台本概要
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タイトル | 猛禽族外伝:ブラッディ・パースト |
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作者名 | 瓶の人 (@binbintumeru) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男2、女1、不問2) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
赤が紅に染まった 黒が漆黒に染まった 赤黒く血塗られた過去が今ここに… ※烏の年齢は外見の年齢です ※注意事項 ●過度なアドリブ、改変をしたい場合(キャラクターの性転換、セリフを丸々変える等)はご連絡ください。 ●男性が女性キャラを女性として、女性が男性キャラを男性として演じる際や、語尾等の軽微な改変はご連絡不要です。 ●配信等でご利用される場合は、可能であれば作者名、作品名、掲載サイトのURLを提示して頂けると幸いです。 ●全力で楽しんで下さると幸いです。 作中用語 ●猛禽族 街の中で力を持つトップの者達に与えられる称号 ここで言う力とは単純な腕力、知識力、カリスマ性などといった物 ●チーム 街における組織 猛禽族以外のチームも存在する ●メンバー チームに所属する者 ●テリトリー チームが支配する領地 無許可で侵入した者には厳しい罰則がある ●カラス チームに属さない者 又は無許可でテリトリーに侵入した者を指す事もある 5743 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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赤鷲 | 男 | 64 | 赤鷲(あかわし)30歳~ 絶対的なまでの愛と優しさによって現猛禽族の中でもトップクラスの勢力を持っている 見た目や口調で勘違いされがちだが、誰よりも優しい |
赤鷲の妻 | 女 | 50 | 赤鷲の妻(あかわしのつま)25歳~ 数年前に赤鷲と結婚し、2人の間に4歳の男の子がいる 優しい言葉使いだが、猛禽族の妻だけあって芯の強さがある 元は遠い港町の出 |
瑠璃隼 | 男 | 76 | 瑠璃隼(るりはやぶさ)30歳~ 規律や秩序を重んじる猛禽族 ルールは絶対という考えの元、統治するテリトリーの秩序を守り抜いている 街の為とは言え、その強すぎる正義感に付いていけない者も多い |
桃鶚 | 不問 | 48 | 桃鶚(ももみさご)25歳~ あらゆる欲を求める欲の猛禽族 権力や肩書にこだわるタイプで、猛禽族になったのもたまたま メリケンサックを装着して殴るという近接格闘を用いる |
烏 | 不問 | 76 | 烏(からす)20歳~ この街のスラムに住む名も無きカラス 他テリトリーから食料や金目の物を盗んで生活をしている 蔑まれてきた人生だった為、その性格は歪んでしまっている 力を得て見返してやるという強い思いを持つ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
赤鷲:【N】かつて、ある街を力で支配していた者達が居た
瑠璃隼:【N】ある者は規律で
桃鶚:【N】ある者は欲望で
赤鷲:【N】そして、ある者は優しさで人々をまとめていた
烏:【N】そんな街の片隅で、力を持つ者に憧れを抱く1羽の烏(からす)が居た
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烏:これは、力を欲した鳥と
赤鷲:【N】力を持った鳥の、血塗られた過去の話
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0:赤鷲の家
赤鷲:「……ん…」
赤鷲の妻:「あ、おはようございます、あなた。」
赤鷲:「…ああ、おはよう……」
赤鷲の妻:「どうしたんですか?キョロキョロして。」
赤鷲:「…アイツはどうした?」
赤鷲の妻:「あの子はもう園に送っていきましたよ。」
赤鷲:「え?」
赤鷲の妻:「…あなた今、何時だと思っているんですか?」
0:時計を見ると9時を回っていた
赤鷲:「…ああ…もうこんな時間だったのか。」
赤鷲の妻:「ふふ、昨日はだいぶお疲れの様子でしたからね。ごはん、もうすぐできますから。お顔洗ってきてくださいな。」
赤鷲:「ああ、ありがとう。そうする。」
0:
赤鷲:【N】この街は力が全てだ。腕力、知力、カリスマ性、統制力など、力を持つ者達はあらゆる力によってこの街の人々をまとめ上げた。
赤鷲:俺もその力を持つ者として、テリトリーを統治している。力を持つ者『猛禽族』として。
0:
赤鷲の妻:「あなた、ごはん出来ましたよ。」
赤鷲:「ああ、ありがとう。」
0:食卓の上に様々な料理が並べられている
赤鷲の妻:「さ、いただきましょう。」
赤鷲:「いただきます。」
赤鷲の妻:「ねえあなた?あの子、最近好きな女の子が出来たらしいですよ。」
赤鷲:「ほお?」
赤鷲の妻:「私も少し見たことがあるんですけど、色白で活発な可愛い女の子でしたよ。」
赤鷲:「そうか、アイツにもそういう子ができたのか。」
赤鷲の妻:「ええ、あの子はあなたと違って明るくて社交的ですからね。」
赤鷲:「なっ!?」
赤鷲の妻:「ふふ、冗談ですよ。あなたも優しくて素敵ですよ。その優しさで上り詰めた猛禽族ですものね。」
赤鷲:「…たく。ははは。」
赤鷲の妻:「ふふふ…」
0:
赤鷲:【N】愛する妻と愛する子供に囲まれた幸せな時間
赤鷲:こんな街でも、家に帰れば妻の手料理と子供の笑顔が出迎えてくれる
赤鷲:俺は、とても幸せだった……
0:街の片隅、スラム
0:男に蹴り飛ばされ吹っ飛ぶ
烏:「ぐあっ!?」
0:よろめきながらも走って逃げる
烏:「はぁ…はあ……くそ…!」
0:
烏:【N】私は、猛禽族が統治していないエリアにあるスラムで生活をしている
烏:生まれてからすぐに私の親は亡くなり、誰の力も借りずに1人で生きてきた。猛禽族が統治するテリトリーに忍び込み、金目の物や食料を盗み生計を立てている
烏:周りから疎(うと)まれ、蔑(さげす)まれ、隠れながら生きてきた。私を認めてくれる人なんて誰もいなかった
0:
瑠璃隼:「おっと…」
烏:「うっ…」
瑠璃隼:「キミ、大丈夫か?前を向いていないと危ないじゃないか。」
烏:「あ…えっと…」
瑠璃隼:「…キミ、その手に持っている物はなんだ?」
烏:「え…?」
瑠璃隼:「それはなんだ?その大事そうに抱えている袋を見せてくれないか?」
烏:「…無理……見せられない…」
瑠璃隼:「なぜだ?」
烏:「大事な…ものだから…」
瑠璃隼:「…そうか。大事な物か。その気持ちは良く分かった。だがここは猛禽族である俺、瑠璃隼のテリトリーだ。
瑠璃隼:俺は秩序(ちつじょ)を重んじている、この街の秩序を守るためなんだ。ルールに従ってもらおう。」
烏:「……っ」
瑠璃隼:「さあ、手荒な真似はしたくない。早く見せてくれ。」
烏:「………くそっ!!」
0:駆け出す烏
瑠璃隼:「っ!おい!待てっ!!」
烏:「待てと言われて待つ人なんているわけないでしょ…!」
瑠璃隼:「ちっ!力ずくにでも吐かせてやる!」
0:腰に携えていた拳銃を抜き、足に向かって発砲する
烏:「がぁあ!!?」
瑠璃隼:「これ以上、俺の手を煩(わずら)わせるな。」
烏:「ぐ…くそ……」
瑠璃隼:「さあ、そこまでして隠そうとするそれはなんだ?やはり盗んだものなんだな?」
烏:「………。」
瑠璃隼:「……吐かないか…ならば……仕方がないっ!」
0:拳銃で烏の腹を殴る
烏:「ぐあっ!!」
瑠璃隼:「キミがそれを手放すか、または死ぬかすればこの苦痛から解放される。どちらがいいかなんてサルでもわかるだろう。」
烏:「がっ!ぐあああ!!」
瑠璃隼:「どうした、このまま痛い思いすることになるぞ?」
烏:「ぐっ…ううっ!」
瑠璃隼:「強情で卑(いや)しいカラスだ…!さあ!早く選べ!」
烏:「い、いや…だね…」
瑠璃隼:「っ!そうか…ではこのまま死んでも文句を言わないことだなっ!」
桃鶚:「あら、なーにしてるの?るりりん?」
瑠璃隼:「っ!?桃鶚(ももみさご)!キミ、なぜここに…」
桃鶚:「なぜもなにも、るりりんが呼んだんでしょう?」
瑠璃隼:「あ、ああ…そういえばそうだった…すまない。」
桃鶚:「んもう、アタシとの約束を忘れるなんてひっどーい。」
瑠璃隼:「す、すまないな。」
桃鶚:「ま、それはいいとして……あの子、逃げちゃったけど…いいの?」
瑠璃隼:「なにっ!?くそ、逃げ足の速いカラスめ…!いつか見つけたらただでは済まさないぞ…!」
桃鶚:「アタシが声かけちゃったせいかしらね、ごめんなさいね?るりりん。」
瑠璃隼:「…いやいいさ。どちらにせよ、あの足ではそう遠くには逃げられないだろう。メンバー達に捜索させるさ。」
桃鶚:「そう?それならいいけど。それで?アタシとお話がしたいって事だけど、なんのご用かしら?」
瑠璃隼:「ああ、ここではなんだ。場所を移そう。」
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烏:「はあ…はあ…はあ……追手は…来ない…か。」
0:路地裏の物陰に腰を落とす
烏:「くっ…足を撃たれた…これじゃ、しばらくは全力で走れない……見つかったら終わり…
烏:こんな…大して金にもならない物を盗んだだけで………私にも力があれば、こんな目に合わなくて済むのに…
烏:………そうだ、そうだよ…力を手に入れればいいんだ…猛禽族になればこんな思いをしなくて済むんだ…ずっとただ憧れていた猛禽族…
烏:その最強の猛禽族になって…私をバカにしてきた奴らを…私を痛めつけてきた奴らを……この手で見返してやるんだ…私の手で…!」
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0:赤鷲の家
赤鷲:「それじゃ、行ってくるよ。」
赤鷲の妻:「今日は遅くなりそうですか?」
赤鷲:「…そうだな、おそらく遅くなると思う。」
赤鷲の妻:「わかりました、あまり無理はなさらないで下さいね。」
赤鷲:「ああ、ありがとう。いつもすまないな。」
赤鷲の妻:「いいんですよ。では、気を付けていってらっしゃい。」
赤鷲:「ああ、行ってくる。」
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0:瑠璃隼の事務所
桃鶚:「るりりんのお家にご招待だなんて…期待しちゃっていいのかしら?」
瑠璃隼:「バカを言うな桃鶚。」
桃鶚:「照れちゃって、可愛いわね。それで?そろそろ本題に入ってもらってもいいかしら?」
瑠璃隼:「…ああ。我々猛禽族の今の勢力図、どうなっているか知っているか?」
桃鶚:「そりゃあもちろんよ。赤ちゃんがダントツ、次点でるりりん、そしてアタシ。でしょ?」
瑠璃隼:「そうだ。キミと俺は今やほとんど同勢力と言っても良い。」
桃鶚:「ええ。」
瑠璃隼:「そこでだ、キミと俺で同盟を組まないか?そうすれば赤鷲の勢力をも圧倒し、我々はこの街で頭を張れる。悪い話ではないと思うのだが。」
桃鶚:「いやよ。」
瑠璃隼:「…すまない、聞き間違えたかもしれん。もう一度……」
桃鶚:「いやって言ったのよ。」
瑠璃隼:「…なぜだ桃鶚!赤鷲の勢力は圧倒的だ、手を組まなければ奴を超えることはできない!」
桃鶚:「規律性、秩序を重んじる猛禽族が聞いて呆れるわね……」
瑠璃隼:「…なに…?」
桃鶚:「超えてどうするの?こんな街で頭を張ってどうしたいの?お山の大将になってそれで満足?」
瑠璃隼:「キミだって上を目指した結果、猛禽族という立場になったんじゃないのか…!」
桃鶚:「別に?アタシは強さとか勢力とかどうでもいい。気づいたら今の地位にいただけ。猛禽族じゃなくってもアタシはアタシだし、やりたい事をするだけよ。」
瑠璃隼:「くっ……!貴様…!欲の猛禽族がそんな無欲で成り上がれるはずがない!」
桃鶚:「そうね、アタシは欲望の猛禽族。その名の通り、アタシとっても強欲なのよ?」
瑠璃隼:「力を欲していないとほざいていておきながら何を…」
桃鶚:「アタシはアタシのしたいことに忠実なだけ。アタシがシタイと思ったもの、欲しいと願ったものだけ欲しいの。別に猛禽族である事に固執なんてしていないわ。」
瑠璃隼:「桃鶚っ……」
桃鶚:「さって?話はそれだけかしら?だったらもう帰るわね。お招きいただきありがとう、るりりん。」
瑠璃隼:「…っ」
0:桃鶚に拳銃を構える瑠璃隼
桃鶚:「……なんのマネかしら?」
瑠璃隼:「この街の秩序を守るために、協力をしてもらう。」
桃鶚:「その為にアタシを力ずくで従わせるって?」
瑠璃隼:「ああ。」
桃鶚:「そんなの、秩序もなにもあったもんじゃないわね…」
瑠璃隼:「いいや、これで秩序は保たれるんだ。」
桃鶚:「そう……やっぱり、アナタとは相性は合わないようね…」
瑠璃隼:「そうか…残念だ…」
0:銃弾を放つが、躱される
瑠璃隼:「くっ!」
桃鶚:「弾道が分かってて当たり行くバカなんて居ないわよ!」
0:回し蹴りで拳銃を蹴り飛ばす
瑠璃隼:「がっ!?くそ!」
桃鶚:「へえ…アタシとやるの?」
0:瑠璃隼は腰に携えていた警棒を、桃鶚はメリケンサックを装着
瑠璃隼:「キミには失望したぞ!桃鶚ぉお!」
桃鶚:「失望されるだけの好感度があったなんてね…!!」
瑠璃隼:「キミは俺に賛同してくれると信じていたのに…!」
桃鶚:「それは、ご愁傷様ねっ!」
瑠璃隼:「くっ、早い…!」
桃鶚:「どうしたのるりりん!アタシ、まだ遊び足りなわよ…っと!」
瑠璃隼:「があっ!!」
桃鶚:「みぞおち…クリーンヒットぉ。」
瑠璃隼:「ぐっ…うらあああ!!」
桃鶚:「あがぁっ!?」
0:放たれた銃弾が桃鶚の右肩を撃ち抜く
瑠璃隼:「…これで右肩は満足に使えないだろ…!」
桃鶚:「器用ね…ほんと…警棒と拳銃の二刀流だなんてね…見た目だけなら規律と秩序の象徴、警察よ。」
瑠璃隼:「減らず口を…最後に問う、力を貸せ桃鶚。」
桃鶚:「だから…いーや。」
瑠璃隼:「そうか……なら、死ね!」
桃鶚:「死ねって言われて死ぬと思う?」
0:瑠璃隼に突撃する桃鶚
瑠璃隼:「なっ!くそ!だがそんな攻撃は見切っている!」
桃鶚:「っ!?嘘、アタシの攻撃が躱されるなんて!」
瑠璃隼:「俺を舐めるなよっ!はあぁっ!」
桃鶚:「がはっ!!」
瑠璃隼:「今度は、お前のみぞおちに入ったな。」
桃鶚:「やるじゃなーい、るりりん…」
瑠璃隼:「…お前を失うのは惜しいが、このまま散れ。桃鶚。」
桃鶚:「そうね、アタシも散るのはまだ早いと思っているわ…だから……ねっ!!」
0:瑠璃隼の足に自身の足を絡ませ転倒させる
瑠璃隼:「何をっ!?がっ!?」
桃鶚:「アタシは最後の最後まで、足掻けるところまで足掻く。それがアタシなの、ごめんねるりりん。」
瑠璃隼:「くそ…!大人しく秩序の糧となれ!桃鶚ぉおおお!!」
桃鶚:「ホント…馬鹿正直なんだから…」
瑠璃隼:「っ!!」
桃鶚:「坊やと遊ぶのは今日でおしまい。ごめんなさい……ね!!」
0:顎に左アッパーを食らわす
瑠璃隼:「ぐあああああ!!」
桃鶚:「そこそこ楽しかったわ。」
瑠璃隼:「…も…桃……鶚……」
桃鶚:「ばいばーい、るりりん。……またね。」
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0:足を引きずりながら周りを見渡す烏
烏:「ここが赤鷲のテリトリー…他の猛禽族のテリトリーとは違う雰囲気だ…
烏:なんというか……活気が溢れていて…全員幸せそうで……凄く居心地が悪い。」
0:街の住民と会話をしている赤鷲
赤鷲:「おいお前ら何やってんだ?ああ?そんなくだらない理由で喧嘩なんかしてんじゃねえよ。
赤鷲:先に手出したお前もお前だけど、煽ったお前もお前だからな。おら、謝れ。謝んねえなら…分かってんだろうな?
赤鷲:はははは!冗談だ。だけど、もうそんな事で喧嘩するなよ。分かったか?」
赤鷲の妻:「お勤めご苦労様です、あなた。」
赤鷲:「っ、なんだ。どうしたんだこんな所で。」
赤鷲の妻:「この子のお迎えをしてきたんです。」
0:妻の手を握っている赤鷲の子供
赤鷲:「おお、そうか。お帰り、楽しかったか?」
0:恥ずかしそうに頷く子供
赤鷲の妻:「ふふふ、今日はたくさんお絵描きしたのよね?」
赤鷲:「そうなのか。後で帰ったら見せてくれるか?」
赤鷲の妻:「あらあら、私の背中に隠れちゃった。」
赤鷲:「なんだ、嫌なのか。悲しいな。」
赤鷲の妻:「ふふ、お父さんに見せてあげましょ?ね?ふふ、見せてもいいって。」
赤鷲:「はは、じゃあ楽しみにしてるよ。」
赤鷲の妻:「お仕事はもう少しかかりそうですか?」
赤鷲:「ああ、まだやることがある。」
赤鷲の妻:「わかりました、ご飯用意して待っていますね。」
赤鷲:「わかった。なるべく早く帰れるようにする。」
赤鷲の妻:「はい、期待しないで待ってますね。ふふ。」
赤鷲:「う…」
赤鷲の妻:「ふふ、冗談ですよ。」
赤鷲:「これでも罪悪感を感じてるんだからな。」
赤鷲の妻:「分かってますよ。いつもたくさん働いてくださってありがとうございます、あなた。」
赤鷲:「いつも美味い飯ありがとうな。」
0:街の人たちから茶化される
赤鷲:「なっ、お前ら見せもんじゃねえぞ!」
赤鷲の妻:「ふふ、あらあら。そろそろお仕事のお邪魔しちゃ悪いですし…さ、帰りましょうね。お父さんにバイバイして?」
0:赤鷲に手を振る子供
赤鷲:「おう、また後でな。さて、残りの仕事を終わらせるか。」
0:路地裏からその様子を眺める烏
烏:「……あれが…赤鷲…最強の……猛禽族…私の憧れた………猛禽族…」
0:
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0:赤鷲の家
赤鷲の妻:「あ、こらぁ走らないの!ちゃんと体拭いて!はい、ゴシゴシーゴシゴシー。
赤鷲の妻:ほら拭いたらパジャマ着ようね?はーい、ばんざいして下さい。うん、上手上手!寝る前に歯を磨きましょうねぇ。
赤鷲の妻:奥歯ー前歯ーゴシゴシー、きれいになったかなー?うん、ピカピカ!かっこいいね!
赤鷲の妻:よし、じゃあ今日はもう寝ましょうね、電気消しますよー?おやすみなさい。え?絵本?もう、しょうがないなぁ。」
0:
烏:「ここが……赤鷲の…家……私が超えるべき、最強の住処…
烏:私は…今夜、ここで最強になれる…!」
0:足の包帯を巻きなおす烏
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0:
0:夜中、妻がトイレに起きる
赤鷲の妻:「ん…トイレ……」
烏:「っ!」
赤鷲の妻:「っ!?あなた……?じゃ…ないっ!?」
烏:「しまっ…!」
赤鷲の妻:「え…だれ…!?」
0:口を塞ぐ烏
赤鷲の妻:「んぐっ!?」
烏:「静かにしろ…!」
赤鷲の妻:「んっ!?んんん!!」
烏:「ちっ!うるさい奴だ!」
0:別室に妻を連れ込み床に突き飛ばす
赤鷲の妻:「きゃあっ!?」
烏:「あんた…赤鷲の家族だな…?」
赤鷲の妻:「…あなた……誰なの?」
烏:「私の質問に答えろ…」
赤鷲の妻:「………ええ、そうよ。」
烏:「そう…まあいいか…どちらにせよ構わない。」
0:懐から拳銃を取り出し銃口を向ける
赤鷲の妻:「っ!?なんのつもり…!?」
烏:「本当は赤鷲本人か、子供を殺すつもりだったんだけど…この際あんたでもいい。死んでくれ。」
赤鷲の妻:「なんで…あなたどうしてこんなこと…」
烏:「私は力が欲しいんだよ。」
赤鷲の妻:「…力?」
烏:「ああ。誰にもバカにされない為に、絶対的な力が欲しいんだ。だから、私は猛禽族になるんだ。あんたの夫みたいな猛禽族に。」
赤鷲の妻:「だからって…なんでこんなことをする必要があるの?」
烏:「考えたんだよ。どうやれば猛禽族になれるのか、どうすれば力を得られるのか…をね。
烏:そしたら分かったんだ、最強の猛禽族を殺せば誰しもが私を認める、そうすれば私こそが最強の猛禽族になれるってね。」
赤鷲の妻:「…狂ってる……」
烏:「当たり前だよ。この街は力が全てだ、力に飢えた者が集まる街。この街において力こそが絶対なんだ。それを求めて何が悪い?」
赤鷲の妻:「力は、何も命を奪って得るものではないわ!」
烏:「周りを理解させるには人の死が最もなんだ!私は汚いゴミクズじゃない…醜いカラスでもない…高貴な猛禽類になるんだ!!
烏:それを証明させるのに命を奪う以外の選択肢はない!命を奪う事で、力は得られるんだ!」
赤鷲の妻:「っ!?」
烏:「産まれてからずっと1人で生きてきた、誰にも頼らず生きてきた、私は誰よりも強い!それを周りに認めさせるんだ!私の強さを知らしめて復讐をするんだよ!」
赤鷲の妻:「今わかったわ…そう…やっぱりそうなのね…あなた…」
烏:「…なんだ?」
赤鷲の妻:「あなた………誰からも愛されたことないのね…」
烏:「っ!!」
赤鷲の妻:「知ってる?愛は、何よりも強い力なのよ。」
烏:「そんなもの…知るか…!愛なんてもの…そんなものがなんになるってんだ!そんなもの私には必要ない…!愛された事が無いからなんだ!愛されなくても私は強い!」
赤鷲の妻:「少なくともあなたを産んでくれたお母さんはきっと、あなたを愛して…」
烏:「うるさい!うるさいうるさいうるさいっ!!黙れぇええええ!!」
0:妻の頭、胸、腹に向かって発砲する
0:
0:帰宅する赤鷲
0:
赤鷲:「少し遅くなったな…もう寝てるかな……ただいまー。」
0:叫び声が奥の部屋から聞こえる
赤鷲:「っ!?なんだ…?何事だ!?」
0:奥の部屋の扉を開けた瞬間、赤鷲の全身に血が降りかかった
赤鷲:「……あ…あ…」
0:
赤鷲:【N】何が起きたのか、理解するまで時間がかかった。いや、理解をしたくなかったんだと思う
赤鷲:扉を開けた先に居たのは、全身黒ずくめの誰かと………俺の足元に転がった…血まみれの俺の妻…
赤鷲:黒い奴の手には、妻のものであろう血がついた黒い拳銃が握られていた
0:
赤鷲:「…なんだ…これは……?黒いの…お前…何をしている…?」
烏:「……赤鷲…ようやく帰ってきましたか……は、はは…見てください…私が…あなたの妻を殺してやりました。
烏:私が…!この手で…!殺したんですよ…!!」
赤鷲:「あ……あ…ああああああああああああ!!!!」
0:鬼の形相で懐からナイフを取り出し烏に切りかかり、額に傷をつける
烏:「がっ!?」
赤鷲:「うああああああああ!!!」
0:銃を乱射する赤鷲
烏:「くそ…!!」
赤鷲:「うおおおらあああああ!!」
烏:「こいつ…理性を失っている…!このままじゃ…危険だ…!」
赤鷲:「黒いのおおおおおお!!!」
烏:「こんの…!」
0:銃を乱射し応戦する烏、左腕を撃たれる赤鷲
赤鷲:「ぐううああ!!」
烏:「まだ怯まないのか…!?化け物め…!」
赤鷲:「殺す…!殺してやる!」
烏:「っ…!これ以上はまずい…撤退するしか……!」
赤鷲:「逃がすわけねえだろ!黒いの!!」
0:烏の左肩に投擲されたナイフが刺さり、すかさず拳で殴りかかりに行く赤鷲
烏:「がはあぁっ!」
赤鷲:「うおおおおお!!」
烏:「ちっくしょう…!こんなナイフ返してやる!」
0:ナイフで足の甲を刺される
赤鷲:「ぐぅうああっ!」
烏:「はぁ…はあ……さすが最強の猛禽族…一筋縄ではいかないか…」
赤鷲:「テメエ…殺す…殺しつくしてやる!!テメエの面が二度と拝めねえようにこの手で…!!」
烏:「まだ動けるのか!?」
赤鷲:「テメエを殺すまでだ!!」
烏:「ちっ…仕方がない……赤鷲…!!私はいつか必ず……お前を殺して最強になる…!最弱のカラスから最強の猛禽族に…!それまで待っていろ!!」
0:窓から飛び出し逃げる烏
赤鷲:「なっ!?黒いのおおお!待ちやがれえええ!!!
赤鷲:待ちやがれ…クソがあああああ!!」
赤鷲の妻:「……あ…なた……」
赤鷲:「っ!!?おい!!ここにいるぞ!」
赤鷲の妻:「……。」
赤鷲:「なんだ?なんて言ってるんだ!」
赤鷲の妻:「…あ……いし…て、る……」
赤鷲:「あ…ああああ…どうしてこんな…どうしてっ!!」
0:妻の遺体に顔を伏せ泣く赤鷲
0:そこに子供が目を覚まし起きてくる
赤鷲:「っ!お…お前…無事だったのか………!!」
0:
赤鷲:【N】子供は無事だった、それだけでも良かった…しかしこのままこの子をこの街に残していては、また黒いのが襲ってくる危険性もある…
赤鷲:今ここで俺がやるべき事は……この子を俺の元から引き離す事…俺なんかと居ちゃいけない、危険が無いように、二度とこの街に戻って来れないように…
0:
赤鷲:「よお……すまねえな坊主。もう、テメエの大切なモノはここには居ねえ……見ての通り、俺が食っちまった。
赤鷲:…ほら、テメエはさっさと行け。ガキは食わねえ主義だが、あまりちょろちょろしてっと…コイツみたいになっちまうぞ?」
0:怯えた表情で妻の遺体と赤鷲を交互に見る子供
赤鷲:「何してんだ!!さっさと行きやがれ!それともコイツみてえになりてえのか!?なりたくねえならこの街から出ていきやがれ!!」
0:泣きながら走り去る子供を見送り、座り込む赤鷲
赤鷲:「…ごめん…ごめんな…こんな事しかお前を守る方法が思いつかねえんだ……」
0:子供が描いた赤鷲の似顔絵が床に落ちている
赤鷲:「…こんな街に居る以上…こうなることは予測できたはずなのに…いつからか俺は平和ボケしすぎていた……………俺が居ながら何も守れなかった…
赤鷲:…もう、お前らみたいな犠牲者は出さねえように…俺は今より力をつけてやる……その為に…そうだ、この街は力が全てだ…愛なんてものじゃ誰も救えやしねえ…絶対的な暴力で……支配してやる
赤鷲:そして……あの黒いのを……この手で…殺してやる……!」
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0:
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0:傷ついた烏が走って逃げている
烏:「はあ…はあ……赤鷲を殺せなかった……でも、妻を殺せた…はは…殺したんだ…あの赤鷲の家族を殺したんだ…!!
烏:私にも人を殺せる!この手で命を奪ったんだ!!そしてあの赤鷲の心を抉ったんだ…!!そうだ…いずれまたあいつと戦った時に今回の出来事は使えるかもしれない…私がお前の妻を殺したってね!
烏:そうしたらまたあいつは、今日みたいに錯乱するかもしれない。そうして出来た隙を狙えば…!!
烏:人は何より、過去のトラウマに弱いからね…それにしても錯乱したあの顔…最高だった!はは、はははは…!!」
瑠璃隼:「っ!誰だキミは!あの時の……カラス…!」
烏:「お前は…そうだ…今の私なら…」
瑠璃隼:「こんな所で何をしている。ここは既に私のテリトリーだ。お前のようなコソ泥が居ていい所ではない。この街の秩序の為、ここで何をしていたか吐いてもらおう。」
0:左手に拳銃、右手に警棒を構える瑠璃隼
烏:「…これはこれは……怖いですね…でもいいタイミングだ…私が最強になる為の糧となって下さい。」
瑠璃隼:「何を言って…っ!?」
烏:「遅いです。はああ!!」
瑠璃隼:「ぐっああっ!?」
0:掌底を腹部に食らわす
烏:「どうしたんですか?威勢の割に大したことないですね。秩序の猛禽族さん。」
瑠璃隼:「ぐ…舐めるなよ社会のゴミがぁああ!」
0:警棒で烏の腹部に強力な突きをいれる
烏:「あがぁあっ!?」
瑠璃隼:「ゴミの分際で、よくも俺をコケにしてくれたなぁああ!」
烏:「がはああっ!」
瑠璃隼:「はあ…はあ……俺はお前と違って力ある存在だ。カラス如きが粋がるなよ。」
烏:「…ぐ…ふふふ…」
瑠璃隼:「なにがおかしい…?」
烏:「いえ?あなた、他人を過小評価して自身を過大評価しすぎですよ…」
瑠璃隼:「何が言いたい…」
烏:「あなたは、あなたが思っているよりも弱いんですっ!」
瑠璃隼:「なっ!?姿が消えっ!?」
0:瑠璃隼の懐から強力な上段蹴りを放つ
瑠璃隼:「ぐあああああああっ!!」
烏:「強い正義を語るには、いささか力不足なんですよ…」
瑠璃隼:「ぐ、くそ…がぁ…」
烏:「おっと…誰が立ち上がっていいと言ったんですか?」
瑠璃隼:「がはっ!?」
烏:「私を見下した自身を恨むんですね…おらっ!」
瑠璃隼:「こ…の……!」
烏:「ほらほら!下等と見下していた私に、蹴られる気分はどうですか!見下していたゴミのように蹴られる気分は!」
瑠璃隼:「っ…舐めるなよ…下等なカラスめ…!」
烏:「…下等なカラス……ですか。はあ…言いたいことはそれだけですか?」
瑠璃隼:「な…まて、やめろ撃つな…!!」
烏:「死ぬと分かったら命乞いですか。」
瑠璃隼:「やめろ!!おい!!」
烏:「可哀そうな正義でしたね。ばーん。」
0:瑠璃隼の頭を数発撃ち抜く
烏:「私をバカにしてきた報いですよ…バカな隼さん……もう、私を止められる人は居ない……ふふ…私は私の存在をこの街に知らしめてやる…その為に…もっと力を付けなければ…」
0:
0:
0:帰り道を歩く桃鶚
桃鶚:「はぁ、もうすっかり遅くなっちゃった。せっかくバッチシ決めたメイクも乱れちゃったじゃないのよ…るりりんのバーカ!はあ、もうお腹ペッコペコ~!
桃鶚:ご飯なーに食べようかしら…きゃっ!?」
0:桃鶚にぶつかったのは赤鷲の子供
桃鶚:「あら…こんな夜中に子供が1人で何してるのかしら?こんばんは坊や、お母さんは?分かる?
桃鶚:…って、アナタどうしたのそんなに泣いて……怖かったのね…よしよし…もう怖くないわよ、安心して…ね?」
0:子供を優しく抱き撫でる桃鶚
桃鶚:「うん、落ち着いたみたいね、えらいえらい。お名前は?言える?」
0:子供は拙い言葉で「あかわし」と答えた
桃鶚:「っ!?あかわし?赤鷲って言った…?もしかしてアナタ…赤ちゃんの…?言われてみれば少し面影あるわね………うん、わかったわ、一旦アタシの家においで。」
0:
0:桃鶚の家、赤鷲の子供はベッドで寝ている
桃鶚:「…なるほどね。今メンバーに調べさせたけど…そういう事……はぁ、赤ちゃんたらほんと不器用ね…多分この子に危険が無いようにって逃がしたんだろうけど…ほんとバカな人…
桃鶚:それにしても、あのカラスちゃんがね……失う物が無い人は強者になる…あの子の場合は狂者って所かしらね。
桃鶚:……でもこの子どうしようかしら、このままここで……ううん、そんな事はダメ…この子はこんな街に居ちゃダメ、またあのカラスちゃんに狙われるかもしれない。
桃鶚:それに、こんな街で育ったりしたらせっかく赤ちゃんが逃がしてくれたのに、それを無駄にする事になる………そうだわ…!」
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0:遠い港町の墓石の前
赤鷲:「……海、綺麗だな。そういえば2人で海に来たのって、結婚してからは無かったよな。
赤鷲:……なあ?知ってるか?今、俺はあの街で絶対王者って呼ばれてんだ…暴力によって街のほとんどを支配する猛禽族って…
赤鷲:あんなに、俺に優しさをお教えてくれたのにな…ごめんな……でも、これでいいんだ。もうお前のように誰も大切な人を失いたくないから。
赤鷲:俺はもう、後戻りできないんだ。アイツを殺すまでな……だから、それまでここには帰ってこない。ごめんな………それじゃあな…愛している。」
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赤鷲:【N】この街は力が全てだ
瑠璃隼:【N】規律と秩序を重んじた隼は、行き過ぎた正義に溺れその身を滅ぼした
桃鶚:【N】欲を求めた鶚は、迷える鳥の子と共に籠の外へと飛び立った
赤鷲の妻:【N】鷲を愛した者は、最後までその愛の力を貫き通した
赤鷲:【N】家族を愛した鷲は、最愛の家族を殺され、愛を捨て絶対的な暴力を手にした
烏:【N】そして蔑まれてきた烏(からす)は…全てに復讐する為の爪を研ぎ始めた
0:
烏:【N】これは、力を欲した鳥と
赤鷲:【N】力を持った鳥の、血塗られた過去の話
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0:
烏:【N】そして烏は、黒の百舌(もず)へと昇華する
赤鷲:【N】かつて、ある街を力で支配していた者達が居た
瑠璃隼:【N】ある者は規律で
桃鶚:【N】ある者は欲望で
赤鷲:【N】そして、ある者は優しさで人々をまとめていた
烏:【N】そんな街の片隅で、力を持つ者に憧れを抱く1羽の烏(からす)が居た
0:
烏:これは、力を欲した鳥と
赤鷲:【N】力を持った鳥の、血塗られた過去の話
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0:
0:赤鷲の家
赤鷲:「……ん…」
赤鷲の妻:「あ、おはようございます、あなた。」
赤鷲:「…ああ、おはよう……」
赤鷲の妻:「どうしたんですか?キョロキョロして。」
赤鷲:「…アイツはどうした?」
赤鷲の妻:「あの子はもう園に送っていきましたよ。」
赤鷲:「え?」
赤鷲の妻:「…あなた今、何時だと思っているんですか?」
0:時計を見ると9時を回っていた
赤鷲:「…ああ…もうこんな時間だったのか。」
赤鷲の妻:「ふふ、昨日はだいぶお疲れの様子でしたからね。ごはん、もうすぐできますから。お顔洗ってきてくださいな。」
赤鷲:「ああ、ありがとう。そうする。」
0:
赤鷲:【N】この街は力が全てだ。腕力、知力、カリスマ性、統制力など、力を持つ者達はあらゆる力によってこの街の人々をまとめ上げた。
赤鷲:俺もその力を持つ者として、テリトリーを統治している。力を持つ者『猛禽族』として。
0:
赤鷲の妻:「あなた、ごはん出来ましたよ。」
赤鷲:「ああ、ありがとう。」
0:食卓の上に様々な料理が並べられている
赤鷲の妻:「さ、いただきましょう。」
赤鷲:「いただきます。」
赤鷲の妻:「ねえあなた?あの子、最近好きな女の子が出来たらしいですよ。」
赤鷲:「ほお?」
赤鷲の妻:「私も少し見たことがあるんですけど、色白で活発な可愛い女の子でしたよ。」
赤鷲:「そうか、アイツにもそういう子ができたのか。」
赤鷲の妻:「ええ、あの子はあなたと違って明るくて社交的ですからね。」
赤鷲:「なっ!?」
赤鷲の妻:「ふふ、冗談ですよ。あなたも優しくて素敵ですよ。その優しさで上り詰めた猛禽族ですものね。」
赤鷲:「…たく。ははは。」
赤鷲の妻:「ふふふ…」
0:
赤鷲:【N】愛する妻と愛する子供に囲まれた幸せな時間
赤鷲:こんな街でも、家に帰れば妻の手料理と子供の笑顔が出迎えてくれる
赤鷲:俺は、とても幸せだった……
0:街の片隅、スラム
0:男に蹴り飛ばされ吹っ飛ぶ
烏:「ぐあっ!?」
0:よろめきながらも走って逃げる
烏:「はぁ…はあ……くそ…!」
0:
烏:【N】私は、猛禽族が統治していないエリアにあるスラムで生活をしている
烏:生まれてからすぐに私の親は亡くなり、誰の力も借りずに1人で生きてきた。猛禽族が統治するテリトリーに忍び込み、金目の物や食料を盗み生計を立てている
烏:周りから疎(うと)まれ、蔑(さげす)まれ、隠れながら生きてきた。私を認めてくれる人なんて誰もいなかった
0:
瑠璃隼:「おっと…」
烏:「うっ…」
瑠璃隼:「キミ、大丈夫か?前を向いていないと危ないじゃないか。」
烏:「あ…えっと…」
瑠璃隼:「…キミ、その手に持っている物はなんだ?」
烏:「え…?」
瑠璃隼:「それはなんだ?その大事そうに抱えている袋を見せてくれないか?」
烏:「…無理……見せられない…」
瑠璃隼:「なぜだ?」
烏:「大事な…ものだから…」
瑠璃隼:「…そうか。大事な物か。その気持ちは良く分かった。だがここは猛禽族である俺、瑠璃隼のテリトリーだ。
瑠璃隼:俺は秩序(ちつじょ)を重んじている、この街の秩序を守るためなんだ。ルールに従ってもらおう。」
烏:「……っ」
瑠璃隼:「さあ、手荒な真似はしたくない。早く見せてくれ。」
烏:「………くそっ!!」
0:駆け出す烏
瑠璃隼:「っ!おい!待てっ!!」
烏:「待てと言われて待つ人なんているわけないでしょ…!」
瑠璃隼:「ちっ!力ずくにでも吐かせてやる!」
0:腰に携えていた拳銃を抜き、足に向かって発砲する
烏:「がぁあ!!?」
瑠璃隼:「これ以上、俺の手を煩(わずら)わせるな。」
烏:「ぐ…くそ……」
瑠璃隼:「さあ、そこまでして隠そうとするそれはなんだ?やはり盗んだものなんだな?」
烏:「………。」
瑠璃隼:「……吐かないか…ならば……仕方がないっ!」
0:拳銃で烏の腹を殴る
烏:「ぐあっ!!」
瑠璃隼:「キミがそれを手放すか、または死ぬかすればこの苦痛から解放される。どちらがいいかなんてサルでもわかるだろう。」
烏:「がっ!ぐあああ!!」
瑠璃隼:「どうした、このまま痛い思いすることになるぞ?」
烏:「ぐっ…ううっ!」
瑠璃隼:「強情で卑(いや)しいカラスだ…!さあ!早く選べ!」
烏:「い、いや…だね…」
瑠璃隼:「っ!そうか…ではこのまま死んでも文句を言わないことだなっ!」
桃鶚:「あら、なーにしてるの?るりりん?」
瑠璃隼:「っ!?桃鶚(ももみさご)!キミ、なぜここに…」
桃鶚:「なぜもなにも、るりりんが呼んだんでしょう?」
瑠璃隼:「あ、ああ…そういえばそうだった…すまない。」
桃鶚:「んもう、アタシとの約束を忘れるなんてひっどーい。」
瑠璃隼:「す、すまないな。」
桃鶚:「ま、それはいいとして……あの子、逃げちゃったけど…いいの?」
瑠璃隼:「なにっ!?くそ、逃げ足の速いカラスめ…!いつか見つけたらただでは済まさないぞ…!」
桃鶚:「アタシが声かけちゃったせいかしらね、ごめんなさいね?るりりん。」
瑠璃隼:「…いやいいさ。どちらにせよ、あの足ではそう遠くには逃げられないだろう。メンバー達に捜索させるさ。」
桃鶚:「そう?それならいいけど。それで?アタシとお話がしたいって事だけど、なんのご用かしら?」
瑠璃隼:「ああ、ここではなんだ。場所を移そう。」
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0:
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烏:「はあ…はあ…はあ……追手は…来ない…か。」
0:路地裏の物陰に腰を落とす
烏:「くっ…足を撃たれた…これじゃ、しばらくは全力で走れない……見つかったら終わり…
烏:こんな…大して金にもならない物を盗んだだけで………私にも力があれば、こんな目に合わなくて済むのに…
烏:………そうだ、そうだよ…力を手に入れればいいんだ…猛禽族になればこんな思いをしなくて済むんだ…ずっとただ憧れていた猛禽族…
烏:その最強の猛禽族になって…私をバカにしてきた奴らを…私を痛めつけてきた奴らを……この手で見返してやるんだ…私の手で…!」
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0:赤鷲の家
赤鷲:「それじゃ、行ってくるよ。」
赤鷲の妻:「今日は遅くなりそうですか?」
赤鷲:「…そうだな、おそらく遅くなると思う。」
赤鷲の妻:「わかりました、あまり無理はなさらないで下さいね。」
赤鷲:「ああ、ありがとう。いつもすまないな。」
赤鷲の妻:「いいんですよ。では、気を付けていってらっしゃい。」
赤鷲:「ああ、行ってくる。」
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0:瑠璃隼の事務所
桃鶚:「るりりんのお家にご招待だなんて…期待しちゃっていいのかしら?」
瑠璃隼:「バカを言うな桃鶚。」
桃鶚:「照れちゃって、可愛いわね。それで?そろそろ本題に入ってもらってもいいかしら?」
瑠璃隼:「…ああ。我々猛禽族の今の勢力図、どうなっているか知っているか?」
桃鶚:「そりゃあもちろんよ。赤ちゃんがダントツ、次点でるりりん、そしてアタシ。でしょ?」
瑠璃隼:「そうだ。キミと俺は今やほとんど同勢力と言っても良い。」
桃鶚:「ええ。」
瑠璃隼:「そこでだ、キミと俺で同盟を組まないか?そうすれば赤鷲の勢力をも圧倒し、我々はこの街で頭を張れる。悪い話ではないと思うのだが。」
桃鶚:「いやよ。」
瑠璃隼:「…すまない、聞き間違えたかもしれん。もう一度……」
桃鶚:「いやって言ったのよ。」
瑠璃隼:「…なぜだ桃鶚!赤鷲の勢力は圧倒的だ、手を組まなければ奴を超えることはできない!」
桃鶚:「規律性、秩序を重んじる猛禽族が聞いて呆れるわね……」
瑠璃隼:「…なに…?」
桃鶚:「超えてどうするの?こんな街で頭を張ってどうしたいの?お山の大将になってそれで満足?」
瑠璃隼:「キミだって上を目指した結果、猛禽族という立場になったんじゃないのか…!」
桃鶚:「別に?アタシは強さとか勢力とかどうでもいい。気づいたら今の地位にいただけ。猛禽族じゃなくってもアタシはアタシだし、やりたい事をするだけよ。」
瑠璃隼:「くっ……!貴様…!欲の猛禽族がそんな無欲で成り上がれるはずがない!」
桃鶚:「そうね、アタシは欲望の猛禽族。その名の通り、アタシとっても強欲なのよ?」
瑠璃隼:「力を欲していないとほざいていておきながら何を…」
桃鶚:「アタシはアタシのしたいことに忠実なだけ。アタシがシタイと思ったもの、欲しいと願ったものだけ欲しいの。別に猛禽族である事に固執なんてしていないわ。」
瑠璃隼:「桃鶚っ……」
桃鶚:「さって?話はそれだけかしら?だったらもう帰るわね。お招きいただきありがとう、るりりん。」
瑠璃隼:「…っ」
0:桃鶚に拳銃を構える瑠璃隼
桃鶚:「……なんのマネかしら?」
瑠璃隼:「この街の秩序を守るために、協力をしてもらう。」
桃鶚:「その為にアタシを力ずくで従わせるって?」
瑠璃隼:「ああ。」
桃鶚:「そんなの、秩序もなにもあったもんじゃないわね…」
瑠璃隼:「いいや、これで秩序は保たれるんだ。」
桃鶚:「そう……やっぱり、アナタとは相性は合わないようね…」
瑠璃隼:「そうか…残念だ…」
0:銃弾を放つが、躱される
瑠璃隼:「くっ!」
桃鶚:「弾道が分かってて当たり行くバカなんて居ないわよ!」
0:回し蹴りで拳銃を蹴り飛ばす
瑠璃隼:「がっ!?くそ!」
桃鶚:「へえ…アタシとやるの?」
0:瑠璃隼は腰に携えていた警棒を、桃鶚はメリケンサックを装着
瑠璃隼:「キミには失望したぞ!桃鶚ぉお!」
桃鶚:「失望されるだけの好感度があったなんてね…!!」
瑠璃隼:「キミは俺に賛同してくれると信じていたのに…!」
桃鶚:「それは、ご愁傷様ねっ!」
瑠璃隼:「くっ、早い…!」
桃鶚:「どうしたのるりりん!アタシ、まだ遊び足りなわよ…っと!」
瑠璃隼:「があっ!!」
桃鶚:「みぞおち…クリーンヒットぉ。」
瑠璃隼:「ぐっ…うらあああ!!」
桃鶚:「あがぁっ!?」
0:放たれた銃弾が桃鶚の右肩を撃ち抜く
瑠璃隼:「…これで右肩は満足に使えないだろ…!」
桃鶚:「器用ね…ほんと…警棒と拳銃の二刀流だなんてね…見た目だけなら規律と秩序の象徴、警察よ。」
瑠璃隼:「減らず口を…最後に問う、力を貸せ桃鶚。」
桃鶚:「だから…いーや。」
瑠璃隼:「そうか……なら、死ね!」
桃鶚:「死ねって言われて死ぬと思う?」
0:瑠璃隼に突撃する桃鶚
瑠璃隼:「なっ!くそ!だがそんな攻撃は見切っている!」
桃鶚:「っ!?嘘、アタシの攻撃が躱されるなんて!」
瑠璃隼:「俺を舐めるなよっ!はあぁっ!」
桃鶚:「がはっ!!」
瑠璃隼:「今度は、お前のみぞおちに入ったな。」
桃鶚:「やるじゃなーい、るりりん…」
瑠璃隼:「…お前を失うのは惜しいが、このまま散れ。桃鶚。」
桃鶚:「そうね、アタシも散るのはまだ早いと思っているわ…だから……ねっ!!」
0:瑠璃隼の足に自身の足を絡ませ転倒させる
瑠璃隼:「何をっ!?がっ!?」
桃鶚:「アタシは最後の最後まで、足掻けるところまで足掻く。それがアタシなの、ごめんねるりりん。」
瑠璃隼:「くそ…!大人しく秩序の糧となれ!桃鶚ぉおおお!!」
桃鶚:「ホント…馬鹿正直なんだから…」
瑠璃隼:「っ!!」
桃鶚:「坊やと遊ぶのは今日でおしまい。ごめんなさい……ね!!」
0:顎に左アッパーを食らわす
瑠璃隼:「ぐあああああ!!」
桃鶚:「そこそこ楽しかったわ。」
瑠璃隼:「…も…桃……鶚……」
桃鶚:「ばいばーい、るりりん。……またね。」
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0:足を引きずりながら周りを見渡す烏
烏:「ここが赤鷲のテリトリー…他の猛禽族のテリトリーとは違う雰囲気だ…
烏:なんというか……活気が溢れていて…全員幸せそうで……凄く居心地が悪い。」
0:街の住民と会話をしている赤鷲
赤鷲:「おいお前ら何やってんだ?ああ?そんなくだらない理由で喧嘩なんかしてんじゃねえよ。
赤鷲:先に手出したお前もお前だけど、煽ったお前もお前だからな。おら、謝れ。謝んねえなら…分かってんだろうな?
赤鷲:はははは!冗談だ。だけど、もうそんな事で喧嘩するなよ。分かったか?」
赤鷲の妻:「お勤めご苦労様です、あなた。」
赤鷲:「っ、なんだ。どうしたんだこんな所で。」
赤鷲の妻:「この子のお迎えをしてきたんです。」
0:妻の手を握っている赤鷲の子供
赤鷲:「おお、そうか。お帰り、楽しかったか?」
0:恥ずかしそうに頷く子供
赤鷲の妻:「ふふふ、今日はたくさんお絵描きしたのよね?」
赤鷲:「そうなのか。後で帰ったら見せてくれるか?」
赤鷲の妻:「あらあら、私の背中に隠れちゃった。」
赤鷲:「なんだ、嫌なのか。悲しいな。」
赤鷲の妻:「ふふ、お父さんに見せてあげましょ?ね?ふふ、見せてもいいって。」
赤鷲:「はは、じゃあ楽しみにしてるよ。」
赤鷲の妻:「お仕事はもう少しかかりそうですか?」
赤鷲:「ああ、まだやることがある。」
赤鷲の妻:「わかりました、ご飯用意して待っていますね。」
赤鷲:「わかった。なるべく早く帰れるようにする。」
赤鷲の妻:「はい、期待しないで待ってますね。ふふ。」
赤鷲:「う…」
赤鷲の妻:「ふふ、冗談ですよ。」
赤鷲:「これでも罪悪感を感じてるんだからな。」
赤鷲の妻:「分かってますよ。いつもたくさん働いてくださってありがとうございます、あなた。」
赤鷲:「いつも美味い飯ありがとうな。」
0:街の人たちから茶化される
赤鷲:「なっ、お前ら見せもんじゃねえぞ!」
赤鷲の妻:「ふふ、あらあら。そろそろお仕事のお邪魔しちゃ悪いですし…さ、帰りましょうね。お父さんにバイバイして?」
0:赤鷲に手を振る子供
赤鷲:「おう、また後でな。さて、残りの仕事を終わらせるか。」
0:路地裏からその様子を眺める烏
烏:「……あれが…赤鷲…最強の……猛禽族…私の憧れた………猛禽族…」
0:
0:
0:赤鷲の家
赤鷲の妻:「あ、こらぁ走らないの!ちゃんと体拭いて!はい、ゴシゴシーゴシゴシー。
赤鷲の妻:ほら拭いたらパジャマ着ようね?はーい、ばんざいして下さい。うん、上手上手!寝る前に歯を磨きましょうねぇ。
赤鷲の妻:奥歯ー前歯ーゴシゴシー、きれいになったかなー?うん、ピカピカ!かっこいいね!
赤鷲の妻:よし、じゃあ今日はもう寝ましょうね、電気消しますよー?おやすみなさい。え?絵本?もう、しょうがないなぁ。」
0:
烏:「ここが……赤鷲の…家……私が超えるべき、最強の住処…
烏:私は…今夜、ここで最強になれる…!」
0:足の包帯を巻きなおす烏
0:
0:
0:
0:夜中、妻がトイレに起きる
赤鷲の妻:「ん…トイレ……」
烏:「っ!」
赤鷲の妻:「っ!?あなた……?じゃ…ないっ!?」
烏:「しまっ…!」
赤鷲の妻:「え…だれ…!?」
0:口を塞ぐ烏
赤鷲の妻:「んぐっ!?」
烏:「静かにしろ…!」
赤鷲の妻:「んっ!?んんん!!」
烏:「ちっ!うるさい奴だ!」
0:別室に妻を連れ込み床に突き飛ばす
赤鷲の妻:「きゃあっ!?」
烏:「あんた…赤鷲の家族だな…?」
赤鷲の妻:「…あなた……誰なの?」
烏:「私の質問に答えろ…」
赤鷲の妻:「………ええ、そうよ。」
烏:「そう…まあいいか…どちらにせよ構わない。」
0:懐から拳銃を取り出し銃口を向ける
赤鷲の妻:「っ!?なんのつもり…!?」
烏:「本当は赤鷲本人か、子供を殺すつもりだったんだけど…この際あんたでもいい。死んでくれ。」
赤鷲の妻:「なんで…あなたどうしてこんなこと…」
烏:「私は力が欲しいんだよ。」
赤鷲の妻:「…力?」
烏:「ああ。誰にもバカにされない為に、絶対的な力が欲しいんだ。だから、私は猛禽族になるんだ。あんたの夫みたいな猛禽族に。」
赤鷲の妻:「だからって…なんでこんなことをする必要があるの?」
烏:「考えたんだよ。どうやれば猛禽族になれるのか、どうすれば力を得られるのか…をね。
烏:そしたら分かったんだ、最強の猛禽族を殺せば誰しもが私を認める、そうすれば私こそが最強の猛禽族になれるってね。」
赤鷲の妻:「…狂ってる……」
烏:「当たり前だよ。この街は力が全てだ、力に飢えた者が集まる街。この街において力こそが絶対なんだ。それを求めて何が悪い?」
赤鷲の妻:「力は、何も命を奪って得るものではないわ!」
烏:「周りを理解させるには人の死が最もなんだ!私は汚いゴミクズじゃない…醜いカラスでもない…高貴な猛禽類になるんだ!!
烏:それを証明させるのに命を奪う以外の選択肢はない!命を奪う事で、力は得られるんだ!」
赤鷲の妻:「っ!?」
烏:「産まれてからずっと1人で生きてきた、誰にも頼らず生きてきた、私は誰よりも強い!それを周りに認めさせるんだ!私の強さを知らしめて復讐をするんだよ!」
赤鷲の妻:「今わかったわ…そう…やっぱりそうなのね…あなた…」
烏:「…なんだ?」
赤鷲の妻:「あなた………誰からも愛されたことないのね…」
烏:「っ!!」
赤鷲の妻:「知ってる?愛は、何よりも強い力なのよ。」
烏:「そんなもの…知るか…!愛なんてもの…そんなものがなんになるってんだ!そんなもの私には必要ない…!愛された事が無いからなんだ!愛されなくても私は強い!」
赤鷲の妻:「少なくともあなたを産んでくれたお母さんはきっと、あなたを愛して…」
烏:「うるさい!うるさいうるさいうるさいっ!!黙れぇええええ!!」
0:妻の頭、胸、腹に向かって発砲する
0:
0:帰宅する赤鷲
0:
赤鷲:「少し遅くなったな…もう寝てるかな……ただいまー。」
0:叫び声が奥の部屋から聞こえる
赤鷲:「っ!?なんだ…?何事だ!?」
0:奥の部屋の扉を開けた瞬間、赤鷲の全身に血が降りかかった
赤鷲:「……あ…あ…」
0:
赤鷲:【N】何が起きたのか、理解するまで時間がかかった。いや、理解をしたくなかったんだと思う
赤鷲:扉を開けた先に居たのは、全身黒ずくめの誰かと………俺の足元に転がった…血まみれの俺の妻…
赤鷲:黒い奴の手には、妻のものであろう血がついた黒い拳銃が握られていた
0:
赤鷲:「…なんだ…これは……?黒いの…お前…何をしている…?」
烏:「……赤鷲…ようやく帰ってきましたか……は、はは…見てください…私が…あなたの妻を殺してやりました。
烏:私が…!この手で…!殺したんですよ…!!」
赤鷲:「あ……あ…ああああああああああああ!!!!」
0:鬼の形相で懐からナイフを取り出し烏に切りかかり、額に傷をつける
烏:「がっ!?」
赤鷲:「うああああああああ!!!」
0:銃を乱射する赤鷲
烏:「くそ…!!」
赤鷲:「うおおおらあああああ!!」
烏:「こいつ…理性を失っている…!このままじゃ…危険だ…!」
赤鷲:「黒いのおおおおおお!!!」
烏:「こんの…!」
0:銃を乱射し応戦する烏、左腕を撃たれる赤鷲
赤鷲:「ぐううああ!!」
烏:「まだ怯まないのか…!?化け物め…!」
赤鷲:「殺す…!殺してやる!」
烏:「っ…!これ以上はまずい…撤退するしか……!」
赤鷲:「逃がすわけねえだろ!黒いの!!」
0:烏の左肩に投擲されたナイフが刺さり、すかさず拳で殴りかかりに行く赤鷲
烏:「がはあぁっ!」
赤鷲:「うおおおおお!!」
烏:「ちっくしょう…!こんなナイフ返してやる!」
0:ナイフで足の甲を刺される
赤鷲:「ぐぅうああっ!」
烏:「はぁ…はあ……さすが最強の猛禽族…一筋縄ではいかないか…」
赤鷲:「テメエ…殺す…殺しつくしてやる!!テメエの面が二度と拝めねえようにこの手で…!!」
烏:「まだ動けるのか!?」
赤鷲:「テメエを殺すまでだ!!」
烏:「ちっ…仕方がない……赤鷲…!!私はいつか必ず……お前を殺して最強になる…!最弱のカラスから最強の猛禽族に…!それまで待っていろ!!」
0:窓から飛び出し逃げる烏
赤鷲:「なっ!?黒いのおおお!待ちやがれえええ!!!
赤鷲:待ちやがれ…クソがあああああ!!」
赤鷲の妻:「……あ…なた……」
赤鷲:「っ!!?おい!!ここにいるぞ!」
赤鷲の妻:「……。」
赤鷲:「なんだ?なんて言ってるんだ!」
赤鷲の妻:「…あ……いし…て、る……」
赤鷲:「あ…ああああ…どうしてこんな…どうしてっ!!」
0:妻の遺体に顔を伏せ泣く赤鷲
0:そこに子供が目を覚まし起きてくる
赤鷲:「っ!お…お前…無事だったのか………!!」
0:
赤鷲:【N】子供は無事だった、それだけでも良かった…しかしこのままこの子をこの街に残していては、また黒いのが襲ってくる危険性もある…
赤鷲:今ここで俺がやるべき事は……この子を俺の元から引き離す事…俺なんかと居ちゃいけない、危険が無いように、二度とこの街に戻って来れないように…
0:
赤鷲:「よお……すまねえな坊主。もう、テメエの大切なモノはここには居ねえ……見ての通り、俺が食っちまった。
赤鷲:…ほら、テメエはさっさと行け。ガキは食わねえ主義だが、あまりちょろちょろしてっと…コイツみたいになっちまうぞ?」
0:怯えた表情で妻の遺体と赤鷲を交互に見る子供
赤鷲:「何してんだ!!さっさと行きやがれ!それともコイツみてえになりてえのか!?なりたくねえならこの街から出ていきやがれ!!」
0:泣きながら走り去る子供を見送り、座り込む赤鷲
赤鷲:「…ごめん…ごめんな…こんな事しかお前を守る方法が思いつかねえんだ……」
0:子供が描いた赤鷲の似顔絵が床に落ちている
赤鷲:「…こんな街に居る以上…こうなることは予測できたはずなのに…いつからか俺は平和ボケしすぎていた……………俺が居ながら何も守れなかった…
赤鷲:…もう、お前らみたいな犠牲者は出さねえように…俺は今より力をつけてやる……その為に…そうだ、この街は力が全てだ…愛なんてものじゃ誰も救えやしねえ…絶対的な暴力で……支配してやる
赤鷲:そして……あの黒いのを……この手で…殺してやる……!」
0:
0:
0:
0:傷ついた烏が走って逃げている
烏:「はあ…はあ……赤鷲を殺せなかった……でも、妻を殺せた…はは…殺したんだ…あの赤鷲の家族を殺したんだ…!!
烏:私にも人を殺せる!この手で命を奪ったんだ!!そしてあの赤鷲の心を抉ったんだ…!!そうだ…いずれまたあいつと戦った時に今回の出来事は使えるかもしれない…私がお前の妻を殺したってね!
烏:そうしたらまたあいつは、今日みたいに錯乱するかもしれない。そうして出来た隙を狙えば…!!
烏:人は何より、過去のトラウマに弱いからね…それにしても錯乱したあの顔…最高だった!はは、はははは…!!」
瑠璃隼:「っ!誰だキミは!あの時の……カラス…!」
烏:「お前は…そうだ…今の私なら…」
瑠璃隼:「こんな所で何をしている。ここは既に私のテリトリーだ。お前のようなコソ泥が居ていい所ではない。この街の秩序の為、ここで何をしていたか吐いてもらおう。」
0:左手に拳銃、右手に警棒を構える瑠璃隼
烏:「…これはこれは……怖いですね…でもいいタイミングだ…私が最強になる為の糧となって下さい。」
瑠璃隼:「何を言って…っ!?」
烏:「遅いです。はああ!!」
瑠璃隼:「ぐっああっ!?」
0:掌底を腹部に食らわす
烏:「どうしたんですか?威勢の割に大したことないですね。秩序の猛禽族さん。」
瑠璃隼:「ぐ…舐めるなよ社会のゴミがぁああ!」
0:警棒で烏の腹部に強力な突きをいれる
烏:「あがぁあっ!?」
瑠璃隼:「ゴミの分際で、よくも俺をコケにしてくれたなぁああ!」
烏:「がはああっ!」
瑠璃隼:「はあ…はあ……俺はお前と違って力ある存在だ。カラス如きが粋がるなよ。」
烏:「…ぐ…ふふふ…」
瑠璃隼:「なにがおかしい…?」
烏:「いえ?あなた、他人を過小評価して自身を過大評価しすぎですよ…」
瑠璃隼:「何が言いたい…」
烏:「あなたは、あなたが思っているよりも弱いんですっ!」
瑠璃隼:「なっ!?姿が消えっ!?」
0:瑠璃隼の懐から強力な上段蹴りを放つ
瑠璃隼:「ぐあああああああっ!!」
烏:「強い正義を語るには、いささか力不足なんですよ…」
瑠璃隼:「ぐ、くそ…がぁ…」
烏:「おっと…誰が立ち上がっていいと言ったんですか?」
瑠璃隼:「がはっ!?」
烏:「私を見下した自身を恨むんですね…おらっ!」
瑠璃隼:「こ…の……!」
烏:「ほらほら!下等と見下していた私に、蹴られる気分はどうですか!見下していたゴミのように蹴られる気分は!」
瑠璃隼:「っ…舐めるなよ…下等なカラスめ…!」
烏:「…下等なカラス……ですか。はあ…言いたいことはそれだけですか?」
瑠璃隼:「な…まて、やめろ撃つな…!!」
烏:「死ぬと分かったら命乞いですか。」
瑠璃隼:「やめろ!!おい!!」
烏:「可哀そうな正義でしたね。ばーん。」
0:瑠璃隼の頭を数発撃ち抜く
烏:「私をバカにしてきた報いですよ…バカな隼さん……もう、私を止められる人は居ない……ふふ…私は私の存在をこの街に知らしめてやる…その為に…もっと力を付けなければ…」
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0:帰り道を歩く桃鶚
桃鶚:「はぁ、もうすっかり遅くなっちゃった。せっかくバッチシ決めたメイクも乱れちゃったじゃないのよ…るりりんのバーカ!はあ、もうお腹ペッコペコ~!
桃鶚:ご飯なーに食べようかしら…きゃっ!?」
0:桃鶚にぶつかったのは赤鷲の子供
桃鶚:「あら…こんな夜中に子供が1人で何してるのかしら?こんばんは坊や、お母さんは?分かる?
桃鶚:…って、アナタどうしたのそんなに泣いて……怖かったのね…よしよし…もう怖くないわよ、安心して…ね?」
0:子供を優しく抱き撫でる桃鶚
桃鶚:「うん、落ち着いたみたいね、えらいえらい。お名前は?言える?」
0:子供は拙い言葉で「あかわし」と答えた
桃鶚:「っ!?あかわし?赤鷲って言った…?もしかしてアナタ…赤ちゃんの…?言われてみれば少し面影あるわね………うん、わかったわ、一旦アタシの家においで。」
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0:桃鶚の家、赤鷲の子供はベッドで寝ている
桃鶚:「…なるほどね。今メンバーに調べさせたけど…そういう事……はぁ、赤ちゃんたらほんと不器用ね…多分この子に危険が無いようにって逃がしたんだろうけど…ほんとバカな人…
桃鶚:それにしても、あのカラスちゃんがね……失う物が無い人は強者になる…あの子の場合は狂者って所かしらね。
桃鶚:……でもこの子どうしようかしら、このままここで……ううん、そんな事はダメ…この子はこんな街に居ちゃダメ、またあのカラスちゃんに狙われるかもしれない。
桃鶚:それに、こんな街で育ったりしたらせっかく赤ちゃんが逃がしてくれたのに、それを無駄にする事になる………そうだわ…!」
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0:遠い港町の墓石の前
赤鷲:「……海、綺麗だな。そういえば2人で海に来たのって、結婚してからは無かったよな。
赤鷲:……なあ?知ってるか?今、俺はあの街で絶対王者って呼ばれてんだ…暴力によって街のほとんどを支配する猛禽族って…
赤鷲:あんなに、俺に優しさをお教えてくれたのにな…ごめんな……でも、これでいいんだ。もうお前のように誰も大切な人を失いたくないから。
赤鷲:俺はもう、後戻りできないんだ。アイツを殺すまでな……だから、それまでここには帰ってこない。ごめんな………それじゃあな…愛している。」
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赤鷲:【N】この街は力が全てだ
瑠璃隼:【N】規律と秩序を重んじた隼は、行き過ぎた正義に溺れその身を滅ぼした
桃鶚:【N】欲を求めた鶚は、迷える鳥の子と共に籠の外へと飛び立った
赤鷲の妻:【N】鷲を愛した者は、最後までその愛の力を貫き通した
赤鷲:【N】家族を愛した鷲は、最愛の家族を殺され、愛を捨て絶対的な暴力を手にした
烏:【N】そして蔑まれてきた烏(からす)は…全てに復讐する為の爪を研ぎ始めた
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烏:【N】これは、力を欲した鳥と
赤鷲:【N】力を持った鳥の、血塗られた過去の話
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烏:【N】そして烏は、黒の百舌(もず)へと昇華する