台本概要

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タイトル 恋に成る【4部構成。第4部】
作者名 ゆる男  (@yuruyurumanno11)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 7人用台本(男2、女4、不問1)
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 .*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.

「あたしは…お前が好き……」

「そういうとこが好き」

「俺も好きだぞ」

「あなたを…好きになりました」

「ずっと好きだったの」

「……好きだ」



.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.*・゚ .゚・*.


〜ヘアセットやヘアケアが大好きな男子高校生〜
【光井風馬】

彼に与えられた試練はやがて気付かされる


「ふーまに髪やってもらってる時が1番幸せ」

〜風馬の幼なじみ〜
【戸塚ひまわり】


「光井君がこうやって私を守ってくれたように
今度は私が光井君を守るから…」

〜初恋の相手??〜
【水瀬遥香】

誰が1番大切な人なのか

好きとは何か………

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


こちらの台本は4部構成の話で4部になります
この台本だけでも面白くなるように心がけてますのでこれだけ演じるのもありです!
続きが気になればそのまま続けて貰えたら光栄です!

野良劇の場合はクレジット表記などしなくて大丈夫です。
タイトルの右上にX(ツイッター)でつぶやけるので、つぶやいてくれたら今後のモチベーションに繋がりますm(_ _)m

約束劇の場合はなんでもいいのでクレジット表記してもらえると助かります!

ぶっちゃけ何でもいいです!読んでもらえたら嬉しいです!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
風馬 218 風馬『ふうま』 ヘアセットが大好きな高校生。ひまわりの幼なじみだが、初恋は……?ツッコミ多めの主人公です
ひまわり 119 ひまわり 風馬の幼なじみ。元気で明るい性格だが少し気を使う女の子。でもとにかく明るい!
遥香 105 遥香(はるか) お花が大好きな女の子。少し静かめだが花を見るとテンションが上がる。密かに燃え上がる恋心がある?
奏音 30 奏音(かのん) 全体的に真面目すぎる一面がある。割とツッコミ役になる。でも仕切ってくれるから助かる
大翔 26 大翔(ひろと) ちょっと抜けてる所がある高校生。意外と甘えたがりな部分もある
47 雛(ひな) 少し男口調な感じ。でも性格も割とはっちゃけてるからクールでは無いかな?ボケとツッコミ両方出来る。万能!
先生 不問 17 先生 セリフ数は少ないけどインパクトはめちゃくちゃある。果物ナイフを投げるのが趣味
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
雛:あたしは…お前が好き…… 奏音:そういうとこが好き 大翔:俺も好きだぞ 遥香:あなたを…好きになりました ひまわり:ずっと好きだったの 風馬:……好きだ ひまわり:『恋に成る』 0:【間】 ひまわり:12章『過去と変わらない髪』 ひまわり:(私がふーまを好きになった理由。) ひまわり:(私が子供の頃。私の両親はいつも仕事で忙しかった。パパは医者でママは芸能人のヘアメイクを担当している) ひまわり:(お金に困ってないのに両親は共働きで、仕事大好き人間。一人っ子の私は両親があんまり家に居ないっていう環境が当たり前だった。だから、ふーまがいることが私にとっての心の支えでもあったのかもしれない) ひまわり:(それでも私はパパとママが好きだった。パパとママのために何か出来ることないかなーっていつも考えていた。そんな時にクッキーを作ってみようと思って、ふーママに教わってクッキーを作ったことがある) ひまわり:(……でも…パパとママはきっと仕事で忙しかったんだと思う。……一口も手をつけなかった) ひまわり:(悲しかった。私はパパとママの子なのに捨てられた気分だった。私は部屋でずっと泣いて、自分で作ったクッキーを捨てようと思った。そんな時) 風馬:ひまわり? ひまわり:……ふーま。 ひまわり:(外からふーまの声が聞こえて私は窓を開ける) 風馬:どうしたー? ひまわり:……なんでもない 風馬:ん?そのクッキーなんだよ ひまわり:これは……私が焼いたクッキーだよ 風馬:お菓子なんか作れたのか? ひまわり:うん 風馬:へぇーすげーじゃん ひまわり:ふーま、食べてくれる? 風馬:食いたい ひまわり:……… 0:風馬はひまわりの部屋に行く 風馬:お邪魔しまーす ひまわり:……… 風馬:ふーん。これがひまわりが作ったクッキーか ひまわり:うん。食べて 風馬:いただきまーす。……パクっ。……ん!? ひまわり:………どう? 風馬:う、うめー!うめーよ!本当にひまわりが作ったのか!?もう一個食っていい?めっちゃうめー! ひまわり:………ふーまっ! 風馬:うわっ。な、なんだよ ひまわり:(ふーまは昔書いてくれた『手紙』の言葉みたいに、私を受け入れてくれた。ふーまの優しさも、嬉しそうな声もその笑顔も全部抱きしめたくなった) ひまわり:ありがと!ふーま! 風馬:何泣いてんだよ ひまわり:あははっなんでもなーい! 風馬:よし、じゃあポニーテールしてやる ひまわり:なんで!? 風馬:何となく ひまわり:やりたいだけでしょ? 風馬:まあな ひまわり: ひまわり:(子供の頃からずっと好きだったけど、もっともっと好きになる。一緒にいれば居るほど…好きになる) ひまわり:(これが私がふーまを好きになった理由) 0:場面転換 遥香:(私が光井君を好きになった理由) 遥香:(中学の頃、私は妙に気になる人が居た) 風馬:なんだこれ、花瓶にゴミ入ってる 遥香:……… 遥香:(花瓶にはスイセンの花が育てられていた。でも、花瓶にゴミが入ってたら花が可哀想) 風馬:まーたゴミが入ってる。全く、物を大事に出来ないやつは嫌いだなー 遥香:(毎回ゴミを入れてる人は誰なんだろう?私は少し気にかけるようにしていた。そしてある日、花瓶にゴミを入れていた女子生徒2人を見つける) 遥香:(ほんの軽い気持ちだった。たった一言、花瓶にゴミ入れるのはやめてって。それだけだった。…けど) 遥香:(恨みを買ってしまったのか、女子生徒2人はそこから私に会う度に突き飛ばしてきた。髪を引っ張ったり、物を投げつけてきたり。完全にイジメだった) 遥香:(それでも学校が終わって中庭に咲いてる黄色いチューリップの花を見ながら下校する事が何よりも私の癒しだった) 遥香:………あ 風馬:………っ 遥香:(あの人、花瓶のゴミを毎回取ってくれた人?) 風馬:……… 遥香:……… 遥香:(それでもいじめは加速していく。爪で顔を引っかかれたり鞄の中にゴミを入れられたり。本当にくだらない。そんなことして何になるの?もう、こんな場所には居られない) 遥香:(私はこの学校から引っ越すことになった。私の両親も優しいからあまり大事にはしないでその場を収めるようだった。) 遥香:(そして、転校の前日、最後のいじめを受けた。トイレでバケツいっぱいの水を浴びて、土も投げつけられた。……私はそれでも我慢した。あなた達が我慢できなかった怒りっていう感情を我慢出来た。もう会うこともないから、私は最後に2人に言った) 遥香:もう明日、転校するから、いじめる人居なくなるね。ごめんね 遥香:(もちろん私が謝る理由なんてない。皮肉のつもりで言ったんだもん。そしたら2人の女子生徒はコソコソとこう言い出した。『あの花瓶をあいつに投げつけよう』って) 遥香:(そうだね、そうすればいいよ。そんなことしたら人が死ぬ可能性だってある。そしたらあなた達は一生その罪を、その傷を背負うことになるね。なら私は、あなた達のために死んであげる) 0:【パリーン!!】 遥香:……っ!! 遥香:(私が覚悟を決めた時、一人の男子生徒が私を抱き寄せる) 風馬:っ!!ご、ごめん!だ、大丈夫? 遥香:(この人……花瓶のゴミを毎回取ってくれた人だ…) 遥香:………うん 風馬:………怪我はない? 遥香:………大丈夫 遥香:(この感覚はなんだったんだろう?助けてくれてよかった。だけじゃないはず。この気持ちから早く逃げたくて私はすぐ学校を出た) 遥香:(どうしても、彼が頭から離れない。もしかしたら花瓶に頭を打たれるのはあなたの方だったかもしれないのに。私の心配をしてくれた優しい人。……明日も会いたい。けどそれはもう叶わない) 遥香:(彼との出会いは、黄色いチューリップが咲いた中庭の花壇だったから。そういう運命だったのかもしれない。黄色いチューリップの花言葉は………『望みのない恋』) 遥香:それでも、私はこの高校に入って、光井君と一緒に居る。ひまわりさんと、奏音さん、雛さん、北谷君も居る。私はこの学校に来て本当によかったと思う。 遥香:私のこの気持ちは変わることはない。 雛:『恋に成る』 0:【間】 雛:13章『風とわからない髪』 遥香:………… ひまわり:(私はふーまが好き) 遥香:(私も光井君が好き) ひまわり:(私は譲るつもりはないからね) 遥香:(私だってそうだよ。譲りたくない) 遥香:そうは言ったけど ひまわり:おっはよー!遥香ちゃーん! 遥香:お、おはよー! 風馬:お、おはよう。水瀬 遥香:うん。おはよー ひまわり:あ、そういえば今年はクリスマス何するの? 風馬:いや、わかんねーよ。ひーママも帰ってくるんだろ? ひまわり:ママはいいの 遥香:(なんか…私にすごーく分が悪い気がしてきた!) ひまわり:ふーまー? 風馬:……なんだよ ひまわり:……なんでもない 0:場面転換。 大翔:おはよー 奏音:お、おはよ!みんな 雛:おはよー。……え? 風馬:…どうしたんだ?お前ら 大翔:奏音と付き合うことになった 風馬:………えー!? 雛:……… ひまわり:そうなんだ!おめでとー! 奏音:あ、あの!でも、付き合ってるけどそんなに気を使わないでね?みんなで遊びたいのは変わらないから 雛:………そうだなー!奏音!今日はおめでたパーティでもするかー! 奏音:あ、ありがとう!雛には感謝してる 雛:………うん。全然いいんだよ 大翔:俺にも奢ってくれるんでしょ? 雛:自分で払え! 風馬:……… 風馬:(みんな前に進んでるんだなー) 0:【バァァン!!】 0:机を叩く大きな音が鳴り響く 先生:貴様ら、文化祭ご苦労だった。おかげで優秀賞は取れたみたいだ。しかし最優秀賞を受賞できなかったことは悔やまれる。だがその結果だけではなく、次に繋がるいい機会になれたことと思っている。ありがとう 風馬:珍しく感謝してるな 0:【ジュパンッ!】 風馬:ひぃ! 0:風馬の机に果物ナイフが刺さる 先生:貴様の言う通りだ光井。私は教師になって8年、そしてサバイバルを初めて30年が経つ。しかし、いついかなる時も感謝の気持ちは持つべきだ 先生:貴様も…常にあるこの環境に当たり前などと片付けず、日々感謝の心を持ち続けるんだな 風馬:…………感謝の心 0:【間】 風馬:(俺は何をしてるんだろうと思う時が多々ある) 風馬:(中学の頃、初めて水瀬を見た時のことを思い出す。あの綺麗な髪に俺は一目惚れをしたんだ。それは間違いない) 風馬:(それなのに今は、ひまわりの言動にどうしたらいいかわからなくなっている。それに、水瀬だって、なんで俺に……き、キスをしてきたんだ!……もう何もかもわかんねーよ) 遥香:光井君 風馬:……水瀬 遥香:少しだけ話せる? 風馬:……うん 0:場面転換 0:学校のベンチに座る風馬と遥香 風馬:……… 遥香:………光井君 風馬:ん? 遥香:文化祭の時、迷惑かけちゃったから謝ろうと思って、ごめんなさい 風馬:………いいよ 遥香:………私ね、今年は本当に色んなことがあったなーって。ひまわりさんに話しかけてもらって今いる人たちと仲良くなれて凄く楽しい日々を送れてる。いじめられてた頃はこんなに楽しくて幸せな日々が来るなんて思わなかったんだ 風馬:……そうだよな。俺だってそうだ 遥香:うん、私はやっぱり今でもこう思っちゃうんだよ 風馬:……なに? 遥香:光井君にまた会えた事が…1番嬉しいって 風馬:……水瀬 遥香:…変なこと聞いてもいい? 風馬:……うん 遥香:私が光井君に……キスした時、どう思った? 風馬:………… 遥香:こ、答えにくかったら答えなくて大丈夫だよ!……ごめんね 風馬:ううん。………そうだな、あの時は 遥香:……… 風馬:正直、戸惑った 遥香:……そうだよね 風馬:でも、なんで戸惑ったのかはわからない 遥香:…… 風馬:………ごめん。でもそのうち俺なりに考えて答えを見つけると思う。自分で考えて自分で感じた事をまた水瀬に伝えるよ 遥香:………うん。ありがとう 0:場面転換 0:奏音、大翔、雛は雛の家に居た 奏音:なんで私と大翔のお祝いで私が料理作らないといけないのよ 雛:仕方ないでしょ?あたしも大翔も料理出来ないんだし 大翔:俺も今エーピックスで忙しいしな 奏音:ゲームやってんじゃないわよ!はっ倒すわよ!? 雛:付き合ってもお前ら相変わらずなんだな 大翔:まあ俺も奏音の手料理食えるだけで嬉しいからなー 奏音:ふ、ふん!じゃあ仕方ないわね! 雛:おーい。手懐けられてるぞー? 奏音:はい、出来たわよ 大翔:おー!オムライスだ! 雛:美味そー! 奏音:召し上がれ 大翔:いただきまーす!んー!うめー! 奏音:そ?よかった 雛:……奏音は、大翔のどこを好きになったの? 奏音:な、なんで本人の前で言わないといけないのよ! 雛:いいじゃん。なんか聞いてみたい 大翔:んー? 奏音:む、昔からこうやって何か作るといつも喜んでくれるでしょ?食べてる顔も好きだし、あとは…… 雛:……ん? 奏音:……私にだけ、男らしいとこかな?そういうとこが好き 大翔:……んー。その言葉をおかずにオムライスおかわり出来るなー!俺も好きだぞ。奏音のオムライス 奏音:いや、オムライスかい 雛:そうなんだねー。いやー青春してますなー 奏音:雛も彼氏出来たら教えてね 雛:あたし?あー。あたしはどうだろ? 大翔:前は居たじゃん?すぐ別れたけど 雛:まあね 大翔:俺も雛の彼氏見たいぞー 奏音:楽しみにしてるね 雛:うん。……出来たらね 雛:(あたしは……お前が好き…なんて…言えないな) 0:場面転換 0:学校にて 0:【バァァン!!】 0:机を叩く大きな音が響く 先生:貴様ら、もうすぐで冬休みだ。私も来年に向けて新たな自分を探す旅に出る。だから貴様らも新しい自分を見つけられるように日々行動しろ。 風馬:(………新しい自分…か) 0:放課後の事 0:風馬はベンチで座っている 風馬:……はあ。 先生:何をしている。光井 風馬:……ああ。少し考え事を 先生:なるほどな。まあ貴様には私のわがままに付き合ってもらった恩もある。何か解決出来そうならば私に聞いてくれ 風馬:……そ、そういえば、あの文化祭の後は大丈夫だったんですか?劇中に水瀬が俺にキスして……ほら、先生が責任取るって言ってましたけど 先生:ああ。そんなもの大したことでは無い。私が学年主任にチョークスリーパーで気絶させた。それから主任は文化祭からの記憶が無いみたいだ。計画通り 風馬:恐ろしいことしてんな…… 先生:そんなことを聞きたかったのか? 風馬:……いえ、あとは……劇のシナリオ先生が作ったんですよね? 先生:ああ。そうだ 風馬:どうして、あの物語を作ったんですか? 先生:そうだな。あの物語は心臓病の女の子に段々と惹かれる男の子の物語だ。しかし、女の子はやがて余命が絶たれ亡くなる。 先生:私は、何かを手に入れる時は、何かを手放す時だと考えている。つまり、男は女から感謝と笑顔と前向きを手に入れるが、彼女を失う 風馬:……それは…どういう…… 先生:人の選択とは大体そうだ、例えば時間が欲しくてコンビニでおにぎりを買うが、お金を失う。夢を叶えるのも、時間と労力を失う。そうやって色んな選択肢の中で、選ぶものと切り捨てるものが存在するんだ 風馬:………そうなんですね 先生:ああ。だから貴様も、その選択に迷った時、こう思った方がいい 風馬:………… 先生:その選択を選んだ時、何かを失ったとしても自分の明るい未来を想像することが出来れば、その道に進むべきだ 風馬:……自分の…未来 先生:ふん。そんな所だ。貴様が何を選択するかは私にはわからないが、自分の選んだことに後悔などするな。 風馬:……はい 0:そして、下校時間になると ひまわり:ふーま! 風馬:……ひまわり、待ってたのか? ひまわり:うん、一緒に帰ろ? 風馬:おう ひまわり:あ、そうだ、クリスマスなんだけどさ、24日にママが帰ってくるのね、だから25日はふーまの家でクリスマスパーティしようよ! 風馬:それなら24日でいいんじゃないか?母さんもひーママに会いたいだろうし ひまわり:んー。どうだろ?わかんないけどその方がいいならそうする? 風馬:うん。きっとその方がいいよ ひまわり:……ふーま、最近元気ないね 風馬:そ、そうか? ひまわり:うん。何かあったの? 風馬:…あ、あっただろ。色々 ひまわり:……うん。色々あったねー 風馬:なんで逆にお前は普通にしてられるんだよ ひまわり:え?なんでって決まってるでしょ? 風馬:なんだよ ひまわり:昔からずっと気持ちが変わらないからだよ。もう迷わなくなっただけ 風馬:………… ひまわり:ふーまも気持ちの変化があったから今も悩んでるのかな? 風馬:………そう、かもな ひまわり:……あ 0:急に強い風が吹く 風馬:……風強いな、ひまわりの髪、乱れてるぞ 0:風馬は手ぐしでひまわりの髪を整える ひまわり:うん、ありがとー! 風馬:……あ ひまわり:ん? 風馬:……いや、なんでもない ひまわり:……そっか ひまわり:(私もこれ以上は聞かないことにするよ。……ふーまの気持ちは、私にだってわかんない。だから怖いんだよ) 0:場面転換 0:風馬の部屋にて 風馬:(俺は子供の頃に撮った写真を見返す) 風馬:(幼稚園の頃、ヘアアイロンを引っ張り出してひまわりの髪をセットしようとしたことがあったけど、父さんにめちゃくちゃ怒られて泣いてる写真だ。……この頃は、なんでひまわりの髪をセットしようとしたんだろ?覚えてねーな) 風馬:(小学生の頃、初めてひまわりの髪をセットした時の写真だ。慣れて無さすぎてボサボサの頭になったのにひまわりは妙に嬉しそうにしている) 風馬:(中学生の頃、入学式でひまわりにくっつかれて嫌な顔してる写真だ。思えばこの時、嫌だと思ってることに理由はあったはず。……あったはず) 風馬:………そうか 風馬:(理由は単純だった。だからこそ、俺はこの思いをしまっておくことにした。まだやらないといけない事があるからだ) 遥香:『恋に成る』 0:【間】 遥香:14章『恋と諦めの髪』 0:場面転換 0:学校にて 先生:貴様ら、今年最後の学校だな。早めに言っておこう。あけましておめでとう 風馬:早く言うものじゃねーだろ 0:【シュパンッ!】 風馬:ひぃ! 先生:冬休みも様々な行事がある。怪我のないように来年を迎えろ。以上だ。それでは貴様らさようなら 0:全員で 全員:さようなら 0:【間】 大翔:Hey奏音。俺のおやつ出して 奏音:持ってるわけないでしょ!バカ! 大翔:なんで持ってないの!?バカなの!? 奏音:バカはあんたでしょ!うるさいな! 雛:はいはーい。喧嘩しないのー。あとバカは大翔な 大翔:雛だけは味方だと思ってたのに…… ひまわり:ふーまも一緒に帰ろ? 風馬:ああ。そうだな 遥香:ご、ごめん。少しだけ光井君とお話させてもらっていい? ひまわり:ん?どうしたの? 遥香:……その、少しだけ 風馬:……ああ。いいよ ひまわり:……うん。じゃあ先帰ってるね 遥香:ごめんね ひまわり:遥香ちゃん 遥香:……なに? ひまわり:ごめんね禁止ね 遥香:……わかった 0:場面転換 風馬:話ってなんだ? 遥香:あ、ううん。……大した話じゃないんだけどさ 風馬:うん 遥香:………クリスマスイブの日…空いてる? 風馬:……クリスマスイブ… 遥香:あ、空いてなかったら大丈夫だよ!予定あるならそっち優先してもいいし 風馬:………うん 風馬:(俺は……何かを手に入れるためには、何かを失わなければいけない。その意味がやっとわかった) 遥香:じゃあさ。こうしよ? 風馬:……なに? 遥香:クリスマスイブの日、午後12時から、隣町のイルミネーションが綺麗な駅前で私は待ってるよ。来るか来ないかは光井君次第。そこに光井君が来なかったら、私は諦めて家に帰るよ 風馬:………わかった 風馬:(……これが俺の答えだ) 0:場面転換 0:風馬はひまわりの家に行く 風馬:ひまわり ひまわり:どうしたの? 風馬:ちょっと話がある ひまわり:……ん? 風馬:クリスマスイブ…午後だけ予定が入っちゃってさ ひまわり:……そうなんだ 風馬:だから… ひまわり:遥香ちゃんと? 風馬:………うん。 ひまわり:………そっか、そうだよね 風馬:だからさ ひまわり:うん!おっけーおっけー! 風馬:……え? ひまわり:行ってきて!私はママと楽しくクリスマスを過ごすよ! 風馬:……おい、最後まで話聞けって ひまわり:聞かないよー。じゃあね! 風馬:お、おいひまわり! 0:ひまわりは玄関の扉を閉める ひまわり:………はあ。そうなんだ ひまわり:………でも、最初からそうだったよね…ふーまは……わかってたことだよ…… ひまわり:………はあー。……グスンッ 0:場面転換 0:クリスマスイブの前日。風馬は商店街に来ていた 風馬:……どれがいいのかなー? 雛:……風馬? 風馬:…おー。湯山じゃんか 雛:何してんの?こんなとこで 風馬:花を見てんだよ 雛:花?なんで? 風馬:ちょっとな。ある人に渡したくて 雛:ほーん。風馬、好きな人でも出来たんだ 風馬:う、うるせーな!悪いかよ 雛:悪いなんて言わないよ、何か…いいなーって思っただけ 風馬:なんで? 雛:大翔と奏音も付き合ったわけじゃん?次は風馬かーって思って 風馬:まだ両思いとは限らないだろ! 雛:はあ?馬鹿なの?なんであんたってモテない言動ばっかしてるのにモテてんの。腹立つ 風馬:そんな言い方しなくていいだろうが! 雛:はあ。でもまあ、そんな男の何気ない行動とかでギャップを感じるのが女の子なんだよね 風馬:し、知らねーけど 雛:大翔とかそうじゃん?奏音の前では男らしいんだってさ 風馬:あ、あいつが? 雛:うん。他にもあるだろうけど、大翔だったら奏音を幸せにしてくれるだろうしね 風馬:……湯山は彼氏とかは作らないのか? 雛:んー。昔は居たけどねー。なんか気持ち悪くて別れた 風馬:なんだよそれ 雛:本当のことだよ 風馬:じゃあ次の彼氏は気持ち悪くないといいな 雛:そういう問題じゃない 風馬:じゃあなんだよ 雛:んー。多分もう風馬にしか言えないと思うから、言うか 風馬:なんだ? 雛:あたしはさ、それなりに可愛い服とかも好きだしメイクとかも好きなんだけどね 風馬:ん? 雛:恋愛対象は男じゃないんだ 風馬:………え? 雛:ね?びっくりするでしょ?女の子が女の子を好きになるんだよ。林間学校でひまわりとお風呂入った時もどうなる事かと思った 風馬:……… 雛:だからさ、これを言えるのは風馬だけだ 風馬:お、俺だけじゃないだろ?大翔だっているし手島だって 雛:この事を同性に言うのは気まずいでしょ?あと…大翔には言えない 風馬:……なんで? 雛:………ふふ。なーいしょ 風馬:な、なんでだよ! 雛:まあ、風馬も誰を好きになるとか誰に好かれるとかあんまり深く考えなくていいんじゃない? 雛:自分の人生、常にその人が居る。そう考えるだけでいいんだよ 風馬:………そうだな。俺にもわかってる 雛:じゃあ大丈夫だね。はあ。なんか暴露したら疲れてきたわー。あたしはもう帰るね 風馬:うん、ありがとう 雛:あ、この話は誰にも内緒だからね!? 風馬:当たり前だろ。じゃあなー 0:風馬と雛は別れる 雛:(……ふぅー。風馬もやっと心に決めたか。……あたしにはお見通しだよ。風馬はずっとそいつを選んできたじゃん) 雛:(やっと……やっとだな) 0:場面転換 0:クリスマスイブ当日 奏音:大翔ー。お待たせ 大翔:おー。待ってないけど待ちくたびれた 奏音:どっちなのよ! 大翔:うそうそ、そう梅干しみたいにカリカリすんな 奏音:うるさいな 大翔:今日はクリスマスイブ初デートだぞ?今日は怒るの禁止な 奏音:毎回大翔が怒らせてるんでしょ! 大翔:にしてもー。他の奴らは今頃どうしてんだろーなー? 奏音:他って? 大翔:風馬とひまわりとか? 奏音:なんであの2人が出てくんの? 大翔:え?お前まじ? 奏音:え?なんで? 大翔:少なくともひまわりの好きな人はわかるだろ? 奏音:ひまちゃんの好きな人?誰だろうね? 大翔:………ガチかお前 奏音:なんで?大翔知ってんの? 大翔:いや、実際聞いてはないけどわかるだろ 奏音:わかんないよ! 大翔:奏音は奏音で大変そうだな… 奏音:どういう意味よ! 大翔:はい怒ったー!今日の飯全部奢りなー! 奏音:なんでよー!もう意味わかんない! 0:場面転換 風馬:……よし!……花も持った 風馬:行くか! 0:風馬は隣町に向かう 風馬:この辺だよなー。……ん? 遥香:………すぅー。すぅー。 風馬:み、水瀬?寝てんのか? 遥香:………あ、光井君。おはよー。 風馬:お、起きた。おはよー。 遥香:んー……すぅー。すぅー。……え!?光井君!? 風馬:お、俺だよ 遥香:あ、き、来てくれたんだ 風馬:なんで寝てたんだよ 遥香:……来ないと思ったから 風馬:……来るよ。今日はそういう日だろ? 遥香:そうだね。ありがとう。来てくれて 風馬:ああ 遥香:昼間だからイルミネーションはあんまり光ってないけど綺麗じゃない? 風馬:そうだな 遥香:こういう場所に来たことある? 風馬:あー。あるよ。昔は家族とひまわりと一緒によく来てた 遥香:……そうなんだ 風馬:水瀬は? 遥香:私も、家族としか行ったことない 風馬:みんなそんなもんだよなー 遥香:………そうだね 0:しばらく商店街を回る 0:時間も経ち、少し暗くなってくる 遥香:ほら、イルミネーションが光ってきたよ 風馬:うわー!ほんとだ! 遥香:綺麗だね 風馬:うん、綺麗だ 遥香:よかった…光井君とここに来れて 風馬:……… 遥香:……私、光井君が居てくれたから、私も今ここに居るんだって思ってるの 風馬:……どうして? 遥香:私は自分に自信を持てないから。弱い自分が好きじゃないの。……でも、光井君と居ると、ほんの少しだけ自分のことを好きになれる 風馬:……俺といると? 遥香:うん。私は…ちょっと勇気が必要な時、光井君を思い出していつも勇気を貰ってる。……だから、今もちょっとの勇気を…私にちょうだい 風馬:……… 遥香:………光井君の事が…好き。私は……あなたに助けて貰ってから…あなたを好きになりました 風馬:………ありがとう 遥香:……… 風馬:俺も…水瀬に伝えたいことがあるんだ 遥香:………はい 風馬:これを受け取って欲しい 遥香:……これは? 風馬:この時期は咲かないみたいだから、造花になっちゃって悪いんだけど 遥香:……… 風馬:俺の気持ちの花だ 遥香:………これは……黄色いチューリップ… 風馬:……ごめん。水瀬。……水瀬の気持ちは…受け取れない 遥香:………… 風馬:水瀬の気持ちは本当に嬉しい。……けど、やっぱり……水瀬じゃダメなんだ 遥香:…………知ってる。わかってるよ私にだって 風馬:………ごめん 遥香:…………… 風馬:確かに、水瀬のこと、憧れてた時期はあったんだ。でも……この先俺に大きな困難が押し寄せた時、……どうしても…どうしても水瀬じゃダメだったんだ 遥香:………うん。 風馬:俺なりの答えがこれだ。直接水瀬に伝えたかった 遥香:………じゃあ……壊れそうな私を…光井君は助けてくれるの? 風馬:……… 遥香:………また……私を助けてくれる? 風馬:………ごめん 遥香:……… 風馬:………俺には…守りたいものがある。だから……それは出来ない 遥香:………わかった 風馬:……じゃあ、俺はもう行くね 遥香:………うん。ありがとう 風馬:こちらこそ、ありがとう 遥香:(まだ……ダメ。涙は流しちゃダメ…でも……) 遥香:光井君…最後に、お願いがあるの 風馬:……なに? 遥香:……私の…髪を触って 風馬:……… 遥香:……… 0:風馬は遥香の髪を触る 風馬:……柔らかい髪だ 遥香:うん 風馬:サラサラだ 遥香:……うん 風馬:……すごく…綺麗だ 遥香:……うぅ………ううぅ…うううぅぅぅ 風馬:………じゃあ… 0:風馬はその場を去る 風馬:(………苦しい…でも……こうしないといけないんだ) 遥香:(光井君が離れた瞬間に、私は胸に溜まった思いを一気に放した) 遥香:(もう私に望みはないんだと、もうあなたには届かないんだと、わかってても止められなくて、どうしようもなく、行き場を失った私の思いはただ、胸の奥底にずっしりと積もっていくだけ) 遥香:(もうこれで終わりなんだ。だからこれからはまた強く生きないと……そう思っても今は足が動かない。膝まで力が抜けた体は地面に落ちていく) 遥香:(あなたが守ってくれたこの体で、あなたの思いの花を胸に抱き……私はただひたすら、枯れるまでその場で泣いた) 遥香:うわあああぁぁぁぁん!! 風馬:『恋に成る』 0:【間】 風馬:15章『幼なじみとひまわりの髪』 風馬:(俺は家に向かう) 風馬:ただいま!……あれ?ひまわりは?どこ行ったんだ?なんでこんな時に居ないんだよ! ひまわり:いい加減にしてよ! 風馬:……え? ひまわり:私の事何も知らないのも全部ママのせいでしょ? 風馬:……外からひまわりの声が聞こえる……? 0:窓を覗く風馬 風馬:ひーママと…言い合いしてんのか? ひまわり:私はママにもパパにもお菓子作ったことあるよ?でも食べてくれなかったじゃん!家族なのに、全然私の事興味無いじゃん! 風馬:……… ひまわり:もう、パパとママなんか嫌い!! 風馬:ちょ、ちょっと待てよ 0:風馬は慌てて玄関を出る 風馬:ひまわりー! 風馬:……くそ!俺はどんだけひまわりのこと探してんだよ 風馬:……でも、今はそんなことどうだっていい。ひまわりを見つけて、ひまわりに伝えないと…… 0:風馬はしばらくひまわりを探す 風馬:どこ行きやがった…。……もう居なくなっちまったのか……。それじゃあ俺が困るんだよ。ひまわりが行きそうな場所…… 風馬:………あそこか 0:場面転換 ひまわり:……うぅ…うううぅぅぅ…… ひまわり:(私は家族を好きになろうとしていた。……でも、私の家族はいつも仕事で忙しい。それならしょうがないって思ってたけど…) ひまわり:(私がお菓子を作ってたことも知らないなんて…そんなの酷いよ……。元はパパとママのために作ったのに……。) 風馬:風邪引くぞ? ひまわり:……っ!ふーま!? 風馬:こんな所で何してんだ? ひまわり:ふーまこそ。遥香ちゃんはどうしたの? 風馬:………色々あってな ひまわり:……そうなんだ 風馬:なんでまたこんなトンネルに居るんだよ ひまわり:……わかんない。けど、ここはふーまとの思い出だから 風馬:思い出? ひまわり:うん。ここでよく雨宿りしてたけど、本当に嵐みたいな日に私とふーまはここに居たんだよ 風馬:………そんなことあったっけな ひまわり:あったよ。ふーまの隣に居ると安心するから、私はこの場所を安心する場所って読んでるの 風馬:まんまだな ひまわり:でもさ…パパとママにも怒鳴っちゃったし…私はもうひとりぼっちだよ 風馬:ひまわりには、俺がいるだろ。俺はひまわりが大事なんだ ひまわり:……え? 風馬:だから…… ひまわり:もう……わかんないよ 風馬:……え? ひまわり:私は…ふーまのこと好きなの。ずっと……ずっと好きだったの……でもふーまは ひまわり:…遥香ちゃんのこと好きなんでしょ? 風馬:……いや、待てよ ひまわり:わかるよ私にだってずっと見てきたもん。それくらいわかる……でも…ふーまの気持ちはわからない 風馬:………ひまわり ひまわり:なんで私に優しくするの?ずっと冷たくしてくれたら身を引けるのに。なんで私の所に来たの?離れてくれたら期待もしないのに ひまわり:なんで私を助けに来たの?見放してくれれば諦め切れるのに ひまわり:なんで期待させること言うの?なんで私の事、大事って言うの?なんでおんぶしてくれたの?なんで私の髪を触るの? ひまわり:わかんないよ……ふーまは私をどう思ってるのかわかんない。肝心なこと教えてくれないんだもん ひまわり:遥香ちゃんとお祭り行った時、私に嘘ついた時、私にキスされた時、どう思ったの? ひまわり:わかんないよ……ふーまとずっと一緒に居るのに…こんなにずっと一緒に居るのに…… ひまわり:ふーまのことちっともわかんないんだよ!! 風馬:………ひまわり ひまわり:……っ! 0:風馬はひまわりを抱きしめる ひまわり:……ふーま? 風馬:俺…水瀬に告白されたんだ ひまわり:……え? 風馬:でも…確かに…中学の頃は好きだったかもしれない。けど、俺はそれ以前に、大事なものがあったんだよ ひまわり:……… 風馬:俺がひまわりをどう思ってるか……俺にもわからなかった。でも、最近やっとわかったんだ ひまわり:………… 風馬:俺はひまわりが好きだ ひまわり:………っ! 風馬:な、何年越しだって話だよな。でも、俺はひまわりが居る環境が当たり前だと思っていた ひまわり:……… 風馬:いつもひまわりに冷たくしたり、適当な返事したり、嘘ついたり。本当に酷いことしたと思ってる。ごめんな 風馬:子供の頃はひまわりは俺にいつも優しくしてくれててさ、いつもお前の後ろをついて行くばかりで、何かひまわりにしてあげたいと思ってたんだ 風馬:だから…俺はひまわりに髪の毛をセットしてあげて、ひまわりを可愛くしたかったんだよ、いつも何かしてもらってばっかだったから…可愛くしてあげたいって ひまわり:………うん 風馬:ひまわりじゃないとダメなんだ。この先何があっても、どんなことがあっても、俺はひまわりだけに…何かをしてあげたい……そう思ってる ひまわり:……うっ…うぅ…… 風馬:なんで泣くんだよ ひまわり:ううん。……ふーまから貰った『手紙』のこと思い出して… 風馬:……俺、昔はなんて書いてたんだ? ひまわり:……変わってない。そのまんまだった 風馬:な、なんだよ、見せろって ひまわり:嫌だよー!私の宝物なんだから 風馬:なんだそれ ひまわり:自分で書いたんだから覚えてるでしょ? 風馬:……お、覚えてない…… ひまわり:最悪 風馬:ご、ごめん ひまわり:まあいいよ。本当に変わってなかったんだから 風馬:そうだな。……よし、ひーママとひーパパの所に行こう。 ひまわり:えー?今? 風馬:今だよ。これからはひまわりの悲しいことも辛いことも全部俺が寄り添ってあげるから ひまわり:いつになく優しいね 風馬:こういう時くらいいいだろ! ひまわり:こういう時しか優しくしてくれないの!? 風馬:めんどくせーなお前! 風馬:……ぷっ!あっははは! ひまわり:(釣られて)あっはははは! 風馬:ほんと、変わんねーな ひまわり:変わらなくてもいいでしょ?幼なじみなんだから 風馬:おい、俺を幼なじみって思ってないって言っただろ? ひまわり:言ったけど、んー。やっぱ幼なじみっていう関係がなかったらこうはなってなかったのかなーって思うんだ 風馬:……まあそうだな。最初からそれでよかったんだ ひまわり:私はふーまが好き 風馬:俺もひまわりが好きだ ひまわり:この気持ちはずっと昔から変わらないよ 風馬:俺もこれから先、変わることは無い ひまわり:そうだね。幼なじみだけどずっと思い続ければきっと、新しい形になるんだよ ひまわり:だから、私たちの関係でも、ずっと思い続ければ……きっと ひまわり:恋に成る 0:【恋に成る】END

雛:あたしは…お前が好き…… 奏音:そういうとこが好き 大翔:俺も好きだぞ 遥香:あなたを…好きになりました ひまわり:ずっと好きだったの 風馬:……好きだ ひまわり:『恋に成る』 0:【間】 ひまわり:12章『過去と変わらない髪』 ひまわり:(私がふーまを好きになった理由。) ひまわり:(私が子供の頃。私の両親はいつも仕事で忙しかった。パパは医者でママは芸能人のヘアメイクを担当している) ひまわり:(お金に困ってないのに両親は共働きで、仕事大好き人間。一人っ子の私は両親があんまり家に居ないっていう環境が当たり前だった。だから、ふーまがいることが私にとっての心の支えでもあったのかもしれない) ひまわり:(それでも私はパパとママが好きだった。パパとママのために何か出来ることないかなーっていつも考えていた。そんな時にクッキーを作ってみようと思って、ふーママに教わってクッキーを作ったことがある) ひまわり:(……でも…パパとママはきっと仕事で忙しかったんだと思う。……一口も手をつけなかった) ひまわり:(悲しかった。私はパパとママの子なのに捨てられた気分だった。私は部屋でずっと泣いて、自分で作ったクッキーを捨てようと思った。そんな時) 風馬:ひまわり? ひまわり:……ふーま。 ひまわり:(外からふーまの声が聞こえて私は窓を開ける) 風馬:どうしたー? ひまわり:……なんでもない 風馬:ん?そのクッキーなんだよ ひまわり:これは……私が焼いたクッキーだよ 風馬:お菓子なんか作れたのか? ひまわり:うん 風馬:へぇーすげーじゃん ひまわり:ふーま、食べてくれる? 風馬:食いたい ひまわり:……… 0:風馬はひまわりの部屋に行く 風馬:お邪魔しまーす ひまわり:……… 風馬:ふーん。これがひまわりが作ったクッキーか ひまわり:うん。食べて 風馬:いただきまーす。……パクっ。……ん!? ひまわり:………どう? 風馬:う、うめー!うめーよ!本当にひまわりが作ったのか!?もう一個食っていい?めっちゃうめー! ひまわり:………ふーまっ! 風馬:うわっ。な、なんだよ ひまわり:(ふーまは昔書いてくれた『手紙』の言葉みたいに、私を受け入れてくれた。ふーまの優しさも、嬉しそうな声もその笑顔も全部抱きしめたくなった) ひまわり:ありがと!ふーま! 風馬:何泣いてんだよ ひまわり:あははっなんでもなーい! 風馬:よし、じゃあポニーテールしてやる ひまわり:なんで!? 風馬:何となく ひまわり:やりたいだけでしょ? 風馬:まあな ひまわり: ひまわり:(子供の頃からずっと好きだったけど、もっともっと好きになる。一緒にいれば居るほど…好きになる) ひまわり:(これが私がふーまを好きになった理由) 0:場面転換 遥香:(私が光井君を好きになった理由) 遥香:(中学の頃、私は妙に気になる人が居た) 風馬:なんだこれ、花瓶にゴミ入ってる 遥香:……… 遥香:(花瓶にはスイセンの花が育てられていた。でも、花瓶にゴミが入ってたら花が可哀想) 風馬:まーたゴミが入ってる。全く、物を大事に出来ないやつは嫌いだなー 遥香:(毎回ゴミを入れてる人は誰なんだろう?私は少し気にかけるようにしていた。そしてある日、花瓶にゴミを入れていた女子生徒2人を見つける) 遥香:(ほんの軽い気持ちだった。たった一言、花瓶にゴミ入れるのはやめてって。それだけだった。…けど) 遥香:(恨みを買ってしまったのか、女子生徒2人はそこから私に会う度に突き飛ばしてきた。髪を引っ張ったり、物を投げつけてきたり。完全にイジメだった) 遥香:(それでも学校が終わって中庭に咲いてる黄色いチューリップの花を見ながら下校する事が何よりも私の癒しだった) 遥香:………あ 風馬:………っ 遥香:(あの人、花瓶のゴミを毎回取ってくれた人?) 風馬:……… 遥香:……… 遥香:(それでもいじめは加速していく。爪で顔を引っかかれたり鞄の中にゴミを入れられたり。本当にくだらない。そんなことして何になるの?もう、こんな場所には居られない) 遥香:(私はこの学校から引っ越すことになった。私の両親も優しいからあまり大事にはしないでその場を収めるようだった。) 遥香:(そして、転校の前日、最後のいじめを受けた。トイレでバケツいっぱいの水を浴びて、土も投げつけられた。……私はそれでも我慢した。あなた達が我慢できなかった怒りっていう感情を我慢出来た。もう会うこともないから、私は最後に2人に言った) 遥香:もう明日、転校するから、いじめる人居なくなるね。ごめんね 遥香:(もちろん私が謝る理由なんてない。皮肉のつもりで言ったんだもん。そしたら2人の女子生徒はコソコソとこう言い出した。『あの花瓶をあいつに投げつけよう』って) 遥香:(そうだね、そうすればいいよ。そんなことしたら人が死ぬ可能性だってある。そしたらあなた達は一生その罪を、その傷を背負うことになるね。なら私は、あなた達のために死んであげる) 0:【パリーン!!】 遥香:……っ!! 遥香:(私が覚悟を決めた時、一人の男子生徒が私を抱き寄せる) 風馬:っ!!ご、ごめん!だ、大丈夫? 遥香:(この人……花瓶のゴミを毎回取ってくれた人だ…) 遥香:………うん 風馬:………怪我はない? 遥香:………大丈夫 遥香:(この感覚はなんだったんだろう?助けてくれてよかった。だけじゃないはず。この気持ちから早く逃げたくて私はすぐ学校を出た) 遥香:(どうしても、彼が頭から離れない。もしかしたら花瓶に頭を打たれるのはあなたの方だったかもしれないのに。私の心配をしてくれた優しい人。……明日も会いたい。けどそれはもう叶わない) 遥香:(彼との出会いは、黄色いチューリップが咲いた中庭の花壇だったから。そういう運命だったのかもしれない。黄色いチューリップの花言葉は………『望みのない恋』) 遥香:それでも、私はこの高校に入って、光井君と一緒に居る。ひまわりさんと、奏音さん、雛さん、北谷君も居る。私はこの学校に来て本当によかったと思う。 遥香:私のこの気持ちは変わることはない。 雛:『恋に成る』 0:【間】 雛:13章『風とわからない髪』 遥香:………… ひまわり:(私はふーまが好き) 遥香:(私も光井君が好き) ひまわり:(私は譲るつもりはないからね) 遥香:(私だってそうだよ。譲りたくない) 遥香:そうは言ったけど ひまわり:おっはよー!遥香ちゃーん! 遥香:お、おはよー! 風馬:お、おはよう。水瀬 遥香:うん。おはよー ひまわり:あ、そういえば今年はクリスマス何するの? 風馬:いや、わかんねーよ。ひーママも帰ってくるんだろ? ひまわり:ママはいいの 遥香:(なんか…私にすごーく分が悪い気がしてきた!) ひまわり:ふーまー? 風馬:……なんだよ ひまわり:……なんでもない 0:場面転換。 大翔:おはよー 奏音:お、おはよ!みんな 雛:おはよー。……え? 風馬:…どうしたんだ?お前ら 大翔:奏音と付き合うことになった 風馬:………えー!? 雛:……… ひまわり:そうなんだ!おめでとー! 奏音:あ、あの!でも、付き合ってるけどそんなに気を使わないでね?みんなで遊びたいのは変わらないから 雛:………そうだなー!奏音!今日はおめでたパーティでもするかー! 奏音:あ、ありがとう!雛には感謝してる 雛:………うん。全然いいんだよ 大翔:俺にも奢ってくれるんでしょ? 雛:自分で払え! 風馬:……… 風馬:(みんな前に進んでるんだなー) 0:【バァァン!!】 0:机を叩く大きな音が鳴り響く 先生:貴様ら、文化祭ご苦労だった。おかげで優秀賞は取れたみたいだ。しかし最優秀賞を受賞できなかったことは悔やまれる。だがその結果だけではなく、次に繋がるいい機会になれたことと思っている。ありがとう 風馬:珍しく感謝してるな 0:【ジュパンッ!】 風馬:ひぃ! 0:風馬の机に果物ナイフが刺さる 先生:貴様の言う通りだ光井。私は教師になって8年、そしてサバイバルを初めて30年が経つ。しかし、いついかなる時も感謝の気持ちは持つべきだ 先生:貴様も…常にあるこの環境に当たり前などと片付けず、日々感謝の心を持ち続けるんだな 風馬:…………感謝の心 0:【間】 風馬:(俺は何をしてるんだろうと思う時が多々ある) 風馬:(中学の頃、初めて水瀬を見た時のことを思い出す。あの綺麗な髪に俺は一目惚れをしたんだ。それは間違いない) 風馬:(それなのに今は、ひまわりの言動にどうしたらいいかわからなくなっている。それに、水瀬だって、なんで俺に……き、キスをしてきたんだ!……もう何もかもわかんねーよ) 遥香:光井君 風馬:……水瀬 遥香:少しだけ話せる? 風馬:……うん 0:場面転換 0:学校のベンチに座る風馬と遥香 風馬:……… 遥香:………光井君 風馬:ん? 遥香:文化祭の時、迷惑かけちゃったから謝ろうと思って、ごめんなさい 風馬:………いいよ 遥香:………私ね、今年は本当に色んなことがあったなーって。ひまわりさんに話しかけてもらって今いる人たちと仲良くなれて凄く楽しい日々を送れてる。いじめられてた頃はこんなに楽しくて幸せな日々が来るなんて思わなかったんだ 風馬:……そうだよな。俺だってそうだ 遥香:うん、私はやっぱり今でもこう思っちゃうんだよ 風馬:……なに? 遥香:光井君にまた会えた事が…1番嬉しいって 風馬:……水瀬 遥香:…変なこと聞いてもいい? 風馬:……うん 遥香:私が光井君に……キスした時、どう思った? 風馬:………… 遥香:こ、答えにくかったら答えなくて大丈夫だよ!……ごめんね 風馬:ううん。………そうだな、あの時は 遥香:……… 風馬:正直、戸惑った 遥香:……そうだよね 風馬:でも、なんで戸惑ったのかはわからない 遥香:…… 風馬:………ごめん。でもそのうち俺なりに考えて答えを見つけると思う。自分で考えて自分で感じた事をまた水瀬に伝えるよ 遥香:………うん。ありがとう 0:場面転換 0:奏音、大翔、雛は雛の家に居た 奏音:なんで私と大翔のお祝いで私が料理作らないといけないのよ 雛:仕方ないでしょ?あたしも大翔も料理出来ないんだし 大翔:俺も今エーピックスで忙しいしな 奏音:ゲームやってんじゃないわよ!はっ倒すわよ!? 雛:付き合ってもお前ら相変わらずなんだな 大翔:まあ俺も奏音の手料理食えるだけで嬉しいからなー 奏音:ふ、ふん!じゃあ仕方ないわね! 雛:おーい。手懐けられてるぞー? 奏音:はい、出来たわよ 大翔:おー!オムライスだ! 雛:美味そー! 奏音:召し上がれ 大翔:いただきまーす!んー!うめー! 奏音:そ?よかった 雛:……奏音は、大翔のどこを好きになったの? 奏音:な、なんで本人の前で言わないといけないのよ! 雛:いいじゃん。なんか聞いてみたい 大翔:んー? 奏音:む、昔からこうやって何か作るといつも喜んでくれるでしょ?食べてる顔も好きだし、あとは…… 雛:……ん? 奏音:……私にだけ、男らしいとこかな?そういうとこが好き 大翔:……んー。その言葉をおかずにオムライスおかわり出来るなー!俺も好きだぞ。奏音のオムライス 奏音:いや、オムライスかい 雛:そうなんだねー。いやー青春してますなー 奏音:雛も彼氏出来たら教えてね 雛:あたし?あー。あたしはどうだろ? 大翔:前は居たじゃん?すぐ別れたけど 雛:まあね 大翔:俺も雛の彼氏見たいぞー 奏音:楽しみにしてるね 雛:うん。……出来たらね 雛:(あたしは……お前が好き…なんて…言えないな) 0:場面転換 0:学校にて 0:【バァァン!!】 0:机を叩く大きな音が響く 先生:貴様ら、もうすぐで冬休みだ。私も来年に向けて新たな自分を探す旅に出る。だから貴様らも新しい自分を見つけられるように日々行動しろ。 風馬:(………新しい自分…か) 0:放課後の事 0:風馬はベンチで座っている 風馬:……はあ。 先生:何をしている。光井 風馬:……ああ。少し考え事を 先生:なるほどな。まあ貴様には私のわがままに付き合ってもらった恩もある。何か解決出来そうならば私に聞いてくれ 風馬:……そ、そういえば、あの文化祭の後は大丈夫だったんですか?劇中に水瀬が俺にキスして……ほら、先生が責任取るって言ってましたけど 先生:ああ。そんなもの大したことでは無い。私が学年主任にチョークスリーパーで気絶させた。それから主任は文化祭からの記憶が無いみたいだ。計画通り 風馬:恐ろしいことしてんな…… 先生:そんなことを聞きたかったのか? 風馬:……いえ、あとは……劇のシナリオ先生が作ったんですよね? 先生:ああ。そうだ 風馬:どうして、あの物語を作ったんですか? 先生:そうだな。あの物語は心臓病の女の子に段々と惹かれる男の子の物語だ。しかし、女の子はやがて余命が絶たれ亡くなる。 先生:私は、何かを手に入れる時は、何かを手放す時だと考えている。つまり、男は女から感謝と笑顔と前向きを手に入れるが、彼女を失う 風馬:……それは…どういう…… 先生:人の選択とは大体そうだ、例えば時間が欲しくてコンビニでおにぎりを買うが、お金を失う。夢を叶えるのも、時間と労力を失う。そうやって色んな選択肢の中で、選ぶものと切り捨てるものが存在するんだ 風馬:………そうなんですね 先生:ああ。だから貴様も、その選択に迷った時、こう思った方がいい 風馬:………… 先生:その選択を選んだ時、何かを失ったとしても自分の明るい未来を想像することが出来れば、その道に進むべきだ 風馬:……自分の…未来 先生:ふん。そんな所だ。貴様が何を選択するかは私にはわからないが、自分の選んだことに後悔などするな。 風馬:……はい 0:そして、下校時間になると ひまわり:ふーま! 風馬:……ひまわり、待ってたのか? ひまわり:うん、一緒に帰ろ? 風馬:おう ひまわり:あ、そうだ、クリスマスなんだけどさ、24日にママが帰ってくるのね、だから25日はふーまの家でクリスマスパーティしようよ! 風馬:それなら24日でいいんじゃないか?母さんもひーママに会いたいだろうし ひまわり:んー。どうだろ?わかんないけどその方がいいならそうする? 風馬:うん。きっとその方がいいよ ひまわり:……ふーま、最近元気ないね 風馬:そ、そうか? ひまわり:うん。何かあったの? 風馬:…あ、あっただろ。色々 ひまわり:……うん。色々あったねー 風馬:なんで逆にお前は普通にしてられるんだよ ひまわり:え?なんでって決まってるでしょ? 風馬:なんだよ ひまわり:昔からずっと気持ちが変わらないからだよ。もう迷わなくなっただけ 風馬:………… ひまわり:ふーまも気持ちの変化があったから今も悩んでるのかな? 風馬:………そう、かもな ひまわり:……あ 0:急に強い風が吹く 風馬:……風強いな、ひまわりの髪、乱れてるぞ 0:風馬は手ぐしでひまわりの髪を整える ひまわり:うん、ありがとー! 風馬:……あ ひまわり:ん? 風馬:……いや、なんでもない ひまわり:……そっか ひまわり:(私もこれ以上は聞かないことにするよ。……ふーまの気持ちは、私にだってわかんない。だから怖いんだよ) 0:場面転換 0:風馬の部屋にて 風馬:(俺は子供の頃に撮った写真を見返す) 風馬:(幼稚園の頃、ヘアアイロンを引っ張り出してひまわりの髪をセットしようとしたことがあったけど、父さんにめちゃくちゃ怒られて泣いてる写真だ。……この頃は、なんでひまわりの髪をセットしようとしたんだろ?覚えてねーな) 風馬:(小学生の頃、初めてひまわりの髪をセットした時の写真だ。慣れて無さすぎてボサボサの頭になったのにひまわりは妙に嬉しそうにしている) 風馬:(中学生の頃、入学式でひまわりにくっつかれて嫌な顔してる写真だ。思えばこの時、嫌だと思ってることに理由はあったはず。……あったはず) 風馬:………そうか 風馬:(理由は単純だった。だからこそ、俺はこの思いをしまっておくことにした。まだやらないといけない事があるからだ) 遥香:『恋に成る』 0:【間】 遥香:14章『恋と諦めの髪』 0:場面転換 0:学校にて 先生:貴様ら、今年最後の学校だな。早めに言っておこう。あけましておめでとう 風馬:早く言うものじゃねーだろ 0:【シュパンッ!】 風馬:ひぃ! 先生:冬休みも様々な行事がある。怪我のないように来年を迎えろ。以上だ。それでは貴様らさようなら 0:全員で 全員:さようなら 0:【間】 大翔:Hey奏音。俺のおやつ出して 奏音:持ってるわけないでしょ!バカ! 大翔:なんで持ってないの!?バカなの!? 奏音:バカはあんたでしょ!うるさいな! 雛:はいはーい。喧嘩しないのー。あとバカは大翔な 大翔:雛だけは味方だと思ってたのに…… ひまわり:ふーまも一緒に帰ろ? 風馬:ああ。そうだな 遥香:ご、ごめん。少しだけ光井君とお話させてもらっていい? ひまわり:ん?どうしたの? 遥香:……その、少しだけ 風馬:……ああ。いいよ ひまわり:……うん。じゃあ先帰ってるね 遥香:ごめんね ひまわり:遥香ちゃん 遥香:……なに? ひまわり:ごめんね禁止ね 遥香:……わかった 0:場面転換 風馬:話ってなんだ? 遥香:あ、ううん。……大した話じゃないんだけどさ 風馬:うん 遥香:………クリスマスイブの日…空いてる? 風馬:……クリスマスイブ… 遥香:あ、空いてなかったら大丈夫だよ!予定あるならそっち優先してもいいし 風馬:………うん 風馬:(俺は……何かを手に入れるためには、何かを失わなければいけない。その意味がやっとわかった) 遥香:じゃあさ。こうしよ? 風馬:……なに? 遥香:クリスマスイブの日、午後12時から、隣町のイルミネーションが綺麗な駅前で私は待ってるよ。来るか来ないかは光井君次第。そこに光井君が来なかったら、私は諦めて家に帰るよ 風馬:………わかった 風馬:(……これが俺の答えだ) 0:場面転換 0:風馬はひまわりの家に行く 風馬:ひまわり ひまわり:どうしたの? 風馬:ちょっと話がある ひまわり:……ん? 風馬:クリスマスイブ…午後だけ予定が入っちゃってさ ひまわり:……そうなんだ 風馬:だから… ひまわり:遥香ちゃんと? 風馬:………うん。 ひまわり:………そっか、そうだよね 風馬:だからさ ひまわり:うん!おっけーおっけー! 風馬:……え? ひまわり:行ってきて!私はママと楽しくクリスマスを過ごすよ! 風馬:……おい、最後まで話聞けって ひまわり:聞かないよー。じゃあね! 風馬:お、おいひまわり! 0:ひまわりは玄関の扉を閉める ひまわり:………はあ。そうなんだ ひまわり:………でも、最初からそうだったよね…ふーまは……わかってたことだよ…… ひまわり:………はあー。……グスンッ 0:場面転換 0:クリスマスイブの前日。風馬は商店街に来ていた 風馬:……どれがいいのかなー? 雛:……風馬? 風馬:…おー。湯山じゃんか 雛:何してんの?こんなとこで 風馬:花を見てんだよ 雛:花?なんで? 風馬:ちょっとな。ある人に渡したくて 雛:ほーん。風馬、好きな人でも出来たんだ 風馬:う、うるせーな!悪いかよ 雛:悪いなんて言わないよ、何か…いいなーって思っただけ 風馬:なんで? 雛:大翔と奏音も付き合ったわけじゃん?次は風馬かーって思って 風馬:まだ両思いとは限らないだろ! 雛:はあ?馬鹿なの?なんであんたってモテない言動ばっかしてるのにモテてんの。腹立つ 風馬:そんな言い方しなくていいだろうが! 雛:はあ。でもまあ、そんな男の何気ない行動とかでギャップを感じるのが女の子なんだよね 風馬:し、知らねーけど 雛:大翔とかそうじゃん?奏音の前では男らしいんだってさ 風馬:あ、あいつが? 雛:うん。他にもあるだろうけど、大翔だったら奏音を幸せにしてくれるだろうしね 風馬:……湯山は彼氏とかは作らないのか? 雛:んー。昔は居たけどねー。なんか気持ち悪くて別れた 風馬:なんだよそれ 雛:本当のことだよ 風馬:じゃあ次の彼氏は気持ち悪くないといいな 雛:そういう問題じゃない 風馬:じゃあなんだよ 雛:んー。多分もう風馬にしか言えないと思うから、言うか 風馬:なんだ? 雛:あたしはさ、それなりに可愛い服とかも好きだしメイクとかも好きなんだけどね 風馬:ん? 雛:恋愛対象は男じゃないんだ 風馬:………え? 雛:ね?びっくりするでしょ?女の子が女の子を好きになるんだよ。林間学校でひまわりとお風呂入った時もどうなる事かと思った 風馬:……… 雛:だからさ、これを言えるのは風馬だけだ 風馬:お、俺だけじゃないだろ?大翔だっているし手島だって 雛:この事を同性に言うのは気まずいでしょ?あと…大翔には言えない 風馬:……なんで? 雛:………ふふ。なーいしょ 風馬:な、なんでだよ! 雛:まあ、風馬も誰を好きになるとか誰に好かれるとかあんまり深く考えなくていいんじゃない? 雛:自分の人生、常にその人が居る。そう考えるだけでいいんだよ 風馬:………そうだな。俺にもわかってる 雛:じゃあ大丈夫だね。はあ。なんか暴露したら疲れてきたわー。あたしはもう帰るね 風馬:うん、ありがとう 雛:あ、この話は誰にも内緒だからね!? 風馬:当たり前だろ。じゃあなー 0:風馬と雛は別れる 雛:(……ふぅー。風馬もやっと心に決めたか。……あたしにはお見通しだよ。風馬はずっとそいつを選んできたじゃん) 雛:(やっと……やっとだな) 0:場面転換 0:クリスマスイブ当日 奏音:大翔ー。お待たせ 大翔:おー。待ってないけど待ちくたびれた 奏音:どっちなのよ! 大翔:うそうそ、そう梅干しみたいにカリカリすんな 奏音:うるさいな 大翔:今日はクリスマスイブ初デートだぞ?今日は怒るの禁止な 奏音:毎回大翔が怒らせてるんでしょ! 大翔:にしてもー。他の奴らは今頃どうしてんだろーなー? 奏音:他って? 大翔:風馬とひまわりとか? 奏音:なんであの2人が出てくんの? 大翔:え?お前まじ? 奏音:え?なんで? 大翔:少なくともひまわりの好きな人はわかるだろ? 奏音:ひまちゃんの好きな人?誰だろうね? 大翔:………ガチかお前 奏音:なんで?大翔知ってんの? 大翔:いや、実際聞いてはないけどわかるだろ 奏音:わかんないよ! 大翔:奏音は奏音で大変そうだな… 奏音:どういう意味よ! 大翔:はい怒ったー!今日の飯全部奢りなー! 奏音:なんでよー!もう意味わかんない! 0:場面転換 風馬:……よし!……花も持った 風馬:行くか! 0:風馬は隣町に向かう 風馬:この辺だよなー。……ん? 遥香:………すぅー。すぅー。 風馬:み、水瀬?寝てんのか? 遥香:………あ、光井君。おはよー。 風馬:お、起きた。おはよー。 遥香:んー……すぅー。すぅー。……え!?光井君!? 風馬:お、俺だよ 遥香:あ、き、来てくれたんだ 風馬:なんで寝てたんだよ 遥香:……来ないと思ったから 風馬:……来るよ。今日はそういう日だろ? 遥香:そうだね。ありがとう。来てくれて 風馬:ああ 遥香:昼間だからイルミネーションはあんまり光ってないけど綺麗じゃない? 風馬:そうだな 遥香:こういう場所に来たことある? 風馬:あー。あるよ。昔は家族とひまわりと一緒によく来てた 遥香:……そうなんだ 風馬:水瀬は? 遥香:私も、家族としか行ったことない 風馬:みんなそんなもんだよなー 遥香:………そうだね 0:しばらく商店街を回る 0:時間も経ち、少し暗くなってくる 遥香:ほら、イルミネーションが光ってきたよ 風馬:うわー!ほんとだ! 遥香:綺麗だね 風馬:うん、綺麗だ 遥香:よかった…光井君とここに来れて 風馬:……… 遥香:……私、光井君が居てくれたから、私も今ここに居るんだって思ってるの 風馬:……どうして? 遥香:私は自分に自信を持てないから。弱い自分が好きじゃないの。……でも、光井君と居ると、ほんの少しだけ自分のことを好きになれる 風馬:……俺といると? 遥香:うん。私は…ちょっと勇気が必要な時、光井君を思い出していつも勇気を貰ってる。……だから、今もちょっとの勇気を…私にちょうだい 風馬:……… 遥香:………光井君の事が…好き。私は……あなたに助けて貰ってから…あなたを好きになりました 風馬:………ありがとう 遥香:……… 風馬:俺も…水瀬に伝えたいことがあるんだ 遥香:………はい 風馬:これを受け取って欲しい 遥香:……これは? 風馬:この時期は咲かないみたいだから、造花になっちゃって悪いんだけど 遥香:……… 風馬:俺の気持ちの花だ 遥香:………これは……黄色いチューリップ… 風馬:……ごめん。水瀬。……水瀬の気持ちは…受け取れない 遥香:………… 風馬:水瀬の気持ちは本当に嬉しい。……けど、やっぱり……水瀬じゃダメなんだ 遥香:…………知ってる。わかってるよ私にだって 風馬:………ごめん 遥香:…………… 風馬:確かに、水瀬のこと、憧れてた時期はあったんだ。でも……この先俺に大きな困難が押し寄せた時、……どうしても…どうしても水瀬じゃダメだったんだ 遥香:………うん。 風馬:俺なりの答えがこれだ。直接水瀬に伝えたかった 遥香:………じゃあ……壊れそうな私を…光井君は助けてくれるの? 風馬:……… 遥香:………また……私を助けてくれる? 風馬:………ごめん 遥香:……… 風馬:………俺には…守りたいものがある。だから……それは出来ない 遥香:………わかった 風馬:……じゃあ、俺はもう行くね 遥香:………うん。ありがとう 風馬:こちらこそ、ありがとう 遥香:(まだ……ダメ。涙は流しちゃダメ…でも……) 遥香:光井君…最後に、お願いがあるの 風馬:……なに? 遥香:……私の…髪を触って 風馬:……… 遥香:……… 0:風馬は遥香の髪を触る 風馬:……柔らかい髪だ 遥香:うん 風馬:サラサラだ 遥香:……うん 風馬:……すごく…綺麗だ 遥香:……うぅ………ううぅ…うううぅぅぅ 風馬:………じゃあ… 0:風馬はその場を去る 風馬:(………苦しい…でも……こうしないといけないんだ) 遥香:(光井君が離れた瞬間に、私は胸に溜まった思いを一気に放した) 遥香:(もう私に望みはないんだと、もうあなたには届かないんだと、わかってても止められなくて、どうしようもなく、行き場を失った私の思いはただ、胸の奥底にずっしりと積もっていくだけ) 遥香:(もうこれで終わりなんだ。だからこれからはまた強く生きないと……そう思っても今は足が動かない。膝まで力が抜けた体は地面に落ちていく) 遥香:(あなたが守ってくれたこの体で、あなたの思いの花を胸に抱き……私はただひたすら、枯れるまでその場で泣いた) 遥香:うわあああぁぁぁぁん!! 風馬:『恋に成る』 0:【間】 風馬:15章『幼なじみとひまわりの髪』 風馬:(俺は家に向かう) 風馬:ただいま!……あれ?ひまわりは?どこ行ったんだ?なんでこんな時に居ないんだよ! ひまわり:いい加減にしてよ! 風馬:……え? ひまわり:私の事何も知らないのも全部ママのせいでしょ? 風馬:……外からひまわりの声が聞こえる……? 0:窓を覗く風馬 風馬:ひーママと…言い合いしてんのか? ひまわり:私はママにもパパにもお菓子作ったことあるよ?でも食べてくれなかったじゃん!家族なのに、全然私の事興味無いじゃん! 風馬:……… ひまわり:もう、パパとママなんか嫌い!! 風馬:ちょ、ちょっと待てよ 0:風馬は慌てて玄関を出る 風馬:ひまわりー! 風馬:……くそ!俺はどんだけひまわりのこと探してんだよ 風馬:……でも、今はそんなことどうだっていい。ひまわりを見つけて、ひまわりに伝えないと…… 0:風馬はしばらくひまわりを探す 風馬:どこ行きやがった…。……もう居なくなっちまったのか……。それじゃあ俺が困るんだよ。ひまわりが行きそうな場所…… 風馬:………あそこか 0:場面転換 ひまわり:……うぅ…うううぅぅぅ…… ひまわり:(私は家族を好きになろうとしていた。……でも、私の家族はいつも仕事で忙しい。それならしょうがないって思ってたけど…) ひまわり:(私がお菓子を作ってたことも知らないなんて…そんなの酷いよ……。元はパパとママのために作ったのに……。) 風馬:風邪引くぞ? ひまわり:……っ!ふーま!? 風馬:こんな所で何してんだ? ひまわり:ふーまこそ。遥香ちゃんはどうしたの? 風馬:………色々あってな ひまわり:……そうなんだ 風馬:なんでまたこんなトンネルに居るんだよ ひまわり:……わかんない。けど、ここはふーまとの思い出だから 風馬:思い出? ひまわり:うん。ここでよく雨宿りしてたけど、本当に嵐みたいな日に私とふーまはここに居たんだよ 風馬:………そんなことあったっけな ひまわり:あったよ。ふーまの隣に居ると安心するから、私はこの場所を安心する場所って読んでるの 風馬:まんまだな ひまわり:でもさ…パパとママにも怒鳴っちゃったし…私はもうひとりぼっちだよ 風馬:ひまわりには、俺がいるだろ。俺はひまわりが大事なんだ ひまわり:……え? 風馬:だから…… ひまわり:もう……わかんないよ 風馬:……え? ひまわり:私は…ふーまのこと好きなの。ずっと……ずっと好きだったの……でもふーまは ひまわり:…遥香ちゃんのこと好きなんでしょ? 風馬:……いや、待てよ ひまわり:わかるよ私にだってずっと見てきたもん。それくらいわかる……でも…ふーまの気持ちはわからない 風馬:………ひまわり ひまわり:なんで私に優しくするの?ずっと冷たくしてくれたら身を引けるのに。なんで私の所に来たの?離れてくれたら期待もしないのに ひまわり:なんで私を助けに来たの?見放してくれれば諦め切れるのに ひまわり:なんで期待させること言うの?なんで私の事、大事って言うの?なんでおんぶしてくれたの?なんで私の髪を触るの? ひまわり:わかんないよ……ふーまは私をどう思ってるのかわかんない。肝心なこと教えてくれないんだもん ひまわり:遥香ちゃんとお祭り行った時、私に嘘ついた時、私にキスされた時、どう思ったの? ひまわり:わかんないよ……ふーまとずっと一緒に居るのに…こんなにずっと一緒に居るのに…… ひまわり:ふーまのことちっともわかんないんだよ!! 風馬:………ひまわり ひまわり:……っ! 0:風馬はひまわりを抱きしめる ひまわり:……ふーま? 風馬:俺…水瀬に告白されたんだ ひまわり:……え? 風馬:でも…確かに…中学の頃は好きだったかもしれない。けど、俺はそれ以前に、大事なものがあったんだよ ひまわり:……… 風馬:俺がひまわりをどう思ってるか……俺にもわからなかった。でも、最近やっとわかったんだ ひまわり:………… 風馬:俺はひまわりが好きだ ひまわり:………っ! 風馬:な、何年越しだって話だよな。でも、俺はひまわりが居る環境が当たり前だと思っていた ひまわり:……… 風馬:いつもひまわりに冷たくしたり、適当な返事したり、嘘ついたり。本当に酷いことしたと思ってる。ごめんな 風馬:子供の頃はひまわりは俺にいつも優しくしてくれててさ、いつもお前の後ろをついて行くばかりで、何かひまわりにしてあげたいと思ってたんだ 風馬:だから…俺はひまわりに髪の毛をセットしてあげて、ひまわりを可愛くしたかったんだよ、いつも何かしてもらってばっかだったから…可愛くしてあげたいって ひまわり:………うん 風馬:ひまわりじゃないとダメなんだ。この先何があっても、どんなことがあっても、俺はひまわりだけに…何かをしてあげたい……そう思ってる ひまわり:……うっ…うぅ…… 風馬:なんで泣くんだよ ひまわり:ううん。……ふーまから貰った『手紙』のこと思い出して… 風馬:……俺、昔はなんて書いてたんだ? ひまわり:……変わってない。そのまんまだった 風馬:な、なんだよ、見せろって ひまわり:嫌だよー!私の宝物なんだから 風馬:なんだそれ ひまわり:自分で書いたんだから覚えてるでしょ? 風馬:……お、覚えてない…… ひまわり:最悪 風馬:ご、ごめん ひまわり:まあいいよ。本当に変わってなかったんだから 風馬:そうだな。……よし、ひーママとひーパパの所に行こう。 ひまわり:えー?今? 風馬:今だよ。これからはひまわりの悲しいことも辛いことも全部俺が寄り添ってあげるから ひまわり:いつになく優しいね 風馬:こういう時くらいいいだろ! ひまわり:こういう時しか優しくしてくれないの!? 風馬:めんどくせーなお前! 風馬:……ぷっ!あっははは! ひまわり:(釣られて)あっはははは! 風馬:ほんと、変わんねーな ひまわり:変わらなくてもいいでしょ?幼なじみなんだから 風馬:おい、俺を幼なじみって思ってないって言っただろ? ひまわり:言ったけど、んー。やっぱ幼なじみっていう関係がなかったらこうはなってなかったのかなーって思うんだ 風馬:……まあそうだな。最初からそれでよかったんだ ひまわり:私はふーまが好き 風馬:俺もひまわりが好きだ ひまわり:この気持ちはずっと昔から変わらないよ 風馬:俺もこれから先、変わることは無い ひまわり:そうだね。幼なじみだけどずっと思い続ければきっと、新しい形になるんだよ ひまわり:だから、私たちの関係でも、ずっと思い続ければ……きっと ひまわり:恋に成る 0:【恋に成る】END