台本概要
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タイトル | 恋に成る【4部構成。第3部】 |
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作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 7人用台本(男2、女4、不問1) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
.*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*. 「嬉しかったのか?」 「……うるさい」 「さよなら。あたしの恋」 「な、何してんだよ…」 「譲るつもりはないからね」 「私だって…独り占めしたい」 .*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*. 〜ヘアセットやヘアケアが大好きな男子高校生〜 【光井風馬】 彼に与えられた試練はやがて気付かされる 「ふーまに髪やってもらってる時が1番幸せ」 〜風馬の幼なじみ〜 【戸塚ひまわり】 「光井君がこうやって私を守ってくれたように 今度は私が光井君を守るから…」 〜初恋の相手??〜 【水瀬遥香】 誰が1番大切な人なのか 好きとは何か……… 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 こちらの台本は4部構成の話で3部になります この台本だけでも面白くなるように心がけてますのでこれだけ演じるのもありです! 続きが気になればそのまま続けて貰えたら光栄です! 野良劇の場合はクレジット表記などしなくて大丈夫です。 タイトルの右上にX(ツイッター)でつぶやけるので、つぶやいてくれたら今後のモチベーションに繋がりますm(_ _)m 約束劇の場合はなんでもいいのでクレジット表記してもらえると助かります! ぶっちゃけ何でもいいです!読んでもらえたら嬉しいです! 427 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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風馬 | 男 | 107 | 風馬(ふうま) ヘアセットが大好きな高校生。ひまわりの幼なじみだが、初恋は……?ツッコミ多めの主人公です |
ひまわり | 女 | 101 | ひまわり 風馬の幼なじみ。元気で明るい性格だが少し気を使う女の子。でもとにかく明るい! |
遥香 | 女 | 105 | 遥香(はるか) お花が大好きな女の子。少し静かめだが花を見るとテンションが上がる。密かに燃え上がる恋心がある? |
奏音 | 女 | 58 | 奏音(かのん) 全体的に真面目すぎる一面がある。割とツッコミ役になる。でも仕切ってくれるから助かる |
大翔 | 男 | 37 | 大翔(ひろと) ちょっと抜けてる所がある高校生。意外と甘えたがりな部分もある |
雛 | 女 | 64 | 雛(ひな) 少し男口調な感じ。でも性格も割とはっちゃけてるからクールでは無いかな?ボケとツッコミ両方出来る。万能! |
先生 | 不問 | 39 | 先生 セリフ数は少ないけどインパクトはめちゃくちゃある。果物ナイフを投げるのが趣味 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
大翔:嬉しかったのか?
奏音:……うるさい
雛:さよなら。あたしの恋
風馬:な、何してんだよ…
ひまわり:譲るつもりはないからね
遥香:私だって…独り占めしたい
風馬:『恋に成る』
0:【間】
風馬:9章『企画とまさかの髪』
ひまわり:(私がふーまに恋してるからかな?)
風馬:………
風馬:(あいつはなんであんなことを……)
ひまわり:(ふーまのこと、幼なじみだと思ったことないからね)
風馬:(じゃあほんとに俺に……)
ひまわり:ふーま?
風馬:んぎぃ!!な、なんだよ
ひまわり:ふーまだけだよ?早く投票して
風馬:わ、わかったよ
ひまわり:さーて、投票の結果はー?コスプレ喫茶15票!お化け屋敷20票で今年の文化祭はお化け屋敷になりましたー!
風馬:ガーン!
風馬:(おいおい、声には出せないけどコスプレ喫茶じゃないとかまじか!バニーガールとかチャイナ服とかメイド服とかナース服とか!!あるだろ!!)
先生:っ!
0:【シュパンッ!】
風馬:ひぃ!
0:風馬の机に果物ナイフが刺さる
先生:気持ちはわかるぞ。光井。だか、票が決まったからには全力だ
風馬:なんで心の声がわかるんだよ!
先生:さて、お化け屋敷だが来る客全員を失神させる勢いでやるぞ。この文化祭で重要なのは協調性やチームワークだ。それがあるかないかで出来上がりも違ってくるだろう
ひまわり:ちなみにー。学園祭で最優秀賞を受賞したクラスは後夜祭の食べ物がタダになりますー!凄くない?みんな頑張ろ?
大翔:うおー!食いもんのためならやるぞー!
奏音:どこでスイッチ入るのよ
ひまわり:おばけ役やる人ー?はーいはーいはーい!!私やるー!
雛:お前がやんのかい
ひまわり:だっていつもおばけに脅かされてるからたまには私も脅かしたいなって…
奏音:悪趣味ね
雛:じゃあもう一人おばけ役は風馬でいいんじゃねー?
風馬:お、俺?
雛:幼なじみの息のあった脅かしが刺さるっしょ!
風馬:別にやってもいいけどな
ひまわり:…あははっ。決まりー!
先生:これでホームルームを終了する。それでは貴様らさようなら
0:全員同時に
全員:さようなら
0:場面転換
先生:水瀬、光井、ちょっといいか?
遥香:…はい?
風馬:……?
先生:実は私は、2冠を狙っている
風馬:主語が無さすぎて何の事かわかりません
0:【シュパンッ!】
風馬:ひぃ!至近距離!
先生:教室での出し物と、体育館を使った舞台、ライブ、披露宴。最優秀賞はこの2種類から選ばれるんだ。つまり、出し物の最優秀賞と体育館の最優秀賞、どっちも受賞した場合、2冠達成となる。これはまだどの教師も達成出来ていないんだ
風馬:………で?何をしたら…
先生:貴様らには劇をしてもらう
遥香:げ、劇!?
先生:そうだ。二人だけで劇だ
風馬:そ、そんな!なんで俺と水瀬なんだ?
先生:お前らが地味だからだ
風馬:図星ーー!
遥香:刺さりました……
先生:だが、そんな地味な貴様らがそれぞれの役になり切って輝かせる事で感動してくれる人も居ると私は思う。やるかやらないかは正直どちらでもいい。貴様らの意志を聞かせてくれ
風馬:………
遥香:……私はやりたいです
先生:おお。ありがたい
風馬:……まじ?
遥香:うん。せっかくだしやってみたい。地味だしね
風馬:水瀬は地味じゃないだろ?
遥香:そ、そう?
風馬:じゃあ俺もやるか
先生:ならば決まりだ。セットや衣装などは私のクルーがやってくれる
風馬:どこの人なんですか……
0:次の日
ひまわり:みんなー?机をガタンっ!ってやるだけだよ?誰やってくれる人ー?
大翔:だーれも手あげないよなー
ひまわり:じゃあさー。放課後残れる人いるー?……んー。みんな忙しいかー
大翔:また俺らでやるかー。
先生:おい、貴様らちょっと……
奏音:ちょっと待ってみんな!なんで手伝わないの!?
雛:……か、奏音?
奏音:全部ひまちゃんがやってくれると思ってない!?みんなで手伝わないと文化祭まで間に合わないでしょ!
大翔:みんなめんどくさがってるしなー
奏音:めんどくさい!?そんな理由でひまちゃんとか大翔に押し付けるの!?
雛:奏音、落ち着けって
奏音:落ち着くとかそういう問題じゃないでしょ!?
ひまわり:奏音ちゃん、いいんだよ
奏音:よくない!ひまちゃんが優しいからみんなそれに甘えて何もやらなくなるんだよ!ひまちゃんの頑張りだって無駄になるんだよ!?
ひまわり:いいんだよ、私の頑張りとか無駄になるとかそういうの考えなくても
奏音:よくないでしょ!なんでそんなに優しくするの?誰も手伝ってくれなくて嫌じゃないの!?
ひまわり:ううん。私はみんなが楽しくなるように動いてるだけだから
奏音:それじゃあ何も変わらないじゃん!
風馬:お、おい。お前らが言い合いしてどうすんだよ
ひまわり:奏音ちゃん
奏音:……なに?
ひまわり:アッチョンブリケー!
奏音:んぐっ。な、なに!?ふざけないでよ!
ひまわり:ほら、みんなの姿を見てみて
奏音:……ん?
ひまわり:山崎くんは毎朝お姉ちゃんの分までお弁当を作ってるんだよ。朝早いのに毎日学校来てて偉いよね。
ひまわり:梨花ちゃんはめっちゃ勉強してるし、おまけにバイトもしてるし、それでも学年で1位取っちゃうんだから本当に凄い
奏音:……ひまちゃん
ひまわり:みんな凄いんだよ。みんなそれぞれやりたいことがあるんだよ。だから文化祭も乗り気にならないのも仕方ないんじゃないかな?
ひまわり:私はそんな凄い人じゃないから文化祭の時くらいはみんなの力になりたいなーと思ってるの。みんな私には出来ないことを頑張ってるの。一人一人が、私にとって憧れの存在なんだよ
遥香:……っ!
先生:……戸塚…
ひまわり:だからさ、みんな当日楽しんでくれれば嬉しいな
奏音:……ありがとう。私もちょっと頭冷やすね
ひまわり:ううん。奏音ちゃんも優しさで言ってくれたんだよね。ありがとー!
風馬:……ひまわり
風馬:(あいつのいい所が全部出てたな。いつも人の気を使ってばかりいたかもしれないけど、それは人をよく見てるからだ)
風馬:(あいつは……やっぱすげーやつだよ)
雛:『恋に成る』
0:【間】
雛:10章『準備と花の髪』
0:次の日
ひまわり:今日残れる人ー!おー!みんな残ってくれるの!?
大翔:いいぞー!飯がタダになる!
奏音:いつまでご飯のこと引きずってるのよ!
先生:よし、みんな、いい感じだ。おまけの北谷。買い出しも頼んだ
大翔:頼まれた!奏音と雛も行くぞー
雛:あたしも行くの?
大翔:荷物持ちじゃん?
雛:お前地獄に落ちろ
奏音:しょ、しょうがないわね!行ってあげてもいいわよ!
雛:お前急にどうしたんだよ
ひまわり:じゃあ買い出し組よろしくー!
0:〜買い出し組〜
雛:あと何が必要?
大翔:知らない
雛:なんでお前が知らないんだよ。クラス委員でしょ?
奏音:ひ、大翔はいつも適当よね!
大翔:適当じゃダメ?
奏音:そんな事ないよ
雛:………?
奏音:白い布とー。赤いスプレーとー。血のり。あとは?
大翔:唐揚げとー。たこ焼きとー。クレープ
雛:お前の食べたい物だろ!
奏音:ふ、ふん!あとで買ってあげるわよ
雛:本当にどうしたんだ?
大翔:まあでも、これくらいでいいんじゃないか?
雛:うん。あとはとりあえず学校戻って布にスプレー振らないとだね
大翔:俺ちょっと個人的な買い物してくるから先戻ってていいぞ
雛:何買うの?
大翔:雛には内緒
雛:………
奏音:す、すぐ戻ってきなさいよね!?
大翔:わかってんよー
0:大翔はその場を去る
雛:……奏音、大翔となんかあった?
奏音:え!?べ、別に何も無いよ?
雛:そっか。奏音ってさ、中学の時よりもちょっと垢抜けたよね
奏音:そう?
雛:うん。この間もクラスの人達に怒ってたし
奏音:怒ることを垢抜けるって言うの!?
雛:そういう意味じゃなくて、自分の伝えたいことを上手く伝えられるようになってんだなーって思っただけ
奏音:そりゃそうよ。あの時は頭に血が上ってたけど。なんか言いたいこと言いたくなっちゃってさ
雛:昔は引っ込み思案で何も言わなかったのになー
奏音:昔の話でしょー?人は変わるものだよ
雛:……変わるものかー。あたしは変われてるのかなー?
奏音:変わらなくてもいいじゃん。そのままの雛が好きって人はいるんだから
雛:……そう?
奏音:うん。少なくとも私は今の雛が好きだよ
雛:………ありがとう
0:〜教室組〜
風馬:こ、これどういう意味だと思う?
遥香:どういう事だろ?
先生:貴様ら、なぜこの意味がわからない?
風馬:だ、だってこれ…男の人が泣いてるし!
遥香:あと女の人も自分の変化に気付いてるような、そうじゃないような…
先生:考えるな。感じろ
風馬:むちゃくちゃだな
ひまわり:何してるのー?
風馬:ああ。俺と水瀬が文化祭で劇をすることになったんだよ
ひまわり:そうなんだ
遥香:先生の書いた台本が難しくてね
先生:何も難しくない
ひまわり:すっごいね!ちょっと読んでみてよ!
風馬:お、おう
遥香:………
風馬:おれはーひねくれものだぁ(棒読み)
遥香:ななな、なにが君をそうさせたのぉぉ??(棒読み)
風馬:どうだった?
ひまわり:あ、ああー。うん。なんかAIの音声みたい
風馬:AI!?
遥香:真剣に読んだのに……
先生:貴様ら、磨いてこい
風馬:……くっ。難しいな
遥香:特訓あるのみだね
ひまわり:でも劇いいねー!見てみたいかも
風馬:なんか一気に自信なくなってきたけどな
ひまわり:大丈夫だよ!……多分!
風馬:根拠の無い大丈夫が一番こえーよ!
0:しばらくすると買い出し組が戻ってくる
雛:帰ってきたぞー
奏音:これでよかった?大翔も適当だから合ってるかわかんないけど
ひまわり:おー!これこれ!ありがとー!
風馬:お、俺だってこわいよぉー(棒読み)
遥香:わわわわわわ、私だってぇぇーこわいぃぃ(棒読み)
雛:何してんだ?
風馬:二度も同じ説明を…俺と水瀬で劇やるんだ
奏音:なんかAIみたいだね
風馬:みなまで言うな!
雛:どれどれー?貸してみー?んーと、これ読めばいいの?
遥香:そう。そこ難しいよ?
雛:(咳払い)……聞こえる…?私の心臓の音
風馬:……え?
遥香:ひ、雛さん!上手!
雛:え?そ、そう?
奏音:雛、そんな特技があったの?
雛:どうだろ、アニメとかよく見るからかな?
遥香:ひ、雛さん!!私にも演技教えて!
雛:えぇ?教えられるもんでもないよ!?
遥香:いいの、私、こういうの下手だから少しでもマシになりたいの
雛:んー。まああたしでよければね
0:そして放課後
大翔:俺帰っていい?
ひまわり:ダメだよ!クラス委員は残るの!
大翔:まじかー。じゃあ他のクラス徘徊してくるわ
ひまわり:あーまたサボりに行った。もう最悪
風馬:地味にお前ら言い合いしてるよな
奏音:団体行動出来ない組なのに言い合いしてるの?
ひまわり:そ、それはそうだけどさ
雛:あたしと遥香は特訓してくるね
風馬:お、おう。よろしく
先生:光井、貴様には私から教えといてやろう。指導室へ来い
風馬:ま、まじかよー!!
0:ひまわりと奏音が教室に残る
ひまわり:私たちで作業しよっか
奏音:そうだね
0:作業を始める二人
奏音:ね、ねえ、ひまちゃん
ひまわり:んー?
奏音:ひまちゃんってさ、彼氏とか作らないの?
ひまわり:えぇ!なんで!?
奏音:ひまちゃんモテそうじゃん
ひまわり:も、モテないよ
奏音:えー。そうなんだ
ひまわり:そういう奏音ちゃんは?彼氏は作らないの?
奏音:うっ……。まあ、作らないこともないかなー?
ひまわり:好きな人いるの?
奏音:い、居ないよ。多分
ひまわり:多分?
奏音:何でもない!作業集中しなさい!
ひまわり:奏音ちゃんから言ってきたんじゃん!
0:遥香と雛はファミレスに居る
遥香:聞こえるぅぅ?私のぉ心臓の音ぉー(棒読み)
雛:気持ち悪っ!
遥香:な、なんで!?
雛:ネチョネチョしてるよ
遥香:そ、そうなの?
雛:この話ってさ、女の子が男の子のこと好きって隠そうとしてるわけでしょ?
遥香:うん
雛:好きって言葉を使わないで好きを伝えたいんだから気持ちはこもってた方がいいんじゃない?
遥香:気持ちかー
雛:んー。例えばー、遥香の好きな人を想像するとか?
遥香:…………
雛:どう?出来そう?
遥香:……何となくわかるかも
雛:ならその意気だね
遥香:………はあ。
雛:遥香も好きな人いるんだなー
遥香:……え?
雛:あれ?違った?
遥香:あ、いや、あの!えーと
雛:ごめんごめん。あんまり深入りされるの好きじゃないか
遥香:いや、大丈夫…
雛:そう?
遥香:………うん
0:【間】
遥香:人と花は全くの別物。それは当たり前のことだと思う。それはそうだよ。生き方も育ち方も違うんだから、当たり前に決まってる
遥香:けど、最近は実は同じなんじゃないかなと思ってる。花には花言葉があるように、人にもその人の存在に意味があるんだと思うようになった
遥香:だから私はある一人の男の子の存在に意味を持つようにした。その人の存在は『一生の感謝』。『忘れられない恋』
遥香:こうして高校で出会ったことも運命だと思ってる。なら、その運命に乗っかって私は『忘れられない恋』を『共に愛に生きる』なんて意味に変えてみたかった
遥香:私に出来るのかな?不安で仕方ない。彼は誰の陽を浴びて恋の芽を咲かそうとしてるんだろう?気になって仕方ないよ
遥香:気になる。けど、気になるだけじゃダメだ…。私にだって『憧れ』はいる。けど、憧れてたらいつまで経っても乗り越えられない。だから私はこの文化祭の劇で光井君と一緒に最高の思い出を作りたいと思ってる
遥香:私は、光井君が好き
遥香:中学生の頃、私を助けてくれたあの日から私の恋の芽はあなたに向いている。光井君は、私にとっての陽の光なんだから
遥香:自信なんてない。私は自分を好きになれない。けど、私が光井君を好きってことは、心の底から自信を持って言えることだから
0:【間】
遥香:……雛さん
雛:ん?
遥香:ちょっと変なこと言ってもいい?
雛:どうしたー?
遥香:……私の好きな人の話
雛:………好きな人?
遥香:うん
雛:それがどうした?
遥香:………その人の事を思えば…こういう劇も上手くいくのかなって
雛:……まあ結果的にはそうなるんじゃない?わかんないけど
遥香:……そっか
雛:じゃあ、読んでみなよ。そいつを思って
遥香:……聞こえる…?私の心臓の音
遥香:この心臓は…あなたと出会うために動き続けてくれたんだよ
雛:……おおー!めっちゃいいじゃん!
遥香:出来てた?
雛:出来てる出来てる!
遥香:よかったー!
雛:その気持ちを忘れないことだね!
遥香:うん
0:【間】
0:場面転換
0:一人で帰る雛
雛:ん〜なんかめんどくさい事になりそうだなー。あたしの立場がなんなのかよくわかんないけど、みんな楽しそうでいいなー
雛:誰が誰を好きになる。そういう関係が羨ましくてしょうがないよ。
雛:あたしは好きになる人、間違ってるっていうのに……はあ
奏音:『恋に成る』
0:【間】
奏音:11章『好きとキスの髪』
0:文化祭当日
先生:戸塚、光井、ちょっといいか?
ひまわり:なにー?
先生:貴様らに衣装を渡しておく
風馬:おー!すごい!
ひまわり:血が着いてる!
先生:赤いスプレーで血のようにしてある。3日間乾燥しているから下着に付くこともない。安心しろ
ひまわり:わー!ありがと〜!
先生:礼を言うのは私の方だ
ひまわり:え?
先生:よく一人でクラスをまとめあげたな。私だけの力では無理だった。ありがとう
ひまわり:んー?どういたしまして?
0:教室に入る
ひまわり:お待たせー
大翔:おーやっときた……え?お前らどうした?、
風馬:何が?
大翔:顔怖すぎだろ
ひまわり:え?
0:ひまわりと風馬は顔を合わせる
風馬:ぎゃあああー!化け物ー!(同時に)
ひまわり:ぎゃあああー!化け物ー!(同時に)
風馬:いつの間にこんなことになったんだ!?
先生:さっき衣装渡した時に私がメイクをした
風馬:どんな技だよ!!
0:そして本番になる
風馬:無事に本番か……
ひまわり:ね。みんなのおかけだよ
風馬:ひまわりのおかげだろ?
ひまわり:私は何もしてないよ?
風馬:ひまわりがクラスの皆に声をかけたからだろ?本当に凄かった
ひまわり:そうなんだ。じゃあ、ありがとー
風馬:今までのひまわりの中で一番光ってたぞ
ひまわり:……あははっ。ありがとー!
大翔:おーい、お化け役ー。ここでスタンバイなー
0:大翔はカーテンで仕切られた空間に案内する
風馬:おう……って、狭すぎじゃねーか?
大翔:そうだな、一人分のスペースしか確保出来なかったから、ノリと気合いだ
風馬:なんだよそれー!
大翔:んじゃ!俺は受付行ってくるー!
風馬:あ、おい!……これ、掃除ロッカーより狭いぞ?
ひまわり:いいよ……ふーまが良ければくっついていい?
風馬:あ、ああ
ひまわり:……失礼します
風馬:………
風馬:(ひ、ひまわりが…近い。周りは積み上げられた机に囲まれてて黒いカーテンで覆われている。だからほぼ身動きが出来ない)
ひまわり:………
風馬:……熱い?
ひまわり:……っ!耳元で喋らないでよ
風馬:ご、ごめん
ひまわり:………
風馬:………
ひまわり:……あはは。またドキドキしてきた!
風馬:う、動くなよ
ひまわり:ふーまはドキドキしないの?
風馬:………うるせー
ひまわり:………アッチョンブリケ
風馬:んぐっ。なんだよ
風馬:(ひまわりは俺の頬に両手を押し付けた)
ひまわり:……っ
風馬:………っ!!
遥香:光井君、ひまわりさん、そろそろお客さ……っ!
0:遥香の視界には、キスをする風馬とひまわりの姿が映る
遥香:………っ!!
0:遥香は慌ててカーテンを閉じる
遥香:………はあ……はあ……はあ
遥香:………どうして?
風馬:な、何してんだよ…
ひまわり:……ふーまがドキドキしないかなーって
風馬:そ、そんなことしなくても……
ひまわり:ふーまは……これでも私の事…幼なじみだと思うの?
風馬:…………
0:【シャッ】
風馬:っ!!
0:カーテンが開けられる
雛:あれ?遥香は?
ひまわり:来てないよ?
雛:あれ?何してんだろ?もうお客さん来るぞ
ひまわり:はーい
風馬:…………
0:【間】
ひまわり:(やりすぎたかな……?ううん。これでいいの。私は幼なじみっていう言葉にはもう頼らない。私の目の前にいるのは私の好きな人だから)
ひまわり:ふーま
風馬:な、なんだよ
ひまわり:今の私をずっと見ててね
風馬:………
ひまわり:(ずっと自分を騙してきたけど、この気持ちにもう嘘はつけない)
ひまわり:(私はふーまが好き)
0:場面転換
大翔:奏音、他のクラス回らないか?
奏音:んー?あーいいよ
大翔:よっしゃあー!行くぞ行くぞー!
奏音:え?なに?
大翔:ついてきてー
奏音:な、なによ
雛:………
0:大翔と奏音は人気の少ない場所に行く
大翔:ほら、ここなら誰も居ない。もうすぐ奏音の誕生日だろ?
奏音:あー。そうだね
大翔:これ、あげる
奏音:な、何これ?
大翔:ネックレス
奏音:そ、そんな!悪いよ
大翔:いいの!俺の気持ちだから。文化祭の準備サボってバイトしたしね
奏音:…文化祭の準備はちゃんとやってよ
大翔:今の時代、二刀流が流行ってるけど俺には無理だった。一個の事しか考えられない
奏音:その一個はなんなの?
大翔:奏音のこと
奏音:……え?
大翔:俺、奏音の事しか考えられなくなった
奏音:な、何言ってんの?やめてよ
大翔:俺が奏音のこと好きって言ったら奏音は嬉しい?
奏音:………
大翔:あー。そっか、奏音口下手だから苦手だよね、嬉しかったら俺の胸に飛び込んでこーい!
奏音:………っ
大翔:………何そのピトッてくっつき方
奏音:うるさい
大翔:………嬉しかったのか
奏音:うるさい!
大翔:よかったよかった
奏音:……うるさい。うふっ
0:【間】
雛:そりゃあそうだよなー。あの二人はそうなるべきだよ。中学の頃からそう思ってた。……だから
雛:さよなら。あたしの恋
0:場面転換
先生:貴様ら、お化け屋敷、ご苦労。光井はそのまま体育館に行ってくれ
風馬:はい…
風馬:(まだ頭がクラクラする。……ひまわり…なんで……キスなんか)
遥香:光井君?
風馬:……え?
遥香:お疲れ様。あの中熱かったよね?
風馬:うん
遥香:飲み物いる?
風馬:おう、ありがとう
遥香:昨日あれだけ先生に指導されたからきっと大丈夫だよね
風馬:そうだな
遥香:………
遥香:(二人は…なんであんな事してたんだろ)
先生:貴様ら、行くぞ
遥香:……はい
先生:……?
風馬:………はあ。
先生:光井。緊張するか?
風馬:……ええ。めちゃくちゃ緊張してますよ
先生:貴様の悪い所は自分の力を隠そうとする所だ
風馬:……え?
先生:常に全力で何かと向き合うことは出来るはずなのに、人となるとそれが出来ない。違うか?
風馬:………
先生:だからこそ、誰かを思う気持ちを強く持て。誰かを楽しませようとする気持ちに全力になれ。それがこの劇で1番重要なんだ
風馬:………誰かを…思う気持ち……?
先生:水瀬
遥香:は、はい
先生:貴様に足りないのは自信だ。
遥香:……自信…
先生:謙虚なのと自信が無いのでは紙一重に違う。貴様は貴様だ。誇らしげに咲いてみろ。そうすれば、誰かが貴様を見てくれるんだ
遥香:………ありがとうございます
0:体育館に立つ風馬と遥香
0:そして幕が上がる
ひまわり:やっほー!ふーまー!遥香ちゃーん!
遥香:ひまわりさん…?
風馬:ひまわり…
遥香:(ああ。まただ。また自分はダメだって思ってしまう。どうしても…私っていう存在に自信が持てない)
風馬:……ふぅー。水瀬
遥香:……え?
風馬:楽しもうな!
遥香:……うん!
遥香:(そうだった。あなたはいつもこうやって私に勇気をくれた)
0:劇が進んでクライマックスのシーン
遥香:聞こえる?私の心臓の音…
風馬:(水瀬?このシーンは後ろ向きに体を合わせる予定だったろ?なんで正面なんだよ……)
風馬:……うん。少しだけ
遥香:この心臓は…あなたと出会うために動き続けてくれたんだよ
風馬:………
風馬:(水瀬は力強く俺を抱きしめた)
ひまわり:………
遥香:だから、私のこの思いは受け取らないでね
風馬:………っ!
風馬:(水瀬は俺の首周りを抱いてそのまま)
0:体育館から悲鳴が起こる
ひまわり:………え?
0:遥香は風馬にキスをする
0:【間】
遥香:(劇でこんなことするのは間違ってる。それはわかってる事だけど、もう抑えられない。自信が無くなって枯れたとしても、あなたを見ると、私は何度だって咲ける気がする)
遥香:好き
風馬:………
0:場面転換
先生:水瀬、台本に無いことを何故やった?
遥香:……すいません
先生:……まあいい。責任は私が取る。誰かに何か聞かれても、私の指示だと答えろ
遥香:……はい
0:風馬と遥香は体育館裏で休憩を取る
遥香:………光井君
風馬:っ!な、なに?
遥香:ごめんね、嫌だったよね
風馬:…そ、そんなこと……ねーよ
遥香:ほんとに?
風馬:……う、うん
遥香:………もちろん、劇だからさ。そういう役って言ったらそれで意味は通るけど……
遥香:私の気持ち……伝わってくれてると嬉しいな
風馬:………水瀬
ひまわり:………二人共ー。お疲れ様
遥香:……ひまわりさん
風馬:………ひまわり
ひまわり:あはは。ふーま。なんか他のクラス行ってくればー?
風馬:……でも
ひまわり:えー。行ってきてよ。あはは。
風馬:いや、でも
ひまわり:行ってきてって言ってんの聞こえないー?あはは。あはははは!
風馬:こ、こえーよ!わかった
風馬:(………水瀬の気持ちって……そういうことなのか…?)
0:風馬は居なくなる
遥香:どうしたの?ひまわりさん
ひまわり:んー?あはは。なんの事だと思う?
遥香:……光井君のこと?
ひまわり:そう!よくわかったね
遥香:わ、わかるよ
ひまわり:なんでキスしたの?先生の指示?
遥香:……それは……
ひまわり:んー?
遥香:私の意思…だよ
ひまわり:ふーん。そっか
遥香:ひまわりさんは……どう思ったの?
ひまわり:何がー?
遥香:その……私と光井君を見て
ひまわり:んーとね。イライラした
遥香:………ごめん
ひまわり:あ、でも謝らないでよ。私、ふーまと付き合ってるわけじゃないし
遥香:……私も、ひまわりさんと光井君がキスしてるところ見ちゃったよ
ひまわり:……見てたんだ
遥香:うん…私はどっちかと言うと胸が苦しくなった
ひまわり:よく言うよ、見た上でふーまにキスして見せつけて来たんだからさ
遥香:……ごめん
ひまわり:だから、謝らないでって!
遥香:………
ひまわり:あ、うん。私こそごめん。私も今すごーく…こう……イライラしちゃってるからさ……なんていうかー。色々抑えてるんだけど、これだけは言わせて
遥香:………
ひまわり:遥香ちゃんのこと、嫌いにはならないから、安心して欲しい
遥香:………うん。ありがとう
ひまわり:なんで涙目になるの!?
遥香:だって、私、ひまわりさんに嫌われるかと思ったから……
ひまわり:そんな事ないよ……でも、これで再確認しよう。私はふーまが好き
遥香:私も光井君の事が好き
ひまわり:うん。でも、譲るつもりはないからね
遥香:私だってそうだよ。譲りたくない
ひまわり:……よーし!遥香ちゃん!ハイタッチしよ!
遥香:……え?
ひまわり:今日の敵は明日の友って言うじゃん?ほらほら早くー!
遥香:……うん!
ひまわり:ハイタッチー!
0:二人はハイタッチを交わす
遥香:(譲るつもりはない。ひまわりさんにそう言われて私も気付いた。)
遥香:(私だって、光井君を独り占めしたいって)
ひまわり(もしかしてふーまは遥香ちゃんのこと好きかもしれない。それでも私の方がずっと好きだったもん)
ひまわり:(私の方がふーまのことが好き。それは絶対負けてない)
0:『恋に成る』3部END
大翔:嬉しかったのか?
奏音:……うるさい
雛:さよなら。あたしの恋
風馬:な、何してんだよ…
ひまわり:譲るつもりはないからね
遥香:私だって…独り占めしたい
風馬:『恋に成る』
0:【間】
風馬:9章『企画とまさかの髪』
ひまわり:(私がふーまに恋してるからかな?)
風馬:………
風馬:(あいつはなんであんなことを……)
ひまわり:(ふーまのこと、幼なじみだと思ったことないからね)
風馬:(じゃあほんとに俺に……)
ひまわり:ふーま?
風馬:んぎぃ!!な、なんだよ
ひまわり:ふーまだけだよ?早く投票して
風馬:わ、わかったよ
ひまわり:さーて、投票の結果はー?コスプレ喫茶15票!お化け屋敷20票で今年の文化祭はお化け屋敷になりましたー!
風馬:ガーン!
風馬:(おいおい、声には出せないけどコスプレ喫茶じゃないとかまじか!バニーガールとかチャイナ服とかメイド服とかナース服とか!!あるだろ!!)
先生:っ!
0:【シュパンッ!】
風馬:ひぃ!
0:風馬の机に果物ナイフが刺さる
先生:気持ちはわかるぞ。光井。だか、票が決まったからには全力だ
風馬:なんで心の声がわかるんだよ!
先生:さて、お化け屋敷だが来る客全員を失神させる勢いでやるぞ。この文化祭で重要なのは協調性やチームワークだ。それがあるかないかで出来上がりも違ってくるだろう
ひまわり:ちなみにー。学園祭で最優秀賞を受賞したクラスは後夜祭の食べ物がタダになりますー!凄くない?みんな頑張ろ?
大翔:うおー!食いもんのためならやるぞー!
奏音:どこでスイッチ入るのよ
ひまわり:おばけ役やる人ー?はーいはーいはーい!!私やるー!
雛:お前がやんのかい
ひまわり:だっていつもおばけに脅かされてるからたまには私も脅かしたいなって…
奏音:悪趣味ね
雛:じゃあもう一人おばけ役は風馬でいいんじゃねー?
風馬:お、俺?
雛:幼なじみの息のあった脅かしが刺さるっしょ!
風馬:別にやってもいいけどな
ひまわり:…あははっ。決まりー!
先生:これでホームルームを終了する。それでは貴様らさようなら
0:全員同時に
全員:さようなら
0:場面転換
先生:水瀬、光井、ちょっといいか?
遥香:…はい?
風馬:……?
先生:実は私は、2冠を狙っている
風馬:主語が無さすぎて何の事かわかりません
0:【シュパンッ!】
風馬:ひぃ!至近距離!
先生:教室での出し物と、体育館を使った舞台、ライブ、披露宴。最優秀賞はこの2種類から選ばれるんだ。つまり、出し物の最優秀賞と体育館の最優秀賞、どっちも受賞した場合、2冠達成となる。これはまだどの教師も達成出来ていないんだ
風馬:………で?何をしたら…
先生:貴様らには劇をしてもらう
遥香:げ、劇!?
先生:そうだ。二人だけで劇だ
風馬:そ、そんな!なんで俺と水瀬なんだ?
先生:お前らが地味だからだ
風馬:図星ーー!
遥香:刺さりました……
先生:だが、そんな地味な貴様らがそれぞれの役になり切って輝かせる事で感動してくれる人も居ると私は思う。やるかやらないかは正直どちらでもいい。貴様らの意志を聞かせてくれ
風馬:………
遥香:……私はやりたいです
先生:おお。ありがたい
風馬:……まじ?
遥香:うん。せっかくだしやってみたい。地味だしね
風馬:水瀬は地味じゃないだろ?
遥香:そ、そう?
風馬:じゃあ俺もやるか
先生:ならば決まりだ。セットや衣装などは私のクルーがやってくれる
風馬:どこの人なんですか……
0:次の日
ひまわり:みんなー?机をガタンっ!ってやるだけだよ?誰やってくれる人ー?
大翔:だーれも手あげないよなー
ひまわり:じゃあさー。放課後残れる人いるー?……んー。みんな忙しいかー
大翔:また俺らでやるかー。
先生:おい、貴様らちょっと……
奏音:ちょっと待ってみんな!なんで手伝わないの!?
雛:……か、奏音?
奏音:全部ひまちゃんがやってくれると思ってない!?みんなで手伝わないと文化祭まで間に合わないでしょ!
大翔:みんなめんどくさがってるしなー
奏音:めんどくさい!?そんな理由でひまちゃんとか大翔に押し付けるの!?
雛:奏音、落ち着けって
奏音:落ち着くとかそういう問題じゃないでしょ!?
ひまわり:奏音ちゃん、いいんだよ
奏音:よくない!ひまちゃんが優しいからみんなそれに甘えて何もやらなくなるんだよ!ひまちゃんの頑張りだって無駄になるんだよ!?
ひまわり:いいんだよ、私の頑張りとか無駄になるとかそういうの考えなくても
奏音:よくないでしょ!なんでそんなに優しくするの?誰も手伝ってくれなくて嫌じゃないの!?
ひまわり:ううん。私はみんなが楽しくなるように動いてるだけだから
奏音:それじゃあ何も変わらないじゃん!
風馬:お、おい。お前らが言い合いしてどうすんだよ
ひまわり:奏音ちゃん
奏音:……なに?
ひまわり:アッチョンブリケー!
奏音:んぐっ。な、なに!?ふざけないでよ!
ひまわり:ほら、みんなの姿を見てみて
奏音:……ん?
ひまわり:山崎くんは毎朝お姉ちゃんの分までお弁当を作ってるんだよ。朝早いのに毎日学校来てて偉いよね。
ひまわり:梨花ちゃんはめっちゃ勉強してるし、おまけにバイトもしてるし、それでも学年で1位取っちゃうんだから本当に凄い
奏音:……ひまちゃん
ひまわり:みんな凄いんだよ。みんなそれぞれやりたいことがあるんだよ。だから文化祭も乗り気にならないのも仕方ないんじゃないかな?
ひまわり:私はそんな凄い人じゃないから文化祭の時くらいはみんなの力になりたいなーと思ってるの。みんな私には出来ないことを頑張ってるの。一人一人が、私にとって憧れの存在なんだよ
遥香:……っ!
先生:……戸塚…
ひまわり:だからさ、みんな当日楽しんでくれれば嬉しいな
奏音:……ありがとう。私もちょっと頭冷やすね
ひまわり:ううん。奏音ちゃんも優しさで言ってくれたんだよね。ありがとー!
風馬:……ひまわり
風馬:(あいつのいい所が全部出てたな。いつも人の気を使ってばかりいたかもしれないけど、それは人をよく見てるからだ)
風馬:(あいつは……やっぱすげーやつだよ)
雛:『恋に成る』
0:【間】
雛:10章『準備と花の髪』
0:次の日
ひまわり:今日残れる人ー!おー!みんな残ってくれるの!?
大翔:いいぞー!飯がタダになる!
奏音:いつまでご飯のこと引きずってるのよ!
先生:よし、みんな、いい感じだ。おまけの北谷。買い出しも頼んだ
大翔:頼まれた!奏音と雛も行くぞー
雛:あたしも行くの?
大翔:荷物持ちじゃん?
雛:お前地獄に落ちろ
奏音:しょ、しょうがないわね!行ってあげてもいいわよ!
雛:お前急にどうしたんだよ
ひまわり:じゃあ買い出し組よろしくー!
0:〜買い出し組〜
雛:あと何が必要?
大翔:知らない
雛:なんでお前が知らないんだよ。クラス委員でしょ?
奏音:ひ、大翔はいつも適当よね!
大翔:適当じゃダメ?
奏音:そんな事ないよ
雛:………?
奏音:白い布とー。赤いスプレーとー。血のり。あとは?
大翔:唐揚げとー。たこ焼きとー。クレープ
雛:お前の食べたい物だろ!
奏音:ふ、ふん!あとで買ってあげるわよ
雛:本当にどうしたんだ?
大翔:まあでも、これくらいでいいんじゃないか?
雛:うん。あとはとりあえず学校戻って布にスプレー振らないとだね
大翔:俺ちょっと個人的な買い物してくるから先戻ってていいぞ
雛:何買うの?
大翔:雛には内緒
雛:………
奏音:す、すぐ戻ってきなさいよね!?
大翔:わかってんよー
0:大翔はその場を去る
雛:……奏音、大翔となんかあった?
奏音:え!?べ、別に何も無いよ?
雛:そっか。奏音ってさ、中学の時よりもちょっと垢抜けたよね
奏音:そう?
雛:うん。この間もクラスの人達に怒ってたし
奏音:怒ることを垢抜けるって言うの!?
雛:そういう意味じゃなくて、自分の伝えたいことを上手く伝えられるようになってんだなーって思っただけ
奏音:そりゃそうよ。あの時は頭に血が上ってたけど。なんか言いたいこと言いたくなっちゃってさ
雛:昔は引っ込み思案で何も言わなかったのになー
奏音:昔の話でしょー?人は変わるものだよ
雛:……変わるものかー。あたしは変われてるのかなー?
奏音:変わらなくてもいいじゃん。そのままの雛が好きって人はいるんだから
雛:……そう?
奏音:うん。少なくとも私は今の雛が好きだよ
雛:………ありがとう
0:〜教室組〜
風馬:こ、これどういう意味だと思う?
遥香:どういう事だろ?
先生:貴様ら、なぜこの意味がわからない?
風馬:だ、だってこれ…男の人が泣いてるし!
遥香:あと女の人も自分の変化に気付いてるような、そうじゃないような…
先生:考えるな。感じろ
風馬:むちゃくちゃだな
ひまわり:何してるのー?
風馬:ああ。俺と水瀬が文化祭で劇をすることになったんだよ
ひまわり:そうなんだ
遥香:先生の書いた台本が難しくてね
先生:何も難しくない
ひまわり:すっごいね!ちょっと読んでみてよ!
風馬:お、おう
遥香:………
風馬:おれはーひねくれものだぁ(棒読み)
遥香:ななな、なにが君をそうさせたのぉぉ??(棒読み)
風馬:どうだった?
ひまわり:あ、ああー。うん。なんかAIの音声みたい
風馬:AI!?
遥香:真剣に読んだのに……
先生:貴様ら、磨いてこい
風馬:……くっ。難しいな
遥香:特訓あるのみだね
ひまわり:でも劇いいねー!見てみたいかも
風馬:なんか一気に自信なくなってきたけどな
ひまわり:大丈夫だよ!……多分!
風馬:根拠の無い大丈夫が一番こえーよ!
0:しばらくすると買い出し組が戻ってくる
雛:帰ってきたぞー
奏音:これでよかった?大翔も適当だから合ってるかわかんないけど
ひまわり:おー!これこれ!ありがとー!
風馬:お、俺だってこわいよぉー(棒読み)
遥香:わわわわわわ、私だってぇぇーこわいぃぃ(棒読み)
雛:何してんだ?
風馬:二度も同じ説明を…俺と水瀬で劇やるんだ
奏音:なんかAIみたいだね
風馬:みなまで言うな!
雛:どれどれー?貸してみー?んーと、これ読めばいいの?
遥香:そう。そこ難しいよ?
雛:(咳払い)……聞こえる…?私の心臓の音
風馬:……え?
遥香:ひ、雛さん!上手!
雛:え?そ、そう?
奏音:雛、そんな特技があったの?
雛:どうだろ、アニメとかよく見るからかな?
遥香:ひ、雛さん!!私にも演技教えて!
雛:えぇ?教えられるもんでもないよ!?
遥香:いいの、私、こういうの下手だから少しでもマシになりたいの
雛:んー。まああたしでよければね
0:そして放課後
大翔:俺帰っていい?
ひまわり:ダメだよ!クラス委員は残るの!
大翔:まじかー。じゃあ他のクラス徘徊してくるわ
ひまわり:あーまたサボりに行った。もう最悪
風馬:地味にお前ら言い合いしてるよな
奏音:団体行動出来ない組なのに言い合いしてるの?
ひまわり:そ、それはそうだけどさ
雛:あたしと遥香は特訓してくるね
風馬:お、おう。よろしく
先生:光井、貴様には私から教えといてやろう。指導室へ来い
風馬:ま、まじかよー!!
0:ひまわりと奏音が教室に残る
ひまわり:私たちで作業しよっか
奏音:そうだね
0:作業を始める二人
奏音:ね、ねえ、ひまちゃん
ひまわり:んー?
奏音:ひまちゃんってさ、彼氏とか作らないの?
ひまわり:えぇ!なんで!?
奏音:ひまちゃんモテそうじゃん
ひまわり:も、モテないよ
奏音:えー。そうなんだ
ひまわり:そういう奏音ちゃんは?彼氏は作らないの?
奏音:うっ……。まあ、作らないこともないかなー?
ひまわり:好きな人いるの?
奏音:い、居ないよ。多分
ひまわり:多分?
奏音:何でもない!作業集中しなさい!
ひまわり:奏音ちゃんから言ってきたんじゃん!
0:遥香と雛はファミレスに居る
遥香:聞こえるぅぅ?私のぉ心臓の音ぉー(棒読み)
雛:気持ち悪っ!
遥香:な、なんで!?
雛:ネチョネチョしてるよ
遥香:そ、そうなの?
雛:この話ってさ、女の子が男の子のこと好きって隠そうとしてるわけでしょ?
遥香:うん
雛:好きって言葉を使わないで好きを伝えたいんだから気持ちはこもってた方がいいんじゃない?
遥香:気持ちかー
雛:んー。例えばー、遥香の好きな人を想像するとか?
遥香:…………
雛:どう?出来そう?
遥香:……何となくわかるかも
雛:ならその意気だね
遥香:………はあ。
雛:遥香も好きな人いるんだなー
遥香:……え?
雛:あれ?違った?
遥香:あ、いや、あの!えーと
雛:ごめんごめん。あんまり深入りされるの好きじゃないか
遥香:いや、大丈夫…
雛:そう?
遥香:………うん
0:【間】
遥香:人と花は全くの別物。それは当たり前のことだと思う。それはそうだよ。生き方も育ち方も違うんだから、当たり前に決まってる
遥香:けど、最近は実は同じなんじゃないかなと思ってる。花には花言葉があるように、人にもその人の存在に意味があるんだと思うようになった
遥香:だから私はある一人の男の子の存在に意味を持つようにした。その人の存在は『一生の感謝』。『忘れられない恋』
遥香:こうして高校で出会ったことも運命だと思ってる。なら、その運命に乗っかって私は『忘れられない恋』を『共に愛に生きる』なんて意味に変えてみたかった
遥香:私に出来るのかな?不安で仕方ない。彼は誰の陽を浴びて恋の芽を咲かそうとしてるんだろう?気になって仕方ないよ
遥香:気になる。けど、気になるだけじゃダメだ…。私にだって『憧れ』はいる。けど、憧れてたらいつまで経っても乗り越えられない。だから私はこの文化祭の劇で光井君と一緒に最高の思い出を作りたいと思ってる
遥香:私は、光井君が好き
遥香:中学生の頃、私を助けてくれたあの日から私の恋の芽はあなたに向いている。光井君は、私にとっての陽の光なんだから
遥香:自信なんてない。私は自分を好きになれない。けど、私が光井君を好きってことは、心の底から自信を持って言えることだから
0:【間】
遥香:……雛さん
雛:ん?
遥香:ちょっと変なこと言ってもいい?
雛:どうしたー?
遥香:……私の好きな人の話
雛:………好きな人?
遥香:うん
雛:それがどうした?
遥香:………その人の事を思えば…こういう劇も上手くいくのかなって
雛:……まあ結果的にはそうなるんじゃない?わかんないけど
遥香:……そっか
雛:じゃあ、読んでみなよ。そいつを思って
遥香:……聞こえる…?私の心臓の音
遥香:この心臓は…あなたと出会うために動き続けてくれたんだよ
雛:……おおー!めっちゃいいじゃん!
遥香:出来てた?
雛:出来てる出来てる!
遥香:よかったー!
雛:その気持ちを忘れないことだね!
遥香:うん
0:【間】
0:場面転換
0:一人で帰る雛
雛:ん〜なんかめんどくさい事になりそうだなー。あたしの立場がなんなのかよくわかんないけど、みんな楽しそうでいいなー
雛:誰が誰を好きになる。そういう関係が羨ましくてしょうがないよ。
雛:あたしは好きになる人、間違ってるっていうのに……はあ
奏音:『恋に成る』
0:【間】
奏音:11章『好きとキスの髪』
0:文化祭当日
先生:戸塚、光井、ちょっといいか?
ひまわり:なにー?
先生:貴様らに衣装を渡しておく
風馬:おー!すごい!
ひまわり:血が着いてる!
先生:赤いスプレーで血のようにしてある。3日間乾燥しているから下着に付くこともない。安心しろ
ひまわり:わー!ありがと〜!
先生:礼を言うのは私の方だ
ひまわり:え?
先生:よく一人でクラスをまとめあげたな。私だけの力では無理だった。ありがとう
ひまわり:んー?どういたしまして?
0:教室に入る
ひまわり:お待たせー
大翔:おーやっときた……え?お前らどうした?、
風馬:何が?
大翔:顔怖すぎだろ
ひまわり:え?
0:ひまわりと風馬は顔を合わせる
風馬:ぎゃあああー!化け物ー!(同時に)
ひまわり:ぎゃあああー!化け物ー!(同時に)
風馬:いつの間にこんなことになったんだ!?
先生:さっき衣装渡した時に私がメイクをした
風馬:どんな技だよ!!
0:そして本番になる
風馬:無事に本番か……
ひまわり:ね。みんなのおかけだよ
風馬:ひまわりのおかげだろ?
ひまわり:私は何もしてないよ?
風馬:ひまわりがクラスの皆に声をかけたからだろ?本当に凄かった
ひまわり:そうなんだ。じゃあ、ありがとー
風馬:今までのひまわりの中で一番光ってたぞ
ひまわり:……あははっ。ありがとー!
大翔:おーい、お化け役ー。ここでスタンバイなー
0:大翔はカーテンで仕切られた空間に案内する
風馬:おう……って、狭すぎじゃねーか?
大翔:そうだな、一人分のスペースしか確保出来なかったから、ノリと気合いだ
風馬:なんだよそれー!
大翔:んじゃ!俺は受付行ってくるー!
風馬:あ、おい!……これ、掃除ロッカーより狭いぞ?
ひまわり:いいよ……ふーまが良ければくっついていい?
風馬:あ、ああ
ひまわり:……失礼します
風馬:………
風馬:(ひ、ひまわりが…近い。周りは積み上げられた机に囲まれてて黒いカーテンで覆われている。だからほぼ身動きが出来ない)
ひまわり:………
風馬:……熱い?
ひまわり:……っ!耳元で喋らないでよ
風馬:ご、ごめん
ひまわり:………
風馬:………
ひまわり:……あはは。またドキドキしてきた!
風馬:う、動くなよ
ひまわり:ふーまはドキドキしないの?
風馬:………うるせー
ひまわり:………アッチョンブリケ
風馬:んぐっ。なんだよ
風馬:(ひまわりは俺の頬に両手を押し付けた)
ひまわり:……っ
風馬:………っ!!
遥香:光井君、ひまわりさん、そろそろお客さ……っ!
0:遥香の視界には、キスをする風馬とひまわりの姿が映る
遥香:………っ!!
0:遥香は慌ててカーテンを閉じる
遥香:………はあ……はあ……はあ
遥香:………どうして?
風馬:な、何してんだよ…
ひまわり:……ふーまがドキドキしないかなーって
風馬:そ、そんなことしなくても……
ひまわり:ふーまは……これでも私の事…幼なじみだと思うの?
風馬:…………
0:【シャッ】
風馬:っ!!
0:カーテンが開けられる
雛:あれ?遥香は?
ひまわり:来てないよ?
雛:あれ?何してんだろ?もうお客さん来るぞ
ひまわり:はーい
風馬:…………
0:【間】
ひまわり:(やりすぎたかな……?ううん。これでいいの。私は幼なじみっていう言葉にはもう頼らない。私の目の前にいるのは私の好きな人だから)
ひまわり:ふーま
風馬:な、なんだよ
ひまわり:今の私をずっと見ててね
風馬:………
ひまわり:(ずっと自分を騙してきたけど、この気持ちにもう嘘はつけない)
ひまわり:(私はふーまが好き)
0:場面転換
大翔:奏音、他のクラス回らないか?
奏音:んー?あーいいよ
大翔:よっしゃあー!行くぞ行くぞー!
奏音:え?なに?
大翔:ついてきてー
奏音:な、なによ
雛:………
0:大翔と奏音は人気の少ない場所に行く
大翔:ほら、ここなら誰も居ない。もうすぐ奏音の誕生日だろ?
奏音:あー。そうだね
大翔:これ、あげる
奏音:な、何これ?
大翔:ネックレス
奏音:そ、そんな!悪いよ
大翔:いいの!俺の気持ちだから。文化祭の準備サボってバイトしたしね
奏音:…文化祭の準備はちゃんとやってよ
大翔:今の時代、二刀流が流行ってるけど俺には無理だった。一個の事しか考えられない
奏音:その一個はなんなの?
大翔:奏音のこと
奏音:……え?
大翔:俺、奏音の事しか考えられなくなった
奏音:な、何言ってんの?やめてよ
大翔:俺が奏音のこと好きって言ったら奏音は嬉しい?
奏音:………
大翔:あー。そっか、奏音口下手だから苦手だよね、嬉しかったら俺の胸に飛び込んでこーい!
奏音:………っ
大翔:………何そのピトッてくっつき方
奏音:うるさい
大翔:………嬉しかったのか
奏音:うるさい!
大翔:よかったよかった
奏音:……うるさい。うふっ
0:【間】
雛:そりゃあそうだよなー。あの二人はそうなるべきだよ。中学の頃からそう思ってた。……だから
雛:さよなら。あたしの恋
0:場面転換
先生:貴様ら、お化け屋敷、ご苦労。光井はそのまま体育館に行ってくれ
風馬:はい…
風馬:(まだ頭がクラクラする。……ひまわり…なんで……キスなんか)
遥香:光井君?
風馬:……え?
遥香:お疲れ様。あの中熱かったよね?
風馬:うん
遥香:飲み物いる?
風馬:おう、ありがとう
遥香:昨日あれだけ先生に指導されたからきっと大丈夫だよね
風馬:そうだな
遥香:………
遥香:(二人は…なんであんな事してたんだろ)
先生:貴様ら、行くぞ
遥香:……はい
先生:……?
風馬:………はあ。
先生:光井。緊張するか?
風馬:……ええ。めちゃくちゃ緊張してますよ
先生:貴様の悪い所は自分の力を隠そうとする所だ
風馬:……え?
先生:常に全力で何かと向き合うことは出来るはずなのに、人となるとそれが出来ない。違うか?
風馬:………
先生:だからこそ、誰かを思う気持ちを強く持て。誰かを楽しませようとする気持ちに全力になれ。それがこの劇で1番重要なんだ
風馬:………誰かを…思う気持ち……?
先生:水瀬
遥香:は、はい
先生:貴様に足りないのは自信だ。
遥香:……自信…
先生:謙虚なのと自信が無いのでは紙一重に違う。貴様は貴様だ。誇らしげに咲いてみろ。そうすれば、誰かが貴様を見てくれるんだ
遥香:………ありがとうございます
0:体育館に立つ風馬と遥香
0:そして幕が上がる
ひまわり:やっほー!ふーまー!遥香ちゃーん!
遥香:ひまわりさん…?
風馬:ひまわり…
遥香:(ああ。まただ。また自分はダメだって思ってしまう。どうしても…私っていう存在に自信が持てない)
風馬:……ふぅー。水瀬
遥香:……え?
風馬:楽しもうな!
遥香:……うん!
遥香:(そうだった。あなたはいつもこうやって私に勇気をくれた)
0:劇が進んでクライマックスのシーン
遥香:聞こえる?私の心臓の音…
風馬:(水瀬?このシーンは後ろ向きに体を合わせる予定だったろ?なんで正面なんだよ……)
風馬:……うん。少しだけ
遥香:この心臓は…あなたと出会うために動き続けてくれたんだよ
風馬:………
風馬:(水瀬は力強く俺を抱きしめた)
ひまわり:………
遥香:だから、私のこの思いは受け取らないでね
風馬:………っ!
風馬:(水瀬は俺の首周りを抱いてそのまま)
0:体育館から悲鳴が起こる
ひまわり:………え?
0:遥香は風馬にキスをする
0:【間】
遥香:(劇でこんなことするのは間違ってる。それはわかってる事だけど、もう抑えられない。自信が無くなって枯れたとしても、あなたを見ると、私は何度だって咲ける気がする)
遥香:好き
風馬:………
0:場面転換
先生:水瀬、台本に無いことを何故やった?
遥香:……すいません
先生:……まあいい。責任は私が取る。誰かに何か聞かれても、私の指示だと答えろ
遥香:……はい
0:風馬と遥香は体育館裏で休憩を取る
遥香:………光井君
風馬:っ!な、なに?
遥香:ごめんね、嫌だったよね
風馬:…そ、そんなこと……ねーよ
遥香:ほんとに?
風馬:……う、うん
遥香:………もちろん、劇だからさ。そういう役って言ったらそれで意味は通るけど……
遥香:私の気持ち……伝わってくれてると嬉しいな
風馬:………水瀬
ひまわり:………二人共ー。お疲れ様
遥香:……ひまわりさん
風馬:………ひまわり
ひまわり:あはは。ふーま。なんか他のクラス行ってくればー?
風馬:……でも
ひまわり:えー。行ってきてよ。あはは。
風馬:いや、でも
ひまわり:行ってきてって言ってんの聞こえないー?あはは。あはははは!
風馬:こ、こえーよ!わかった
風馬:(………水瀬の気持ちって……そういうことなのか…?)
0:風馬は居なくなる
遥香:どうしたの?ひまわりさん
ひまわり:んー?あはは。なんの事だと思う?
遥香:……光井君のこと?
ひまわり:そう!よくわかったね
遥香:わ、わかるよ
ひまわり:なんでキスしたの?先生の指示?
遥香:……それは……
ひまわり:んー?
遥香:私の意思…だよ
ひまわり:ふーん。そっか
遥香:ひまわりさんは……どう思ったの?
ひまわり:何がー?
遥香:その……私と光井君を見て
ひまわり:んーとね。イライラした
遥香:………ごめん
ひまわり:あ、でも謝らないでよ。私、ふーまと付き合ってるわけじゃないし
遥香:……私も、ひまわりさんと光井君がキスしてるところ見ちゃったよ
ひまわり:……見てたんだ
遥香:うん…私はどっちかと言うと胸が苦しくなった
ひまわり:よく言うよ、見た上でふーまにキスして見せつけて来たんだからさ
遥香:……ごめん
ひまわり:だから、謝らないでって!
遥香:………
ひまわり:あ、うん。私こそごめん。私も今すごーく…こう……イライラしちゃってるからさ……なんていうかー。色々抑えてるんだけど、これだけは言わせて
遥香:………
ひまわり:遥香ちゃんのこと、嫌いにはならないから、安心して欲しい
遥香:………うん。ありがとう
ひまわり:なんで涙目になるの!?
遥香:だって、私、ひまわりさんに嫌われるかと思ったから……
ひまわり:そんな事ないよ……でも、これで再確認しよう。私はふーまが好き
遥香:私も光井君の事が好き
ひまわり:うん。でも、譲るつもりはないからね
遥香:私だってそうだよ。譲りたくない
ひまわり:……よーし!遥香ちゃん!ハイタッチしよ!
遥香:……え?
ひまわり:今日の敵は明日の友って言うじゃん?ほらほら早くー!
遥香:……うん!
ひまわり:ハイタッチー!
0:二人はハイタッチを交わす
遥香:(譲るつもりはない。ひまわりさんにそう言われて私も気付いた。)
遥香:(私だって、光井君を独り占めしたいって)
ひまわり(もしかしてふーまは遥香ちゃんのこと好きかもしれない。それでも私の方がずっと好きだったもん)
ひまわり:(私の方がふーまのことが好き。それは絶対負けてない)
0:『恋に成る』3部END