台本概要

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タイトル 私の夏空~永久に平和を~
作者名 桜美さくら  (@OMI_SaKuRa0728)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(女2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 東京大空襲のお話です

女性サシ劇・一人で演じ分けも可・アドリブ△(内容を壊さない程度)

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
うめ 62 うめ うめナレーション ※本文に説明あり
さくら 60 さくら さくらナレーション ※本文に説明あり
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
:「私の夏空  作:桜美さくら」 0:(登場人物紹介) さくら:時間設定【現在時】は中学生で15歳です さくら:時間設定【昭和19~20年】は“うめ”の妹役が兼ね役です(13~14歳) : うめ:時間設定【現在】は、さくらのおばあちゃんで92歳です うめ:時間設定【昭和19~20年】うめが14~15歳になります。 うめ:うめには、さくらを含め幼い兄弟姉妹が6人います。 うめ:さくらのお母さん兼ね役です。 0:(本文はここから) : うめ:今生きている事 命が繋がった事 うめ:生きたくても生きられなかった命がある事 : さくら:戦争によって失われた全ての命に対して さくら:心よりの黙祷を捧げます : 0:(しっかり間をあける) うめ:年々戦争体験を語ってくださる うめ:語り手の方々が減っている事に心が痛いです : さくら:大切な語りを次の世代に繋げることが さくら:今を生きる私達の使命ではないでしょうか : うめ:昭和20年8月15日 うめ:玉音放送からの終戦 うめ:本年で78年が過ぎました : さくら:安らかに過ごせますように さくら:私達が語り継ぎます : 0:(タイトルコール) : うめ:『私の夏空』 : 0:(さくらが帰宅した場面より) : さくら:「ただいま!・・・お母さん、おばあちゃんは?」 うめ:(お母さん)「さくら、おかえり。お部屋じゃないかしら?」 さくら:「ありがとう。」 うめ:(お母さん)「あ、さくらっ!帰ったら手洗いうがいよ!」 さくら:「はーい!」 0:(おばあちゃんの部屋) さくら:「おばあちゃん?・・・さくらだけど。」 うめ:「はーい。」 さくら:「おばあちゃん、入るよ。」 うめ:「さくら、おかえり。どうしたの?」 さくら:「あのね、学校でね。“戦争について聞いてきなさい”って言われたの!」 うめ:「おや。」 さくら:「おばあちゃんは、どうだったのかなって思ってね!」 うめ:「・・・戦争ねぇ。・・・怖いわね。」 さくら:「怖いのは知ってるよ!教科書に載ってたし、先生も言ってたよ!」 うめ:「あらあら。」 さくら:「うーん、なんだっけ?(メモ用紙を開く)えっとね、“戦争当時の生活の様子や、覚えている出来事を聞いてくる”って!」 うめ:「当時の生活・・・ねぇ。」 : 0:(場面転換 昭和19年) : 0:(うめが14歳になります。さくらがうめの妹役で登場13歳。) : うめ:「今日は飛行機が飛ばなかった・・・」 : うめ:綺麗な青い空に似つかわしくない機体 うめ:空襲警報が鳴ると・・・とても怖くて うめ:震える小さな弟と妹を静かになだめていた : うめ:私は“うめ”14歳。 うめ:弟が2人、妹が3人居て うめ:お世話もしなきゃいけないから うめ:学校へは行ってないの : うめ:母さんはいるけど畑仕事してて うめ:毎日、食べ物を分けてもらえるか走り回っている うめ:近所のおばさんから大きなさつまいもがもらえた時は うめ:家族みんなで喜んでたっけ : うめ:父さんは異国に居るって母さんが言ってた うめ:“オ国ノ為二命ヲ捧グ”って うめ:胸張って出て行ったのを覚えてる : 0:(一呼吸置く) : さくら:「うめねぇ、おっきいの(飛行機の事)行った?」 うめ:「(小声で)シー。まだ声出しちゃいけんよ。」 さくら:「(手で口を覆って)分かった。」 : さくら:うめねぇはいつも母さんみたいで さくら:私達を守ってくれる。 : さくら:日本国は戦ってるんだよって さくら:うめねぇから聞いたけど さくら:私にはよく分からないことでね : さくら:町の大きなお家でラジオを聞いたら さくら:“オ国ノ為ニ我ガ身ヲ捧ゲル”って さくら:言ってたのを聞いたっけ。 : 0:(一呼吸置く) : うめ:「(小声で)・・・もう行ったみたい。偵察機(ていさつき)かも。」 さくら:「(小声で)てい・・さ・・?」 うめ:「(ため息)こんな昼間に、何事もなくて良かった。」 さくら:「(小声で)うめねぇ、もう喋って良いの?」 うめ:「あぁ、ごめんごめん、良いよ。」 さくら:「すごく早く行っちゃったね。」 : うめ:私の街も、隣の街も男衆(おとこしゅう)はいなくなって うめ:女衆(おんなしゅう)がここを守っている : 0:(場面転換) 0:(時間経過 現代) : さくら:「ねぇ、おばあちゃん?何で飛行機が来たら、小さな声でしゃべってたの?」 うめ:「あぁ、今考えると不思議だけどね、当時は飛行機が敵の兵隊を連れてくるって信じててね。家の前を通られたらやられちゃうでしょ?誰も居ないように、気付かれないようにしていたのよ。」 さくら:「へぇ。あとね、偵察機?って何?」 うめ:「私も詳しくは知らないんだけどね、敵が様子を見に来てるって聞いたことがあるわ。」 さくら:「様子を?」 うめ:「そうよ。私の住んでいた街の上にも、よく戦闘機が飛んできてたわよ。」 さくら:「なんだか、怖いね。」 うめ:「そりゃ、怖かったわよ。でも、“屈スルナ日本国ノ勝利ヲ”って毎日毎日どこかで言ってたものよ。」 さくら:「・・・・・。」 うめ:「・・・そうだわ、前に話したことがあったでしょ?“さくら”って妹が居たって。」 さくら:「うん、私と同じ名前だよね。」 うめ:「その妹のさくらが、戦争当時はよく私を助けてくれたのよ。」 さくら:「へへ、そうなんだ、なんか嬉しいや。」 うめ:「ふふふ(頬笑み)。」 さくら:「・・・お話の続きは?」 : 0:(場面転換) 0:(昭和20年 3月) : うめ:小さな弟達と妹達は4人そろって うめ:田舎の親戚の家で見てもらえることになった : うめ:どこも物が無くて大変な時だけど うめ:助け合って生きて行こうって うめ:おばさんが言ってくれて うめ:ギリギリ乗れた列車を見送った : さくら:家に残ったのは私と、うめねぇと母さん さくら:いつもは元気な家だけど、とても静かで さくら:自分の家じゃないみたいだった : さくら:一刻(いっとき)の間だからと さくら:泣いた弟の背中を押したっけ さくら:向こうでも泣いてないかな・・・ : うめ:「ほら、もうすぐ日が暮れるよ。」 さくら:「はーい。」 うめ:「今日も一日が終わるわね・・・」 : うめ:その日、私たちはいつもと同じように うめ:眠りについた・・・ : さくら:ボロボロの布団は一枚しかなくて さくら:みんなで寝ていた時は狭かったけど さくら:今は・・・少し広いや : 0:(一呼吸置く) : うめ:1945年3月10日 うめ:深夜過ぎ・・・みんなが寝静まり うめ:母さんの寝息も聞こえたけど うめ:私は起きていた : さくら:「うめねぇ、まだ寝ないの?」 うめ:「ん?さくらも起きてたの。」 さくら:「うん。」 うめ:「・・・なんだか胸騒ぎがしてね。」 さくら:「うめねぇも?実は、私も。少し前に目が覚めて、眠れなくなっちゃったの。」 うめ:「うん。なんか、嫌な気がしてね。」 さくら:「なんだろうね。」 うめ:「・・・さくら?」 さくら:「・・・なに?」 うめ:「真っ白な、にぎりめし。・・・食べたいね。」 さくら:「はははは。真っ白は無理だよ。見たことないもん。」 うめ:「いつか・・・食べれるかな。」 さくら:「あたしも食べたいな・・・」 : 0:(鳴りやまない爆撃音と大きな空襲警報が遠くで聞こえる) 0:(緊迫感を出して慌ててください) : さくら:「えぇ、何?空襲?」 うめ:「いつもと様子が違う」 さくら:「母さんは?」 うめ:「外に出ちゃダメ!家に居な!」 さくら:「この音、変だよ!」 うめ:「分かってる!大声もダメ!」 さくら:「でも!おかしい!こんな音!地面も揺れてるっ!」 うめ:「何が起こったの?空襲警報と爆撃の音が一緒だった!」 さくら:「こっちまで爆弾が来たって事?」 うめ:「私だって分かんないよ!」 さくら:「まだ続いてる、この音!」 : うめ:約300機のB29爆撃機が うめ:東京上空に飛来した : さくら:約2時間で33万発以上の さくら:焼夷弾(しょういだん)が投下された : うめ:東京大空襲の夜だった : 0:(場面転換) 0:(現代に戻ります) : さくら:「・・・おばあちゃんはその時東京にいたの?」 うめ:「いたよ。でも生きてるだろ? うめ:私はね、空が赤く光っても火を消し続けたのよ。 うめ:夜は真っ暗で何も見えないはずなんだけど、その日の夜は見えたのよ。 うめ:ぐちゃぐちゃになった家と真っ赤な炎がそこら中に。 うめ:ここは危ないからって、ボロボロの布団を井戸の水に浸して、それをかぶって走ったわ。 うめ:重いけど熱くはなかった。もちろん、妹と母さんも一緒にね。」 さくら:「・・・・・」 うめ:「あら、ちょっと怖い話になっちゃったかしら。」 さくら:「違うの!想像しちゃって、心が痛くなったの。」 うめ:「あらあら、さくらは優しいね。」 さくら:「・・・・・おばあちゃん、わたし・・・」 うめ:「おや、さくら、大丈夫かい?おばあちゃんはいるだろう?」 さくら:「・・・うん。」 うめ:「今思い返してみるとね、その日いちにち“生きてる”と、それだけで良かったのよ。 うめ:あんな辛い思いは、私の子どもたちにさせちゃいかんね。 うめ:さくら・・・あんたは好きなことを好きなようにしなさいね。」 さくら:「・・・・・」 うめ:「食べ物も飲み物も、着るものも、家が無くなっても命は繋がったの。 うめ:もちろん、私と仲良くしていた友達の中には亡くなった子もいるわ。 うめ:先生だってね。近所の元気だったおじさんとか うめ:いつも干し大根くれた、隣のおばさんも見なくなったわ。 うめ:“オ国ノ為二名誉ナ戦死”って今でも覚えているわよ。」 さくら:「お国の為・・・」 うめ:「そうよ、その時はそれが当たり前だったの。学校で習ったものよ。」 さくら:「・・・」 うめ:「おやおや、そう言えば、戦争の事を聞いてきなさいって学校で言われたんでしょう?・・・ちゃんと書けそうかい?」 さくら:「・・・頑張る、あばあちゃん、ありがとう。」 : 0:(場面転換) 0:(昭和20年8月) : うめ:晴天の日に外で玉音放送を聞いた さくら:焼野原のガレキの上でうめねぇと聞いた : うめ:泣き崩れる者や、時が止まって見えた者もいた さくら:離れることを忘れたかのように両手を合わせた : うめ:「死にたくない」 : さくら:「死にたくない」 : うめ:今まで怖くて口に出せなかった言葉が うめ:湯水のように溢れて止まらなかった : さくら:もう爆弾は降ってこないよね さくら:もう空襲警報はならないよね : うめ:真っ白な、にぎりめしが うめ:お腹いっぱい食べたいな : :(おしまい) 0:私の夏空~平和を永久に~ 0:作 桜美さくら

:「私の夏空  作:桜美さくら」 0:(登場人物紹介) さくら:時間設定【現在時】は中学生で15歳です さくら:時間設定【昭和19~20年】は“うめ”の妹役が兼ね役です(13~14歳) : うめ:時間設定【現在】は、さくらのおばあちゃんで92歳です うめ:時間設定【昭和19~20年】うめが14~15歳になります。 うめ:うめには、さくらを含め幼い兄弟姉妹が6人います。 うめ:さくらのお母さん兼ね役です。 0:(本文はここから) : うめ:今生きている事 命が繋がった事 うめ:生きたくても生きられなかった命がある事 : さくら:戦争によって失われた全ての命に対して さくら:心よりの黙祷を捧げます : 0:(しっかり間をあける) うめ:年々戦争体験を語ってくださる うめ:語り手の方々が減っている事に心が痛いです : さくら:大切な語りを次の世代に繋げることが さくら:今を生きる私達の使命ではないでしょうか : うめ:昭和20年8月15日 うめ:玉音放送からの終戦 うめ:本年で78年が過ぎました : さくら:安らかに過ごせますように さくら:私達が語り継ぎます : 0:(タイトルコール) : うめ:『私の夏空』 : 0:(さくらが帰宅した場面より) : さくら:「ただいま!・・・お母さん、おばあちゃんは?」 うめ:(お母さん)「さくら、おかえり。お部屋じゃないかしら?」 さくら:「ありがとう。」 うめ:(お母さん)「あ、さくらっ!帰ったら手洗いうがいよ!」 さくら:「はーい!」 0:(おばあちゃんの部屋) さくら:「おばあちゃん?・・・さくらだけど。」 うめ:「はーい。」 さくら:「おばあちゃん、入るよ。」 うめ:「さくら、おかえり。どうしたの?」 さくら:「あのね、学校でね。“戦争について聞いてきなさい”って言われたの!」 うめ:「おや。」 さくら:「おばあちゃんは、どうだったのかなって思ってね!」 うめ:「・・・戦争ねぇ。・・・怖いわね。」 さくら:「怖いのは知ってるよ!教科書に載ってたし、先生も言ってたよ!」 うめ:「あらあら。」 さくら:「うーん、なんだっけ?(メモ用紙を開く)えっとね、“戦争当時の生活の様子や、覚えている出来事を聞いてくる”って!」 うめ:「当時の生活・・・ねぇ。」 : 0:(場面転換 昭和19年) : 0:(うめが14歳になります。さくらがうめの妹役で登場13歳。) : うめ:「今日は飛行機が飛ばなかった・・・」 : うめ:綺麗な青い空に似つかわしくない機体 うめ:空襲警報が鳴ると・・・とても怖くて うめ:震える小さな弟と妹を静かになだめていた : うめ:私は“うめ”14歳。 うめ:弟が2人、妹が3人居て うめ:お世話もしなきゃいけないから うめ:学校へは行ってないの : うめ:母さんはいるけど畑仕事してて うめ:毎日、食べ物を分けてもらえるか走り回っている うめ:近所のおばさんから大きなさつまいもがもらえた時は うめ:家族みんなで喜んでたっけ : うめ:父さんは異国に居るって母さんが言ってた うめ:“オ国ノ為二命ヲ捧グ”って うめ:胸張って出て行ったのを覚えてる : 0:(一呼吸置く) : さくら:「うめねぇ、おっきいの(飛行機の事)行った?」 うめ:「(小声で)シー。まだ声出しちゃいけんよ。」 さくら:「(手で口を覆って)分かった。」 : さくら:うめねぇはいつも母さんみたいで さくら:私達を守ってくれる。 : さくら:日本国は戦ってるんだよって さくら:うめねぇから聞いたけど さくら:私にはよく分からないことでね : さくら:町の大きなお家でラジオを聞いたら さくら:“オ国ノ為ニ我ガ身ヲ捧ゲル”って さくら:言ってたのを聞いたっけ。 : 0:(一呼吸置く) : うめ:「(小声で)・・・もう行ったみたい。偵察機(ていさつき)かも。」 さくら:「(小声で)てい・・さ・・?」 うめ:「(ため息)こんな昼間に、何事もなくて良かった。」 さくら:「(小声で)うめねぇ、もう喋って良いの?」 うめ:「あぁ、ごめんごめん、良いよ。」 さくら:「すごく早く行っちゃったね。」 : うめ:私の街も、隣の街も男衆(おとこしゅう)はいなくなって うめ:女衆(おんなしゅう)がここを守っている : 0:(場面転換) 0:(時間経過 現代) : さくら:「ねぇ、おばあちゃん?何で飛行機が来たら、小さな声でしゃべってたの?」 うめ:「あぁ、今考えると不思議だけどね、当時は飛行機が敵の兵隊を連れてくるって信じててね。家の前を通られたらやられちゃうでしょ?誰も居ないように、気付かれないようにしていたのよ。」 さくら:「へぇ。あとね、偵察機?って何?」 うめ:「私も詳しくは知らないんだけどね、敵が様子を見に来てるって聞いたことがあるわ。」 さくら:「様子を?」 うめ:「そうよ。私の住んでいた街の上にも、よく戦闘機が飛んできてたわよ。」 さくら:「なんだか、怖いね。」 うめ:「そりゃ、怖かったわよ。でも、“屈スルナ日本国ノ勝利ヲ”って毎日毎日どこかで言ってたものよ。」 さくら:「・・・・・。」 うめ:「・・・そうだわ、前に話したことがあったでしょ?“さくら”って妹が居たって。」 さくら:「うん、私と同じ名前だよね。」 うめ:「その妹のさくらが、戦争当時はよく私を助けてくれたのよ。」 さくら:「へへ、そうなんだ、なんか嬉しいや。」 うめ:「ふふふ(頬笑み)。」 さくら:「・・・お話の続きは?」 : 0:(場面転換) 0:(昭和20年 3月) : うめ:小さな弟達と妹達は4人そろって うめ:田舎の親戚の家で見てもらえることになった : うめ:どこも物が無くて大変な時だけど うめ:助け合って生きて行こうって うめ:おばさんが言ってくれて うめ:ギリギリ乗れた列車を見送った : さくら:家に残ったのは私と、うめねぇと母さん さくら:いつもは元気な家だけど、とても静かで さくら:自分の家じゃないみたいだった : さくら:一刻(いっとき)の間だからと さくら:泣いた弟の背中を押したっけ さくら:向こうでも泣いてないかな・・・ : うめ:「ほら、もうすぐ日が暮れるよ。」 さくら:「はーい。」 うめ:「今日も一日が終わるわね・・・」 : うめ:その日、私たちはいつもと同じように うめ:眠りについた・・・ : さくら:ボロボロの布団は一枚しかなくて さくら:みんなで寝ていた時は狭かったけど さくら:今は・・・少し広いや : 0:(一呼吸置く) : うめ:1945年3月10日 うめ:深夜過ぎ・・・みんなが寝静まり うめ:母さんの寝息も聞こえたけど うめ:私は起きていた : さくら:「うめねぇ、まだ寝ないの?」 うめ:「ん?さくらも起きてたの。」 さくら:「うん。」 うめ:「・・・なんだか胸騒ぎがしてね。」 さくら:「うめねぇも?実は、私も。少し前に目が覚めて、眠れなくなっちゃったの。」 うめ:「うん。なんか、嫌な気がしてね。」 さくら:「なんだろうね。」 うめ:「・・・さくら?」 さくら:「・・・なに?」 うめ:「真っ白な、にぎりめし。・・・食べたいね。」 さくら:「はははは。真っ白は無理だよ。見たことないもん。」 うめ:「いつか・・・食べれるかな。」 さくら:「あたしも食べたいな・・・」 : 0:(鳴りやまない爆撃音と大きな空襲警報が遠くで聞こえる) 0:(緊迫感を出して慌ててください) : さくら:「えぇ、何?空襲?」 うめ:「いつもと様子が違う」 さくら:「母さんは?」 うめ:「外に出ちゃダメ!家に居な!」 さくら:「この音、変だよ!」 うめ:「分かってる!大声もダメ!」 さくら:「でも!おかしい!こんな音!地面も揺れてるっ!」 うめ:「何が起こったの?空襲警報と爆撃の音が一緒だった!」 さくら:「こっちまで爆弾が来たって事?」 うめ:「私だって分かんないよ!」 さくら:「まだ続いてる、この音!」 : うめ:約300機のB29爆撃機が うめ:東京上空に飛来した : さくら:約2時間で33万発以上の さくら:焼夷弾(しょういだん)が投下された : うめ:東京大空襲の夜だった : 0:(場面転換) 0:(現代に戻ります) : さくら:「・・・おばあちゃんはその時東京にいたの?」 うめ:「いたよ。でも生きてるだろ? うめ:私はね、空が赤く光っても火を消し続けたのよ。 うめ:夜は真っ暗で何も見えないはずなんだけど、その日の夜は見えたのよ。 うめ:ぐちゃぐちゃになった家と真っ赤な炎がそこら中に。 うめ:ここは危ないからって、ボロボロの布団を井戸の水に浸して、それをかぶって走ったわ。 うめ:重いけど熱くはなかった。もちろん、妹と母さんも一緒にね。」 さくら:「・・・・・」 うめ:「あら、ちょっと怖い話になっちゃったかしら。」 さくら:「違うの!想像しちゃって、心が痛くなったの。」 うめ:「あらあら、さくらは優しいね。」 さくら:「・・・・・おばあちゃん、わたし・・・」 うめ:「おや、さくら、大丈夫かい?おばあちゃんはいるだろう?」 さくら:「・・・うん。」 うめ:「今思い返してみるとね、その日いちにち“生きてる”と、それだけで良かったのよ。 うめ:あんな辛い思いは、私の子どもたちにさせちゃいかんね。 うめ:さくら・・・あんたは好きなことを好きなようにしなさいね。」 さくら:「・・・・・」 うめ:「食べ物も飲み物も、着るものも、家が無くなっても命は繋がったの。 うめ:もちろん、私と仲良くしていた友達の中には亡くなった子もいるわ。 うめ:先生だってね。近所の元気だったおじさんとか うめ:いつも干し大根くれた、隣のおばさんも見なくなったわ。 うめ:“オ国ノ為二名誉ナ戦死”って今でも覚えているわよ。」 さくら:「お国の為・・・」 うめ:「そうよ、その時はそれが当たり前だったの。学校で習ったものよ。」 さくら:「・・・」 うめ:「おやおや、そう言えば、戦争の事を聞いてきなさいって学校で言われたんでしょう?・・・ちゃんと書けそうかい?」 さくら:「・・・頑張る、あばあちゃん、ありがとう。」 : 0:(場面転換) 0:(昭和20年8月) : うめ:晴天の日に外で玉音放送を聞いた さくら:焼野原のガレキの上でうめねぇと聞いた : うめ:泣き崩れる者や、時が止まって見えた者もいた さくら:離れることを忘れたかのように両手を合わせた : うめ:「死にたくない」 : さくら:「死にたくない」 : うめ:今まで怖くて口に出せなかった言葉が うめ:湯水のように溢れて止まらなかった : さくら:もう爆弾は降ってこないよね さくら:もう空襲警報はならないよね : うめ:真っ白な、にぎりめしが うめ:お腹いっぱい食べたいな : :(おしまい) 0:私の夏空~平和を永久に~ 0:作 桜美さくら