台本概要
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タイトル | ダイヤモンドハート【宝石シリーズ】 |
---|---|
作者名 | うどんマン (@hello_udon_don) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 5人用台本(男2、女3) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
君の心はダイヤモンド。誰よりもあたたかくて強い 私の心はガラス。他人の評価を気にして少しでも傷つかないようにひっそりと生きている 博士は何かを隠している 161 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アリサ | 女 | 110 | 天真爛漫。元気いっぱいの家政婦 |
ジョセフ | 男 | 93 | 博士。気難しい性格 |
婦人 | 女 | 36 | ジョセフの奥さん |
子供A | 男 | 40 | 孤児院の子供。 |
子供B | 女 | 33 | 孤児院の子供。*作中に出てくる【ロボ】をすべて兼ねる |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:20年前
婦人:もー…、また散らかしてる
ジョセフ:終わったら片づけるよ
婦人:そう言って片づけたことなんてあったかしら?
ジョセフ:まあまあ
婦人:とりあえず休憩しましょ?ずっと研究室にこもってるのは体に良くないわ?はい、紅茶
ジョセフ:ありがとう
婦人:それと私の手作りチョコクッキー!
ジョセフ:君は料理が好きだな
婦人:うふふ、楽しいわよ。食べてくれる人の幸せそうな顔を思い浮かべながら作るの
ジョセフ:そうか
婦人:愛する人の幸せそうな顔をね
ジョセフ:よせ恥ずかしい
婦人:何恥ずかしがってるの、変わり者で有名な博士さん?
ジョセフ:はいはい。…うん、クッキー美味いよ
婦人:良かった!
0:
0:
ジョセフ:君の心はダイヤモンド。誰よりもあたたかくて強い
ジョセフ:私の心はガラス。他人の評価を気にして少しでも傷つかないようにひっそりと生きている
0:
ジョセフ:私が、私が悪かった…
ジョセフ:頼む、帰ってきてくれ
0:
0:
---------------------------------------------
0:空き地
0:アリサが子供たちにマジックを披露している
アリサ:このカードをよーく覚えててね!
子供A:覚えたよー!
アリサ:そしたら山札の中に入れてシャッフル!
子供B:シャッフルシャッフル!
アリサ:これでさっきのカードがどこに行ったのか、誰にもわかりません
子供A:うんわかんない!
アリサ:だけど、君たちの心に聞けばカードが何だったのかわかる!私の透視能力で…
子供A:えー!
子供B:覗かないでーー!
アリサ:フフフ。もう遅いわよ!
0:山札の一番上のカードを子供たちに見せるアリサ
アリサ:これでしょ?
0:
子供A:え
子供B:…違うよ?
子供A:俺たちが見たのは…
アリサ:ちっちっち。カードをよーく見て?
子供A:え?
子供B:「ポケットの中を探せ」って書いてある!
0:子供たちがポケットに手を入れると
子供A:あった!これだ!
子供B:ハートのエース!
子供A:すげーー!!
アリサ:はい、今日のアリサのマジックショーはここでおしまい。ありがとうございました~
0:
0:
------------------------------------
0:ジョセフのお屋敷
アリサ:今日も子供たち大喜びだったよ!
ジョセフ:そうか
アリサ:ありがとね、ロボットくん
瞬間移動ロボ:ドウ、イタシマシテ、ナノダ
アリサ:博士の発明品、学会に出せば一躍有名になれるのに
ジョセフ:そのつもりはない
アリサ:もったいないの
ジョセフ:私の発明は世界を変えてしまう。使い方を間違えれば大変なことになるからな
アリサ:でも、生活が豊かになるのはいいことでしょ?
ジョセフ:お前がマジックショーに使う分には問題ないが…
アリサ:明日はどんな魔法を見せようかしら
ジョセフ:こいつを貸してやる。使い方には気を付けろよ
アリサ:どうも。はい、夕飯
ジョセフ:ありがとう
アリサ:お礼ならこの子に言って?ほとんど作ってくれたから
マジックハンドロボ:スベテ、ワタシガ、ツクリマシタ、ノダ
ジョセフ:…スベテと言っているが?
アリサ:あはは
ジョセフ:手抜き料理か
アリサ:ま、まあね
マジックハンドロボ:ワタシノテガ、クワワッテイマス
ジョセフ:悪かった
マジックハンドロボ:タクサン、アイジョウ、コメマシタ、ノダ
アリサ:素敵。ロボットが愛情を込めてつくるなんて
ジョセフ:…
アリサ:こんな素敵なもの作っちゃうんだから、やっぱり博士は凄いよ!
ジョセフ:…冷めないうちに食べるぞ
アリサ:あー照れてるー!
0:
0:
アリサ:(日記)今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。みんな目を輝かせて、目の前で起こる素敵な魔法に興味津津です
アリサ:(日記)博士の発明品、瞬間移動ロボ。この子に何かを入れると、入れたものが任意の場所に瞬間移動します
アリサ:(日記)私はこっそりとトランプのカードを入れて、1人の子のポケットに瞬間移動させました
アリサ:(日記)こんな凄いものが世に出てしまったら、博士の言う通り世界は変わってしまうのかもしれません
----------------------------------
0:空き地
アリサ:今日は素敵な音のマジックです!
子供B:わーーい!
アリサ:私が指を鳴らすと君たちから音が鳴り始めます!
子供A:えーー!
子供B:怖ぁぁい!
アリサ:ダイジョブダイジョブ!いっくよ!それ!
0:パチン
子供A:(お腹の音)ぐ~!
子供B:あははははは!
アリサ:笑ってるあなたも!それ!
0:パチン
子供B:(お腹の音)ぐ~!
子供たち:あははははは!
アリサ:どう?凄いでしょ
子供B:すごいすごい!
子供A:昨日に比べたらショボいけどな!
アリサ:だって貸してくれたのがこれだったから…
子供B:え?
アリサ:ううん、何でもない!それ!
子供A:(お腹の音)ぐ~!
子供B:(お腹の音)ぐ~!
子供たち:あははははは!
子供A:楽しい~!
子供B:ねぇねぇ、アリサちゃんにも秘密基地教えてあげようよ!
子供A:お、そうだな!
アリサ:秘密基地?
子供B:山の中で見つけたの!
アリサ:楽しそう!
子供A:行こうぜ!
0:
0:
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0:ジョセフの研究室
0:ジョセフは日記を読んでいる
ジョセフ:(日記)今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。今日は素敵な音のマジック!
ジョセフ:(日記)博士の発明品、腹鳴りロボ。この子のボタンを押すと、任意の相手のお腹を鳴らすことができます
ジョセフ:(日記)私は左手にボタンを持ち、右手で指を鳴らしました。ぐ~って
ジョセフ:(日記)正直なんでこんなロボを作ったのかは不明です。でも、みんなで大笑いして楽しかったです。やっぱり博士の発明は凄いな
0:日記を閉じる
ジョセフ:アリサ…いつまでも、変わらないでいてくれ…
0:
0:
0:20年前
婦人:ふんふふんふーん
ジョセフ:今日の夕飯は何だ?
婦人:ポトフよ
ジョセフ:美味そうだな
婦人:あなたの発明品のおかげ!味もなかなか悪くないし、お料理の手間も減ったわ!
包丁メトロノームロボ:トントントントン、キリマス、ノダ
鮮度保つロボ:ズット、シンセン、ナノダ
涙代行ロボ:タマネギノ、シゲキハ、ワタシガカワリニ、ウケオウ、ウエーン
ジョセフ:君の負担が減らせているようで良かった
婦人:ありがとね、博士!
ジョセフ:はいはい
婦人:ほんと照れ屋さんなんだから
ジョセフ:冷める前に食べるぞ
婦人:はーい!
ジョセフ:美味い美味い
婦人:…手がいっぱいあったら家事ももっと楽になりそうよね~
ジョセフ:なんだ突然
婦人:博士の発明は本当にすごいわ!
ジョセフ:な、何が言いたい…?
婦人:そんなロボット作れない?
ジョセフ:調子に乗るなっ!
婦人:ええ~?お願いっ
ジョセフ:いっぱい作ってやっただろ
婦人:そうだけど…
ジョセフ:私は今の研究で忙しいんだ。家事代行ロボはひと段落ついたらな
婦人:やったー!博士だーいすき!
ジョセフ:よせって言ってるだろ
婦人:うふふ
0:
0:
-------------------------------------
0:森の中
子供B:こっちだよ!
アリサ:随分奥まで来たけど、大丈夫、、、?
子供A:もしかしてアリサちゃんビビってるの??
アリサ:ビ、ビビってねぇし、平気だし
0:バサバサッ
アリサ:きゃあ!
子供A:ビビってんじゃん
アリサ:なんか暗いし寒いし怖いしお腹すいてきた!!
子供A:子供じゃん
アリサ:まだ着かないの?
子供B:ふっふっふ。ここだよ!
0:森の奥
0:茂みに隠れてよく見えないが、一つだけ大きな箱が見えた
子供A:ほら、この箱!ちょうどいい大きさでしょ!隠れんぼスペースなんだ!
子供B:あ、ずるい!私にも入らせて!
子供A:いっぱい飾って秘密基地にしようぜ!
アリサ:ちょ、ちょっと…
子供A:なに?
アリサ:それ棺桶よね…?
アリサ:ここ、墓地じゃない…?
子供A:墓地って?
アリサ:おはか。死んじゃった人が眠る場所
子供A:えー?
子供B:なにそれ怖い!!!
アリサ:なんでこんなとこに…
子供A:墓地なら帰る!
子供B:お化けとかでないよね??
アリサ:脅かさないでよ!早く帰りましょ!!
子供A:うん!
0:
0:
--------------------------------
0:ジョセフのお屋敷
アリサ:…でね、子供たちが棺桶に入って遊び始めるから私ヤバいって思って、それで…!
ジョセフ:森の中に墓地なんていくらでもあるだろ
アリサ:ないよ!
ジョセフ:怖かったんだな。よしよし
アリサ:…
ジョセフ:…もうそんなところには近づくなよ
アリサ:子供たちには行かないよう注意したからたぶん大丈夫だけど…
ジョセフ:どうした?
アリサ:中に入れたんだよ
ジョセフ:…?
アリサ:中が空っぽだったの、その棺桶…
ジョセフ:…
アリサ:それって…
ジョセフ:よしよし怖かったな。今日はもう寝なさい
アリサ:うん、そうする。日記書いたら今日は…
ジョセフ:アリサ
アリサ:ん?
0:ピーーーーーーーーーーーーーー
アリサ:え、なに?よく聞こえない…
ジョセフ:嫌なことは忘れよう。それが一番だ
アリサ:…
アリサ:はい
0:アリサは自分の部屋へ
ジョセフ:…おやすみ、アリサ
0:
0:
------------------------------
アリサ:(日記)今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。今日は素敵な音のマジック!
アリサ:(日記)博士の発明品、腹鳴りロボ。この子のボタンを押すと、任意の相手のお腹を鳴らすことができます
アリサ:(日記)私は左手にボタンを持ち、右手でパチンと指を鳴らしました
アリサ:(日記)正直なんでこんなロボを作ったのかは不明です。でも、みんなで大笑いして楽しかったです。やっぱり博士の発明は凄いな
アリサ:よし!今日もいい一日だったなぁ
アリサ:おやすみなさい…
0:
0:
--------------------------------
0:空き地
0:孤児院の子供たちがキャッチボールをして遊んでいる
子供A:そーれ!
子供B:えいー!
子供A:やー!
子供B:トゥワ!
子供A:トゥワ!
子供B:トゥワ!
子供A:はーー。(ため息)
子供B:はーー。(ため息)
子供A:つまんない
子供B:つまんないよーーーー!
アリサ:どうしたの?
子供A:キャッチボールつまんねぇぞ!
子供B:私たちお暇なの
アリサ:キャッチボールは楽しいでしょ
子供A:楽しくないよーだ
子供B:秘密基地にも行けなくなっちゃったし
アリサ:秘密基地って?
子供B:え?
子供A:昨日一緒に行ったじゃん!
アリサ:行ってないよ!なにそれ、私にも教えてっ!
子供A:うわ、アリサちゃん…
子供B:怖すぎて全部忘れちゃったんだ…!
アリサ:…?
子供A:なぁ、またマジック見せてくれよ!
子供B:アリサちゃんのマジックショー、大好きなの!
アリサ:うーん、しょうがないなぁ!
0:
アリサ:ここに取り出しますのは何の変哲もないスプレー缶
アリサ:このスプレーをシューっと、ボールにふりかけると…?
0:ひとりでにふるえ始めるボール
子供A:うわぁ!
子供B:すごいすごーい!
アリサ:ボールが勝手に動き始めるのです!
子供A:ブルブルしてる!
子供B:可愛い!
アリサ:今日はこんなところかな!
子供A:ありがとな!
子供B:アリサちゃんは「楽しい」の天才だ!
アリサ:それほどでも~
子供A:今日は午後からお勉強会があるからもう帰るぞっ!
子供B:またねぇ~!
アリサ:うん!次は秘密基地教えてね~!
子供A:えぇ?
0:
0:
----------------------------------
0:ジョセフのお屋敷
アリサ:ただいま~、博士いる~?
アリサ:スプレーの威力抜群だったよ!あれ、お礼言おうと思ったんだけど
アリサ:研究室に閉じこもってんのかな
0:研究室前
アリサ:博士~?
0:
アリサ:…扉あいてる
アリサ:入るよー?
0:机の上に日記がおいてある
アリサ:わお!お宝発見!
アリサ:意外だな~、お風呂の時間もケチって研究するような人なのに、まさか日記を書いてるなんて
アリサ:博士にしては随分可愛らしい日記帳だけど…
0:右見て左見て
アリサ:…うーん気になる
アリサ:あの無口で不愛想な博士が何を書き記しているのかとても気になる
アリサ:…ちょっとだけ
アリサ:あーダメ!いったん冷静になろう。勝手に人の日記を見るなんて最低だよ…!
アリサ:…
アリサ:そう、ダメなことだよ…
アリサ:…
アリサ:…っ!やめなさい右手!くっ、手が勝手に!
アリサ:…ちょっとだけ、ほんとちょっとだけ!
アリサ:博士ごめんなさい!
0:パラパラ
------------------------------
アリサ:うふふ
アリサ:「今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。みんな目を輝かせて、目の前で起こる素敵な魔法に興味津津です」
アリサ:あれ…?
アリサ:これ私が書いた日記よね
アリサ:でも私のは自分の部屋にあるし…
アリサ:「博士の発明品、腹鳴りロボ。この子のボタンを押すと…」
アリサ:これは昨日の内容だな…
アリサ:「今日は振動のマジック」
アリサ:「博士の発明品、初期微動スプレー。スプレーをふきかけられたものは小刻みに震え始めます。博士は楽しいものをつくる天才です…」
アリサ:…これは今日の出来事だけど
アリサ:私、まだ日記書いてない…
アリサ:…つづきがある
アリサ:…あれ…知らないマジックだ
アリサ:明日の日付…?どうして明日のことが日記に…?一ページ目の名前は
アリサ:アリサ…
0:
アリサ:アリサ!?
0:バタン(扉の閉まる音)
ジョセフ:私の研究室には入らないようにと言ってあったはずだが
アリサ:博士!
ジョセフ:返しなさい。それはとても大事なものなんだ
アリサ:この日記…。私の出来事が…
ジョセフ:君のじゃないよ
アリサ:え、でも、同じ名前、同じ筆跡、同じ出来事…
ジョセフ:返しなさいアリサ
アリサ:…っ!やめて!何か知ってるなら教えてよ!
ジョセフ:君は知らなくていい
アリサ:同じなんだもん!私に関係あることでしょ!教えてよ!
ジョセフ:抵抗するなら容赦しないぞ
アリサ:何する気!?
ジョセフ:嫌なことは忘れるのが一番だ
ジョセフ:いや違うな
ジョセフ:初めから無かったことにする、といった方が正しいか
アリサ:全然わかんないよ!
ジョセフ:わからなくていい。そう出来ているのだから
アリサ:博士、顔が怖いよ
0:
ジョセフ:(ため息)
ジョセフ:どうせ記憶を消すんだ。いいだろう、教えてやる
0:研究室のわきにある大型瞬間移動ロボへ向かう博士
ジョセフ:君も入りなさい
アリサ:…博士、怖いよ
0:博士につられてアリサも中へ
0:びゅーーーーーん
0:
0:
----------------------------------
アリサ:ここは…?
ジョセフ:墓地だよ
アリサ:なんだか暗いし寒いし怖いところね
ジョセフ:昨日来ただろ
アリサ:え?
ジョセフ:ああ、私が消したから覚えているはずもないか
アリサ:あの箱は?
ジョセフ:棺桶だよ
アリサ:棺桶…!?
ジョセフ:アリサ、私に婚約者がいたことは君も知っているね?
アリサ:え、ええ。とても明るくてエネルギーのある人だったと
ジョセフ:そう。彼女は誰よりも優しくて、誰よりも厳しくて、誰よりもエネルギーのある人間だったんだ
ジョセフ:今はあの棺桶の中で眠っている。そう、眠っていた
アリサ:…?
ジョセフ:どうして死んでしまったのか。それは私が殺したからだ
アリサ:え…?
ジョセフ:私が彼女を殺したんだ
アリサ:…っ!
0:棺桶に近づき手を合わせる博士
ジョセフ:生き返らせるために殺したんだよ
0:そのときアリサの脳内に知らない物語が流れ始める
0:
0:
-----------------------------------
0:20年前
婦人:ジョン(ペットの犬)!ジョン!!
ジョセフ:ジョンがどうかしたのか!?
婦人:朝から苦しそうで、ろくにご飯も食べないのよ!病院へ連れていこうとしたらいきなり血を吐いてしまって…!
ジョセフ:医者に来てもらおう!私が連絡する!
婦人:ジョン!!ジョン!!!!
ジョセフ:(電話)…一時間だと、ふざけるな!!そんなに待てるわけがないだろ!!!
婦人:お医者さんはなんて?
ジョセフ:患者が多く時間がかかるそうだ
婦人:ジョン…!!!!!
0:
0:一時間たった頃には、ジョンの息はなかった
婦人:…
ジョセフ:ジョンのお供えを買ってくる
婦人:…そうだ
ジョセフ:は?
婦人:なおして?
ジョセフ:え?
婦人:いつもの魔法でジョンをなおして?ほら、生き返らせてよ
ジョセフ:何を言ってる。死んだものは生き返らない
婦人:ひどいこと言うのね
ジョセフ:…
婦人:博士の発明は世界一でしょ?何だってできるじゃない
婦人:お願い、生き返らせてよ
ジョセフ:それは…
婦人:お願い、ねぇお願い!!
ジョセフ:できない
婦人:どうして!!!!!!!!
婦人:いやよ、ジョン!ジョン!!!!!!
ジョセフ:(M)こんなにも取り乱した彼女を見るのは初めてで、正直驚いてしまった
ジョセフ:(M)私は適当に言葉を濁してジョンのお供えを買いに出かけた
0:
ジョセフ:(M)私が帰ると血まみれになった彼女がいて
ジョセフ:(M)ふるえながら私に言った
婦人:血が、とまらないの…
婦人:なおらないの…
婦人:ジョンが生き返らないの…!
ジョセフ:(M)床には研究室にある備品やら工具やらが散らばっていた
ジョセフ:(M)彼女の腕の中には、もはや元型すらとどめないジョンの姿が
0:
婦人:私がジョンみたいになったら、博士はちゃんとなおしてくれる…?
ジョセフ:ア、アリサ…
ジョセフ:(M)私の好きだった彼女はもういなかった
0:
0:
-----------------------------------
アリサ:い、今のは…
ジョセフ:…?
アリサ:博士と…
0:見上げると棺桶に記された名前が見えた
アリサ:ア…リサ…?
アリサ:アリサ!?
ジョセフ:…
アリサ:私と同じ名前
ジョセフ:当たり前だ。君なんだから
アリサ:…っ!
ジョセフ:君だよ、アリサ
ジョセフ:まだ完璧ではないけれど、私は、君を生き返らせることに成功した!
アリサ:ちょっと待って!
ジョセフ:20年。本当に長かったよ。君の最後のお願いを叶えたくて…
アリサ:最後のお願い…?
ジョセフ:誰よりも人間の心を持っていたあの頃の君に戻すために!
アリサ:…!
ジョセフ:ロボットはいいぞ?壊れたら私がなおしてやれる!
アリサ:そんなの知らない!博士の記憶をおしつけないで!
ジョセフ:何も鉄でできたロボットなんかじゃない!ちゃんと肌も移植して、君が君でいられるように…
アリサ:私は人間よ!!
0:勢い良く棺桶を開けるアリサ
アリサ:なんで空っぽなのよ
アリサ:(M)棺桶の中は綺麗だった。中身の瞬間移動を疑うくらいに
アリサ:ああ…ああ…
アリサ:でも…!
アリサ:私には感情がある!もしロボットならこんな気持ちにはなれないんじゃ…!
ジョセフ:私が感情をプログラムしたんだ
アリサ:う、嘘よっ…!
アリサ:(M)小刻みに震える体をなんとかして抑えようとする
アリサ:とまれ、とまれ!!!!!
アリサ:(M)昼間見たボールのように小刻みに震える体
アリサ:(M)メトロノームのように脈うつ鼓動
アリサ:(M)鮮度のいい肌からは血の気が引いていき
アリサ:(M)二本しかない手が無数にあるような感覚だ
アリサ:(M)そして、お腹はぐーっと鳴る
アリサ:(M)もう何が何だかわからない
アリサ:(M)目から玉ねぎを切った時の涙が溢れてきた
0:
アリサ:私は、私は…
0:
アリサ:博士と同じ人間よ!!!!!
0:アリサから警告音が鳴り始める
アリサ:オーバーヒート、制御不能、制御不能
ジョセフ:まずい、暴走か!
0:アリサは近くの枝を拾うと、博士に向かって突進していく
ジョセフ:やめろ!!!
アリサ:面白いから笑うの!
アリサ:許せないから怒るの!
アリサ:悲しいから泣くの!!!!
アリサ:全部、私の意志よ!仕組まれてなんかない!
アリサ:この気持ちがプログラムな訳ない!!!
アリサ:制御不能、制御不能、至急停止シテクダサイ
0:
ジョセフ:よ、よせ!こっちにくるな!この…
ジョセフ:「ロボットが!!!」
アリサ:…っ!
---------------------------
0:
0:
0:
0:
0:
0:
0:
アリサ:(M)私が、今、一番聞きたくなかった言葉だった
アリサ:(M)博士が私を見て怯えている
アリサ:(M)悲しい、苦しい
アリサ:(M)確かにそう思った
アリサ:(M)この感情は…「ワタシノモノ」でいいよね…?
0:
0:
アリサ:(M)パリン
0:
0:
アリサ:(M)心の中で
アリサ:(M)何かが
アリサ:(M)割れたような音がした
0:
アリサ:(M)そこからの記憶はありません
0:
0:
0:
ジョセフ:…いったい何度目だ
ジョセフ:私の研究はいつになれば成功するんだ
ジョセフ:いつになれば、大好きだった君は帰ってくるんだ
0:
婦人の声:あなたも…
ジョセフ:え…
婦人の声:あなたも変わってしまったのね
ジョセフ:アリサ…!
ジョセフ:(M)アリサの心臓部分から声が聞こえたような気がした
ジョセフ:(M)私はアリサの心臓から粉々になったダイヤモンドを取り出すと、そっと棺桶の中へ入れ燃やした
ジョセフ:君の心はダイヤモンドではなかったのかい…?
ジョセフ:これから私は…どう償って生きていけばいいんだ…
ジョセフ:…アリサ…アリサ!!!
0:泣き崩れる博士
婦人の声:…人間らしく生きて
婦人の声:それが私の最後のお願いよ
0:20年前
婦人:もー…、また散らかしてる
ジョセフ:終わったら片づけるよ
婦人:そう言って片づけたことなんてあったかしら?
ジョセフ:まあまあ
婦人:とりあえず休憩しましょ?ずっと研究室にこもってるのは体に良くないわ?はい、紅茶
ジョセフ:ありがとう
婦人:それと私の手作りチョコクッキー!
ジョセフ:君は料理が好きだな
婦人:うふふ、楽しいわよ。食べてくれる人の幸せそうな顔を思い浮かべながら作るの
ジョセフ:そうか
婦人:愛する人の幸せそうな顔をね
ジョセフ:よせ恥ずかしい
婦人:何恥ずかしがってるの、変わり者で有名な博士さん?
ジョセフ:はいはい。…うん、クッキー美味いよ
婦人:良かった!
0:
0:
ジョセフ:君の心はダイヤモンド。誰よりもあたたかくて強い
ジョセフ:私の心はガラス。他人の評価を気にして少しでも傷つかないようにひっそりと生きている
0:
ジョセフ:私が、私が悪かった…
ジョセフ:頼む、帰ってきてくれ
0:
0:
---------------------------------------------
0:空き地
0:アリサが子供たちにマジックを披露している
アリサ:このカードをよーく覚えててね!
子供A:覚えたよー!
アリサ:そしたら山札の中に入れてシャッフル!
子供B:シャッフルシャッフル!
アリサ:これでさっきのカードがどこに行ったのか、誰にもわかりません
子供A:うんわかんない!
アリサ:だけど、君たちの心に聞けばカードが何だったのかわかる!私の透視能力で…
子供A:えー!
子供B:覗かないでーー!
アリサ:フフフ。もう遅いわよ!
0:山札の一番上のカードを子供たちに見せるアリサ
アリサ:これでしょ?
0:
子供A:え
子供B:…違うよ?
子供A:俺たちが見たのは…
アリサ:ちっちっち。カードをよーく見て?
子供A:え?
子供B:「ポケットの中を探せ」って書いてある!
0:子供たちがポケットに手を入れると
子供A:あった!これだ!
子供B:ハートのエース!
子供A:すげーー!!
アリサ:はい、今日のアリサのマジックショーはここでおしまい。ありがとうございました~
0:
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0:ジョセフのお屋敷
アリサ:今日も子供たち大喜びだったよ!
ジョセフ:そうか
アリサ:ありがとね、ロボットくん
瞬間移動ロボ:ドウ、イタシマシテ、ナノダ
アリサ:博士の発明品、学会に出せば一躍有名になれるのに
ジョセフ:そのつもりはない
アリサ:もったいないの
ジョセフ:私の発明は世界を変えてしまう。使い方を間違えれば大変なことになるからな
アリサ:でも、生活が豊かになるのはいいことでしょ?
ジョセフ:お前がマジックショーに使う分には問題ないが…
アリサ:明日はどんな魔法を見せようかしら
ジョセフ:こいつを貸してやる。使い方には気を付けろよ
アリサ:どうも。はい、夕飯
ジョセフ:ありがとう
アリサ:お礼ならこの子に言って?ほとんど作ってくれたから
マジックハンドロボ:スベテ、ワタシガ、ツクリマシタ、ノダ
ジョセフ:…スベテと言っているが?
アリサ:あはは
ジョセフ:手抜き料理か
アリサ:ま、まあね
マジックハンドロボ:ワタシノテガ、クワワッテイマス
ジョセフ:悪かった
マジックハンドロボ:タクサン、アイジョウ、コメマシタ、ノダ
アリサ:素敵。ロボットが愛情を込めてつくるなんて
ジョセフ:…
アリサ:こんな素敵なもの作っちゃうんだから、やっぱり博士は凄いよ!
ジョセフ:…冷めないうちに食べるぞ
アリサ:あー照れてるー!
0:
0:
アリサ:(日記)今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。みんな目を輝かせて、目の前で起こる素敵な魔法に興味津津です
アリサ:(日記)博士の発明品、瞬間移動ロボ。この子に何かを入れると、入れたものが任意の場所に瞬間移動します
アリサ:(日記)私はこっそりとトランプのカードを入れて、1人の子のポケットに瞬間移動させました
アリサ:(日記)こんな凄いものが世に出てしまったら、博士の言う通り世界は変わってしまうのかもしれません
----------------------------------
0:空き地
アリサ:今日は素敵な音のマジックです!
子供B:わーーい!
アリサ:私が指を鳴らすと君たちから音が鳴り始めます!
子供A:えーー!
子供B:怖ぁぁい!
アリサ:ダイジョブダイジョブ!いっくよ!それ!
0:パチン
子供A:(お腹の音)ぐ~!
子供B:あははははは!
アリサ:笑ってるあなたも!それ!
0:パチン
子供B:(お腹の音)ぐ~!
子供たち:あははははは!
アリサ:どう?凄いでしょ
子供B:すごいすごい!
子供A:昨日に比べたらショボいけどな!
アリサ:だって貸してくれたのがこれだったから…
子供B:え?
アリサ:ううん、何でもない!それ!
子供A:(お腹の音)ぐ~!
子供B:(お腹の音)ぐ~!
子供たち:あははははは!
子供A:楽しい~!
子供B:ねぇねぇ、アリサちゃんにも秘密基地教えてあげようよ!
子供A:お、そうだな!
アリサ:秘密基地?
子供B:山の中で見つけたの!
アリサ:楽しそう!
子供A:行こうぜ!
0:
0:
------------------------------------
0:ジョセフの研究室
0:ジョセフは日記を読んでいる
ジョセフ:(日記)今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。今日は素敵な音のマジック!
ジョセフ:(日記)博士の発明品、腹鳴りロボ。この子のボタンを押すと、任意の相手のお腹を鳴らすことができます
ジョセフ:(日記)私は左手にボタンを持ち、右手で指を鳴らしました。ぐ~って
ジョセフ:(日記)正直なんでこんなロボを作ったのかは不明です。でも、みんなで大笑いして楽しかったです。やっぱり博士の発明は凄いな
0:日記を閉じる
ジョセフ:アリサ…いつまでも、変わらないでいてくれ…
0:
0:
0:20年前
婦人:ふんふふんふーん
ジョセフ:今日の夕飯は何だ?
婦人:ポトフよ
ジョセフ:美味そうだな
婦人:あなたの発明品のおかげ!味もなかなか悪くないし、お料理の手間も減ったわ!
包丁メトロノームロボ:トントントントン、キリマス、ノダ
鮮度保つロボ:ズット、シンセン、ナノダ
涙代行ロボ:タマネギノ、シゲキハ、ワタシガカワリニ、ウケオウ、ウエーン
ジョセフ:君の負担が減らせているようで良かった
婦人:ありがとね、博士!
ジョセフ:はいはい
婦人:ほんと照れ屋さんなんだから
ジョセフ:冷める前に食べるぞ
婦人:はーい!
ジョセフ:美味い美味い
婦人:…手がいっぱいあったら家事ももっと楽になりそうよね~
ジョセフ:なんだ突然
婦人:博士の発明は本当にすごいわ!
ジョセフ:な、何が言いたい…?
婦人:そんなロボット作れない?
ジョセフ:調子に乗るなっ!
婦人:ええ~?お願いっ
ジョセフ:いっぱい作ってやっただろ
婦人:そうだけど…
ジョセフ:私は今の研究で忙しいんだ。家事代行ロボはひと段落ついたらな
婦人:やったー!博士だーいすき!
ジョセフ:よせって言ってるだろ
婦人:うふふ
0:
0:
-------------------------------------
0:森の中
子供B:こっちだよ!
アリサ:随分奥まで来たけど、大丈夫、、、?
子供A:もしかしてアリサちゃんビビってるの??
アリサ:ビ、ビビってねぇし、平気だし
0:バサバサッ
アリサ:きゃあ!
子供A:ビビってんじゃん
アリサ:なんか暗いし寒いし怖いしお腹すいてきた!!
子供A:子供じゃん
アリサ:まだ着かないの?
子供B:ふっふっふ。ここだよ!
0:森の奥
0:茂みに隠れてよく見えないが、一つだけ大きな箱が見えた
子供A:ほら、この箱!ちょうどいい大きさでしょ!隠れんぼスペースなんだ!
子供B:あ、ずるい!私にも入らせて!
子供A:いっぱい飾って秘密基地にしようぜ!
アリサ:ちょ、ちょっと…
子供A:なに?
アリサ:それ棺桶よね…?
アリサ:ここ、墓地じゃない…?
子供A:墓地って?
アリサ:おはか。死んじゃった人が眠る場所
子供A:えー?
子供B:なにそれ怖い!!!
アリサ:なんでこんなとこに…
子供A:墓地なら帰る!
子供B:お化けとかでないよね??
アリサ:脅かさないでよ!早く帰りましょ!!
子供A:うん!
0:
0:
--------------------------------
0:ジョセフのお屋敷
アリサ:…でね、子供たちが棺桶に入って遊び始めるから私ヤバいって思って、それで…!
ジョセフ:森の中に墓地なんていくらでもあるだろ
アリサ:ないよ!
ジョセフ:怖かったんだな。よしよし
アリサ:…
ジョセフ:…もうそんなところには近づくなよ
アリサ:子供たちには行かないよう注意したからたぶん大丈夫だけど…
ジョセフ:どうした?
アリサ:中に入れたんだよ
ジョセフ:…?
アリサ:中が空っぽだったの、その棺桶…
ジョセフ:…
アリサ:それって…
ジョセフ:よしよし怖かったな。今日はもう寝なさい
アリサ:うん、そうする。日記書いたら今日は…
ジョセフ:アリサ
アリサ:ん?
0:ピーーーーーーーーーーーーーー
アリサ:え、なに?よく聞こえない…
ジョセフ:嫌なことは忘れよう。それが一番だ
アリサ:…
アリサ:はい
0:アリサは自分の部屋へ
ジョセフ:…おやすみ、アリサ
0:
0:
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アリサ:(日記)今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。今日は素敵な音のマジック!
アリサ:(日記)博士の発明品、腹鳴りロボ。この子のボタンを押すと、任意の相手のお腹を鳴らすことができます
アリサ:(日記)私は左手にボタンを持ち、右手でパチンと指を鳴らしました
アリサ:(日記)正直なんでこんなロボを作ったのかは不明です。でも、みんなで大笑いして楽しかったです。やっぱり博士の発明は凄いな
アリサ:よし!今日もいい一日だったなぁ
アリサ:おやすみなさい…
0:
0:
--------------------------------
0:空き地
0:孤児院の子供たちがキャッチボールをして遊んでいる
子供A:そーれ!
子供B:えいー!
子供A:やー!
子供B:トゥワ!
子供A:トゥワ!
子供B:トゥワ!
子供A:はーー。(ため息)
子供B:はーー。(ため息)
子供A:つまんない
子供B:つまんないよーーーー!
アリサ:どうしたの?
子供A:キャッチボールつまんねぇぞ!
子供B:私たちお暇なの
アリサ:キャッチボールは楽しいでしょ
子供A:楽しくないよーだ
子供B:秘密基地にも行けなくなっちゃったし
アリサ:秘密基地って?
子供B:え?
子供A:昨日一緒に行ったじゃん!
アリサ:行ってないよ!なにそれ、私にも教えてっ!
子供A:うわ、アリサちゃん…
子供B:怖すぎて全部忘れちゃったんだ…!
アリサ:…?
子供A:なぁ、またマジック見せてくれよ!
子供B:アリサちゃんのマジックショー、大好きなの!
アリサ:うーん、しょうがないなぁ!
0:
アリサ:ここに取り出しますのは何の変哲もないスプレー缶
アリサ:このスプレーをシューっと、ボールにふりかけると…?
0:ひとりでにふるえ始めるボール
子供A:うわぁ!
子供B:すごいすごーい!
アリサ:ボールが勝手に動き始めるのです!
子供A:ブルブルしてる!
子供B:可愛い!
アリサ:今日はこんなところかな!
子供A:ありがとな!
子供B:アリサちゃんは「楽しい」の天才だ!
アリサ:それほどでも~
子供A:今日は午後からお勉強会があるからもう帰るぞっ!
子供B:またねぇ~!
アリサ:うん!次は秘密基地教えてね~!
子供A:えぇ?
0:
0:
----------------------------------
0:ジョセフのお屋敷
アリサ:ただいま~、博士いる~?
アリサ:スプレーの威力抜群だったよ!あれ、お礼言おうと思ったんだけど
アリサ:研究室に閉じこもってんのかな
0:研究室前
アリサ:博士~?
0:
アリサ:…扉あいてる
アリサ:入るよー?
0:机の上に日記がおいてある
アリサ:わお!お宝発見!
アリサ:意外だな~、お風呂の時間もケチって研究するような人なのに、まさか日記を書いてるなんて
アリサ:博士にしては随分可愛らしい日記帳だけど…
0:右見て左見て
アリサ:…うーん気になる
アリサ:あの無口で不愛想な博士が何を書き記しているのかとても気になる
アリサ:…ちょっとだけ
アリサ:あーダメ!いったん冷静になろう。勝手に人の日記を見るなんて最低だよ…!
アリサ:…
アリサ:そう、ダメなことだよ…
アリサ:…
アリサ:…っ!やめなさい右手!くっ、手が勝手に!
アリサ:…ちょっとだけ、ほんとちょっとだけ!
アリサ:博士ごめんなさい!
0:パラパラ
------------------------------
アリサ:うふふ
アリサ:「今日も孤児院の子供たちにマジックを披露しました。みんな目を輝かせて、目の前で起こる素敵な魔法に興味津津です」
アリサ:あれ…?
アリサ:これ私が書いた日記よね
アリサ:でも私のは自分の部屋にあるし…
アリサ:「博士の発明品、腹鳴りロボ。この子のボタンを押すと…」
アリサ:これは昨日の内容だな…
アリサ:「今日は振動のマジック」
アリサ:「博士の発明品、初期微動スプレー。スプレーをふきかけられたものは小刻みに震え始めます。博士は楽しいものをつくる天才です…」
アリサ:…これは今日の出来事だけど
アリサ:私、まだ日記書いてない…
アリサ:…つづきがある
アリサ:…あれ…知らないマジックだ
アリサ:明日の日付…?どうして明日のことが日記に…?一ページ目の名前は
アリサ:アリサ…
0:
アリサ:アリサ!?
0:バタン(扉の閉まる音)
ジョセフ:私の研究室には入らないようにと言ってあったはずだが
アリサ:博士!
ジョセフ:返しなさい。それはとても大事なものなんだ
アリサ:この日記…。私の出来事が…
ジョセフ:君のじゃないよ
アリサ:え、でも、同じ名前、同じ筆跡、同じ出来事…
ジョセフ:返しなさいアリサ
アリサ:…っ!やめて!何か知ってるなら教えてよ!
ジョセフ:君は知らなくていい
アリサ:同じなんだもん!私に関係あることでしょ!教えてよ!
ジョセフ:抵抗するなら容赦しないぞ
アリサ:何する気!?
ジョセフ:嫌なことは忘れるのが一番だ
ジョセフ:いや違うな
ジョセフ:初めから無かったことにする、といった方が正しいか
アリサ:全然わかんないよ!
ジョセフ:わからなくていい。そう出来ているのだから
アリサ:博士、顔が怖いよ
0:
ジョセフ:(ため息)
ジョセフ:どうせ記憶を消すんだ。いいだろう、教えてやる
0:研究室のわきにある大型瞬間移動ロボへ向かう博士
ジョセフ:君も入りなさい
アリサ:…博士、怖いよ
0:博士につられてアリサも中へ
0:びゅーーーーーん
0:
0:
----------------------------------
アリサ:ここは…?
ジョセフ:墓地だよ
アリサ:なんだか暗いし寒いし怖いところね
ジョセフ:昨日来ただろ
アリサ:え?
ジョセフ:ああ、私が消したから覚えているはずもないか
アリサ:あの箱は?
ジョセフ:棺桶だよ
アリサ:棺桶…!?
ジョセフ:アリサ、私に婚約者がいたことは君も知っているね?
アリサ:え、ええ。とても明るくてエネルギーのある人だったと
ジョセフ:そう。彼女は誰よりも優しくて、誰よりも厳しくて、誰よりもエネルギーのある人間だったんだ
ジョセフ:今はあの棺桶の中で眠っている。そう、眠っていた
アリサ:…?
ジョセフ:どうして死んでしまったのか。それは私が殺したからだ
アリサ:え…?
ジョセフ:私が彼女を殺したんだ
アリサ:…っ!
0:棺桶に近づき手を合わせる博士
ジョセフ:生き返らせるために殺したんだよ
0:そのときアリサの脳内に知らない物語が流れ始める
0:
0:
-----------------------------------
0:20年前
婦人:ジョン(ペットの犬)!ジョン!!
ジョセフ:ジョンがどうかしたのか!?
婦人:朝から苦しそうで、ろくにご飯も食べないのよ!病院へ連れていこうとしたらいきなり血を吐いてしまって…!
ジョセフ:医者に来てもらおう!私が連絡する!
婦人:ジョン!!ジョン!!!!
ジョセフ:(電話)…一時間だと、ふざけるな!!そんなに待てるわけがないだろ!!!
婦人:お医者さんはなんて?
ジョセフ:患者が多く時間がかかるそうだ
婦人:ジョン…!!!!!
0:
0:一時間たった頃には、ジョンの息はなかった
婦人:…
ジョセフ:ジョンのお供えを買ってくる
婦人:…そうだ
ジョセフ:は?
婦人:なおして?
ジョセフ:え?
婦人:いつもの魔法でジョンをなおして?ほら、生き返らせてよ
ジョセフ:何を言ってる。死んだものは生き返らない
婦人:ひどいこと言うのね
ジョセフ:…
婦人:博士の発明は世界一でしょ?何だってできるじゃない
婦人:お願い、生き返らせてよ
ジョセフ:それは…
婦人:お願い、ねぇお願い!!
ジョセフ:できない
婦人:どうして!!!!!!!!
婦人:いやよ、ジョン!ジョン!!!!!!
ジョセフ:(M)こんなにも取り乱した彼女を見るのは初めてで、正直驚いてしまった
ジョセフ:(M)私は適当に言葉を濁してジョンのお供えを買いに出かけた
0:
ジョセフ:(M)私が帰ると血まみれになった彼女がいて
ジョセフ:(M)ふるえながら私に言った
婦人:血が、とまらないの…
婦人:なおらないの…
婦人:ジョンが生き返らないの…!
ジョセフ:(M)床には研究室にある備品やら工具やらが散らばっていた
ジョセフ:(M)彼女の腕の中には、もはや元型すらとどめないジョンの姿が
0:
婦人:私がジョンみたいになったら、博士はちゃんとなおしてくれる…?
ジョセフ:ア、アリサ…
ジョセフ:(M)私の好きだった彼女はもういなかった
0:
0:
-----------------------------------
アリサ:い、今のは…
ジョセフ:…?
アリサ:博士と…
0:見上げると棺桶に記された名前が見えた
アリサ:ア…リサ…?
アリサ:アリサ!?
ジョセフ:…
アリサ:私と同じ名前
ジョセフ:当たり前だ。君なんだから
アリサ:…っ!
ジョセフ:君だよ、アリサ
ジョセフ:まだ完璧ではないけれど、私は、君を生き返らせることに成功した!
アリサ:ちょっと待って!
ジョセフ:20年。本当に長かったよ。君の最後のお願いを叶えたくて…
アリサ:最後のお願い…?
ジョセフ:誰よりも人間の心を持っていたあの頃の君に戻すために!
アリサ:…!
ジョセフ:ロボットはいいぞ?壊れたら私がなおしてやれる!
アリサ:そんなの知らない!博士の記憶をおしつけないで!
ジョセフ:何も鉄でできたロボットなんかじゃない!ちゃんと肌も移植して、君が君でいられるように…
アリサ:私は人間よ!!
0:勢い良く棺桶を開けるアリサ
アリサ:なんで空っぽなのよ
アリサ:(M)棺桶の中は綺麗だった。中身の瞬間移動を疑うくらいに
アリサ:ああ…ああ…
アリサ:でも…!
アリサ:私には感情がある!もしロボットならこんな気持ちにはなれないんじゃ…!
ジョセフ:私が感情をプログラムしたんだ
アリサ:う、嘘よっ…!
アリサ:(M)小刻みに震える体をなんとかして抑えようとする
アリサ:とまれ、とまれ!!!!!
アリサ:(M)昼間見たボールのように小刻みに震える体
アリサ:(M)メトロノームのように脈うつ鼓動
アリサ:(M)鮮度のいい肌からは血の気が引いていき
アリサ:(M)二本しかない手が無数にあるような感覚だ
アリサ:(M)そして、お腹はぐーっと鳴る
アリサ:(M)もう何が何だかわからない
アリサ:(M)目から玉ねぎを切った時の涙が溢れてきた
0:
アリサ:私は、私は…
0:
アリサ:博士と同じ人間よ!!!!!
0:アリサから警告音が鳴り始める
アリサ:オーバーヒート、制御不能、制御不能
ジョセフ:まずい、暴走か!
0:アリサは近くの枝を拾うと、博士に向かって突進していく
ジョセフ:やめろ!!!
アリサ:面白いから笑うの!
アリサ:許せないから怒るの!
アリサ:悲しいから泣くの!!!!
アリサ:全部、私の意志よ!仕組まれてなんかない!
アリサ:この気持ちがプログラムな訳ない!!!
アリサ:制御不能、制御不能、至急停止シテクダサイ
0:
ジョセフ:よ、よせ!こっちにくるな!この…
ジョセフ:「ロボットが!!!」
アリサ:…っ!
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0:
0:
0:
0:
0:
0:
0:
アリサ:(M)私が、今、一番聞きたくなかった言葉だった
アリサ:(M)博士が私を見て怯えている
アリサ:(M)悲しい、苦しい
アリサ:(M)確かにそう思った
アリサ:(M)この感情は…「ワタシノモノ」でいいよね…?
0:
0:
アリサ:(M)パリン
0:
0:
アリサ:(M)心の中で
アリサ:(M)何かが
アリサ:(M)割れたような音がした
0:
アリサ:(M)そこからの記憶はありません
0:
0:
0:
ジョセフ:…いったい何度目だ
ジョセフ:私の研究はいつになれば成功するんだ
ジョセフ:いつになれば、大好きだった君は帰ってくるんだ
0:
婦人の声:あなたも…
ジョセフ:え…
婦人の声:あなたも変わってしまったのね
ジョセフ:アリサ…!
ジョセフ:(M)アリサの心臓部分から声が聞こえたような気がした
ジョセフ:(M)私はアリサの心臓から粉々になったダイヤモンドを取り出すと、そっと棺桶の中へ入れ燃やした
ジョセフ:君の心はダイヤモンドではなかったのかい…?
ジョセフ:これから私は…どう償って生きていけばいいんだ…
ジョセフ:…アリサ…アリサ!!!
0:泣き崩れる博士
婦人の声:…人間らしく生きて
婦人の声:それが私の最後のお願いよ