台本概要

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タイトル チョコレイトの秘密
作者名 桜美さくら  (@OMI_SaKuRa0728)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 終戦を迎えた日本国にて
貧しいながらも日々過ごしていく少女
そんな少女とある人との出会いのお話

※性別 演者欄に記載有・アドリブ×

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り手 不問 - 性別不問 作中に『スエ』と言う少女が出来てます 小学生~中学生ぐらいです
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:『ちょこれいとの秘密』 0: 0: 0:昭和二十三年二月某日一人の女の子がいました。 0:その女の子に名前はありませんが、周りから「スエ」と呼ばれています。 0:生まれて間もなく両親は戦死、空襲の中逃げ惑う中で奇跡の子供として命が繋がれたのが彼女なのです。 0:スエは、よく笑う女の子でした。 0:文字の通り、笑っていたら周りが助けてくれることを、生きて証明しているような女の子です。 0:もちろん、その日その日で何が起こるか分かりません。 0:終戦から日は経ちましたが、まだまだ足らない所は多くあり、スエも論外ではありません。 0:着るもの、食べるもの、住むところ、すべてがその日の状況で変わりますが 0:ただ一つだけ変わらないことがあります。それは感謝をすることです。 0:「ありがとう」 0:スエは、口を開けばありがとうと、周りの人に言っています。 0:足が痛いだろうと差しだしてくれた汚れたタオルをくれたおじさんにありがとうと笑みを浮かべて頭を下げたり 0:これしかないけどと、ジャガイモのヒトカケラをもらった時にもありがとうと、絶えず笑顔で頭を下げていました。 0:スエは今日も誰かに感謝をして一日を終えています。 0:(間) 0:スエは自分の年齢が分かりません。 0:周りにいる大人たちの肩の高さほどに頭の先が来るぐらいでしょうか。 0:着ている服は貰い物ですので、大きくて汚れが目立っていますが、スエは気にしたことがありません。 0:学校と言うものがあるのだと、周りから聞いたことがありますが、自分の知らないことを教えてくれる場所であるのだと思っているため、今の状況と何が違うのだろうと不思議に思っていました。 0:周りのみんなは、スエに何でも教えてくれます。 0:言葉に、缶蹴り、棒倒しや、あっち向いてホイ、カケッコは苦手ですが、かくれんぼで、スエに敵う相手はいませんでした。 0:どうしても、スエは皆の隠れているところを不思議と見つけてしまい、その笑みで「みーつけた」と楽しそうにしていました。 0:スエと、かくれんぼをする時はみんな真剣です。 0:(間) 0:今日もスエはお腹がすいていましたが、苦い顔一つせず笑みの中を生きていました。悲しい感情が無いわけではありませんが、今は笑みを浮かべる方が楽しいと心から思っている証拠なのでしょう。 0:「これ、少しだけど食べな」 0:スエは薄く切ったサツマイモをおばさんから貰いました。 0:少しづつ口に含んでゆっくり食べながら、綺麗な空をながめて太陽と向かい合う、静かな正午に幸せな気持ちを覚えていました。 0:まだガレキの中で、太陽の元が遊び場のような状況で、スエは思っていました。 0: 0:「私の遊び場所は無限にあって、どこまでも広い空も、とても高い天井の様に見える。 0:もう頭の上に大きな大きな飛行機が来ることもないし、誰も傷つくこともない。 0:日本は負けたんだよっておじさんが言ってたけど、みんな頭を下げてたよ。 0:私も一緒に頭を下げたけど、もう怖い顔をして下を向かなくても良いんだと思うと、これから楽しいことしかないような気がして嬉しくなるんだ。 0:生きてさえいれば、動いてさえいれば道はつながってて、時間は進むから私は止まらないで今を生きるよ。 0:本当はお父ちゃんとお母ちゃんに会ってみたい気持ちはあるけど、私には沢山のお父ちゃんとお母ちゃんがいて、友達もおじさんもおばさんもいるから、不思議とさみしくないんだ。 0:いつか、このさつまいもを一本一人で食べても良い時が来るのかな・・・一本は欲張っちゃったかな。 0:さつまいも半分でも良いよ。お米も麦も高価だから、さつまいもがあれば良いな。 0:このさつまいも、甘くて美味しいや。おばさん見かけたらお礼を言わなきゃ。」 0:スエは時折、独り言のように心で語ることがありました。 0:その表情と言ったら、とても優しく、その年齢からは発せられないほど大人びていた事でしょう。 0:スエの独り言を聞いていたのか、聞こえたのか分かりませんが、一人の男性がスエに近寄ってきました。 0:色褪せた濃い緑色で腰の黒いベルトが古さを感じさせる、日本人のそれとは、まるでかけ離れた顔立ちの、そうアメリカの軍人さんでした。 0:綺麗に借り上げられた頭髪は帽子に重なり、眉から上は確認できないが、とても優しい美しい蒼い瞳をスエに向けていました。 0:軍人「ここで何してるの」 0:その綺麗な発声に少しびっくりしたスエは、すぐに嬉しくなり、立ち上がって話し出しました。 0:「さつまいもをもらったの、美味しいからゆっくり食べてたの。軍人さん優しいね」 0:スエの言葉に彼も驚いていましたが、彼は続けて話し出しました。 0:軍人「仕事の途中でね。ここを通りかかったら、可愛い声が聞こえたから、その声を頼りに来たら、君がいたんだよ。何を言ってたのか聞き取れなかったけど、さつまいもを食べていたんだね」 0:彼は、日本語を訳す仕事をしているとスエに語ってくれました。 0:英語では表現できないことが多くあり、日本語の奥深さや、美しさが好きだと彼は続けます。 0:軍人「そうだ、コレ食べたことあるかい」 0:彼はスエに小さな銀色の包みを渡しました。 0:初めて見る包みにスエは不思議そうに両手でそれを受け取り、しばらく眺めていました。 0:食べたことあるかいと言ってたので、食べ物なのだろうけど、銀色に包まれた小さい物が食べ物なのだと理解できないスエは彼に聞き返しました。 0:「開けてみてもいい」 0:彼はもちろんと言い、どこか誇らしげな様子さえ垣間見える笑みを浮かべていました。 0:静かにゆっくり銀色の包みをあけると、いびつではあるが黒茶色の丸いものが入っていました。 0:軍人「チョコレイトって言うんだよ」 0:スエは不思議な顔を隠せず、しばらくながめていましたが、食べることが出来るんだと思い出して聞きました。 0:「口にしてもいいの」 0:彼はいいよと優しく言うと、スエは何も疑わずその黒茶色いものを口へ運びました。 0:(間) 0:スエは口の中に広がった味に感銘(かんめい)を受け涙が出てきました。 0:口から出た言葉が言葉として発せられることを嫌がっているような、それはまるで、生きている意味を教えてくれたような衝撃が走りました。 0:「・・・これは、な・・ん・・・」 0:普段よく話しているスエが言葉を失った瞬間と、人間の感情と言うものはこうも揺れ動くのかと実感したのは彼が一番よく感じていました。 0:(間) 0:言葉を失ったスエに別れを告げて彼は去っていきました。 0:“ちょこれいと”スエの脳裏に焼き付いて離れない言葉と、今までにない感情にしばらく押し黙り涙が引くのを待っていました。 0:おばさん「スエ、こんなところで何してるの」 0:先ほど、スエにさつまいもをくれたおばさんがスエを心配して探していたのか、声をかけてくれました。目を真っ赤にして、口元を結んでいるスエの様子が変だと気付くことなんて容易であり、途端に表情を変えておばさんは問いただしてきました。 0:おばさん「どうしたんだい。嫌なことでもあったのかい、そんな顔のスエは初めて見たよ」 0:スエはそばらく呆然(ぼうぜん)としていたが、我に返ったように、先ほどの軍人さんの話をおばさんに言って聞かせました。とても丁寧に、とても優しい口調で彼の話を続けて話しました。 0:おばさん「スエ、もしかしてその男の人って、濃い緑色の服を着ていなかったかい。そして優しい美しい瞳をしていなかったかい。彼はこの辺りでよく見かけるんだよ。人と話すのが好きでね。どうやら、スエと同じぐらいの男の子が母国に居るらしいから、スエのことが気になったんだろうね。」 0:おばさんの言葉にスエは、また心が動いていました。 0:「ちょこれいと」 :小さく口にした言葉に、おばさんは私も貰ったんだよと教えてくれました。少ししかないけど、どうぞと言ってくれたと嬉しそうに話してくれました。 0:(間) 0: 0:“ちょこれいと”の秘密は、心の中の優しさのかけらを形にした優しい軍人さんと、それを受け入れた笑みが似合う女の子のお話です。 0:あなたの周りにも、きっとスエの様に優しさを届けてくれる人がいますよ。 0:今の時代は何でも手に入りますが、手に入るから忘れることも少なからずある事実に目を向けたお話でした。ご唱和有難うございます。 0: 0:(終演)

0: 0:『ちょこれいとの秘密』 0: 0: 0:昭和二十三年二月某日一人の女の子がいました。 0:その女の子に名前はありませんが、周りから「スエ」と呼ばれています。 0:生まれて間もなく両親は戦死、空襲の中逃げ惑う中で奇跡の子供として命が繋がれたのが彼女なのです。 0:スエは、よく笑う女の子でした。 0:文字の通り、笑っていたら周りが助けてくれることを、生きて証明しているような女の子です。 0:もちろん、その日その日で何が起こるか分かりません。 0:終戦から日は経ちましたが、まだまだ足らない所は多くあり、スエも論外ではありません。 0:着るもの、食べるもの、住むところ、すべてがその日の状況で変わりますが 0:ただ一つだけ変わらないことがあります。それは感謝をすることです。 0:「ありがとう」 0:スエは、口を開けばありがとうと、周りの人に言っています。 0:足が痛いだろうと差しだしてくれた汚れたタオルをくれたおじさんにありがとうと笑みを浮かべて頭を下げたり 0:これしかないけどと、ジャガイモのヒトカケラをもらった時にもありがとうと、絶えず笑顔で頭を下げていました。 0:スエは今日も誰かに感謝をして一日を終えています。 0:(間) 0:スエは自分の年齢が分かりません。 0:周りにいる大人たちの肩の高さほどに頭の先が来るぐらいでしょうか。 0:着ている服は貰い物ですので、大きくて汚れが目立っていますが、スエは気にしたことがありません。 0:学校と言うものがあるのだと、周りから聞いたことがありますが、自分の知らないことを教えてくれる場所であるのだと思っているため、今の状況と何が違うのだろうと不思議に思っていました。 0:周りのみんなは、スエに何でも教えてくれます。 0:言葉に、缶蹴り、棒倒しや、あっち向いてホイ、カケッコは苦手ですが、かくれんぼで、スエに敵う相手はいませんでした。 0:どうしても、スエは皆の隠れているところを不思議と見つけてしまい、その笑みで「みーつけた」と楽しそうにしていました。 0:スエと、かくれんぼをする時はみんな真剣です。 0:(間) 0:今日もスエはお腹がすいていましたが、苦い顔一つせず笑みの中を生きていました。悲しい感情が無いわけではありませんが、今は笑みを浮かべる方が楽しいと心から思っている証拠なのでしょう。 0:「これ、少しだけど食べな」 0:スエは薄く切ったサツマイモをおばさんから貰いました。 0:少しづつ口に含んでゆっくり食べながら、綺麗な空をながめて太陽と向かい合う、静かな正午に幸せな気持ちを覚えていました。 0:まだガレキの中で、太陽の元が遊び場のような状況で、スエは思っていました。 0: 0:「私の遊び場所は無限にあって、どこまでも広い空も、とても高い天井の様に見える。 0:もう頭の上に大きな大きな飛行機が来ることもないし、誰も傷つくこともない。 0:日本は負けたんだよっておじさんが言ってたけど、みんな頭を下げてたよ。 0:私も一緒に頭を下げたけど、もう怖い顔をして下を向かなくても良いんだと思うと、これから楽しいことしかないような気がして嬉しくなるんだ。 0:生きてさえいれば、動いてさえいれば道はつながってて、時間は進むから私は止まらないで今を生きるよ。 0:本当はお父ちゃんとお母ちゃんに会ってみたい気持ちはあるけど、私には沢山のお父ちゃんとお母ちゃんがいて、友達もおじさんもおばさんもいるから、不思議とさみしくないんだ。 0:いつか、このさつまいもを一本一人で食べても良い時が来るのかな・・・一本は欲張っちゃったかな。 0:さつまいも半分でも良いよ。お米も麦も高価だから、さつまいもがあれば良いな。 0:このさつまいも、甘くて美味しいや。おばさん見かけたらお礼を言わなきゃ。」 0:スエは時折、独り言のように心で語ることがありました。 0:その表情と言ったら、とても優しく、その年齢からは発せられないほど大人びていた事でしょう。 0:スエの独り言を聞いていたのか、聞こえたのか分かりませんが、一人の男性がスエに近寄ってきました。 0:色褪せた濃い緑色で腰の黒いベルトが古さを感じさせる、日本人のそれとは、まるでかけ離れた顔立ちの、そうアメリカの軍人さんでした。 0:綺麗に借り上げられた頭髪は帽子に重なり、眉から上は確認できないが、とても優しい美しい蒼い瞳をスエに向けていました。 0:軍人「ここで何してるの」 0:その綺麗な発声に少しびっくりしたスエは、すぐに嬉しくなり、立ち上がって話し出しました。 0:「さつまいもをもらったの、美味しいからゆっくり食べてたの。軍人さん優しいね」 0:スエの言葉に彼も驚いていましたが、彼は続けて話し出しました。 0:軍人「仕事の途中でね。ここを通りかかったら、可愛い声が聞こえたから、その声を頼りに来たら、君がいたんだよ。何を言ってたのか聞き取れなかったけど、さつまいもを食べていたんだね」 0:彼は、日本語を訳す仕事をしているとスエに語ってくれました。 0:英語では表現できないことが多くあり、日本語の奥深さや、美しさが好きだと彼は続けます。 0:軍人「そうだ、コレ食べたことあるかい」 0:彼はスエに小さな銀色の包みを渡しました。 0:初めて見る包みにスエは不思議そうに両手でそれを受け取り、しばらく眺めていました。 0:食べたことあるかいと言ってたので、食べ物なのだろうけど、銀色に包まれた小さい物が食べ物なのだと理解できないスエは彼に聞き返しました。 0:「開けてみてもいい」 0:彼はもちろんと言い、どこか誇らしげな様子さえ垣間見える笑みを浮かべていました。 0:静かにゆっくり銀色の包みをあけると、いびつではあるが黒茶色の丸いものが入っていました。 0:軍人「チョコレイトって言うんだよ」 0:スエは不思議な顔を隠せず、しばらくながめていましたが、食べることが出来るんだと思い出して聞きました。 0:「口にしてもいいの」 0:彼はいいよと優しく言うと、スエは何も疑わずその黒茶色いものを口へ運びました。 0:(間) 0:スエは口の中に広がった味に感銘(かんめい)を受け涙が出てきました。 0:口から出た言葉が言葉として発せられることを嫌がっているような、それはまるで、生きている意味を教えてくれたような衝撃が走りました。 0:「・・・これは、な・・ん・・・」 0:普段よく話しているスエが言葉を失った瞬間と、人間の感情と言うものはこうも揺れ動くのかと実感したのは彼が一番よく感じていました。 0:(間) 0:言葉を失ったスエに別れを告げて彼は去っていきました。 0:“ちょこれいと”スエの脳裏に焼き付いて離れない言葉と、今までにない感情にしばらく押し黙り涙が引くのを待っていました。 0:おばさん「スエ、こんなところで何してるの」 0:先ほど、スエにさつまいもをくれたおばさんがスエを心配して探していたのか、声をかけてくれました。目を真っ赤にして、口元を結んでいるスエの様子が変だと気付くことなんて容易であり、途端に表情を変えておばさんは問いただしてきました。 0:おばさん「どうしたんだい。嫌なことでもあったのかい、そんな顔のスエは初めて見たよ」 0:スエはそばらく呆然(ぼうぜん)としていたが、我に返ったように、先ほどの軍人さんの話をおばさんに言って聞かせました。とても丁寧に、とても優しい口調で彼の話を続けて話しました。 0:おばさん「スエ、もしかしてその男の人って、濃い緑色の服を着ていなかったかい。そして優しい美しい瞳をしていなかったかい。彼はこの辺りでよく見かけるんだよ。人と話すのが好きでね。どうやら、スエと同じぐらいの男の子が母国に居るらしいから、スエのことが気になったんだろうね。」 0:おばさんの言葉にスエは、また心が動いていました。 0:「ちょこれいと」 :小さく口にした言葉に、おばさんは私も貰ったんだよと教えてくれました。少ししかないけど、どうぞと言ってくれたと嬉しそうに話してくれました。 0:(間) 0: 0:“ちょこれいと”の秘密は、心の中の優しさのかけらを形にした優しい軍人さんと、それを受け入れた笑みが似合う女の子のお話です。 0:あなたの周りにも、きっとスエの様に優しさを届けてくれる人がいますよ。 0:今の時代は何でも手に入りますが、手に入るから忘れることも少なからずある事実に目を向けたお話でした。ご唱和有難うございます。 0: 0:(終演)