声劇台本置き場

伝道師：ほーら、できるだけ高いところからいれるんだ 伝道師：どうだい？カップに跳ねて溢れてしまっただろう？なんと勿体ない 伝道師：でも気にしてはいけない。男だから。ワイルドに生きていかなくちゃ 伝道師：かの有名な大統領も言っていたよ。「苦いものには旅をさせよ」と。ほら、こぼれたコーヒーがテーブルを旅しているね 伝道師：そうだ、シロップは入れるかい？シュガーもあるよ。マーマレードにピーナッツ＆ビターステップさ 伝道師：まったく、邪道だねぇ。でも私も入れる派なんだ。たくさん入れよう 伝道師：甘ければ甘いほど人は優しくなれる。でもその優しさに甘えてばかりじゃダメだね。少し厳しくなろう 伝道師：混ぜる時は慌ただしく、鬼になるんだ。はい、マドラー。うん、似合ってるよ。鬼に金棒 伝道師：耳をすましてごらん。聞こえるかい？グイングインと、コーヒーが悲鳴をあげているね。たまらない 伝道師：ではお先にいただくよ。…ゴクゴク。 伝道師：なんだいこれは。まったく本当に美味しいコーヒーだね。よりよいコーヒーだよ 伝道師：ああ、最上級のベストではなく、比較級のベターという意味さ。やった、まだ上を目指せるね 伝道師：このベターなコーヒーに足りなかったもの。君は何だと思う？少し考えてみよう 伝道師：シロップを入れ過ぎた？いや、シロップはたくさん入れるからシロップなんだ。それは間違ってないよ 伝道師：混ぜ過ぎた？いや、しっかり混ぜてなければ、コーヒーは怠け者になっていたよ。それも間違ってない 伝道師：私が思うに、いれる高さが足りなかったんだ。３階からコーヒーだよ 伝道師：ほら２階から目薬とも言うだろう？高い方が染み渡るのさ 伝道師：私は３階に移動するから、君はカップを持って庭に出てくれるかい？ 伝道師：いーや、私が注ぐ方だ。君にはまだ早い 伝道師：ちょっとばかり熱いかもしれないが、君も男になるんだ。ワイルドに生きていかなくちゃ。そういうことだよ 伝道師：さぁ最高のコーヒーを入れようじゃないか