台本概要
170 views
タイトル | 私の夏空~永久に平和を~ |
---|---|
作者名 | 桜美さくら (@OMI_SaKuRa0728) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
東京大空襲のお話です 女性サシ劇・一人で演じ分けも可・アドリブ△(内容を壊さない程度) 170 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
うめ | 女 | 62 | うめ うめナレーション ※本文に説明あり |
さくら | 女 | 60 | さくら さくらナレーション ※本文に説明あり |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:「私の夏空 作:桜美さくら」
0:(登場人物紹介)
さくら:時間設定【現在時】は中学生で15歳です
さくら:時間設定【昭和19~20年】は“うめ”の妹役が兼ね役です(13~14歳)
:
うめ:時間設定【現在】は、さくらのおばあちゃんで92歳です
うめ:時間設定【昭和19~20年】うめが14~15歳になります。
うめ:うめには、さくらを含め幼い兄弟姉妹が6人います。
うめ:さくらのお母さん兼ね役です。
0:(本文はここから)
:
うめ:今生きている事 命が繋がった事
うめ:生きたくても生きられなかった命がある事
:
さくら:戦争によって失われた全ての命に対して
さくら:心よりの黙祷を捧げます
:
0:(しっかり間をあける)
うめ:年々戦争体験を語ってくださる
うめ:語り手の方々が減っている事に心が痛いです
:
さくら:大切な語りを次の世代に繋げることが
さくら:今を生きる私達の使命ではないでしょうか
:
うめ:昭和20年8月15日
うめ:玉音放送からの終戦
うめ:本年で78年が過ぎました
:
さくら:安らかに過ごせますように
さくら:私達が語り継ぎます
:
0:(タイトルコール)
:
うめ:『私の夏空』
:
0:(さくらが帰宅した場面より)
:
さくら:「ただいま!・・・お母さん、おばあちゃんは?」
うめ:(お母さん)「さくら、おかえり。お部屋じゃないかしら?」
さくら:「ありがとう。」
うめ:(お母さん)「あ、さくらっ!帰ったら手洗いうがいよ!」
さくら:「はーい!」
0:(おばあちゃんの部屋)
さくら:「おばあちゃん?・・・さくらだけど。」
うめ:「はーい。」
さくら:「おばあちゃん、入るよ。」
うめ:「さくら、おかえり。どうしたの?」
さくら:「あのね、学校でね。“戦争について聞いてきなさい”って言われたの!」
うめ:「おや。」
さくら:「おばあちゃんは、どうだったのかなって思ってね!」
うめ:「・・・戦争ねぇ。・・・怖いわね。」
さくら:「怖いのは知ってるよ!教科書に載ってたし、先生も言ってたよ!」
うめ:「あらあら。」
さくら:「うーん、なんだっけ?(メモ用紙を開く)えっとね、“戦争当時の生活の様子や、覚えている出来事を聞いてくる”って!」
うめ:「当時の生活・・・ねぇ。」
:
0:(場面転換 昭和19年)
:
0:(うめが14歳になります。さくらがうめの妹役で登場13歳。)
:
うめ:「今日は飛行機が飛ばなかった・・・」
:
うめ:綺麗な青い空に似つかわしくない機体
うめ:空襲警報が鳴ると・・・とても怖くて
うめ:震える小さな弟と妹を静かになだめていた
:
うめ:私は“うめ”14歳。
うめ:弟が2人、妹が3人居て
うめ:お世話もしなきゃいけないから
うめ:学校へは行ってないの
:
うめ:母さんはいるけど畑仕事してて
うめ:毎日、食べ物を分けてもらえるか走り回っている
うめ:近所のおばさんから大きなさつまいもがもらえた時は
うめ:家族みんなで喜んでたっけ
:
うめ:父さんは異国に居るって母さんが言ってた
うめ:“オ国ノ為二命ヲ捧グ”って
うめ:胸張って出て行ったのを覚えてる
:
0:(一呼吸置く)
:
さくら:「うめねぇ、おっきいの(飛行機の事)行った?」
うめ:「(小声で)シー。まだ声出しちゃいけんよ。」
さくら:「(手で口を覆って)分かった。」
:
さくら:うめねぇはいつも母さんみたいで
さくら:私達を守ってくれる。
:
さくら:日本国は戦ってるんだよって
さくら:うめねぇから聞いたけど
さくら:私にはよく分からないことでね
:
さくら:町の大きなお家でラジオを聞いたら
さくら:“オ国ノ為ニ我ガ身ヲ捧ゲル”って
さくら:言ってたのを聞いたっけ。
:
0:(一呼吸置く)
:
うめ:「(小声で)・・・もう行ったみたい。偵察機(ていさつき)かも。」
さくら:「(小声で)てい・・さ・・?」
うめ:「(ため息)こんな昼間に、何事もなくて良かった。」
さくら:「(小声で)うめねぇ、もう喋って良いの?」
うめ:「あぁ、ごめんごめん、良いよ。」
さくら:「すごく早く行っちゃったね。」
:
うめ:私の街も、隣の街も男衆(おとこしゅう)はいなくなって
うめ:女衆(おんなしゅう)がここを守っている
:
0:(場面転換)
0:(時間経過 現代)
:
さくら:「ねぇ、おばあちゃん?何で飛行機が来たら、小さな声でしゃべってたの?」
うめ:「あぁ、今考えると不思議だけどね、当時は飛行機が敵の兵隊を連れてくるって信じててね。家の前を通られたらやられちゃうでしょ?誰も居ないように、気付かれないようにしていたのよ。」
さくら:「へぇ。あとね、偵察機?って何?」
うめ:「私も詳しくは知らないんだけどね、敵が様子を見に来てるって聞いたことがあるわ。」
さくら:「様子を?」
うめ:「そうよ。私の住んでいた街の上にも、よく戦闘機が飛んできてたわよ。」
さくら:「なんだか、怖いね。」
うめ:「そりゃ、怖かったわよ。でも、“屈スルナ日本国ノ勝利ヲ”って毎日毎日どこかで言ってたものよ。」
さくら:「・・・・・。」
うめ:「・・・そうだわ、前に話したことがあったでしょ?“さくら”って妹が居たって。」
さくら:「うん、私と同じ名前だよね。」
うめ:「その妹のさくらが、戦争当時はよく私を助けてくれたのよ。」
さくら:「へへ、そうなんだ、なんか嬉しいや。」
うめ:「ふふふ(頬笑み)。」
さくら:「・・・お話の続きは?」
:
0:(場面転換)
0:(昭和20年 3月)
:
うめ:小さな弟達と妹達は4人そろって
うめ:田舎の親戚の家で見てもらえることになった
:
うめ:どこも物が無くて大変な時だけど
うめ:助け合って生きて行こうって
うめ:おばさんが言ってくれて
うめ:ギリギリ乗れた列車を見送った
:
さくら:家に残ったのは私と、うめねぇと母さん
さくら:いつもは元気な家だけど、とても静かで
さくら:自分の家じゃないみたいだった
:
さくら:一刻(いっとき)の間だからと
さくら:泣いた弟の背中を押したっけ
さくら:向こうでも泣いてないかな・・・
:
うめ:「ほら、もうすぐ日が暮れるよ。」
さくら:「はーい。」
うめ:「今日も一日が終わるわね・・・」
:
うめ:その日、私たちはいつもと同じように
うめ:眠りについた・・・
:
さくら:ボロボロの布団は一枚しかなくて
さくら:みんなで寝ていた時は狭かったけど
さくら:今は・・・少し広いや
:
0:(一呼吸置く)
:
うめ:1945年3月10日
うめ:深夜過ぎ・・・みんなが寝静まり
うめ:母さんの寝息も聞こえたけど
うめ:私は起きていた
:
さくら:「うめねぇ、まだ寝ないの?」
うめ:「ん?さくらも起きてたの。」
さくら:「うん。」
うめ:「・・・なんだか胸騒ぎがしてね。」
さくら:「うめねぇも?実は、私も。少し前に目が覚めて、眠れなくなっちゃったの。」
うめ:「うん。なんか、嫌な気がしてね。」
さくら:「なんだろうね。」
うめ:「・・・さくら?」
さくら:「・・・なに?」
うめ:「真っ白な、にぎりめし。・・・食べたいね。」
さくら:「はははは。真っ白は無理だよ。見たことないもん。」
うめ:「いつか・・・食べれるかな。」
さくら:「あたしも食べたいな・・・」
:
0:(鳴りやまない爆撃音と大きな空襲警報が遠くで聞こえる)
0:(緊迫感を出して慌ててください)
:
さくら:「えぇ、何?空襲?」
うめ:「いつもと様子が違う」
さくら:「母さんは?」
うめ:「外に出ちゃダメ!家に居な!」
さくら:「この音、変だよ!」
うめ:「分かってる!大声もダメ!」
さくら:「でも!おかしい!こんな音!地面も揺れてるっ!」
うめ:「何が起こったの?空襲警報と爆撃の音が一緒だった!」
さくら:「こっちまで爆弾が来たって事?」
うめ:「私だって分かんないよ!」
さくら:「まだ続いてる、この音!」
:
うめ:約300機のB29爆撃機が
うめ:東京上空に飛来した
:
さくら:約2時間で33万発以上の
さくら:焼夷弾(しょういだん)が投下された
:
うめ:東京大空襲の夜だった
:
0:(場面転換)
0:(現代に戻ります)
:
さくら:「・・・おばあちゃんはその時東京にいたの?」
うめ:「いたよ。でも生きてるだろ?
うめ:私はね、空が赤く光っても火を消し続けたのよ。
うめ:夜は真っ暗で何も見えないはずなんだけど、その日の夜は見えたのよ。
うめ:ぐちゃぐちゃになった家と真っ赤な炎がそこら中に。
うめ:ここは危ないからって、ボロボロの布団を井戸の水に浸して、それをかぶって走ったわ。
うめ:重いけど熱くはなかった。もちろん、妹と母さんも一緒にね。」
さくら:「・・・・・」
うめ:「あら、ちょっと怖い話になっちゃったかしら。」
さくら:「違うの!想像しちゃって、心が痛くなったの。」
うめ:「あらあら、さくらは優しいね。」
さくら:「・・・・・おばあちゃん、わたし・・・」
うめ:「おや、さくら、大丈夫かい?おばあちゃんはいるだろう?」
さくら:「・・・うん。」
うめ:「今思い返してみるとね、その日いちにち“生きてる”と、それだけで良かったのよ。
うめ:あんな辛い思いは、私の子どもたちにさせちゃいかんね。
うめ:さくら・・・あんたは好きなことを好きなようにしなさいね。」
さくら:「・・・・・」
うめ:「食べ物も飲み物も、着るものも、家が無くなっても命は繋がったの。
うめ:もちろん、私と仲良くしていた友達の中には亡くなった子もいるわ。
うめ:先生だってね。近所の元気だったおじさんとか
うめ:いつも干し大根くれた、隣のおばさんも見なくなったわ。
うめ:“オ国ノ為二名誉ナ戦死”って今でも覚えているわよ。」
さくら:「お国の為・・・」
うめ:「そうよ、その時はそれが当たり前だったの。学校で習ったものよ。」
さくら:「・・・」
うめ:「おやおや、そう言えば、戦争の事を聞いてきなさいって学校で言われたんでしょう?・・・ちゃんと書けそうかい?」
さくら:「・・・頑張る、あばあちゃん、ありがとう。」
:
0:(場面転換)
0:(昭和20年8月)
:
うめ:晴天の日に外で玉音放送を聞いた
さくら:焼野原のガレキの上でうめねぇと聞いた
:
うめ:泣き崩れる者や、時が止まって見えた者もいた
さくら:離れることを忘れたかのように両手を合わせた
:
うめ:「死にたくない」
:
さくら:「死にたくない」
:
うめ:今まで怖くて口に出せなかった言葉が
うめ:湯水のように溢れて止まらなかった
:
さくら:もう爆弾は降ってこないよね
さくら:もう空襲警報はならないよね
:
うめ:真っ白な、にぎりめしが
うめ:お腹いっぱい食べたいな
:
:(おしまい)
0:私の夏空~平和を永久に~
0:作 桜美さくら
:「私の夏空 作:桜美さくら」
0:(登場人物紹介)
さくら:時間設定【現在時】は中学生で15歳です
さくら:時間設定【昭和19~20年】は“うめ”の妹役が兼ね役です(13~14歳)
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うめ:時間設定【現在】は、さくらのおばあちゃんで92歳です
うめ:時間設定【昭和19~20年】うめが14~15歳になります。
うめ:うめには、さくらを含め幼い兄弟姉妹が6人います。
うめ:さくらのお母さん兼ね役です。
0:(本文はここから)
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うめ:今生きている事 命が繋がった事
うめ:生きたくても生きられなかった命がある事
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さくら:戦争によって失われた全ての命に対して
さくら:心よりの黙祷を捧げます
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0:(しっかり間をあける)
うめ:年々戦争体験を語ってくださる
うめ:語り手の方々が減っている事に心が痛いです
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さくら:大切な語りを次の世代に繋げることが
さくら:今を生きる私達の使命ではないでしょうか
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うめ:昭和20年8月15日
うめ:玉音放送からの終戦
うめ:本年で78年が過ぎました
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さくら:安らかに過ごせますように
さくら:私達が語り継ぎます
:
0:(タイトルコール)
:
うめ:『私の夏空』
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0:(さくらが帰宅した場面より)
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さくら:「ただいま!・・・お母さん、おばあちゃんは?」
うめ:(お母さん)「さくら、おかえり。お部屋じゃないかしら?」
さくら:「ありがとう。」
うめ:(お母さん)「あ、さくらっ!帰ったら手洗いうがいよ!」
さくら:「はーい!」
0:(おばあちゃんの部屋)
さくら:「おばあちゃん?・・・さくらだけど。」
うめ:「はーい。」
さくら:「おばあちゃん、入るよ。」
うめ:「さくら、おかえり。どうしたの?」
さくら:「あのね、学校でね。“戦争について聞いてきなさい”って言われたの!」
うめ:「おや。」
さくら:「おばあちゃんは、どうだったのかなって思ってね!」
うめ:「・・・戦争ねぇ。・・・怖いわね。」
さくら:「怖いのは知ってるよ!教科書に載ってたし、先生も言ってたよ!」
うめ:「あらあら。」
さくら:「うーん、なんだっけ?(メモ用紙を開く)えっとね、“戦争当時の生活の様子や、覚えている出来事を聞いてくる”って!」
うめ:「当時の生活・・・ねぇ。」
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0:(場面転換 昭和19年)
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0:(うめが14歳になります。さくらがうめの妹役で登場13歳。)
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うめ:「今日は飛行機が飛ばなかった・・・」
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うめ:綺麗な青い空に似つかわしくない機体
うめ:空襲警報が鳴ると・・・とても怖くて
うめ:震える小さな弟と妹を静かになだめていた
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うめ:私は“うめ”14歳。
うめ:弟が2人、妹が3人居て
うめ:お世話もしなきゃいけないから
うめ:学校へは行ってないの
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うめ:母さんはいるけど畑仕事してて
うめ:毎日、食べ物を分けてもらえるか走り回っている
うめ:近所のおばさんから大きなさつまいもがもらえた時は
うめ:家族みんなで喜んでたっけ
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うめ:父さんは異国に居るって母さんが言ってた
うめ:“オ国ノ為二命ヲ捧グ”って
うめ:胸張って出て行ったのを覚えてる
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0:(一呼吸置く)
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さくら:「うめねぇ、おっきいの(飛行機の事)行った?」
うめ:「(小声で)シー。まだ声出しちゃいけんよ。」
さくら:「(手で口を覆って)分かった。」
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さくら:うめねぇはいつも母さんみたいで
さくら:私達を守ってくれる。
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さくら:日本国は戦ってるんだよって
さくら:うめねぇから聞いたけど
さくら:私にはよく分からないことでね
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さくら:町の大きなお家でラジオを聞いたら
さくら:“オ国ノ為ニ我ガ身ヲ捧ゲル”って
さくら:言ってたのを聞いたっけ。
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0:(一呼吸置く)
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うめ:「(小声で)・・・もう行ったみたい。偵察機(ていさつき)かも。」
さくら:「(小声で)てい・・さ・・?」
うめ:「(ため息)こんな昼間に、何事もなくて良かった。」
さくら:「(小声で)うめねぇ、もう喋って良いの?」
うめ:「あぁ、ごめんごめん、良いよ。」
さくら:「すごく早く行っちゃったね。」
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うめ:私の街も、隣の街も男衆(おとこしゅう)はいなくなって
うめ:女衆(おんなしゅう)がここを守っている
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0:(場面転換)
0:(時間経過 現代)
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さくら:「ねぇ、おばあちゃん?何で飛行機が来たら、小さな声でしゃべってたの?」
うめ:「あぁ、今考えると不思議だけどね、当時は飛行機が敵の兵隊を連れてくるって信じててね。家の前を通られたらやられちゃうでしょ?誰も居ないように、気付かれないようにしていたのよ。」
さくら:「へぇ。あとね、偵察機?って何?」
うめ:「私も詳しくは知らないんだけどね、敵が様子を見に来てるって聞いたことがあるわ。」
さくら:「様子を?」
うめ:「そうよ。私の住んでいた街の上にも、よく戦闘機が飛んできてたわよ。」
さくら:「なんだか、怖いね。」
うめ:「そりゃ、怖かったわよ。でも、“屈スルナ日本国ノ勝利ヲ”って毎日毎日どこかで言ってたものよ。」
さくら:「・・・・・。」
うめ:「・・・そうだわ、前に話したことがあったでしょ?“さくら”って妹が居たって。」
さくら:「うん、私と同じ名前だよね。」
うめ:「その妹のさくらが、戦争当時はよく私を助けてくれたのよ。」
さくら:「へへ、そうなんだ、なんか嬉しいや。」
うめ:「ふふふ(頬笑み)。」
さくら:「・・・お話の続きは?」
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0:(場面転換)
0:(昭和20年 3月)
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うめ:小さな弟達と妹達は4人そろって
うめ:田舎の親戚の家で見てもらえることになった
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うめ:どこも物が無くて大変な時だけど
うめ:助け合って生きて行こうって
うめ:おばさんが言ってくれて
うめ:ギリギリ乗れた列車を見送った
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さくら:家に残ったのは私と、うめねぇと母さん
さくら:いつもは元気な家だけど、とても静かで
さくら:自分の家じゃないみたいだった
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さくら:一刻(いっとき)の間だからと
さくら:泣いた弟の背中を押したっけ
さくら:向こうでも泣いてないかな・・・
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うめ:「ほら、もうすぐ日が暮れるよ。」
さくら:「はーい。」
うめ:「今日も一日が終わるわね・・・」
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うめ:その日、私たちはいつもと同じように
うめ:眠りについた・・・
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さくら:ボロボロの布団は一枚しかなくて
さくら:みんなで寝ていた時は狭かったけど
さくら:今は・・・少し広いや
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0:(一呼吸置く)
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うめ:1945年3月10日
うめ:深夜過ぎ・・・みんなが寝静まり
うめ:母さんの寝息も聞こえたけど
うめ:私は起きていた
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さくら:「うめねぇ、まだ寝ないの?」
うめ:「ん?さくらも起きてたの。」
さくら:「うん。」
うめ:「・・・なんだか胸騒ぎがしてね。」
さくら:「うめねぇも?実は、私も。少し前に目が覚めて、眠れなくなっちゃったの。」
うめ:「うん。なんか、嫌な気がしてね。」
さくら:「なんだろうね。」
うめ:「・・・さくら?」
さくら:「・・・なに?」
うめ:「真っ白な、にぎりめし。・・・食べたいね。」
さくら:「はははは。真っ白は無理だよ。見たことないもん。」
うめ:「いつか・・・食べれるかな。」
さくら:「あたしも食べたいな・・・」
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0:(鳴りやまない爆撃音と大きな空襲警報が遠くで聞こえる)
0:(緊迫感を出して慌ててください)
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さくら:「えぇ、何?空襲?」
うめ:「いつもと様子が違う」
さくら:「母さんは?」
うめ:「外に出ちゃダメ!家に居な!」
さくら:「この音、変だよ!」
うめ:「分かってる!大声もダメ!」
さくら:「でも!おかしい!こんな音!地面も揺れてるっ!」
うめ:「何が起こったの?空襲警報と爆撃の音が一緒だった!」
さくら:「こっちまで爆弾が来たって事?」
うめ:「私だって分かんないよ!」
さくら:「まだ続いてる、この音!」
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うめ:約300機のB29爆撃機が
うめ:東京上空に飛来した
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さくら:約2時間で33万発以上の
さくら:焼夷弾(しょういだん)が投下された
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うめ:東京大空襲の夜だった
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0:(場面転換)
0:(現代に戻ります)
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さくら:「・・・おばあちゃんはその時東京にいたの?」
うめ:「いたよ。でも生きてるだろ?
うめ:私はね、空が赤く光っても火を消し続けたのよ。
うめ:夜は真っ暗で何も見えないはずなんだけど、その日の夜は見えたのよ。
うめ:ぐちゃぐちゃになった家と真っ赤な炎がそこら中に。
うめ:ここは危ないからって、ボロボロの布団を井戸の水に浸して、それをかぶって走ったわ。
うめ:重いけど熱くはなかった。もちろん、妹と母さんも一緒にね。」
さくら:「・・・・・」
うめ:「あら、ちょっと怖い話になっちゃったかしら。」
さくら:「違うの!想像しちゃって、心が痛くなったの。」
うめ:「あらあら、さくらは優しいね。」
さくら:「・・・・・おばあちゃん、わたし・・・」
うめ:「おや、さくら、大丈夫かい?おばあちゃんはいるだろう?」
さくら:「・・・うん。」
うめ:「今思い返してみるとね、その日いちにち“生きてる”と、それだけで良かったのよ。
うめ:あんな辛い思いは、私の子どもたちにさせちゃいかんね。
うめ:さくら・・・あんたは好きなことを好きなようにしなさいね。」
さくら:「・・・・・」
うめ:「食べ物も飲み物も、着るものも、家が無くなっても命は繋がったの。
うめ:もちろん、私と仲良くしていた友達の中には亡くなった子もいるわ。
うめ:先生だってね。近所の元気だったおじさんとか
うめ:いつも干し大根くれた、隣のおばさんも見なくなったわ。
うめ:“オ国ノ為二名誉ナ戦死”って今でも覚えているわよ。」
さくら:「お国の為・・・」
うめ:「そうよ、その時はそれが当たり前だったの。学校で習ったものよ。」
さくら:「・・・」
うめ:「おやおや、そう言えば、戦争の事を聞いてきなさいって学校で言われたんでしょう?・・・ちゃんと書けそうかい?」
さくら:「・・・頑張る、あばあちゃん、ありがとう。」
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0:(場面転換)
0:(昭和20年8月)
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うめ:晴天の日に外で玉音放送を聞いた
さくら:焼野原のガレキの上でうめねぇと聞いた
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うめ:泣き崩れる者や、時が止まって見えた者もいた
さくら:離れることを忘れたかのように両手を合わせた
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うめ:「死にたくない」
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さくら:「死にたくない」
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うめ:今まで怖くて口に出せなかった言葉が
うめ:湯水のように溢れて止まらなかった
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さくら:もう爆弾は降ってこないよね
さくら:もう空襲警報はならないよね
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うめ:真っ白な、にぎりめしが
うめ:お腹いっぱい食べたいな
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:(おしまい)
0:私の夏空~平和を永久に~
0:作 桜美さくら