台本概要

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タイトル てんしがえり。
作者名 なぎ@泣き虫保護者  (@fuyu_number10)
ジャンル ファンタジー
演者人数 7人用台本(男2、女6) ※兼役あり
時間 60 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 拙作「私の天使。」の大元になった、20年近く前の台本をこちらで読めるようアップしてみました。
なので登場人物(小春と日和)はそのままとなっています。

登場人物が多く、また長編の台本ですので、約束劇にお使いになられることを推奨します。

るぅ、ルーテシアは同一人物ですので兼役にて。
晶穂はセリフが少ないですので看護師のセリフもお願いします。

※台本をご利用になる際は、Twitterにてぜひお報せくださいませ。
お伺いできる限り聴かせていただければと存じます。

なお、特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
小春 177 霜月 小春(しもつき こはる)。姉妹の姉。かっこいい感じ。
日和 145 霜月 日和(しもつき ひより)。姉妹の妹。無邪気。
俊輔 60 風祭 俊輔(かざまつり しゅんすけ)。姉妹の友人で、父は博物学者。
るぅ 38 ルーテシアと兼役(犬の鳴き声も演じてもらえると嬉しいです)
ルーテシア 73 るぅと兼役。権天使。
メリーヴァ 24 ルーテシアの上司にあたる。力天使。性格がスナック菓子のように軽い。
26 かけい、と読みます。日和の担任。
晶穂 13 南 晶穂(みなみ あきほ)。日和のクラスメイト。(看護師も兼ね役)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:クリスマス前のショッピングモール。日和、小春と買い物。 日和:付き合わせちゃって、ごめんね、お姉ちゃん。お休みの日なのに・・・。 小春:気にすんな。どうせアタシも暇だったし、いろいろ見れたからな。 日和:あはは!でもやっぱりお姉ちゃんは頼りになるよ~。日和よりお姉ちゃんの方が服の見立て上手いし。 小春:アンタの好みは大体知ってるから、一つパーツが決まれば後は楽なんだよ。 日和:そっかぁ~、やっぱりおねえちゃんは凄い! 小春:で、それ着て俊坊(しゅんぼう)とデートでもすんのか?もうすぐクリスマスだしな。 日和:へ?わっ、はわっ、違うよぉ、これは・・・(ごにょごにょ)あ!お姉ちゃんこそ、早く彼氏作ればいいのに~!メガネ取ったら、モテると思うけどなぁ~!そうだ!コンタクトにして・・・(以下延々と)。 小春:アタシは別にいいんだよ(ふっと笑う)。ん・・・日和、犬だ。 日和:犬?あ~ホントだ!可愛い!尻尾ぱたぱたしてる~!かわいい・・・! 小春:アンタは動物好きだね・・・。 日和:あ!そっち行っちゃだめだよ! 小春:え!?あっ・・・! 日和:っ!? 0:衝撃音の後、日和がトラックにはねられたが、日和の姿が忽然と消える。 小春:う、そ・・・日和、日和!?どこ、どこなの?・・・どうして・・・?日和、日和ぃ!! 日和:お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・お姉ちゃん? 小春:・・・え?ひ・・・日和?どうして・・・? 日和:ね、お姉ちゃん、見て見て!この子、可愛いでしょ~!(SE 犬がワンと鳴く) 小春:無事・・・だったの?だ、だってあんな、トラックに・・・日和っ! 日和:え?どうしたのお姉ちゃん?わわ・・・。 0:(小春、日和をボディチェックする) 小春:えっ、何これ、羽根?・・・翼!?・・・日和、アンタ身体は何ともない? 日和:え?・・・うん、何ともないけど・・・? 小春:そうか?でっ、でもアンタ、トラックにはねられたんだし、とにかく病院に行こう! 日和:う、うん・・・。 0:病院帰りの二人。 小春:しかしまぁ・・・検査結果も異常ないし、医者もびっくりはしてたけど問題ないって言ってたし、とりあえずは大丈夫なんだろうなぁ・・・。 日和:お姉ちゃん、クッキー食べる? 小春:おぉ、さんきゅ・・・って日和。 日和:なぁに? 0:日和、クッキーとコーヒーをテーブルに置く。 小春:本当に体は何ともないわけ? 日和:うん、大丈夫だよ!背中に翼があるのにはびっくりだけど・・・。 小春:そう、それだ・・・翼が問題なんだよ。どうしていきなりこんな・・・。 0:犬が鳴く。 小春:・・・しかもさっきの犬、連れてきてるし。 日和:だって・・・その・・・えっとぉ・・・(ごにょごにょ)。 小春:・・・飼う気か!?おぃ日和ぃ、勘弁してくれ・・・。 日和:うん・・・ダメかなぁ? 0:犬がまた鳴く。 小春:(ため息)・・・まぁ、これも何かの縁だろ。しばらく置いてやろうか。 日和:ホント!?やったぁ~! 小春:その代わり面倒は日和が見なよ。 日和:うんっ! 0:犬、さらに鳴く。 小春:アタシも甘いなぁ(苦笑)。それよりも問題は、日和の翼・・・。 小春:もっと大きな病院で見てもらったほうがいいのか・・・? 小春:いや、でもなぁ・・・自分で調べるか・・・。 0:犬が小春にすり寄る 小春:(ため息)気楽なもんだな、お前は・・・。 0:犬がしょげる。 小春:ま、お前を責めても仕方ないわけだ・・・日和? 日和:なぁに? 小春:俊坊呼んでいいか? 日和:俊くん? 小春:俊坊なら何か知ってるかもしれない。とりあえずその翼を見てもらおう。 日和:うん・・・。 0:俊輔がやってくる。 俊輔:こんにちは、日和。 日和:あ!俊くん!ヤッホ~! 俊輔:どうしたの、日和、その羽根・・・コスプレでも始めたの? 日和:ぁぅ・・・ちがうんだよ~(しょんぼりする)。 小春:俊坊、とりあえず座って。 俊輔:あ、うん・・・コスプレじゃないって、・・・新しいおしゃれとか? 日和:でもなくってっ!本物の翼なの! 小春:あ~、・・・俊坊、とりあえず触ってみ? 俊輔:あ、うん・・・日和、いい? 日和:うん・・・っ!!くすぐったいっ!! 俊輔:・・・え!? 小春:というわけだ。本物なワケ。 俊輔:でもどうしてこんな・・・? 小春:さっき、買い物帰りに日和が犬を助けようとしてトラックにはねられたんだ。 俊輔:えぇっ!? 小春:で、気づいたら日和は羽根が生えてはいるけどぴんぴんしてるんだ。 小春:もう何がなんだか分からなくなって、それで俊坊に助けを求めた、ってわけだ。 俊輔:はねられたのに・・・?ん~・・・じゃぁさ、その事故があった現場に戻ってみる、っていうのはどうかな? 小春:現場に・・・戻る? 俊輔:うん。やっぱり手がかりって現場に残されてると思うんだよ。 俊輔:警察の現場検証とかが入ってるかもしれないけど、行かない手はないと思うよ。 小春:なるほどねぇ・・・。 日和:おぉ~、さっすが俊くん! 俊輔:推理小説とかでかじっただけだけどね。 小春:とにかく、行ってみることにしようか・・・っとと、日和、アンタは留守番。 日和:え~!なんで?どうして? 小春:そのカッコだと目立つからだよ。日和だって、変なコだと思われたくないだろ? 日和:ぅぅ・・・(しぶしぶ)わかった・・・。 小春:で、犬・・・。 0:犬、一つ吠える 小春:お前は鼻が利くだろうから手伝ってもらうか。 0:事件のあった場所。俊輔は聴き込みをする。 俊輔:そうですか・・・ありがとうございました。 小春:・・・(ため息)何にもないなぁ・・・。 俊輔:小春さん、小春さん。 小春:どうした?俊坊。 俊輔:本当にここで事故があったの? 小春:どういうこと? 俊輔:現場検証どころか、事故の跡形が全然ないみたいなんだよね。 俊輔:普通なら細かい破片・・・ほら、たとえばヘッドライトとか 俊輔:テールライトのが散らばったりしてるはずなんだけど・・・。 俊輔:それに、この辺の人に聞いたら、事故のこと、誰も知らないって言ってるし・・・。 小春:そんな、アタシは確かに日和がトラックに・・・そうだ、 小春:「キャットワーク」のトラック!アレにはねられるところをちゃんと見たのに・・・。 俊輔:そのトラックのナンバーって覚えてる? 小春:・・・ごめん、覚えてない。 0:犬、俊輔に近づく。 俊輔:どうしたの? 0:犬がラッパの形の金属板を持ってくる。 俊輔:・・・これ・・・。 小春:ん、どうした、俊坊? 俊輔:これ、ラッパ・・・だよねぇ。 小春:どれどれ~?ん、ラッパだな・・・。 0:犬がめちゃくちゃ吠える。 小春:ん~?どうした~? 0:犬がひたすら吠える。 小春:もしかして・・・お前のか? 0:犬がそうだ、と言わんばかりに一つ吠える。 小春:お前、よく見たらほっそい首輪してるじゃないか・・・よ・・・っと。これでどうだ? 0:犬にラッパの金属板をつけると、嬉しそうに吠える 小春:ん、良かったな。 俊輔:でも結局、日和の翼の手がかりは見つからなかったね。 小春:そうだなぁ・・・そりゃぁ最初から簡単に見つかるとは思ってなかったけどな。 俊輔:でも、この子の手がかりが見つかっただけでも、良しとしなきゃ。この子の飼い主もちゃんと調べるべきだろうし。 小春:・・・ま、そうだな。あんまり遅くなるのもまずいし、今日はそろそろ帰るか。 俊輔:そうだね・・・ボクも帰ってから調べてみるよ。 小春:ん、よろしくな、俊坊。 俊輔:うん。 0:場面転換。霜月家。 日和:おやすみなさい、お姉ちゃん! 小春:あぁ、お休み。 0:日和、自室に向かいながらひとり言。 日和:(ため息)この翼・・・何なのかなぁ・・・日和、本当は死んじゃったのかなぁ・・・。 日和:そうだ・・・ワンちゃんの名前、決めないとね~・・・ぅ~ん、何がいいかなぁ・・・女の子だし・・・? 日和:そだ!「るぅ」ちゃんにしよう! 君の名前は今日から「るぅ」だよ! 0:るぅ、嬉しそうに日和にすり寄る。 日和:るぅちゃん・・・るぅちゃん、元気かなぁ・・・? 0:日和の回想、幼少期。 日和:(鼻歌orルンルンで歌う) るぅ:(鼻歌にかぶせて)キャァ~ッ! 日和:・・・何・・・?すごい音した・・・教会の方からだ・・・。 日和:(数秒の間、その後)・・・? るぅ:っ、くぅっ・・・。 日和:わ、わっ・・・ね、大丈夫? るぅ:ん・・・く・・・木から・・・落ち・・・。 日和:はわ、喋らない方がいいよぉ!えっとえっと・・・誰か呼んでくる!! 0:とある病院の病室 日和:る~ぅちゃんっ! るぅ:日和・・・今日も・・・来てくれたんだ 日和:うん。・・・邪魔だったかなぁ? るぅ:そんなこと・・・ないよ。 日和:良かった~!日和ね、お友達あんまりいないから、るぅちゃんと会うの、楽しみなんだぁ~! るぅ:そっか(少し笑う)。 日和:そうだ~、今日はこれ、持ってきたんだよぉ。 SE 日和、かばんを漁る。 日和:はいっ。 るぅ:・・・ぬいぐるみ? 日和:うんっ、レベッカ、っていうんだ! るぅ:・・・レベッカ? 日和:そうそう、レベッカ!小春お姉ちゃんが、名前、つけてくれたの! るぅ:・・・可愛いね、レベッカ。 日和:でしょ~!?それでねそれでね・・・。 0:さらにシーンが変わって、るぅ退院の日。 看護師:退院、おめでとう(と言って花束を手渡す) るぅ:・・・(少し笑って)ありがと・・・。 日和:るぅちゃん、一人で、帰るの・・・? るぅ:うん。おうち、近いから。 日和:送っていく? るぅ:ううん、いいよ・・・大丈夫。 日和:るぅちゃん、元気ないよぅ・・・ホントに大丈夫? るぅ:・・・日和。 日和:何? るぅ:・・・ 日和:どうしたの? るぅ:・・・日和とは、今日でお別れなの。 日和:えっ?どうして? るぅ:お引越し、するの・・・ずっと、ず~っと遠くに。 日和:!?ウソ・・・だよね、るぅちゃん?退院したら、一緒に遊ぼうって、言ったよね? るぅ:・・・ごめんなさい・・・。 日和:!・・・(たっぷり間を取って)お引越し、だもんね・・・仕方ない、よ、ね・・・(半泣きで)。 るぅ:日和、レベッカ、返さなきゃ。 日和:・・・(無理に笑って)いいよ、それはるぅちゃんが持ってて! るぅ:え?でも日和の大切な・・・。 日和:大切だけど、日和のこと、覚えてて欲しいから、レベッカ、るぅちゃんが持ってて。 るぅ:・・・分かった。じゃぁ、日和にはこれをあげる。 日和:え・・・? 日和:これ、るぅちゃんの・・・。 るぅ:私の大事なペンダント。日和が持ってて。時々でいい、私のこと、思い出して・・・。 日和:るぅちゃんっ(日和、るぅに抱きつく)!! るぅ:ん・・・(そっと日和を抱き返す)。 日和:(泣きながら)うっ、う・・・また、会えるよね? るぅ:うん、信じていれば、きっと会える。 日和:うん、うんっ!絶対、絶対また、会おうね!? るぅ:ん・・・約束。・・・それじゃ、ね? 日和:・・・うん・・・。 るぅ:(病院の門から歩いて出て行く) 日和:・・・るぅちゃん(日和、るぅを追いかける)!! 日和:!?あれ?るぅちゃん?・・・いなく、なっちゃった・・・? 0:回想シーン終了、日和の自室。 日和:るぅちゃん、今どこで、何してるのかなぁ・・・? 0:翌朝、霜月家。 小春:おーい、日和~? 日和:はわっ?何?お姉ちゃん? 小春:メシ、どうする? 日和:食べるよ~!今行く~! 小春:ドッグフードなんて、買ってる暇なかったから、わんこ、お前にゃシリアルをやろう。 日和:シリアルなんて食べるかなぁ? 小春:こいつに聞かんと分からんよ。・・・そういえば日和、こいつの名前とか考えたのか? 日和:うんっ、・・・「るぅ」! 小春:「るぅ」? 日和:そう、「るぅ」ちゃん。 小春:るぅ、か・・・おい、るぅ、日和のおかげでお前は助かったんだぞ~?分かってるか~? 0:るぅがひと鳴き。 小春:(ため息)呑気なもんだな。ほれ、ひっくり返って服従のポーズとかしてみ、ほれほれ。 0:るぅがしょげる 日和:お姉ちゃん!もうるぅをいじめちゃダメ!それよりご飯にしようよ! 小春:あ、あぁ・・・そだな。 0:三日後。 小春:(N)そして、事故から三日がたったが、日和の身体には特に・・・ 小春:(N)翼以外の変化はなかった。さすがに学校に行かせるわけにもいかないので、 小春:(N)とりあえず一週間の休みをとっている。 小春:(N)で、頼みの俊坊は、と言えば・・・家から見事に手がかりを持ってきてくれた。 俊輔:父さんの書斎にある本を引っかきまわしてみたら、こんな文献があったんだ。 俊輔:さすがに現物は持ってこれないから、スキャンしてから印刷したんだけど・・・。 小春:・・・何だこれ・・・「天使還り(てんしがえり)」? 俊輔:そう。なんでも生前にある一定の条件を満たすと、死後に天使になるんだって。 俊輔:その現象とか、天使になった人のことを「天使還り」って呼ぶんだって。 小春:・・・日和が、「天使還り」だ、ってことか・・・?でも、その条件って、何だ? 俊輔:それについては残念ながら載ってなかったんだ。しかも、その条件を満たしていても、天使還りになる確率って、相当低いって、書いてあるでしょ? 小春:ん~・・・条件と、・・・運、か。 俊輔:ぶっちゃけちゃうと、ね。 日和:ねーねー、俊くん、「天使還り」って、日和が天使になっちゃった、 日和:ってことだよね?と言うことはやっぱり日和、死んじゃったの・・・? 俊輔:死んだ、とか生きてる、っていう定義も結構難しいね、この場合だと・・・。 0:玄関チャイムが鳴る 小春:ん、誰だこんな時間に・・・。 日和:あ、日和出るよ! 小春:アンタはだめ。アタシが行く。 小春:はいは~い、今行きますよっと(と玄関を開けると小春の見知らぬ二人組が)はい? 筧:こんばんは、日和さんの担任の筧(かけい)です。 晶穂:日和さんのクラスメイトの南 晶穂(みなみ あきほ)といいます。 小春:あ、こりゃどうも。いつも妹がお世話になってます。日和の姉の小春です。 筧:どうも。あ、お母さまかお父さまはいらっしゃいますか?実は日和さんのことでお話がありまして・・・ 小春:あいにく両親は不在です、姉の・・・アタシでよければお聞きしますけど。 筧:そうでしたか。実は日和さんの具合と、進路の件で、どうしてもお話しておきたいことが。 小春:あ、そうなんですか・・・とりあえず中へどうぞ。 0:小春、二人を家の中に通す。 小春:じゃぁ、どうぞこちらに。 筧:あ、これはどうも。 晶穂:失礼します。 小春:今お茶入れてきますね。 筧:あ、お構いなく・・・。 0:小春、別室の日和に声をかける。 日和:(小声)お姉ちゃん? 小春:(小声)アンタは部屋に居な。俊坊、アンタは日和と一緒に居てやってくれ。 俊輔:(小声)うん、分かった。 0:間。小春が二人にお茶を出す。 小春:粗茶ですが。 筧:あ、どうも。 晶穂:ありがとうございます。 筧:さて、早速ですが、日和さんのお話を。どうですか?進路の話とか、されてます? 小春:んー、特には聞いてないですねぇ。 筧:そうですか。日和さんも2年生ってことで、そろそろ決めていったほうが良いかと思ってるんですが・・・。 晶穂:あ、すみません。お手洗い、お借りしていいですか? 小春:あ、どうぞどうぞ。場所分かる? 晶穂:はい、大丈夫です。 筧:・・・では、また小春さんの方からも、進路のこと、言っておいてください。 小春:分かりました。 筧:ところで、日和さんの具合はいかがですか? 小春:はぁ、回復はしてるんですけど、まだちょっと・・・。 筧:そうですか。まぁ体調というより、精神的なショックの方が大きいと思いますけどね 小春:? 筧:小春さん、「天使還り」というのをご存知ですか? 小春:!? 0:どたどたと足音がする。 晶穂:先生、日和さんを連れてきました。 筧:ご苦労様です、晶穂。 日和:せんせー、これどういうこと? 筧:日和さんこんにちは。日和さんが「天使還り」したのは本当なんですねぇ・・・見事な翼だ。 小春:・・・(筧と晶穂をにらむ)アンタ達、教師と生徒じゃないのか? 筧:表向きはね。私たちは「天使還り」に遭った人たちを「保護」する組織、 筧:「エンジェル・ハイロゥ」の一員です。 筧:日和さんが「天使還り」に遭ったという情報を入手して、 筧:日和さんの「保護」のために来た、というわけです。 小春:保護・・・? 筧:もっとも、当然保護はしますが、「天使還り」にはまだ分からないことも多いですし・・・。 晶穂:しかも外国、特に欧米では、その珍しさから・・・色々とあるんですよ(くすっと笑う)。 小春:アンタら、大概にしておいたほうがいいわよ・・・アンタ達に日和は渡さない。 筧:参ったな・・・。 晶穂:交渉決裂、ですか? 筧:そのようだね。じゃ、晶穂。 日和:ちょ、ちょっと南さん!? 0:小春、晶穂の手をつかむ。 晶穂:何ですか?離してください。 小春:よくもまぁいけしゃあしゃあと言えたもんね・・・っ!日和を離しなさい! 0:晶穂、突き飛ばされる。 筧:おぉっと。乱暴は良くないですねぇ。さ、日和さん、こっちに。 日和:ぃ、や・・・。 俊輔:日和、嫌がってるじゃないか。小春さんも、先生たちには渡さないって・・・。 俊輔:聞こえなかったの? 日和:ぁ、俊くん・・・。 0:るぅが激しく吠える(何かるぅがオーラを出してる雰囲気) 筧:風祭君、君に何ができ・・・ん!?この犬、まさか・・・。 筧:(ため息)分かりました。今日のところは退散しましょう。 筧:晶穂、生きてますか? 晶穂:どうにか。小春さん、バカ力ですね。 晶穂:・・・それと日和さん、風祭君、色々気をつけてね・・・クラスメートとしての忠告よ。 0:るぅが激しく吠える中、二人は退室。ドアが開いて閉まる。 俊輔:ふぅ・・・みんな、大丈夫? 小春:アタシは大丈夫。にしても・・・バカ力か。傷つくねぇ。 俊輔:(苦笑)日和? 日和:んも~、何がどうなってるの~ぉ?・・・るぅは突然凄く吠えちゃって・・・様子もおかしいし・・・。 俊輔:日和、分からない?筧先生と南さんは、日和を本当に保護なんてしようとしてない。 小春:そうだぞ、日和。あいつらはアンタを人体実験か何かに使うつもりだ。 小春:あぁいう手の人間を信用しちゃだめだ。 日和:でもでも、筧先生も南さんもいつもすごく良くしてくれるよ! 小春:日和、さっきその先生と南さんとやらの話、おかしいだろ? 小春:何で学校の先生やら生徒がそんな組織にいるんだよ。 小春:それにこんなタイミングで話なんてしに来ないだろ?日和の心配のほうが先のはずだ。 日和:でも・・・。 小春:少なくともあの連中は、普通の人たちじゃない、ってことだよ。 小春:日和、アンタはアタシと俊坊が守る。 俊輔:小春さんはともかく、ボクが役に立つかどうかは分からないけどね。 小春:こらこら俊坊、アンタまでアタシが無敵に強いみたいな言い方するんじゃない。 小春:ちょっと傷つくぞ。アタシも女だ。 俊輔:え!あ、ごめんなさい・・・。 小春:まぁ、冗談はさておいて。これからどうするか、だ。俊坊、どう思う? 俊輔:問題は、日和がこのあとどうなっちゃうのか、だと思うんだ。本当に日和が天使になったのなら、・・・。 日和:俊くん? 俊輔:天使の世界って、調べてみたら階級社会なんだよね。 俊輔:で、天使によってその階級も、役割も違うんだって。 俊輔:日和の階級とか役目、っていうのが分からないから、 俊輔:何とも言いようがないんだよね・・・。 小春:なるほどな。 0:間。場面転換。日和の自室にて。 日和:どうしてこうなっちゃったのかなぁ・・・。 日和:・・・るぅ、「天使還り」ってどうしてあるんだと思う? るぅ:・・・「天使還り」は、本当は禁じられたものなの。だから、日和は本当に特別・・・。 日和:え!?る、るぅ?え・・・? るぅ:事故のときからそばにいたけど、久しぶり、日和。 0:るぅが天使の姿に変わる。 日和:ふわぁ・・・本物の天使さん・・・? 日和:おっ、お姉ちゃ(るぅに口をふさがれる)・・・む~? るぅ:日和、覚えてない?私はるぅ。あの時、私は日和にレベッカをもらった・・・ 日和:レベッカ・・・?じゃ、じゃぁるぅは、あのときの本当のるぅちゃんなの!? るぅ:そう(とどこからともなくレベッカを取り出し)ほら、レベッカ 日和:ぁ・・・レベッカだ・・・じゃぁ、本当に、るぅちゃん・・・? るぅ:日和、ペンダント、持ってる? 日和:うん、持ってるよ!ちょっと待ってて! 0:日和が机の引き出しを開けて、ペンダントを取り出す。 日和:ほら! るぅ:本当だ・・・良かった。 日和:(泣きながら)るぅちゃぁん・・・会いたかったよぉ! るぅ:・・・私も・・・。 日和:っ、そうだ!るぅちゃん、「天使還り」の話! るぅ:うん・・・「天使還り」は、天界の人材不足を解消するための、最後の手段・・・。 日和:人材・・・不足?最後の手段? るぅ:遥か昔に、天界で天使の人材不足があったの。天使は神様のお使いだって、日和は知っている? 日和:聞いたことは、あるよ。さっきも俊くんがそんな話、してた。 るぅ:天使は人間に神様のご意思を伝えたり、人間を守護したりするものなの。 るぅ:でも、人間界の人口が爆発的に増えて、天使の数が追いつかなくなったの。 日和:うん。 るぅ:天使はこのままでは仕事が出来なくなるから、天使の数を増やすことを考えたの。その手段が「天使還り」。 日和:っ! るぅ:だから・・・「天使還り」は・・・。 日和:そんな・・・。 るぅ:あの時から日和は私を「るぅ」って呼んでくれてたけど、本当の名前は、「ルーテシア」。 日和:ルー・・・テ・・・シア・・・? ルーテシア:日和、私はあなたに謝らないといけない。 日和:どうして? ルーテシア:日和に「天使還り」をしたのは、・・・私。 日和:えっ・・・? ルーテシア:私は久しぶりに日和に会うチャンスをもらったの。 ルーテシア:それで、日和を驚かそうと思って、犬の姿になった。でも私の不注意で、間違って車道に出てしまった。 日和:それじゃ・・・。 ルーテシア:日和は私を助けようとしてくれたけど、 ルーテシア:そのままトラックにはねられてしまった。 ルーテシア:私は日和に何としても生きて、・・・そして私に気づいて欲しかったの。 ルーテシア:そのためには、「天使還り」しかなかった。本当は、「天使還り」は禁じ手なの。 ルーテシア:日和・・・これだけは信じて欲しい。 ルーテシア:私は、日和との約束を、あの時の約束を、果たしたかった。それだけ・・・それだけなの。 日和:私は・・・私は・・・。 ルーテシア:・・・日和・・・。 日和:どうしたら、どうしたらいいの・・・?ねぇるぅちゃん!教えてよっ!! ルーテシア:・・・。 0:日和の部屋の扉がノックされる。 小春:お~い、日和、どうした?具合でも悪いのか? 日和:お姉ちゃん・・・?ぁ、大丈夫・・・。 小春:入るぞ~。 0:ドアが開く。 小春:ひよ・・・あれ?誰だアンタ?・・・ってか、るぅはどこ行った? ルーテシア:あ、私・・・が・・・。 小春:まさかアンタがるぅだとか言うんじゃないよなぁ? 日和:お姉ちゃん・・・うわぁああ~ん(派手に泣き出す)!!! 小春:お!?ひ、日和!?どうした? 0:日和、小春に状況を説明する。 小春:ぅ~・・・マジかぁ~っ・・・でも現に日和はぴんぴんしてるし・・・。 日和:(ぐずる) 小春:しかしなぁ・・・いきなりの展開だな・・・ってか、ルーテシア、いつまでもそこで突っ立ってないで、こっちにおいで。ここに座って。 ルーテシア:あっ、あの・・・怒って・・・。 小春:もちろん、怒ってる。でもな、この状況をどうにかするのが先だろ?・・・アタシもそれなりに冷静なつもりだ。 ルーテシア:・・・はい。 小春:・・・(ため息)まず当面の問題は、あの「エンジェル・ハイロゥ」の二人だな。 ルーテシア:そうですね。またいつ日和さんに接近するか、分かりませんし・・・。 小春:それと、一番大事なのは、日和のこと。 ルーテシア:・・・。 小春:さすがに日和も堪えてるからね・・・泣き疲れて寝ちゃったけどさ。 ルーテシア:私は、間違っていたのでしょうか・・・。 小春:ルーテシア? ルーテシア:私は、本当に、日和さんに会いたかった。約束を、果たしたかった。 ルーテシア:再会の、約束を。そして、また日和さんと仲良くしたかった。 小春:うん。 ルーテシア:でも、ただそれだけの理由で、日和さんをあんな目に・・・。 小春:ルーテシア、それは違うんじゃないか? ルーテシア:小春・・・さん・・・? 小春:アンタの気持ちは「ただそれだけ」っていう言葉で片付けられるのか? 小春:そんな安いものなのか? ルーテシア:・・・いえ、私にとって、日和さんとの約束は、私の存在意義、です。 小春:それなら、そんな風に言うんじゃないよ。 小春:日和だって、そんな言い方、されたくないはずだ。 ルーテシア:・・・ですが、日和さんがいまの状態なのは、私の・・・。 小春:ストップ。今はとにかくそれ以上、言うんじゃないよ。 ルーテシア:小春さん・・・。 小春:そういえば、俊坊が言ってた、「天使の階級とか役目」ってのは、何なんだ? 小春:ルーテシア、何か知ってるんだろ? ルーテシア:天使にも階級があるのは俊輔さんがおっしゃっていた通りです。 ルーテシア:階級は9つあって、私や日和さんはその上から9つ目・・・ ルーテシア:つまり一番下の階級「天使」です。それと、役目については、 ルーテシア:神様から与えられるものもあれば、 ルーテシア:上級の天使から与えられるものもあり、さまざまです。 ルーテシア:日和さんがどういう役目を与えられるのかは、私は分かりません。 小春:そうか・・・。 ルーテシア:一般的には、神様の伝言を誰かに何らかの形で伝えたり、 ルーテシア:誰かを守護する、と言った役目が与えられるんです。 小春:ルーテシアの役目って何? ルーテシア:・・・非常に申し上げにくいのですが・・・。 小春:言ってみ? ルーテシア:「天使還り」の保護、です。「天使還り」に遭った人は、 ルーテシア:そのあと正式に天使になるために、色々な手続きがありまして・・・。 小春:・・・マジか・・・。 ルーテシア:済みません・・・。 小春:や、それがルールなんだろ?・・・そりゃしょうがない。 ルーテシア:ですけど、「エンジェル・ハイロゥ」にあんなに早く気づかれていたとは・・・驚きました。 小春:そうだ、あいつらどうやって日和の「天使還り」のことを・・・? ルーテシア:・・・もしや、と思いますが。 小春:ん? ルーテシア:日和さんを診(み)せに、一度お医者様に行かれましたよね? 小春:あぁ、・・・まさかあの医者、あいつらとグルだった、ってことか!? ルーテシア:その可能性が高いです。 小春:そんなに驚いてなかったのもそのせいか・・・だとすると。 ルーテシア:またいつ日和さんに迫ってくるか、分かりません。 小春:だな。どうにか先手を打たないと。 ルーテシア:はい・・・。 小春:・・・日和は、どう思うのかな・・・。 ルーテシア:済みません。 小春:あ~いやいや、責めてるんじゃないって。久しぶりの再会だろ? 小春:日和だってさ、やっぱり嬉しいと思うんだ。 小春:でもさ、ルーテシアの気持ちも、姉としては嬉しいけど、 小春:やっぱり日和の気持ちを最優先したいんだよ。 ルーテシア:それはもちろん、その通りです。 小春:だからさ、日和の気持ちが分かるまで、というか決まるまで、か。 小春:日和の保護はちょっと待って欲しいんだ。このままじゃあんまりだろ? ルーテシア:はい、そうですね・・・。 小春:さて、こいつはちょっと厄介だなぁ・・・? 0:日和が目を覚ます。 日和:んぅ? 小春:おはよ、日和。 日和:ん、お姉ちゃん、おはぉ~・・・。 ルーテシア:おはよう、日和。 日和:あ~、るぅちゃんだ~!よいしょっと! 0:日和がルーテシアに抱き着く。 ルーテシア:(苦笑い) 小春:やれやれ、我が妹ながら、無邪気というか、切り替えが早いというか。 小春:ま、天使っぽいと言やぁ、天使っぽいか。 日和:・・・るぅちゃん。 ルーテシア:何?日和? 日和:わたし、どうなっちゃうのかなぁ? ルーテシア:日和・・・。 日和:日和ね、さっき夢、見たの。 ルーテシア:うん。 日和:この翼でね、空をすぅー、って飛んでね、雲よりもず~っと、 日和:高くって、遠いところに飛んでいくの。 ルーテシア:うん。 日和:それでね、それでね、るぅちゃんが出てきたの! ルーテシア:えっ・・・。 日和:るぅちゃんは、日和にね、「これからは、ずっと一緒」って言ってくれたんだ! 小春:日和・・・アンタ・・・。 ルーテシア:(優しく、語りかけるように)日和、日和は、何て答えたの? 日和:え?えっと、ね?答えようって思ったんだけど、・・・目が覚めちゃった。 小春:・・・(苦笑)そっか。 日和:ね~ね~、お姉ちゃんもこっち来て来て! 小春:ん~?何だ? 日和:えへへ~。 0:日和が小春とルーテシアを抱きしめる 日和:ぎゅーっ! 小春:ぅわ、何するんだ、日和!? 日和:るぅちゃんも、お姉ちゃんも、大好き! ルーテシア:ひ、日和、恥ずかしい・・・。 小春:ルーテシアの言うとおりだぞ、日和っ・・・ちょっと恥ずかしいぞ。 日和:んーん・・・でもね、日和はね、みんな一緒に、ここに居たいなぁ・・・。 小春:日和・・・? 日和:お姉ちゃんと、俊くんと、るぅちゃんと、みんなで仲良くここに居られたらいいなぁ~。 ルーテシア:日和・・・。 小春:日和・・・ぉし、分かった! ルーテシア:小春さん? 日和:お姉ちゃん? 小春:日和がそうしたいなら、叶えたいじゃないか。姉として。 ルーテシア:ですが、小春さん・・・。 小春:んぉ?どうしたルーテシア? ルーテシア:あの「エンジェル・ハイロゥ」の方たちからは逃げないといけませんし・・・。 小春:ぅむ。逃げんのは癪(しゃく)だけどな。 ルーテシア:私の役割の話もあります・・・。 小春:まぁ・・・そこはほら。日和は被害者だし、何とかなるだろ。 ルーテシア:はぁ・・・。 日和:お姉ちゃん? 小春:何だ? 日和:筧先生や、南さんと、・・・喧嘩するの? 小春:喧嘩って・・・もうそんなレベルじゃないぞ、 小春:日和。先生のとこ行くか、ルーテシアと天国に行くか、 小春:アタシたちと一緒にいるか、三つに一つだ。 ルーテシア:でも、日和の気持ちが決まっているなら、私たちはそれに協力するだけ。 小春:!?・・・ルーテシア・・・アンタ。 ルーテシア:私のことはいいんです。とにかく日和の望みも分かりましたし・・・。 小春:ルーテシア・・・。 日和:るぅちゃん・・・? ルーテシア:とにかく作戦を立てましょう。出来れば俊輔さんも居てくださると助かるんですけど・・・。 小春:お、ぉぅ、わかった。日和、俊坊呼んで。 日和:分かった! 0:俊輔が眠そうにやってくる。 俊輔:こんばんは~。 小春:俊坊、大丈夫か?目がとろんとしてるぞ。 俊輔:うん、ちょっと眠いかも。 日和:俊くん、起きて~! 俊輔:ぁ、うん、大丈夫だよ、日和。 小春:しっかし、どうしたもんかなぁ・・・せめてこの翼、何とか隠すとか出来りゃ、 小春:日和も外出できるだろうけどなぁ。 俊輔:ただ、隠したところであの二人にはバレてるわけだし・・・。 ルーテシア:そうですね。 0:突然ラッパの音がする。 小春:(一様に驚く)っ!? 日和:(一様に驚く)わっ!! 俊輔:(一様に驚く)うわ!! メリーヴァ:(軽いノリで)お!?全部つながった!?えっと、お取り込み中のところ、失礼しますよ~。 メリーヴァ:こちらは力天使(ヴァーチュズ)、メリーヴァです。ルーテシア、聞こえますか? ルーテシア:はい、聞こえます。 メリーヴァ;(軽いノリで)おっけーで~す 小春:おい、ルーテシア、どうなってんだ? メリーヴァ:どうも初めまして、小春さん。音声だけで失礼しますよ。 メリーヴァ:私は力天使(ヴァーチュズ)のメリーヴァといいます。ルーテシアの上司のような者です。 小春:はぁ。 メリーヴァ:失礼ながら、お話は、ルーテシアのチョーカーについている通信機から聞かせていただきました。ルーテシアがご迷惑をおかけして、申し訳ありません。 小春:通信機って・・・? メリーヴァ:ラッパの形をしている・・・。 小春:え、これ通信機だったの!? 日和:スパイさんみたい! 俊輔:日和・・・天使だってば。 メリーヴァ:さっきまでどういうわけか通信障害が発生してたみたいで。 メリーヴァ:何度もコンタクトを取ろうとしたのですが・・・。 小春:まぁそれはそれとして、だ。えっと、メリーヴァ?コンタクトを取ろうとしてた、ってのは? メリーヴァ:それです。先程来(さきほどらい)話題に上っている「エンジェル・ハイロゥ」のバカ野郎ども・・・あ、ゴホン! メリーヴァ:・・・「エンジェル・ハイロゥ」がですね、本格的に日和さんの捕獲に乗り出した、という情報がキャッチされました。 小春:バカ野郎どもて、おい、天使天使・・・(呆れる)。 メリーヴァ:あ・・・大丈夫です、私こう見えても清純派で通ってますから、問題ないです。 日和:清純派・・・? 俊輔:ウソだ・・・。 メリーヴァ:えっと、(咳払い)で、ですね、取り急ぎ日和さんを天界の方に メリーヴァ:お連れするように、と「セラフィム・カウンシル」から指示が来てまして。 小春:「保護」、ということか? メリーヴァ:そのようです。このような状況ですし、何より日和さんに何かあってはコトですから。 小春:しかしなぁ・・・。 日和:るぅちゃん・・・? ルーテシア:・・・日和、お願い。私を信じて。 日和:るぅちゃん? ルーテシア:私と一緒に、天界に行こう。 メリーヴァ:いえ、それはいけません、ルーテシア。 ルーテシア:どうして、ですか? メリーヴァ:あなたはしばらく、その家で小春さんと俊輔さんを守護してください。 メリーヴァ:でないとかえって小春さんと俊輔さんを危険にさらしてしまいます。 ルーテシア:・・・ですがっ! メリーヴァ:(優しく諭す感じで)ルーテシア。 ルーテシア:・・・・・・分かりました。 小春:ちょい待ち。メリーヴァ、日和は天界とやらで、具体的に何をするの? メリーヴァ:今のところ、特に何をする、というわけではありません。 メリーヴァ:ただ、そのうち日和さんの天使としての役目が伝えられるかもしれません。 メリーヴァ:なのでひとまず、我々の居る神殿で過ごしていただく、ということです。 メリーヴァ:もちろん3食デザート付で。お風呂とトイレは別です。 小春:最後のあたりがよく分からんが・・・日和、どうする? 日和:ん~・・・メリーヴァさん メリーヴァ:何でしょう?日和さん? 日和:デザートって、プリンとかありますか~? 俊輔:ちょ、日和。 小春:アンタって子は・・・。 メリーヴァ:もちろん、ありますよ。 日和:やったー!それなら行く! 小春:日和! 日和:・・・プリンは冗談だけど、お姉ちゃん、日和ね、るぅちゃんとメリーヴァさんを信じる! 日和:だって、相手を信じないと、仲良しさんになれないもん! 小春:いや、そうじゃなくってさ・・・。 日和:るぅちゃん、メリーヴァさん、日和は、小春お姉ちゃんと俊くんとるぅちゃんと、 日和:みんなでこの世界で暮らしたいの!・・・こっちに、帰ってこれるよね? メリーヴァ:もちろん、ちゃんとお返しします。力天使(ヴァーチュズ)と、そして天界の名にかけて。 日和:だって、お姉ちゃん! 小春:(小さく笑って)・・・納得いかないけど・・・日和の気持ちだ。分かったよ、気をつけてな。 日和:うんっ! メリーヴァ:では早速。ルーテシア、転送の陣を。 ルーテシア:はい!・・・転送の陣、描けました! メリーヴァ:わかりました。では日和さん、陣の中央に。 日和:んと、こう・・・? ルーテシア:そこでいいよ、日和。 メリーヴァ:では早速・・・。 0:筧、晶穂が乱入する。 筧:そうはいきませんよ。 晶穂:日和さん、そんな怪しい連中のところに行かないで、 晶穂:私たちに保護されていた方がいいですよ。 小春:(舌打ち)しつこいなぁ。おい日和、そこ動くなよ。メリーヴァ頼む! メリーヴァ:はい! 筧:させるか・・・っ!? 0:筧が俊輔に転ばされる 俊輔:知ってる?これってサッカーでわざとやると反則なんだよ? 小春:でかした俊坊! 筧:おのれっ・・・晶穂! 晶穂:はい・・・さぁ、日和さん・・・っ! 小春:そうはいかないねっ! 筧:おおおおぉぉっ! 俊輔:ぅわっ!(SE 俊輔が倒れる) 小春:俊坊! 筧:さぁ、日和さん。 ルーテシア:そうはいきません! 0:しばらく争いが続く。 日和:・・・もう、もうやめてぇっ!! 0:ヴンッ、と低い音が鳴る。(転送の発動+日和の能力の開放) 筧:(悲鳴) 晶穂:(悲鳴) メリーヴァ:転送発動、ですっ! 小春:っしゃ! 俊輔:先生と南さんが・・・消えた? ルーテシア:転送と同時に、日和が能力を使うのが見えました・・・。 ルーテシア:彼らには悪いですが、美しい光でした。 俊輔:死んでしまったんですか? ルーテシア:いえ、あれはおそらくは浄化の光です・・・そして、おそらくは少し遠いところに飛ばしでもしたのでしょう。 メリーヴァ:小春さん、俊輔さん、ルーテシア、どうもありがとうございました。 小春:いや、気にすんな。うちの妹のコトだしな・・・ルーテシア。 ルーテシア:はい。 小春:・・・ありがとう。 ルーテシア:・・・えっ・・・? 小春:まぁ、色々あったけど、日和のこと、守ってくれたろ? ルーテシア:いえ、私は何も・・・。 俊輔:メリーヴァさん、聞こえますか? メリーヴァ:はい。 俊輔:日和は、いつ帰って来れますか? メリーヴァ:実は、今「セラフィム・カウンシル」は、 メリーヴァ:世界で「天使還り」に遭った人たちが保護の名目で幽閉されている メリーヴァ:「エンジェル・ハイロゥ」の施設を「訪問」し、 メリーヴァ:「天使還り」の方々を一斉に メリーヴァ:保護しています。そのほとぼりが冷めるまでは、 メリーヴァ:日和さんにもこちらに居ていただきます。・・・ルーテシア、皆さんをよろしくね。 ルーテシア:はい。 0:場面転換。しばらくして。小春、カレンダーをめくる。 小春:クリスマス・イブ・・・か。俊坊。 俊輔:何? 小春:ケーキ、食べたくないか? 俊輔:そうだね・・・クリスマスだし。 小春:よし決定!早速行きますかね。 俊輔:それにしても・・・日和、いつ頃帰ってくるのかな? 小春:そうだなぁ・・・ルーテシアも一昨日いきなり天界に行っちまったし・・・ま、とりあえず考えても仕方ない。俊坊、行くか。 俊輔:うん・・・小春さん。 小春:ん? 俊輔:ケーキは、4人分だよね? 小春:そうだな、クリスマス、だからな。 0:日和がチャイムを鳴らす 日和:はわ~、誰も出ないよぉ・・・。 ルーテシア:変・・・だね。 日和:もしかしてお姉ちゃん、日和のこと、見捨てたのかなぁ・・・。 小春:そんなことするか・・・ったく。お帰り、日和。 日和:お姉ちゃん! 俊輔:お帰り、日和。 日和:俊く~ん!ただいま~!(抱きつく) 俊輔:ぅわっ、と!(優しく)お帰り。終わったんだね。 ルーテシア:はい、大変お待たせしました。 小春:お帰り、二人とも。さ、ケーキ食うぞ! 日和:ケーキ!食べる食べるっ! 俊輔:(苦笑) 小春:日和はまだ、「花より団子」か。ルーテシア、アンタはしばらくこっちに? ルーテシア:はい、私と日和さんはそれぞれ役目を仰せつかりました。 小春:言ってみ? ルーテシア:まず私ですが、日和さんとペアで任務にあたります。 ルーテシア:私は俊輔さんの身の周りの守護を担当します。 俊輔:え!?僕ですか? ルーテシア:はい、そして日和さんは、霜月家の守護天使になりました。 ルーテシア:お互いにフォローしながらやっていきます。 小春:日和を元に戻す、ってのはやっぱ無理か・・・ ルーテシア:本当に、本当に申し訳ありません。 日和:お姉ちゃん!あんまりるぅちゃんを責めちゃだめ! 小春:はいはい・・・(ため息)。 日和:もう、お姉ちゃんはすぐにるぅちゃんにちょっかい出して・・・嫌いなの? 小春:そんなことあるか。アタシはだな・・・みんな、大好きなんだよ(照) 俊輔:小春さん・・・僕もみんな、好きですよ。 ルーテシア:私も、みなさん大好きですよ。 日和:日和も、日和もね!みんなのこと、大好き!! 小春:分かった分かった!ったく恥ずかしい・・・ホレ、ケーキ食うぞ。 小春:お前ら、コーヒーと紅茶、どっちがいい? 小春:(N)そんなこんなで、色々変わったようで、本当は全く変わってないアタシ達。これからも、せめてこの関係はずっと続くように、アタシは柄にもなく、雪の降りしきる空に祈るのだった。 0:おしまい

0:クリスマス前のショッピングモール。日和、小春と買い物。 日和:付き合わせちゃって、ごめんね、お姉ちゃん。お休みの日なのに・・・。 小春:気にすんな。どうせアタシも暇だったし、いろいろ見れたからな。 日和:あはは!でもやっぱりお姉ちゃんは頼りになるよ~。日和よりお姉ちゃんの方が服の見立て上手いし。 小春:アンタの好みは大体知ってるから、一つパーツが決まれば後は楽なんだよ。 日和:そっかぁ~、やっぱりおねえちゃんは凄い! 小春:で、それ着て俊坊(しゅんぼう)とデートでもすんのか?もうすぐクリスマスだしな。 日和:へ?わっ、はわっ、違うよぉ、これは・・・(ごにょごにょ)あ!お姉ちゃんこそ、早く彼氏作ればいいのに~!メガネ取ったら、モテると思うけどなぁ~!そうだ!コンタクトにして・・・(以下延々と)。 小春:アタシは別にいいんだよ(ふっと笑う)。ん・・・日和、犬だ。 日和:犬?あ~ホントだ!可愛い!尻尾ぱたぱたしてる~!かわいい・・・! 小春:アンタは動物好きだね・・・。 日和:あ!そっち行っちゃだめだよ! 小春:え!?あっ・・・! 日和:っ!? 0:衝撃音の後、日和がトラックにはねられたが、日和の姿が忽然と消える。 小春:う、そ・・・日和、日和!?どこ、どこなの?・・・どうして・・・?日和、日和ぃ!! 日和:お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・お姉ちゃん? 小春:・・・え?ひ・・・日和?どうして・・・? 日和:ね、お姉ちゃん、見て見て!この子、可愛いでしょ~!(SE 犬がワンと鳴く) 小春:無事・・・だったの?だ、だってあんな、トラックに・・・日和っ! 日和:え?どうしたのお姉ちゃん?わわ・・・。 0:(小春、日和をボディチェックする) 小春:えっ、何これ、羽根?・・・翼!?・・・日和、アンタ身体は何ともない? 日和:え?・・・うん、何ともないけど・・・? 小春:そうか?でっ、でもアンタ、トラックにはねられたんだし、とにかく病院に行こう! 日和:う、うん・・・。 0:病院帰りの二人。 小春:しかしまぁ・・・検査結果も異常ないし、医者もびっくりはしてたけど問題ないって言ってたし、とりあえずは大丈夫なんだろうなぁ・・・。 日和:お姉ちゃん、クッキー食べる? 小春:おぉ、さんきゅ・・・って日和。 日和:なぁに? 0:日和、クッキーとコーヒーをテーブルに置く。 小春:本当に体は何ともないわけ? 日和:うん、大丈夫だよ!背中に翼があるのにはびっくりだけど・・・。 小春:そう、それだ・・・翼が問題なんだよ。どうしていきなりこんな・・・。 0:犬が鳴く。 小春:・・・しかもさっきの犬、連れてきてるし。 日和:だって・・・その・・・えっとぉ・・・(ごにょごにょ)。 小春:・・・飼う気か!?おぃ日和ぃ、勘弁してくれ・・・。 日和:うん・・・ダメかなぁ? 0:犬がまた鳴く。 小春:(ため息)・・・まぁ、これも何かの縁だろ。しばらく置いてやろうか。 日和:ホント!?やったぁ~! 小春:その代わり面倒は日和が見なよ。 日和:うんっ! 0:犬、さらに鳴く。 小春:アタシも甘いなぁ(苦笑)。それよりも問題は、日和の翼・・・。 小春:もっと大きな病院で見てもらったほうがいいのか・・・? 小春:いや、でもなぁ・・・自分で調べるか・・・。 0:犬が小春にすり寄る 小春:(ため息)気楽なもんだな、お前は・・・。 0:犬がしょげる。 小春:ま、お前を責めても仕方ないわけだ・・・日和? 日和:なぁに? 小春:俊坊呼んでいいか? 日和:俊くん? 小春:俊坊なら何か知ってるかもしれない。とりあえずその翼を見てもらおう。 日和:うん・・・。 0:俊輔がやってくる。 俊輔:こんにちは、日和。 日和:あ!俊くん!ヤッホ~! 俊輔:どうしたの、日和、その羽根・・・コスプレでも始めたの? 日和:ぁぅ・・・ちがうんだよ~(しょんぼりする)。 小春:俊坊、とりあえず座って。 俊輔:あ、うん・・・コスプレじゃないって、・・・新しいおしゃれとか? 日和:でもなくってっ!本物の翼なの! 小春:あ~、・・・俊坊、とりあえず触ってみ? 俊輔:あ、うん・・・日和、いい? 日和:うん・・・っ!!くすぐったいっ!! 俊輔:・・・え!? 小春:というわけだ。本物なワケ。 俊輔:でもどうしてこんな・・・? 小春:さっき、買い物帰りに日和が犬を助けようとしてトラックにはねられたんだ。 俊輔:えぇっ!? 小春:で、気づいたら日和は羽根が生えてはいるけどぴんぴんしてるんだ。 小春:もう何がなんだか分からなくなって、それで俊坊に助けを求めた、ってわけだ。 俊輔:はねられたのに・・・?ん~・・・じゃぁさ、その事故があった現場に戻ってみる、っていうのはどうかな? 小春:現場に・・・戻る? 俊輔:うん。やっぱり手がかりって現場に残されてると思うんだよ。 俊輔:警察の現場検証とかが入ってるかもしれないけど、行かない手はないと思うよ。 小春:なるほどねぇ・・・。 日和:おぉ~、さっすが俊くん! 俊輔:推理小説とかでかじっただけだけどね。 小春:とにかく、行ってみることにしようか・・・っとと、日和、アンタは留守番。 日和:え~!なんで?どうして? 小春:そのカッコだと目立つからだよ。日和だって、変なコだと思われたくないだろ? 日和:ぅぅ・・・(しぶしぶ)わかった・・・。 小春:で、犬・・・。 0:犬、一つ吠える 小春:お前は鼻が利くだろうから手伝ってもらうか。 0:事件のあった場所。俊輔は聴き込みをする。 俊輔:そうですか・・・ありがとうございました。 小春:・・・(ため息)何にもないなぁ・・・。 俊輔:小春さん、小春さん。 小春:どうした?俊坊。 俊輔:本当にここで事故があったの? 小春:どういうこと? 俊輔:現場検証どころか、事故の跡形が全然ないみたいなんだよね。 俊輔:普通なら細かい破片・・・ほら、たとえばヘッドライトとか 俊輔:テールライトのが散らばったりしてるはずなんだけど・・・。 俊輔:それに、この辺の人に聞いたら、事故のこと、誰も知らないって言ってるし・・・。 小春:そんな、アタシは確かに日和がトラックに・・・そうだ、 小春:「キャットワーク」のトラック!アレにはねられるところをちゃんと見たのに・・・。 俊輔:そのトラックのナンバーって覚えてる? 小春:・・・ごめん、覚えてない。 0:犬、俊輔に近づく。 俊輔:どうしたの? 0:犬がラッパの形の金属板を持ってくる。 俊輔:・・・これ・・・。 小春:ん、どうした、俊坊? 俊輔:これ、ラッパ・・・だよねぇ。 小春:どれどれ~?ん、ラッパだな・・・。 0:犬がめちゃくちゃ吠える。 小春:ん~?どうした~? 0:犬がひたすら吠える。 小春:もしかして・・・お前のか? 0:犬がそうだ、と言わんばかりに一つ吠える。 小春:お前、よく見たらほっそい首輪してるじゃないか・・・よ・・・っと。これでどうだ? 0:犬にラッパの金属板をつけると、嬉しそうに吠える 小春:ん、良かったな。 俊輔:でも結局、日和の翼の手がかりは見つからなかったね。 小春:そうだなぁ・・・そりゃぁ最初から簡単に見つかるとは思ってなかったけどな。 俊輔:でも、この子の手がかりが見つかっただけでも、良しとしなきゃ。この子の飼い主もちゃんと調べるべきだろうし。 小春:・・・ま、そうだな。あんまり遅くなるのもまずいし、今日はそろそろ帰るか。 俊輔:そうだね・・・ボクも帰ってから調べてみるよ。 小春:ん、よろしくな、俊坊。 俊輔:うん。 0:場面転換。霜月家。 日和:おやすみなさい、お姉ちゃん! 小春:あぁ、お休み。 0:日和、自室に向かいながらひとり言。 日和:(ため息)この翼・・・何なのかなぁ・・・日和、本当は死んじゃったのかなぁ・・・。 日和:そうだ・・・ワンちゃんの名前、決めないとね~・・・ぅ~ん、何がいいかなぁ・・・女の子だし・・・? 日和:そだ!「るぅ」ちゃんにしよう! 君の名前は今日から「るぅ」だよ! 0:るぅ、嬉しそうに日和にすり寄る。 日和:るぅちゃん・・・るぅちゃん、元気かなぁ・・・? 0:日和の回想、幼少期。 日和:(鼻歌orルンルンで歌う) るぅ:(鼻歌にかぶせて)キャァ~ッ! 日和:・・・何・・・?すごい音した・・・教会の方からだ・・・。 日和:(数秒の間、その後)・・・? るぅ:っ、くぅっ・・・。 日和:わ、わっ・・・ね、大丈夫? るぅ:ん・・・く・・・木から・・・落ち・・・。 日和:はわ、喋らない方がいいよぉ!えっとえっと・・・誰か呼んでくる!! 0:とある病院の病室 日和:る~ぅちゃんっ! るぅ:日和・・・今日も・・・来てくれたんだ 日和:うん。・・・邪魔だったかなぁ? るぅ:そんなこと・・・ないよ。 日和:良かった~!日和ね、お友達あんまりいないから、るぅちゃんと会うの、楽しみなんだぁ~! るぅ:そっか(少し笑う)。 日和:そうだ~、今日はこれ、持ってきたんだよぉ。 SE 日和、かばんを漁る。 日和:はいっ。 るぅ:・・・ぬいぐるみ? 日和:うんっ、レベッカ、っていうんだ! るぅ:・・・レベッカ? 日和:そうそう、レベッカ!小春お姉ちゃんが、名前、つけてくれたの! るぅ:・・・可愛いね、レベッカ。 日和:でしょ~!?それでねそれでね・・・。 0:さらにシーンが変わって、るぅ退院の日。 看護師:退院、おめでとう(と言って花束を手渡す) るぅ:・・・(少し笑って)ありがと・・・。 日和:るぅちゃん、一人で、帰るの・・・? るぅ:うん。おうち、近いから。 日和:送っていく? るぅ:ううん、いいよ・・・大丈夫。 日和:るぅちゃん、元気ないよぅ・・・ホントに大丈夫? るぅ:・・・日和。 日和:何? るぅ:・・・ 日和:どうしたの? るぅ:・・・日和とは、今日でお別れなの。 日和:えっ?どうして? るぅ:お引越し、するの・・・ずっと、ず~っと遠くに。 日和:!?ウソ・・・だよね、るぅちゃん?退院したら、一緒に遊ぼうって、言ったよね? るぅ:・・・ごめんなさい・・・。 日和:!・・・(たっぷり間を取って)お引越し、だもんね・・・仕方ない、よ、ね・・・(半泣きで)。 るぅ:日和、レベッカ、返さなきゃ。 日和:・・・(無理に笑って)いいよ、それはるぅちゃんが持ってて! るぅ:え?でも日和の大切な・・・。 日和:大切だけど、日和のこと、覚えてて欲しいから、レベッカ、るぅちゃんが持ってて。 るぅ:・・・分かった。じゃぁ、日和にはこれをあげる。 日和:え・・・? 日和:これ、るぅちゃんの・・・。 るぅ:私の大事なペンダント。日和が持ってて。時々でいい、私のこと、思い出して・・・。 日和:るぅちゃんっ(日和、るぅに抱きつく)!! るぅ:ん・・・(そっと日和を抱き返す)。 日和:(泣きながら)うっ、う・・・また、会えるよね? るぅ:うん、信じていれば、きっと会える。 日和:うん、うんっ!絶対、絶対また、会おうね!? るぅ:ん・・・約束。・・・それじゃ、ね? 日和:・・・うん・・・。 るぅ:(病院の門から歩いて出て行く) 日和:・・・るぅちゃん(日和、るぅを追いかける)!! 日和:!?あれ?るぅちゃん?・・・いなく、なっちゃった・・・? 0:回想シーン終了、日和の自室。 日和:るぅちゃん、今どこで、何してるのかなぁ・・・? 0:翌朝、霜月家。 小春:おーい、日和~? 日和:はわっ?何?お姉ちゃん? 小春:メシ、どうする? 日和:食べるよ~!今行く~! 小春:ドッグフードなんて、買ってる暇なかったから、わんこ、お前にゃシリアルをやろう。 日和:シリアルなんて食べるかなぁ? 小春:こいつに聞かんと分からんよ。・・・そういえば日和、こいつの名前とか考えたのか? 日和:うんっ、・・・「るぅ」! 小春:「るぅ」? 日和:そう、「るぅ」ちゃん。 小春:るぅ、か・・・おい、るぅ、日和のおかげでお前は助かったんだぞ~?分かってるか~? 0:るぅがひと鳴き。 小春:(ため息)呑気なもんだな。ほれ、ひっくり返って服従のポーズとかしてみ、ほれほれ。 0:るぅがしょげる 日和:お姉ちゃん!もうるぅをいじめちゃダメ!それよりご飯にしようよ! 小春:あ、あぁ・・・そだな。 0:三日後。 小春:(N)そして、事故から三日がたったが、日和の身体には特に・・・ 小春:(N)翼以外の変化はなかった。さすがに学校に行かせるわけにもいかないので、 小春:(N)とりあえず一週間の休みをとっている。 小春:(N)で、頼みの俊坊は、と言えば・・・家から見事に手がかりを持ってきてくれた。 俊輔:父さんの書斎にある本を引っかきまわしてみたら、こんな文献があったんだ。 俊輔:さすがに現物は持ってこれないから、スキャンしてから印刷したんだけど・・・。 小春:・・・何だこれ・・・「天使還り(てんしがえり)」? 俊輔:そう。なんでも生前にある一定の条件を満たすと、死後に天使になるんだって。 俊輔:その現象とか、天使になった人のことを「天使還り」って呼ぶんだって。 小春:・・・日和が、「天使還り」だ、ってことか・・・?でも、その条件って、何だ? 俊輔:それについては残念ながら載ってなかったんだ。しかも、その条件を満たしていても、天使還りになる確率って、相当低いって、書いてあるでしょ? 小春:ん~・・・条件と、・・・運、か。 俊輔:ぶっちゃけちゃうと、ね。 日和:ねーねー、俊くん、「天使還り」って、日和が天使になっちゃった、 日和:ってことだよね?と言うことはやっぱり日和、死んじゃったの・・・? 俊輔:死んだ、とか生きてる、っていう定義も結構難しいね、この場合だと・・・。 0:玄関チャイムが鳴る 小春:ん、誰だこんな時間に・・・。 日和:あ、日和出るよ! 小春:アンタはだめ。アタシが行く。 小春:はいは~い、今行きますよっと(と玄関を開けると小春の見知らぬ二人組が)はい? 筧:こんばんは、日和さんの担任の筧(かけい)です。 晶穂:日和さんのクラスメイトの南 晶穂(みなみ あきほ)といいます。 小春:あ、こりゃどうも。いつも妹がお世話になってます。日和の姉の小春です。 筧:どうも。あ、お母さまかお父さまはいらっしゃいますか?実は日和さんのことでお話がありまして・・・ 小春:あいにく両親は不在です、姉の・・・アタシでよければお聞きしますけど。 筧:そうでしたか。実は日和さんの具合と、進路の件で、どうしてもお話しておきたいことが。 小春:あ、そうなんですか・・・とりあえず中へどうぞ。 0:小春、二人を家の中に通す。 小春:じゃぁ、どうぞこちらに。 筧:あ、これはどうも。 晶穂:失礼します。 小春:今お茶入れてきますね。 筧:あ、お構いなく・・・。 0:小春、別室の日和に声をかける。 日和:(小声)お姉ちゃん? 小春:(小声)アンタは部屋に居な。俊坊、アンタは日和と一緒に居てやってくれ。 俊輔:(小声)うん、分かった。 0:間。小春が二人にお茶を出す。 小春:粗茶ですが。 筧:あ、どうも。 晶穂:ありがとうございます。 筧:さて、早速ですが、日和さんのお話を。どうですか?進路の話とか、されてます? 小春:んー、特には聞いてないですねぇ。 筧:そうですか。日和さんも2年生ってことで、そろそろ決めていったほうが良いかと思ってるんですが・・・。 晶穂:あ、すみません。お手洗い、お借りしていいですか? 小春:あ、どうぞどうぞ。場所分かる? 晶穂:はい、大丈夫です。 筧:・・・では、また小春さんの方からも、進路のこと、言っておいてください。 小春:分かりました。 筧:ところで、日和さんの具合はいかがですか? 小春:はぁ、回復はしてるんですけど、まだちょっと・・・。 筧:そうですか。まぁ体調というより、精神的なショックの方が大きいと思いますけどね 小春:? 筧:小春さん、「天使還り」というのをご存知ですか? 小春:!? 0:どたどたと足音がする。 晶穂:先生、日和さんを連れてきました。 筧:ご苦労様です、晶穂。 日和:せんせー、これどういうこと? 筧:日和さんこんにちは。日和さんが「天使還り」したのは本当なんですねぇ・・・見事な翼だ。 小春:・・・(筧と晶穂をにらむ)アンタ達、教師と生徒じゃないのか? 筧:表向きはね。私たちは「天使還り」に遭った人たちを「保護」する組織、 筧:「エンジェル・ハイロゥ」の一員です。 筧:日和さんが「天使還り」に遭ったという情報を入手して、 筧:日和さんの「保護」のために来た、というわけです。 小春:保護・・・? 筧:もっとも、当然保護はしますが、「天使還り」にはまだ分からないことも多いですし・・・。 晶穂:しかも外国、特に欧米では、その珍しさから・・・色々とあるんですよ(くすっと笑う)。 小春:アンタら、大概にしておいたほうがいいわよ・・・アンタ達に日和は渡さない。 筧:参ったな・・・。 晶穂:交渉決裂、ですか? 筧:そのようだね。じゃ、晶穂。 日和:ちょ、ちょっと南さん!? 0:小春、晶穂の手をつかむ。 晶穂:何ですか?離してください。 小春:よくもまぁいけしゃあしゃあと言えたもんね・・・っ!日和を離しなさい! 0:晶穂、突き飛ばされる。 筧:おぉっと。乱暴は良くないですねぇ。さ、日和さん、こっちに。 日和:ぃ、や・・・。 俊輔:日和、嫌がってるじゃないか。小春さんも、先生たちには渡さないって・・・。 俊輔:聞こえなかったの? 日和:ぁ、俊くん・・・。 0:るぅが激しく吠える(何かるぅがオーラを出してる雰囲気) 筧:風祭君、君に何ができ・・・ん!?この犬、まさか・・・。 筧:(ため息)分かりました。今日のところは退散しましょう。 筧:晶穂、生きてますか? 晶穂:どうにか。小春さん、バカ力ですね。 晶穂:・・・それと日和さん、風祭君、色々気をつけてね・・・クラスメートとしての忠告よ。 0:るぅが激しく吠える中、二人は退室。ドアが開いて閉まる。 俊輔:ふぅ・・・みんな、大丈夫? 小春:アタシは大丈夫。にしても・・・バカ力か。傷つくねぇ。 俊輔:(苦笑)日和? 日和:んも~、何がどうなってるの~ぉ?・・・るぅは突然凄く吠えちゃって・・・様子もおかしいし・・・。 俊輔:日和、分からない?筧先生と南さんは、日和を本当に保護なんてしようとしてない。 小春:そうだぞ、日和。あいつらはアンタを人体実験か何かに使うつもりだ。 小春:あぁいう手の人間を信用しちゃだめだ。 日和:でもでも、筧先生も南さんもいつもすごく良くしてくれるよ! 小春:日和、さっきその先生と南さんとやらの話、おかしいだろ? 小春:何で学校の先生やら生徒がそんな組織にいるんだよ。 小春:それにこんなタイミングで話なんてしに来ないだろ?日和の心配のほうが先のはずだ。 日和:でも・・・。 小春:少なくともあの連中は、普通の人たちじゃない、ってことだよ。 小春:日和、アンタはアタシと俊坊が守る。 俊輔:小春さんはともかく、ボクが役に立つかどうかは分からないけどね。 小春:こらこら俊坊、アンタまでアタシが無敵に強いみたいな言い方するんじゃない。 小春:ちょっと傷つくぞ。アタシも女だ。 俊輔:え!あ、ごめんなさい・・・。 小春:まぁ、冗談はさておいて。これからどうするか、だ。俊坊、どう思う? 俊輔:問題は、日和がこのあとどうなっちゃうのか、だと思うんだ。本当に日和が天使になったのなら、・・・。 日和:俊くん? 俊輔:天使の世界って、調べてみたら階級社会なんだよね。 俊輔:で、天使によってその階級も、役割も違うんだって。 俊輔:日和の階級とか役目、っていうのが分からないから、 俊輔:何とも言いようがないんだよね・・・。 小春:なるほどな。 0:間。場面転換。日和の自室にて。 日和:どうしてこうなっちゃったのかなぁ・・・。 日和:・・・るぅ、「天使還り」ってどうしてあるんだと思う? るぅ:・・・「天使還り」は、本当は禁じられたものなの。だから、日和は本当に特別・・・。 日和:え!?る、るぅ?え・・・? るぅ:事故のときからそばにいたけど、久しぶり、日和。 0:るぅが天使の姿に変わる。 日和:ふわぁ・・・本物の天使さん・・・? 日和:おっ、お姉ちゃ(るぅに口をふさがれる)・・・む~? るぅ:日和、覚えてない?私はるぅ。あの時、私は日和にレベッカをもらった・・・ 日和:レベッカ・・・?じゃ、じゃぁるぅは、あのときの本当のるぅちゃんなの!? るぅ:そう(とどこからともなくレベッカを取り出し)ほら、レベッカ 日和:ぁ・・・レベッカだ・・・じゃぁ、本当に、るぅちゃん・・・? るぅ:日和、ペンダント、持ってる? 日和:うん、持ってるよ!ちょっと待ってて! 0:日和が机の引き出しを開けて、ペンダントを取り出す。 日和:ほら! るぅ:本当だ・・・良かった。 日和:(泣きながら)るぅちゃぁん・・・会いたかったよぉ! るぅ:・・・私も・・・。 日和:っ、そうだ!るぅちゃん、「天使還り」の話! るぅ:うん・・・「天使還り」は、天界の人材不足を解消するための、最後の手段・・・。 日和:人材・・・不足?最後の手段? るぅ:遥か昔に、天界で天使の人材不足があったの。天使は神様のお使いだって、日和は知っている? 日和:聞いたことは、あるよ。さっきも俊くんがそんな話、してた。 るぅ:天使は人間に神様のご意思を伝えたり、人間を守護したりするものなの。 るぅ:でも、人間界の人口が爆発的に増えて、天使の数が追いつかなくなったの。 日和:うん。 るぅ:天使はこのままでは仕事が出来なくなるから、天使の数を増やすことを考えたの。その手段が「天使還り」。 日和:っ! るぅ:だから・・・「天使還り」は・・・。 日和:そんな・・・。 るぅ:あの時から日和は私を「るぅ」って呼んでくれてたけど、本当の名前は、「ルーテシア」。 日和:ルー・・・テ・・・シア・・・? ルーテシア:日和、私はあなたに謝らないといけない。 日和:どうして? ルーテシア:日和に「天使還り」をしたのは、・・・私。 日和:えっ・・・? ルーテシア:私は久しぶりに日和に会うチャンスをもらったの。 ルーテシア:それで、日和を驚かそうと思って、犬の姿になった。でも私の不注意で、間違って車道に出てしまった。 日和:それじゃ・・・。 ルーテシア:日和は私を助けようとしてくれたけど、 ルーテシア:そのままトラックにはねられてしまった。 ルーテシア:私は日和に何としても生きて、・・・そして私に気づいて欲しかったの。 ルーテシア:そのためには、「天使還り」しかなかった。本当は、「天使還り」は禁じ手なの。 ルーテシア:日和・・・これだけは信じて欲しい。 ルーテシア:私は、日和との約束を、あの時の約束を、果たしたかった。それだけ・・・それだけなの。 日和:私は・・・私は・・・。 ルーテシア:・・・日和・・・。 日和:どうしたら、どうしたらいいの・・・?ねぇるぅちゃん!教えてよっ!! ルーテシア:・・・。 0:日和の部屋の扉がノックされる。 小春:お~い、日和、どうした?具合でも悪いのか? 日和:お姉ちゃん・・・?ぁ、大丈夫・・・。 小春:入るぞ~。 0:ドアが開く。 小春:ひよ・・・あれ?誰だアンタ?・・・ってか、るぅはどこ行った? ルーテシア:あ、私・・・が・・・。 小春:まさかアンタがるぅだとか言うんじゃないよなぁ? 日和:お姉ちゃん・・・うわぁああ~ん(派手に泣き出す)!!! 小春:お!?ひ、日和!?どうした? 0:日和、小春に状況を説明する。 小春:ぅ~・・・マジかぁ~っ・・・でも現に日和はぴんぴんしてるし・・・。 日和:(ぐずる) 小春:しかしなぁ・・・いきなりの展開だな・・・ってか、ルーテシア、いつまでもそこで突っ立ってないで、こっちにおいで。ここに座って。 ルーテシア:あっ、あの・・・怒って・・・。 小春:もちろん、怒ってる。でもな、この状況をどうにかするのが先だろ?・・・アタシもそれなりに冷静なつもりだ。 ルーテシア:・・・はい。 小春:・・・(ため息)まず当面の問題は、あの「エンジェル・ハイロゥ」の二人だな。 ルーテシア:そうですね。またいつ日和さんに接近するか、分かりませんし・・・。 小春:それと、一番大事なのは、日和のこと。 ルーテシア:・・・。 小春:さすがに日和も堪えてるからね・・・泣き疲れて寝ちゃったけどさ。 ルーテシア:私は、間違っていたのでしょうか・・・。 小春:ルーテシア? ルーテシア:私は、本当に、日和さんに会いたかった。約束を、果たしたかった。 ルーテシア:再会の、約束を。そして、また日和さんと仲良くしたかった。 小春:うん。 ルーテシア:でも、ただそれだけの理由で、日和さんをあんな目に・・・。 小春:ルーテシア、それは違うんじゃないか? ルーテシア:小春・・・さん・・・? 小春:アンタの気持ちは「ただそれだけ」っていう言葉で片付けられるのか? 小春:そんな安いものなのか? ルーテシア:・・・いえ、私にとって、日和さんとの約束は、私の存在意義、です。 小春:それなら、そんな風に言うんじゃないよ。 小春:日和だって、そんな言い方、されたくないはずだ。 ルーテシア:・・・ですが、日和さんがいまの状態なのは、私の・・・。 小春:ストップ。今はとにかくそれ以上、言うんじゃないよ。 ルーテシア:小春さん・・・。 小春:そういえば、俊坊が言ってた、「天使の階級とか役目」ってのは、何なんだ? 小春:ルーテシア、何か知ってるんだろ? ルーテシア:天使にも階級があるのは俊輔さんがおっしゃっていた通りです。 ルーテシア:階級は9つあって、私や日和さんはその上から9つ目・・・ ルーテシア:つまり一番下の階級「天使」です。それと、役目については、 ルーテシア:神様から与えられるものもあれば、 ルーテシア:上級の天使から与えられるものもあり、さまざまです。 ルーテシア:日和さんがどういう役目を与えられるのかは、私は分かりません。 小春:そうか・・・。 ルーテシア:一般的には、神様の伝言を誰かに何らかの形で伝えたり、 ルーテシア:誰かを守護する、と言った役目が与えられるんです。 小春:ルーテシアの役目って何? ルーテシア:・・・非常に申し上げにくいのですが・・・。 小春:言ってみ? ルーテシア:「天使還り」の保護、です。「天使還り」に遭った人は、 ルーテシア:そのあと正式に天使になるために、色々な手続きがありまして・・・。 小春:・・・マジか・・・。 ルーテシア:済みません・・・。 小春:や、それがルールなんだろ?・・・そりゃしょうがない。 ルーテシア:ですけど、「エンジェル・ハイロゥ」にあんなに早く気づかれていたとは・・・驚きました。 小春:そうだ、あいつらどうやって日和の「天使還り」のことを・・・? ルーテシア:・・・もしや、と思いますが。 小春:ん? ルーテシア:日和さんを診(み)せに、一度お医者様に行かれましたよね? 小春:あぁ、・・・まさかあの医者、あいつらとグルだった、ってことか!? ルーテシア:その可能性が高いです。 小春:そんなに驚いてなかったのもそのせいか・・・だとすると。 ルーテシア:またいつ日和さんに迫ってくるか、分かりません。 小春:だな。どうにか先手を打たないと。 ルーテシア:はい・・・。 小春:・・・日和は、どう思うのかな・・・。 ルーテシア:済みません。 小春:あ~いやいや、責めてるんじゃないって。久しぶりの再会だろ? 小春:日和だってさ、やっぱり嬉しいと思うんだ。 小春:でもさ、ルーテシアの気持ちも、姉としては嬉しいけど、 小春:やっぱり日和の気持ちを最優先したいんだよ。 ルーテシア:それはもちろん、その通りです。 小春:だからさ、日和の気持ちが分かるまで、というか決まるまで、か。 小春:日和の保護はちょっと待って欲しいんだ。このままじゃあんまりだろ? ルーテシア:はい、そうですね・・・。 小春:さて、こいつはちょっと厄介だなぁ・・・? 0:日和が目を覚ます。 日和:んぅ? 小春:おはよ、日和。 日和:ん、お姉ちゃん、おはぉ~・・・。 ルーテシア:おはよう、日和。 日和:あ~、るぅちゃんだ~!よいしょっと! 0:日和がルーテシアに抱き着く。 ルーテシア:(苦笑い) 小春:やれやれ、我が妹ながら、無邪気というか、切り替えが早いというか。 小春:ま、天使っぽいと言やぁ、天使っぽいか。 日和:・・・るぅちゃん。 ルーテシア:何?日和? 日和:わたし、どうなっちゃうのかなぁ? ルーテシア:日和・・・。 日和:日和ね、さっき夢、見たの。 ルーテシア:うん。 日和:この翼でね、空をすぅー、って飛んでね、雲よりもず~っと、 日和:高くって、遠いところに飛んでいくの。 ルーテシア:うん。 日和:それでね、それでね、るぅちゃんが出てきたの! ルーテシア:えっ・・・。 日和:るぅちゃんは、日和にね、「これからは、ずっと一緒」って言ってくれたんだ! 小春:日和・・・アンタ・・・。 ルーテシア:(優しく、語りかけるように)日和、日和は、何て答えたの? 日和:え?えっと、ね?答えようって思ったんだけど、・・・目が覚めちゃった。 小春:・・・(苦笑)そっか。 日和:ね~ね~、お姉ちゃんもこっち来て来て! 小春:ん~?何だ? 日和:えへへ~。 0:日和が小春とルーテシアを抱きしめる 日和:ぎゅーっ! 小春:ぅわ、何するんだ、日和!? 日和:るぅちゃんも、お姉ちゃんも、大好き! ルーテシア:ひ、日和、恥ずかしい・・・。 小春:ルーテシアの言うとおりだぞ、日和っ・・・ちょっと恥ずかしいぞ。 日和:んーん・・・でもね、日和はね、みんな一緒に、ここに居たいなぁ・・・。 小春:日和・・・? 日和:お姉ちゃんと、俊くんと、るぅちゃんと、みんなで仲良くここに居られたらいいなぁ~。 ルーテシア:日和・・・。 小春:日和・・・ぉし、分かった! ルーテシア:小春さん? 日和:お姉ちゃん? 小春:日和がそうしたいなら、叶えたいじゃないか。姉として。 ルーテシア:ですが、小春さん・・・。 小春:んぉ?どうしたルーテシア? ルーテシア:あの「エンジェル・ハイロゥ」の方たちからは逃げないといけませんし・・・。 小春:ぅむ。逃げんのは癪(しゃく)だけどな。 ルーテシア:私の役割の話もあります・・・。 小春:まぁ・・・そこはほら。日和は被害者だし、何とかなるだろ。 ルーテシア:はぁ・・・。 日和:お姉ちゃん? 小春:何だ? 日和:筧先生や、南さんと、・・・喧嘩するの? 小春:喧嘩って・・・もうそんなレベルじゃないぞ、 小春:日和。先生のとこ行くか、ルーテシアと天国に行くか、 小春:アタシたちと一緒にいるか、三つに一つだ。 ルーテシア:でも、日和の気持ちが決まっているなら、私たちはそれに協力するだけ。 小春:!?・・・ルーテシア・・・アンタ。 ルーテシア:私のことはいいんです。とにかく日和の望みも分かりましたし・・・。 小春:ルーテシア・・・。 日和:るぅちゃん・・・? ルーテシア:とにかく作戦を立てましょう。出来れば俊輔さんも居てくださると助かるんですけど・・・。 小春:お、ぉぅ、わかった。日和、俊坊呼んで。 日和:分かった! 0:俊輔が眠そうにやってくる。 俊輔:こんばんは~。 小春:俊坊、大丈夫か?目がとろんとしてるぞ。 俊輔:うん、ちょっと眠いかも。 日和:俊くん、起きて~! 俊輔:ぁ、うん、大丈夫だよ、日和。 小春:しっかし、どうしたもんかなぁ・・・せめてこの翼、何とか隠すとか出来りゃ、 小春:日和も外出できるだろうけどなぁ。 俊輔:ただ、隠したところであの二人にはバレてるわけだし・・・。 ルーテシア:そうですね。 0:突然ラッパの音がする。 小春:(一様に驚く)っ!? 日和:(一様に驚く)わっ!! 俊輔:(一様に驚く)うわ!! メリーヴァ:(軽いノリで)お!?全部つながった!?えっと、お取り込み中のところ、失礼しますよ~。 メリーヴァ:こちらは力天使(ヴァーチュズ)、メリーヴァです。ルーテシア、聞こえますか? ルーテシア:はい、聞こえます。 メリーヴァ;(軽いノリで)おっけーで~す 小春:おい、ルーテシア、どうなってんだ? メリーヴァ:どうも初めまして、小春さん。音声だけで失礼しますよ。 メリーヴァ:私は力天使(ヴァーチュズ)のメリーヴァといいます。ルーテシアの上司のような者です。 小春:はぁ。 メリーヴァ:失礼ながら、お話は、ルーテシアのチョーカーについている通信機から聞かせていただきました。ルーテシアがご迷惑をおかけして、申し訳ありません。 小春:通信機って・・・? メリーヴァ:ラッパの形をしている・・・。 小春:え、これ通信機だったの!? 日和:スパイさんみたい! 俊輔:日和・・・天使だってば。 メリーヴァ:さっきまでどういうわけか通信障害が発生してたみたいで。 メリーヴァ:何度もコンタクトを取ろうとしたのですが・・・。 小春:まぁそれはそれとして、だ。えっと、メリーヴァ?コンタクトを取ろうとしてた、ってのは? メリーヴァ:それです。先程来(さきほどらい)話題に上っている「エンジェル・ハイロゥ」のバカ野郎ども・・・あ、ゴホン! メリーヴァ:・・・「エンジェル・ハイロゥ」がですね、本格的に日和さんの捕獲に乗り出した、という情報がキャッチされました。 小春:バカ野郎どもて、おい、天使天使・・・(呆れる)。 メリーヴァ:あ・・・大丈夫です、私こう見えても清純派で通ってますから、問題ないです。 日和:清純派・・・? 俊輔:ウソだ・・・。 メリーヴァ:えっと、(咳払い)で、ですね、取り急ぎ日和さんを天界の方に メリーヴァ:お連れするように、と「セラフィム・カウンシル」から指示が来てまして。 小春:「保護」、ということか? メリーヴァ:そのようです。このような状況ですし、何より日和さんに何かあってはコトですから。 小春:しかしなぁ・・・。 日和:るぅちゃん・・・? ルーテシア:・・・日和、お願い。私を信じて。 日和:るぅちゃん? ルーテシア:私と一緒に、天界に行こう。 メリーヴァ:いえ、それはいけません、ルーテシア。 ルーテシア:どうして、ですか? メリーヴァ:あなたはしばらく、その家で小春さんと俊輔さんを守護してください。 メリーヴァ:でないとかえって小春さんと俊輔さんを危険にさらしてしまいます。 ルーテシア:・・・ですがっ! メリーヴァ:(優しく諭す感じで)ルーテシア。 ルーテシア:・・・・・・分かりました。 小春:ちょい待ち。メリーヴァ、日和は天界とやらで、具体的に何をするの? メリーヴァ:今のところ、特に何をする、というわけではありません。 メリーヴァ:ただ、そのうち日和さんの天使としての役目が伝えられるかもしれません。 メリーヴァ:なのでひとまず、我々の居る神殿で過ごしていただく、ということです。 メリーヴァ:もちろん3食デザート付で。お風呂とトイレは別です。 小春:最後のあたりがよく分からんが・・・日和、どうする? 日和:ん~・・・メリーヴァさん メリーヴァ:何でしょう?日和さん? 日和:デザートって、プリンとかありますか~? 俊輔:ちょ、日和。 小春:アンタって子は・・・。 メリーヴァ:もちろん、ありますよ。 日和:やったー!それなら行く! 小春:日和! 日和:・・・プリンは冗談だけど、お姉ちゃん、日和ね、るぅちゃんとメリーヴァさんを信じる! 日和:だって、相手を信じないと、仲良しさんになれないもん! 小春:いや、そうじゃなくってさ・・・。 日和:るぅちゃん、メリーヴァさん、日和は、小春お姉ちゃんと俊くんとるぅちゃんと、 日和:みんなでこの世界で暮らしたいの!・・・こっちに、帰ってこれるよね? メリーヴァ:もちろん、ちゃんとお返しします。力天使(ヴァーチュズ)と、そして天界の名にかけて。 日和:だって、お姉ちゃん! 小春:(小さく笑って)・・・納得いかないけど・・・日和の気持ちだ。分かったよ、気をつけてな。 日和:うんっ! メリーヴァ:では早速。ルーテシア、転送の陣を。 ルーテシア:はい!・・・転送の陣、描けました! メリーヴァ:わかりました。では日和さん、陣の中央に。 日和:んと、こう・・・? ルーテシア:そこでいいよ、日和。 メリーヴァ:では早速・・・。 0:筧、晶穂が乱入する。 筧:そうはいきませんよ。 晶穂:日和さん、そんな怪しい連中のところに行かないで、 晶穂:私たちに保護されていた方がいいですよ。 小春:(舌打ち)しつこいなぁ。おい日和、そこ動くなよ。メリーヴァ頼む! メリーヴァ:はい! 筧:させるか・・・っ!? 0:筧が俊輔に転ばされる 俊輔:知ってる?これってサッカーでわざとやると反則なんだよ? 小春:でかした俊坊! 筧:おのれっ・・・晶穂! 晶穂:はい・・・さぁ、日和さん・・・っ! 小春:そうはいかないねっ! 筧:おおおおぉぉっ! 俊輔:ぅわっ!(SE 俊輔が倒れる) 小春:俊坊! 筧:さぁ、日和さん。 ルーテシア:そうはいきません! 0:しばらく争いが続く。 日和:・・・もう、もうやめてぇっ!! 0:ヴンッ、と低い音が鳴る。(転送の発動+日和の能力の開放) 筧:(悲鳴) 晶穂:(悲鳴) メリーヴァ:転送発動、ですっ! 小春:っしゃ! 俊輔:先生と南さんが・・・消えた? ルーテシア:転送と同時に、日和が能力を使うのが見えました・・・。 ルーテシア:彼らには悪いですが、美しい光でした。 俊輔:死んでしまったんですか? ルーテシア:いえ、あれはおそらくは浄化の光です・・・そして、おそらくは少し遠いところに飛ばしでもしたのでしょう。 メリーヴァ:小春さん、俊輔さん、ルーテシア、どうもありがとうございました。 小春:いや、気にすんな。うちの妹のコトだしな・・・ルーテシア。 ルーテシア:はい。 小春:・・・ありがとう。 ルーテシア:・・・えっ・・・? 小春:まぁ、色々あったけど、日和のこと、守ってくれたろ? ルーテシア:いえ、私は何も・・・。 俊輔:メリーヴァさん、聞こえますか? メリーヴァ:はい。 俊輔:日和は、いつ帰って来れますか? メリーヴァ:実は、今「セラフィム・カウンシル」は、 メリーヴァ:世界で「天使還り」に遭った人たちが保護の名目で幽閉されている メリーヴァ:「エンジェル・ハイロゥ」の施設を「訪問」し、 メリーヴァ:「天使還り」の方々を一斉に メリーヴァ:保護しています。そのほとぼりが冷めるまでは、 メリーヴァ:日和さんにもこちらに居ていただきます。・・・ルーテシア、皆さんをよろしくね。 ルーテシア:はい。 0:場面転換。しばらくして。小春、カレンダーをめくる。 小春:クリスマス・イブ・・・か。俊坊。 俊輔:何? 小春:ケーキ、食べたくないか? 俊輔:そうだね・・・クリスマスだし。 小春:よし決定!早速行きますかね。 俊輔:それにしても・・・日和、いつ頃帰ってくるのかな? 小春:そうだなぁ・・・ルーテシアも一昨日いきなり天界に行っちまったし・・・ま、とりあえず考えても仕方ない。俊坊、行くか。 俊輔:うん・・・小春さん。 小春:ん? 俊輔:ケーキは、4人分だよね? 小春:そうだな、クリスマス、だからな。 0:日和がチャイムを鳴らす 日和:はわ~、誰も出ないよぉ・・・。 ルーテシア:変・・・だね。 日和:もしかしてお姉ちゃん、日和のこと、見捨てたのかなぁ・・・。 小春:そんなことするか・・・ったく。お帰り、日和。 日和:お姉ちゃん! 俊輔:お帰り、日和。 日和:俊く~ん!ただいま~!(抱きつく) 俊輔:ぅわっ、と!(優しく)お帰り。終わったんだね。 ルーテシア:はい、大変お待たせしました。 小春:お帰り、二人とも。さ、ケーキ食うぞ! 日和:ケーキ!食べる食べるっ! 俊輔:(苦笑) 小春:日和はまだ、「花より団子」か。ルーテシア、アンタはしばらくこっちに? ルーテシア:はい、私と日和さんはそれぞれ役目を仰せつかりました。 小春:言ってみ? ルーテシア:まず私ですが、日和さんとペアで任務にあたります。 ルーテシア:私は俊輔さんの身の周りの守護を担当します。 俊輔:え!?僕ですか? ルーテシア:はい、そして日和さんは、霜月家の守護天使になりました。 ルーテシア:お互いにフォローしながらやっていきます。 小春:日和を元に戻す、ってのはやっぱ無理か・・・ ルーテシア:本当に、本当に申し訳ありません。 日和:お姉ちゃん!あんまりるぅちゃんを責めちゃだめ! 小春:はいはい・・・(ため息)。 日和:もう、お姉ちゃんはすぐにるぅちゃんにちょっかい出して・・・嫌いなの? 小春:そんなことあるか。アタシはだな・・・みんな、大好きなんだよ(照) 俊輔:小春さん・・・僕もみんな、好きですよ。 ルーテシア:私も、みなさん大好きですよ。 日和:日和も、日和もね!みんなのこと、大好き!! 小春:分かった分かった!ったく恥ずかしい・・・ホレ、ケーキ食うぞ。 小春:お前ら、コーヒーと紅茶、どっちがいい? 小春:(N)そんなこんなで、色々変わったようで、本当は全く変わってないアタシ達。これからも、せめてこの関係はずっと続くように、アタシは柄にもなく、雪の降りしきる空に祈るのだった。 0:おしまい