台本概要

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タイトル 死始・銃碌
作者名 赤影  (@akakage_sekiyou)
ジャンル その他
演者人数 5人用台本(男4、女1) ※兼役あり
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 しし・じゅうろく。

アウトローたちが集まる街・リリクル。
その街の二大勢力『餓狼(がろう)のシイチ』と『銃恨(じゅうこん)のサザン』。
シイチとサザンは不戦協定を結んでいたが、とある事件を機に、全面戦争が勃発してしまった。
これはそんな惨劇の序章、いや、開幕の物語。


こちらはアール/ドラゴスさんとの合作になっております。
死始・銃碌(しし・じゅうろく)だけでも成り立っておりますが、アール/ドラゴスさんの死苦・惨蹂碌(しく・さんじゅうろく)と合わせてお読みいただくとより楽しんで頂けるかと思いますので、宜しくお願いします!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
コウガ 33 シイチのメンバー。 グレイの右腕的存在。 好戦的な性格。
グレイ 83 グレイ・ガロ。 シイチのボス。 シーラの恋人。 麻薬や人身売買など、無法地帯と化したリリクルから野垂れ死ぬ人を減らすため『餓狼のシイチ』を立ち上げた。
マリシャス 57 マリシャス・ペルシャ。 サザンのボス。 もともとリリクルを牛耳っていたが、グレイに腕を噛み千切られてから復讐を考えている。
ハツカ 40 サザンのメンバー。 銃の達人。 女好き。
シーラ 36 グレイの恋人。 二大勢力の境目にあるバー『コープスリバイバー』で働いている。
モブA 不問 1 悲鳴のみ。 モブA~Cは配役としてではなく演者様が好きに叫んでいいと思います。
モブB 不問 1 悲鳴のみ。 モブA~Cは配役としてではなく演者様が好きに叫んでいいと思います。
モブC 不問 1 悲鳴のみ。 モブA~Cは配役としてではなく演者様が好きに叫んでいいと思います。
モブD 不問 1 悲鳴のみ。 コウガかマリシャスが兼ね役で。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
シーラN:私は死んだ シーラN:愛する人の盾となって シーラN:そのことに関して後悔なんてない シーラN:ただ・・・私が死んだ事によって、このリリクルの街が戦乱に包まれてしまった事は心残りだ シーラN:それは愛するあの人が、グレイが望んだ事とは真逆の事だったから 0: 0: 0: コウガ:おいテメェ!サザンのネズミがこんなとこで何してやがる! ハツカ:あ?シイチの噛ませ犬じゃねぇか。テメェんとことは不戦協定を結んでんだ、俺がどこで何をしようと、キャンキャン吠えられる覚えはねぇよ コウガ:んだと!? ハツカ:文句があるなら聞いてやろうじゃねぇか? コウガ:あるに決まってんだろ!いくら不戦協定を結んでるとは言え、ここはシイチのシマのど真ん中だ! コウガ:その大通りのど真ん中を堂々と歩かれちゃあ、こっちの面子に関わってくんだよ! コウガ:ネズミはネズミらしく道の端をこそこそ歩いてやがれ! ハツカ:ぁあ? グレイ:そこまでだ、コウガ コウガ:っ!ボス! ハツカ:おやおや、これはこれは。シイチの狼様じゃありやせんか。どうしたんです?こんなネズミのうろつくような場所で コウガ:テメェ!! グレイ:やめろっつってんのが聞こえねぇのか コウガ:っ、けどボス! グレイ:何のための不戦協定だ。よく考えろ ハツカ:はははは!さすがは狼様。犬っころとは違ってよくわかってらっしゃるじゃねぇか! グレイ:テメェもいい加減にしねぇと、どこかの飢えた狼に餌と間違えられて食われちまっても知らねぇぜ? ハツカ:おお怖え怖え コウガ:そもそもテメェはここに何しに来やがったんだ ハツカ:うるせぇ犬っころだなぁ コウガ:このっ・・・ グレイ:おい、ネズミ。テメェもテメェで何のための不戦協定かわかってねぇみてぇだな? グレイ:俺達シイチとテメェらサザンはでかくなり過ぎた。この街の二大勢力として、俺達が争えば間違いなくこの街は滅ぶ グレイ:街が滅べばどうなるか。それくらい、ネズミのちいせぇ頭でもわかるだろ? ハツカ:ええ、ええ。重々承知してますとも。だから俺がここにいても何ら問題は・・・ グレイ:テメェごときが、戦争の火種になれるとでも、本気で思ってやがんのか? ハツカ:っ!く・・・ グレイ:誰にも気づかれずに食い殺されたくなければ、大人しく要件を吐いた方が身のためだぜ? ハツカ:・・・・・・はぁ・・・わかりやしたよ・・・ ハツカ:俺がここに来たのは他でもねぇ。あんたに用があるからだよ、『シイチの餓狼』グレイ・ガロ グレイ:ほう? ハツカ:うちのボスがあんたに話があるそうだ。つきましては明日の午後10時、シマの境目にあるバー『コープスリバイバー』に来てもらえますかね?もちろん、お一人で コウガ:ボス一人でだと?ふざけんのも大概(たいがい)にしやがれ! ハツカ:ふざけてなんかねぇよ。でなきゃこんな犬臭い場所に・・・おっと失礼 コウガ:このやろっ・・・ グレイ:テメェの慇懃無礼(いんぎんぶれい)な態度はこの際置いといてやる グレイ:で?マリシャスの野郎の話ってのは、テメェは知ってやがんのか? ハツカ:残念ながら。たかが子ネズミの俺には教えて頂けてないのですよ コウガ:ケッ!ざまぁねぇな! グレイ:・・・話の内容もわからないまま、俺一人でコープスに来い、と・・・テメェらのボスは随分(ずいぶん)と偉くなったもんだな? ハツカ:・・・っ!・・・はは、威圧(いあつ)するのはやめてくだせぇよ。ちびっちまいそうだ・・・ グレイ:ザコが。マリシャスに伝えておけ グレイ:俺と話してぇなら、テメェみてぇな子ネズミじゃなくもっと躾(しつけ)のされたネズミをよこすんだな。無駄な血を流したくなくばな、と ハツカ:・・・つ、伝えておきましょう・・・・・・だが、ボスがコープスを指定している以上、あなたは断ることはできないはずだ ハツカ:そのくらいの情報は、俺でも握っていることをお忘れなく グレイ:・・・ほう・・・ ハツカ:ひっ・・・と、とにかく、お伝えしやしたからね!それでは・・・っ コウガ:ドブネズミが!さっさと消えちまえ! コウガ:・・・・・・にしてもボス。どうするんです? グレイ:・・・・・・胸糞わりぃが、奴の言う通りだ。場所がコープスである以上、断ることはできねぇ コウガ:姐(あね)さんがいるバーですからね・・・ グレイ:・・・クソッタレが 0: 0: 0:サザンのアジトにて 0: ハツカ:ボス、言われた通りグレイの野郎にコープスに来るよう伝えましたぜ マリシャス:ああ、ご苦労。もちろん、店は囲んであるんだろうな? ハツカ:ええ、ご指示通りに マリシャス:くくくく。今頃グレイは焦ってアジトに帰ってるんだろうなぁ・・・恋人が心配で心配でたまらねぇんだろうなぁ・・・! マリシャス:これでようやく、6年前の借りが返せるってもんだぁ・・・ ハツカ:6年前・・・ボスがあの野郎に腕を噛み千切られた日、ですよね? マリシャス:ああ、そうだ・・・この街はもともと俺達サザンが牛耳ってたんだ。奴らが来るまでは麻薬の密売も、人身売買も、何でもかんでも金になった マリシャス:それがどうだ。奴らが出しゃばり始めてからと言うもの、仕事がやりづらくてかなわねぇ ハツカ:ええ、まったくで マリシャス:それに奴の恋人、シーラ。あの女に先に目をつけてたのは俺なんだ。それを横からかっさらいやがって・・・っ! 0: 0: 0:6年前 0:バー『コープスリバイバー』にて 0: マリシャス:いい加減俺の女になれよ、シーラァ・・・! シーラ:嫌よ。誰があんたなんかの女になるもんですか。だったら死んだ方がマシよ マリシャス:くくくく。いいぜぇ、その威勢のよさ!ますます欲しくなる! シーラ:しつこい男は嫌われるわよ?ただでさえあなたは嫌われ者なのに ハツカ:おいシーラ!ボスになんてことぬかしやがる マリシャス:いいんだ、ハツカ。そんな女を落とすのが面白れぇんだからよ シーラ:そう。ならあなたは一生独り身ね。かわいそうに ハツカ:・・・おいシーラァ、女があんまり粋(いき)がってると、痛い目見るぜ? シーラ:何?振り向かせられないからって、部下に手伝ってもらって私を襲う? シーラ:知ってるでしょう?この街はあなた達のお陰で治安はとっても悪いの。手籠(てご)めにされたからって、それでついて行くような女はいないわ マリシャス:余計なことすんじゃねぇぞ、ハツカァ。こいつを落とすのは俺一人で充分なんだからよ シーラ:はぁ・・・どうしてこんな勘違い男がこの街を牛耳ってられるのかしらね マリシャス:何? シーラ:ボスの器じゃないのよ、あなた。だって、名前からしてそうじゃない。ボスのお膝でいい子いい子してもらってるのがお似合いよ、ペルシャちゃん? マリシャス:このアマッ!! マリシャス:ぐぁっ!? ハツカ:ボス!?腕にナイフが・・・っ・・・ グレイ:見てられねぇなぁ。酒がまずくなる ハツカ:誰だテメェ! グレイ:わざわざ名乗ってやるほどお人よしじゃねぇよ マリシャス:このっ・・・俺が誰だかわかって攻撃してきやがったんだろうな!? グレイ:ああ、そこのお嬢さんのお陰で分かったぜ?子猫ちゃんだろう? マリシャス:貴様っ! グレイ:ニャーニャーうるせぇよ。いい加減相手にしてもらえてない事実に気付いて引き下がったらどうだ?サザンのボスさんよ マリシャス:分かっててやりやがったな、テメェ・・・おいハツカ! ハツカ:ハチの巣になりなぁ!! グレイ:おっと マリシャス:さっさと当てやがれハツカァ! ハツカ:ちょこまか逃げてんじゃねぇぞ! シーラ:ちょっと!店で銃なんて撃つんじゃないわよ! グレイ:あんまり店に迷惑はかけられねぇな、っと! マリシャス:ぎゃぁあああああ!!! ハツカ:ボス!! マリシャス:腕がっ!俺の腕がぁあああ!! ハツカ:テメェ!よくもボスの腕を落としやがったなっ!! グレイ:いいのか?騒いでて。今ならくっつくかも知れねぇぜ?その腕 マリシャス:ぐぁあああ・・・ ハツカ:クソッ!覚えてやがれ!! シーラ:二度と来るんじゃないわよ! グレイ:おっとそうだ、店への迷惑料を払わせてなかったな。その腕、置いてけ マリシャス:は?が、ぁあ、あああああああ!! ハツカ:なっ!?傷口にさらにナイフを!? グレイ:今度この店に手を出してみろ。『餓狼のシイチ』のボスであるこの俺、グレイ・ガロが相手になってやる。その腕みてぇに、またお好きな場所を噛み千切ってやるぜ? マリシャス:クソがぁああ!!テメェの事は絶対に忘れねぇからな、グレイ・ガロ!!! 0: 0:マリシャス、ハツカ退店後 0: グレイ:悪かったな、お嬢さん。店の修理費は・・・今すぐには出せねぇが・・・ シーラ:いいえ、助かったわ。それにしても、『餓狼のシイチ』、だったかしら?聞いた事のない組織だわ グレイ:ああ。まだこの街に来て日が浅いからな。だが、もっと組織をでかく強くして、この街で飢えて野垂れ死ぬ奴らがいなくなるようにしてやる グレイ:そうすれば、このバーももっと儲かるだろうぜ。今はそれで勘弁してくれ シーラ:ふふっ。楽しみにしてるわ、狼さん 0: 0: 0:現在 0:バー『コープスリバイバー』にて 0: シーラ:はい。こちらバー『コープスリバイバー』 グレイ:「シーラか?俺だ」 シーラ:あら、グレイ。どうしたの? グレイ:「『銃恨のサザン』のボス、マリシャス・ペルシャはわかるな?明日、『コープスリバイバー』で話し合いをしたいとぬかしてきやがった」 シーラ:サザンのボスが・・・? グレイ:「ああ。俺一人で来いとのご指名だ」 シーラ:そんな・・・・・・つまり私は、ダシに使われたわけね? グレイ:「そうだ」 シーラ:随分(ずいぶん)と舐めてくれたものね、サザンも グレイ:「ああ。明日と指定してきた以上、おそらくすでにそこはネズミ共に囲まれているだろう」 シーラ:そうね グレイ:「癪(しゃく)だが明日俺はそこへ行く。お前は店の者と共に最大限の警戒をしておけ」 シーラ:わかったわ・・・だけどグレイ。少し遅かったみたい グレイ:「何?」 シーラ:愛してるわ、グレイ シーラ:ちょっと!触らないでちょうだい! グレイ:「シーラ?おい、何があったシーラ!」 シーラ:・・・・・・ グレイ:「返事をしろシーラ!」 マリシャス:やぁ、狼の グレイ:「っ!・・・マリシャス・ペルシャ・・・!」 マリシャス:お前さんが来てくれないなどとは微塵(みじん)も思ってないがね?念のため、お前さんの大事な大事なシーラは、我々が預からせてもらうよ グレイ:「ふざけるな!今すぐシーラを放せ!」 マリシャス:はははっ。いつも冷静なグレイ・ガロらしくないねぇ グレイ:「シーラに手を出す事がどういう事か、わからねぇテメェじゃねぇだろう」 マリシャス:もちろんわかっているとも。だから、『丁重(ていちょう)に』おもてなしさせてもらうよ グレイ:「クソッタレが・・・シーラに何かあってみろ。死すら生ぬるい地獄を見せてやる・・・!」 マリシャス:怖いねぇ。まぁ、明日を楽しみにしているよ 0: 0:マリシャスはにやにやと笑いながら電話を切った。 0: ハツカ:暴れんじゃねぇよ! シーラ:放しなさいって言ってるでしょう! マリシャス:さて、シーラ シーラ:っ、汚い手で触らないで マリシャス:くくくく。お前は本当にグレイに愛されているようだねぇ シーラ:ええ、そうよ。だから早く私の顎から手を放しなさい。地獄を見たくなければね マリシャス:はははは!さすがはグレイ・ガロの女だ!奴と同じことを言うとは! シーラ:彼にも言われたのならわかるでしょう?あなたも知っているはずよ、グレイの怖さを マリシャス:ああ、よく知っているとも。奴に噛み千切られたこの腕は、いつだって奴を思い出させてくれるさ シーラ:なら・・・ マリシャス:だからこその明日の話し合いだよ、シーラぁ シーラ:どういうこと・・・? マリシャス:それは明日のお楽しみさ。今日のお楽しみは、これからだぜ? シーラ:何を・・・っ!ちょっと、どこ触ってるのよ!私はグレイの・・・ マリシャス:じゅるり シーラ:いやっ! マリシャス:グレイの女でいられるのは今この時までだ、シーラぁ。これからは俺のおもちゃになるんだよぉ シーラ:やめなさい!いや、やめてっ!やめっ!・・・グレイ・・・っ!・・・グレイーーー!! 0: 0: 0:『餓狼のシイチ』アジトにて 0: グレイ:おい?おい!マリシャス!・・・クソッ、切りやがった・・・ グレイ:シーラ・・・ コウガ:(ノック音)どうしたんです、ボス!入りますよ? グレイ:コウガか・・・ コウガ:どうしたんです、ボスが声を荒げるなんて珍しい グレイ:・・・コープスがネズミ共に占領された・・・ コウガ:は!?・・・姐さんは・・・?姐さんは無事なんですか!? グレイ:わからねぇ・・・忠告の電話をしてる最中に、シーラにとって代わってマリシャスが電話に出やがった コウガ:なっ、マリシャス自らコープスに出向いてるって事ですか!? グレイ:ああ・・・ コウガ:そんな・・・ グレイ:あの碌(ろく)でなしの事だ。「丁重にもてなす」なんて言ってやがったが、おそらく今頃シーラは・・・ コウガ:・・・っのクソネズミ共が!! コウガ:ボス、今からコープスに向かいましょう! グレイ:・・・ダメだ コウガ:なんでっ! グレイ:俺達が動けば、そこら中にいるであろうネズミ共に嗅ぎつけられる。そうすれば、シーラの命が危ねぇ コウガ:でも、それじゃあ、姐さんは・・・っ グレイ:命あってこそだろうが!マリシャスの野郎がシーラをどれだけ辱(はずかし)めようと、生きてさえいりゃまたこの腕で抱きしめてやれる。だが、死んじまったら・・・ コウガ:・・・クソッ!! グレイ:そもそもこの『餓狼のシイチ』は、アウトローの吹き溜まりみてぇなこの街で、野垂れ死ぬ奴を減らすために作ったんだ グレイ:シーラはそれを理解してる。だからどんな目に遭おうと、俺が助けに行くのを待ってるはずだ コウガ:それは・・・ グレイ:明日だ・・・明日、シーラに手を出した事を死ぬほど後悔させてやる・・・! 0: 0: 0:翌日夜 0:バー『コープスリバイバー』にて 0: マリシャス:やぁ、狼の長、グレイ・ガロ! グレイ:シーラはどこだ マリシャス:つれないねぇ。まずは挨拶からだろう? グレイ:黙れ。シーラはどこだと聞いてる マリシャス:・・・はぁ・・・おい、ハツカ ハツカ:へい 0: 0:ぐったりとしたシーラがハツカに引きずられてきた 0: グレイ:シーラ!! マリシャス:おっとそれ以上動くんじゃあねぇ グレイ:クソ野郎がっ・・・やっぱりシーラに手を出しやがったな! マリシャス:ははは!昨日言ったじゃないか、「丁重に」おもてなしすると グレイ:俺も言ったはずだ。シーラに何かあれば死すら生ぬるい地獄を見せてやると マリシャス:くくくく。だが、わかっていたんだろう?俺が言ったもてなすの意味を マリシャス:それでも昨晩この女を助けに来なかったのは、テメェの女を俺におもちゃにされて悦(よろこ)ぶ変態だからじゃねぇのか?グレイ・ガロさんよぉ! グレイ:ふざけるな!! ハツカ:ひっ! マリシャス:おお怖い怖い。怖すぎて思わずちびっちまうかもなぁ?この女の顔面によ? グレイ:ガルルルルルル・・・ マリシャス:おいおいハツカ!聞いたか?餓狼の長が狼よろしく、唸(うな)りやがったぜ!はははは! ハツカ:へ、へぇ・・・はは、は・・・ グレイ:おいネズミ。また俺に噛み千切られたいのか? マリシャス:ああそうそう、その話だよ、今日したかったのは! マリシャス:俺は6年前、お前に腕を噛み千切られてから片時もお前の事を忘れられなくなっちまってなぁ。どんな女を抱いても、頭に浮かぶのはお前の事ばかりだ!俺にそんな趣味はねぇのによぉ! マリシャス:だから考えたわけよ。お前の事が忘れられないなら、お前の存在を消しちまえばいいと マリシャス:だが同時にこうも思った。またお前に噛みつかれでもしたら、それこそ俺は生きちゃいられねぇだろう マリシャス:だから探ったのさ!お前から牙をもぐ方法を、お前の弱みを! マリシャス:そしたらどうだ?こぉんなにいい女がお前の弱点だって言うじゃねぇか!そりゃあ抱くしかねぇだろうよぉ!! グレイ:・・・・・・・・・・・・ マリシャス:ああ、それとな?シーラに惹かれちまったのは俺だけじゃなくてな?ここにいる全員で今の今まで相手してやってたわけよ! マリシャス:なぁハツカ?シーラの抱き心地はよかったよなぁ? ハツカ:ええ、そりゃあもう最高で・・・ひぎゃっ!? グレイ:・・・・・・・・・・・・ マリシャス:っ!どこからナイフが・・・グレイ!シーラがどうなってもいいのか! グレイ:・・・何の事だ? モブA:ぎゃっ! モブB:ひっ! モブC:ぐぁっ! マリシャス:グレイ!貴様・・・ グレイ:この通り、俺はテメェの要求に応じ、一人で来た。それなのにテメェはどうだ?俺のシーラを弄(もてあそ)び、部下にまで触らせたことを誇らしげにべらべらと・・・ マリシャス:それがなんだ!シーラはこちらの手の内にあるんだぞ!?攻撃をやめねぇと・・・ グレイ:だから、何の事だ。俺がこの場から一歩でも、指一本でも動かしているように見えるのか? マリシャス:くっ・・・ ハツカ:ぎゃあ!! マリシャス:ハツカ!クソッ!この場にはテメェしかいねぇんだ!テメェ以外に誰が攻撃してるってんだ! グレイ:さぁな?天罰でも下ってんじゃねぇのか? マリシャス:ふざけるなぁ! グレイ:ふざけているのはどっちだ!! シーラ:・・・く・・・ぅ・・・あ・・・ グレイ:っシーラ! マリシャス:ハッ!この女も道連れに・・・ グレイ:おせぇよ、ドブネズミ マリシャス:ぐぁああああ! グレイ:シーラ、シーラ!大丈夫か、シーラ? シーラ:・・・グレイ・・・? グレイ:シーラ、すまなかった、シーラっ! シーラ:だい、じょう・・・ぶ、よ・・・生きてる、わ・・・ グレイ:ああ。生きていてくれてありがとう、シーラ ハツカ:・・・クソが・・・よくも・・・よくも俺の右腕をぉおおおお!! シーラ:っ!グレイ、危ない!! グレイ:なっ!シーラ!? 0: 0:ハツカの放った銃弾が背を向けたままのグレイへと迫り、それを庇(かば)うようにシーラが二人の間へ体をねじ込ませた。 0:続けざまに撃たれた6発の銃弾が、シーラを貫く。 0: グレイ:シーラ・・・? シーラ:グレイ・・・・・・ケガ・・・ない・・・? グレイ:シーラっ!なんて事をしたんだ!! シーラ:グ・・・レイ・・・ケ、ガ・・・ グレイ:ああ、俺は無事だ シーラ:よかっ・・・た・・・ グレイ:喋るなシーラ! ハツカ:クソックソックソッ!こんな腕じゃあ女を抱けねぇじゃねぇか!銃も思ったように撃てねぇしよぉ!!どうしてくれんだチクショウ!! シーラ:グ、レ・・・愛・・・し、て・・・・・・・・・ グレイ:シーラ・・・?シーラ!シーラっ!! ハツカ:俺を無視してんじゃねぇ!!! モブD:ぐぁああっ! ハツカ:クソっ、また一人やられたじゃねぇか!久々の抗争だろうがテメェ等!気合い入れてゴミ共をぶち抜けやオラァ! 0: マリシャス:くっ、ハツカが暴れている今のうちに脱出を・・・ コウガ:どこ行こうってんだ、マリシャス・ペルシャ? マリシャス:なっ、貴様は・・・!何故ここに・・・・・・ マリシャス:おのれグレイめ・・・一人で来たように見せかけていやがったな・・・? コウガ:バカが。ボスはテメェに言われた通り一人でここへ来た。俺達は偶然、一人ずつここへ来ちまっただけだよ マリシャス:何を・・・・・・ハッ! 0: 0:逃げ道を探すようにマリシャスがあたりを見回すと、窓という窓からシイチの面々が目を光らせてこちらを見ていた。 0: コウガ:狼の群れから逃げられると思うなよ? マリシャス:・・・た、助けてくれ・・・命だけはっ!あの女の命だって俺はとっちゃいねぇんだ!だから・・・っ グレイ:・・・・・・シーラは・・・死んだ・・・ コウガ:ボス・・・?今、なんて・・・ グレイ:シーラは死んだと言ったんだ コウガ:そんな・・・姐さん、が・・・? マリシャス:ち、違う!俺じゃない!俺は殺してない!あいつが、ハツカが勝手に・・・っ グレイ:・・・ああ、しまった・・・地獄を見せる約束を、破ってしまったな・・・ マリシャス:何を・・・って、あれは・・・ハツカ、か・・・? マリシャス:・・・ぐっ、うおぇええええええ グレイ:何を吐いてるんだ。自分の部下だろう?ちゃんと見てやれよ コウガ:ボ、ボス・・・? グレイ:ああ、皆。いいところに。こいつらに、こいつらを蔓延(はびこ)らせたこの街に、シーラのいないこの街に、地獄を見せてやろう コウガ:ボス・・・でも・・・っ グレイ:ついてきてくれるよな? コウガ:ボス、でも・・・シイチは・・・ グレイ:・・・・・・ォオオオオオオオオン 0: 0:それはまるで番(つがい)を失った狼の悲しげな遠吠えのようで。 0:それに触発されたシイチの面々が、次々に鳴きだす。 0: コウガ:っ・・・ォオオオオオオン コウガ:どこまでもついて行くぜ、ボス! グレイ:ありがとう、みんな グレイ:さぁ、サザンに、この街に、シーラの味わった苦しみよりもつらい惨劇を・・・ グレイ:蹂躙し尽くせ、餓狼ども!!! コウガ:ォオオオオオオオオオオ!!!! マリシャス:や、やめろ、やめてくれ!!頼む、やめっ・・・ぎゃぁあああああああああ!!!! 0: 0: 0: 0: シーラN:もしかしたら、あの時私がもっとうまくグレイを庇えていたら・・・あるいはこの悲劇は起こらなかったのかも知れない シーラN:もしくは、もっと早くにサザンの動きに気付いていたならば・・・ シーラN:私は最愛の人の命を守ると同時に、最愛の人の心を殺してしまったのだ シーラN:これはアウトローが集まる街、リリクルで起きた惨劇の発端となった出来事の記録 シーラN:私の死によって引き起こされた苦痛と惨劇、飢えた狼たちの蹂躙の物語の、開幕だ

シーラN:私は死んだ シーラN:愛する人の盾となって シーラN:そのことに関して後悔なんてない シーラN:ただ・・・私が死んだ事によって、このリリクルの街が戦乱に包まれてしまった事は心残りだ シーラN:それは愛するあの人が、グレイが望んだ事とは真逆の事だったから 0: 0: 0: コウガ:おいテメェ!サザンのネズミがこんなとこで何してやがる! ハツカ:あ?シイチの噛ませ犬じゃねぇか。テメェんとことは不戦協定を結んでんだ、俺がどこで何をしようと、キャンキャン吠えられる覚えはねぇよ コウガ:んだと!? ハツカ:文句があるなら聞いてやろうじゃねぇか? コウガ:あるに決まってんだろ!いくら不戦協定を結んでるとは言え、ここはシイチのシマのど真ん中だ! コウガ:その大通りのど真ん中を堂々と歩かれちゃあ、こっちの面子に関わってくんだよ! コウガ:ネズミはネズミらしく道の端をこそこそ歩いてやがれ! ハツカ:ぁあ? グレイ:そこまでだ、コウガ コウガ:っ!ボス! ハツカ:おやおや、これはこれは。シイチの狼様じゃありやせんか。どうしたんです?こんなネズミのうろつくような場所で コウガ:テメェ!! グレイ:やめろっつってんのが聞こえねぇのか コウガ:っ、けどボス! グレイ:何のための不戦協定だ。よく考えろ ハツカ:はははは!さすがは狼様。犬っころとは違ってよくわかってらっしゃるじゃねぇか! グレイ:テメェもいい加減にしねぇと、どこかの飢えた狼に餌と間違えられて食われちまっても知らねぇぜ? ハツカ:おお怖え怖え コウガ:そもそもテメェはここに何しに来やがったんだ ハツカ:うるせぇ犬っころだなぁ コウガ:このっ・・・ グレイ:おい、ネズミ。テメェもテメェで何のための不戦協定かわかってねぇみてぇだな? グレイ:俺達シイチとテメェらサザンはでかくなり過ぎた。この街の二大勢力として、俺達が争えば間違いなくこの街は滅ぶ グレイ:街が滅べばどうなるか。それくらい、ネズミのちいせぇ頭でもわかるだろ? ハツカ:ええ、ええ。重々承知してますとも。だから俺がここにいても何ら問題は・・・ グレイ:テメェごときが、戦争の火種になれるとでも、本気で思ってやがんのか? ハツカ:っ!く・・・ グレイ:誰にも気づかれずに食い殺されたくなければ、大人しく要件を吐いた方が身のためだぜ? ハツカ:・・・・・・はぁ・・・わかりやしたよ・・・ ハツカ:俺がここに来たのは他でもねぇ。あんたに用があるからだよ、『シイチの餓狼』グレイ・ガロ グレイ:ほう? ハツカ:うちのボスがあんたに話があるそうだ。つきましては明日の午後10時、シマの境目にあるバー『コープスリバイバー』に来てもらえますかね?もちろん、お一人で コウガ:ボス一人でだと?ふざけんのも大概(たいがい)にしやがれ! ハツカ:ふざけてなんかねぇよ。でなきゃこんな犬臭い場所に・・・おっと失礼 コウガ:このやろっ・・・ グレイ:テメェの慇懃無礼(いんぎんぶれい)な態度はこの際置いといてやる グレイ:で?マリシャスの野郎の話ってのは、テメェは知ってやがんのか? ハツカ:残念ながら。たかが子ネズミの俺には教えて頂けてないのですよ コウガ:ケッ!ざまぁねぇな! グレイ:・・・話の内容もわからないまま、俺一人でコープスに来い、と・・・テメェらのボスは随分(ずいぶん)と偉くなったもんだな? ハツカ:・・・っ!・・・はは、威圧(いあつ)するのはやめてくだせぇよ。ちびっちまいそうだ・・・ グレイ:ザコが。マリシャスに伝えておけ グレイ:俺と話してぇなら、テメェみてぇな子ネズミじゃなくもっと躾(しつけ)のされたネズミをよこすんだな。無駄な血を流したくなくばな、と ハツカ:・・・つ、伝えておきましょう・・・・・・だが、ボスがコープスを指定している以上、あなたは断ることはできないはずだ ハツカ:そのくらいの情報は、俺でも握っていることをお忘れなく グレイ:・・・ほう・・・ ハツカ:ひっ・・・と、とにかく、お伝えしやしたからね!それでは・・・っ コウガ:ドブネズミが!さっさと消えちまえ! コウガ:・・・・・・にしてもボス。どうするんです? グレイ:・・・・・・胸糞わりぃが、奴の言う通りだ。場所がコープスである以上、断ることはできねぇ コウガ:姐(あね)さんがいるバーですからね・・・ グレイ:・・・クソッタレが 0: 0: 0:サザンのアジトにて 0: ハツカ:ボス、言われた通りグレイの野郎にコープスに来るよう伝えましたぜ マリシャス:ああ、ご苦労。もちろん、店は囲んであるんだろうな? ハツカ:ええ、ご指示通りに マリシャス:くくくく。今頃グレイは焦ってアジトに帰ってるんだろうなぁ・・・恋人が心配で心配でたまらねぇんだろうなぁ・・・! マリシャス:これでようやく、6年前の借りが返せるってもんだぁ・・・ ハツカ:6年前・・・ボスがあの野郎に腕を噛み千切られた日、ですよね? マリシャス:ああ、そうだ・・・この街はもともと俺達サザンが牛耳ってたんだ。奴らが来るまでは麻薬の密売も、人身売買も、何でもかんでも金になった マリシャス:それがどうだ。奴らが出しゃばり始めてからと言うもの、仕事がやりづらくてかなわねぇ ハツカ:ええ、まったくで マリシャス:それに奴の恋人、シーラ。あの女に先に目をつけてたのは俺なんだ。それを横からかっさらいやがって・・・っ! 0: 0: 0:6年前 0:バー『コープスリバイバー』にて 0: マリシャス:いい加減俺の女になれよ、シーラァ・・・! シーラ:嫌よ。誰があんたなんかの女になるもんですか。だったら死んだ方がマシよ マリシャス:くくくく。いいぜぇ、その威勢のよさ!ますます欲しくなる! シーラ:しつこい男は嫌われるわよ?ただでさえあなたは嫌われ者なのに ハツカ:おいシーラ!ボスになんてことぬかしやがる マリシャス:いいんだ、ハツカ。そんな女を落とすのが面白れぇんだからよ シーラ:そう。ならあなたは一生独り身ね。かわいそうに ハツカ:・・・おいシーラァ、女があんまり粋(いき)がってると、痛い目見るぜ? シーラ:何?振り向かせられないからって、部下に手伝ってもらって私を襲う? シーラ:知ってるでしょう?この街はあなた達のお陰で治安はとっても悪いの。手籠(てご)めにされたからって、それでついて行くような女はいないわ マリシャス:余計なことすんじゃねぇぞ、ハツカァ。こいつを落とすのは俺一人で充分なんだからよ シーラ:はぁ・・・どうしてこんな勘違い男がこの街を牛耳ってられるのかしらね マリシャス:何? シーラ:ボスの器じゃないのよ、あなた。だって、名前からしてそうじゃない。ボスのお膝でいい子いい子してもらってるのがお似合いよ、ペルシャちゃん? マリシャス:このアマッ!! マリシャス:ぐぁっ!? ハツカ:ボス!?腕にナイフが・・・っ・・・ グレイ:見てられねぇなぁ。酒がまずくなる ハツカ:誰だテメェ! グレイ:わざわざ名乗ってやるほどお人よしじゃねぇよ マリシャス:このっ・・・俺が誰だかわかって攻撃してきやがったんだろうな!? グレイ:ああ、そこのお嬢さんのお陰で分かったぜ?子猫ちゃんだろう? マリシャス:貴様っ! グレイ:ニャーニャーうるせぇよ。いい加減相手にしてもらえてない事実に気付いて引き下がったらどうだ?サザンのボスさんよ マリシャス:分かっててやりやがったな、テメェ・・・おいハツカ! ハツカ:ハチの巣になりなぁ!! グレイ:おっと マリシャス:さっさと当てやがれハツカァ! ハツカ:ちょこまか逃げてんじゃねぇぞ! シーラ:ちょっと!店で銃なんて撃つんじゃないわよ! グレイ:あんまり店に迷惑はかけられねぇな、っと! マリシャス:ぎゃぁあああああ!!! ハツカ:ボス!! マリシャス:腕がっ!俺の腕がぁあああ!! ハツカ:テメェ!よくもボスの腕を落としやがったなっ!! グレイ:いいのか?騒いでて。今ならくっつくかも知れねぇぜ?その腕 マリシャス:ぐぁあああ・・・ ハツカ:クソッ!覚えてやがれ!! シーラ:二度と来るんじゃないわよ! グレイ:おっとそうだ、店への迷惑料を払わせてなかったな。その腕、置いてけ マリシャス:は?が、ぁあ、あああああああ!! ハツカ:なっ!?傷口にさらにナイフを!? グレイ:今度この店に手を出してみろ。『餓狼のシイチ』のボスであるこの俺、グレイ・ガロが相手になってやる。その腕みてぇに、またお好きな場所を噛み千切ってやるぜ? マリシャス:クソがぁああ!!テメェの事は絶対に忘れねぇからな、グレイ・ガロ!!! 0: 0:マリシャス、ハツカ退店後 0: グレイ:悪かったな、お嬢さん。店の修理費は・・・今すぐには出せねぇが・・・ シーラ:いいえ、助かったわ。それにしても、『餓狼のシイチ』、だったかしら?聞いた事のない組織だわ グレイ:ああ。まだこの街に来て日が浅いからな。だが、もっと組織をでかく強くして、この街で飢えて野垂れ死ぬ奴らがいなくなるようにしてやる グレイ:そうすれば、このバーももっと儲かるだろうぜ。今はそれで勘弁してくれ シーラ:ふふっ。楽しみにしてるわ、狼さん 0: 0: 0:現在 0:バー『コープスリバイバー』にて 0: シーラ:はい。こちらバー『コープスリバイバー』 グレイ:「シーラか?俺だ」 シーラ:あら、グレイ。どうしたの? グレイ:「『銃恨のサザン』のボス、マリシャス・ペルシャはわかるな?明日、『コープスリバイバー』で話し合いをしたいとぬかしてきやがった」 シーラ:サザンのボスが・・・? グレイ:「ああ。俺一人で来いとのご指名だ」 シーラ:そんな・・・・・・つまり私は、ダシに使われたわけね? グレイ:「そうだ」 シーラ:随分(ずいぶん)と舐めてくれたものね、サザンも グレイ:「ああ。明日と指定してきた以上、おそらくすでにそこはネズミ共に囲まれているだろう」 シーラ:そうね グレイ:「癪(しゃく)だが明日俺はそこへ行く。お前は店の者と共に最大限の警戒をしておけ」 シーラ:わかったわ・・・だけどグレイ。少し遅かったみたい グレイ:「何?」 シーラ:愛してるわ、グレイ シーラ:ちょっと!触らないでちょうだい! グレイ:「シーラ?おい、何があったシーラ!」 シーラ:・・・・・・ グレイ:「返事をしろシーラ!」 マリシャス:やぁ、狼の グレイ:「っ!・・・マリシャス・ペルシャ・・・!」 マリシャス:お前さんが来てくれないなどとは微塵(みじん)も思ってないがね?念のため、お前さんの大事な大事なシーラは、我々が預からせてもらうよ グレイ:「ふざけるな!今すぐシーラを放せ!」 マリシャス:はははっ。いつも冷静なグレイ・ガロらしくないねぇ グレイ:「シーラに手を出す事がどういう事か、わからねぇテメェじゃねぇだろう」 マリシャス:もちろんわかっているとも。だから、『丁重(ていちょう)に』おもてなしさせてもらうよ グレイ:「クソッタレが・・・シーラに何かあってみろ。死すら生ぬるい地獄を見せてやる・・・!」 マリシャス:怖いねぇ。まぁ、明日を楽しみにしているよ 0: 0:マリシャスはにやにやと笑いながら電話を切った。 0: ハツカ:暴れんじゃねぇよ! シーラ:放しなさいって言ってるでしょう! マリシャス:さて、シーラ シーラ:っ、汚い手で触らないで マリシャス:くくくく。お前は本当にグレイに愛されているようだねぇ シーラ:ええ、そうよ。だから早く私の顎から手を放しなさい。地獄を見たくなければね マリシャス:はははは!さすがはグレイ・ガロの女だ!奴と同じことを言うとは! シーラ:彼にも言われたのならわかるでしょう?あなたも知っているはずよ、グレイの怖さを マリシャス:ああ、よく知っているとも。奴に噛み千切られたこの腕は、いつだって奴を思い出させてくれるさ シーラ:なら・・・ マリシャス:だからこその明日の話し合いだよ、シーラぁ シーラ:どういうこと・・・? マリシャス:それは明日のお楽しみさ。今日のお楽しみは、これからだぜ? シーラ:何を・・・っ!ちょっと、どこ触ってるのよ!私はグレイの・・・ マリシャス:じゅるり シーラ:いやっ! マリシャス:グレイの女でいられるのは今この時までだ、シーラぁ。これからは俺のおもちゃになるんだよぉ シーラ:やめなさい!いや、やめてっ!やめっ!・・・グレイ・・・っ!・・・グレイーーー!! 0: 0: 0:『餓狼のシイチ』アジトにて 0: グレイ:おい?おい!マリシャス!・・・クソッ、切りやがった・・・ グレイ:シーラ・・・ コウガ:(ノック音)どうしたんです、ボス!入りますよ? グレイ:コウガか・・・ コウガ:どうしたんです、ボスが声を荒げるなんて珍しい グレイ:・・・コープスがネズミ共に占領された・・・ コウガ:は!?・・・姐さんは・・・?姐さんは無事なんですか!? グレイ:わからねぇ・・・忠告の電話をしてる最中に、シーラにとって代わってマリシャスが電話に出やがった コウガ:なっ、マリシャス自らコープスに出向いてるって事ですか!? グレイ:ああ・・・ コウガ:そんな・・・ グレイ:あの碌(ろく)でなしの事だ。「丁重にもてなす」なんて言ってやがったが、おそらく今頃シーラは・・・ コウガ:・・・っのクソネズミ共が!! コウガ:ボス、今からコープスに向かいましょう! グレイ:・・・ダメだ コウガ:なんでっ! グレイ:俺達が動けば、そこら中にいるであろうネズミ共に嗅ぎつけられる。そうすれば、シーラの命が危ねぇ コウガ:でも、それじゃあ、姐さんは・・・っ グレイ:命あってこそだろうが!マリシャスの野郎がシーラをどれだけ辱(はずかし)めようと、生きてさえいりゃまたこの腕で抱きしめてやれる。だが、死んじまったら・・・ コウガ:・・・クソッ!! グレイ:そもそもこの『餓狼のシイチ』は、アウトローの吹き溜まりみてぇなこの街で、野垂れ死ぬ奴を減らすために作ったんだ グレイ:シーラはそれを理解してる。だからどんな目に遭おうと、俺が助けに行くのを待ってるはずだ コウガ:それは・・・ グレイ:明日だ・・・明日、シーラに手を出した事を死ぬほど後悔させてやる・・・! 0: 0: 0:翌日夜 0:バー『コープスリバイバー』にて 0: マリシャス:やぁ、狼の長、グレイ・ガロ! グレイ:シーラはどこだ マリシャス:つれないねぇ。まずは挨拶からだろう? グレイ:黙れ。シーラはどこだと聞いてる マリシャス:・・・はぁ・・・おい、ハツカ ハツカ:へい 0: 0:ぐったりとしたシーラがハツカに引きずられてきた 0: グレイ:シーラ!! マリシャス:おっとそれ以上動くんじゃあねぇ グレイ:クソ野郎がっ・・・やっぱりシーラに手を出しやがったな! マリシャス:ははは!昨日言ったじゃないか、「丁重に」おもてなしすると グレイ:俺も言ったはずだ。シーラに何かあれば死すら生ぬるい地獄を見せてやると マリシャス:くくくく。だが、わかっていたんだろう?俺が言ったもてなすの意味を マリシャス:それでも昨晩この女を助けに来なかったのは、テメェの女を俺におもちゃにされて悦(よろこ)ぶ変態だからじゃねぇのか?グレイ・ガロさんよぉ! グレイ:ふざけるな!! ハツカ:ひっ! マリシャス:おお怖い怖い。怖すぎて思わずちびっちまうかもなぁ?この女の顔面によ? グレイ:ガルルルルルル・・・ マリシャス:おいおいハツカ!聞いたか?餓狼の長が狼よろしく、唸(うな)りやがったぜ!はははは! ハツカ:へ、へぇ・・・はは、は・・・ グレイ:おいネズミ。また俺に噛み千切られたいのか? マリシャス:ああそうそう、その話だよ、今日したかったのは! マリシャス:俺は6年前、お前に腕を噛み千切られてから片時もお前の事を忘れられなくなっちまってなぁ。どんな女を抱いても、頭に浮かぶのはお前の事ばかりだ!俺にそんな趣味はねぇのによぉ! マリシャス:だから考えたわけよ。お前の事が忘れられないなら、お前の存在を消しちまえばいいと マリシャス:だが同時にこうも思った。またお前に噛みつかれでもしたら、それこそ俺は生きちゃいられねぇだろう マリシャス:だから探ったのさ!お前から牙をもぐ方法を、お前の弱みを! マリシャス:そしたらどうだ?こぉんなにいい女がお前の弱点だって言うじゃねぇか!そりゃあ抱くしかねぇだろうよぉ!! グレイ:・・・・・・・・・・・・ マリシャス:ああ、それとな?シーラに惹かれちまったのは俺だけじゃなくてな?ここにいる全員で今の今まで相手してやってたわけよ! マリシャス:なぁハツカ?シーラの抱き心地はよかったよなぁ? ハツカ:ええ、そりゃあもう最高で・・・ひぎゃっ!? グレイ:・・・・・・・・・・・・ マリシャス:っ!どこからナイフが・・・グレイ!シーラがどうなってもいいのか! グレイ:・・・何の事だ? モブA:ぎゃっ! モブB:ひっ! モブC:ぐぁっ! マリシャス:グレイ!貴様・・・ グレイ:この通り、俺はテメェの要求に応じ、一人で来た。それなのにテメェはどうだ?俺のシーラを弄(もてあそ)び、部下にまで触らせたことを誇らしげにべらべらと・・・ マリシャス:それがなんだ!シーラはこちらの手の内にあるんだぞ!?攻撃をやめねぇと・・・ グレイ:だから、何の事だ。俺がこの場から一歩でも、指一本でも動かしているように見えるのか? マリシャス:くっ・・・ ハツカ:ぎゃあ!! マリシャス:ハツカ!クソッ!この場にはテメェしかいねぇんだ!テメェ以外に誰が攻撃してるってんだ! グレイ:さぁな?天罰でも下ってんじゃねぇのか? マリシャス:ふざけるなぁ! グレイ:ふざけているのはどっちだ!! シーラ:・・・く・・・ぅ・・・あ・・・ グレイ:っシーラ! マリシャス:ハッ!この女も道連れに・・・ グレイ:おせぇよ、ドブネズミ マリシャス:ぐぁああああ! グレイ:シーラ、シーラ!大丈夫か、シーラ? シーラ:・・・グレイ・・・? グレイ:シーラ、すまなかった、シーラっ! シーラ:だい、じょう・・・ぶ、よ・・・生きてる、わ・・・ グレイ:ああ。生きていてくれてありがとう、シーラ ハツカ:・・・クソが・・・よくも・・・よくも俺の右腕をぉおおおお!! シーラ:っ!グレイ、危ない!! グレイ:なっ!シーラ!? 0: 0:ハツカの放った銃弾が背を向けたままのグレイへと迫り、それを庇(かば)うようにシーラが二人の間へ体をねじ込ませた。 0:続けざまに撃たれた6発の銃弾が、シーラを貫く。 0: グレイ:シーラ・・・? シーラ:グレイ・・・・・・ケガ・・・ない・・・? グレイ:シーラっ!なんて事をしたんだ!! シーラ:グ・・・レイ・・・ケ、ガ・・・ グレイ:ああ、俺は無事だ シーラ:よかっ・・・た・・・ グレイ:喋るなシーラ! ハツカ:クソックソックソッ!こんな腕じゃあ女を抱けねぇじゃねぇか!銃も思ったように撃てねぇしよぉ!!どうしてくれんだチクショウ!! シーラ:グ、レ・・・愛・・・し、て・・・・・・・・・ グレイ:シーラ・・・?シーラ!シーラっ!! ハツカ:俺を無視してんじゃねぇ!!! モブD:ぐぁああっ! ハツカ:クソっ、また一人やられたじゃねぇか!久々の抗争だろうがテメェ等!気合い入れてゴミ共をぶち抜けやオラァ! 0: マリシャス:くっ、ハツカが暴れている今のうちに脱出を・・・ コウガ:どこ行こうってんだ、マリシャス・ペルシャ? マリシャス:なっ、貴様は・・・!何故ここに・・・・・・ マリシャス:おのれグレイめ・・・一人で来たように見せかけていやがったな・・・? コウガ:バカが。ボスはテメェに言われた通り一人でここへ来た。俺達は偶然、一人ずつここへ来ちまっただけだよ マリシャス:何を・・・・・・ハッ! 0: 0:逃げ道を探すようにマリシャスがあたりを見回すと、窓という窓からシイチの面々が目を光らせてこちらを見ていた。 0: コウガ:狼の群れから逃げられると思うなよ? マリシャス:・・・た、助けてくれ・・・命だけはっ!あの女の命だって俺はとっちゃいねぇんだ!だから・・・っ グレイ:・・・・・・シーラは・・・死んだ・・・ コウガ:ボス・・・?今、なんて・・・ グレイ:シーラは死んだと言ったんだ コウガ:そんな・・・姐さん、が・・・? マリシャス:ち、違う!俺じゃない!俺は殺してない!あいつが、ハツカが勝手に・・・っ グレイ:・・・ああ、しまった・・・地獄を見せる約束を、破ってしまったな・・・ マリシャス:何を・・・って、あれは・・・ハツカ、か・・・? マリシャス:・・・ぐっ、うおぇええええええ グレイ:何を吐いてるんだ。自分の部下だろう?ちゃんと見てやれよ コウガ:ボ、ボス・・・? グレイ:ああ、皆。いいところに。こいつらに、こいつらを蔓延(はびこ)らせたこの街に、シーラのいないこの街に、地獄を見せてやろう コウガ:ボス・・・でも・・・っ グレイ:ついてきてくれるよな? コウガ:ボス、でも・・・シイチは・・・ グレイ:・・・・・・ォオオオオオオオオン 0: 0:それはまるで番(つがい)を失った狼の悲しげな遠吠えのようで。 0:それに触発されたシイチの面々が、次々に鳴きだす。 0: コウガ:っ・・・ォオオオオオオン コウガ:どこまでもついて行くぜ、ボス! グレイ:ありがとう、みんな グレイ:さぁ、サザンに、この街に、シーラの味わった苦しみよりもつらい惨劇を・・・ グレイ:蹂躙し尽くせ、餓狼ども!!! コウガ:ォオオオオオオオオオオ!!!! マリシャス:や、やめろ、やめてくれ!!頼む、やめっ・・・ぎゃぁあああああああああ!!!! 0: 0: 0: 0: シーラN:もしかしたら、あの時私がもっとうまくグレイを庇えていたら・・・あるいはこの悲劇は起こらなかったのかも知れない シーラN:もしくは、もっと早くにサザンの動きに気付いていたならば・・・ シーラN:私は最愛の人の命を守ると同時に、最愛の人の心を殺してしまったのだ シーラN:これはアウトローが集まる街、リリクルで起きた惨劇の発端となった出来事の記録 シーラN:私の死によって引き起こされた苦痛と惨劇、飢えた狼たちの蹂躙の物語の、開幕だ