「何となく、聞かなければと思ったのです…話したくなければ話さなくても結構です」 オルカ:「んーそうんねぇ(背伸びをするように)、私の妹は戦争の熱で死んだのよ」 メルト:「熱…ですか?」 オルカ:「国は戦争を決めた、勿論(もちろん)反対する人も居た、ここロンドンもふたつに割れた」 メルト:「それは…」 オルカ:「普通なら鎮圧(ちんあつ)されて終わり、そんな結末のはずだった…でも軍から情報が漏れて敵国の諜報員(ちょうほういん)が軍の組織体制を崩し、雪崩(なだれ)のように戦争に反対する組織がテロを起こした……これによってロンドンは炎に包まれたの」 メルト:「…その情報というのは」 オルカ:「そう…カルマがワザと流した情報…これによって戦争は少しだけ小さくなった、死人も減った、ロンドンも致命傷を追わなかった…カルマは英雄よ」 メルト:「妹さんは」 オルカ:「戦争に反対した組織が仕掛けた爆弾テロに巻き込まれて死んだわ…鳥と歌が好きな少しだけ危なっかしい少女」 メルト:「……」 オルカ:「カルマは悪くない、正しいのよ…でも私の心は彼を許せない」 メルト:「オルカさんは」 オルカ:「身勝手な女でしょ?私はこんなにも醜(みにく)いのに、誰もが私を美しいというの…本当に滑稽(こっけい)よね?上辺だけ、私はただの装飾(そうしょく)、きっとカルマに銃口を向けろと言われたら…引き金まで引いてしまうわ」 オルカ:「……」 オルカ:「軽蔑(けいべつ)した?」 メルト:「いいえ、とても人間らしいです」 オルカ:「そうかぁ、私は普通かぁ」 メルト:「オルカさん…オペラ座の怪人というのは…貴方ですよね?」 オルカ:「…そうね、私よ」 メルト:「どうして」 オルカ:「私は怪物になりたかったの…英雄を殺してしまえるように、ね」 メルト:「わかりません」 オルカ:「私が怪人だと分かればカルマは自分を酷(ひど)く責める、薄情(はくじょう)に見えてどこまでも人を思える優しい人だから」 メルト:「復讐(ふくしゅう)ですか?」 オルカ:「そうね、これは復讐劇(ヴェンデッタ)、哀(かな)しき怪人が叶(かな)わぬ愛に焼かれ、最後には愛する英雄を殺してしまうの…これは喜劇か悲劇か、メルトちゃん…貴方はどう思う?」 メルト:「きっとカルマさんは気づいています…おそらく誰よりも早く、誰よりも重く、誰よりも貴女を思って!」 オルカ:「そうね……じゃあそろそろ幕引きをしましょう」 メルト:「オルカさん?」 オルカ:「最後の晩餐(ばんさん)は心地よかったわ…いい眺めね、この景色を最後に焼き付けてここから飛び降りる」 メルト:「ダメです」 オルカ:「あーあ、最後に可愛い貴女泣かせてしまった罪な女…本当に私って重い女ね…ごめんねカルマ」 メルト:「オルカさん!!」 カルマ:「だぁああああああ!!」 オルカ:「っ!?」 カルマ:「バカヤロウ!!くそっ!!間に合ったぞバカっ!!」 オルカ:「なんでっ!?」 カルマ:「うるせぇ!」 オルカ:「離してよ!!私はもう!!」 カルマ:「いいから黙れ!!お前の性格が面倒くさく重い女なんてのはずっと前から知ってんだよ!!」 オルカ:「っ!?」 カルマ:「ミートスパゲティの食べ過ぎで体重まで重くなりやがって!!」 オルカ:「なんでそういう事言うのよ!!」 カルマ:「俺だけがお前の特別でいてやるって言ってんだ!!」 オルカ:「なんで…」 カルマ:「誰もがお前を賞賛(しょうさん)するなら、俺がまだまだだと笑ってやる!!」 オルカ:「誰もがお前を軽蔑(けいべつ)するなら、俺がお前を尊敬してやる!そういう特別が良いんだろうがっ!!めんどくせぇ女だなぁあああああ」 オルカ:「カルマぁ」 カルマ:「うおっ、やべぇ落ちっ」 メルト:「大丈夫です、カルマさんごと引き上げますので、その手は死んでも離さないでください」 カルマ:「俺は二の次かよ」 0:メルトがカルマごとオルカを引き上げる カルマ:「いててて、こりゃ肩が外れてるな」 メルト:「戻します」 0:メルトがカルマの外れた肩を戻す カルマ:「うぎっ!?いってぇぇええ」 メルト:「これで大丈夫です、ですが念の為に病院で診てもらう事を進めます」 カルマ:「お前凄い力だな」 メルト:「こう見えて体の殆どは機械ですから…自力が違います」 カルマ:「そりゃお強い訳だ、ふー痛みも引いた」 メルト:「無理はしないでください」 カルマ:「心配してくれるのか?ありがとな」 メルト:「そういう訳ではありません」 カルマ:「つれないねぇ」 オルカ:「……どうしてよ」 カルマ:「そういうのいいから」 オルカ:「なんでいつもいつも、私の事をずっと見てるのよ!同情?それとも償い?」 カルマ:「ばーか、愛情に決まってんだろ」 オルカ:「嘘よ!だって…だって私は!」 カルマ:「お前が殺人鬼?どこの喜劇だよ…演技も程々にしろ」 メルト:「え?嘘なのですか?」 オルカ:「いいえ!私はこの手で殺したわ!!」 カルマ:「いいや、殺しちゃいない」 オルカ:「現に死体もこの手の感触も…」 カルマ:「お前は誰も殺してない、お前が心臓を抉(えぐ)り、突き落とし、轢(ひ)いて、沈(しず)めて、燃やしたのは…全部俺だ」 オルカ:「何を…言って」 カルマ:「俺はある意味で怪人だ、そして怪物でもあり、英雄でもある」 オルカ:「どういう事?」 カルマ:「俺は変装が得意なんだ、軍にいた時も諜報部で他国へ妨害工作から潜入調査まで幅広く行い、ついた通り名は怪人」 オルカ:「でも確かに死んで」 カルマ:「そしてもうひとつ、俺は死ねない…毒も効かなければ銃も剣も、バラバラにされようと灰になろうと元通りだ…さすがに石に括り付けられて沈められた時はヤバかったが…こうして生きてる」 オルカ:「じゃあ…本物の役者は…」 カルマ:「俺が主と取引をして全員他の街の劇場で主役をやってるさ」 オルカ:「…バカみたいじゃない」 カルマ:「みたいじゃなくて馬鹿なんだよ」 オルカ:「ねぇ、カルマ…私はどうしたらいいの?」 カルマ:「そんなもん決まってるだろ、お前の居場所は舞台の上だ」 オルカ:「ごめんね、本当に…ごめんね」 カルマ:「お前がもしもどうしようも無くなったら、いつでも殺されてやるよ…死ねないけどな」 オルカ:「カルマ、ごめんね」 カルマ:「お前は本当に面倒くさい女だよ、ほらメルト…行くぞ」 メルト:「良いのですか?オルカさんを一人にして」 カルマ:「あ?あいつは面倒くせぇけど、弱い奴じゃないからな」 メルト:「それよりも、オペラ座の怪人というのは」 カルマ:「まぁ俺だな、悪いなつまらない小芝居に巻き込んで…本当は俺一人でやるつもりだったんだが、主の気まぐれでお前を巻き込んじまった…でも、助かったよ」 メルト:「少々、思うところはあります」 カルマ:「そうかい」 メルト:「所で聞きたいのですが、オペラ座の怪人というのは変装の怪物なのですか?それとも不死身の怪物なのですか?」 カルマ:「そうだなぁ、それは…」 メルト:「それは?」 カルマ:「秘密だ」 メルト:「男の秘密は女々しいと言われたばかりですよ?」 カルマ:「お前の心臓は高鳴(たかな)っている…悪くはねぇんだろ?」 メルト:「そうですね、そういう事にしておきましょう」